(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135451
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】両回転式スクロール型圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
F04C18/02 311E
F04C18/02 311P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046139
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】武藤 圭史朗
(72)【発明者】
【氏名】橋本 友次
(72)【発明者】
【氏名】本田 和也
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕之
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 洋介
(72)【発明者】
【氏名】管原 彬人
【テーマコード(参考)】
3H039
【Fターム(参考)】
3H039AA02
3H039AA13
3H039BB28
3H039CC04
3H039CC15
3H039CC28
(57)【要約】
【課題】流体の圧力損失を抑制可能な両回転式スクロール型圧縮機を提供する。
【解決手段】本発明の両回転式スクロール型圧縮機は、従動機構20等を備えている。従動機構20は、駆動スクロール30及び従動スクロール40の一方に設けられた複数の軸部211~216と、駆動スクロール30及び従動スクロール40の他方に設けられた複数の保持部221~226とからなる。各保持部221~226はスクロール室65に連通している。また、この圧縮機では、スクロール室65内の流体を圧縮室12内に吸入させる吸入通路37が形成されており、吸入通路37は、吸入通路37の一部を構成する保持部221~226を通じて、スクロール室65内の流体を圧縮室12内に吸入させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング、駆動機構、駆動スクロール、従動スクロール及び従動機構を備え、
前記ハウジングは、前記駆動スクロール及び前記従動スクロールが収容されるとともに流体が吸入されるスクロール室を有し、
前記駆動スクロールは、前記駆動機構によって駆動軸心周りに回転駆動され、
前記従動スクロールは、前記駆動スクロールに対して偏心しつつ従動軸心周りで前記駆動スクロール及び前記従動機構によって回転従動され、
前記駆動スクロールと前記従動スクロールとによって流体を圧縮する圧縮室が形成される両回転式スクロール型圧縮機であって、
前記従動機構は、前記駆動スクロール及び前記従動スクロールの一方に設けられた複数の軸部と、前記駆動スクロール及び前記従動スクロールの他方に設けられ、内部に前記各軸部を進入させつつ摺動可能に保持するとともに前記スクロール室に連通する複数の保持部とからなり、
前記スクロール室内の流体を前記圧縮室内に吸入させる吸入通路が形成され、
前記吸入通路は、前記吸入通路の一部を構成する前記保持部を通じて、前記スクロール室内の流体を前記圧縮室内に吸入させることを特徴とする両回転式スクロール型圧縮機。
【請求項2】
前記従動スクロールは、前記各軸部が設けられるとともに前記各保持部と対向する従動端板を有し、
前記駆動スクロールは、駆動端板と、前記各保持部が設けられたカバー体とを有し、
前記従動端板は、前記駆動端板と前記カバー体との間に配置され、
前記吸入通路は、前記従動端板と前記カバー体との間に形成される請求項1記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【請求項3】
前記従動スクロールは、前記保持部が形成された従動端板を有し、
前記駆動スクロールは、駆動周壁と、前記駆動周壁との間に前記従動端板の少なくとも一部が配置されたカバー体とを有し、
前記軸部は、前記駆動周壁又は前記カバー体に設けられる請求項1記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【請求項4】
前記従動端板には、前記従動端板の外周面に接続しつつ径方向の内側に向かって凹設され、前記吸入通路に連通する凹部が形成されている請求項2又は3記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【請求項5】
前記流体は冷媒であり、
前記スクロール室は、第1領域と、前記第1領域よりも潤滑油が多く存在する第2領域とを有し、
前記吸入通路は、前記保持部を通じて前記第1領域に連通する請求項1乃至3のいずれか1項記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【請求項6】
前記流体は冷媒であり、
前記スクロール室は、第1領域と、前記第1領域よりも潤滑油が多く存在する第2領域とを有し、
前記吸入通路は、前記保持部を通じて前記第1領域及び前記第2領域に連通し、
前記吸入通路と前記第1領域との連通面積は、前記吸入通路と前記第2領域との連通面積よりも大きい請求項1乃至3のいずれか1項記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【請求項7】
前記流体は冷媒であり、
前記スクロール室は、第1領域と、前記第1領域よりも潤滑油が多く存在する第2領域とを有し、
前記吸入通路は、前記保持部を通じて前記第2領域に連通する請求項1乃至3のいずれか1項記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は両回転式スクロール型圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の
図3に従来のスクロール型圧縮機が開示されている。このスクロール型圧縮機は、ハウジング、駆動機構、固定スクロール、旋回スクロール及び自転防止機構を備えている。ハウジングは、旋回スクロール背面支持体を有している。また、ハウジング内には、流体が吸入される吸入室が形成されている。吸入室内には駆動機構が収容されている。また、ハウジングは旋回スクロール背面支持体を有している。駆動機構は、電動モータと、電動モータに固定されたシャフトとを有している。シャフトは、旋回スクロール背面支持体に回転可能に支持されている。なお、このスクロール型圧縮機において、流体は具体的には冷媒である。
【0003】
固定スクロール及び旋回スクロールはハウジング内に収容されており、それぞれ旋回スクロール背面支持体を挟んで吸入室とは反対側に配置されている。また、固定スクロールはハウジングに固定されている。旋回スクロールはハウジング内において、固定スクロールと旋回スクロール背面支持体との間に配置されている。また、旋回スクロールにはシャフトが挿通されている。自転防止機構は、固定スクロールに設けられた複数のピンと、旋回スクロールに設けられた複数のリングとからなる。各リングは、内部に各ピンをそれぞれ進入させつつ摺動可能に保持している。
【0004】
また、このスクロール型圧縮機では、旋回スクロールに対して、リングと同数の冷媒通路が形成されている。各冷媒通路は、それぞれ旋回スクロールを軸方向に貫通しており、各リングと連通している。さらに、旋回スクロール背面支持体に対して複数の冷媒吸入路が形成されている。各冷媒吸入路は旋回スクロール背面支持体を軸方向に貫通している。
【0005】
このスクロール型圧縮機では、固定スクロールと旋回スクロールとによって、流体を圧縮する圧縮室が形成される。また、電動モータがシャフトを回転させることにより、旋回スクロールが回転する。この際、自転防止機構によって旋回スクロールの自転が防止されることにより、旋回スクロールは固定スクロールに対して公転する。これにより、圧縮室の容積が変化する。
【0006】
そして、このスクロール型圧縮機では、旋回スクロールの公転によって各冷媒吸入路と、各冷媒通路とが連通することにより、吸入室内の流体が冷媒吸入路、冷媒通路及びリング内の順に流通して圧縮室内に吸入される。こうして、このスクロール型圧縮機では、圧縮室に吸入された流体の圧縮が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来のスクロール型圧縮機では、各冷媒吸入路のうち、旋回スクロールの公転によって冷媒吸入路と連通する冷媒通路は、固定スクロールと旋回スクロールとの位相によって決定される。つまり、このスクロール型圧縮機では、吸入室から圧縮室内まで流体を吸入させるための吸入径路が冷媒吸入路、冷媒通路及びリングによって構成されるものの、この吸入径路の位置が固定スクロールと旋回スクロールとの位相によって不可避的に変化することになる。この結果、このスクロール型圧縮機では、圧縮室内に吸入される際の流体の圧力損失が大きくなる。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、流体の圧力損失を抑制可能な両回転式スクロール型圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の両回転式スクロール型圧縮機は、ハウジング、駆動機構、駆動スクロール、従動スクロール及び従動機構を備え、
前記ハウジングは、前記駆動スクロール及び前記従動スクロールが収容されるとともに流体が吸入されるスクロール室を有し、
前記駆動スクロールは、前記駆動機構によって駆動軸心周りに回転駆動され、
前記従動スクロールは、前記駆動スクロールに対して偏心しつつ従動軸心周りで前記駆動スクロール及び前記従動機構によって回転従動され、
前記駆動スクロールと前記従動スクロールとによって流体を圧縮する圧縮室が形成される両回転式スクロール型圧縮機であって、
前記従動機構は、前記駆動スクロール及び前記従動スクロールの一方に設けられた複数の軸部と、前記駆動スクロール及び前記従動スクロールの他方に設けられ、内部に前記各軸部を進入させつつ摺動可能に保持するとともに前記スクロール室に連通する複数の保持部とからなり、
前記スクロール室内の流体を前記圧縮室内に吸入させる吸入通路が形成され、
前記吸入通路は、前記吸入通路の一部を構成する前記保持部を通じて、前記スクロール室内の流体を前記圧縮室内に吸入させることを特徴とする。
【0011】
本発明の両回転式スクロール型圧縮機(以下、単に圧縮機という。)では、吸入通路と、この吸入通路の一部を構成する保持部とを通じて、スクロール室内の流体を圧縮室内に吸入させる。ここで、この圧縮機では、駆動スクロールが駆動機構によって回転駆動され、従動スクロールが駆動スクロール及び従動機構によって回転従動される。このため、この圧縮機では、駆動スクロールと従動スクロールとの位相に依らず、吸入通路と連通する際の保持部の位置が一定の範囲に限定できる。つまり、この圧縮機では、スクロール室内から圧縮室内まで流体を吸入させるための吸入径路が保持部及び吸入通路によって構成されるとともに、この吸入径路の位置について、駆動スクロールと従動スクロールとの位相に関係なく一定の範囲に限定できる。この結果、この圧縮機では、吸入通路と連通する際の保持部の位置、ひいては、流体の吸入径路について、圧縮室内に吸入される際の流体の圧力損失を抑制し得る位置に調整することができる。
【0012】
したがって、本発明の両回転式スクロール型圧縮機は、流体の圧力損失を抑制できる。
【0013】
また、この圧縮機では、スクロール室に連通する各保持部を利用して圧縮室内に流体を吸入させることにより、圧縮室内に流体を吸入させるための専用の吸入口を駆動スクロールや従動スクロールに形成する必要がない。これにより、この圧縮機では、吸入口を設けるためのスペースを駆動スクロールや従動スクロールに確保する必要がない。このため、駆動スクロール及び従動スクロールを小型化することにより、圧縮機の小型化も可能となっている。
【0014】
