(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135460
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】測量装置
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20240927BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01C15/00 103D
G01C3/06 110A
G01C3/06 120Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046151
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 太一
【テーマコード(参考)】
2F112
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112CA06
2F112CA12
2F112DA09
2F112DA15
2F112DA19
2F112DA21
2F112DA25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バックフォーカスを確保し、追尾可能な範囲拡大を図る測量装置を提供する。
【解決手段】測定対象物に測距光35を射出する発光素子28を有する測距光射出部23と、測定対象物からの反射測距光49を受光する受光素子39を有する測距光受光部24と、測定対象物に測距光と同軸で追尾光36を射出する追尾発光素子53を有する追尾光射出部25と、測定対象物からの反射追尾光51を反射測距光と同軸で受光する追尾受光素子を有する追尾光受光部と26、測距光射出部と追尾光射出部とを制御し、受光素子に対する反射測距光の受光結果に基づき測定対象物迄の距離を演算すると共に、追尾受光素子に対する反射追尾光の受光位置に基づき測定対象物と追尾受光素子の中心との位置偏差を演算する演算制御部とを具備し、測距光受光部と追尾光受光部は受光プリズムを有し、該受光プリズムは反射追尾光を3回内部反射させる様構成された。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に測距光を射出する発光素子を有する測距光射出部と、前記測定対象物からの反射測距光を受光する受光素子を有する測距光受光部と、前記測定対象物に前記測距光と同軸で追尾光を射出する追尾発光素子を有する追尾光射出部と、前記測定対象物からの反射追尾光を前記反射測距光と同軸で受光する追尾受光素子を有する追尾光受光部と、前記測距光射出部と前記追尾光射出部とを制御し、前記受光素子に対する前記反射測距光の受光結果に基づき前記測定対象物迄の距離を演算すると共に、前記追尾受光素子に対する前記反射追尾光の受光位置に基づき前記測定対象物と前記追尾受光素子の中心との位置偏差を演算する演算制御部とを具備し、前記測距光受光部と前記追尾光受光部は受光プリズムを有し、該受光プリズムは前記反射追尾光を3回内部反射させる様構成された測量装置。
【請求項2】
前記受光プリズムは、第1プリズムと、該第1プリズムと接合された第2プリズムとを有し、前記第1プリズムと前記第2プリズムとの接合面に分離面が形成され、該分離面は前記反射測距光を透過させて前記受光素子に受光させ、前記反射追尾光を反射させて前記追尾受光素子に受光させる様構成された請求項1に記載の測量装置。
【請求項3】
前記第1プリズムは、前記反射追尾光が直角に入射する第1面と、該第1面を透過した前記反射追尾光を反射させる第2面と、該第2面で反射された前記反射追尾光を前記第1面に向って反射する前記分離面としての第3面と、前記第1面で反射された前記反射追尾光が直角に入射する第4面とを有する様構成された請求項2に記載の測量装置。
【請求項4】
前記第1プリズムは、前記反射追尾光が直角に入射する第1面と、該第1面を透過した前記反射追尾光を反射させる第2面と、該第2面で反射された前記反射追尾光を前記第1面に向って反射する前記分離面としての第3面とを有し、前記第1面と前記第2面にショートパスフィルタが蒸着され、前記第1面を透過した前記反射追尾光が透過率が0%付近となる入射角で前記第2面に入射し、該第2面と前記第3面で順次反射された前記反射追尾光が透過率が0%付近となる入射角で前記第1面に入射し、該第1面で反射された前記反射追尾光が直角に前記第2面に入射する様に構成された請求項2に記載の測量装置。
【請求項5】
前記第1プリズムは、前記反射追尾光が直角に入射する第1面と、該第1面を透過した前記反射追尾光を反射させる第2面と、該第2面で反射された前記反射追尾光を前記第1面に向って反射する前記分離面としての第3面とを有し、前記第1面と前記第2面にARコートが蒸着され、前記第1面を透過した前記反射追尾光が全反射臨界角以上となる入射角で前記第2面に入射し、該第2面と前記第3面で順次反射された前記反射追尾光が全反射臨界角以上となる入射角で前記第1面に入射し、該第1面で反射された前記反射追尾光が直角に前記第2面に入射する様に構成された請求項2に記載の測量装置。
【請求項6】
前記受光プリズムは前記第1プリズムの前記第2面に接合された第3プリズムを更に有し、前記第1プリズムと前記第3プリズムの接合面に前記反射測距光と前記反射追尾光を反射し、可視光を透過する分離膜を形成し、該分離膜の透過光軸上に視準部が設けられた請求項3に記載の測量装置。
【請求項7】
前記受光素子と前記受光プリズムとの間と、前記追尾受光素子と前記受光プリズムの間に、それぞれバンドパスフィルタが設けられた請求項3~請求項6のうちのいずれか1項に記載の測量装置。
【請求項8】
前記第1プリズムと前記第2プリズムとの間に色ガラスが介設され、該色ガラスと前記第2プリズムとの接合面に前記分離面が形成された請求項3~請求項6のうちのいずれか1項に記載の測量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の3次元座標を取得可能な測量装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザスキャナやトータルステーション等の測量装置は、測定対象物として再帰反射性を有するプリズムを用いたプリズム測距、反射プリズムを用いないノンプリズム測距により測定対象物迄の距離を検出する光波距離測定装置を有している。
【0003】
