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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135422
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】備長炭粒子
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/037 20140101AFI20240927BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20240927BHJP
【FI】
C09D11/037
C09D11/322
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046094
(22)【出願日】2023-03-23
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】591210909
【氏名又は名称】株式会社ラテスト
(74)【代理人】
【識別番号】100202175
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 静男
(72)【発明者】
【氏名】前田 育克
(72)【発明者】
【氏名】川上 大輔
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039BA03
4J039EA19
4J039FA07
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】 可食性インクとして水分散性の良いインクが求められている。炭は通常疎水性であり、分散剤を用いないで水分散性の良い備長炭粒子黒色インクを製造するのは困難であつた。
【解決手段】 湿式粉砕された備長炭粒子において、次亜塩素酸ナトリウム水溶液にて殺菌処理し可食性水分散性黒色インクとして用いる。そしてインクジェットプリンターで、前記インクを用いて卵の殻、ミカンの皮、薬剤の錠剤等に直接印字することができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式粉砕された備長炭粒子において、室温で次亜塩素酸ナトリウム水溶液にて殺菌処理し可食性水分散性黒色インクとして用いることを特徴とする備長炭粒子
【請求項2】
湿式粉砕された備長炭粒子において、室温から100℃までの温度で次亜塩素酸ナトリウム水溶液にて処理し水分散性黒色インクとして用いることを特徴とする備長炭粒子
【請求項3】
湿式粉砕された備長炭粒子において、次亜塩素酸ナトリウム水溶液にて処理し水分散性黒色インクとしてインクジェットプリンターに用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の備長炭粒子
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、備長炭粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
植物炭末色素(Vegetable carbon black)は植物を炭化して得られた、炭素を主成分とするものをいう。竹炭が用いられる場合が多い。これは食品添加物の既存添加物として記載されており、着色料に用いられる。
また日本薬局方に、止しゃ剤、整腸剤として薬用炭が記載されている。薬用炭として活性炭が用いられる。
次亜塩素酸ナトリウムも食品添加物として殺菌料として用いられる。なお殺菌処理後は食品に残留しないことが求められる。
【0003】