従動スクロールは、各軸部が設けられるとともに各保持部と対向する従動端板を有し得る。また、駆動スクロールは、駆動端板と、各保持部が設けられたカバー体とを有し得る。さらに、従動端板は、駆動端板とカバー体との間に配置され得る。そして、吸入通路は、従動端板とカバー体との間に形成されることが好ましい。
【0015】
また、従動スクロールは、保持部が形成された従動端板を有し得る。さらに、駆動スクロールは、駆動周壁と、駆動周壁との間に従動端板の少なくとも一部が配置されたカバー体とを有し得る。そして、軸部は、駆動周壁又はカバー体に設けられることも好ましい。
【0016】
これらの場合には、スクロール室内の流体を吸入通路によって圧縮室に好適に吸入させることが可能となることから、流体の圧力損失をより抑制できる。
【0017】
従動端板には、従動端板の外周面に接続しつつ径方向の内側に向かって凹設され、吸入通路に連通する凹部が形成されていることが好ましい。この場合には、吸入通路は、保持部に直接連通するだけでなく、凹部を介して保持部に連通することも可能となるため、吸入通路と保持部とを連通させ易くなる。
【0018】
本発明の圧縮機において、流体は冷媒であり得る。さらに、スクロール室は、第1領域と、第1領域よりも潤滑油が多く存在する第2領域とを有し得る。そして、吸入通路は、保持部を通じて第1領域に連通することが好ましい。
【0019】
第2領域は、潤滑油が多く存在する反面、液相の冷媒である液冷媒も存在し易くなる。この点、この圧縮機では、吸入通路が保持部を通じて第1領域に連通するため、圧縮室内には液冷媒が吸入され難い。
【0020】
また、本発明の圧縮機において、流体は冷媒であり得る。さらに、スクロール室は、第1領域と、第1領域よりも潤滑油が多く存在する第2領域とを有し得る。また、吸入通路は、保持部を通じて第1領域及び第2領域に連通し得る。そして、吸入通路と第1領域との連通面積は、吸入通路と第2領域との連通面積よりも大きいことも好ましい。
【0021】
この場合には、圧縮室内に液冷媒が吸入されることを抑制しつつ、潤滑油についても圧縮室内に好適に吸入させることができる。このため、潤滑油によって駆動スクロール及び従動スクロールを好適に潤滑することができる。また、この圧縮機では、潤滑油によるオイルシールよって圧縮室内の冷媒の漏れを好適に抑制できる。
【0022】
また、本発明の圧縮機において、流体は冷媒であり得る。また、スクロール室は、第1領域と、第1領域よりも潤滑油が多く存在する第2領域とを有し得る。そして、吸入通路は、保持部を通じて第2領域に連通することも好ましい。
【0023】
第2領域には第1領域よりも潤滑油が多く存在するため、圧縮室内に冷媒を吸入させるに当たって、冷媒と共に潤滑油も十分に圧縮室内に吸入させることができる。このため、圧縮室内において駆動スクロール及び従動スクロールを潤滑油によって十分に潤滑することができる。また、この圧縮機では、潤滑油によるオイルシールが好適に発揮されるため、圧縮室内の冷媒の漏れを好適に抑制できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の両回転式スクロール型圧縮機は、流体の圧力損失を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、実施例1の両回転式スクロール型圧縮機の断面図である。
【
図2】
図2は、実施例1の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図1のA-A断面を示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施例1の両回転式スクロール型圧縮機に係り、従動スクロールの背面図である。
【
図4】
図4は、実施例1の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図2と同方向の要部拡大断面図である。
【
図5】
図5は、実施例1の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図4に示す状態よりも駆動スクロール及び従動スクロールが約90°回転した状態を示す要部拡大断面図である。
【
図6】
図6は、実施例1の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図5に示す状態よりも駆動スクロール及び従動スクロールが約90°回転した状態を示す要部拡大断面図である。
【
図7】
図7は、実施例1の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図6に示す状態よりも駆動スクロール及び従動スクロールが約90°回転した状態を示す要部拡大断面図である。
【
図8】
図8は、実施例2の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図2と同方向の断面図である。
【
図9】
図9は、実施例2の両回転式スクロール型圧縮機に係り、従動スクロールの斜視図である。
【
図10】
図10は、実施例2の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図8におけるX部分を示す要部拡大断面図である。
【
図11】
図11は、実施例2の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図8と同方向の要部拡大断面図である。
【
図12】
図12は、実施例2の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図11に示す状態よりも駆動スクロール及び従動スクロールが約90°回転した状態を示す要部拡大断面図である。
【
図13】
図13は、実施例2の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図12に示す状態よりも駆動スクロール及び従動スクロールが約90°回転した状態を示す要部拡大断面図である。
【
図14】
図14は、実施例2の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図13に示す状態よりも駆動スクロール及び従動スクロールが約90°回転した状態を示す要部拡大断面図である。
【
図15】
図15は、実施例3の両回転式スクロール型圧縮機に係り、従動スクロールの斜視図である。
【
図16】
図16は、実施例3の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図2と同方向の断面図である。
【
図17】
図17は、実施例4の両回転式スクロール型圧縮機の断面図である。
【
図18】
図18は、実施例4の両回転式スクロール型圧縮機に係り、ハウジング及びカバー体等を示す
図17のB-B断面図である。
【
図19】
図19は、実施例4の両回転式スクロール型圧縮機に係り、従動端板等を示す
図18と同方向の断面図である。
【
図20】
図20は、実施例4の両回転式スクロール型圧縮機に係り、ハウジング、カバー体及び従動端板等を示す
図18と同方向の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施例1~4を図面を参照しつつ説明する。実施例1~4の圧縮機は、図示しない車両に搭載されており、車両の空調装置を構成している。
【0027】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の圧縮機は、ハウジング6、電動モータ10、駆動スクロール30、従動スクロール40及び従動機構20を備えている。電動モータ10は本発明における「駆動機構」の一例である。
【0028】
本実施例では、
図1に示す実線矢印によって、圧縮機の前後方向及び上下方向を規定している。前後方向と上下方向とは直交している。そして、
図2以降では、
図1に対応して圧縮機の前後方向及び上下方向を規定している。また、本実施例の圧縮機は、自己の下方が車両の下方となる状態で車両に搭載されている。なお、前後方向及び上下方向は説明の便宜のための一例であり、圧縮機は搭載される車両に応じて、自己の姿勢を適宜変更可能である。
【0029】
図1及び
図2に示すように、ハウジング6は、ハウジング本体60と、ハウジングカバー61とによって構成されている。ハウジング本体60及びハウジングカバー61はアルミニウム合金製である。
【0030】
ハウジング本体60は、外周壁60a及び後壁60bを有する有底筒状部材である。
図2に示すように、外周壁60aは、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。駆動軸心O1は前後方向と平行である。また、外周壁60aは内周面601を有している。さらに、外周壁60aには、吸入連絡口69が形成されている。吸入連絡口69は、外周壁60aをハウジング本体60の径方向に貫通している。吸入連絡口69には配管(図示略)が接続されている。これにより、吸入連絡口69は配管を通じて圧縮機の外部に接続している。
【0031】
図1に示すように、後壁60bは、ハウジング本体60の後端に位置している。後壁60bは、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。後壁60bの外周縁は、外周壁60aの後端に接続している。後壁60bの内面中央には第1支持部64が形成されている。第1支持部64は、駆動軸心O1を中心とする略円柱状をなしており、後壁60bの内面中央から前方、すなわち、後述するスクロール室65内に突出している。
【0032】
また、第1支持部64にはピン孔4が形成されている。ピン孔4は第1支持部64の前端面に開口しつつ、第1支持部64内を後方に向かって直線状に延びている。ここで、ピン孔4は第1支持部64を前後方向に貫通しておらず、ピン孔4の後端は第1支持部64内に位置している。
【0033】
ハウジングカバー61は、ハウジング本体60の前方に配置されている。ハウジングカバー61は、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。ハウジングカバー61は、その外周縁がハウジング本体60の外周壁60aの前端に当接した状態で図示しないボルトによってハウジング本体60に固定されている。これにより、ハウジングカバー61は、ハウジング本体60を前方から塞いでいる。こうして、ハウジング本体60内にスクロール室65が形成されている。
【0034】
ハウジングカバー61の内面中央には、第2支持部67が形成されている。第2支持部67は、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしており、ハウジングカバー61の内面中央から後方に突出している。第2支持部67には、ニードルベアリング14の外輪が嵌入している。
【0035】
また、ハウジングカバー61には、吐出連絡口68が形成されている。吐出連絡口68は、ハウジングカバー61の中央に位置しており、ハウジングカバー61を駆動軸心O1方向に貫通している。吐出連絡口68は、後述する吐出室13と連通している。吐出連絡口68には配管(図示略)が接続されている。これにより、吐出連絡口68は配管を通じて圧縮機の外部に接続している。
【0036】
図2に示すように、スクロール室65は吸入連絡口69と連通している。これにより、スクロール室65には、吸入連絡口69に接続された配管を通じて圧縮機の外部から冷媒が吸入される。冷媒は本発明における「流体」の一例である。これにより、スクロール室65は吸入室として機能する。なお、
図2では、説明を容易にするため、電動モータ10の図示を省略している。後述する
図8についても同様である。
【0037】