測量装置には、測定対象物の測距と追尾を同時に実行するものがあるが、従来の追尾受光系の場合、バックフォーカスが不足する為、焦点距離の長い受光レンズを使用する必要がある。この為、追尾受光系の画角が小さくなり、再帰反射性を有するプリズムの追尾可能な範囲が狭く、特に近距離やプリズムの移動速度が速い場合には使い勝手が悪くなる虞れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、バックフォーカスを確保し、追尾可能な範囲拡大を図る測量装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、測定対象物に測距光を射出する発光素子を有する測距光射出部と、前記測定対象物からの反射測距光を受光する受光素子を有する測距光受光部と、前記測定対象物に前記測距光と同軸で追尾光を射出する追尾発光素子を有する追尾光射出部と、前記測定対象物からの反射追尾光を前記反射測距光と同軸で受光する追尾受光素子を有する追尾光受光部と、前記測距光射出部と前記追尾光射出部とを制御し、前記受光素子に対する前記反射測距光の受光結果に基づき前記測定対象物迄の距離を演算すると共に、前記追尾受光素子に対する前記反射追尾光の受光位置に基づき前記測定対象物と前記追尾受光素子の中心との位置偏差を演算する演算制御部とを具備し、前記測距光受光部と前記追尾光受光部は受光プリズムを有し、該受光プリズムは前記反射追尾光を3回内部反射させる様構成された測量装置に係るものである。
【0007】
又本発明は、前記受光プリズムは、第1プリズムと、該第1プリズムと接合された第2プリズムとを有し、前記第1プリズムと前記第2プリズムとの接合面に分離面が形成され、該分離面は前記反射測距光を透過させて前記受光素子に受光させ、前記反射追尾光を反射させて前記追尾受光素子に受光させる様構成された測量装置に係るものである。
【0008】
又本発明は、前記第1プリズムは、前記反射追尾光が直角に入射する第1面と、該第1面を透過した前記反射追尾光を反射させる第2面と、該第2面で反射された前記反射追尾光を前記第1面に向って反射する前記分離面としての第3面と、前記第1面で反射された前記反射追尾光が直角に入射する第4面とを有する様構成された測量装置に係るものである。
【0009】
又本発明は、前記第1プリズムは、前記反射追尾光が直角に入射する第1面と、該第1面を透過した前記反射追尾光を反射させる第2面と、該第2面で反射された前記反射追尾光を前記第1面に向って反射する前記分離面としての第3面とを有し、前記第1面と前記第2面にショートパスフィルタが蒸着され、前記第1面を透過した前記反射追尾光が透過率が0%付近となる入射角で前記第2面に入射し、該第2面と前記第3面で順次反射された前記反射追尾光が透過率が0%付近となる入射角で前記第1面に入射し、該第1面で反射された前記反射追尾光が直角に前記第2面に入射する様に構成された測量装置に係るものである。
【0010】
又本発明は、前記第1プリズムは、前記反射追尾光が直角に入射する第1面と、該第1面を透過した前記反射追尾光を反射させる第2面と、該第2面で反射された前記反射追尾光を前記第1面に向って反射する前記分離面としての第3面とを有し、前記第1面と前記第2面にARコートが蒸着され、前記第1面を透過した前記反射追尾光が全反射臨界角以上となる入射角で前記第2面に入射し、該第2面と前記第3面で順次反射された前記反射追尾光が全反射臨界角以上となる入射角で前記第1面に入射し、該第1面で反射された前記反射追尾光が直角に前記第2面に入射する様に構成された測量装置に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記受光プリズムは前記第1プリズムの前記第2面に接合された第3プリズムを更に有し、前記第1プリズムと前記第3プリズムの接合面に前記反射測距光と前記反射追尾光を反射し、可視光を透過する分離膜を形成し、該分離膜の透過光軸上に視準部が設けられた測量装置に係るものである。
【0012】
又本発明は、前記受光素子と前記受光プリズムとの間と、前記追尾受光素子と前記受光プリズムの間に、それぞれバンドパスフィルタが設けられた測量装置に係るものである。
【0013】
更に又本発明は、前記第1プリズムと前記第2プリズムとの間に色ガラスが介設され、該色ガラスと前記第2プリズムとの接合面に前記分離面が形成された測量装置に係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、測定対象物に測距光を射出する発光素子を有する測距光射出部と、前記測定対象物からの反射測距光を受光する受光素子を有する測距光受光部と、前記測定対象物に前記測距光と同軸で追尾光を射出する追尾発光素子を有する追尾光射出部と、前記測定対象物からの反射追尾光を前記反射測距光と同軸で受光する追尾受光素子を有する追尾光受光部と、前記測距光射出部と前記追尾光射出部とを制御し、前記受光素子に対する前記反射測距光の受光結果に基づき前記測定対象物迄の距離を演算すると共に、前記追尾受光素子に対する前記反射追尾光の受光位置に基づき前記測定対象物と前記追尾受光素子の中心との位置偏差を演算する演算制御部とを具備し、前記測距光受光部と前記追尾光受光部は受光プリズムを有し、該受光プリズムは前記反射追尾光を3回内部反射させる様構成されたので、バックフォーカスが確保でき、焦点距離の短いレンズが使用可能となることで、追尾可能な範囲拡大及び近距離受光光量の増加と測距精度の向上を図ることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施例に係る測量装置を示す正断面図である。
【
図2】第1の実施例に係る距離測定部を示す構成図である。
【
図3】第2の実施例に係る距離測定部を示す構成図である。
【
図4】第3の実施例に係る距離測定部を示す構成図である。
【
図5】ショートパスフィルタの透過率を説明するグラフである。
【
図6】第4の実施例に係る距離測定部を示す構成図である。
【
図7】第5の実施例に係る距離測定部を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0017】
先ず、
図1に於いて、本発明の第1の実施例に係る測量装置について説明する。
【0018】
測量装置1は、例えばレーザスキャナであり、三脚(図示せず)に取付けられる整準部2と、該整準部2に取付けられた測量装置本体3とから構成される。
【0019】
前記整準部2は整準ネジ10を有し、該整準ネジ10により前記測量装置本体3の整準を行う。
【0020】
該測量装置本体3は、固定部4と、托架部5と、水平回転軸6と、水平回転軸受7と、水平回転駆動部としての水平回転モータ8と、水平角検出部としての水平角エンコーダ9と、鉛直回転軸11と、鉛直回転軸受12と、鉛直回転駆動部としての鉛直回転モータ13と、鉛直角検出部としての鉛直角エンコーダ14と、鉛直回転部である走査ミラー15と、操作部と表示部とを兼用する操作パネル16と、演算制御部17と、記憶部18と、距離測定部19等を具備している。尚、前記演算制御部17としては、本装置に特化したCPU、或は汎用CPUが用いられる。
【0021】
