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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135442
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/54 20180101AFI20240927BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20240927BHJP
   F24F 11/80 20180101ALI20240927BHJP
【FI】
F24F11/54
F24F11/74
F24F11/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046124
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】安福 雄真
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康浩
(72)【発明者】
【氏名】柴田 洋
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB07
3L260AB17
3L260BA03
3L260BA74
3L260CA12
3L260CA23
3L260EA07
3L260FA03
3L260FA07
3L260FB44
3L260FC06
3L260FC35
3L260JA19
3L260JA23
(57)【要約】
【課題】ガス型床暖房機が設置されている環境下において空調システムを効率的に動作させる技術を提供する。
【解決手段】空調機は、空調室に設けられ、搬送風路を介して空調室とは独立した複数の空間を調温する。システムコントローラ300は、空調機に第1設定温度を設定する。床暖温度取得部は、複数の空間のうちの第1空間10の床下に設けられたガス型床暖房機500であって、かつガスを活用して第1空間10の暖房を行うガス型床暖房機500の動作温度を取得する。システムコントローラ300は、床暖温度取得部により取得された動作温度がしきい値以上の場合に、空調機に設定した第1設定温度を、第1設定温度よりも低い第2設定温度に変更する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調室に設けられ、搬送風路を介して前記空調室とは独立した複数の空間を調温する空調機と、
前記空調機に第1設定温度を設定するシステムコントローラと、
前記複数の空間のうちの第1空間の床下に設けられたガス型床暖房機であって、かつガスを活用して前記第1空間の暖房を行うガス型床暖房機の動作温度を取得する床暖温度取得部とを備え、
前記システムコントローラは、前記床暖温度取得部により取得された前記動作温度がしきい値以上の場合に、前記空調機に設定した前記第1設定温度を、前記第1設定温度よりも低い第2設定温度に変更する、空調システム。
【請求項2】
前記システムコントローラは、
前記床暖温度取得部により取得された前記動作温度が前記しきい値以上から前記しきい値未満に変わった場合に、前記空調機に設定した前記第2設定温度を前記第1設定温度に変更する、請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記しきい値は第1しきい値と呼ばれ、
前記システムコントローラは、
前記動作温度が前記第1しきい値よりも高い第2しきい値以上の場合に前記空調機を停止させる、請求項1に記載の空調システム。
【請求項4】
前記第1空間の空気を前記空調室へ循環させる環気風路と、
前記空調機によって調温された空気を、前記搬送風路を介して前記空調室から前記第1空間へ搬送する搬送ファンと、をさらに備え、
前記システムコントローラは、
前記床暖温度取得部により取得された前記動作温度が前記しきい値未満の場合よりも前記しきい値以上の場合において、前記搬送ファンの送風量を増加させる、請求項1に記載の空調システム。
【請求項5】
前記搬送風路は第1搬送風路と呼ばれ、前記搬送ファンは第1搬送ファンと呼ばれ、
前記複数の空間は、前記第1空間とは異なった第2空間を含み、
前記環気風路によって前記空調室へ循環された空気は前記空調機によって調温されており、調温された空気を第2搬送風路を介して前記空調室から前記第2空間へ搬送する第2搬送ファンをさらに備え、
前記システムコントローラは、
前記床暖温度取得部により取得された前記動作温度が前記しきい値未満の場合よりも前記しきい値以上の場合において、前記第2搬送ファンの送風量を増加させる、請求項4に記載の空調システム。
【請求項6】
前記第1空間は、前記動作温度が前記しきい値以上の床暖稼働空間を含み、
前記第1空間のうちの前記床暖稼働空間以外の空間、または前記複数の空間のうちの前記第1空間以外の空間は、前記動作温度が前記しきい値未満の床暖停止空間を含み、
前記搬送風路は、
前記床暖稼働空間への送風量を調整する床暖稼働空間用ダンパと、
前記床暖停止空間への送風量を調整する床暖停止空間用ダンパと、を備え、
前記システムコントローラは、
前記床暖稼働空間用ダンパと前記床暖停止空間用ダンパとを制御して前記床暖稼働空間と前記床暖停止空間へ送られる送風量を分配し、前記床暖停止空間への送風量を前記床暖稼働空間への送風量よりも多くする、請求項4に記載の空調システム。
【請求項7】
前記床暖停止空間は、前記ガス型床暖房機が設置されていない床暖未設置空間を含み、
前記床暖未設置空間への送風量を調整する前記床暖停止空間用ダンパは、床暖未設置空間用ダンパと呼ばれ、
前記床暖稼働空間の室温を取得する床暖稼働空間温度取得部と、
前記床暖未設置空間の室温を取得する床暖未設置空間温度取得部とをさらに備え、
前記システムコントローラは、
前記床暖稼働空間温度取得部により取得された前記床暖稼働空間の室温が前記第1設定温度以上、かつ前記床暖未設置空間温度取得部により取得された前記床暖未設置空間の室温と前記第1設定温度との差が所定の範囲内の場合に、前記空調機に設定した前記第2設定温度を下げ、前記搬送風路への送風量を増加させ、前記床暖稼働空間用ダンパと前記床暖未設置空間用ダンパとを全開にする、請求項6に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、住宅の空調制御に使用される空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空調システムでは、空調室に設置された全館空調ユニットから延びるダクトが各部屋の吹出口に接続される。全館空調ユニットにおいて空調された空気はダクトを介して各部屋に搬送される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-51019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空調システムが設置された住宅にガス型床暖房機も設置されている場合、空調システムとガス型床暖房機がともに暖房の動作を実行すると、住宅内が必要以上に暖まってしまう。そのような状況において空調システムとガス型床暖房機は無駄な動作を実行している。