また、この圧縮機では、駆動軸心O1を通ってハウジング本体60の径方向、すなわち、駆動スクロール30の径方向に延びる仮想の基準線L1が規定されることにより、スクロール室65には第1領域65aと第2領域65bとが設けられている。換言すれば、この圧縮機では、第1領域65a及び第2領域65bによってスクロール室65が形成されている。具体的には、第1領域65aは、スクロール室65において、スクロール室65の上端部分を含め基準線L1よりも圧縮機の上側となる領域である。一方、第2領域65bは、スクロール室65において、スクロール室65の下端部分を含め基準線L1よりも圧縮機の下側となる領域である。
【0038】
ここで、スクロール室65に吸入される冷媒には潤滑油が含まれる。また、スクロール室65内における冷媒は、その多くが気相の冷媒ガスとして存在しているものの、一部は液相の液冷媒として存在し得る。そして、上述のように、この圧縮機は、自己の下方が車両の下方となる状態で車両に搭載されているため、潤滑油及び液冷媒は、重力によってスクロール室65の下端部分を含めスクロール室65の下部に貯留され易くなる。この結果、第1領域65aの全体と第2領域65bの全体とを比較した場合、第2領域65bには、第1領域65aよりも潤滑油及び液冷媒が多く存在している。
【0039】
図1に示すように、電動モータ10はスクロール室65内に収容されている。これにより、スクロール室65は、電動モータ10を収容するモータ室も兼ねている。
【0040】
電動モータ10は、ステータ17及びロータ11によって構成されている。ステータ17は、駆動軸心O1を中心とする円筒状であり、巻き線17aを有している。ステータ17は、外周壁60aの内周面601に嵌入することにより、ハウジング本体60、ひいてはハウジング6に固定されている。
【0041】
ロータ11は、駆動軸心O1周りで円筒状をなしており、ステータ17内に配置されている。詳細な図示を省略するものの、ロータ11は、ステータ17に対応する複数個の永久磁石と、各永久磁石を固定する積層鋼板とで構成されている。
【0042】
駆動スクロール30はアルミニウム合金製である。駆動スクロール30はスクロール室65内に収容されている。駆動スクロール30は、駆動端板31、駆動渦巻体33及びカバー体35を有している。
【0043】
駆動端板31は、駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円板状に延びている。ここで、従動軸心O2は、駆動軸心O1に対して偏心しつつ駆動軸心O1と平行に延びている。つまり、従動軸心O2も前後方向に平行である。
【0044】
駆動端板31は、スクロール室65内においてハウジングカバー61と対向する前面311と、前面311の反対側に位置する後面312とを有している。前面311の中央には、ハウジングカバー61に向かって突出する第1ボス34が形成されている。第1ボス34は、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。
【0045】
また、駆動端板31には、吐出口38が形成されている。吐出口38は、駆動端板31において第1ボス34内となる個所に配置されており、駆動端板31を前後方向に貫通している。
【0046】
さらに、第1ボス34内において、駆動端板31には、吐出リード弁57及びリテーナ58が固定ボルト59によって固定されている。これにより、吐出リード弁57は吐出口38を開閉可能となっており、また、リテーナ58は、吐出リード弁57の開度を調整可能となっている。
【0047】
駆動渦巻体33は駆動端板31と一体をなしており、駆動端板31の後面312から後方、すなわち従動スクロール40に向かって駆動軸心O1及び従動軸心O2と平行に延びている。詳細な図示を省略するものの、駆動渦巻体33は、駆動端板31の中心側を渦巻中心としつつ、渦巻中心から外周に向かって渦巻状に延びている。
【0048】
カバー体35は、本体部35aと周壁部35bを有しており、有底の筒状をなしている。本体部35aは、駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円板状に延びている。本体部35aの中央には、後壁60bに向かって突出する第2ボス35cが形成されている。第2ボス35c内には挿通孔35dが形成されている。挿通孔35dは、第2ボス35c内を含め本体部35aを駆動軸心O1方向に貫通している。これにより、第2ボス35cは駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。
【0049】
挿通孔35d内には滑り軸受51が設けられている。滑り軸受51は、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしており、外径が挿通孔35dの内径とほぼ同径となっており、内径が第1支持部64の外径とほぼ同径となっている。なお、滑り軸受51に換えて、玉軸受等を挿通孔35d内に設けても良い。
【0050】
また、
図2に示すように、本体部35aにおいて第2ボス35cよりも外周となる個所には、第1~6取付孔351~356が形成されている。第1~6取付孔351~356同士は、本体部35aの周方向に等間隔で配置されている。これにより、第1~6取付孔351~356は第2ボス35cを外側から囲っている。また、第1~6取付孔351~356は、それぞれ本体部35aを駆動軸心O1方向に貫通している。
【0051】
第1~6取付孔351~356内には、それぞれ第1~6リング221~226が嵌着されている。第1~6リング221~226は、本発明における「保持部」の一例である。なお、第1~6リング221~226についての詳細は後述する。
【0052】
図1に示すように、周壁部35bは、本体部35aの外周縁と接続している。周壁部35bは、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしており、本体部35aから前方に向かって延びている。周壁部35bは、内周面350を有している。
【0053】
従動スクロール40もアルミニウム合金製である。従動スクロール40は、スクロール室65内、より具体的には駆動スクロール30内に収容されている。従動スクロール40は、従動端板41及び従動渦巻体43を有している。
【0054】
従動端板41は、駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円板状に延びている。従動端板41は前面411と後面412と外周面413とを有している。前面411は、駆動スクロール30内において駆動端板31の後面312と対向している。後面412は、前面411の反対側に位置しており、カバー体35の本体部35aと対向している。外周面413は、前面411と後面412との間に位置している。外周面413は、従動端板41の周方向に一周しつつ前面411及び後面412と接続している。
【0055】
従動端板41には、収容部41aが形成されている。収容部41aは従動端板41の後面412から前方に向かって従動軸心O2を中心とする円柱状に凹設されている。収容部41a内にはブッシュ53が設けられている。なお、ブッシュ53は、滑り軸受や玉軸受等を介して収容部41a内に設けられても良い。
【0056】
また、ブッシュ53には従動ピン55が挿通されている。この際、
図3に示すように、従動ピン55は、ブッシュ53における中心、すなわち従動軸心O2よりも偏心した位置でブッシュ53に挿通されている。従動ピン55は鉄鋼製であり、円柱状をなしている。従動ピン55は、ブッシュ53、ひいては従動端板41から後方に突出している。
【0057】
さらに、従動端板41において、収容部41aよりも外周側には第1~6自転阻止ピン211~216が固定されている。第1~6自転阻止ピン211~216は、本発明における「軸部」の一例である。より具体的には、第1~6自転阻止ピン211~216は、収容部41aよりも外周側であって、第1~6リング221~226と対向する個所に固定されている。これにより、従動端板41において、第1~6自転阻止ピン211~216同士は、従動端板41の周方向に等間隔で配置されている。また、第1~6自転阻止ピン211~216は収容部41a及びブッシュ53を外側から囲っている。
図1に示すように、これらの第1~6自転阻止ピン211~216は、従動端板41に固定された状態で後面412から後方に向かって突出している。
【0058】
従動渦巻体43は従動端板41と一体をなしており、従動端板41の前面411から前方、すなわち駆動端板31に向かって駆動軸心O1及び従動軸心O2と平行に延びている。詳細な図示を省略するものの、従動渦巻体43は、従動端板41の中心側を渦巻中心としつつ、渦巻中心から外周に向かって渦巻状に延びている。
【0059】
従動機構20は、上述の第1~6自転阻止ピン211~216と、第1~6リング221~226とで構成されている。
【0060】
この圧縮機では、カバー体35の周壁部35bを駆動端板31の後面312に向けた状態としつつ、駆動端板31と周壁部35bとでロータ11を挟持している。そして、ロータ11を挟持した状態で駆動端板31、ロータ11及びカバー体35が複数のボルト50によって接続されている。こうして、駆動スクロール30はロータ11と固定され、ロータ11と一体化している。
【0061】
そして、この圧縮機では、駆動スクロール30内に従動スクロール40を収容しつつ、駆動渦巻体33と従動渦巻体43とを噛合させている。また、
図2に示すように、第1~6自転阻止ピン211~216をそれぞれ第1~6リング221~226内に進入させている。こうして、駆動スクロール30と従動スクロール40とが前後方向で組み付けられることにより、駆動スクロール30と従動スクロール40とはスクロール圧縮部100を構成している。なお、より詳細には、駆動渦巻体33と従動渦巻体43とを噛合させ、かつ、第1~6自転阻止ピン211~216を第1~6リング221~226内に進入させた後に、駆動スクロール30では、各ボルト50によって、駆動端板31、ロータ11及びカバー体35を接続している。
【0062】
また、駆動スクロール30と従動スクロール40とが組み付けられることにより、駆動スクロール30と従動スクロール40とによって吸入部30aが形成されている。つまり、駆動渦巻体33及び従動渦巻体43は吸入部30a内に位置している。吸入部30aは、駆動端板31、ロータ11及びカバー体35によってスクロール室65から区画されている。
【0063】
また、駆動スクロール30では、カバー体35の本体部35aが駆動軸心O1方向で駆動渦巻体33、従動渦巻体43及び従動端板41よりも後方に位置している。そして、従動端板41は、カバー体35の内部に配置されている。この際、従動端板41の後面412は、第1~6リング221~226を含め本体部35aと対向している。
【0064】
そして、駆動スクロール30では、駆動端板31の第1ボス34がニードルベアリング14の内輪に内嵌される。これにより、第1ボス34はニードルベアリング14を介してハウジングカバー61の第2支持部67に回転可能に支持されている。このように、第1ボス34が第2支持部67に支持されることにより、ハウジング6内には、第1ボス34の内周面に囲まれ、かつハウジングカバー61と駆動端板31とに挟まれた空間によって、吐出室13が形成されている。
【0065】
また、駆動スクロール30では、滑り軸受51内、つまり第2ボス35c内に第1支持部64を挿通させる。これにより、カバー体35は滑り軸受51を介して第1支持部64に回転可能に支持されている。こうして、駆動スクロール30は、第1支持部64と第2支持部67との両方によってハウジング6に駆動軸心O1周りで回転可能に支持されている。
【0066】
上述のように、カバー体35の本体部35aに形成された第1~6取付孔351~356は、本体部35aを駆動軸心O1方向に貫通している。そして、第1~6リング221~226は第1~6取付孔351~356内に嵌着されている。このため、
