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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135429
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】通報システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 29/04 20060101AFI20240927BHJP
   G08B 29/06 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G08B29/04
G08B29/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046106
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【テーマコード(参考)】
5C087
【Fターム(参考)】
5C087AA02
5C087AA03
5C087BB02
5C087BB74
5C087CC02
5C087CC04
5C087CC22
5C087DD04
5C087DD28
5C087EE07
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF05
5C087GG57
5C087GG66
5C087GG84
(57)【要約】
【課題】信号線の状態及び発信装置の状態を監視することが可能となる通報システムを提供すること。
【解決手段】防災受信盤1から導出された第1信号線L11及び第2信号線L12の間に接続されている発信装置33を備える通報システム901であって、発信装置33は、第1信号線L11及び第2信号線L12各々に接続された第1接点431及び第2接点432を有し、所定操作が行われた場合に第1接点431及び第2接点432の間を短絡する常開スイッチ装置43と、第1抵抗44と、第2抵抗45と、を備え、通報システム901は、第1信号線L11及び第2信号線L12の相互間に電圧が供給された場合に第1信号線L11及び第2信号線L12を流れる電流に基づいて、第1信号線L11及び第2信号線L12の状態及び発信装置33の状態を監視する監視部、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位装置から導出された一対の信号線の間に接続されている発信装置を備える通報システムであって、
前記発信装置は、
前記一対の信号線各々に接続された一対の接点を有し、所定操作が行われた場合に前記一対の接点の間を短絡する常開スイッチ装置と、
前記一対の接点における一方の接点と、前記一対の信号線における一方の信号線との間に接続される第1抵抗と、
前記一対の信号線の相互間に接続される第2抵抗であって、前記常開スイッチ装置の前記一対の接点間に対して並列に接続される前記第2抵抗と、を備え、
前記通報システムは、
前記一対の信号線の相互間に電圧が供給された場合に前記一対の信号線を流れる電流に基づいて、前記一対の信号線の状態及び前記発信装置の状態を監視する監視手段、を備える、
通報システム。
【請求項2】
電流測定手段と、
前記電流測定手段が前記一対の信号線に流れる電流を測定可能又は測定不可能となるように、前記電流測定手段と前記一対の信号線との間の接続状態を切り替える第1切替手段と、
前記一対の信号線を介して前記発信装置に供給される電圧の極性が切り替わるように、前記一対の信号線の接続状態を切り替える第2切替手段と、を備え、
前記発信装置は、
前記第2抵抗に直列に接続される制限素子であって、自己を介して第1方向へ電流が流れるのを抑止し、自己を介して前記第1方向とは反対の第2方向に電流が流れるのを抑止しない前記制限素子、を備え、
相互に直列に接続されている前記第2抵抗及び前記制限素子は、前記一対の信号線の相互間に接続されており、且つ、前記常開スイッチ装置の前記一対の接点間に対して並列に接続されており、
前記電流測定手段は、
前記電流測定手段が前記一対の信号線に流れる電流を測定可能となるように前記第1切替手段が切り替えている場合において、前記一対の信号線を介して前記発信装置に第1極性の電圧が供給されるように前記第2切替手段が切り替えている場合に、前記一対の信号線を流れる第1電流を測定し、
前記電流測定手段が前記一対の信号線に流れる電流を測定可能となるように前記第1切替手段が切り替えている場合において、前記一対の信号線を介して前記発信装置に第2極性であって前記第1極性とは反対の前記第2極性の電圧が供給されるように前記第2切替手段が切り替えている場合に、前記一対の信号線を流れる第2電流を測定し、
前記監視手段は、前記電流測定手段が測定した前記第1電流及び又は前記第2電流に基づいて、前記一対の信号線の状態、前記発信装置の状態、及び前記一対の信号線に対する前記発信装置の接続状況の少なくとも何れかを監視する、
請求項1に記載の通報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、トンネル等に設けられている消火栓装置(例えば、特許文献1参照)に少なくとも一部の構成要素が収容されている発信装置が知られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-055073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、発信装置については、発信装置を動作させるための信号線が配線されており、この信号線の状態及び発信装置の状態を監視する技術が要望されていた。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、信号線の状態及び発信装置の状態を監視することが可能となる通報システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の通報システムは、上位装置から導出された一対の信号線の間に接続されている発信装置を備える通報システムであって、前記発信装置は、前記一対の信号線各々に接続された一対の接点を有し、所定操作が行われた場合に前記一対の接点の間を短絡する常開スイッチ装置と、前記一対の接点における一方の接点と、前記一対の信号線における一方の信号線との間に接続される第1抵抗と、前記一対の信号線の相互間に接続される第2抵抗であって、前記常開スイッチ装置の前記一対の接点間に対して並列に接続される前記第2抵抗と、を備え、前記通報システムは、前記一対の信号線の相互間に電圧が供給された場合に前記一対の信号線を流れる電流に基づいて、前記一対の信号線の状態及び前記発信装置の状態を監視する監視手段、を備える。
【0007】
また、請求項2に記載の通報システムは、請求項1に記載の通報システムにおいて、電流測定手段と、前記電流測定手段が前記一対の信号線に流れる電流を測定可能又は測定不可能となるように、前記電流測定手段と前記一対の信号線との間の接続状態を切り替える第1切替手段と、前記一対の信号線を介して前記発信装置に供給される電圧の極性が切り替わるように、前記一対の信号線の接続状態を切り替える第2切替手段と、を備え、前記発信装置は、前記第2抵抗に直列に接続される制限素子であって、自己を介して第1方向へ電流が流れるのを抑止し、自己を介して前記第1方向とは反対の第2方向に電流が流れるのを抑止しない前記制限素子、を備え、相互に直列に接続されている前記第2抵抗及び前記制限素子は、前記一対の信号線の相互間に接続されており、且つ、前記常開スイッチ装置の前記一対の接点間に対して並列に接続されており、前記電流測定手段は、前記電流測定手段が前記一対の信号線に流れる電流を測定可能となるように前記第1切替手段が切り替えている場合において、前記一対の信号線を介して前記発信装置に第1極性の電圧が供給されるように前記第2切替手段が切り替えている場合に、前記一対の信号線を流れる第1電流を測定し、前記電流測定手段が前記一対の信号線に流れる電流を測定可能となるように前記第1切替手段が切り替えている場合において、前記一対の信号線を介して前記発信装置に第2極性であって前記第1極性とは反対の前記第2極性の電圧が供給されるように前記第2切替手段が切り替えている場合に、前記一対の信号線を流れる第2電流を測定し、前記監視手段は、前記電流測定手段が測定した前記第1電流及び又は前記第2電流に基づいて、前記一対の信号線の状態、前記発信装置の状態、及び前記一対の信号線に対する前記発信装置の接続状況の少なくとも何れかを監視する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の通報システムによれば、一対の信号線の相互間に電圧が供給された場合に一対の信号線を流れる電流に基づいて、一対の信号線の状態及び発信装置の状態を監視することにより、例えば、信号線の状態及び発信装置の状態を監視することが可能となる。また、例えば、発信装置が第1抵抗及び第2抵抗を備えているので、発信装置の状態の変化に応じて、発信装置の電気的状態を変化させることが可能となるので、この電気的状態の変化を利用して発信装置の状態を確実に監視することが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の通報システムによれば、電流測定手段が測定した第1電流及び又は第2電流に基づいて、一対の信号線の状態、発信装置の状態、及び一対の信号線に対する発信装置の接続状況の少なくとも何れかを監視することにより、例えば、一対の信号線の状態、発信装置の状態、及び発信装置の接続状況の監視精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】通報システムを示すブロック図である。