【0005】
そこで本開示は、上記課題を解決するものであり、ガス型床暖房機が設置されている環境下において空調システムを効率的に動作させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の、空調システムは、空調室に設けられ、搬送風路を介して空調室とは独立した複数の空間を調温する空調機と、空調機に第1設定温度を設定するシステムコントローラと、複数の空間のうちの第1空間の床下に設けられたガス型床暖房機であって、かつガスを活用して第1空間の暖房を行うガス型床暖房機の動作温度を取得する床暖温度取得部とを備える。システムコントローラは、床暖温度取得部により取得された動作温度がしきい値以上の場合に、空調機に設定した第1設定温度を、第1設定温度よりも低い第2設定温度に変更する。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ガス型床暖房機が設置されている環境下において空調システムを効率的に動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の実施の形態に係る住宅の構成を示す図である。
図2図2は、図1の住宅の構成を示す断面図である。
図3図3(a)-(b)は、図1の全館空調ユニットの構成を示す図である。
図4図4は、図1のシステムコントローラの構成を示す図である。
図5図5は、図4のシステムコントローラによる温度設定手順を示すフローチャートである。
図6図6は、図4のシステムコントローラによる送風量設定手順を示すフローチャートである。
図7図7(a)-(c)は、図1の住宅における床暖稼働空間と床暖停止空間のパターンを示す図である。
図8図8は、図4の記憶部に記憶されるテーブルのデータ構造を示す図である。
図9図9(a)-(c)は、図1の住宅における床暖稼働空間と床暖未設置空間のパターンを示す図である。
図10図10は、図4の記憶部に記憶される別のテーブルのデータ構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の実施の形態につき説明し、本開示の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本開示を具体化した一例であって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。また、全図面を通して、同一の部位については同一の符号を付して二度目以降の説明を省略または簡略化している。以下では、本実施の形態を(1)全体構成と温度制御、(2)送風量制御、(3)ダンパ制御、(4)応用制御の順に説明する。
【0011】
(1)全体構成と温度制御
図1は、住宅1000の構成を示す見取り図である。住宅1000は、集合住宅における一世帯であり、居住者がプライベートな生活を営む場として提供された住居である。住宅1000は、図1の左側と右側において別の住宅1000(図示せず)に接する。そのため、住宅1000の下側の壁、窓、扉である第1面1010が外部に面するとともに、住宅1000の上側の壁、窓、扉である第2面1020が外部に面する。
【0012】
住宅1000は、第1空間10、第2空間20を含む。第1空間10には、第1洋室12、LDK14、キッチン16が含まれ、第2空間20には、第2洋室22、第3洋室24、玄関26が含まれる。また、住宅1000には、第1空間10と第2空間20とは独立して、全館空調ユニット120が設置される後述の空調室(図示せず)、トイレ32、浴室34も含まれる。一般的に、トイレ32、浴室34を含む排気空間30は、第1空間10と第2空間20との間に配置されるが、これに限定されない。また、空調室の空気が搬送される空間は、第1空間10と第2空間20の二空間のみである。
【0013】
このような住宅1000に設置される空調システムは、外気導入口100、外気導入ダクト102、熱交換形換気扇104、排気ダクト106、排気口108、給気ダクト110、全館空調ユニット120、第1搬送ダクト130、第1分岐チャンバー132、第1分岐搬送ダクト134a、134b、134c、134d、第1吹出口136a、136b、136c、136d、第1ダンパ138a、138b、138c、138d、第2搬送ダクト140、第2分岐チャンバー142、第2分岐搬送ダクト144a、144b、144c、144d、第2吹出口146a、146b、146c、146d、第2ダンパ148a、148b、148c、148dを含む。また、空調システムは、排気空間口150、排気空間ダクト152、第1温度センサ190a、190b、190c、第2温度センサ192a、192b、192c、システムコントローラ300、入出力端末400を含む。
【0014】
住宅1000には、ガス型床暖房機500も設置される。ガス型床暖房機500は、第1空間10の床面に設けられる。具体的には、ガス型床暖房機500は第1空間10のうちの第1洋室12、LDK14に設置される。ガス型床暖房機500は、第1空間10のうちのLDK14だけに設置されてもよく、キッチン16にも設置されてもよい。ガス型床暖房機500は、ガスにより温められた水を床の下に通すことにより第1空間10の暖房を行う。
【0015】
ガス型床暖房機500は、ガスにより温められた水を床の下に通すことにより第1空間10の暖房を行う機器である。ガス型床暖房機500には、一般的な機器が用いられるので、詳細な説明は省略するが、ガス型床暖房機500は、暖房を行う機能に対して電気を使用しないため、ガス型床暖房機500の消費電力は空調機200の消費電力に比べ低い。このようなガス型床暖房機500は、空調システムとは独立して動作する。そのため、空調システムは、ガス型床暖房機500の動作を制御できない。
【0016】
外気導入ダクト102、排気ダクト106、給気ダクト110、第1搬送ダクト130、第1分岐搬送ダクト134a、134b、134c、134d、第2搬送ダクト140、第2分岐搬送ダクト144a、144b、144c、144d、排気空間ダクト152は、空気を運ぶ管、つまり風路である。
【0017】
外気導入口100は、第1面1010に設置される。外気導入口100から住宅1000の内部に向かって外気導入ダクト102が延びる。外気導入ダクト102は、熱交換形換気扇104に接続される。熱交換形換気扇104は、例えば、第1空間10と第2空間20の間、第1空間10における第2空間20側、第2空間20における第1空間10側、のいずれかに配置される。ここで、熱交換形換気扇104は、建物の端部に接しない。熱交換形換気扇104には、排気ダクト106も接続され、排気ダクト106は第1面1010に向かって延びる。第1面1010には排気口108が設置され、排気口108には排気ダクト106が接続される。また、熱交換形換気扇104には、給気ダクト110も接続される。
【0018】