前記水平回転軸受7は前記固定部4に固定される。前記水平回転軸6は鉛直な軸心6aを有し、前記水平回転軸6は前記水平回転軸受7に回転自在に支持される。又、前記托架部5は前記水平回転軸6に支持され、前記托架部5は水平方向に前記水平回転軸6と一体に回転する様になっている。
【0022】
前記水平回転軸受7と前記托架部5との間には前記水平回転モータ8が設けられ、該水平回転モータ8は前記演算制御部17により制御される。該演算制御部17は、前記水平回転モータ8により、前記托架部5を前記軸心6aを中心に回転させる。
【0023】
前記托架部5の前記固定部4に対する相対回転角は、前記水平角エンコーダ9によって検出される。該水平角エンコーダ9からの検出信号は前記演算制御部17に入力され、該演算制御部17により水平角データが演算される。該演算制御部17は、前記水平角データに基づき、前記水平回転モータ8に対するフィードバック制御を行う。
【0024】
又、前記托架部5には、水平な軸心11aを有する前記鉛直回転軸11が設けられている。該鉛直回転軸11は、前記鉛直回転軸受12を介して回転自在となっている。尚、前記軸心6aと前記軸心11aの交点が、測距光の射出位置であり、前記測量装置本体3の座標系の原点となっている。
【0025】
前記托架部5には、凹部22が形成されている。前記鉛直回転軸11は、一端部が前記凹部22内に延出し、前記一端部に前記走査ミラー15が固着され、該走査ミラー15は前記凹部22に収納されている。又、前記鉛直回転軸11の他端部には、前記鉛直角エンコーダ14が設けられている。
【0026】
前記鉛直回転軸11に前記鉛直回転モータ13が設けられ、該鉛直回転モータ13は前記演算制御部17に制御される。該演算制御部17は、前記鉛直回転モータ13により前記鉛直回転軸11を回転させ、前記走査ミラー15は前記軸心11aを中心に回転される。
【0027】
前記走査ミラー15の回転角は、前記鉛直角エンコーダ14によって検出され、検出信号は前記演算制御部17に入力される。該演算制御部17は、検出信号に基づき前記走査ミラー15の鉛直角データを演算し、該鉛直角データに基づき前記鉛直回転モータ13に対するフィードバック制御を行う。
【0028】
又、前記演算制御部17で演算された水平角データ、鉛直角データや測定結果は、前記記憶部18に保存される。該記憶部18としては、磁気記憶装置としてのHDD、光記憶装置としてのCD、DVD、半導体記憶装置としてのメモリカード、USBメモリ等種々の記憶手段が用いられる。該記憶部18は、前記托架部5に対して着脱可能であってもよく、或は図示しない通信手段を介して外部記憶装置や外部データ処理装置にデータを送出可能としてもよい。
【0029】
前記記憶部18には、測距作動を制御するシーケンスプログラム、測距作動により距離を演算する演算プログラム、水平角データ及び鉛直角データに基づき角度を演算する演算プログラム、距離と角度に基づき所望の測定点の3次元座標を演算するプログラム等の各種プログラムが格納される。又、前記演算制御部17により各種プログラムが実行されることで、各種処理が実行される。
【0030】
前記操作パネル16は、例えばタッチパネルであり、測距の指示や測定条件、例えば測定点間隔の変更等を行う操作部と、測距結果や画像等を表示する表示部とを兼用している。
【0031】
次に、
図2を参照して、前記距離測定部19について説明する。
【0032】
該距離測定部19は、測距光射出部23と測距光受光部24と追尾光射出部25と追尾光受光部26とを有している。尚、前記測距光射出部23と前記測距光受光部24とにより測距部が構成され、前記追尾光射出部25と前記追尾光受光部26とにより追尾部が構成される。
【0033】
前記測距光射出部23は、測距光軸27を有している。又、前記測距光射出部23は、発光側から順に、前記測距光軸27上に設けられた発光素子28、例えば所定の波長の赤外光を測距光35として射出するレーザダイオード(LD)と、平行平面板29と、投光レンズ31と、ダイクロイックミラー32と、該ダイクロイックミラー32の反射光軸上に設けられた偏向光学部材としての反射プリズム33とを有している。又、該反射プリズム33の反射光軸上に前記走査ミラー15が設けられている。更に、該走査ミラー15の反射光軸上には、透明材料で形成され、該走査ミラー15と一体に回転する窓部34が設けられている。
【0034】
尚、前記平行平面板29、前記投光レンズ31、前記ダイクロイックミラー32、前記反射プリズム33等は投光光学系30を構成する。又、本実施例では、前記測距光軸27と、前記ダイクロイックミラー32で反射された前記測距光軸27と、前記反射プリズム33で反射された前記測距光軸27とを総称して、該測距光軸27としている。
【0035】
前記平行平面板29は、例えば所定の板厚を有するガラス板であり、入射面及び射出面が前記測距光軸27と直交する様に配置される。又、前記平行平面板29は、ソレノイド等の駆動機構(図示せず)により、前記測距光軸27に対して挿脱可能となっており、測定対象物の種類や距離に応じて適宜挿脱される。即ち、測定対象物が再帰反射性を有するプリズム等であるプリズム測定を実行する場合には、前記平行平面板29を前記測距光軸27上に挿入し、測定対象物がプリズム以外のノンプリズム測定を実行する場合は、前記平行平面板29を前記測距光軸27上から取除く様構成される。前記平行平面板29を前記測距光軸27上に挿入することで、測距光35(後述)の広がり角が所定の角度だけ拡大される。
【0036】
前記投光レンズ31は、前記平行平面板29が前記測距光軸27上に挿入されていない状態では、前記発光素子28から所定の広がり角で発せられた前記測距光35を平行光束とする様構成されている。又、前記平行平面板29が前記測距光軸27上に挿入されている場合には、前記測距光35を僅かに発散させる。
【0037】
前記ダイクロイックミラー32は、前記測距光35を反射し、追尾光36(後述)を透過する光学特性を有している。又、前記ダイクロイックミラー32は、前記測距光35と前記追尾光36の共通光路上(前記測距光軸27と追尾光軸37(後述)の交差位置)に設けられ、前記測距光軸27が前記追尾光軸37と合致する様に前記測距光軸27を偏向(反射)する。従って、前記測距光35と前記追尾光36とは同軸で測定対象物に向って照射される。
【0038】
前記反射プリズム33は、2つの台形状のプリズムを接合させて形成される。2つのプリズムが接合された状態では、前記反射プリズム33は直方体形状となる。前記測距光35の入射面は前記測距光軸27に対して直交し、前記反射プリズム33の接合面38は前記測距光軸27に対して所定角度傾斜している。更に、前記反射プリズム33の射出面は、前記接合面38で反射された前記測距光軸27が僅かに、例えば2.5°程度傾斜して入射する様構成されている。従って、前記反射プリズム33の射出面で内部反射された前記測距光35が受光素子39(後述)に受光されるのを防止している。尚、前記接合面38の傾斜角は、前記測距光軸27が受光光軸41(後述)及び前記軸心11aと合致する様、前記測距光軸27を偏向(反射)させる角度となっている。又、前記受光素子39としては、例えばアバランシェフォトダイオード(APD)、或は同等の光電変換素子が用いられる。