図2】消火栓装置の正面図である。
図3】通報システムの回路図である。
図4】通報システムを流れる電流の説明図である。
図5】通報システムを流れる電流の説明図である。
図6】通報システムを流れる電流の説明図である。
図7】通報システムを流れる電流の説明図である。
図8】通報システムの回路図である。
図9】各切替状態での通報システムを流れる電流の説明図である。
図10】各切替状態での通報システムを流れる電流の説明図である。
図11】各切替状態での通報システムを流れる電流の説明図である。
図12】通報システムを流れる電流の説明図である。
図13】通報システムを流れる電流の説明図である。
図14】通報システムを流れる電流の説明図である。
図15】監視処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る通報システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、各実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
〔実施の形態の基本的概念〕
まずは、各実施の形態の基本的概念について説明する。各実施の形態は、概略的に、通報システムに関するものである。
【0013】
===通報システム===
「通報システム」とは、火災発生等の異常を通報するためのシステムであり、具体的には、通報を行うための各種配線又は各種機器を含んでいるシステムであり、例えば、上位装置から導出された一対の信号線の間に接続されている発信装置を備えるシステムである。なお、この「通報システム」については、例えば、発信装置以外の異常の通報に関連する各種要素(例えば、火災検知器に関する配線や機能等)を含むものと解釈してもよい。
【0014】
また、「通報システム」は、例えば、一対の信号線の状態、発信装置の状態、又は、一対の信号線に対する発信装置の接続状況等を監視することも可能となっているシステムである。
【0015】
===上位装置===
「上位装置」とは、発信装置に関する又は発信装置に基づく各種処理を行う装置であり、例えば、防災受信盤、あるいは、遠隔制御盤等を含む概念である。なお、この上位装置における、火災発生等の異常を通報するための要素又は機能等については、通報システムに属するものと解釈してもよい。
【0016】
===一対の信号線の状態===
「一対の信号線の状態」とは、一対の信号線の正常又は異常に関するありさまを示す概念であり、例えば、当該信号線の断線、断線の予兆、短絡、又は短絡の予兆等を含む概念である。
【0017】
「断線」とは、信号線の異常であり、例えば、信号線が切れることを示す概念である。また、「断線の予兆」とは、信号線の異常であり、例えば、信号線が断線する前ぶれに対応する概念であり、一例としては、信号線の劣化等により意図した電流が流れ難くなっている状態に対応する概念である。
【0018】
「短絡」とは、信号線の異常であり、例えば、意図していない位置同士が電気的に接続されること、又は、ショートすることに対応する概念である。「短絡の予兆」とは、信号線の異常であり、例えば、信号線が短絡する前ぶれに対応する概念であり、一例としては、信号線の絶縁抵抗が比較的大きく減少して意図していない大電流が流れ易くなっている状態に対応する概念である。
【0019】
===一発信装置の状態===
「発信装置の状態」とは、発信装置に関する電気的要素(配線や電気回路を含む)の正常又は異常に関するありさまを示す概念であり、例えば、電気的要素の断線、断線の予兆、短絡、又は短絡の予兆等を含む概念である。なお、断線、断線の予兆、短絡、又は短絡の予兆の定義は、上述と同様であるので、説明を省略する。
【0020】
また、「発信装置の状態」とは、発信装置の動作に関するありさま等を含む概念でもあり、例えば、異常を通報するための所定操作(例えば、通報ボタンを押下する操作等)等により、発信装置が異常を通報する状態であるか否か等を示す概念である。
【0021】
===一対の信号線に対する発信装置の接続状況===
「一対の信号線に対する発信装置の接続状況」とは、一対の信号線に対する発信装置の接続のありさまを示す概念であり、例えば、当該信号線に接続されている発信装置の個数等を示す概念である。
【0022】
そして、各実施の形態においては、「通報システム」がトンネルでの火災等の異常を通報するように構成されている場合を例示して説明する。
【0023】
〔実施の形態1〕
最初に、実施の形態1について説明する。
【0024】
(構成)
まず、本実施の形態の通報システムの構成について説明する。図1は、通報システムを示すブロック図であり、図2は、消火栓装置の正面図であり、図3は、通報システムの回路図である。なお、図1の防災受信盤1に接続される発信設備300の個数は任意であるが、図1に図示されているものに着目して説明する。また、図1においては、図3の一対の信号線である第1信号線L11及び第2信号線L12が、簡略化されて1本の線として図示されている。
【0025】
図1の通報システム901は、防災に関するシステムであり、例えば、トンネルでの火災等の異常を通報するためのシステムである。
【0026】
図1の通報システム901は、例えば、図1及び図3の防災受信盤1、発信設備300、図3の第1信号線L11、第2信号線L12、及び終端抵抗R1を備える。また、例えば、通報システム901における一部の構成要素は、図2の消火栓装置200に収容されている。
【0027】
なお、各図で具体的には不図示であるが、例えば、通報システム901、トンネル内の火災を検知する火災検知器、及び、その他のトンネル内の防災に関する各種構成要素を含むシステム(つまり、通報システム901の上位概念に対応するシステム)については、「防災システム」と称することとする。
【0028】
以下では、通報システム901における一部の各種構成要素を収容する消火栓装置200について説明した後に、通報システム901について説明する。
【0029】
(構成-消火栓装置)
図2の消火栓装置200は、火災を消火するための装置であり、例えば、図3の通報システム901における一部の各種構成要素(代表的には、発信設備300)を収容する装置であり、一例としては、トンネル内に設置されている装置である。
【0030】
消火栓装置200は、例えば、図2の筐体21、保守扉22、消火栓扉23、消火器扉24、及び通報ボタン25を備える。
【0031】
(構成-消火栓装置-筐体、保守扉、消火栓扉、消火器扉、通報ボタン)
図2の筐体21は、各種構成要素を収容する中空部を有するケースである。保守扉22及び消火栓扉23は、放水ホース及び放水に関する各種バルブ等が収容されている空間を開閉する扉である。消火器扉24は、消火器及び通報システム901の各種構成要素が収容されている空間を開閉する扉である。通報ボタン25は、火災等の異常を通報する際に通報者等によって押下(押圧)されるボタンである。
【0032】
なお、通報システム901における一部の各種構成要素については、上述の通り、消火器扉24によって開閉される空間に収容されていることとしてもよいし、保守扉22及び消火栓扉23によって開閉される空間に収容されていることとしてもよいし、あるいは、両空間に対して分けて収容されていることとしてもよい。
【0033】
また、実際には、消火栓装置200は、例えば、図1及び図2の発信設備300の個数に対応する個数(例えば同数)分だけ設けられており、各消火栓装置200が各発信設備300に関する構成要素を収容している。
【0034】
(構成-通報システム-防災受信盤)
図1の防災受信盤1は、発信設備300を管理する上位装置であり、図3の第1信号線L11及び第2信号線L12の一端側が接続されており、すなわち、当該第1信号線L11及び第2信号線L12が導出されている。図3の防災受信盤1は、例えば、第1信号線L11及び第2信号線L12を介して、発信設備300等に対して電圧及び電流を供給する装置である。防災受信盤1の具体的な構成は任意であり、公知の防災受信盤の構成を適用することができるので、本願における特徴的な構成についてのみ説明する。
【0035】
防災受信盤1は、例えば、図1の制御部11、及び図3の断線監視回路12を備える。
【0036】
(構成-通報システム-防災受信盤-制御部)
図1の制御部11は、防災受信盤1を制御する制御手段であり、例えば、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。
【0037】
この制御部11は、例えば、監視部として機能する。制御部11の「監視部」とは、例えば、一対の信号線の相互間に電圧が供給された場合に一対の信号線を流れる電流に基づいて、一対の信号線の状態及び発信装置の状態を監視する監視手段である。
【0038】
(構成-通報システム-防災受信盤-断線監視回路)
図3の断線監視回路12は、第1信号線L11及び第2信号線L12に対して電圧を供給することにより、通報システム901の各要素(代表的には、第1信号線L11、第2信号線L12、及び発信装置33)の電気抵抗に応じて電流を出力する機能を有する。また、断線監視回路12は、自己が出力して電流の値(つまり、通報システム901の各要素を流れる電流(消費電流)の合計値)を測定する電流測定機能も有する。
【0039】