熱交換形換気扇104には、外気導入ファン(図示せず)が設置され、外気導入ファンの回転により、外気導入口100から外気50が取り込まれ、外気50が外気導入ダクト102を通って熱交換形換気扇104に流入される。また、熱交換形換気扇104には、住宅1000の内部から換気RA(ReturnAir:還気)52が流入される。換気RA52については後述するが、換気RA52は、住宅1000内を移動した給気に相当する。熱交換形換気扇104は、これらの間で熱交換を行う。熱交換形換気扇104における熱交換には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。熱交換形換気扇104は、熱交換の結果、排気ファン112の回転により、排気ダクト106を通って排気口108から排気54を排出する。また、熱交換形換気扇104は、熱交換された給気を給気ダクト110経由で全館空調ユニット120に供給する。
【0019】
全館空調ユニット120には、給気ダクト110から給気が流入される。また、全館空調ユニット120には、住宅1000の内部から循環RA56が流入される。循環RA56については後述するが、循環RA56は、換気RA52と同様に、住宅1000内を移動した給気に相当する。全館空調ユニット120は、給気と循環RA56とを混合した空気に対して空調を実行する。例えば、全館空調ユニット120では温度、湿度等が制御される。全館空調ユニット120には、第1搬送ダクト130と第2搬送ダクト140が接続される。
【0020】
第1搬送ダクト130は、第1分岐チャンバー132まで延びて、第1分岐チャンバー132において第1分岐搬送ダクト134a、134b、134c、134dに分岐される。第1分岐搬送ダクト134aは、第1洋室12に設置された第1吹出口136aに接続される。第1分岐搬送ダクト134bは、LDK14に設置された第1吹出口136bに接続され、第1分岐搬送ダクト134cは、LDK14に設置された第1吹出口136cに接続される。第1分岐搬送ダクト134dは、キッチン16に設置された第1吹出口136dに接続される。
【0021】
第1分岐搬送ダクト134aには第1ダンパ138aが設けられ、第1ダンパ138aは第1分岐搬送ダクト134aの開閉の程度を変化させる。第1分岐搬送ダクト134bから第1分岐搬送ダクト134dのそれぞれには第1ダンパ138bから第1ダンパ138dが設けられる。第1ダンパ138bから第1ダンパ138dは、第1ダンパ138aと同様に動作する。以下、第1分岐搬送ダクト134a、134b、134c、134dは、特に区別する必要がない場合には「第1分岐搬送ダクト134」と総称する。また、第1吹出口136a、136b、136c、136dは、特に区別する必要がない場合には「第1吹出口136」と総称する。さらに、第1ダンパ138a、138b、138c、138dは、特に区別する必要がない場合には「第1ダンパ138」と総称する。
【0022】
第2搬送ダクト140は、第2分岐チャンバー142まで延びて、第2分岐チャンバー142において第2分岐搬送ダクト144a、144b、144c、144dに分岐される。第2分岐搬送ダクト144aは、第2洋室22に設置された第2吹出口146aに接続される。第2分岐搬送ダクト144bは、玄関26に設置された第2吹出口146bに接続される。第2分岐搬送ダクト144cは、第3洋室24に設置された第2吹出口146cに接続され、第2分岐搬送ダクト144dは、第3洋室24に設置された第2吹出口146dに接続される。
【0023】
第2分岐搬送ダクト144aには第2ダンパ148aが設けられ、第2ダンパ148aは第2分岐搬送ダクト144aの開閉の程度を変化させる。第2分岐搬送ダクト144bから第2分岐搬送ダクト144dのそれぞれには第2ダンパ148bから第2ダンパ148dが設けられる。第2ダンパ148bから第2ダンパ148dは、第2ダンパ148aと同様に動作する。以下、第2分岐搬送ダクト144a、144b、144c、144dは、特に区別する必要がない場合には「第2分岐搬送ダクト144」と総称する。また、第2吹出口146a、146b、146c、146dは、特に区別する必要がない場合には「第2吹出口146」と総称する。さらに、第2ダンパ148a、148b、148c、148dは、特に区別する必要がない場合には「第2ダンパ148」と総称する。
【0024】
全館空調ユニット120の第1搬送ファン122は、空調された空気を第1搬送ダクト130、第1分岐チャンバー132、第1分岐搬送ダクト134a、134b、134c、134d、第1吹出口136a、136b、136c、136d経由で第1空間10の第1洋室12、LDK14、キッチン16に搬送する。第1吹出口136a、136b、136c、136dは、第1搬送ファン122により搬送される空気を第1空間10に吹き出す。そのため、第1搬送ファン122は、第1空間10のみに対応する。第1搬送ファン122は複数備えられてもよい。ここで、第1搬送ダクト130における空気の送風量は、第1分岐搬送ダクト134a、134b、134c、134dの送風量の合計となるので、第1搬送ダクト130の径は第1分岐搬送ダクト134の径よりも大きくされる。
【0025】
その際、第1ダンパ138aにより第1分岐搬送ダクト134aの開閉の程度が変えられることによって、第1分岐搬送ダクト134aにおいて搬送させる空気の風量が変化し、第1吹出口136aから吹き出される空気の風量も変化する。他の第1分岐搬送ダクト134、第1吹出口136、第1ダンパ138についても同様である。
【0026】
全館空調ユニット120の第2搬送ファン124は、空調された空気を第2搬送ダクト140、第2分岐チャンバー142、第2分岐搬送ダクト144a、144b、144c、144d、第2吹出口146a、146b、146c、146d経由で第2空間20の第2洋室22、第3洋室24、玄関26に搬送する。第2吹出口146a、146b、146c、146dは、第2分岐搬送ダクト144a、144b、144c、144dにより搬送される空気を第2空間20に吹き出す。そのため、第2搬送ファン124は、第2空間20のみに対応する。第2搬送ファン124は複数備えられてもよい。ここでも、第2搬送ダクト140の径は第2分岐搬送ダクト144の径よりも大きくされる。
【0027】
その際、第2ダンパ148aにより第2分岐搬送ダクト144aの開閉の程度が変えられることによって、第2分岐搬送ダクト144aにおいて搬送させる空気の風量が変化し、第2吹出口146aから吹き出される空気の風量も変化する。他の第2分岐搬送ダクト144、第2吹出口146、第2ダンパ148についても同様である。
【0028】
第1空間10の内壁面に設けられ、第1搬送ファン122が搬送する空気を吹き出す第1吹出口136a、136b、136c、136dは、第1空間10の天井付近に設置される。第1吹出口136a、136b、136c、136dは、ガス型床暖房機500が設置された床面に対して水平方向に固定される。つまり、第1吹出口136a、136b、136c、136dは、ガス型床暖房機500が設置された床面に対し水平方向に空気を吹き出す。また、第1吹出口136a、136b、136c、136dは、住宅1000の構造に合わせて、下向きの吹き出しとしてもよい。その場合、第1吹出口136a、136b、136c、136dから吹き出される空気は、ガス型床暖房機500が設置された床面に対し垂直方向に空気を吹き出される。