【0039】
前記接合面38の中心部には、ビームスプリッタ膜(図示せず)が形成されている。該ビームスプリッタ膜は、前記測距光35の光束に合わせて楕円形状となっており、該測距光35の光束径と同等又は該光束径よりも僅かに大きくなっている。又、前記ビームスプリッタ膜は、例えば80%の光を反射し、20%の光を透過する光学特性を有している。
【0040】
尚、前記ビームスプリッタ膜に於ける反射率と透過率の割合は、用途や測定対象物迄の距離に応じて適宜設定される。例えば、測定対象物迄の距離が近い場合には、前記ビームスプリッタ膜を例えば反射率50%~70%、透過率30%~50%の範囲から選択するのが望ましい。又、測定対象物迄の距離が遠い場合には、前記ビームスプリッタ膜を例えば反射率70%~90%、透過率10%~30%の範囲から選択するのが望ましい。
【0041】
前記測距光受光部24は、前記受光光軸41を有している。又、前記測距光受光部24は、受光側から順に、前記受光光軸41上に設けられた前記受光素子39と、濃度勾配フィルム42と、前記測距光35の波長帯域の光のみを透過させるバンドパスフィルタ57と、受光プリズム44を有すると共に、該受光プリズム44で反射された前記受光光軸41上に設けられた所定のNA(Numerical Aperture)を有する受光レンズ45を有している。
【0042】
前記濃度勾配フィルム42は、ガラス等の円板に形成されたプラスチック(フィルム)であり、前記濃度勾配フィルム42の一部が前記受光光軸41と直交する様に配置される。又、前記濃度勾配フィルム42は、回転軸46を中心にモータ47により回転可能であり、前記濃度勾配フィルム42の回転により、該濃度勾配フィルム42に対する反射測距光49(後述)の入射位置が変化する様に構成される。
【0043】
前記濃度勾配フィルム42は、θ=0°~360°の間で透過率が漸次増大(又は減少)する様に構成されている。従って、前記モータ47を駆動させ、前記反射測距光49の前記濃度勾配フィルム42に対する入射位置を制御することで、前記反射測距光49の透過率を例えば0.0001%~100%の範囲で制御することができる。前記濃度勾配フィルム42の透過率については、測定対象物の種類や測定対象物迄の距離に応じて適宜設定される。
【0044】
前記受光プリズム44は、分離面としてのダイクロイック膜48を有している。又、前記受光プリズム44は、測定対象物で反射された前記測距光35(前記反射測距光49)と、該反射測距光49と同軸で入射した前記追尾光36(反射追尾光51)とを少なくとも1回反射させる様構成されている。又、前記ダイクロイック膜48は、前記反射測距光49を透過し、前記反射追尾光51を反射する光学特性を有している。
【0045】
尚、前記受光プリズム44、前記受光レンズ45、前記反射プリズム33等で受光光学系52が構成される。又、本実施例では、前記受光光軸41と、前記受光プリズム44で反射された前記受光光軸41とを総称して、該受光光軸41としている。
【0046】
前記追尾光射出部25は、前記追尾光軸37を有している。又、前記追尾光射出部25は、発光側から順に、前記追尾光軸37上に設けられた追尾発光素子53、追尾投光レンズ54、前記ダイクロイックミラー32、前記反射プリズム33とを有している。
【0047】
尚、本実施例では、前記追尾光軸37と、前記反射プリズム33によって反射された前記追尾光軸37とを総称して、該追尾光軸37としている。又、前記ダイクロイックミラー32の反射側に前記測距光35を発する前記発光素子28が設けられ、前記ダイクロイックミラー32の透過側に前記追尾光36を発する前記追尾発光素子53が設けられているが、前記ダイクロイックミラー32の透過側に前記発光素子28を設け、前記ダイクロイックミラー32の反射側に前記追尾発光素子53を設けてもよい。
【0048】
前記追尾発光素子53は、例えばレーザダイオード(LD)であり、前記測距光35とは波長の異なる近赤外波長の前記追尾光36を射出する様構成されている。又、前記追尾投光レンズ54は、前記追尾発光素子53から発せられた前記追尾光36を僅かに発散させる様構成される。
【0049】
前記追尾光受光部26は、追尾受光光軸55を有している。又、前記追尾光受光部26は、受光側から順に、前記追尾受光光軸55上に設けられた追尾受光素子56、前記追尾光36の波長帯域の光のみを透過させるバンドパスフィルタ43、受光プリズム44及び該受光プリズム44の反射光軸上に設けられた前記受光レンズ45を有している。
【0050】
尚、本実施例では、前記追尾受光光軸55と前記受光プリズム44及び前記ダイクロイック膜48で反射された前記追尾受光光軸55とを総称して、該追尾受光光軸55としている。
【0051】
前記追尾受光素子56は、センサ基板50に設けられ、前記受光プリズム44から所定距離離れた前記反射追尾光51の集光位置に配置される。又、前記追尾受光素子56は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は前記追尾受光素子56上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、前記追尾受光素子56の中心を原点とした画素座標を有し、該画素座標によって前記追尾受光素子56上での位置が特定される。
【0052】
前記距離測定部19は、前記演算制御部17により制御される。前記発光素子28から前記測距光軸27上にパルス状の前記測距光35が射出されると、該測距光35は前記投光レンズ31に入射する。又、前記測距光軸27上に前記平行平面板29が存在している場合には、前記測距光35は前記平行平面板29を介して広がり角を僅かに広げながら前記投光レンズ31に入射する。
【0053】
該投光レンズ31を透過した前記測距光35は、前記ダイクロイックミラー32により前記追尾光軸37と同軸となる様に偏向された後、前記反射プリズム33の入射面に対して直角に入射し、該反射プリズム33内部を透過して前記接合面38で前記受光光軸41及び前記軸心11aと同軸になる様反射される。前記反射プリズム33から射出される前記測距光35は、前記走査ミラー15によって直角に偏向され、前記窓部34を介して測定対象物に照射される。前記走査ミラー15が前記軸心11aを中心に回転することで、前記測距光35は前記軸心11aと直交し、且つ前記軸心6aを含む平面内で回転(走査)される。尚、前記測距光軸27上に前記平行平面板29が存在している場合には、前記測距光35は僅かに広がりながら測定対象物に照射され、前記測距光軸27上に前記平行平面板29が存在していない場合には、前記測距光35は平行光束として測定対象物に照射される。