図2に示すように、駆動スクロール30がスクロール室65内に収容されることにより、第1~6リング221~226はスクロール室65に面する状態となる。この結果、第1~6リング221~226、より具体的には、第1~6リング221~226の内部は、スクロール室65に連通している。
【0067】
一方、
図1に示すように、従動スクロール40では、従動ピン55が第1支持部64のピン孔4内に挿通される。これにより、従動スクロール40は、従動ピン55によって第1支持部64に従動軸心O2周りで回転可能に支持されている。つまり、駆動スクロール30と異なり、従動スクロール40は、第1支持部64のみによってハウジング6に従動軸心O2周りで回転可能に支持されている。
【0068】
ここで、従動軸心O2は、駆動軸心O1に対して偏心している。このため、従動スクロール40は、ハウジング6に従動軸心O2周りで回転可能に支持されることにより、駆動スクロール30に対して偏心した状態で駆動スクロール30内に収容されている。
【0069】
以上のように構成されたこの圧縮機では、電動モータ10が作動し、ロータ11が回転することにより、スクロール室65内において、駆動スクロール30が駆動軸心O1周りで回転駆動する。つまり、駆動スクロール30とロータ11とは一体で回転駆動する。具体的には、スクロール室65内において、駆動スクロール30は、
図2、4~7において白色矢印で示す回転方向R1に回転する。この際、従動機構20において、第1~6自転阻止ピン211~216はそれぞれ各第1~6リング221~226の内周面を摺接しつつ、第1~6リング221~226を第1~6自転阻止ピン211~216の中心周りで相対的に回転させる。こうして、従動機構20は、従動スクロール40に駆動スクロール30のトルクを伝達する。
【0070】
その結果、従動スクロール40は、従動軸心O2周りで駆動スクロール30及び従動機構20によって回転従動される。具体的には、従動スクロール40も
図2、4~7において白色矢印で示す回転方向R1に回転する。この際、従動機構20は、従動スクロール40が自転することを規制する。これにより、従動スクロール40は駆動スクロール30に対して従動軸心O2周りで相対的に公転する。このように、吸入部30a内において駆動渦巻体33及び従動渦巻体43がそれぞれ回転することで、駆動渦巻体33及び従動渦巻体43は、互いに接触することによって双方の間に圧縮室12を形成する。
【0071】
また、駆動スクロール30が回転駆動し、従動スクロール40が回転従動することにより、カバー体35と従動端板41との間には吸入通路37が形成される。より具体的には、吸入通路37は、周壁部35bの内周面350と従動端板41の外周面413との間であって、かつ、駆動軸心O1に対して従動軸心O2が偏心する方向とは反対方向に形成される。そして、吸入通路37は吸入部30aと連通している。
【0072】
また、駆動スクロール30が回転駆動することに伴い、第1~6取付孔351~356、ひいては第1~6リング221~226は、スクロール室65の第1領域65aと第2領域65bとを順に移動する。つまり、第1リング221は、駆動スクロール30の回転駆動によって、第1領域65aに位置する場合と、第2領域65bに位置する場合とを繰り返すことになる。第2~6リング222~226についても同様である。
【0073】
そして、この圧縮機では、駆動スクロール30が回転駆動し、従動スクロール40が回転従動することにより、すなわち、駆動スクロール30に対して従動スクロール40が偏心しつつ公転することにより、第1~6リング221~226のうちの2つと、吸入通路37とが連通する。つまり、
図2及び
図4~
図7に示すように、駆動スクロール30に対して従動スクロール40が偏心しつつ公転することにより、カバー体35の内部において、従動端板41は、カバー体35の本体部35aに対して偏心しつつ公転する。これにより、従動端板41の外周面413が第1~6リング221~226のうちの2つよりも駆動スクロール30の径方向の内側となることにより、吸入通路37は、その第1~6リング221~226と連通する。換言すれば、本体部35aを駆動軸心O1方向の後方から見た際、従動スクロール40の公転によって、第1~6リング221~226のうち、内部から従動端板41の外周面413が覗く状態となっている第1~6リング221~226と、吸入通路37とが連通する。つまり、第1~6リング221~226のうち、吸入通路37と連通した第1~6リング221~226は、吸入通路37の一部を構成することになる。
【0074】
以下、具体的に説明するに当たり、
図2及び
図4に示す駆動スクロール30及び従動スクロール40の位相を基準とする。
図2及び
図4に示す駆動スクロール30及び従動スクロール40の位相では、従動端板41の外周面413が第1リング221及び第6リング226よりも駆動スクロール30の径方向の内側となる。このため、この位相においては、吸入通路37は、第1リング221及び第6リング226と連通する。つまり、第1、6リング221、226は吸入通路37の一部を構成する。なお、この駆動スクロール30及び従動スクロール40の位相において、第2~5リング222~225に対しては、従動端板41の後面412が全面的に対向する。このため、第2~5リング222~225と吸入通路37とは非連通となる。
【0075】
駆動スクロール30及び従動スクロール40が
図2及び
図4に示す状態よりも回転方向R1に約90°回転した状態を
図5に示す。そして、
図5に示す駆動スクロール30及び従動スクロール40の位相では、外周面413が第5リング225及び第6リング226よりも駆動スクロール30の径方向の内側となる。このため、この位相においては、吸入通路37は、第5リング225及び第6リング226と連通する。つまり、第5、6リング225、226は吸入通路37の一部を構成する。
【0076】
駆動スクロール30及び従動スクロール40が
図5に示す状態よりも回転方向R1に約90°回転した状態(駆動スクロール30及び従動スクロール40が
図2及び
図4に示す状態よりも回転方向R1に約180°回転した状態)を
図6に示す。この
図6に示す駆動スクロール30及び従動スクロール40の位相では、外周面413が第3リング223及び第4リング224よりも駆動スクロール30の径方向の内側となる。このため、この位相においては、吸入通路37は、第3リング223及び第4リング224と連通する。つまり、第3、4リング223、224は吸入通路37の一部を構成する。
【0077】
駆動スクロール30及び従動スクロール40が
図6に示す状態よりも回転方向R1に約90°回転した状態(駆動スクロール30及び従動スクロール40が
図2及び
図4に示す状態よりも回転方向R1に約270°回転した状態)を
図7に示す。この
図7に示す駆動スクロール30及び従動スクロール40の位相では、外周面413が第2リング222及び第3リング223よりも駆動スクロール30の径方向の内側となる。このため、この位相においては、吸入通路37は、第2リング222及び第3リング223と連通する。つまり、第2、3リング222、223は吸入通路37の一部を構成する。
【0078】
ここで、
図2及び
図4に示すように、吸入通路37と連通した際に第1リング221及び第6リング226は、第1領域65aに位置している。同様に、
図5に示すように、吸入通路37と連通した際に第5リング225及び第6リング226は、第1領域65aに位置している。また、
図6に示すように、吸入通路37と連通した際に第3リング223及び第4リング224は、第1領域65aに位置している。さらに、
図7に示すように、吸入通路37と連通した際に第2リング222及び第3リング223は、第1領域65aに位置している。
【0079】
こうして、この圧縮機では、吸入通路37と連通した第1~6リング221~226を通じて、スクロール室65内の冷媒が吸入通路37に流通する。そして、吸入通路37内の冷媒は、吸入部30aを経て圧縮室12内に吸入される。また、圧縮室12は、駆動スクロール30の回転駆動及び従動スクロール40の回転従動に伴い、駆動端板31、駆動渦巻体33、従動端板41及び従動渦巻体43によって吸入部30aから区画される。このため、圧縮室12内に吸入された冷媒は圧縮室内に閉じ込められた状態となる。そして、圧縮室12は、駆動スクロール30の回転駆動及び従動スクロール40の回転従動によって、自己の容積を縮小させつつ冷媒を圧縮する。こうして、吐出圧力まで圧縮された冷媒は、吐出口38から吐出室13に吐出され、さらに、吐出連絡口68に接続された配管によって圧縮機の外部に吐出される。これにより、車両用空調装置による空調が行われる。
【0080】
また、この圧縮機では、
図2及び
図4に示す駆動スクロール30及び従動スクロール40の位相では、第1リング221及び第6リング226は、カバー体35の本体部35aにおいて、ブッシュ53及び従動軸心O2よりも上方に位置した状態で吸入通路37と連通する。同様に、
図5に示す駆動スクロール30及び従動スクロール40の位相では、第5リング225及び第6リング226は、ブッシュ53及び従動軸心O2よりも上方に位置した状態で吸入通路37と連通する。また、
図6に示す駆動スクロール30及び従動スクロール40の位相においても、第3リング223及び第4リング224は、ブッシュ53及び従動軸心O2よりも上方に位置した状態であり、
図7に示す駆動スクロール30及び従動スクロール40の位相においても、第2リング222及び第3リング223は、ブッシュ53及び従動軸心O2よりも上方に位置した状態となっている。
【0081】
このように、この圧縮機では、駆動スクロール30と従動スクロール40との位相に依らず、吸入通路37と連通する際の第1~6リング221~226の位置について、ブッシュ53及び従動軸心O2よりも上方であり、かつ、本体部35aの周方向で隣り合う2つの第1~6リング221~226の範囲に限定されている。つまり、この圧縮機では、スクロール室65内から圧縮室12内まで冷媒を吸入させるための吸入径路が第1~6リング221~226のうちの2つと吸入通路37とによって構成されるとともに、この吸入径路の位置について、駆動スクロール30と従動スクロール40との位相に関係なく、上述の範囲に限定することが可能となっている。換言すれば、この圧縮機では、駆動スクロール30と従動スクロール40との位相によって、吸入径路の位置がブッシュ53及び従動軸心O2よりも上方となる場合と、ブッシュ53及び従動軸心O2よりも下方となる場合とが生じることがない。また、駆動スクロール30と従動スクロール40との位相によって、本体部35aの周方向で隣り合う3つ以上の第1~6リング221~226に対して吸入通路37が連通することもない。
【0082】
この結果、この圧縮機では、吸入通路37と連通する際の第1~6リング221~226の位置、ひいては、冷媒の吸入径路について、圧縮室12内に吸入される際の冷媒の圧力損失を抑制し得る位置に調整することが可能となっている。
【0083】
したがって、実施例1の圧縮機は、冷媒の圧力損失を抑制できる。
【0084】
特に、この圧縮機では、吸入通路37と連通する際、第1~6リング221~226は常に第1領域65aに位置している。このため、吸入通路37は、第1~6リング221~226を通じて第1領域65aと連通している。ここで、第1領域65aは第2領域65bに比べて液冷媒が存在し難い。このため、この圧縮機では、第1~6リング221~226及び吸入通路37を経て圧縮室12に吸入される冷媒には、液冷媒が含まれ難くなっている。これにより、この圧縮機では圧縮室12において液圧縮が生じることを防止している。
【0085】