【0029】
図2は、住宅1000の構成を示す断面図である。ここでは、住宅1000における空気の流れを明瞭に説明するために、図1とは方向が一致していない。前述のごとく、住宅1000の第1面1010には、外気導入口100と排気口108が設置される。外気導入口100と排気口108に接続される外気導入ダクト102、排気ダクト106、熱交換形換気扇104、給気ダクト110は天井裏42に配置される。空調室180の天井には給気口182が設置され、給気口182には給気ダクト110が接続される。給気口182は、給気ダクト110を介して熱交換形換気扇104からの給気60を空調室180に吹き出す。
【0030】
空調室180は、前述のごとく、第1空間10と第2空間20とは独立した空間であり、空調室180には全館空調ユニット120が設置される。空調室180には空調室温度センサ194が設置され、空調室温度センサ194は空調室180の温度を取得する。空調室温度センサ194は、無線通信等の通信機能を有し、取得した空調室180の温度をシステムコントローラ300に送信する。全館空調ユニット120に接続された第1搬送ダクト130は、空調室180から天井裏42まで延びる。天井裏42において、第1搬送ダクト130、第1分岐チャンバー132、第1分岐搬送ダクト134cが順に接続される。第1分岐搬送ダクト134cに接続された第1吹出口136cは、LDK14に設けられ、LDK14の床面、つまりガス型床暖房機500に対し水平方向に空気を吹き出す。
【0031】
前述のごとく、第1分岐搬送ダクト134cには第1ダンパ138cが設けられ、第1ダンパ138cが第1分岐搬送ダクト134cの開閉の程度を変えることによって、第1吹出口136cから吹き出される空気の風量が変化する。他の第1分岐搬送ダクト134、第1吹出口136、第1ダンパ138についても同様に配置され、第2搬送ダクト140、第2分岐チャンバー142、第2分岐搬送ダクト144、第2吹出口146、第2ダンパ148も同様に配置される。つまり、第1搬送ダクト130、第2搬送ダクト140、第1分岐搬送ダクト134、第2分岐搬送ダクト144は、少なくとも建物を構成する廊下40の天井裏42を通して配置される。
【0032】
第1吹出口136、第2吹出口146から空気が吹き出されることによって、第1空間10と第2空間20とにもともと存在した空気は、扉18等を超えて住宅1000内を循環する。循環する空気の一部は循環RA56として空調室180に流入される。空調室180内では、循環RA56と給気60とが混合された空気が全館空調ユニット120に取り込まれる。また、循環する空気の別の一部は換気RA52として換気口114から熱交換形換気扇104に取り込まれる。外気50が100リューベであり、かつ排気54も100リューベである場合、換気RA52が100リューベであり、給気60も100リューベである。また、循環RA56が900リューベであると、全館空調ユニット120から搬出される空気の合計は1000リューベになる。この1000リューベの空気によって循環された空気のうち、900リューベ分が循環RA56となり、100リューベ分が換気RA52となる。
【0033】
図3(a)-(b)は、全館空調ユニット120の構成を示す。図3(a)は、全館空調ユニット120の正面図であり、図3(b)は、全館空調ユニット120の側面図である。全館空調ユニット120は、第1搬送ファン122、第2搬送ファン124、空調機200、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ202、機器スイッチ204を含む。全館空調ユニット120の上段から順に空調機200、HEPAフィルタ202、第1搬送ファン122および第2搬送ファン124が配置される。
【0034】
空調機200は、エアコンディショナであり、空調室180の空調を制御する。空調機200は、空調室180の空気の温度が設定された目標温度(空調室目標温度)となるように、空調室180の空気、つまり図2の循環RA56と給気60とが混合され、空調室に導入される空気を冷却または加熱する。空調室180における空調室目標温度は、システムコントローラ300により設定される。空調機200は、加湿および除湿機能を有してもよい。HEPAフィルタ202は、エアフィルタであり、空調機200において空調がなされた空気中からゴミ、塵埃などを取り除き、清浄された空気を出力する。
【0035】
第1搬送ファン122は、空調機200により冷却または加熱された空気であり、HEPAフィルタ202において清浄された空気を第1搬送ダクト130、第1分岐チャンバー132、第1分岐搬送ダクト134経由で第1空間10に搬送する。第2搬送ファン124は、空調機200により冷却または加熱された空気であり、HEPAフィルタ202において清浄された空気を第2搬送ダクト140、第2分岐チャンバー142、第2分岐搬送ダクト144経由で第2空間20に搬送する。第1搬送ファン122および第2搬送ファン124の送風量は、システムコントローラ300によりそれぞれ設定される。機器スイッチ204は、全館空調ユニット120の電源をオン、オフするためのスイッチである。図1に戻る。
【0036】
第1温度センサ190aは、第1洋室12に設置され、第1洋室12の温度(室温)を取得する。第1温度センサ190bは、LDK14に設置され、LDK14の温度(室温)を取得する。第1温度センサ190cは、キッチン16に設置され、キッチン16の温度(室温)を取得する。第1温度センサ190a、190b、190cは、「第1温度センサ190」と総称される。そのため、第1温度センサ190は第1空間10に設置され、第1空間10の温度(室温)を取得する。第1温度センサ190は、無線通信等の通信機能を有し、取得した第1空間10の温度をシステムコントローラ300に送信する。
【0037】
第2温度センサ192aは、第2洋室22に設置され、第2洋室22の温度(室温)を取得する。第2温度センサ192bは、第3洋室24に設置され、第3洋室24の温度(室温)を取得する。第2温度センサ192cは、玄関26に設置され、玄関26の温度(室温)を取得する。第2温度センサ192a、192b、192cは、「第2温度センサ192」と総称される。そのため、第2温度センサ192は第2空間20に設置され、第2空間20の温度(室温)を取得する。第2温度センサ192は、無線通信等の通信機能を有し、取得した第2空間20の温度をシステムコントローラ300に送信する。
【0038】
ガス型床暖房機500において水(温水)が流れる管(図示せず)には、水温を測定するための床暖温度センサ520が設けられる。特に、床暖温度センサ520は、管における第1空間10(第1洋室12またはLDK14の一方)の入口の部分に設けられる。床暖温度センサ520において水温が低ければガス型床暖房機500が動作しておらず、水温が高くなるとガス型床暖房機500が動作している。そのため、床暖温度センサ520において測定された水温は、第1空間10の床下に設けられたガス型床暖房機500であって、かつガスを活用して第1空間10の暖房を行うガス型床暖房機500の動作温度に相当する。床暖温度センサ520は、無線通信等の通信機能を有し、取得した水温(動作温度)をシステムコントローラ300に送信する。