植物炭末色素の定義は植物を炭化して得られた、炭素を主成分とするものである。含量は乾燥物及び無灰分換算したものは、炭素(C=12.01)90%以上を含む。性状は黒色の粉末、粒又は繊維状の物質である。確認試験は(1)粉末化したものは、水、アセトン及びヘキサンに溶けず、分散して、黒色を呈する。(2)粉末を試験管に入れ、直火で加熱するとき、火炎を生じないで燃焼する。純度試験は(1)遊離酸 炭末0.25gを量り、水50mLを加え、ろ紙でろ過し、ろ液10mLに、0.02mol/L水酸化ナトリウム溶液0.25mLを加え、0.02mol/L塩酸で滴定するとき、0.02mol/L塩酸の消費量は0.75mL以下でなければならない。(2)鉛 Pbとして5μg/g以下、(3)ヒ素 Asとして3μg/g以下。乾燥減量 12.0%以下(120℃、4時間)、灰分 4.0%以下。
【0004】
備長炭の製法は、択伐したウバメガシを数本ずつ束にして、窯の奥から立てかけていく(窯入れ)。窯入れを終えると窯口の半分以上を土と石で閉じ、下部に雑木をくべて着火する(口焚き)。口焚きを始めると、最初は水分を含んだ白い煙がどんどん出ていき、酸味のある強い臭いに変わっていく。この煙の色と匂いを確認後、小さな穴を数カ所残し、それ以外は窯口をすべて閉じて、約7~10日間ゆっくり蒸し焼きにする(炭化)。このときの窯内は約300℃の低温を維持する。炭化後、窯口を次第にあけて空気を送り、炭材の樹皮を燃やして赤熱させる(ねらし)。このとき、窯の温度は800~1200℃に達する。ねらしの後、手前の炭から少しずつ窯から出し、素灰をかけてゆっくりと冷ます。備長炭は太さや形によって割、半丸、細丸、小丸、上小丸などに分類される。
【0005】
カーボンブラックは一般にフィリップス社が開発した芳香族炭化水素油を原料とした不完全燃焼法であるオイルファーネス法により製造される。カーボンブラックの生成反応は明確には解明されていないが、炭化水素が熱分解縮合反応によってカーボンブラック前駆体(多環芳香族炭化水素)を生じ、これから初期の炭素核が形成され、さらに核の衝突により大きな球状粒子となり、カーボンブラック凝集体となる。形成されたカーボンブラック粒子上への炭素質種の取り込みによる引き続く表面成長によってカーボンブラックが形成されると考えられる(非特許文献1)。
【0006】
先行技術として、木炭、竹炭、果実殻炭等の黒鉛類似の微結晶性炭素原料は、硝酸と過塩素酸又は硝酸と硫酸の酸化剤で、マイクロ波加熱をして、粒子径が5~10ナノメートルの微結晶炭素ナノ材料を得ている(特許文献1)。油浴の加熱方式では、微結晶性炭素を解離できないので、マイクロ波加熱は特殊なエネルギー源である。
【0007】
竹炭の炭末色素、分散剤(ポリジメチルシロキサン、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル)と水を含む分散溶媒(水、グリセリン、エタノール)からなるインクジェットインクが発明されている(特許文献2)。化学製品は食品添加物で有ってもなるべく使用しない方がよい。
【0008】
過硫酸塩とカーボンブラック粒子とを、中和するために必要な理論量以上の量の無機アルカリ存在下で、加温しながら液相酸化処理して酸化カーボンブラック粒子水分散体を製造する(特許文献3)。カーボンブラックは植物炭末色素でないので可食性の着色料ではない。
備長炭の粉末、いずれも食品添加物として認可されているセラック樹脂、ヒドロキシプロピルセルロース、エタノール、水、乳酸ナトリウムからなるインクジェットインキが発明されている(特許文献4)。しかし分散剤等の化学製品は食品添加物で有ってもなるべく使用しない方がよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2020―504068号公報
【特許文献2】特開2019―182942号公報
【特許文献3】特開2016―183244号公報
【特許文献4】特開2010―248313号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「新・炭素材料入門」炭素材料学会編、(株)リアライズ社(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、インクジェットプリンターにより、可食性インクを用いて、たまごの殻へ賞味期限等を印字する、みかんの皮に糖度等を印字する、薬の錠剤へ品名等を印字するなどが行われている。