ところで、第1領域65aの全体と第2領域65bの全体とを比較すると、第1領域65aに比べて第2領域65bには潤滑油が多く存在し得るものの、上述のように吸入通路37が第1~6リング221~226を通じて第1領域65aと連通する構成であっても、圧縮室12に吸入される冷媒には、一定程度の潤滑油は含まれている。このため、この圧縮機では、圧縮室12に吸入される冷媒に含まれた潤滑油によって、駆動スクロール30及び従動スクロール40を好適に潤滑することが可能となっている他、潤滑油によるオイルシールが発揮されることで圧縮室12からの冷媒の漏れも防止可能となっている。
【0086】
(実施例2)
実施例2の圧縮機は、実施例1の圧縮機における従動スクロール40に換えて、
図8及び
図9に示す従動スクロール140を備えている。
図9に示すように、従動スクロール140は、従動端板71及び従動渦巻体43を有している。従動端板71と従動渦巻体43とは一体で形成されている。
【0087】
従動端板41と同様、従動端板71も駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円板状に延びている。従動端板71は前面711と後面712と外周面713とを有している。前面711は、駆動スクロール30内において駆動端板31の後面312と対向している。また、従動渦巻体43が前面711から駆動端板31に向かって延びている。後面712は、前面711の反対側に位置しており、カバー体35の本体部35aと対向している。外周面713は、前面711と後面712との間に位置している。外周面713は、従動端板71の周方向に一周しつつ前面711と接続している。
【0088】
また、従動端板71には凹部714が形成されている。凹部714は、後面712と外周面713との間に位置している。凹部714は、外周面713に接続しつつ従動スクロール140の径方向の内側に向かって凹設されている。また、凹部714は従動端板71を周方向に一周している。そして、後面712と外周面713とは、凹部714を通じて接続している。このように凹部714が形成されることにより、従動端板71において凹部714が形成された箇所は、他の個所に比べて小径となっている。なお、凹部714の形状は適宜設計可能である。
【0089】
さらに、従動端板41と同様、従動端板71の後面712において、第1~6リング221~226と対向する個所には、第1~6自転阻止ピン211~216が固定されている。また、従動端板71にも収容部41aが形成されており、収容部41a内にはブッシュ53が設けられている(
図8参照)。
【0090】
この圧縮機においても、駆動スクロール30内に従動スクロール140が収容されている。また、従動スクロール140では、従動端板71が、カバー体35の内部に配置されている。そして、従動端板71では、後面712が第1~6リング221~226を含め本体部35aと対向している他、
図10に示すように、凹部714が本体部35aと対向しつつ、本体部35aに臨んでいる。この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0091】
この圧縮機では、駆動スクロール30が回転駆動し、従動スクロール140が回転従動する。ここで、実施例1の圧縮機と同様、この圧縮機でも駆動スクロール30及び従動スクロール140は、
図8、11~14において白色矢印で示す回転方向R1に回転する。これにより、この圧縮機では、カバー体35と従動端板71との間に吸入通路39が形成される。より具体的には、吸入通路39は、周壁部35bの内周面350と従動端板71の外周面713との間であって、かつ、駆動軸心O1に対して従動軸心O2が偏心する方向とは反対方向に形成される。図示を省略するものの、吸入通路37と同様に吸入通路39は吸入部30aと連通している。
【0092】
そして、
図8に示すように、この圧縮機では、駆動スクロール30が回転駆動し、従動スクロール140が回転従動することにより、第1~6リング221~226のいずれかと吸入通路39とが連通する。つまり、
図8及び
図11~
図14に示すように、従動端板71の外周面713及び凹部714の少なくとも一方が第1~6リング221~226のいずれかよりも駆動スクロール30の径方向の内側となることにより、吸入通路39は、その第1~6リング221~226と直接連通するか、又は、凹部714を介して連通する。こうして、第1~6リング221~226のうち、吸入通路39と連通した第1~6リング221~226は、吸入通路39の一部を構成することになる。
【0093】
以下、具体的に説明する当たり、
図8及び
図11に示す駆動スクロール30及び従動スクロール140の位相を基準とする。
図8及び
図11に示す駆動スクロール30及び従動スクロール140の位相では、従動端板71の外周面713が第1リング221及び第6リング226よりも駆動スクロール30の径方向の内側となる。また、従動端板71の凹部714が第2リング222よりも駆動スクロール30の径方向の内側となる。これらのため、この位相においては、吸入通路39は、第1リング221、第2リング222及び第6リング226と連通する。つまり、第1、2、6リング221、222、226は吸入通路39の一部を構成する。
【0094】
すなわち、吸入通路39は、第1リング221及び第6リング226とは直接連通し、第2リング222とは凹部714を通じて連通する。ここで、外周面713が第1リング221及び第6リング226よりも駆動スクロール30の径方向の内側となっている際には、凹部714についても第1リング221及び第6リング226よりも駆動スクロール30の径方向の内側となっている。このため、厳密には、吸入通路39は、凹部714を通じても第1リング221及び第6リング226と連通している。なお、この駆動スクロール30及び従動スクロール140の位相において、第3~5リング223~225に対しては、従動端板71の後面712が全面的に対向する。このため、第3~5リング223~225と吸入通路39とは非連通となる。
【0095】
駆動スクロール30及び従動スクロール140が
図8及び
図11に示す状態よりも回転方向R1に約90°回転した状態を
図12に示す。そして、
図12に示す駆動スクロール30及び従動スクロール140の位相では、外周面713が第5リング225及び第6リング226よりも駆動スクロール30の径方向の内側となる。また、凹部714が第1リング221及び第4リング224よりも駆動スクロール30の径方向の内側となる。これらのため、この位相においては、吸入通路39は、第1リング221、第4リング224、第5リング225及び第6リング226と連通する。つまり、第1、4~6リング221、224~226は吸入通路39の一部を構成する。
【0096】
駆動スクロール30及び従動スクロール140が
図12に示す状態よりも回転方向R1に約90°回転した状態(駆動スクロール30及び従動スクロール140が
図8及び
図11に示す状態よりも回転方向R1に約180°回転した状態)を
図13に示す。この
図13に示す駆動スクロール30及び従動スクロール140の位相では、外周面713が第3リング223及び第4リング224よりも駆動スクロール30の径方向の内側となる。さらに、凹部714が第5リング225よりも駆動スクロール30の径方向の内側となる。これらのため、この位相においては、吸入通路39は、第3~5リング223~225と連通する。つまり、第3~5リング223~225は吸入通路39の一部を構成する。
【0097】
駆動スクロール30及び従動スクロール140が
図13に示す状態よりも回転方向R1に約90°回転した状態(駆動スクロール30及び従動スクロール140が
図8及び
図11に示す状態よりも回転方向R1に約270°回転した状態)を
図14に示す。この
図14に示す駆動スクロール30及び従動スクロール140の位相では、外周面713が第2リング222及び第3リング223よりも駆動スクロール30の径方向の内側となる。また、凹部714が第1リング221及第4リング224よりも駆動スクロール30の径方向の内側となる。これらのため、この位相においては、吸入通路39は、第1~4リング221~224と連通する。つまり、第1~4リング221~224は吸入通路39の一部を構成する。
【0098】
ここで、
図8及び
図11に示す駆動スクロール30及び従動スクロール140の位相において、吸入通路39と直接連通する第1リング221及び第6リング226は、第1領域65aに位置している。これに対し、凹部714を通じて吸入通路39と連通する第2リング222は、第2領域65bに位置している。
【0099】
また、
図12に示す駆動スクロール30及び従動スクロール140の位相において、吸入通路39と直接連通する第5リング225及び第6リング226は、第1領域65aに位置している。これに対し、凹部714を通じて吸入通路39と連通する第1リング221及び第4リング224のうち、第4リング224は第1領域65aに位置しており、第1リング221は第2領域65bに位置している。つまり、吸入通路39と連通する第1リング221、第4リング224、第5リング225及び第6リング226のうちの3つは第1領域65aに位置している。
【0100】
また、
図13に示す駆動スクロール30及び従動スクロール140の位相において、吸入通路39と直接連通する第3リング223及び第4リング224は、第1領域65aに位置している。これに対し、凹部714を通じて吸入通路39と連通する第5リング225は第2領域65bに位置している。
【0101】
そして、
図14に示す駆動スクロール30及び従動スクロール140の位相において、吸入通路39と直接連通する第2リング222は、第1領域65aに位置している。これに対し、凹部714を通じて吸入通路39と連通する第1リング221及び第4リング224のうち、第1リング221は第1領域65aに位置しており、第4リング224は第2領域65bに位置している。また、吸入通路39と直接連通する第3リング223は、第1領域65a及び第2領域65bに跨って位置しているものの、第3リング223の大部分は第1領域65aに位置している。
【0102】
この圧縮機では、吸入通路39と連通した第1~6リング221~226を通じて、スクロール室65内の冷媒が吸入通路39に流通する。そして、吸入通路39内の冷媒は、吸入部30aを経て圧縮室12内に吸入される。ここで、この圧縮機では、
図8及び
図11に示す駆動スクロール30及び従動スクロール140の位相では、吸入通路39が第1リング221、第2リング222及び第6リング226と連通し、
図12に示す駆動スクロール30及び従動スクロール140の位相では、吸入通路39が第1リング221、第4リング224、第5リング225及び第6リング226と連通する。そして、
図13に示す駆動スクロール30及び従動スクロール140の位相では、吸入通路39が第3~5リング223~225と連通し、
図14に示す駆動スクロール30及び従動スクロール140の位相では、吸入通路39が第1~4リング221~224と連通する。
【0103】
このように、この圧縮機では、駆動スクロール30と従動スクロール140との位相に依らず、吸入通路39は、第1~6リング221~226うち、本体部35aの周方向で隣り合う3つ、又は4つの第1~6リング221~226の範囲において、第1~6リング221~226と連通する。
【0104】
つまり、この圧縮機では、スクロール室65内から圧縮室12内まで冷媒を吸入させるための吸入径路が第1~6リング221~226及び吸入通路39によって構成されるとともに、この吸入径路の位置について、駆動スクロール30と従動スクロール140との位相に関係なく、本体部35aの周方向で隣り合う3つ、又は4つの第1~6リング221~226の範囲に限定することが可能となっている。換言すれば、この圧縮機では、駆動スクロール30と従動スクロール140との位相により、吸入通路39が第1~6リング221~226うちの1つだけと連通したり、第1~6リング221~226の全てと連通したりすることがない。この結果、この圧縮機では、駆動スクロール30と従動スクロール140との位相によって、吸入径路の位置がブッシュ53の全体よりも下方側となることはない。