また、本実施の形態では例えば、断線監視回路12は、図3の「+」と図示されている電極が正極(つまり、高電位となる電極)となり、「-」と図示されている電極が負極(つまり、低電位となる電極)となるように構成されていることとする(実施の形態2の同一名称の構成要素も同様)。
【0040】
(構成-通報システム-第1信号線、第2信号線)
図3の第1信号線L11及び第2信号線L12は、防災受信盤1の断線監視回路12から導出されている一対の信号線であり、例えば、導電線である。第1信号線L11及び第2信号線L12の一端側は、断線監視回路12に接続されており、第1信号線L11及び第2信号線L12の他端側は、終端抵抗R1を介して相互に接続されている。また、第1信号線L11及び第2信号線L12の相互間には、発信装置33が接続されている。
【0041】
(構成-通報システム-終端抵抗)
図3の終端抵抗R1は、第1信号線L11及び第2信号線L12における他端側に接続されて終端している電気抵抗である。
【0042】
(構成-通報システム-発信設備)
図1の発信設備300は、火災等の異常を通報するための設備であり、例えば、複数設けられている設備である。なお、図1の発信設備301、302の構成は相互に同様であるので、図3に示すように、発信設備301の構成要素に符号を付して説明する。
【0043】
図3の発信設備301は、例えば、第1接続端子31、第2接続端子32、及び発信装置33を備える。
【0044】
(構成-通報システム-発信設備-第1接続端子、第2接続端子)
図3の第1接続端子31及び第2接続端子32は、発信装置33を、第1信号線L1及び第2信号線L2に対して、いわゆるわたり配線に対応する接続方式で接続するための端子であり、一例としては、図2の消火栓装置200の筐体21内の空間に設けられている端子台に設けられている端子である。
【0045】
(構成-通報システム-発信設備-発信装置)
図3の発信装置33は、火災等の異常を通報するための装置であり、具体的には、異常を通報するための所定操作(例えば、発信装置33を収容している図2の消火栓装置200の通報ボタン25を押下する操作)が行われた場合に、図3の常開スイッチ装置43の状態が変化し、自己の電気的状態が変化するように構成されている。
【0046】
図3の発信装置33は、例えば、第1スイッチ端子41、第2スイッチ端子42、常開スイッチ装置43、第1抵抗44、第2抵抗45、及び制限素子46を備える。
【0047】
(構成-通報システム-発信設備-発信装置-第1スイッチ端子)
図3の第1スイッチ端子41は、発信装置33を第1信号線L11に接続するための端子であり、例えば、第1信号線L11に接続されている2個の第1接続端子31に配線を介して接続されている端子である。
【0048】
(構成-通報システム-発信設備-発信装置-第2スイッチ端子)
図3の第2スイッチ端子42は、発信装置33を第2信号線L12に接続するための端子であり、例えば、第2信号線L12に接続されている2個の第2接続端子32に配線を介して接続されている端子である。
【0049】
(構成-通報システム-発信設備-発信装置-常開スイッチ装置)
図3の常開スイッチ装置43は、異常を通報するための所定操作(単に「所定操作」とも称する)が行われた場合に発信装置33の電気回路の一部を短絡する装置であり、例えば、A接点に対応する装置である。
【0050】
常開スイッチ装置43の具体的な構成は任意であり、公知の構成を適用することができるが、図3に示すように例えば、第1接点431、第2接点432、及び常開スイッチ433を備える。
【0051】
(構成-通報システム-発信設備-発信装置-常開スイッチ装置-第1接点、第2接点)
第1接点431及び第2接点432は、一対の信号線である第1信号線L11及び第2信号線L12に接続された一対の接点である。
【0052】
常開スイッチ433は、常時は第1接点431と第2接点432との間を開放しており、所定操作が行われた場合に第1接点431と第2接点432との間を短絡する常開スイッチ部であり、例えば、導電性の部品である。
【0053】
(構成-通報システム-発信設備-発信装置-第1抵抗)
図3の第1抵抗44は、常開スイッチ装置43における第1接点431及び第2接点432の相互間の短絡(つまり、所定操作が行われたこと)を監視するための電気抵抗である。第1抵抗44は、第2接点432と第2スイッチ端子42との間に接続されており、すなわち、第2接点432と第2信号線L12との間に接続されている。
【0054】
(構成-通報システム-発信設備-発信装置-第2抵抗)
図3の第2抵抗45は、制限素子46の異常(例えば、整流作用の異常)等、又は、制限素子46のカソード側及びアノード側の相互間の短絡又は短絡の予兆等を監視ための電気抵抗である。第2抵抗45は、制限素子46と第2スイッチ端子42との間に接続されており、すなわち、第1信号線L11及び第2信号線L12の相互間に接続されており、また、常開スイッチ装置43の第1接点431及び第2接点432間に対して並列に接続されている。
【0055】
(構成-通報システム-発信設備-発信装置-制限素子)
図3の制限素子46は、自己を介して第1方向(第1スイッチ端子41側から第2スイッチ端子42側に向かう方向)へ電流が流れるのを抑止し、自己を介して第1方向とは反対の第2方向(第2スイッチ端子42側から第1スイッチ端子41側に向かう方向)に電流が流れるのを抑止しない素子であり、例えば、ダイオードである。制限素子46は、第2抵抗45に直列に接続されている。よって、制限素子46及び第2抵抗45は、常開スイッチ装置43の第1接点431及び第2接点432間に対して並列に接続されている。
【0056】
(構成-通報システム-抵抗値)
図3の通報システム901に設けられている終端抵抗R1、第1抵抗44、及び第2抵抗45の抵抗値は任意に設定可能であるが、例えば、電流がいずれの電路を流れたかを特定可能とする観点から、相互に比較的大きく異なる抵抗値になっていることとする。
【0057】
(電流)
次に、図3の通報システム901を流れる電流について説明する。図4図7は、通報システムを流れる電流の説明図である。なお、図4図7においては、通報システム901の電気回路における主な電流の流れの一例が、矢印で図示されている。また、以下の説明では、断線監視回路12が、第1信号線L11及び第2信号線L12に対して電圧を供給している場合を前提として説明する。なお、実際には第1信号線L11及び第2信号線L12自体の抵抗(いわゆる線路抵抗)等を考慮する必要があるが、簡単のため、以下ではこれらがゼロであるものとして説明する。
【0058】
(電流-通報ボタン非押下の場合)
通報システム901が正常であり、且つ、図2の通報ボタン25が押下されていない場合、図4に示すように、第1接点431及び第2接点432の間が開いており短絡されないことになる。
【0059】
この場合、断線監視回路12の正極から第1信号線L11へ出力された電流は、、終端抵抗R1、及び第2信号線L12を介して、断線監視回路12の負極に供給されることになる。なお、この場合、第1接点431及び第2接点432の間が開いており短絡されておらず、制限素子46が設けられているので、発信装置33の内部を介して第1信号線L11から第2信号線L12に流れる電流は発生しないことになる。
【0060】
(電流-通報ボタン押下の場合)
通報システム901が正常であり、且つ、図2の通報ボタン25(発信設備301に関する通報ボタン25)が押下された場合、図5に示すように、第1接点431及び第2接点432の間が、押下された通報ボタン25に対応する常開スイッチ433を介して短絡されることになる。
【0061】
この場合、断線監視回路12の正極から第1信号線L11へ出力された電流の一部は、押下された通報ボタン25に対応する発信装置33の内部(詳細には、第1スイッチ端子41、第1接点431、常開スイッチ433、第2接点432、第1抵抗44、及び第2スイッチ端子42)を介して、第2信号線L12に供給された後に、断線監視回路12の負極に供給されることになる。
【0062】
また、この場合、断線監視回路12の正極から第1信号線L11へ出力された電流の他の一部は、終端抵抗R1及び第2信号線L12を介して、断線監視回路12の負極に供給されることになる。
【0063】
(電流-短絡が発生した場合)
通報システム901において、図6に示すように、発信装置33の第1スイッチ端子41と第2スイッチ端子42とが相互に短絡した場合、第1スイッチ端子41と第2スイッチ端子42とが電気的に直接接続されることになる。
【0064】
この場合、断線監視回路12の正極から第1信号線L11へ出力された電流は、発信装置33の内部の短絡した電路(第1スイッチ端子41と第2スイッチ端子42とを直接接続した電路)を介して、第2信号線L12に供給された後に、断線監視回路12の負極に供給されることになる。
【0065】
なお、この場合、電流の電路全体の電気抵抗の値が小さくなるので、大きな電流が流れ得る状態となるが、断線監視回路12側のリミット設定により設定された上限値の電流が流れることになる。例えば、断線監視回路12には、正極から第1信号線L11、第2信号線L12を介して負極に至るループを形成する電路に直列に接続された抵抗が内蔵されており(図示省略)、この抵抗の両端電圧を観測することで電路に流れる電流を検出しており、発信装置33の第1スイッチ端子41と第2スイッチ端子42とが短絡した場合には、この内臓抵抗の抵抗値により電路に流れる電流が所定の上限値に制限されるようにリミット設定されている。
