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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135424
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】塗工紙および紙製緩衝体
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/20 20060101AFI20240927BHJP
   D21H 27/10 20060101ALI20240927BHJP
   D21H 19/58 20060101ALI20240927BHJP
   D21H 19/82 20060101ALI20240927BHJP
   D21H 19/22 20060101ALI20240927BHJP
   B65D 81/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
D21H19/20 A
D21H27/10
D21H19/58
D21H19/82
D21H19/22
B65D81/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046096
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】和田 歩
(72)【発明者】
【氏名】吉田 義雄
(72)【発明者】
【氏名】水本 陽司
【テーマコード(参考)】
3E066
4L055
【Fターム(参考)】
3E066AA22
3E066CA03
3E066LA01
4L055AG63
4L055AG71
4L055AH02
4L055AJ04
4L055BE09
4L055EA07
4L055EA12
4L055EA14
4L055EA32
4L055FA30
4L055GA05
(57)【要約】
【課題】実用的な緩衝材とすることができる塗工紙と、この塗工紙からなる紙製緩衝体を提供すること。
【解決手段】紙基材上に、ガスバリア層、ヒートシール層をこの順で有し、前記紙基材のKES法によるMD方向の曲げのヒステリシス2HBが、0.001g・cm/cm以上0.5g・cm/cm以下であり、前記ガスバリア層が、アクリル系樹脂を含有し、アクリル系樹脂100重量部に対する顔料の配合が20重量部以下であり、塗工量が3g/m以上であり、全体としての王研式透気抵抗度が10万秒以上である塗工紙と、この塗工紙からなり、気体が封入されている紙製緩衝体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材上に、ガスバリア層、ヒートシール層をこの順で有し、
前記紙基材のKES法によるMD方向の曲げのヒステリシス2HBが、0.001g・cm/cm以上0.5g・cm/cm以下であり、
前記ガスバリア層が、アクリル系樹脂を含有し、アクリル系樹脂100重量部に対する顔料の配合が20重量部以下であり、塗工量が3g/m以上であり、
全体としての王研式透気抵抗度が10万秒以上であることを特徴とする塗工紙。
【請求項2】
前記ガスバリア層が、スチレン-アクリル系共重合体を含有することを特徴とする請求項1に記載の塗工紙。
【請求項3】
前記ヒートシール層が、スチレン-アクリル系共重合体を含有することを特徴とする請求項1に記載の塗工紙。
【請求項4】
前記ガスバリア層とヒートシール層が、いずれも全体に対する顔料の配合割合が1重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の塗工紙。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の塗工紙からなり、気体が封入されていることを特徴とする紙製緩衝体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工紙と、この塗工紙からなる紙製緩衝体に関する。
【背景技術】
【0002】
柔軟なプラスチック製フィルムを袋状とし、内部に空気を封入したエアー緩衝体が、例えば製品を運送する際に衝撃等から保護するために用いられている。エアー緩衝体は、軽量で安価であり、また、使用後は孔を開けて空気を抜けば大幅に減容することができ、廃棄コストを抑えることができるため、広く用いられている。