【0039】
床暖温度センサ520は、第1空間10(第1洋室12またはLDK14の一方)の入口の部分だけではなく、第1空間10(第1洋室12またはLDK14の一方)の出口の部分にも設けられてもよい。ガス型床暖房機500が動作していなければ、入口の部分の水温が低く、出口の部分の水温も低いので、入口の部分の水温と出口の部分の水温との差が小さい。一方、ガス型床暖房機500が動作してれば、入口の部分の水温が高くなるが、出口の部分の水温は第1空間10での放熱により低下するので、入口の部分の水温と出口の部分の水温との差が大きい。そのため、入口の部分の水温と出口の部分の水温との差も、ガス型床暖房機500の動作温度に相当する。
【0040】
システムコントローラ300は、空調システム全体を制御するコントローラである。システムコントローラ300は、第1搬送ファン122、第2搬送ファン124、第1ダンパ138、第2ダンパ148、空調機200、第1温度センサ190、第2温度センサ192、空調室温度センサ194、床暖温度センサ520と、無線通信により通信可能に接続される。無線通信で接続されることにより、複雑な配線工事が不要になる。しかしながら、これらのうちの少なくとも一部が有線通信により通信可能に接続されてもよい。
【0041】
システムコントローラ300は、第1温度センサ190、第2温度センサ192、空調室温度センサ194のそれぞれから温度を受信する。システムコントローラ300は、受信した温度をもとに空調機200の温度を設定し、設定した温度を空調機200に送信する。また、システムコントローラ300は、受信した温度をもとに第1搬送ファン122と第2搬送ファン124のそれぞれの送風量を設定し、設定した送風量のそれぞれを第1搬送ファン122と第2搬送ファン124に送信する。このようにシステムコントローラ300は、第1搬送ファン122と第2搬送ファン124を制御する。このような空調制御(以下、「基本空調制御」という)には公知の技術が使用されればよい。
【0042】
入出力端末400は、システムコントローラ300と無線通信により通信可能に接続され、空調システムを構築するために必要な情報の入力を受けつけてシステムコントローラ300に記憶させる。また、入出力端末400は、空調システムの状態をシステムコントローラ300から取得して表示する。入出力端末400は携帯情報端末であり、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末である。入出力端末400は、必ずしも無線通信によりシステムコントローラ300と接続される必要はなく、有線通信により通信可能にシステムコントローラ300と接続されてもよい。この場合、入出力端末400は、例えば、壁掛のリモートコントローラにより実現されてもよい。図1においてシステムコントローラ300と入出力端末400はLDK14に配置されているが、これらはLDK14以外の位置に配置されてもよい。
【0043】
排気空間30の一例であるトイレ32の天井には排気空間口150が設置されており、排気空間口150には排気空間ダクト152が接続され、排気空間ダクト152は熱交換形換気扇104の排気ファン112に接続される。排気ファン112が回転することにより、トイレ32の空気は、排気空間口150、排気ダクト106を通って排気口108から建物外に排出される。一方、排気空間30には、第1搬送ファン122あるいは第2搬送ファン124により搬送される空気を吹き出すための第1吹出口136あるいは第2吹出口146が備えられない。
【0044】
図4は、システムコントローラ300の構成を示す。システムコントローラ300は、通信部302、制御部310、記憶部330を含む。制御部310は、温度制御部312、送風量制御部314、ダンパ制御部318を含む。通信部302は、第1搬送ファン122、第2搬送ファン124、第1ダンパ138、第2ダンパ148、空調機200、第1温度センサ190、第2温度センサ192、空調室温度センサ194、床暖温度センサ520と無線通信を実行する。
【0045】
システムコントローラ300の制御部310は、前述の基本空調制御を実行する。温度制御部312は、第1温度センサ190、第2温度センサ192、空調室温度センサ194のそれぞれから受信した温度をもとに空調機200の温度を設定し、設定した温度を空調機200に送信する。また、温度制御部312は、操作部(図示せず)を介してユーザから受けつけた温度(目標温度)を、設定した温度として空調機200に送信してもよい。以下では、基本空調制御において設定した温度を「第1設定温度」と呼ぶこともある。空調室に設けられた空調機200は、第1設定温度により動作することによって、第1搬送ダクト130、第1分岐搬送ダクト134、第2搬送ダクト140、第2分岐搬送ダクト144を介して空調室とは独立した第1空間10、第2空間20を調温する。
【0046】
送風量制御部314は、第1温度センサ190、第2温度センサ192、空調室温度センサ194のそれぞれから受信した温度をもとに第1搬送ファン122と第2搬送ファン124のそれぞれの送風量を設定し、設定した送風量のそれぞれを第1搬送ファン122と第2搬送ファン124に送信する。また、送風量制御部314は、操作部(図示せず)を介してユーザから受けつけた送風量を、設定した送風量として第1搬送ファン122と第2搬送ファン124に送信してもよい。以下では、基本空調制御において設定した送風量を「第1送風量」と呼ぶこともある。第1送風量において示される第1搬送ファン122の送風量と第2搬送ファン124の送風量は、異なっていてもよい。第1搬送ファン122と第2搬送ファン124のそれぞれは、第1送風量により動作する。
【0047】
システムコントローラ300は、基本空調制御に加えて、ガス型床暖房機500に連動した温度制御を実行する。以下では、この温度制御を説明する。通信部302(取得部)は、床暖温度センサ520からガス型床暖房機500の動作温度を取得する。温度制御部312は、取得した動作温度としきい値(以下、「第1しきい値」という)とを比較する。動作温度が第1しきい値未満である場合、温度制御部312は、基本空調制御により決定した第1温度設定を通信部302経由で空調機200に送信する。つまり、温度制御部312は第1設定温度を空調機200に設定する。動作温度が第1しきい値未満である場合は、ガス型床暖房機500が動作していない状態、またはガス型床暖房機500が動作指定も十分に暖まっていない状態に相当する。
【0048】