植物炭末色素である備長炭粒子は、可食性着色料であり、錠剤等印字用のインクジェットプリンター向けインク素材として、また非可食性としての用途では水性インク用等の黒色水性インクとして、水分散性の良いインクの開発が望まれている。
【0012】
木炭、竹炭、果実殻炭等の黒鉛類似の微結晶性炭素原料は、硝酸と過塩素酸又は硝酸と硫酸の酸化剤で、マイクロ波加熱をして、粒子径が5~10ナノメートルの微結晶炭素ナノ材料を得ている。油浴の加熱方式では、微結晶性炭素を解離できないので、特殊なエネルギー源であるマイクロ波加熱を用いなければならない。
【0013】
竹炭の炭末色素、分散剤(ポリジメチルシロキサン、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル)と水を含む分散溶媒(水、グリセリン、エタノール)からなるインクジェットインクが発明されている。化学製品は食品添加物で有ってもなるべく使用しない方がよい。
【0014】
過硫酸塩とカーボンブラック粒子とを、中和するために必要な理論量以上の量の無機アルカリ存在下で、加温しながら液相酸化処理して酸化カーボンブラック粒子水分散体を製造する技術がある。カーボンブラックは植物炭末色素でないので可食性の着色料として使用できない。
【0015】
本発明は従来から問題であった点を解決するためになされたものである。すなわち、食品添加物である次亜塩素酸ナトリウム殺菌料を用いて、食品添加物の備長炭粒子の着色料を処理して可食性水分散性黒色インクを得る
【課題を解決するための手段】
【0016】
湿式粉砕された備長炭粒子において、室温で次亜塩素酸ナトリウム水溶液にて殺菌処理し可食性水分散性黒色インクとして用いる備長炭粒子である。
備長炭粒子は湿式ビーズミル(ビーズ径0.5mm、分散剤無添加)を用いて粉砕し、スプレードライヤーにより乾燥させ、ジェットミルにより乾式粉砕した。粒度分布は、静的光散乱法により、マイクロトラック社製粒度分布測定装置MT31002を用いて測定した。平均粒子径は0.409μm、最大粒子径1.945μm、最小粒子径0.111μm、標準偏差0.189μmであった。
【0017】
湿式粉砕された備長炭粒子において、室温から100℃までの温度で次亜塩素酸ナトリウム水溶液にて処理し水分散性黒色インクとして用いる備長炭粒子である。
【0018】
湿式粉砕された備長炭粒子において、次亜塩素酸ナトリウム水溶液にて処理し水分散性黒色インクとしてインクジェットプリンターに用いる上記記載の備長炭粒子である。
インクジェットプリンターのインクの平均粒子径は10μm以下、0.01μm以上が望ましい。10μmより大きいと十分な分散に時間がかかり過ぎる。また0.01μmよりも小さいと、印字濃度の低下という不具合を生じる。
備長炭粒子を次亜塩素酸ナトリウム水溶液で所定時間処理したのち、遠心分離機、デカンテーション、フィルターろ過、限外濾過で精製し、残留次亜塩素酸ナトリウムを除去し、その後、エバポレーター、スプレードライにより乾燥させ、乳鉢あるいはジェットミルにより粉砕して処理備長炭粒子を得る。
殺菌処理に使用した次亜塩素酸ナトリウムの除去は限外ろ過法にて行った。限外ろ過は、旭化成製マイクローザACP-1053D(膜材質:ポリアクリロニトリル、分画分子量13,000)を用いて、透過ろ液の電導度(mS/cm)が精製水と同程度になるまでろ過を実施した(ろ過前の電導度7.7mS/cm程度、精製水の電導度0.9mS/cm程度)。
【0019】
粉砕は、祖粉砕機、中間粉砕機、微粉砕機を使って行われる。祖粉砕機には、固定板と稼働板の間に原料を噛み込んで強力な圧縮力で破砕する機械ジョークラッシャーがある。 中間粉砕機には、SAGミル(Semi-Autogenous Grinding mill、準自主粉砕)があり、大きな石と鉄のボールの両方を用いて粉砕する。ドラムの回転により、中の大きな石と鉄のボールが投げ上げられ、物体と衝突して粉砕される。摩擦によってさらに小さな粒径になる。
微粉砕機は、ビーズを使って粉体をナノ分散・微粉砕する媒体撹拌粉砕機である。粉砕室(ヘッセル)中にスラリーとビーズ(メディア)を入れ、撹拌機構で高速回転して遠心力によってビーズにエネルギーを付与し、砕料粒子をずり応力、せん断応力、摩擦力、衝撃力によって粉砕する。100~150μm程度の粉体を1~数μmに粉砕でき、近年では、マイクロビーズの登場により数nmまでの微粒子化が実現可能である。湿式と乾式がある。