一方、近年、プラスチック廃棄物や地球温暖化等の環境問題に端を発して脱石油、脱プラスチックの風潮が高まっており、工業製品における化石資源に由来する樹脂材料や非生分解性の樹脂材料の使用量を極力低減することが望まれている。そして、プラスチックの代替材料として紙が注目されている。
【0003】
紙を用いた緩衝材料として、特許文献1には、紙基材の一面に水溶性のポリビニルアルコール層を積層した緩衝部材用ラミネート紙が提案されている。特許文献1の緩衝部材用ラミネート紙は、リサイクル性、生分解性には優れているが、空気が抜けやすく、使用直前に空気を封入する必要があり、また、ヒートシール強度に劣るため衝撃を受けた際に破れやすいものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-262935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、実用的な緩衝材とすることができる塗工紙と、この塗工紙からなる紙製緩衝体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
1.紙基材上に、ガスバリア層、ヒートシール層をこの順で有し、
前記紙基材のKES法によるMD方向の曲げのヒステリシス2HBが、0.001g・cm/cm以上0.5g・cm/cm以下であり、
前記ガスバリア層が、アクリル系樹脂を含有し、アクリル系樹脂100重量部に対する顔料の配合が20重量部以下であり、塗工量が3g/m以上であり、
全体としての王研式透気抵抗度が10万秒以上であることを特徴とする塗工紙。
2.前記ガスバリア層が、スチレン-アクリル系共重合体を含有することを特徴とする1.に記載の塗工紙。
3.前記ヒートシール層が、スチレン-アクリル系共重合体を含有することを特徴とする1.または2.に記載の塗工紙。
4.前記ガスバリア層とヒートシール層が、いずれも全体に対する顔料の配合割合が1重量%以下であることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の塗工紙。
5.1.~4.のいずれかに記載の塗工紙からなり、気体が封入されていることを特徴とする紙製緩衝体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の塗工紙は、屈曲時のバリア性の低下が小さい。そのため、この塗工紙からなる本発明の紙製緩衝体は、空気が抜けにくく、長期間に亘って保管することができる。
本発明の塗工紙は、ヒートシール強度に優れている。そのため、この塗工紙からなる本発明の紙製緩衝体は、衝撃を受けても破れにくく、緩衝体としての実用性を備えている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
・塗工紙
本発明の塗工紙は、紙基材上に、ガスバリア層、ヒートシール層をこの順で有し、
紙基材のKES法によるMD方向の曲げのヒステリシス2HBが、0.001g・cm/cm以上0.5g・cm/cm以下であり、
ガスバリア層が、アクリル系樹脂を含有し、アクリル樹脂100重量部に対する顔料の配合が20重量部以下であり、塗工量が3g/m以上であり、
全体としての王研式透気抵抗度が10万秒以上である。
【0009】
なお、KES法とは、Kawabata Evaluation Systemの略称であり、不織布や布帛等の柔軟なものの物性を測定するための方法の一つであり、引張特性、曲げ特性、せん断特性を客観評価することができる。KES法による曲げのヒステリシス2HBは、例えば、カトーテック株式会社製の自動化純曲げ試験機KES-FB2-Sにより測定することができる。曲げ特性である曲げのヒステリシス2HBは、曲げ変形時の曲げモーメント(M)と曲率(K)の関係から算出することができる。曲げのヒステリシス2HBは、曲げて戻すときの曲げモーメントの差を表し、M-Kカーブの往復時の差から算出される。また、曲げ特性である曲げ剛性Bは、曲率(K)の増加に対する曲げモーメント(M)の増加、すなわちM-Kカーブの傾きから算出される。
【0010】
(紙基材)