一方、動作温度が第1しきい値以上である場合、温度制御部312は、第1設定温度よりも低い第2設定温度を通信部302経由で空調機200に送信する。つまり、温度制御部312は、空調機200に設定した第1設定温度を第2設定温度に変更する。第2設定温度は、例えば、予め定められた温度だけ第1設定温度を下げることによって決定される。第2設定温度の決定はこれに限定されない。動作温度が第1しきい値以上である場合は、ガス型床暖房機500が動作している状態に相当する。そのため、空調機200とガス型床暖房機500が第1空間10を加熱している状態になるので、第1設定温度よりも低い第2設定温度が使用される。
【0049】
温度制御部312は、動作温度が第1しきい値以上から第1しきい値未満に変わった場合に、第1温度設定を通信部302経由で空調機200に送信する。動作温度が第1しきい値以上から第1しきい値未満に変わった場合は、ガス型床暖房機500が動作している状態からガス型床暖房機500が動作していない状態に変わったことに相当する。また、第1温度設定を通信部302経由で空調機200に送信することは、空調機200に設定した第2設定温度を第1設定温度に変更することに相当する。
【0050】
さらに、第1しきい値よりも高い第2しきい値も規定されており、温度制御部312は、動作温度が第1しきい値以上の場合に、動作温度と第2しきい値とを比較する。動作温度が第2しきい値以上の場合に、温度制御部312は、空調機200の停止指示を通信部302経由で空調機200に送信する。つまり、温度制御部312は、空調機200を停止させる。動作温度が第2しきい値以上である場合は、第1空間10が暖まりすぎている状態なので、空調機200を停止することによって消費電力が低減される。
【0051】
本開示における装置、システム、または方法の主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがプログラムを実行することによって、本開示における装置、システム、または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、またはLSI(Large Scale Integration)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0052】
以上の構成による空調システムの動作を説明する。図5は、システムコントローラ300による温度設定手順を示すフローチャートである。温度制御部312は、動作温度を取得する(S10)。動作温度が第1しきい値以上でなければ(S12のN)、温度制御部312は第1設定温度を設定する(S14)。動作温度が第1しきい値以上である場合(S12のY)、動作温度が第2しきい値以上でなければ(S16のN)、温度制御部312は第2設定温度を設定する(S18)。動作温度が第2しきい値以上である場合(S16のY)、温度制御部312は空調機200を停止させる(S20)。
【0053】
(2)送風量制御
システムコントローラ300は、基本空調制御、ガス型床暖房機500に連動した温度制御に加えて、ガス型床暖房機500に連動した送風量制御も実行する。図2に示される廊下40は、LDK14(第1空間10)の空気を循環RA56として空調室180へ循環させる風路(以下、「循環風路」という)でもある。環気風路によって空調室180へ循環された空気は空調機200によって調温される。第1搬送ファン122は、空調機200によって調温された空気を、第1搬送ダクト130、第1分岐チャンバー132、第1分岐搬送ダクト134(以下、「第1搬送風路」という)を介して空調室180から第1空間10へ搬送する。このように、空調室180、第1搬送風路、第1空間10、循環風路、空調室180、第1搬送風路、・・・のように空気は循環する。
【0054】
送風量制御部314は、取得した動作温度と第1しきい値とを比較する。動作温度が第1しきい値未満である場合、送風量制御部314は、基本空調制御により決定した第1送風量を通信部302経由で第1搬送ファン122に送信する。つまり、送風量制御部314は第1送風量を第1搬送ファン122に設定する。一方、動作温度が第1しきい値以上である場合、送風量制御部314は、第1送風量よりも大きい第2送風量を通信部302経由で第1搬送ファン122に送信する。つまり、送風量制御部314は、動作温度が第1しきい値未満の場合よりも第1しきい値以上の場合において、第1搬送ファン122の送風量を増加させる。第1しきい値以上の場合において第1搬送ファン122の送風量を増加することによって、空調室180で空調機200により暖められた空気が多く第1空間10に供給されるとともに、第1空間10でガス型床暖房機500により暖められた空気が多く空調室180に戻される。このような循環によって効率的に空気が暖められる。
【0055】
また、第2搬送ファン124は、空調機200によって調温された空気を、第2搬送ダクト140、第2分岐チャンバー142、第2分岐搬送ダクト144(以下、「第2搬送風路」という)を介して空調室180から第2空間20へ搬送する。このように、第1空間10の空気は、循環風路を介して空調室180に戻り、空調室180から第2搬送風路を介して第2空間20に供給される。
【0056】
送風量制御部314は、取得した動作温度と第1しきい値とを比較する。動作温度が第1しきい値未満である場合、送風量制御部314は、基本空調制御により決定した第1送風量を通信部302経由で第2搬送ファン124に送信する。つまり、送風量制御部314は第1送風量を第2搬送ファン124に設定する。一方、動作温度が第1しきい値以上である場合、送風量制御部314は、第2送風量を通信部302経由で第2搬送ファン124に送信する。つまり、送風量制御部314は、動作温度が第1しきい値未満の場合よりも第1しきい値以上の場合において、第2搬送ファン124の送風量を増加させる。第1しきい値以上の場合において第2搬送ファン124の送風量を増加することによって、空調室180で空調機200により暖められた空気が多く第2空間20に供給される。その結果、効率的に空気が暖められる。
【0057】
図6は、システムコントローラ300による送風量設定手順を示すフローチャートである。送風量制御部314は、動作温度を取得する(S50)。動作温度が第1しきい値以上でなければ(S52のN)、送風量制御部314は第1送風量を設定する(S54)。動作温度が第1しきい値以上である場合(S52のY)、送風量制御部314は第2送風量を設定する(S56)。
【0058】
(3)ダンパ制御
システムコントローラ300は、基本空調制御、ガス型床暖房機500に連動した温度制御、ガス型床暖房機500に連動した送風量制御に加えて、ガス型床暖房機500に連動したダンパ制御も実行する。ここでは、説明を明瞭にするために、これまでの第1空間10、第2空間20を、動作温度が第1しきい値以上の床暖稼働空間と、動作温度が第1しきい値未満の床暖停止空間とに分類する。図1における床暖稼働空間と床暖停止空間は次の通りである。
【0059】