【0066】
(電流-断線が発生した場合)
通報システム901において、図7に示すように、第1信号線L11における発信設備301及び302の相互間に対応する位置で断線が発生した場合、発信設備301における第1接点431及び第2接点432の間が短絡されておらず、且つ、第1信号線L11における発信設備301及び302の相互間が断線して遮断されているので、電流は流れないことになる。
【0067】
(電流-他の異常が発生した場合)
また、図3の通報システム901において、上述で例示した位置以外の他の位置で断線又は短絡が発生した場合、図示した電気回路に関する物理法則に従って、適宜電流が流れることになる。また、断線の予兆又は短絡の予兆が発生した場合も同様である。
【0068】
(処理)
次に、通報システム901によって実行される状態監視処理について説明する。通報システム901の「状態監視処理」とは、第1信号線L11及び第2信号線L12に電圧が供給された場合に、第1信号線L11及び第2信号線L12を流れる電流に基づいて、第1信号線L11及び第2信号線L12の状態及び発信装置33の状態を監視する処理である。この状態監視処理は、例えば、図1の防災受信盤1の制御部11によって実行される。
【0069】
なお、状態監視処理の実行中は、断線監視回路12が、第1信号線L11及び第2信号線L12に対して電圧を供給し続けていることとする。また、状態監視処理の実行中は、断線監視回路12が、前述の電流測定機能を用いて、所定時間間隔(例えば、0.1秒~0.5秒間隔等)で繰り返し、自己が出力して電流の値(つまり、通報システム901の各要素を流れる電流(消費電流)の合計値)を測定していることとする。
【0070】
===処理内容===
防災受信盤の制御部11は、断線監視回路12が繰り返し測定する電流の値を示す電流値情報を繰り返し取得し、取得した電流値情報に基づいて、監視する。
【0071】
具体的な処理は任意であるが、例えば、図4図7を用いて説明したように、図2の通報ボタン25を押下された場合、又は、通報システム901で異常が発生した場合に、通報システム901の電気的状態が変化(例えば、合成抵抗の値が変化)し、電流値情報が示す電流の値が変化することに着目して、以下の処理を行うように構成してもよい。
【0072】
詳細には例えば、図2の通報ボタン25を押下された場合、及び、通報システム901における任意の位置で異常(断線、断線の予兆、短絡、及び短絡の予兆)が発生した場合に、通報システム901に流れるものと想定される電流の値を実験又はシミュレーション等により予め求めて、当該予め求めた電流の値(各場合に流れるものと想定される電流の値)を各基準値として防災受信盤1の記録部(不図示)に記録する。そして、制御部11が、前述の取得した電流値情報が示す電流の値が変化したものと判定した場合に、当該記録部に記録されている各基準値と、電流値情報が示す変化後の電流の値との比較し、比較結果に基づいて発生した事象(つまり、通報ボタン25を押下されたこと、あるいは、異常(断線、断線の予兆、短絡、及び短絡の予兆)が発生したこと)及び可能な場合には異常の発生位置を特定するように構成してもよい。詳細には、前述の各基準値の内の、電流値情報が示す変化後の電流の値に最も近い基準値に対応する事象を特定するように構成してもよい。
【0073】
なお、取得した電流値情報が示す電流の値が変化したものと判定する手法も任意であり、例えば、電流の値が予め定められた所定の値以上変化した場合に、電流の値が変化したものと判定し、一方、電流の値が予め定められた所定の値以上変化したわけではない場合に、電流の値が変化していないものと判定するように構成してもよい。
【0074】
以下では代表的な処理例を説明するが、この内容に限定されるものではない。
【0075】
=通報ボタンの押下=
例えば、電流値情報が示す電流の値が変化し、変化後の電流の値が、各基準値の内の図5の場合に流れるものと想定される電流に対応する基準値に最も近い場合、図2の通報ボタン25を押下されて発信装置33が異常を通報する状態であるもの特定する。
【0076】
=断線=
また、例えば、電流値情報が示す電流の値が変化し、変化後の電流の値が、各基準値の内の図7の場合に流れるものと想定される電流に対応する基準値(電流は流れないものと想定されるので「0」)に最も近い場合、第1信号線L11又は第2信号線L12の何れかの位置で断線が発生したものと特定する。
【0077】
=断線の予兆=
また、例えば、電流値情報が示す電流の値が変化し、変化後の電流の値が、各基準値の内の第1信号線L11又は第2信号線L12の何れかの位置で断線の予兆が発生した場合に流れるものと想定される電流に対応する基準値に最も近い場合、第1信号線L11又は第2信号線L12の何れかの位置で断線の予兆が発生したものと特定する。
【0078】
=短絡=
また、例えば、電流値情報が示す電流の値が変化し、変化後の電流の値が、各基準値の内の図6の場合に流れるものと想定される電流に対応する基準値(断線監視回路12側のリミット設定により設定された上限値程度の値)に最も近い場合、第1信号線L11又は第2信号線L12の何れかの位置、又は、図6の第1スイッチ端子41及び第2スイッチ端子42相互間等で短絡が発生したものと特定する。
【0079】
=短絡の予兆=
また、例えば、電流値情報が示す電流の値が変化し、変化後の電流の値が、各基準値の内の第1信号線L11又は第2信号線L12の何れかの位置、又は、図6の第1スイッチ端子41及び第2スイッチ端子42相互間等で短絡の予兆が発生した場合に流れるものと想定される電流に対応する基準値に最も近い場合、第1信号線L11又は第2信号線L12の何れかの位置、又は、図6の第1スイッチ端子41及び第2スイッチ端子42相互間等で短絡の予兆が発生したものと特定する。
【0080】
=制限素子関連=
なお、図3に示すように、制限素子46に対して第2抵抗45が接続されているので、制限素子46に関連する異常も特定可能となる。例えば、電流値情報が示す電流の値が変化し、変化後の電流の値が、各基準値の内の制限素子46で異常(例えば、整流作用の異常)が発生した場合に流れるものと想定される電流に対応する基準値に最も近い場合、制限素子46で異常が発生したものと特定する。なお、制限素子46のカソード側及びアノード側の相互間の短絡又は短絡の予兆が発生する場合についても同様にして特定するように構成してもよい。
【0081】
(実施の形態の効果)
このように本実施の形態によれば、第1信号線L11及び第2信号線L12の相互間に電圧が供給された場合に第1信号線L11及び第2信号線L12を流れる電流に基づいて、第1信号線L11及び第2信号線L12の状態及び発信装置33の状態を監視することにより、第1信号線L11及び第2信号線L12の状態及び発信装置33の状態を監視することが可能となる。また、例えば、発信装置33が第1抵抗44及び第2抵抗45を備えているので、発信装置33の状態の変化に応じて、発信装置33の電気的状態を変化させることが可能となるので、この電気的状態の変化を利用して発信装置33の状態を確実に監視することが可能となる。
【0082】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2について説明する。図8は、通報システムの回路図である。実施の形態2は、概略的には、実施の形態1の通報システム901(図3)において、図8に示すように、防災受信盤1、第1信号線L11、第2信号線L12、及び終端抵抗R1を、防災受信盤5、第1信号線L21、第2信号線L22、及び終端抵抗R2に変更し、また、電流監視回路53、第1切替スイッチ装置61、62、及び第2切替スイッチ装置63、64を追加したものである。
【0083】
なお、実施の形態2の構成要素の内の実施の形態1の構成要素と同様なものについては、同一の符号を付し、あるいは、同一名称として記載し、その内容の詳細の説明は省略する。
【0084】
また、図8の電流監視回路53、第1切替スイッチ装置61、62、及び第2切替スイッチ装置63、64の具体的な実装手法は任意であるが、例えば、図1の防災受信盤5の一部の構成要素として実装される場合について説明する。なお、バリエーションとしては、これらの構成要素の内の全部又は一部は、防災受信盤5の外部装置(防災受信盤5から離れた位置に設けられている別の装置)として、通報システム902に実装してもよい。このように構成した場合、例えば、電流監視回路53等のメンテナンス性が向上する。
【0085】
(構成)
まず、本実施の形態の通報システム902の構成について説明する。
【0086】
図1の通報システム902は、例えば、図1及び図8の防災受信盤5、発信設備300、図8の第1信号線L21、第2信号線L22、及び終端抵抗R2を備える。また、例えば、通報システム902における一部の構成要素は、図2の消火栓装置200に収容されている。
【0087】
なお、各図で具体的には不図示であるが、例えば、通報システム902、トンネル内の火災を検知する火災検知器、及び、その他のトンネル内の防災に関する各種構成要素を含むシステム(つまり、通報システム902の上位概念に対応するシステム)については、「防災システム」と称することとする。
【0088】
(構成-通報システム-防災受信盤)
図1の防災受信盤5は、発信設備300を管理する上位装置であり、図8の第1信号線L21及び第2信号線L22の一端側が接続されており、すなわち、当該第1信号線L21及び第2信号線L22が導出されている。図8の防災受信盤5は、例えば、第1信号線L21及び第2信号線L22を介して、発信設備300等に対して電圧及び電流を供給する装置である。防災受信盤5の具体的な構成は任意であり、公知の防災受信盤の構成を適用することができるので、本願における特徴的な構成についてのみ説明する。