本発明の紙基材は、KES法によるMD方向の曲げのヒステリシス2HBが0.001g・cm/cm以上0.5g・cm/cm以下である。ヒステリシス2HBは、値が小さいほど曲げた後に元に戻りやすいことを示す。このヒステリシス2HBが0.001g・cm/cm以上0.5g・cm/cm以下である紙基材は、加工性に優れるとともに、加工時や衝撃を受けた際にバリア層が割れにくいため、バリア性が低下しにくい。本発明の紙基材において、このヒステリシス2HBは、0.002g・cm/cm以上であることが好ましく、0.004g・cm/cm以上であることがより好ましく、0.006g・cm/cm以上であることがさらに好ましく、0.008g・cm/cm以上であることがよりさらに好ましく、また、0.46g・cm/cm以下であることが好ましく、0.42g・cm/cm以下であることがより好ましく、0.38g・cm/cm以下であることがさらに好ましい。
【0011】
紙基材は、KES法によるMD方向の曲げ剛性Bが0.2g・cm/cm以上1.5g・cm/cm以下であることが好ましい。曲げ剛性Bは、値が小さいほど柔らかいことを示す。この曲げ剛性Bが0.2g・cm/cm以上1.5g・cm/cm以下であると、紙基材の柔軟性と強度とのバランスが良く、加工性、エアー封入性に優れるとともに、バリア性が低下しにくい。
紙基材は、坪量が20g/m以上80g/m以下であることが、曲げのヒステリシス2HBを本発明の範囲内に調整しやすいため好ましい。
紙基材は、厚さが15μm以上60μm以下であることが、曲げのヒステリシス2HBを本発明の範囲内に調整しやすいため好ましい。
【0012】
本発明において、紙基材は、上記したKES法によるMD方向の曲げのヒステリシス2HBが0.001g・cm/cm以上0.5g・cm/cm以下であること以外は特に制限されず、公知の材を用いた公知の方法により得ることができる。ただし、柔軟な紙基材が得られやすい点から、製紙用繊維として広葉樹パルプを50重量%以上含むことが好ましい。
【0013】
(ガスバリア層)
ガスバリア層は、ガスバリア性を付与する層であり、本発明の塗工紙を袋状の紙製緩衝体としたときに空気の抜けを防止する。
本発明において、ガスバリア層は、アクリル系樹脂を含有し、アクリル系樹脂100重量部に対する顔料の配合が20重量部以下であり、片面あたりの塗工量(乾燥重量)が3g/m以上の塗工層である。なお、ガスバリア層と後述するヒートシール層は、塗工により形成されるが、塗工層とラミネート層とは、その断面を顕微鏡等で観察することにより判別することができる。
【0014】
アクリル系樹脂としては、アクリル系単量体の共重合割合が50モル%以上である樹脂である。アクリル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。アクリル系樹脂は、アクリル系単量体のみからなる重合体でもよく、他のモノマーを含む共重合体でもよい。共重合体としては、例えば、スチレン-アクリル系共重合体、エチレン-アクリル系共重合体等が挙げられる。
【0015】
ガスバリア層は、乾燥重量で、アクリル系樹脂100重量部に対して20重量部以下の顔料を含むことができる。顔料は任意であり、含まないこともできる。
顔料としては、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコアーシェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。これらの中で、ガスバリア性の点から、平均粒子径が3μm以上且つアスペクト比が10以上の扁平顔料であることが好ましく、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が30以上の扁平顔料であることがより好ましい。なお、本明細書において、平均粒子径とは体積50%平均粒子径(D50)を意味する。
【0016】
顔料の配合量が多いほどガスバリア性は向上するが、耐屈曲性が低下して加工時等にバリア層が割れやすくなる。そのため、ガスバリア層における顔料の配合量は、乾燥重量で、アクリル系樹脂100重量部に対して、16重量部以下が好ましく、12重量部以下がより好ましく、8重量部以下がさらに好ましく、4重量部以下がよりさらに好ましく、2重量部以下がよりさらに好ましく、1重量部以下がよりさらに好ましい。なお、顔料は任意であり、含まないこともできる。