図7(a)-(c)は、住宅1000における床暖稼働空間と床暖停止空間のパターンを示す。図7(a)のパターンでは、床暖稼働空間が第1洋室12とLDK14であり、床暖停止空間がキッチン16と第2空間20の少なくとも1つである。図7(b)のパターンでは、床暖稼働空間が第1洋室12であり、床暖停止空間がLDK14とキッチン16と第2空間20の少なくとも1つである。図7(c)のパターンでは、床暖稼働空間がLDK14であり、床暖停止空間が第1洋室12とキッチン16と第2空間20の少なくとも1つである。つまり、床暖停止空間は、ガス型床暖房機500が設置されているがガス型床暖房機500が動作していない空間、ガス型床暖房機500が設置されていない空間を示す。これは、第1空間10のうちの床暖稼働空間以外の空間、または第2空間20であるともいえる。
【0060】
床暖稼働空間につながる第1分岐搬送ダクト134に設けられた第1ダンパ138、または床暖稼働空間につながる第2分岐搬送ダクト144に設けられた第2ダンパ148は、「床暖稼働空間用ダンパ」とも呼ばれる。床暖稼働空間用ダンパは、床暖稼働空間への送風量を調整する。一方、床暖停止空間につながる第1分岐搬送ダクト134に設けられた第1ダンパ138、または床暖停止空間につながる第2分岐搬送ダクト144に設けられた第2ダンパ148は、「床暖停止空間用ダンパ」とも呼ばれる。床暖停止空間用ダンパは、床暖停止空間への送風量を調整する。
【0061】
ダンパ制御部318は、送風量制御部314が床暖稼働空間への第1搬送ファン122に対して第2送風量を設定している場合、記憶部330に記憶されたテーブルにしたがって床暖稼働空間用ダンパの開度と床暖停止空間用ダンパの開度とを設定する。図8は、記憶部330に記憶されるテーブルのデータ構造を示す。床暖稼働空間用ダンパの開度は第1開度とされ、床暖停止空間用ダンパの開度は第2開度とされる。ここで、第2開度は第1開度よりも大きくされる。第1開度または第2開度の絶対的な値は、基本空調制御により決定されてもよい。つまり、ダンパ制御部318は、床暖停止空間への送風量を床暖稼働空間への送風量よりも多くする。このように、床暖稼働空間用ダンパと床暖停止空間用ダンパとが制御されて床暖稼働空間と床暖停止空間へ送られる送風量が分配される。その結果、ガス型床暖房機500による熱は床暖停止空間に優先的に送られる。
【0062】
(4)応用制御
応用制御は、これまでよりも消費電力を低減するための制御である。応用制御では、床暖停止空間のうち、ガス型床暖房機500が設置されていない空間を効率的に暖める。ここでは、説明を明瞭にするために、ガス型床暖房機500が設置されていない空間(床暖停止空間)を床暖未設置空間と定義する。図1における床暖稼働空間と床暖未設置空間は次の通りである。
【0063】
図9(a)-(c)は、住宅1000における床暖稼働空間と床暖未設置空間のパターンを示す。図9(a)のパターンでは、床暖稼働空間が第1洋室12とLDK14であり、床暖未設置空間がキッチン16と第2空間20の少なくとも1つである。図9(b)のパターンでは、床暖稼働空間が第1洋室12であり、床暖未設置空間がキッチン16と第2空間20の少なくとも1つである。図9(c)のパターンでは、床暖稼働空間がLDK14であり、床暖未設置空間がキッチン16と第2空間20の少なくとも1つである。つまり、床暖未設置空間は、第1空間10のうちのキッチン16、または第2空間20である。床暖未設置空間は予め決まっているので、記憶部330は床暖未設置空間に関する情報を記憶し、制御部310は、記憶部330に記憶された情報を参照することによって床暖未設置空間を特定する。
【0064】
床暖未設置空間につながる第1分岐搬送ダクト134に設けられた第1ダンパ138、または床暖未設置空間につながる第2分岐搬送ダクト144に設けられた第2ダンパ148は、「床暖未設置空間用ダンパ」とも呼ばれる。床暖未設置空間用ダンパは、床暖未設置空間への送風量を調整する。また、床暖稼働空間に設置された第1温度センサ190または第2温度センサ192は、床暖稼働空間温度取得部と呼ばれる。床暖稼働空間温度取得部は、床暖稼働空間の温度(室温)を取得する。床暖未設置空間に設置された第1温度センサ190または第2温度センサ192は、床暖未設置空間温度取得部と呼ばれる。床暖未設置空間温度取得部は、床暖未設置空間の温度(室温)を取得する。
【0065】
システムコントローラ300の制御部310は、通信部302から床暖稼働空間の室温と床暖未設置空間の室温とを取得する。制御部310は、床暖稼働空間の室温と床暖未設置空間の室温と第1設定温度とをもとに、記憶部330に記憶されるテーブルを参照することによって、空調機200、第1搬送ファン122、第2搬送ファン124、第1ダンパ138、第2ダンパ148に対する制御を実行する。
【0066】
図10は、記憶部330に記憶される別のテーブルのデータ構造を示す。床暖稼働空間の室温が第1設定温度以上であり、かつ床暖未設置空間の室温と第1設定温度との差が所定の範囲内の場合に、制御部310は、空調機200に設定した第2設定温度を下げ、第1搬送ファン122と第2搬送ファン124の送風量を増加させ、床暖稼働空間用ダンパと床暖未設置空間用ダンパとを全開にすることを決定する。図4に戻る。
【0067】
温度制御部312は、第2設定温度を下げた温度(以下、「第3設定温度」という)を通信部302経由で空調機200に送信する。つまり、温度制御部312は、空調機200に設定した第2設定温度を第3設定温度に変更する。送風量制御部314は、第2送風量よりも増加させた送風量(以下、「第3送風量」という)を通信部302経由で第1搬送ファン122と第2搬送ファン124に送信する。つまり、送風量制御部314は、第1搬送ファン122と第2搬送ファン124に設定した第2送風量を第3送風量に変更する。ダンパ制御部318は、全開の指示を通信部302経由で床暖稼働空間用ダンパと床暖未設置空間用ダンパに送信する。これは、床暖稼働空間の室温が第1設定温度よりも高くなりすぎ、かつ床暖未設置空間の室温が第1設定温度に近づいている場合、設定温度を下げながら、送風量および開口率を上昇することによって、住宅1000内の熱を全館に循環させる処理である。
【0068】
本実施の形態によれば、ガス型床暖房機500の動作温度が第1しきい値以上の場合に、空調機200に設定した第1設定温度を、第1設定温度よりも低い第2設定温度に変更するので、ガス型床暖房機500が動作している場合に空調機200の消費電力を低減できる。また、ガス型床暖房機500が動作している場合に空調機200の消費電力が低減されるので、ガス型床暖房機500が設置されている環境下において空調システムを効率的に動作させることができる。
【0069】
また、動作温度が第1しきい値以上から第1しきい値未満に変わった場合に、空調機200に設定した第2設定温度を第1設定温度に変更するので、快適な温度に設定できる。また、動作温度が第1しきい値よりも高い第2しきい値以上の場合に空調機200を停止させるので、無駄な電力の消費を回避できる。また、動作温度が第1しきい値未満の場合よりも第11しきい値以上の場合において、第1搬送ファン122の送風量を増加させるので、暖められた空気を提供できる。また、動作温度が第1しきい値未満の場合よりも第1しきい値以上の場合において、第2搬送ファン124の送風量を増加させるので、暖められた空気を提供できる。
【0070】
