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特開2024-135449シリーズハイブリッド車両の発電用内燃機関
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  • 特開-シリーズハイブリッド車両の発電用内燃機関 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135449
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】シリーズハイブリッド車両の発電用内燃機関
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/24 20071001AFI20240927BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20240927BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20240927BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20240927BHJP
   B60W 20/15 20160101ALI20240927BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20240927BHJP
【FI】
B60K6/24
F01N13/08 Z
B60K6/46 ZHV
B60W10/06 900
B60W20/15
B60L50/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046137
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】工藤 邦人
(72)【発明者】
【氏名】有田 凌也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 亮
【テーマコード(参考)】
3D202
3G004
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA07
3D202BB02
3D202BB08
3D202BB09
3D202BB11
3D202CC46
3D202DD22
3D202EE01
3G004AA01
3G004DA01
3G004FA07
3G004GA08
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BD17
5H125CA01
5H125EE31
(57)【要約】
【課題】簡単な工程で触媒コンバータ上流側の排気系部品の断熱を行えるようにする。
【解決手段】バッテリ出力によって走行するシリーズハイブリッド車両において、バッテリSOCが低下したどきに運転される発電用の内燃機関は、常に、熱効率が最良となる定格運転点で運転される。これにより、排気ポート出口での最高排気温度が750℃以下に制限される。排気マニホルドのブランチ部13および触媒コンバータの入口側ディフューザの内面に、常温下で塗膜形成可能な断熱用無機塗料が塗布されており、断熱膜24が形成されている。最高排気温度が比較的に低いことで、常温下での塗布であっても、断熱膜24の剥離が抑制される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ出力によって走行するシリーズハイブリッド車両に用いられる発電用内燃機関において、
発電要求時に、熱効率が最良となる定格運転点で内燃機関の運転を行い、排気ポート出口での最高排気温度を750℃以下に制限するとともに、
上記排気ポート出口に接続された排気マニホルドのブランチ部および排気マニホルドの集合部に接続された触媒コンバータの入口ディフューザ部の内面に、常温下で塗膜形成可能な断熱用無機塗料が塗布されている、
シリーズハイブリッド車両の発電用内燃機関。
【請求項2】
上記ブランチ部は、鋼板のプレス成形品から構成されており、母材の温度が600℃を越えないように運転される、
請求項1に記載のシリーズハイブリッド車両の発電用内燃機関。
【請求項3】
上記ブランチ部は、それぞれ鋼板のプレス成形品からなる第1の半部と第2の半部とを、それぞれが当該ブランチ部の断面の一部を構成するように組み合わせて構成されている、
請求項1に記載のシリーズハイブリッド車両の発電用内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シリーズハイブリッド車両の発電用内燃機関に関し、特に、その排気系の断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気系は、排気浄化のための触媒コンバータを備えているが、触媒コンバータに至るまでの排気通路の表面に断熱用の被覆層を形成することで、冷間始動後の触媒の早期昇温を図ることが提案されている。
【0003】
特許文献1には、排気系の金属基材の表面に、軟化点が300~1000℃の低融点ガラスをコーティングするとともに加熱焼成処理をして第1層を形成し、この第1層の上に、950℃以上の軟化点を有するジルコニア等の結晶性無機材を溶射して第2層を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-167543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように溶射による断熱層の形成では、工程が複雑であるとともに溶射設備が必要であり、好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、バッテリ出力によって走行するシリーズハイブリッド車両に用いられる発電用内燃機関において、