【0054】
尚、前記窓部34は、該窓部34で反射された前記測距光35が前記受光素子39に入射しない様、前記測距光軸27の光軸に対して所定角度傾斜して設けられている。
【0055】
測定対象物で反射された前記反射測距光49は、前記走査ミラー15で直角に反射され、前記受光光学系52、前記バンドパスフィルタ57、前記濃度勾配フィルム42を経て前記受光素子39で受光される。この時、前記反射測距光49の光路外を通る外光等の迷光は、前記バンドパスフィルタ57により除去され、前記反射測距光49のみが前記受光素子39に受光される様構成されている。又、前記反射測距光49は、前記濃度勾配フィルム42を透過する過程で所定光量だけ減光され、前記受光素子39に受光される。
【0056】
前記演算制御部17は、前記発光素子28の発光タイミングと、前記受光素子39の受光タイミングの時間差(即ち、パルス光の往復時間)と光速に基づき、前記測距光35の1パルス毎に測距を実行し(Time Of Flight)、測定対象物迄の距離を演算する。尚、前記発光素子28の発光のタイミング、即ちパルス間隔は、前記操作パネル16を介して変更可能となっている。又、前記演算制御部17は、測距結果と前記水平角エンコーダ9及び前記鉛直角エンコーダ14で得られた水平角データ及び鉛直角データに基づき、測定対象物の3次元座標を演算できる。
【0057】
又、前記測距光35を所定のパルス間隔で射出しつつ、前記托架部5と前記走査ミラー15とをそれぞれ定速で回転させることで、該走査ミラー15の鉛直方向の回転と、前記托架部5の水平方向の回転との協動により、前記測距光35が2次元に走査される。又、各パルス光毎に前記鉛直角エンコーダ14、前記水平角エンコーダ9により鉛直角、水平角を検出することで、鉛直角データ、水平角データが取得できる。鉛直角データ、水平角データ、測距データとにより、測定対象物の3次元座標及び測定対象物に対応する3次元の点群データが取得できる。
【0058】
測距作動と並行して、追尾発光素子53から前記測距光35とは異なる波長の前記追尾光36が射出されると、前記追尾投光レンズ54で僅かに発散された後、前記ダイクロイックミラー32を透過する過程で前記測距光35と同軸とされる。
【0059】
前記測距光35と同軸で測定対象物に照射され、測定対象物で反射された前記反射追尾光51は、前記受光光学系52を通過する過程で、前記ダイクロイック膜48で前記反射測距光49と分離され、前記バンドパスフィルタ43を介して前記追尾受光素子56で受光される。又、該追尾受光素子56への前記反射追尾光51の受光により、追尾像(図示せず)を得ることができる。この時前記反射追尾光51の光路外を通る外光等の迷光は、前記バンドパスフィルタ43で除去され、前記反射追尾光51のみが前記追尾受光素子56に受光される様構成されている。
【0060】
前記演算制御部17は、前記追尾受光素子56の中心と、該追尾受光素子56に対する前記反射追尾光51の受光位置との位置偏差を演算し、該位置偏差に基づき、前記水平回転モータ8と前記鉛直回転モータ13を駆動させ、測定対象物を追尾する様に構成される。
【0061】
次に、前記受光プリズム44の詳細について説明する。該受光プリズム44は、第1プリズム58と第2プリズム59とから構成されている。尚、以下の説明では、
図2中、紙面に対して上側を上、紙面に対して下側を下、紙面に対して右側を右、紙面に対して左側を左として説明する。又、上記で規定された方向は、他の実施例に於いても適用されるものとする。
【0062】
前記第1プリズム58は、所定の屈折率を有し、第1面58a、第2面58b、第3面58c、第4面58d、第5面58eを有する多角形のプリズムとなっている。前記第1面58aは、前記反射測距光49及び前記反射追尾光51の入射面であり、前記受光光軸41及び前記追尾受光光軸55と直交する様構成されている。又、前記第1面58aには全面に亘ってAR(Anti-Reflection)コート(反射防止膜)が蒸着されている。
【0063】
前記第2面58bは、前記第1面58aと対向する位置に形成され、前記第2面58bの上端は前記第1面58aの上端よりも下側に位置し、前記第2面58bの下端は前記第1面58aの下端よりも上側に位置している。又、前記第2面58bは、上方から下方に向って前記第1面58aから離反する様に傾斜している。尚、前記第2面58bは、例えば鏡面加工が施されたミラーとなっている。
【0064】
前記第3面58cは、前記第1面58aの下端と前記第2面58bの下端との間に形成される。該第2面58bの下端は前記第1面58aの下端よりも上側に位置しているので、前記第3面58cは左から右に向って上向きに所定角度傾斜する様に構成されている。
【0065】
第4面58dは、前記第1面58aと対向し、且つ前記第2面58bの上端から上方に連続する様に構成され、前記第1面58aの上端と前記第4面58dの上端との間に、前記第5面58eが形成されている。
【0066】
又、前記第4面58dは、下方から上方に向って前記第1面58aに近接する方向に傾斜し、前記第1プリズム58内を内部反射した前記反射追尾光51が入射角0°で直角に入射する様に構成されている。又、前記第4面58dには、該第4面58dの全面に亘って前記バンドパスフィルタ43が設けられている。更に、前記反射追尾光51の集光位置であり、前記第4面58dと対向する位置には、前記追尾受光素子56が配設されている。尚、該追尾受光素子56と前記第4面58d(前記バンドパスフィルタ43)との間には、所定距離だけ隙間が形成されている。
【0067】
前記第2プリズム59は、所定の屈折率を有し、少なくとも第1面59aと第2面59bとを有する多角形のプリズムとなっている。前記第1面59aは、前記第1プリズム58内で反射された前記反射測距光49及び前記反射追尾光51の入射面であり、前記第3面58cと同一面積を有し、該第3面58cと接合されている。即ち、該第3面58cと前記第1面59aは、前記第1プリズム58と前記第2プリズム59とを接合させる接合面となる。更に、前記第1プリズム58と前記第2プリズム59との接合面には、前記ダイクロイック膜48が設けられている。
【0068】
前記第2面59bは、前記第1面59aの左端から連続し、且つ前記第1面58aの下端から連続し、前記ダイクロイック膜48を透過した前記反射測距光49が入射角0°で直角に入射する様に構成されている。又、前記第2面59bには、所定の大きさの前記バンドパスフィルタ57が設けられている。該バンドパスフィルタ57は、前記第2面59bの全面に亘って設けられてもよいし、前記追尾受光光軸55を中心に前記反射追尾光51の光束径よりも僅かに大きく設けてもよい。前記バンドパスフィルタ57を前記第2面59bの全面に設けない場合には、前記バンドパスフィルタ57が設けられていない部分に反射防止塗料が塗布される。又、前記反射測距光49の集光位置に、前記受光素子39が設けられている。