通常上記方法を組み合わせて粉砕される。
【発明の効果】
【0020】
湿式粉砕した備長炭粒子を次亜塩素酸ナトリウム水溶液で殺菌処理し、残留薬剤を完全に除去して、水分散性の良い備長炭粒子を得た。この粒子は食品添加物の植物炭末色素の規格である炭素含有量90パーセント以上で有った。
【0021】
前記備長炭粒子を水に分散せて可食性インクとしてインクジェットプリンターで卵の殻に賞味期限等、ミカンの皮に糖度等を、食品に直接印字することができる。また薬の錠剤などにも直接品名等を印字することができる。
食品添加物の植物炭末色素の規格である炭素含有量90パーセント以下の場合は、水性インクとして水性のサインペン等に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施例を以下に示す。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0023】
次亜塩素酸ナトリウム5水和物(富士フィルム和光純薬(株)製、有効塩素39パーセント)10グラム、備長炭粒子4.00グラム、蒸留水100mL、塩素濃度2.10重量パーセント、室温で7時間、撹拌し殺菌処理した。
この処理液を遠心分離後、0・2μmフィルターでろ過した。収率は94.5パーセントであった。カルボン酸含有量は930μmol/g、炭素含有量、測定値(補正値)は71.9パーセント(79.0パーセント)であった。72時間後の沈降試験では沈降していなかった。この段階で沈降しなかった試料は3か月経過後も沈降が起こらなかった。
ここで、カルボン酸含有量は、備長炭粒子0.2グラムを秤量し、0.1N炭酸水素ナトリウム水溶液を5mL加えて、6時間常温にて撹拌した。その後、ろ過して備長炭粒子を除いた液を0.01N塩酸で滴定した。滴定に要した0.01N塩酸量をカルボン酸含有量とした。
炭素含有量(補正値)は、クリタ分析センターへ依頼し、燃焼―ガスクロマトグラフ法により、炭素水素分析を行い、炭素含有量とした。補正値は、前記測定結果から水分含有量、灰分量を引き、食品添加物既存化合物「植物炭末色素」の規格である炭素含有量を算出し補正値とした。
沈降試験は、備長炭粒子試料2グラムと蒸留水38グラムを混合し、ホモジナイザー(株式会社エスエムティ製PH91)で、室温にて、回転数15,000回/分、15分間撹拌したのち、試料瓶に入れ、室温で静置して、72時間後、沈降状況を目視観察した。
【実施例0024】
次亜塩素酸ナトリウム5水和物(富士フィルム和光純薬(株)製、有効塩素39パーセント)5グラム、備長炭粒子4.89グラム、蒸留水100mL、塩素濃度1.05重量パーセント、室温で2時間、撹拌し殺菌処理した。
この液を遠心分離後、0・2μmフィルターでろ過した。収率は90.4パーセントであった。カルボン酸含有量は420μmol/g、72時間後の沈降試験では沈降していなかった。この段階で沈降しなかった試料は3か月経過後も沈降が起こらなかった。
【実施例0025】
次亜塩素酸ナトリウム5水和物(富士フィルム和光純薬(株)製、有効塩素39パーセント)3グラム、備長炭粒子4.87グラム、蒸留水100mL、塩素濃度0.63重量パーセント、室温で1.5時間、撹拌し殺菌処理した。
この液を遠心分離後、0・2μmフィルターでろ過した。収率は86.0パーセントであった。カルボン酸含有量は320μmol/g、炭素含有量、測定値(補正値)は83.9パーセント(90.9パーセント)であった。72時間後の沈降試験では沈降していなかった。この段階で沈降しなかった試料は3か月経過後も沈降が起こらなかった。
(参考例1)
【0026】
ペルオキソ2硫酸ナトリウム(過硫酸ナトリウム)(富士フィルム和光純薬(株)製)5グラム、備長炭粒子5.06グラム、蒸留水100mL、50~55℃で4時間、撹拌し処理した。
この液を遠心分離後、0・2μmフィルターでろ過した。収率は91.0パーセントであった。カルボン酸含有量は590μmol/gであった。72時間後の沈降試験では沈降していなかった。この段階で沈降しなかった試料は3か月経過後も沈降が起こらなかった。