発電要求時に、熱効率が最良となる定格運転点で内燃機関の運転を行い、排気ポート出口での最高排気温度を750℃以下に制限するように構成した上で、
排気ポート出口に接続された排気マニホルドのブランチ部および排気マニホルドの集合部に接続された触媒コンバータの入口ディフューザ部の内面に、常温下で塗膜形成可能な断熱用無機塗料を塗布したものである。
【0007】
熱効率が最良となる定格運転点で内燃機関を運転することで、最高排気温度が低くなる。そのため、断熱用無機塗料を常温下で塗布することにより形成した塗膜を断熱膜として利用することが可能である。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、常温下での塗布工程によって断熱膜が形成されるので、加工が容易であり、かつ溶射等の設備が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】シリーズハイブリッド車両の構成説明図。
図2】触媒コンバータを備えた排気マニホルドの斜視図。
図3図2のA-A線に沿った断面図。
図4】低温始動後の触媒コンバータ入口部の排気温度の特性を示した特性図。
図5】ハンマリング試験による振動レベルを示した特性図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。初めに、この発明の内燃機関が用いられるシリーズハイブリッド車両について説明する。図1は、一実施例のシリーズハイブリッド車両の構成を概略的に示している。シリーズハイブリッド車両は、主に発電機として動作する発電用モータジェネレータ1と、この発電用モータジェネレータ1を電力要求に応じて駆動する発電用内燃機関として用いられる内燃機関2と、主にモータとして動作して駆動輪3を駆動する走行用モータジェネレータ4と、発電した電力を蓄えるバッテリ5と、を備えて構成されている。内燃機関2が発電用モータジェネレータ1を駆動することによって得られた電力は、図示しないインバータ装置を介してバッテリ5に蓄えられる。走行用モータジェネレータ4は、バッテリ5の電力を用いて駆動制御される。走行用モータジェネレータ4の回生時の電力は、やはり図示しないインバータ装置を介してバッテリ5に蓄えられる。
【0011】
モータジェネレータ1,4の動作やバッテリ5の充放電および内燃機関2の運転は、コントローラ6によって制御される。コントローラ6は、モータジェネレータ1,4を制御するモータコントローラ7や内燃機関2を制御するエンジンコントローラ8、バッテリ5を管理するバッテリコントローラ9など、互いに通信可能なように接続された複数のコントローラによって構成されている。コントローラ6には、図示しないアクセルペダルの開度や車速等の情報が入力される。またバッテリコントローラ9は、バッテリ5の電圧・電流に基づいてバッテリ5のSOCを求める。SOCが所定の下限レベルまで低下したときには、エンジンコントローラ8を介して内燃機関2が始動され、発電が行われる。エンジンコントローラ8には、内燃機関2の制御のために一般的に必要な種々のセンサ類が接続されている。このようなシリーズハイブリッド車両の運転モードとしては、内燃機関2の燃焼運転を伴わずにバッテリ5の電力でもって走行するEVモードと、内燃機関2の燃焼運転による発電を行いながら走行を行うHEVモードと、がある。
【0012】
一実施例においては、内燃機関2は、4ストロークサイクルの火花点火式内燃機関いわゆるガソリン機関である。そして、バッテリ5の充電のために運転される内燃機関2は、発電要求があったときに、常に、熱効率が最良となる特定の定格運転点(負荷および回転速度)で運転される。内燃機関2の出力はバッテリ5の充電のために利用され、車両の最大要求出力は、基本的にバッテリ5の出力でもって賄われる。換言すれば、バッテリSOCが低いことで内燃機関2による発電を行いながら走行するHEVモードであっても、内燃機関2は、定格運転点を超える負荷・回転速度で運転されることはない。このように熱効率が最良となる定格運転点で運転することにより、排気系に流入する排気の温度が比較的に低くなる。具体的には、排気ポート出口での最高排気温度が750℃以下に制限される。なお、内燃機関2の暖機運転中は定格運転点以外の運転点で運転され得るが、この場合の排気温度はより低い温度である。
【0013】
図2は、内燃機関2のシリンダヘッドに取り付けられる排気マニホルド11を触媒コンバータ12とともに示した斜視図である。図示例の内燃機関2は、直列3気筒内燃機関であって、排気マニホルド11は、3本のブランチ部13が集合部14において1本に集合した構成を有する。ブランチ部13の先端は、3つの気筒に共通の取付フランジ15にそれぞれ接続されており、この取付フランジ15が図示せぬシリンダヘッドの側面に固定される。これにより、シリンダヘッドに開口する各気筒の排気ポート出口(図示せず)にブランチ部13がそれぞれ接続される。
【0014】
触媒コンバータ12は、円筒状の触媒ケース16と、それぞれ略円錐形をなす入口側ディフューザ17および出口側ディフューザ18と、を有し、入口側ディフューザ17が排気マニホルド11の集合部14に接続されている。出口側ディフューザ18は、排気管接続用フランジ部19を有し、車両の床下へと延びる図示せぬ排気管が接続されるようになっている。触媒ケース16には、図示しない円柱形のセラミックハニカム触媒が収容されている。
【0015】