ガスバリア層には、アクリル系樹脂、顔料の他、架橋剤、界面活性剤、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料等の通常使用される各種助剤を使用することができる。
【0017】
ガスバリア層は、本発明の効果を損なわない範囲内において、アクリル系樹脂ではない他のガスバリア性樹脂を含むことができる。他のガスバリア性樹脂としては、例えば、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、エチレン共重合ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール系樹脂、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパクなどのタンパク質類、酸化澱粉、カチオン化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムなどを例示することができる。ただし、本発明において、ガスバリア層は、ガスバリア性樹脂全体に対して、アクリル系樹脂を60重量%以上含むことが好ましく、80重量%以上含むことがより好ましく、90重量%以上含むことがさらに好ましく、95重量%以上含むことがよりさらに好ましく、98重量%以上含むことがよりさらに好ましく、99重量%以上含むことがよりさらに好ましい。
【0018】
ガスバリア層の塗工量は、乾燥重量で片面あたり3g/m以上である。ガスバリア層の塗工量が3g/m未満では、ガスバリア性が不足し、経時で注入した空気が抜けやすくなる。ガスバリア層の乾燥重量で片面あたりの塗工量は、5g/m以上が好ましく、7g/m以上がより好ましい。ガスバリア層の乾燥重量で片面あたりの塗工量の上限は特に制限されないが、ガスバリア性がそれ以上はほとんど向上せず飽和するとともに、高コストとなるため、20g/m以下程度が好ましい。ガスバリア層は、1層であってもよく、2層以上の多層で構成してもよい。ガスバリア層を2層以上の多層で構成することにより、単層の場合と比較して塗工ムラ等の欠陥を少なくすることができる。ガスバリア層を2層以上の多層で構成する場合は、全てのガスバリア層を合計した乾燥重量を上記範囲とすることが好ましく、また、単層の乾燥重量の塗工量は2g/m以上であることが好ましい。
【0019】
(ヒートシール層)
ヒートシール層は、ヒートシール適性を付与する層であり、具体的には、加熱・加圧することで接着対象に接着することができる層である。
本発明の塗工紙は、ヒートシール適性を有することにより、袋状の紙製緩衝体に加工が可能であるとともに、密封性の確保などが容易となる。
【0020】
ヒートシール層は、ガスバリア層上に、塗工により設けられる。
ヒートシール層が含む熱可塑性樹脂は特に制限されず、スチレン-アクリル系共重合体、アクリル系樹脂、エチレン-アクリル系共重合体、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂等のヒートシール用途に用いられる熱可塑性樹脂を特に制限することなく使用することができる。
これらの中で、ヒートシール層が塗工されるガスバリア層との密着性に優れるため、スチレン-アクリル系共重合体、アクリル系樹脂、エチレン-アクリル系共重合体が好ましく、スチレン-アクリル系共重合体がより好ましい。また、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)等の生分解性樹脂が、ゴミとして流出した場合の環境負荷軽減の点から好ましい。
【0021】
ヒートシール層は、アンチブロッキング剤、シランカップリング剤等の添加剤を含むことができる。アンチブロッキング剤としては、顔料、ワックス、金属石鹸等を特に制限することなく使用することができる。ただし、本発明の軟包装材用紙において、コストの点から、ヒートシール層は添加剤を含まないことが好ましい。
【0022】
ヒートシール層の塗工量は、乾燥重量で片面あたり3g/m以上20g/m以下であることが好ましい。乾燥重量が3g/m未満では、ヒートシール適性が不足する場合がある。また、乾燥重量が20g/mを超えてもヒートシール適性はほとんど向上せず、コストが増加する。ヒートシール層は、1層であってもよく、2層以上の多層で構成してもよい。ヒートシール層を2層以上の多層で構成することにより、単層の場合と比較して塗工ムラ等の欠陥を少なくすることができる。ヒートシール層を2層以上の多層で構成する場合は、全てのヒートシール層を合計した乾燥重量を上記範囲とすることが好ましく、また、単層の乾燥重量の塗工量は2g/m以上であることが好ましい。