【実施例0027】
次亜塩素酸ナトリウム4パーセント水溶液(富士フィルム和光純薬(株)製)57グラム、備長炭粒子7.00グラム、蒸留水150mL、塩素濃度0.50重量パーセント、25~30℃で2時間、撹拌し処理した。
この液を遠心分離後、0・2μmフィルターでろ過した。収率は85.3パーセントであった。カルボン酸含有量は110μmol/gであった。72時間後の沈降試験では沈降していた。
【実施例0028】
次亜塩素酸ナトリウム4パーセント水溶液(富士フィルム和光純薬(株)製)57グラム、備長炭粒子7.00グラム、蒸留水150mL、塩素濃度0.50重量パーセント、45~50℃で2時間、撹拌し処理した。
この液を遠心分離後、0・2μmフィルターでろ過した。収率は87.1パーセントであった。カルボン酸含有量は130μmol/gであった。72時間後の沈降試験では沈降していなかった。この段階で沈降しなかった試料は3か月経過後も沈降が起こらなかった。
【実施例0029】
次亜塩素酸ナトリウム5水和物(富士フィルム和光純薬(株)製、有効塩素39パーセント)5グラム、備長炭粒子7.00グラム、蒸留水150mL、塩素濃度0.50重量パーセント、45~50℃で2時間、撹拌し処理した。
この液を遠心分離後、0・2μmフィルターでろ過した。収率は85.7パーセントであった。カルボン酸含有量は170μmol/gであった。72時間後の沈降試験では沈降していなかった。この段階で沈降しなかった試料は3か月経過後も沈降が起こらなかった。
【実施例0030】
次亜塩素酸ナトリウム5水和物(富士フィルム和光純薬(株)製、有効塩素39パーセント)5グラム、備長炭粒子5.00グラム、蒸留水50mL、塩素濃度1.0重量パーセント、25~30℃で2時間、撹拌し処理した。
この液を遠心分離後、0・2μmフィルターでろ過した。収率は89.0パーセントであった。カルボン酸含有量は400μmol/gであった。72時間後の沈降試験では沈降していなかった。この段階で沈降しなかった試料は3か月経過後も沈降が起こらなかった。
【実施例0031】
次亜塩素酸ナトリウム5水和物(富士フィルム和光純薬(株)製、有効塩素39パーセント)140グラム、備長炭粒子75グラム、蒸留水1,600mL、塩素濃度1.9重量パーセント、95~99℃で4時間、撹拌し処理した。
この液を限外ろ過(旭化成(株)製マイクローザACP-1053D)後、エバポレーターで水を留去し、得られた処理備長炭粒子を乳鉢にて粉砕した。カルボン酸含有量は450μmol/gであった。炭素含有量、測定値(補正値)は79.3パーセント(86.3パーセント)であった。72時間後の沈降試験では沈降していなかった。この段階で沈降しなかった試料は3か月経過後も沈降が起こらなかった。
【実施例0032】
次亜塩素酸ナトリウム5水和物(富士フィルム和光純薬(株)製、有効塩素39パーセント)550グラム、備長炭粒子1,000グラム、蒸留水20,000mL、塩素濃度0.6重量パーセント、40~45℃で3時間、撹拌し処理した。
この液を限外ろ過(旭化成(株)製マイクローザACP-1053D)後、スプレードライにて乾燥させた後、得られた処理備長炭粒子をジェットミルで粉砕した。カルボン酸含有量は180μmol/gであった。炭素含有量、測定値(補正値)は83.4パーセント(90.0パーセント)であった。72時間後の沈降試験ではわずかに沈降していた。
(比較例1)
【0033】
未処理の備長炭粒子のカルボン酸量は70μmol/gで、炭素含有量、測定値(補正値)は85.5パーセント(92.8パーセント)であった。72時間後の沈降試験では沈降し、水と分離した。
上記実施例1~7、比較例1の結果を表1にまとめて示す。
また、実施例8、9の結果を表2に示す。
【産業上の利用可能性】
【0034】
上述したように、この発明に係る次亜塩素酸ナトリウムで殺菌処理し残留薬剤を除去した備長炭粒子は水分散性が良くインクジェットプリンターの可食性黒色インクとして用いることができる。従って、卵の殻、ミカンの皮、薬の錠剤に直接このインクで印字できる。