また、床暖停止空間への送風量を床暖稼働空間への送風量よりも多くするので、暖められた空気を床暖停止空間に多く提供できる。また、床暖稼働空間の室温が第1設定温度以上、かつ床暖未設置空間の室温と第1設定温度との差が所定の範囲内の場合に、第2設定温度を下げ、送風量を増加させ、床暖稼働空間用ダンパと床暖未設置空間用ダンパとを全開にするので、暖められた空気を住宅1000内にまわすことができる。
【0071】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。
(項目1)
空調室(180)に設けられ、搬送風路を介して前記空調室(180)とは独立した複数の空間を調温する空調機(200)と、
前記空調機(200)に第1設定温度を設定するシステムコントローラ(300)と、
前記複数の空間のうちの第1空間(10)の床下に設けられたガス型床暖房機(500)であって、かつガスを活用して前記第1空間(10)の暖房を行うガス型床暖房機(500)の動作温度を取得する床暖温度取得部(302)とを備え、
前記システムコントローラ(300)は、前記床暖温度取得部(302)により取得された前記動作温度がしきい値以上の場合に、前記空調機(200)に設定した前記第1設定温度を、前記第1設定温度よりも低い第2設定温度に変更する、空調システム。
【0072】
(項目2)
前記システムコントローラ(300)は、
前記床暖温度取得部(302)により取得された前記動作温度が前記しきい値以上から前記しきい値未満に変わった場合に、前記空調機(200)に設定した前記第2設定温度を前記第1設定温度に変更する、項目1に記載の空調システム。
【0073】
(項目3)
前記しきい値は第1しきい値と呼ばれ、
前記システムコントローラ(300)は、
前記動作温度が前記第1しきい値よりも高い第2しきい値以上の場合に前記空調機(200)を停止させる、項目1に記載の空調システム。
【0074】
(項目4)
前記第1空間(10)の空気を前記空調室(180)へ循環させる環気風路と、
前記空調機(200)によって調温された空気を、前記搬送風路を介して前記空調室(180)から前記第1空間(10)へ搬送する搬送ファン(122)と、をさらに備え、
前記システムコントローラ(300)は、
前記床暖温度取得部(302)により取得された前記動作温度が前記しきい値未満の場合よりも前記しきい値以上の場合において、前記搬送ファン(122)の送風量を増加させる、項目1に記載の空調システム。
【0075】
(項目5)
前記搬送風路は第1搬送風路と呼ばれ、前記搬送ファン(122)は第1搬送ファン(122)と呼ばれ、
前記複数の空間は、前記第1空間(10)とは異なった第2空間(20)を含み、
前記環気風路によって前記空調室(180)へ循環された空気は前記空調機(200)によって調温されており、調温された空気を第2搬送風路を介して前記空調室(180)から前記第2空間(20)へ搬送する第2搬送ファン(124)をさらに備え、
前記システムコントローラ(300)は、
前記床暖温度取得部(302)により取得された前記動作温度が前記しきい値未満の場合よりも前記しきい値以上の場合において、前記第2搬送ファン(124)の送風量を増加させる、項目4に記載の空調システム。
【0076】
(項目6)
前記第1空間(10)は、前記動作温度が前記しきい値以上の床暖稼働空間を含み、
前記第1空間(10)のうちの前記床暖稼働空間以外の空間、または前記複数の空間のうちの前記第1空間(10)以外の空間は、前記動作温度が前記しきい値未満の床暖停止空間を含み、
前記搬送風路は、
前記床暖稼働空間への送風量を調整する床暖稼働空間用ダンパと、
前記床暖停止空間への送風量を調整する床暖停止空間用ダンパと、を備え、
前記システムコントローラ(300)は、
前記床暖稼働空間用ダンパと前記床暖停止空間用ダンパとを制御して前記床暖稼働空間と前記床暖停止空間へ送られる送風量を分配し、前記床暖停止空間への送風量を前記床暖稼働空間への送風量よりも多くする、項目4に記載の空調システム。
【0077】
(項目7)
前記床暖停止空間は、前記ガス型床暖房機(500)が設置されていない床暖未設置空間を含み、
前記床暖未設置空間への送風量を調整する前記床暖停止空間用ダンパは、床暖未設置空間用ダンパと呼ばれ、
前記床暖稼働空間の室温を取得する床暖稼働空間温度取得部(302)と、
前記床暖未設置空間の室温を取得する床暖未設置空間温度取得部(302)とをさらに備え、
前記システムコントローラ(300)は、
前記床暖稼働空間温度取得部(302)により取得された前記床暖稼働空間の室温が前記第1設定温度以上、かつ前記床暖未設置空間温度取得部(302)により取得された前記床暖未設置空間の室温と前記第1設定温度との差が所定の範囲内の場合に、前記空調機(200)に設定した前記第2設定温度を下げ、前記搬送風路への送風量を増加させ、前記床暖稼働空間用ダンパと前記床暖未設置空間用ダンパとを全開にする、項目6に記載の空調システム。
【0078】
以上、実施の形態に基づき本開示を説明したが、本開示は上記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【符号の説明】
【0079】
10 第1空間、 12 第1洋室、 14 LDK、 16 キッチン、 18 扉、 20 第2空間、 22 第2洋室、 24 第3洋室、 26 玄関、 30 排気空間、 32 トイレ、 34 浴室、 40 廊下、 42 天井裏、 50 外気、 52 換気RA、 54 排気、 56 循環RA、 60 給気、 100 外気導入口、 102 外気導入ダクト、 104 熱交換形換気扇、 106 排気ダクト、 108 排気口、 110 給気ダクト、 112 排気ファン、 114 換気口、 120 全館空調ユニット、 122 第1搬送ファン、 124 第2搬送ファン、 130 第1搬送ダクト、 132 第1分岐チャンバー、 134,134a,134b,134c,134d 第1分岐搬送ダクト、 136,136a,136b,136c,136d 第1吹出口、 138,138a,138b,138c,138d 第1ダンパ、 140 第2搬送ダクト、 142 第2分岐チャンバー、 144,144a,144b,144c,144d 第2分岐搬送ダクト、 146,146a,146b,146c,146d 第2吹出口、 148,148a,148b,148c,148d 第2ダンパ、 150 排気空間口、 152 排気空間ダクト、 180 空調室、 182 給気口、 190,190a,190b,190c 第1温度センサ、 192,192a,192b,192c 第2温度センサ、 194 空調室温度センサ、 200 空調機、 202 HEPAフィルタ、 204 機器スイッチ、 300 システムコントローラ、 302 通信部、 310 制御部、 312 温度制御部、 314 送風量制御部、 318 ダンパ制御部、 330 記憶部、 400 入出力端末、 500 ガス型床暖房機、 510,520 床暖温度センサ、 1000 住宅。
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