【0089】
防災受信盤5は、例えば、図1の制御部51、図8の断線監視回路52、電流監視回路53、第1切替スイッチ装置61、62、及び第2切替スイッチ装置63、64を備える。
【0090】
(構成-通報システム-防災受信盤-制御部)
図1の制御部51は、防災受信盤5を制御する制御手段であり、例えば、監視部として機能する。制御部51の「監視部」とは、例えば、一対の信号線の相互間に電圧が供給された場合に一対の信号線を流れる電流に基づいて、一対の信号線の状態及び発信装置の状態を監視する監視手段であり、例えば、電流測定手段が測定した第1電流及び又は第2電流に基づいて、一対の信号線の状態、発信装置の状態、及び一対の信号線に対する発信装置の接続状況の少なくとも何れかを監視する手段である。
【0091】
(構成-通報システム-防災受信盤-断線監視回路)
図8の断線監視回路52は、第1信号線L21及び第2信号線L22に対して電圧を供給することにより、通報システム902の各要素(代表的には、第1信号線L21、第2信号線L22、及び発信装置33)の電気抵抗に応じて電流を出力する機能を有する。また、断線監視回路52は、自己が出力して電流の値(つまり、通報システム902の各要素を流れる電流(消費電流)の合計値)を測定する電流測定機能も有する。
【0092】
(構成-通報システム-防災受信盤-電流監視回路)
図8の電流監視回路53は、第1信号線L21及び第2信号線L22を流れる電流の値(つまり、通報システム902の各要素を流れる電流(消費電流)の合計値)を測定する電流測定手段である。電流監視回路53の具体的な構成は任意であるが、例えば、電流監視回路53による電流の測定感度は、断線監視回路52による電流の測定感度よりも高い感度となっており、また、測定した電流の値を蓄積可能となっている。この電流監視回路53としては、例えば、いわゆる電流ロガー等の装置を適用してもよい。
【0093】
(構成-通報システム-防災受信盤-第1切替スイッチ装置)
図8の第1切替スイッチ装置61、62は、電流監視回路53が第1信号線L21及び第2信号線L22に流れる電流を測定可能又は測定不可能となるように、電流監視回路53と第1信号線L21及び第2信号線L22との間の接続状態を切り替える第1切替手段である。
【0094】
第1切替スイッチ装置61、62は、相互に同期して動作する一対のスイッチ装置である。第1切替スイッチ装置61は、導電部材である切替スイッチ614を動作させることにより、第1接点611の接続先を第2接点612又は第3接点613に切り替える装置である。第1切替スイッチ装置62は、導電部材である切替スイッチ624を動作させることにより、第1接点621の接続先を第2接点622又は第3接点623に切り替える装置である。
【0095】
第1切替スイッチ装置61、62は、例えば、図1の防災受信盤5の制御部51からの電流監視回路非接続命令を受けた場合に、第1切替スイッチ装置61の第1接点611と第2接点612とを相互に接続し、且つ、第1切替スイッチ装置62の第1接点621と第2接点622とを相互に接続する。
【0096】
また、第1切替スイッチ装置61、62は、例えば、図1の防災受信盤5の制御部51からの電流監視回路接続命令を受けた場合に、第1切替スイッチ装置61の第1接点611と第3接点613とを相互に接続し、且つ、第1切替スイッチ装置62の第1接点621と第3接点623とを相互に接続する。
【0097】
(構成-通報システム-防災受信盤-第2切替スイッチ装置)
図8の第2切替スイッチ装置63、64は、第1信号線L21及び第2信号線L22を介して発信装置33に供給される電圧の極性が切り替わるように、第1信号線L21及び第2信号線L22の接続状態を切り替える第2切替手段である。
【0098】
第2切替スイッチ装置63、64は、相互に同期して動作する一対のスイッチ装置である。第2切替スイッチ装置63は、導電部材である切替スイッチ634を動作させることにより、第1接点631の接続先を第2接点632又は第3接点633に切り替える装置である。第2切替スイッチ装置64は、導電部材である切替スイッチ644を動作させることにより、第1接点641の接続先を第2接点642又は第3接点643に切り替える装置である。
【0099】
第2切替スイッチ装置63、64は、例えば、図1の防災受信盤5の制御部51からの順方向電圧供給命令を受けた場合に、第2切替スイッチ装置63の第1接点631と第2接点632とを相互に接続し、且つ、第2切替スイッチ装置64の第1接点641と第2接点642とを相互に接続する。
【0100】
第2切替スイッチ装置63、64は、例えば、図1の防災受信盤5の制御部51からの逆方向電圧供給命令を受けた場合に、第2切替スイッチ装置63の第1接点631と第3接点633とを相互に接続し、且つ、第2切替スイッチ装置64の第1接点641と第3接点643とを相互に接続する。
【0101】
(構成-通報システム-第1信号線、第2信号線)
図8の第1信号線L21及び第2信号線L22は、図8の防災受信盤5の断線監視回路52から導出されている一対の信号線であり、例えば、導電線である。第1信号線L21の一端側は、第1切替スイッチ装置61、62、及び第2切替スイッチ装置63を介して、断線監視回路52の一方の極に接続されており、第1信号線L21の他端側は、終端抵抗R2の一方側に接続されている。第2信号線L22の一端側は、第2切替スイッチ装置64を介して、断線監視回路52の他方の極に接続されており、第2信号線L22の他端側は、終端抵抗R2の他方側に接続されている。
【0102】
(構成-通報システム-終端抵抗)
図8の終端抵抗R2は、第1信号線L21及び第2信号線L22における他端側に接続されて終端している電気抵抗である。
【0103】
(構成-通報システム-発信設備)
図1の発信設備300は、火災等の異常を通報するための設備であり、例えば、複数設けられている設備である。なお、図1の発信設備301、302の構成の相互に同様であるので、図8に示すように、発信設備301の構成要素に符号を付して説明する。なお、発信設備301の具体的な構成は実施の形態1で説明したので、その説明を省略する。
【0104】
(構成-通報システム-抵抗値)
図8の通報システム902に設けられている終端抵抗R2、第1抵抗44、及び第2抵抗45の抵抗値は任意に設定可能であるが、例えば、電流がいずれの電路を流れたかを特定可能とする観点から、相互に比較的大きく異なる抵抗値になっていることとする。
【0105】
(第1及び第2切替スイッチ装置の動作)
次に、図8の通報システム902における第1切替スイッチ装置61、62、及び第2切替スイッチ装置63、64の動作について説明する。図9図11は、各切替状態での通報システムを流れる電流の説明図である。なお、図9図11においては、通報システム902の電気回路における主な電流の流れの一例が、矢印で図示されている(後述の図12図14も同様)。また、以下の説明では、断線監視回路52が、電圧を供給している場合を前提として説明する。
【0106】
ここでは、例えば、通常監視状態の場合、順方向電流監視状態の場合、逆方向電流監視状態の場合について説明する。なお、「通常監視状態」とは、例えば、少なくとも異常を通報するための所定操作を監視する状態である。「順方向電流監視状態」とは、例えば、少なくとも通報システム902を順方向に流れる電流を高感度で監視する状態である。「逆方向電流監視状態」とは、例えば、少なくとも通報システム902を逆方向に流れる電流を高感度で監視する状態である。
【0107】
(第1及び第2切替スイッチ装置の動作-通常監視状態)
通常監視状態の場合、図1の防災受信盤5の制御部51は、第1切替スイッチ装置61、62に対して電流監視回路非接続命令を出力し、且つ、第2切替スイッチ装置63、64に対して順方向電圧供給命令を出力する。
【0108】
この場合、図9に示すように、第1切替スイッチ装置61、62は、第1切替スイッチ装置61の第1接点611と第2接点612とを相互に接続し、且つ、第1切替スイッチ装置62の第1接点621と第2接点622とを相互に接続する。また、第2切替スイッチ装置63、64は、第2切替スイッチ装置63の第1接点631と第2接点632とを相互に接続し、且つ、第2切替スイッチ装置64の第1接点641と第2接点642とを相互に接続する。
【0109】
そして、断線監視回路52の正極から出力された電流は、図9に示すように、電流監視回路53を介さずに第1信号線L21に供給され、この後、例えば終端抵抗R2、第2信号線L22を介して断線監視回路52の負極に供給されることになる。
【0110】
すなわち、この場合、第1切替スイッチ装置61、62は、電流監視回路53が測定不可能となるように、電流監視回路53と第1信号線L21、L22の接続状態を切り替えているものと言える。また、第2切替スイッチ装置63、64は、発信装置33に対して、第1スイッチ端子41側が正(高電位)となり、第2スイッチ端子42側が負(低電位)となる第1極性の電圧が供給されるように、第1信号線L21、L22の接続状態を切り替えているものと言える。
【0111】
(第1及び第2切替スイッチ装置の動作-順方向電流監視状態)
順方向電流監視状態の場合、図1の防災受信盤5の制御部51は、第1切替スイッチ装置61、62に対して電流監視回路接続命令を出力し、且つ、第2切替スイッチ装置63、64に対して順方向電圧供給命令を出力する。