【0069】
測定対象物及び前記走査ミラー15で反射され、前記受光レンズ45を透過した前記反射測距光49と前記反射追尾光51は、前記第1プリズム58の前記第1面58aに対して直角に同軸で入射する。前記第1プリズム58内に入射した前記反射測距光49と前記反射追尾光51は前記第2面58bで反射され、前記第3面58c(前記第1面59a)、即ち分離面としての前記ダイクロイック膜48に所定の入射角で入射し、前記反射測距光49と前記反射追尾光51とに分離される。
【0070】
前記ダイクロイック膜48に入射した前記反射測距光49と前記反射追尾光51のうち、反射測距光49はダイクロイック膜48を透過し、前記第2プリズム59内に入射する。更に前記反射測距光49は、前記バンドパスフィルタ57を通過する過程で前記測距光35の波長とは異なる波長の光が除去され、及び前記濃度勾配フィルム42を通過する過程で所定の光量だけ減光され、前記受光素子39に受光される。
【0071】
又、前記反射追尾光51は、前記ダイクロイック膜48(前記第3面58c)で反射され、前記第1面58aに入射する。ここで、該第1面58aは、入射角が小さい光を透過し、入射角が大きい光、例えば臨界角以上の入射角で入射した光を全反射する光学特性を有している。
【0072】
前記反射追尾光51は、全反射となる入射角(全反射臨界角以上の入射角)で前記第1面58aに入射し、反射された後、入射角0°で前記第4面58dに入射する。即ち、前記反射追尾光51は、前記受光プリズム44内で3回内部反射された後、前記第4面58dに直角に入射する。該第4面58dに入射した前記反射追尾光51は、前記バンドパスフィルタ43を通過する過程で前記追尾光36の波長とは異なる波長の光が除去され、前記追尾受光素子56に受光される。
【0073】
上述の様に、第1の実施例では、前記反射追尾光51を前記受光プリズム44内で3回内部反射させ、2回内部反射させる特許文献1のプリズムと比較して、前記反射追尾光51の前記受光プリズム44内の光路長を短くできることにより、前記受光レンズ45の前記受光プリズム44側の端面から前記追尾受光素子56迄の光路長であるバックフォーカスを確保している。
【0074】
従って、焦点距離の短い前記受光レンズ45を使用することができるので、コーナキューブや反射シート等のターゲットを測定対象物とするプリズム測定に於いて、ターゲットに照射される前記追尾光36の画角(視界)を広くすることができ、ターゲットの追尾可能な範囲を拡大させることができる。
【0075】
又、焦点距離の短い前記受光レンズ45が使用可能となることで、前記反射測距光49の近距離での受光量を増加させることができるので、近距離に位置する測定対象物の測定反射率の低い測定対象物の測定が可能となり、作業性を向上させることができる。
【0076】
又、前記反射追尾光51の入射面である前記第1面58aと対向する前記第4面58dに入射角0°で前記反射追尾光51が入射する様前記受光プリズム44を設計すると共に、前記第5面58eを透過する前記反射追尾光51の集光位置に前記追尾受光素子56を配置している。
【0077】
従って、前記追尾受光素子56が設けられる前記センサ基板50が前記受光レンズ45と干渉することがないので、設計の自由度を増加させることができる。
【0078】
又、前記平行平面板29の挿脱により、前記測距光35の広がり角を調整できるので、該測距光35の広がり角は必要ないが光量が必要なノンプリズム測定と、該測距光35の所定の広がり角を必要とするが光量を大きくする必要がないプリズム測定とを使い分けることができ、作業性を向上させることができる。
【0079】
更に、前記濃度勾配フィルム42を設け、前記受光素子39に受光される前記反射測距光49の透過率(受光量)を調整可能であるので、前記受光素子39の電気系の飽和を防止することができ、作業性を向上させることができる。
【0080】
次に、
図3に於いて、本発明の第2の実施例について説明する。尚、
図3中、
図2中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0081】
第2の実施例では、第1の実施例に於けるバンドパスフィルタ43,57が省略されている。一方で、第1プリズム58と第2プリズム59との間に色ガラス61が介設されている。
【0082】
該色ガラス61は、吸収帯が迷光の原因となる外光の波長帯となっており、前記色ガラス61の上面が前記第1プリズム58の第3面58cと接合され、前記色ガラス61の下面が前記第2プリズム59の第1面59aと接合されている。又、前記第1面59aと前記色ガラス61との接合面にダイクロイック膜48が設けられている。
【0083】
第2の実施例に於いては、前記第1プリズム58の第2面58bで反射された反射測距光49と前記反射追尾光51とが、前記色ガラス61を透過した後、前記ダイクロイック膜48に入射する様に構成されている。
【0084】
従って、前記色ガラス61を透過する過程で、前記反射測距光49と前記反射追尾光51と共に入射する外光を除去することができる。即ち、前記反射測距光49と前記反射追尾光51の外光除去を1つの前記色ガラス61で行うことができるので、前記反射測距光49と前記反射追尾光51の光路上にそれぞれバンドパスフィルタ等の外光除去手段を設ける必要がなく、部品点数の低減を図ることができる。
【0085】
又、第2の実施例に於いても、受光プリズム44内で反射追尾光51を3回内部反射されているので、2回内部反射させる特許文献1のプリズムと比較して、該反射追尾光51の前記受光プリズム44内の光路長を短くすることができ、バックフォーカスを確保し、追尾可能な範囲を拡大させることができる。
【0086】
次に、
図4に於いて、本発明の第3の実施例について説明する。尚、
図4中、
図2中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0087】
第3の実施例では、受光プリズム62が第1プリズム63と第2プリズム64とから構成されている。
【0088】
前記第1プリズム63は、所定の屈折率を有し、少なくとも第1面63aと第2面63bと第3面63cと第4面63dとを有する多角形のプリズムとなっている。
【0089】
前記第1面63aは、反射測距光49及び反射追尾光51の入射面であり、前記第1面63aは、受光光軸41及び追尾受光光軸55と直交する様に構成される。又、前記第1面63aには、全面に亘ってショートパスフィルタが蒸着されている。
【0090】