【0105】
また、この圧縮機では、吸入通路39と連通した際に、第1~6リング221~226は、スクロール室65の第1領域65a又は第2領域65bに位置している。このため、吸入通路39は、第1~6リング221~226を通じて第1領域65a及び第2領域65bの両方に連通する。ここで、この圧縮機では、吸入通路39と連通した際に第1領域65aに位置している第1~6リング221~226の割合は、第2領域65bに位置している第1~6リング221~226の割合よりも多くなっている。さらに、第1領域65aに位置する第1~6リング221~226と吸入通路39との連通面積の総面積は、第2領域65bに位置する第1~6リング221~226と吸入通路39との連通面積の総面積よりも大きくなっている。この結果、第1~6リング221~226を通じて吸入通路39が第1領域65aに連通する連通面積は、第1~6リング221~226を通じて吸入通路39が第2領域65bに連通する連通面積よりも大きくなっている。
【0106】
これにより、この圧縮機では、吸入通路39を通じて圧縮室12内に冷媒と共に潤滑油を好適に吸入させつつも、液冷媒が圧縮室12内に吸入されることを可及的に抑制することが可能となっている。この圧縮機における他の作用は、実施例1の圧縮機と同様である。
【0107】
(実施例3)
実施例3の圧縮機は、実施例1の圧縮機における従動スクロール40に換えて、
図15及び
図16に示す従動スクロール240を備えている。
図15に示すように、従動スクロール240は、従動端板73及び従動渦巻体43を有している。従動端板73と従動渦巻体43とは一体で形成されている。
【0108】
上述の従動端板41、71と同様、従動端板73も駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円板状に延びている。従動端板73は前面731と後面732と外周面733とを有している。前面731は、駆動スクロール30内に従動スクロール240が収容された際、駆動スクロール30内において駆動端板31の後面312と対向する。また、従動渦巻体43が前面731から駆動端板31に向かって延びている。後面732は、前面731の反対側に位置しており、駆動スクロール30内に従動スクロール240が収容された際にカバー体35の本体部35aと対向する。外周面733は、前面731と後面732との間に位置している。外周面733は、従動端板73の周方向に一周しつつ前面731及び後面732と接続している。
【0109】
さらに、従動端板41、71と同様、従動端板73の後面732において、第1~6リング221~226と対向する個所には、第1~6自転阻止ピン211~216が固定されている。また、従動端板73にも収容部41aが形成されており、収容部41a内にはブッシュ53が設けられている(
図16参照)。
【0110】
図15に示すように、従動端板73には吸入通路74が形成されている。吸入通路74は、後面732から前方に向かって凹設されている。吸入通路74は本体部位74aと延在部位74bとで構成されている。本体部位74aは、後面732において第1~6自転阻止ピン211~216と収容部41aとの間に位置している。より具体的には、本体部位74aは、第1~6自転阻止ピン211~216よりも従動端板73の径方向の内側で収容部41a及び収容部41aの周囲を囲う円環形状をなしている。延在部位74bは、本体部位74aと接続しつつ、本体部位74aから従動端板73の径方向の外側に向かって延びている。そして、延在部位74bは外周面733に接続している。これらの本体部位74a及び延在部位74bにより、吸入通路74は、後面732に凹設されつつ外周面733に連通する形状となっている。
【0111】
この圧縮機では、駆動スクロール30内に従動スクロール240が収容されることにより、従動スクロール240では、従動端板73が、カバー体35の内部に配置される。これにより、この圧縮機では、吸入通路74が周壁部35bの内周面350と従動端板73の外周面733との間を通じて吸入部30aと連通している。
【0112】
そして、従動端板73では、後面732が第1~6リング221~226を含め本体部35aと対向することにより、吸入通路74が本体部35aと対向しつつ、本体部35aに臨んでいる。この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様である。
【0113】
実施例1の圧縮機と同様、この圧縮機では、駆動スクロール30が
図16に示す回転方向R1に回転駆動し、従動スクロール240が回転方向R1に回転従動する。これにより、この圧縮機では、本体部35aを駆動軸心O1方向の後方から見た際、駆動スクロール30と従動スクロール240との位相によって、第1~6リング221~226のうちの少なくとも一つから吸入通路74が覗く状態となる。そして、このように、吸入通路74が覗く状態となっている第1~6リング221~226は、吸入通路74と連通する。つまり、第1~6リング221~226のうち、吸入通路74と連通した第1~6リング221~226は、吸入通路74の一部を構成することになる。
【0114】
これにより、この圧縮機では、吸入通路74と連通した第1~6リング221~226を通じて、スクロール室65内の冷媒が吸入通路74に流通する。そして、吸入通路74内の冷媒は、吸入部30aを経て圧縮室12内に吸入される。
【0115】
ここで、この圧縮機において、駆動スクロール30と従動スクロール240との位相が
図16に示す状態にあるときには、吸入通路74が第1~6リング221~226の全てから覗く状態となる。このため、吸入通路74が第1~6リング221~226の全てと連通し、第1~6リング221~226は、それぞれ吸入通路74を構成することになる。この結果、この圧縮機では、駆動スクロール30と従動スクロール240との位相が
図16に示す状態にあるときには、スクロール室65内の冷媒が第1~6リング221~226及び吸入通路74を流通して圧縮室12内に吸入されることになる。
【0116】
また、駆動スクロール30と従動スクロール240との位相が
図16に示す状態にあるときには、第1、5、6リング221、225、226は第1領域65aに位置しており、第2~4リング222~224は第2領域65bに位置している。このため、第1領域65a及び第2領域65bの両方から圧縮室12内に冷媒が吸入されることになる。この圧縮機における他の作用は実施例1の圧縮機と同様である。
【0117】
(実施例4)
図17に示すように、実施例4の圧縮機は、ハウジング16と、駆動スクロール130と、従動スクロール340とを備えている他、実施例1の圧縮機と同様に電動モータ10と、
図20に示す従動機構20を備えている。すなわち、実施例4の圧縮機も第1~6自転阻止ピン211~216及び第1~6リング221~226を備えている。
【0118】
図17に示すように、ハウジング16は、ハウジング本体160と、軸受ハウジング161と、ハウジングカバー162とによって構成されている。これらのハウジング本体160、軸受ハウジング161及びハウジングカバー162もアルミニウム合金製である。
【0119】
ハウジング本体160は、ハウジング本体60と同様の構成であり、第1外周壁160a及び後壁160bを有している。第1外周壁160aは、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。また、第1外周壁160aには、吸入連絡口168が形成されている。吸入連絡口168は、ハウジング本体160の径方向に延びている。そして、吸入連絡口69と同様、吸入連絡口168にも配管(図示略)が接続されている。これにより、吸入連絡口168は配管を通じて圧縮機の外部に接続している。
【0120】
後壁160bは、ハウジング本体160の後端に位置しており、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。後壁160bは、第1外周壁160aの後端に接続している。後壁160bの内面中央には第1支持部164が形成されている。第1支持部164は、駆動軸心O1を中心とする略円柱状をなしており、後壁160bの内面中央から前方に突出している。第1支持部164には第1滑り軸受151が設けられている。また、第1支持部164には、ピン孔4aが形成されている。
図18に示すように、ピン孔4aは駆動軸心O1に対して偏心した位置で第1支持部164に形成されている。
【0121】
図17に示すように、軸受ハウジング161は、ハウジング本体160の前方に配置されている。軸受ハウジング161は、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。軸受ハウジング161は、外周縁がハウジング本体160の第1外周壁160aの前端に当接している。
【0122】
軸受ハウジング161の中央には、駆動軸心O1を中心とする円筒状の第2支持部166が設けられている。第2支持部166の内部には、第2滑り軸受152が設けられている。なお、第1、2滑り軸受151、152に換えて、第1、2支持部164、166にそれぞれ玉軸受等を設けても良い。
【0123】
ハウジングカバー162は、軸受ハウジング161の前方に配置されている。ハウジングカバー162は、第2外周壁162a及び前壁162bを有する有底筒状部材である。第2外周壁162aは、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしており、駆動軸心O1方向に延びている。
【0124】
前壁162bは、ハウジングカバー162の前端に位置している。前壁162bは、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。前壁162bは第2外周壁162aの前端に接続している。また、前壁162bには、吐出連絡口167が形成されている。吐出連絡口167は駆動軸心O1方向に延びている。そして、吐出連絡口68と同様、吐出連絡口167にも配管(図示略)が接続されている。これにより、吐出連絡口167は配管を通じて圧縮機の外部に接続している。
【0125】
ハウジングカバー162は、第2外周壁162aの後端が軸受ハウジング161の前端、つまり、軸受ハウジング161においてハウジング本体160の第1外周壁160aとは反対側に当接している。そして、ハウジング16では、上述のように軸受ハウジング161が第1外周壁160aと当接し、かつ、第2外周壁162aが軸受ハウジング161に当接した状態で複数のボルト(図示略)によって、ハウジングカバー162、軸受ハウジング161及びハウジング本体160が駆動軸心O1方向で固定されている。
【0126】
こうして、ハウジング16では、軸受ハウジング161によってハウジング本体160の前方が塞がれることにより、ハウジング本体160内にスクロール室165が形成されている。また、ハウジング16では、軸受ハウジング161によってハウジングカバー162の後方が塞がれることにより、ハウジングカバー162内に吐出連絡室169が形成されている。つまり、ハウジング16において、軸受ハウジング161は、スクロール室165と吐出連絡室169とを区画している。
【0127】
また、第1外周壁160aの内周面にステータ17が固定されることにより、スクロール室165内に電動モータ10が収容されている。そして、スクロール室165は吸入連絡口168と連通している。これにより、スクロール室165には吸入連絡口168を通じてハウジング16の外部から冷媒ガスが吸入される。一方、吐出連絡室169は吐出連絡口167と連通している。
【0128】
また、
図20に示すように、この圧縮機では、駆動軸心O1を通って駆動スクロール130の径方向に延びる仮想の基準線L2が規定されることにより、スクロール室165には第1領域165aと第2領域165bとが設けられている。実施例1の圧縮機と同様、第1領域165aの全体と第2領域165bの全体とを比較した場合、第2領域165bには、第1領域165aよりも潤滑油及び液冷媒が多く存在している。