【0023】
ガスバリア層とヒートシール層の塗工方法は特に限定されるものではなく、公知の塗工装置および塗工系で塗工することができる。例えば、塗工装置としてはブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーター等が挙げられる。
塗工系としては、水等の溶媒を使用した水系塗工、有機溶剤等の溶媒を使用した溶剤系塗工のいずれでもよいが、安全衛生上の観点から水系塗工であることが好ましい。水系塗工する場合、ガスバリア層が含むアクリル系樹脂、およびヒートシール層が含む熱可塑性樹脂としては、水分散性樹脂または水溶性樹脂であることが好ましい。
【0024】
本発明の塗工紙は、紙基材上に、ガスバリア層、ヒートシール層をこの順で有する。
本発明の塗工紙は、紙基材とガスバリア層との間、およびガスバリア層とヒートシール層との間に、目止め層、インク受容層、耐水層、耐油層、水蒸気バリア層等の他の層を有していてもよい。
【0025】
・紙製緩衝体
本発明の塗工紙は、周縁をヒートシールして袋状とし、空気を封入することにより紙製緩衝体となる。紙製緩衝体の形状としては、いわゆる縦ピロー包装袋、横ピロー包装袋、サイドシール袋、二方シール袋、三方シール袋、四方シール袋等の公知の袋状包装体の形状とすることができる。
【実施例0026】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部及び%は、それぞれ重量部、重量%を示す。
得られた塗工紙と紙製緩衝体について、以下に示す様な評価方法に基づいて試験を行った。結果を表1に示す。
【0027】
(評価方法)
・KES法による2HB、B
カトーテック株式会社製のKES式純曲げ試験機(KES-FB2-S)を用いて、長さ100mm×100mmの試料を、クランプ幅1.0cmで把持し、曲げスピード0.5cm-1/sec、最大曲率2.5cm-1の条件にて測定した。
曲率1.0(表曲げ)と曲率-1.0(裏曲げ)の2か所について往復時の曲げモーメントの差を測定し、その平均値を曲げのヒステリシス2HBとした。
曲率0.5~1.5(表曲げ)、-0.5~-1.5(裏曲げ)の範囲の2箇所のM-Kカーブを測定し、その平均値をMD方向の曲げ剛性Bとした。
【0028】
・坪量、塗工量
坪量は、JIS P 8124に準拠し測定した。
また、塗工前後の坪量を測定し、これらの差から塗工量(g/m)を算出した。
・透気度(王研式透気抵抗度)
作製した塗工紙について、王研式透気度・平滑度試験機(旭精工社製)を用いて、JAPAN TAPPI No.5に基づいて透気度(王研式透気抵抗度)を測定した。
【0029】
・ヒートシール適性
得られた塗工紙から1辺100mmの正方形の試験片を2枚切り出し、塗工層同士を接触させて、加圧温度130℃、加圧圧力2kgf/cm、加圧時間0.5秒でヒートシールした。ヒートシールされた試験片を15mm幅にカットし、引張試験機を用いて、引張速度200mm/minで剥離した際の最大荷重をヒートシール強度とした。
また剥離性については、ヒートシールした試験片を手で剥離させた際の、剥離部分を目視で観察し、以下の基準でヒートシール適性を評価した。評価が〇△であれば実用上問題がない。
[評価基準]
〇:紙基材内で剥離する(紙基材が破壊される)。
△:大部分が紙基材内で剥離する(紙基材が破壊される)。
×:塗工層間で剥離する。
【0030】
・荷重試験
自社製、加圧強度試験治具を使用し、荷重を加え、空気の抜けを評価した。この加圧強度試験治具は、金属板を上下方向のみに移動できるように固定したものであり、金属板の重さ、枚数等により所定の荷重を付与することができる。
緩衝体を平置きし、その上に150gの金属板を載せ、24時間ごとに金属板の高さを測定し、試験開始時と比較してその高さが30%以下になるまでの日数を測定した。
【0031】
・リサイクル性
得られた塗工紙から1辺40mmのサンプルを切り出し、各サンプルについてTAPPI離解機を用いて、濃度2.5重量%、40℃水、10min、3000rpmで離解したときの離解の程度を評価した。
[評価基準]
○:パルプ繊維が分散して離解性が良好である。