【0112】
この場合、図10に示すように、第1切替スイッチ装置61、62は、第1切替スイッチ装置61の第1接点611と第3接点613とを相互に接続し、且つ、第1切替スイッチ装置62の第1接点621と第3接点633とを相互に接続する。また、第2切替スイッチ装置63、64は、通常監視状態の場合と同様な接続状態とする。
【0113】
そして、断線監視回路52の正極から出力された電流は、図10に示すように、電流監視回路53を介して第1信号線L21に供給され、この後、例えば終端抵抗R2、第2信号線L22を介して断線監視回路52の負極に供給されることになる。
【0114】
すなわち、この場合、第1切替スイッチ装置61、62は、電流監視回路53が測定可能となるように、電流監視回路53と第1信号線L21、L22の接続状態を切り替えているものと言える。また、第2切替スイッチ装置63、64は、発信装置33に対して、第1スイッチ端子41側が正(高電位)となり、第2スイッチ端子42側が負(低電位)となる第1極性の電圧が供給されるように、第1信号線L21、L22の接続状態を切り替えているものと言える。
【0115】
(第1及び第2切替スイッチ装置の動作-逆方向電流監視状態)
逆方向電流監視状態の場合、図1の防災受信盤5の制御部51は、第1切替スイッチ装置61、62に対して電流監視回路接続命令を出力し、且つ、第2切替スイッチ装置63、64に対して逆方向電圧供給命令を出力する。
【0116】
この場合、図11に示すように、第1切替スイッチ装置61、62は、順方向電流監視状態の場合と同様な接続状態とする。また、第2切替スイッチ装置63、64は、第2切替スイッチ装置63の第1接点631と第3接点633とを相互に接続し、且つ、第2切替スイッチ装置64の第1接点641と第3接点643とを相互に接続する。
【0117】
そして、断線監視回路52の正極から出力された電流は、図11に示すように、電流監視回路53を介して第2信号線L22に供給され、この後、例えば終端抵抗R2又は発信装置33の内部の構成要素(第2抵抗45及び制限素子46)を介して第1信号線L21に供給され、更にこの後、断線監視回路52の負極に供給されることになる。
【0118】
すなわち、この場合、第1切替スイッチ装置61、62は、電流監視回路53が測定可能となるように、電流監視回路53と第1信号線L21、L22の接続状態を切り替えているものと言える。また、第2切替スイッチ装置63、64は、発信装置33に対して、第1スイッチ端子41側が負(低電位)となり、第2スイッチ端子42側が正(高電位)となる第2極性の電圧が供給されるように、第1信号線L21、L22の接続状態を切り替えているものと言える。
【0119】
(電流)
次に、図8の通報システム902を流れる電流について説明する。図12図14は、通報システムを流れる電流の説明図である。また、以下の説明では、断線監視回路52が、電圧を供給している場合を前提として説明する。
【0120】
(電流-通報ボタン非押下の場合)
通常監視状態において、通報システム902が正常であり、且つ、図2の通報ボタン25が押下されていない場合、図9に示すように、発信装置33の第1接点431及び第2接点432の間が開いており短絡されないことになる。
【0121】
この場合、断線監視回路52の正極から出力された電流は、終端抵抗R2及び第2信号線L22を介して、断線監視回路52の負極に供給されることになる。なお、この場合、第1接点431及び第2接点432の間が開いており短絡されておらず、制限素子46が設けられているので、発信装置33の内部を介して第1信号線L21から第2信号線L22に流れる電流は発生しないことになる。
【0122】
(電流-通報ボタン押下の場合)
通常監視状態において、通報システム902が正常であり、且つ、図2の通報ボタン25(発信設備301に関する通報ボタン25)が押下された場合、図12に示すように、第1接点431及び第2接点432の間が、押下された通報ボタン25に対応する常開スイッチ433を介して短絡されることになる。
【0123】
この場合、断線監視回路52の正極から出力された電流の一部は、押下された通報ボタン25に対応する発信装置33の内部を介して、第2信号線L22に供給された後に、断線監視回路52の負極に供給されることになる。
【0124】
また、この場合、断線監視回路52の正極から出力された電流の他の一部は、終端抵抗R2及び第2信号線L22を介して、断線監視回路52の負極に供給されることになる。
【0125】
(電流-短絡が発生した場合)
順方向電流監視状態において、図13に示すように、発信装置33の第1スイッチ端子41と第2スイッチ端子42とが相互に短絡した場合、第1スイッチ端子41と第2スイッチ端子42とが電気的に直接接続されることになる。
【0126】
この場合、断線監視回路52の正極から出力された電流は、電流監視回路53を介して第1信号線L21に供給され、この後、発信装置33の内部の短絡した電路を介して、第2信号線L22に供給され、断線監視回路52の負極に供給されることになる。なお、この場合、当該電流の値は、電流監視回路53によって測定されることになる。
【0127】
また、この場合、電流の電路全体の電気抵抗の値が極めて小さくなるので、大電流が流れ得る状態となるが、断線監視回路52側のリミット設定により設定された上限値の電流が流れることとする。
【0128】
(電流-断線が発生した場合)
逆方向電流監視状態において、図14に示すように、発信装置33における第1スイッチ端子41と制限素子46との間の位置で断線が発生した場合、この断線が発生した位置が遮断されることになる。
【0129】
この場合、断線監視回路52の正極から出力された電流は、電流監視回路53を介して第2信号線L22に供給される。この後、第2信号線L22に供給された電流は、断線が発生していない発信装置33の内部又は終端抵抗R2を介して、第2信号線L21に供給され、断線監視回路52の負極に供給されることになる。なお、この場合、当該電流の値は、電流監視回路53によって測定されることになる。
【0130】
(電流-他の異常が発生した場合)
また、図8の通報システム902において、上述で例示した位置以外の他の位置で断線又は短絡が発生した場合、図示した電気回路に関する物理法則に従って、適宜電流が流れることになる。また、断線の予兆又は短絡の予兆が発生した場合も同様である。
【0131】
(処理)
次に、通報システム902によって実行される状態監視処理について説明する。通報システム902の「状態監視処理」とは、第1信号線L21及び第2信号線L22に電圧が供給された場合に、第1信号線L21及び第2信号線L22を流れる電流に基づいて、第1信号線L21及び第2信号線L22の状態、発信装置33の状態、及び第1信号線L21及び第2信号線L22に対する発信装置33の接続状況を監視する処理である。この状態監視処理は、例えば、図1の防災受信盤5の制御部51によって実行される。
【0132】
なお、状態監視処理の実行中は、断線監視回路52が、第1信号線L21及び第2信号線L22に対して電圧を供給し続けていることとする。また、状態監視処理の実行中は、断線監視回路52が、前述の電流測定機能を用いて、所定時間間隔(例えば、0.1秒~0.5秒間隔等)で繰り返し、自己が出力して電流の値(つまり、通報システム902の各要素を流れる電流(消費電流)の合計値)を測定していることとする。また、状態監視処理の実行中において、順方向電流監視状態(図10)及び逆方向電流監視状態(図11)の場合に、電流監視回路53が、所定時間間隔(例えば、0.1秒~0.5秒間隔等)で繰り返し、自己に供給された電流の値(つまり、通報システム902の各要素を流れる電流(消費電流)の合計値)を測定していることとする。
【0133】
===切替処理===
防災受信盤5の制御部51は、第1切替スイッチ装置61、62及び第2切替スイッチ装置63、64に対して前述の各命令を適宜出力することにより、例えば、基本的には通常監視状態(図9)を維持し、所定時間(例えば、30分~60分等)に1回程度等のタイミングで、順方向電流監視状態(図10)及び逆方向電流監視状態(図11)に順次切り替える替処理を行う。
【0134】
なお、順方向電流監視状態(図10)及び逆方向電流監視状態(図11)の継続時間は任意であるが、比較的短い時間(例えば、30秒~1分等)のみ継続することとしてもよい。すなわち、状態監視処理の実行中においては、所定時間(例えば、30分~60分等)の内の大部分の時間は、通常監視状態の状態に維持されており、この所定の時間の内の任意のタイミングに、順方向電流監視状態に切り替えられ、この後に、逆方向電流監視状態に切り替えられて、更にこの後に、通常監視状態に戻されることになる。なお、この場合、順方向電流監視状態及び逆方向電流監視状態各々は、比較的短い時間(例えば、30秒~1分等)だけ継続することになる。
【0135】
また、通常監視状態(図9)から順方向電流監視状態(図10)への切替に要する時間、及び、逆方向電流監視状態(図11)から通常監視状態(図9)への切替に要する時間は、例えば、図2の通報ボタン25が押下された場合に発信装置33が当該押下を検出するオン継続時間よりも十分に短い時間になるように構成されていることとする。このように構成することにより、図2の通報ボタン25が押下されたことの把握漏れを防止することが可能となる。
【0136】
===監視処理===