【0129】
図17に示す駆動スクロール130もアルミニウム合金等の金属製である。駆動スクロール130は、駆動端板131、駆動渦巻体133、駆動周壁135及びカバー体137を有している。
【0130】
駆動端板131は、端板本体部131aとボス部131bとからなる。端板本体部131aは、駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円板状に延びている。端板本体部131aは、スクロール室165内において軸受ハウジング161と対向する前面313と、前面313の反対側に位置する後面314とを有している。
【0131】
ボス部131bは、端板本体部131aと一体をなしている。ボス部131bは、駆動端板131の中心に位置しており、前面313から駆動軸心O1方向で前方に向かって円筒状に突出している。これにより、ボス部131bの内部には、吐出室13aが形成されている。
【0132】
吐出室13aは、端板本体部131aに形成された吐出口132と連通している。吐出口132は端板本体部131aを駆動軸心O1方向に貫通している。また、吐出室13a内には、駆動スクロール30と同様に、吐出リード弁57及びリテーナ58が固定ボルト59によって固定されている。
【0133】
駆動渦巻体133は駆動端板131の端板本体部131aと一体をなしており、端板本体部131aの後面314から従動スクロール340に向かって駆動軸心O1及び従動軸心O2と平行に突出している。駆動渦巻体133は、端板本体部131aの中心側を渦巻中心としつつ、渦巻中心から外周に向かって渦巻状に突出している。
【0134】
駆動周壁135は、駆動軸心O1を中心としつつ駆動軸心O1及び従動軸心O2と平行に延びる円筒状に形成されている。駆動周壁135は、前端で端板本体部131aの外周縁と一体をなしている。これにより、駆動周壁135は、駆動端板131と接続しつつ後面314から後方に向かって円筒状に突出する状態となっている。こうして駆動周壁135は、駆動渦巻体133よりも外周側に位置しており、駆動渦巻体133を囲っている。なお、図示を省略するものの、駆動渦巻体133における渦巻の外周端は駆動周壁135の内周面に接続している。
【0135】
また、駆動周壁135の後端面には、3つのボルト孔135aが形成されている。なお、
図17では、3つのボルト孔135aのうちの2つを図示している。また、各ボルト孔135aの個数は適宜設計可能である。
【0136】
カバー体137は、カバー本体部137aとボス部137bとからなる。カバー本体部137aは、駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円板状に延びている。カバー本体部137aは、端板本体部131a及び駆動周壁135と略同径に形成されている。
【0137】
図18に示すように、カバー本体部137aには、3つのボルト孔137dが形成されている他、第1~6自転阻止ピン211~216が設けられている。各ボルト孔137dは、それぞれカバー本体部137aを前後方向に貫通している。第1~6自転阻止ピン211~216は、それぞれカバー本体部137aから前方に向かって突出した状態でカバー本体部137aに固定されている。
【0138】
図17に示すように、ボス部137bは、カバー本体部137aの中央でカバー本体部137aと一体をなしており、カバー本体部137aから駆動軸心O1方向で後方に向かって突出している。ボス部137b内には挿通孔137eが形成されている。挿通孔137eは、ボス部137b内及びカバー本体部137a内を駆動軸心O1方向に貫通している。これにより、ボス部137bは駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。
【0139】
駆動スクロール130は、駆動周壁135をロータ11内に圧入することにより、ロータ11と一体化されている。また、駆動スクロール130において、カバー体137は、駆動渦巻体133及び駆動周壁135よりも後方に配置されている。つまり、カバー体137は、駆動渦巻体133及び駆動周壁135を挟んで駆動端板131とは反対側に配置されている。ここで、カバー体137は、駆動渦巻体133及び駆動周壁135と自己との間に後述する従動端板341を配置可能に、駆動渦巻体133及び駆動周壁135から後方に離隔して配置されている。
【0140】
従動スクロール340もアルミニウム合金製である。従動スクロール340は、従動端板341及び従動渦巻体343を有している。従動端板341は、駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円板状に延びている。従動端板341は、駆動周壁135、カバー体137及びロータ11よりも大径に形成されている。従動端板341は前面421と、前面421の反対側に位置する後面422とを有している。
【0141】
図19に示すように、従動端板341には、3つの貫通孔80が形成されている。各貫通孔80は、従動端板341における外周部、つまり、従動端板341において従動渦巻体343よりも外周側となる個所に配置されており、それぞれ従動端板341を前面421から後面422まで円柱状に貫通している。各貫通孔80同士は、従動端板341の周方向に等間隔で配置されている。
【0142】
また、従動端板341には、第1~6吸入通路811~816が形成されている。第1~6吸入通路811~816は、本発明における「吸入通路」の一例である。各貫通孔80と同様、第1~6吸入通路811~816も従動端板341において従動渦巻体343よりも外周側となる個所に配置されている。第1~6吸入通路811~816は従動端板341の周方向に配置されている。この際、第1吸入通路811と第6吸入通路816との間、第2吸入通路812と第3吸入通路813との間、及び、第4吸入通路814と第5吸入通路815との間にそれぞれ貫通孔80を配置させている。
【0143】
第1~6吸入通路811~816は、それぞれ従動端板341を前面421から後面422まで円柱状に貫通している。ここで、第1~6吸入通路811~816は、各貫通孔80よりも小径であって、第1~6リング221~226の外径とほぼ同径に形成されている。第1~6吸入通路811~816には、それぞれ第1~6リング221~226が嵌着されている。これにより、第1リング221は第1吸入通路811の一部を構成している。同様に、第2~6リング222~226は、それぞれ第2~6吸入通路812~816の一部を構成している。
【0144】
さらに、従動端板341には、収容部84が形成されている。収容部84は従動端板341の中央に位置している。収容部84は、従動端板341の後面422から前方に向かって、従動軸心O2を中心とする円柱状に凹設されている。実施例1の圧縮機と同様、収容部84にはブッシュ53が収容されているとともに、ブッシュ53に対して従動ピン55が挿通されている。これにより、従動ピン55は、ブッシュ53、ひいては従動端板73から後方に突出している。
【0145】
また、従動端板341は、金属製の3つのスペーサ18を有している。各スペーサ18は、各貫通孔80よりも小径に形成されており、それぞれ各貫通孔80内に配置されている。各スペーサ18は同一の形状であり、ボルト85を挿通可能な円筒体をなしており、前後方向に延びている。ここで、各スペーサ18における前後方向の長さは、従動端板341の板厚よりも僅かに長くなっている。なお、各スペーサ18を樹脂製としても良い。
【0146】
従動渦巻体343は従動端板341と一体をなしており、従動端板341の前面421から駆動端板131に向かって駆動軸心O1及び従動軸心O2と平行に突出している。また、従動渦巻体343は、従動端板341の中心側を渦巻中心としつつ、渦巻中心から外周に向かって渦巻状に突出している。
【0147】
この圧縮機では、駆動スクロール130と従動スクロール340とを組み付けるに当たり、上述のように駆動スクロール130において、駆動渦巻体133及び駆動周壁135よりもカバー体137を後方に離隔させて配置する。また、従動スクロール340では、従動端板41の各貫通孔80内にスペーサ18をそれぞれ配置する。そして、従動渦巻体343を駆動端板131に向けた状態としつつ、駆動周壁135とカバー体137との間に従動端板341を配置する。この際、
図20に示すように、第1~6自転阻止ピン211~216をそれぞれ第1~6リング221~226内に進入させる。
【0148】
ここで、従動端板341は、駆動周壁135、カバー体137及びロータ11よりも大径であるため、駆動周壁135とカバー体137との間に従動端板341を配置した状態で、従動端板341の一部、つまり、従動端板341における外周部は、駆動周壁135及びカバー体137よりも従動端板341の径方向の外側に突出する。
【0149】
また、駆動周壁135とカバー体137との間に従動端板341を配置した状態で、駆動周壁135の各ボルト孔135aと、カバー体137の各ボルト孔137dと、各スペーサ18とを駆動軸心O1方向で整合させる。そして、
図17及び
図20に示すように、各ボルト孔137d側から各ボルト85を挿通しつつ、各ボルト85によって駆動周壁135に対してカバー体137を駆動軸心O1方向で固定する。この際、各スペーサ18は駆動周壁135とカバー体137の間に位置しつつ、各ボルト85によって駆動周壁135及びカバー体137に固定される。
【0150】
こうして、この圧縮機では、駆動スクロール130と従動スクロール340とが組み付けられている。そして、駆動スクロール130と従動スクロール340とはスクロール圧縮部101を構成している。また、駆動スクロール130と従動スクロール340とによって吸入部30bが形成されている。吸入部30bは、駆動周壁135と従動渦巻体343との間に位置している。吸入部30bは、駆動端板131、駆動周壁135及び従動端板341によってスクロール室165から区画されている。また、吸入部30b内において駆動渦巻体133と従動渦巻体343とが互いに対向しつつ噛合している。これにより、駆動渦巻体133と従動渦巻体343とは圧縮室12aを形成している。
【0151】
この圧縮機では、各貫通孔80内に位置する各スペーサ18に対して従動端板341が相対的に移動することにより、従動スクロール340は駆動スクロール130に対して従動軸心O2周りで回転可能となっている。ここで、各スペーサ18の前後方向の長さは従動端板341の板厚よりも長いため、駆動周壁135と従動端板341の前面421との間、及び、カバー体137のカバー本体部137aと従動端板341の後面422との間には、隙間が存在している。これにより、従動スクロール340が従動軸心O2周りで回転するに当たって、駆動周壁135及びカバー体137と従動端板341との干渉が防止されている。
【0152】
このように、駆動スクロール130と従動スクロール340とを組み付けた後、駆動スクロール130では、
図17に示すように、カバー体137の挿通孔137e内に第1滑り軸受151を挿通させる。これにより、ボス部137b、ひいてはカバー体137は、第1滑り軸受151を介して第1支持部164に回転可能に支持されている。また、駆動スクロール130では、駆動端板131のボス部131bを第2滑り軸受152内に挿通させる。これにより、駆動端板131は、第2滑り軸受152を介して第2支持部166に回転可能に支持されている。こうして、駆動スクロール130は、スクロール室165内に配置されつつ、第1支持部164と第2支持部166との両方によって、ハウジング16に駆動軸心O1周りで回転可能に支持されている。
【0153】