前記第2面63bは、前記第1面63aを透過した前記反射測距光49と前記反射追尾光51が入射すると共に、全面に亘ってショートパスフィルタが蒸着されている。尚、前記第2面63bは、前記第1面63aとの成す角度が鋭角となる様、該第1面63aの上端から連続すると共に、上方から下方に向って前記第1面63aから離反する様に傾斜している。
【0091】
前記第3面63cは、前記第2面63bで反射された前記反射測距光49と前記反射追尾光51が入射する様構成され、前記第2面63bの下端から左に向って下側に所定角度傾斜している。更に、第4面63dは、前記第1面63aの下端と前記第3面63cの下端との間に形成される。
【0092】
又、前記第1プリズム63は、前記反射追尾光51が前記第2面63bの一部に入射角0°で直角に入射する様に構成され、前記反射追尾光51の集光位置に追尾受光素子56が設けられる。更に、前記第2面63bの一部と前記追尾受光素子56との間で、且つ前記第2面63bと非接触な位置に前記追尾光36の波長帯域の光のみを透過させるバンドパスフィルタ65が設けられている。
【0093】
前記第2プリズム64は、所定の屈折率を有し、少なくとも第1面64aと第2面64bとを有する多角形のプリズムとなっている。前記第1面64aは、前記第1プリズム63内で反射された前記反射測距光49及び前記反射追尾光51の入射面であり、前記第3面63cと同一面積を有し、該第3面63cと接合されている。即ち、該第3面63cと前記第1面64aは、前記第1プリズム63と前記第2プリズム64とを接合させる接合面であり、該接合面に前記ダイクロイック膜48が設けられている。
【0094】
又、前記第2面64bは、前記第1面64aと対向し、前記ダイクロイック膜48を透過した前記反射測距光49が入射角0°で入射する様に構成されている。又、前記第2面64bには、全面に亘ってバンドパスフィルタ66が設けられている。該バンドパスフィルタ66は、測距光35の波長帯域の光のみを透過させる光学特性を有している。又、前記反射測距光49の集光位置に、受光素子39が設けられている。
【0095】
受光レンズ45を介して入射角0°で前記第1面63aから前記受光プリズム62内に入射した前記反射測距光49と前記反射追尾光51は、前記第2面63bに透過率が0%付近となる所定の入射角で入射し、前記第3面63cに向って反射され、前記ダイクロイック膜48で前記反射測距光49と前記反射追尾光51とが分離される。前記ダイクロイック膜48を透過した反射測距光49は、前記第2面64b、前記バンドパスフィルタ66、濃度勾配フィルム42を順次透過し、前記反射測距光49以外の光が除去されると共に、所定の光量に減光された状態で前記受光素子39に受光される。ここで、0%付近とは、0.1%~10%の範囲が含まれるものとする。又、以下の説明に於いても、0%付近と記載した場合は、0.1%~10%の範囲を含むものとする。
【0096】
又、前記ダイクロイック膜48で反射された前記反射追尾光51は、前記第1面63aに透過率が0%付近となる所定の入射角で入射し、該第1面63aで全反射され、前記第2面63bの一部(
図4中では該第2面63bの上部)に透過率が100%付近となる入射角0°で直角に入射する。即ち、前記反射追尾光51は、前記受光プリズム62内で3回内部反射された後、入射角0°で前記第2面63bに入射する。該第2面63bに入射した前記反射追尾光51は、前記第2面63b、前記バンドパスフィルタ65を順次透過し、外光等前記反射追尾光51以外の光が除去された状態で前記追尾受光素子56に受光される。ここで、100%付近とは、90%~99.9%の範囲が含まれるものとする。又、以下の説明に於いても、100%付近と記載した場合は、90%~99.9%の範囲を含むものとする。
【0097】
ここで、前記第1面63a及び前記第2面63bに蒸着されたショートパスフィルタは、入射角が小さい光を透過し、入射角が大きい光を反射する光学特性を有している。
図5は、前記ショートパスフィルタの透過率と波長との関係を説明するグラフである。
【0098】
図5中、67は前記測距光35の波長帯域を示し、68は前記追尾光36の波長帯域を示している。又、69は入射角が大きい場合のグラフを示し、71は入射角が小さい場合のグラフを示している。尚、
図5中では、前記グラフ69と前記グラフ71の上下をずらして図示しているが、前記グラフ69,71は共に透過率が0%~100%の間で変化する様になっている。
【0099】
前記第2面63bに対する入射角が大きい場合、即ち前記第1面63aを透過した前記反射測距光49と前記反射追尾光51が前記第2面63bに入射する時の入射角の場合には、前記グラフ69に示される様に、前記波長帯域67と前記波長帯域68の透過率が0%付近となる。従って、前記反射測距光49と前記反射追尾光51は前記第2面63bで反射される。尚、この時の入射角は全反射臨界角よりも小さくてよい。
【0100】
又、前記第1面63aに対する入射角が小さい場合、即ち第3面63cで反射された前記反射追尾光51が前記第1面63aに入射する時の入射角の場合には、前記グラフ69に示される様に、前記波長帯域68の透過率が0%付近となる。従って、前記反射追尾光51は前記第1面63aで反射される。尚、この時の入射角は全反射臨界角よりも小さくてよい。
【0101】
一方で、前記第2面63bに対する入射角が小さい場合、即ち、前記第1面63aで反射された前記反射追尾光51が前記第2面63bに入射する際の入射角(0°)の場合には、前記グラフ71に示される様に、前記波長帯域68の透過率が100%付近となる。従って、前記反射追尾光51は前記第2面63bを透過し、前記バンドパスフィルタ65を介して前記追尾受光素子56に受光される。
【0102】
又、前記第1面63aに対する入射角が小さい場合、即ち前記反射測距光49と前記反射追尾光51が前記受光レンズ45を介して前記第1面63aに入射する際の入射角の場合には、前記グラフ71に示される様に、前記波長帯域67と前記波長帯域68の透過率が100%付近となる。従って、前記反射測距光49と前記反射追尾光51は前記第1面63aを透過する。
【0103】
第3の実施例では、前記第2面63bにショートパスフィルタを設けたことで、前記反射測距光49と前記反射追尾光51の反射面と該反射追尾光51の透過面とを前記第2面63bに兼用させることができる。
【0104】
従って、前記追尾受光素子56に前記反射追尾光51を受光させる為の射出面を前記第1プリズム63に別途形成する必要がないので、該第1プリズム63の加工難易度、加工時間及び製造コストを低減させることができる。
【0105】
又、前記反射測距光49と前記反射追尾光51を反射させる際の入射角を全反射臨界角よりも小さくできるので、前記受光プリズム44の設計自由度を向上させることができる。
【0106】