また、防災受信盤の制御部51は、上記の切替処理と並行して、通常監視状態、順方向電流監視状態、及び逆方向電流監視状態の場合に、断線監視回路52が繰り返し測定する電流の値を示す断線監視回路側電流値情報を繰り返し取得し、また、順方向電流監視状態及び逆方向電流監視状態の場合に、電流監視回路53が繰り返し測定する電流の値を示す電流監視回路側電流値情報を繰り返し取得し、取得したこれらの断線監視回路側電流値情報又は電流監視回路側電流値情報に基づいて、第1信号線L21及び第2信号線L22の状態、発信装置33の状態、及び第1信号線L21及び第2信号線L22に対する発信装置33の接続状況を監視する監視処理を行う。
【0137】
図15は、監視処理の説明図である。この図15においては、各電流値情報を用いて監視対象を監視可能であるか否かが例示されている。
【0138】
図15の「監視対象」の欄には、監視処理にて監視される代表的な監視対象が例示されている。
【0139】
図15において、「順方向電流値情報」の欄には、通常監視状態(図9)及び順方向電流監視状態(図10)において断線監視回路52が測定した電流の値を示す断線監視回路側電流値情報(「順方向電流値情報」とも称する)、又は、順方向電流監視状態(図10)において電流監視回路53が測定した電流の値を示す電流監視回路側電流値情報(当該情報も「順方向電流値情報」とも称する)を用いて、対応する監視対象を監視可能か否かが図示されている。具体的には、「〇」は監視可能であることを示しており、「×」は監視不可能であることを示している(他の欄の記載も同様である)。例えば、最上段の「〇」においては、通報ボタン25の押下(詳細には、通報ボタン25を押下されて発信装置33が異常を通報する状態であるか)を監視可能であることが示されている。
【0140】
図15において、「逆方向電流値情報」の欄には、逆方向電流監視状態(図11)において、断線監視回路52が測定した電流の値を示す断線監視回路側電流値情報(「逆方向電流値情報」とも称する)、又は、電流監視回路53が測定した電流の値を示す電流監視回路側電流値情報(当該情報も「逆方向電流値情報」とも称する)を用いて、対応する監視対象を監視可能か否かが図示されている。
【0141】
図15において、「差分電流値情報」の欄には、順方向電流監視状態(図10)において電流監視回路53が測定した電流の値を示す電流監視回路側電流値情報の当該電流の値と、逆方向電流監視状態(図11)において電流監視回路53が測定した電流の値を示す電流監視回路側電流値情報の当該電流の値との差分値(「差分電流値情報」とも称する)を用いて、対応する監視対象を監視可能か否かが図示されている。
【0142】
===監視処理の詳細(通報ボタン25の押下及び通報システム902の異常)===
図15の「監視対象」の欄に例示されている「通報ボタン25の押下」及び「通報システム902の異常」に関する処理について詳細には例えば、実施の形態1で説明した処理と基本的には同様である。具体的には、図2の通報ボタン25を押下された場合、及び、通報システム902における任意の位置で異常(断線、断線の予兆、短絡、及び短絡の予兆)が発生した場合に、通報システム902に流れるものと想定される順方向電流値情報、逆方向電流値情報、及び差分電流情報に対応する電流の値を、実験又はシミュレーション等により予め求めて、当該予め求めた電流の値(各場合に流れるものと想定される各電流情報に対応する電流の値)を各基準値として防災受信盤5の記録部(不図示)に記録する。そして、制御部51が、前述の取得した各電流値情報(順方向電流値情報、逆方向電流値情報)又は当該取得した各電流値情報から演算される差分電流値情報が示す電流の値が変化したものと判定した場合に、当該記録部に記録されている各電流値情報に対応する各基準値と、電流値情報が示す変化後の電流の値との比較し、比較結果に基づいて発生した事象(つまり、通報ボタン25を押下されたこと、あるいは、異常(断線、断線の予兆、短絡、及び短絡の予兆)が発生したこと)及び可能な場合には異常の発生位置を特定するように構成してもよい。詳細には、前述の各電流値情報に対応する各基準値の内の、電流値情報が示す変化後の電流の値に最も近い基準値に対応する事象を特定するように構成してもよい。
【0143】
==順方向電流値情報==
順方向電流値情報を用いて処理する場合は、実施の形態1で説明した処理例と同様な処理例となるので、詳細の説明は省略する。特に、順方向電流値情報としては、通常監視状態(図9)及び順方向電流監視状態(図10)において断線監視回路52が測定した電流の値を示す断線監視回路側電流値情報、又は、順方向電流監視状態(図10)において電流監視回路53が測定した電流の値を示す電流監視回路側電流値情報を用いることが可能となるが、以下のように構成してもよい。
【0144】
例えば、通常監視状態(図9)においては、断線監視回路52が測定した電流の値を示す断線監視回路側電流値情報のみ用いることができるので、当該断線監視回路側電流値情報を用いて処理し、また、順方向電流監視状態(図10)においては、断線監視回路52が測定した電流の値を示す断線監視回路側電流値情報及び電流監視回路53が測定した電流の値を示す電流監視回路側電流値情報の両方を用いることができるので、測定感度がより高い電流監視回路側電流値情報を用いてもよい。
【0145】
あるいは、順方向電流監視状態(図10)においては、断線監視回路側電流値情報を用いた処理の処理結果及び電流監視回路側電流値情報を用いた処理の処理結果の論理積に対応する処理を行ってもよい。すなわち、例えば、断線監視回路側電流値情報を用いて処理した場合及び電流監視回路側電流値情報を用いて処理した場合の両方の場合において、通報ボタン25の押下を特定した場合にのみ、通報ボタン25の押下を特定するように構成してもよい。あるいは、バリエーションとしては、各処理結果の論理和に対応する処理を行うように構成してもよい。
【0146】
==逆方向電流値情報==
逆方向電流値情報を用いて処理する場合は、図15の「発信装置33の異常」における「断線」及び「断線の予兆」以外の監視対象に関しては、順方向電流値情報を用いて処理する場合の処理例と同様な処理例となるので、詳細の説明は省略する。特に、逆方向電流値情報としては、逆方向電流監視状態(図11)において、断線監視回路52が測定した電流の値を示す断線監視回路側電流値情報、又は、電流監視回路53が測定した電流の値を示す電流監視回路側電流値情報を用いることが可能となるが、順方向電流値情報の場合と同様にして、一方の電流値情報のみを用いて処理を行うように構成してもよいし、両方を用いて処理を行うように構成してもよい。両方を用いて処理を行う場合は、前述の論理積又は論理和に対応する処理を行うように構成してもよい。
【0147】
=発信装置における断線及び断線の予兆=
例えば、逆方向電流値情報が示す電流の値が変化し、変化後の電流の値が、各基準値の内の図14の場合に流れるものと想定される電流に対応する基準値に最も近い場合、発信装置33における第2スイッチ端子42、第2抵抗45、制限素子46、及び第1スイッチ端子41を通る電路の内の何れかの位置で断線が発生したものと特定する。なお、発信装置33における当該電路の内の何れかの位置で断線の予兆が発生する場合についても同様にして特定するように構成してもよい。
【0148】
==差分電流値情報==
差分電流値情報を用いて処理する場合は、上述の逆方向電流値情報で説明した処理例と同様な処理例となるので、詳細の説明は省略する。特に、差分電流値情報を用いる場合、例えば、図10及び図11に示す通報システム902における発信装置33以外の構成要素が全て正常である場合、発信装置33以外を流れる電流分の少なくとも一部を打ち消すことができるので、発信装置33の異常の監視に関しては、逆方向電流値情報のみを用いて処理する場合に比べて、監視精度を向上させることが可能となる場合がある。
【0149】
===監視処理の詳細(接続されている発信装置の個数)===
図15の「監視対象」の欄に例示されている「接続されている発信装置33の個数」に関する処理について詳細には例えば、図11に示す通り、逆方向電流監視状態において、各発信装置33に設けられている第2抵抗45が電路となっているので、図11に示す通報システム902の合成抵抗の値が、第1信号線L21及び第2信号線L22に接続されている発信装置33の個数に応じた値になることに着目して処理を行うように構成してもよい。具体的には、接続されている発信装置33の個数と、当該個数の発信装置33が接続された場合に想定される逆方向電流値情報に対応する電流の値を、実験又はシミュレーション等により予め求めて、当該予め求めた各電流の値(各個数の場合に流れるものと想定される各電流情報に対応する各電流の値)(以下、「基準電流値」と称する)と接続されている発信装置33の個数との関係を示す関係情報を防災受信盤5の記録部(不図示)に記録する。そして、制御部51が、この関係情報を参照して、前述の取得した逆方向電流値情報が示す電流の値と、関係情報に示されている各個数に対応する各基準電流値とを比較し、各基準電流値の内の、逆方向電流値情報が示す電流の値に最も近い基準電流値に対応する個数を特定し、特定した個数を、通報システム902に設けられて第1信号線L21及び第2信号線L22に接続されている発信装置33の個数として特定する。
【0150】
なお、差分電流値情報を用いて行う処理についても、上述の逆方向電流値情報を用いて行う処理と同様に構成してもよい。
【0151】
(実施の形態の効果)