また、このようにボス部131bを第2滑り軸受152内に挿通させることにより、吐出室13aと吐出連絡室169とが連通する。これにより、吐出室13aは、吐出連絡室169及び吐出連絡口167を通じてハウジング16の外部と連通している。
【0154】
一方、従動スクロール340では、従動ピン55を第1支持部164のピン孔4a内に挿通している。これにより、従動スクロール340は、スクロール室165内に配置されつつ、第1支持部164に従動軸心O2周りで回転可能に支持されている。つまり、駆動スクロール130と異なり、従動スクロール340は、第1支持部164のみによってハウジング16に従動軸心O2周りで回転可能に支持されている。この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様である。
【0155】
以上のように構成されたこの圧縮機では、電動モータ10によって駆動スクロール130が駆動軸心O1周りで回転駆動することにより、従動スクロール340は、従動軸心O2周りで駆動スクロール130及び従動機構20によって回転従動する。この際、実施例1の圧縮機と同様、この圧縮機においても駆動スクロール130は
図20に示す回転方向R1に回転駆動し、従動スクロール340は回転方向R1に回転従動する。このように、従動スクロール340が従動軸心O2周りで回転従動することにより、第1~6吸入通路811~816は、吸入部30bに連通する。
【0156】
ここで、従動端板341は、駆動周壁135、カバー体137及びロータ11よりも大径に形成されている。このため、従動スクロール340が従動軸心O2周りで回転従動すれば、駆動スクロール130と従動スクロール340との位相によって、第1~6リング221~226のうちの少なくとも1つがカバー体137のカバー本体部137aよりも径方向の外側からスクロール室165内に露出する。こうして、スクロール室165内に露出した第1~6リング221~226は、スクロール室165に連通する。この結果、この圧縮機では、スクロール室165に連通した第1~6リング221~226を通じて、第1~6吸入通路811~816がスクロール室165に連通する。
【0157】
具体的には、
図20に示す駆動スクロール130と従動スクロール340との位相では、第1~4リング221~224の各一部がカバー本体部137aよりも径方向の外側からスクロール室165内に露出する。このため、第1~4吸入通路811~814は、第1~4リング221~224を通じてスクロール室165に連通する。これにより、この圧縮機では、スクロール室165の冷媒が第1~4リング221~224及び第1~4吸入通路811~814を流通して吸入部30b、ひいては、圧縮室12a内に吸入される。こうして圧縮室12a内に吸入された冷媒は、圧縮室12a内で圧縮されて吐出室13aに吐出される。また、吐出室13aに吐出された冷媒は、吐出連絡口167に接続された配管によって圧縮機の外部に吐出される。
【0158】
また、
図20に示す駆動スクロール130と従動スクロール340との位相では、第1、2リング221、222がスクロール室165の第1領域165aに露出することから、第1、2吸入通路811、812は、第1、2リング221、222を通じて第1領域165aに連通する。一方、第3、4リング223、224はスクロール室165の第2領域165bに露出することから、第3、4吸入通路813、814は、第3、4リング223、224を通じて第2領域165bに連通する。また、この際における第1、2吸入通路811、812における第1領域165aとの連通面積の合計は、第3、4吸入通路813、814における第2領域165bとの連通面積の合計とほぼ等しくなっている。こうして、
図20に示す駆動スクロール130と従動スクロール340との位相では、第1領域165a内の冷媒と第2領域165bの冷媒とが共に圧縮室12a内に吸入されるようになっている。
【0159】
詳細な図示を省略するものの、駆動スクロール130及び従動スクロール340が
図20に示す状態よりも回転方向R1に回転すれば、第1~4リング221~224のうち、第4リング224は、カバー本体部137aよりも径方向の内側となるため、スクロール室165内に露出しなくなる。また、第6リング226の各一部が新たにカバー本体部137aよりも径方向の外側からスクロール室165内に露出することになる。これらにより、この場合には、第1~3、6吸入通路811~813、816が第1~3、6リング221~223、226を通じてスクロール室165に連通することになる。こうして、この圧縮機においても、実施例1の圧縮機と同様の作用を奏することが可能となっている。
【0160】
以上において、本発明を実施例1~4に即して説明したが、本発明は上記実施例1~4に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0161】
例えば、実施例1の圧縮機では、吸入通路37と連通する際に第1~6リング221~226が第1領域65aに位置している。しかし、これに限らず、吸入通路37と連通する際に第1~6リング221~226が第2領域65bに位置することにより、吸入通路37が第1~6リング221~226を通じて第2領域65bに連通する構成としても良い。
【0162】
また、実施例1の圧縮機では、第1~6取付孔351~356内に嵌着された第1~6リング221~226を本発明における「保持部」としている。しかし、これに限らず、第1~6リング221~226を省略し、第1~6取付孔351~356に第1~6自転阻止ピン211~216を直接保持させることにより、第1~6取付孔351~356を本発明における「保持部」としても良い。実施例2、3の圧縮機についても同様である。
【0163】
また、実施例4の圧縮機において、第1~6吸入通路811~816を第1~6リング221~226よりも小径に形成しても良い。また、第1~6リング221~226を省略し、第1~6吸入通路811~816に第1~6自転阻止ピン211~216を直接保持させても良い。この場合には、第1~6吸入通路811~816は本発明における「保持部」を兼ねることになる。
【0164】
また、実施例4の圧縮機では、カバー体137のカバー本体部137aに対して第1~6自転阻止ピン211~216を設けている。しかし、これに限らず、第1~6自転阻止ピン211~216は、駆動周壁135の後端面から後方に向かって突出した状態で駆動周壁135に設けられても良い。
【0165】
また、実施例1の圧縮機では、従動スクロール40を駆動スクロール30の内部に配置している。しかし、これに限らず、従動スクロール40を駆動スクロール30の外部に配置しつつ、従動スクロール40に本発明における「軸部」を設け、駆動スクロール30に本発明における「保持部」を設ける構成としても良い。実施例2の圧縮機についても同様である。
【0166】
また、実施例1~4の圧縮機では、第1~6自転阻止ピン211~216と第1~6リング221~226とによって従動機構20が構成されている。しかし、これに限らず、従動機構20を構成する自転阻止ピン及びリングの個数は、それぞれ3以上であれば適宜設計可能である。
【0167】
また、実施例1~3の圧縮機では、駆動端板31とカバー体35の周壁部35bとによってロータ11を挟持しつつ、これらをボルト50によって接続している。しかし、これに限らず、駆動端板31と周壁部35bとをボルト50によって直接接続し、周壁部35bの外周面にロータ11を固定する構成としても良い。
【0168】
また、実施例1~3の圧縮機において、駆動スクロール30とロータ11とを駆動軸によって動力伝達可能に接続することにより、駆動スクロール30とロータ11とを駆動軸心O1方向に離隔して配置する構成としても良い。実施例4の圧縮機についても同様である。
【0169】
また、実施例4の圧縮機において、各ボルト85に換えて、各貫通孔80内に配置されつつ、駆動周壁135及びカバー体137にそれぞれ圧入される圧入ピン等によって駆動周壁135にカバー体137を固定しても良い。
【0170】
また、本明細書では以下の発明を含んでいる。
(付記1)
ハウジング、駆動機構、駆動スクロール、従動スクロール及び従動機構を備え、
前記ハウジングは、前記駆動スクロール及び前記従動スクロールが収容されるとともに流体が吸入されるスクロール室を有し、
前記駆動スクロールは、前記駆動機構によって駆動軸心周りに回転駆動され、
前記従動スクロールは、前記駆動スクロールに対して偏心しつつ従動軸心周りで前記駆動スクロール及び前記従動機構によって回転従動され、
前記駆動スクロールと前記従動スクロールとによって流体を圧縮する圧縮室が形成される両回転式スクロール型圧縮機であって、
前記従動機構は、前記駆動スクロール及び前記従動スクロールの一方に設けられた複数の軸部と、前記駆動スクロール及び前記従動スクロールの他方に設けられ、内部に前記各軸部を進入させつつ摺動可能に保持するとともに前記スクロール室に連通する複数の保持部とからなり、
前記スクロール室内の流体を前記圧縮室内に吸入させる吸入通路が形成され、
前記吸入通路は、前記吸入通路の一部を構成する前記保持部を通じて、前記スクロール室内の流体を前記圧縮室内に吸入させることを特徴とする両回転式スクロール型圧縮機。
(付記2)
前記従動スクロールは、前記各軸部が設けられるとともに前記各保持部と対向する従動端板を有し、
前記駆動スクロールは、駆動端板と、前記各保持部が設けられたカバー体とを有し、
前記従動端板は、前記駆動端板と前記カバー体との間に配置され、
前記吸入通路は、前記従動端板と前記カバー体との間に形成される付記1記載の両回転式スクロール型圧縮機。
(付記3)
前記従動スクロールは、前記保持部が形成された従動端板を有し、
前記駆動スクロールは、駆動周壁と、前記駆動周壁との間に前記従動端板の少なくとも一部が配置されたカバー体とを有し、
前記軸部は、前記駆動周壁又は前記カバー体に設けられる付記1記載の両回転式スクロール型圧縮機。
(付記4)
前記従動端板には、前記従動端板の外周面に接続しつつ径方向の内側に向かって凹設され、前記吸入通路に連通する凹部が形成されている付記2又は3記載の両回転式スクロール型圧縮機。
(付記5)
前記流体は冷媒であり、
前記スクロール室は、第1領域と、前記第1領域よりも潤滑油が多く存在する第2領域とを有し、
前記吸入通路は、前記保持部を通じて前記第1領域に連通する付記1乃至4のいずれか1項記載の両回転式スクロール型圧縮機。
(付記6)
前記流体は冷媒であり、
前記スクロール室は、第1領域と、前記第1領域よりも潤滑油が多く存在する第2領域とを有し、
前記吸入通路は、前記保持部を通じて前記第1領域及び前記第2領域に連通し、
前記吸入通路と前記第1領域との連通面積は、前記吸入通路と前記第2領域との連通面積よりも大きい付記1乃至4のいずれか1項記載の両回転式スクロール型圧縮機。
(付記7)
前記流体は冷媒であり、
前記スクロール室は、第1領域と、前記第1領域よりも潤滑油が多く存在する第2領域とを有し、
前記吸入通路は、前記保持部を通じて前記第2領域に連通する付記1乃至4のいずれか1項記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本開示は車両の空調装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0172】
6、16…ハウジング
10…電動モータ(駆動機構)
12、12a…圧縮室
20…従動機構
30、130…駆動スクロール
35、137…カバー体
37、39、74…吸入通路
40、140、240、340…従動スクロール
41、71、73、341…従動端板
65、165…スクロール室
65a、165a…第1領域
65b、165b…第2領域
135…駆動周壁
211~216…第1~6自転阻止ピン(軸部)
221~226…第1~6リング(保持部)
413、713、733…外周面
714…凹部
811~816…第1~6吸入通路(吸入通路)
O1…駆動軸心
O2…従動軸心