図3は、図2のA-A線に沿ったブランチ部13および取付フランジ15の断面を示している。図示例の取付フランジ15は、SUS430等のステンレス鋼やSUH409等の耐熱鋼からなる鋼板をプレス成形により所定の形状に形成したものであり、外周縁に曲げ方向の剛性を高めるための折曲部15aを備えている。また、各気筒のブランチ部13が接続される箇所には、ブランチ部13先端が嵌合するように円筒形に立ち上がった円筒部15bが設けられている。ブランチ部13先端部は、この円筒部15bの内側に嵌合しており、円筒部15b先端に沿った溶接部21において互いに溶接されている。
【0016】
また、3本のブランチ部13および集合部14を含む排気マニホルド11は、同様に、SUS430等のステンレス鋼やSUH409等の耐熱鋼からなる鋼板のプレス成形品からなる。詳しくは、3本のブランチ部13の中心線を包含する面にほぼ対応した分割面22に沿って第1半部11Aと第2半部11Bとの2部材に分割されて構成されており、これら第1半部11Aと第2半部11Bとがそれぞれプレス成形された上で、上記分割面22において互いに溶接されている。入口側ディフューザ17は、同様の鋼板を材料として円錐形をなす一つの部材にプレス成形されており、排気マニホルド11の集合部14に小径側の端部を嵌め込んだ上で互いに溶接されている。
【0017】
上記ブランチ部13および集合部14の内面さらには入口側ディフューザ17の内面には、断熱用無機塗料からなる断熱膜24が設けられている。この断熱膜24は、セラミック等の無機成分を主成分とする常温下で塗膜形成可能な無機塗料を用いて、常温下で塗布した塗膜からなる。例えば、スプレーガンによる吹き付け、刷毛やローラによるペインティング、塗料の流し込み、等によって無機塗料が塗布されている。断熱膜24は、例えば、0.4~1.0mm程度の厚みを有する。また、無機塗料の塗布は、溶接前のプレス成形した部品の個々に行ってもよいが、排気マニホルド11と入口側ディフューザ17とを組み立てた状態において内面に塗布を行うことも可能である。
【0018】
このようにセラミックハニカム触媒の上流側となる入口側ディフューザ17および排気マニホルド11の排気通路内面に断熱膜24を備えることで、内燃機関2の冷機始動後に、触媒温度が早期に上昇し、触媒作用が早期に得られるようになる。図4は、低温始動後の触媒コンバータ入口部(触媒担体の直前位置)における排気温度の特性を示した特性図であり、断熱膜24を具備しない比較例(L3)と、0.4mm厚の断熱膜24を有する例(L1)と、1.0mm厚の断熱膜24を有する例(L2)と、を対比して示している。断熱膜24を有することで、断熱膜24を具備しない場合に比較して、例えば、始動後20秒後の段階で、数十℃の温度上昇作用が得られる。
【0019】
また、無機塗料の塗布による断熱膜24は、プレス成形品からなる排気マニホルド11や入口側ディフューザ17からの放射音低減にも寄与する。図5は、上述した排気系部品の母材として用いられるSUS430の平板の一方の面に断熱膜24を塗布した試験片を作成し、ハンマリング試験により生じる振動レベルを計測した結果を示している。ハンマリングによる加振点は断熱膜24の塗布面であり、反対側の金属表面の側の振動レベルを計測している。図中の線L4は断熱膜24を有する場合の特性を、線L5は断熱膜24を具備しない比較例の特性を、それぞれ示す。この図5に示すように、断熱膜24を備えることで、振動減衰作用が得られ、ピーク周波数の振動レベルが例えば8dB程度低下する。
【0020】
本実施例は、上述したように、内燃機関2を常に熱効率が最良となる定格運転点で運転することで排気ポート出口での最高排気温度が750℃以下に制限されるようにしたことと、常温下で塗膜形成可能な無機塗料を用いて常温下での塗布処理により断熱膜24を形成することと、を組み合わせた点に特徴を有する。
【0021】
例えば、内燃機関の出力によって駆動輪を機械的に駆動する車両では、内燃機関が全開出力となったときに、排気温度が900℃以上の高温となり得る。シリーズハイブリッド車両用の内燃機関であっても、車両の最大出力が要求されたときに、バッテリSOCに無関係に内燃機関が定格運転点よりも高い負荷・回転速度でもって運転され、発電用モータジェネレータ1の発電出力を利用して走行用モータジェネレータ4を駆動する構成であると、やはり最高排気温度は900℃以上となり得る。
【0022】
このような900℃以上の高温下では、常温下での単純な塗布によって無機塗料の塗膜を形成した場合、塗膜の剥離が生じやすい。従って、例えば特許文献1に見られる溶射等の技術が必要となる。
【0023】
上記実施例では、内燃機関2を常に熱効率が最良となる定格運転点で運転することで排気ポート出口での最高排気温度が750℃以下に制限されるため、無機塗料の塗布による断熱膜24が過度な高温に晒されることがなく、単純な常温下での塗布によるものであっても、十分な耐久性を維持することができる。
【0024】
従って、排気系部品に対する簡単な塗布処理でもって冷間始動後の触媒の早期昇温を実現することができる。
【0025】
なお、上記のように鋼板のプレス成形による排気系部品の構成では、母材の温度が600℃を越えないように内燃機関2を運転することが好ましい。例えば排気温度の検出などによって母材の温度を監視し、600℃に近付いたときに内燃機関2の連続運転を制限する、などの制御を行うようにしてもよい。
【0026】
以上、この発明の一実施例を説明したが、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記実施例では、排気系部品の全てが鋼板のプレス成形品から構成されているが、一部あるいは全部がプレス成形によらない金属部品であってもよい。
【符号の説明】
【0027】
1…発電用モータジェネレータ
2…内燃機関
4…走行用モータジェネレータ
5…バッテリ
6…コントローラ
8…エンジンコントローラ
11…排気マニホルド
12…触媒コンバータ
13…ブランチ部
17…入口側ディフューザ
24…断熱膜
図1
図2
図3
図4
図5