×:パルプ繊維の塊や結束が残り離解性が不良である。
【0032】
[実施例1]
紙基材(日本製紙株式会社製、坪量38.5g/m、LBKP100%)の片面に、スチレン-アクリル系共重合体エマルジョン1(トーヨーケム株式会社製、商品名:FILLHARMO GS411、塗工濃度:38%)を、目標塗工量が固形分で8.0g/mとなるように片面に塗工し、風乾で乾燥させガスバリア層を形成した。ついで、ガスバリア層の上にスチレン-アクリル系共重合体エマルジョン2(第一塗料株式会社製、商品名:ハービルHS-1、塗工濃度:40%)を、目標塗工量が固形分で10.0g/mとなるように塗工し風乾で乾燥させてヒートシール層を形成し、塗工紙を得た。
得られた塗工紙から1辺200mmの正方形の試験片を切り出し、塗工面が内側になるように半分(200mm×100mm)に折り畳んだ。開放されている3辺を、短辺の折り曲げ側5mm程を残して、加圧温度130℃、加圧圧力2kgf/cm、加圧時間0.5秒で幅5mmでヒートシールした。ヒートシールしていない隙間から空気を300mL注入した後、この隙間を半田ごてを用いてシールし、紙製緩衝体を得た。
【0033】
[実施例2]
ガスバリア層を目標塗工量が固形分で6.0g/mとなるように塗工した以外は、実施例1と同様にして、塗工紙と紙製緩衝体を得た。
[実施例3]
ガスバリア層を目標塗工量が固形分で4.0g/mとなるように塗工した以外は、実施例1と同様にして、塗工紙と紙製緩衝体を得た。
[比較例1]
ガスバリア層を目標塗工量が固形分で2.0g/mとなるように塗工した以外は、実施例1と同様にして、塗工紙と紙製緩衝体を得た。
[比較例2]
ガスバリア層を形成しない(塗工量0g/m)以外は、実施例1と同様にして、塗工紙と紙製緩衝体を得た。
【0034】
[実施例4]
紙基材(日本製紙株式会社製、坪量48g/m、LBKP100%)を用いた以外は、実施例1と同様にして、塗工紙と紙製緩衝体を得た。
[比較例3]
紙基材(坪量63g/m、LBKP100%、日本製紙株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、塗工紙と紙製緩衝体を得た。
【0035】
[実施例5]
ガスバリア層を形成する塗料に、スチレン-アクリル系共重合体100重量部に対して、カオリン(白石工業株式会社製、平均粒子径3.6μm、アスペクト比10~15)を乾燥重量で15重量部配合した以外は、実施例1と同様にして、塗工紙と紙製緩衝体を得た。
[比較例4]
ガスバリア層を形成する塗料に、スチレン-アクリル系共重合体100重量部に対して、カオリンを乾燥重量で25重量部配合した以外は、実施例5と同様にして、塗工紙と紙製緩衝体を得た。
[比較例5]
ガスバリア層を形成する塗料に、スチレン-アクリル系共重合体100重量部に対して、カオリンを乾燥重量で50重量部配合した以外は、実施例5と同様にして、塗工紙と紙製緩衝体を得た。
【0036】
[比較例6]
ガスバリア層にPVA系樹脂1(日本酢ビ・ポバール株式会社製、商品名:JP-05)を用いた以外は、実施例1と同様にして、塗工紙と紙製緩衝体を得た。
[比較例7]
ガスバリア層にPVA系樹脂2(クラレ株式会社製、商品名:5-95)を用いた以外は、実施例1と同様にして、塗工紙と紙製緩衝体を得た。
[参考例]
一般的に市販されているPEフィルムのエアー緩衝材(株式会社アスウィル、商品名:ACF100)を用いた。なお、この参考例については、ヒートシール適性の評価は実施していない。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
実施例1~3、比較例1、2の結果より、ガスバリア層の塗工量が多いほど空気が抜けにくいことが、実施例1、4、比較例3の結果より、紙基材の曲げのヒステリシス2HBが0.001g・cm/cm以上0.5g・cm/cm以下であることにより空気が抜けにくいことが確かめられた。
実施例1、5、比較例4、5の結果より、顔料を多く含む方がガスバリア性が向上するはずであるが、紙製緩衝体としたときに空気が抜けやすくなることが確かめられた。これは、顔料が多くなると折り加工等によりガスバリア層に割れが生じやすくなるためであると考えられる。
実施例1、比較例6、7より、アクリル系樹脂を含むガスバリア層は空気が抜けにくく、また、ヒートシール適性にも優れていた。