又、第3の実施例に於いても、前記反射追尾光51を前記受光プリズム62内で3回内部反射させ、バックフォーカスを確保しているので、焦点距離の短い前記受光レンズ45の使用が可能となり、ターゲットの追尾可能な範囲を拡大できると共に、近距離測定時の受光光量を増加させ、測距精度を向上させることができる。
【0107】
尚、第3の実施例では、前記第1面63aと前記第2面63bにショートパスフィルタを蒸着しているが、ショートパスフィルタに代えてARコートを蒸着する様構成してもよい。前記第1面63aと前記第2面63bにARコートを蒸着する場合、前記反射測距光49と前記反射追尾光51を前記第2面63bで反射させる際の入射角と、前記反射追尾光51を前記第1面63aで反射させる際の入射角とが、それぞれ全反射臨界角以上となる様前記受光プリズム44を設計する必要がある。然し乍ら、ARコートはショートパスフィルタよりも安価であるので、ショートパスフィルタを蒸着する場合と比べて、前記受光プリズム44の製造コストを低減することができる。
【0108】
又、上記では、前記第1面63aと前記第2面63bの両方にショートパスフィルタを蒸着する場合と、前記第1面63aと前記第2面63bの両方にARコートを蒸着する場合について説明したが、前記第1面63aと前記第2面63bのいずれか一方にショートパスフィルタを蒸着し、いずれか他方にARコートを蒸着してもよいのは言う迄もない。
【0109】
更に、上記した透過率が0%付近となる入射角や、全反射臨界角以上となる入射角は、前記受光プリズム44として用いられるプリズムの硝材(屈折率)に対応して適宜設計される。又、プリズムの硝材については、コストやサイズ、比重、入手性、加工性、耐環境性等を考慮して、適宜選択される。
【0110】
次に、
図6に於いて、本発明の第4の実施例について説明する。尚、
図6中、
図4中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0111】
第4の実施例では、第3の実施例に於けるバンドパスフィルタ65,66が省略されている。一方で、第1プリズム63と第2プリズム64との間に色ガラス72が介設されている。
【0112】
該色ガラス72は、外光の波長帯域を吸収帯としており、上面が前記第1プリズム63の第3面63cと接合され、下面が前記第2プリズム64の第1面64aと接合されている。又、該第1面64aと前記色ガラス72の接合面にダイクロイック膜48が設けられている。
【0113】
第4の実施例では、第2面63bで反射された反射測距光49と反射追尾光51は、前記色ガラス72を透過した後に前記ダイクロイック膜48に入射する様に構成されている。
【0114】
従って、1つの前記色ガラス72により前記反射測距光49と前記反射追尾光51から外光を除去することができるので、前記反射測距光49と前記反射追尾光51の光路にそれぞれバンドパスフィルタを設ける必要がなく、部品点数の低減を図ることができる。
【0115】
又、第4の実施例に於いても、受光プリズム62内で前記反射追尾光51を3回内部反射させているので、該反射追尾光51のバックフォーカスを確保でき、追尾可能な範囲を拡大できると共に、近距離測定時の受光光量を増加させ、測距精度を向上させることができる。
【0116】
又、第4の実施例に於いても、第1面63aと第2面63bの両方にショートパスフィルタを蒸着してもよく、前記第1面63aと前記第2面63bの両方にARコートを蒸着してもよく、前記第1面63aと前記第2面63bのいずれか一方にショートパスフィルタを蒸着し、いずれか他方にARコートを蒸着してもよい。
【0117】
次に、
図7に於いて、本発明の第5の実施例について説明する。尚、
図7中、
図2中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0118】
図7は、測距、追尾、視準が可能な測量装置、例えばトータルステーションの距離測定部73の一部であり、測距光受光部24、追尾光受光部26、視準部74を有している。
【0119】
第5の実施例に於ける受光プリズム75は、第1の実施例に於ける第1プリズム58及び第2プリズム59と、前記第1プリズム58の第2面58bに接合された第3プリズム76とから構成されている。前記測距光受光部24及び前記追尾光受光部26の他の構成は第1の実施例と同様であるので説明を省略する。
【0120】
該第3プリズム76は、例えば第1面76aと第2面76bとを有する多角形のプリズムであり、前記第1プリズム58との接合面である前記第1面76aには、例えば前記反射測距光49と前記反射追尾光51から可視光80(背景光)を分離させる分離膜としてのショートパスフィルタが蒸着されている。該ショートパスフィルタは、前記可視光80を透過し、所定の入射角以上の反射測距光49と反射追尾光51を反射する光学特性を有している。又、前記第2面76bは、前記第1面76aを透過した前記可視光80が、入射角0°で入射する様に構成されている。
【0121】
前記視準部74は、視準光軸77を有しており、該視準光軸77は受光光軸41及び追尾受光光軸55と合致している。即ち、前記可視光80は前記反射測距光49と前記反射追尾光51と同軸で入射し、前記分離膜の透過光軸上に前記視準部74が設けられる。又、前記視準部74は視準光学系であり、前記視準光軸77上に設けられた受光系レンズ群78、前記受光プリズム75、合焦レンズ79、ポロプリズム81、レチクル82、接眼レンズ83を有している。
【0122】
作業者は、前記反射測距光49及び前記反射追尾光51と同軸で入射した前記可視光80に基づき、前記視準部74を介して焦点を合わせ、倒立像を正立像へと変換し、前記視準光軸77を任意の測定対象物に向け、測定対象物を視準することができる。
【0123】
第5の実施例に於いても、前記反射追尾光51を前記受光プリズム75内で3回内部反射させ、バックフォーカスを確保しているので、焦点距離の短い前記受光系レンズ群78の使用が可能となり、ターゲットの追尾可能な範囲を拡大させることができると共に、近距離測定時の受光量を増大させることが可能となり、近距離での測定精度を向上させることができる。
【0124】
尚、第5の実施例では、前記受光プリズム75にバンドパスフィルタ43,57を設けているが、第2の実施例と同様に、前記バンドパスフィルタ43,57を省略し、前記第1プリズム58と前記第2プリズム59との間に色ガラスを介設させてもよいのは言う迄もない。
【符号の説明】
【0125】
1 測量装置
15 走査ミラー
17 演算制御部
19 距離測定部
23 測距光射出部
24 測距光受光部
25 追尾光射出部
26 追尾光受光部
35 測距光
36 追尾光
44 受光プリズム
48 ダイクロイック膜
49 反射測距光
51 反射追尾光
58 第1プリズム
59 第2プリズム
62 受光プリズム
63 第1プリズム
64 第2プリズム
75 受光プリズム