このように本実施の形態によれば、電流監視回路53が測定した電流に基づいて、信号線L21及び信号線L22の信号線の状態、発信装置33の状態、及び信号線L21及び信号線L22に対する発信装置33の接続状況の少なくとも何れかを監視することにより、例えば、信号線L21及び信号線L22の状態、発信装置33の状態、及び発信装置33の接続状況の監視精度を向上させることが可能となる。
【0152】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0153】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の詳細に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏したりすることがある。
【0154】
(分散や統合について)
また、上述した構成は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散又は統合して構成できる。
【0155】
(複数の電流値情報の処理結果の利用について)
また、実施の形態2においては、図15に示すように、監視対象(例えば、「発信装置33の異常」における「短絡」)について、複数種類の電流値情報を用いて監視することが可能となっているので、各電流値情報を用いて行った処理結果の論理積又は論理和を利用して異常等を監視するように構成してもよい。例えば、「発信装置33の異常」における「短絡」については、順方向電流値情報を用いて行った処理結果、逆方向電流値情報を用いて行った処理結果、差分電流値情報を用いて行った処理結果の内の2個以上又は全ての処理結果が「発信装置33の短絡」となる場合にのみ、「発信装置33の短絡」を特定するように構成してもよい。あるいは、これらの処理結果の内の少なくとも1個の処理結果が「発信装置33の短絡」となる場合に、「発信装置33の短絡」を特定するように構成してもよい。なお、他の監視対象についても同様とする。
【0156】
(抵抗値について)
また、実施の形態1の図3の第1抵抗44及び第2抵抗45の抵抗値については、各発信装置33相互間において相互に異ならせてもよい。このように構成することにより、いずれの発信装置33に関する通報ボタン25が押下されたか、又は、いずれの発信装置33の制限素子46で異常が発生したかを特定することが可能となる。なお、実施の形態2についても同様に構成してもよい。
【0157】
(通常監視状態について)
また、実施の形態2においては、図9の状態(つまり、電流監視回路53が接続されていない状態)を通常監視状態とする場合について説明したが、これに限らず、例えば、図10の状態(つまり、電流監視回路53が接続されている状態)を通常監視状態としてもよい。
【0158】
(電流の測定について)
また、実施の形態2においては、図10の順方向電流監視状態において、断線監視回路52及び電流監視回路53の両方が電流を測定するものと説明したが、これに限らない。例えば、断線監視回路52のみ又は電流監視回路53のみが電流を測定するように構成してもよい。また、図11の逆方向電流監視状態においても、同様に構成してもよい。
【0159】
(監視手段について)
また、上記実施の形態1においては、防災受信盤1の制御部11の機能として監視手段を実装する場合について説明したが、これに限らない。例えば、防災受信盤1とは異なる外部装置に対して、監視手段を実装してもよい。この場合、当該外部装置と防災受信盤1とを相互に通信可能とすることにより、外部装置の監視手段が、防災受信盤1と通信することにより処理に必要な情報を取得し、取得した情報に基づいて実施の形態1で説明した処理を行うように構成してもよい。なお、実施の形態2についても、同様に構成してもよい。
【0160】
(用語の解釈について)
また、実施の形態2において、図10の順方向電流監視状態において、第1信号線L21及び第2信号線L22を流れる電流が「第1電流」に対応し、また、図11の逆方向電流監視状態において、第1信号線L21及び第2信号線L22を流れる電流が「第2電流」に対応するものと解釈してもよい。また、
【0161】
(特徴について)
また、上記実施の形態の構成、及び変形例の特徴を、任意に組み合わせてもよい。
【0162】
(付記)
付記1の通報システムは、上位装置から導出された一対の信号線の間に接続されている発信装置を備える通報システムであって、前記発信装置は、前記一対の信号線各々に接続された一対の接点を有し、所定操作が行われた場合に前記一対の接点の間を短絡する常開スイッチ装置と、前記一対の接点における一方の接点と、前記一対の信号線における一方の信号線との間に接続される第1抵抗と、前記一対の信号線の相互間に接続される第2抵抗であって、前記常開スイッチ装置の前記一対の接点間に対して並列に接続される前記第2抵抗と、を備え、前記通報システムは、前記一対の信号線の相互間に電圧が供給された場合に前記一対の信号線を流れる電流に基づいて、前記一対の信号線の状態及び前記発信装置の状態を監視する監視手段、を備える。
【0163】
付記2の通報システムは、付記1に記載の通報システムにおいて、電流測定手段と、前記電流測定手段が前記一対の信号線に流れる電流を測定可能又は測定不可能となるように、前記電流測定手段と前記一対の信号線との間の接続状態を切り替える第1切替手段と、前記一対の信号線を介して前記発信装置に供給される電圧の極性が切り替わるように、前記一対の信号線の接続状態を切り替える第2切替手段と、を備え、前記発信装置は、前記第2抵抗に直列に接続される制限素子であって、自己を介して第1方向へ電流が流れるのを抑止し、自己を介して前記第1方向とは反対の第2方向に電流が流れるのを抑止しない前記制限素子、を備え、相互に直列に接続されている前記第2抵抗及び前記制限素子は、前記一対の信号線の相互間に接続されており、且つ、前記常開スイッチ装置の前記一対の接点間に対して並列に接続されており、前記電流測定手段は、前記電流測定手段が前記一対の信号線に流れる電流を測定可能となるように前記第1切替手段が切り替えている場合において、前記一対の信号線を介して前記発信装置に第1極性の電圧が供給されるように前記第2切替手段が切り替えている場合に、前記一対の信号線を流れる第1電流を測定し、前記電流測定手段が前記一対の信号線に流れる電流を測定可能となるように前記第1切替手段が切り替えている場合において、前記一対の信号線を介して前記発信装置に第2極性であって前記第1極性とは反対の前記第2極性の電圧が供給されるように前記第2切替手段が切り替えている場合に、前記一対の信号線を流れる第2電流を測定し、前記監視手段は、前記電流測定手段が測定した前記第1電流及び又は前記第2電流に基づいて、前記一対の信号線の状態、前記発信装置の状態、及び前記一対の信号線に対する前記発信装置の接続状況の少なくとも何れかを監視する。
【0164】
(付記の効果)
付記1に記載の通報システムによれば、一対の信号線の相互間に電圧が供給された場合に一対の信号線を流れる電流に基づいて、一対の信号線の状態及び発信装置の状態を監視することにより、例えば、信号線の状態及び発信装置の状態を監視することが可能となる。また、例えば、発信装置が第1抵抗及び第2抵抗を備えているので、発信装置の状態の変化に応じて、発信装置の電気的状態を変化させることが可能となるので、この電気的状態の変化を利用して発信装置の状態を確実に監視することが可能となる。
【0165】
付記2に記載の通報システムによれば、電流測定手段が測定した第1電流及び又は第2電流に基づいて、一対の信号線の状態、発信装置の状態、及び一対の信号線に対する発信装置の接続状況の少なくとも何れかを監視することにより、例えば、一対の信号線の状態、発信装置の状態、及び発信装置の接続状況の監視精度を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0166】
以下、括弧内には、実施形態中で使用した用語に対応する、請求項の発明特定事項が記載されているが、両者の対応関係はこれに限られるものではない。
1 防災受信盤(上位装置)
5 防災受信盤(上位装置)
11 制御部(監視手段)
12 断線監視回路
21 筐体
22 保守扉
23 消火栓扉
24 消火器扉
25 通報ボタン
31 第1接続端子
32 第2接続端子
33 発信装置
41 第1スイッチ端子
42 第2スイッチ端子
43 常開スイッチ装置
44 第1抵抗
45 第2抵抗
46 制限素子
51 制御部(監視手段)
52 断線監視回路
53 電流監視回路(電流測定手段)
61 第1切替スイッチ装置(第1切替手段)
62 第1切替スイッチ装置(第1切替手段)
63 第2切替スイッチ装置(第2切替手段)
64 第2切替スイッチ装置(第2切替手段)
200 消火栓装置
300 発信設備
301 発信設備
302 発信設備
431 第1接点
432 第2接点(一方の接点)
433 常開スイッチ
611 第1接点
612 第2接点
613 第3接点
614 切替スイッチ
621 第1接点
622 第2接点
623 第3接点
624 切替スイッチ
631 第1接点
632 第2接点
633 第3接点
634 切替スイッチ
641 第1接点
642 第2接点
643 第3接点
644 切替スイッチ
901 通報システム
902 通報システム
L11 第1信号線
L12 第2信号線(一方の信号線)
L21 第1信号線
L22 第2信号線(一方の信号線)
R1 終端抵抗
R2 終端抵抗

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15