(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135470
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】レドックスフロー電池用電解液
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20240927BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20240927BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20240927BHJP
【FI】
H01M8/18
C07D487/04 147
H01M8/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046167
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山路 智也
(72)【発明者】
【氏名】海寳 篤志
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 健一
(72)【発明者】
【氏名】中島 知也
(72)【発明者】
【氏名】三井 桂佑
【テーマコード(参考)】
4C050
5H126
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050AA07
4C050BB08
4C050CC08
4C050DD10
4C050EE04
4C050FF02
4C050GG05
4C050HH01
5H126AA03
5H126BB10
5H126GG17
5H126JJ05
(57)【要約】
【課題】
本発明は、資源的制約が少なく、かつ、高いエネルギー密度とサイクル特性を有し、かつ、安定性に優れたレドックスフロー電池用電解液の提供を課題とする。
【解決手段】
活物質及び溶解助剤を含み、該活物質の含有モル当量をA、該溶解助剤の含有モル当量をB、とした場合、B/Aで算出される値が、0.001~30の範囲である、レドックスフロー電池用電解液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質及び溶解助剤を含み、該活物質の含有モル当量をA、該溶解助剤の含有モル当量をB、とした場合、B/Aで算出される値が、0.001~30の範囲である、レドックスフロー電池用電解液。
【請求項2】
上記活物質が、分子内にフェニレンジアミン構造を有する活物質を含む、請求項1に記載のレドックスフロー電池用電解液。
【請求項3】
上記分子内にフェニレンジアミン構造を有する活物質が、下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載のレドックスフロー電池用電解液。
【化1】
(式(1)中、R
1~R
10は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、メルカプト基、シアノ基、ハロゲン基、アリール基、スルホン基、カルボキシ基、カルボニル基、スルホニル基、ヘテロアリール基を表し、式(2)中、R
11~R
24は、それぞれ独立に、水素原子、スルホン基、アルキル基、アリール基又はカルボニル基を表す。)
【請求項4】
上記溶解助剤が、尿素、アミノ酸からなる群から選択される少なくともいずれかを含む、請求項1又は2に記載のレドックスフロー電池用電解液。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のレドックスフロー電池用電解液を備えるレドックスフロー電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活物質及び溶解助剤、を含むレドックスフロー電池用電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーによる設備容量の増加に伴い、系統電力安定化のために大型蓄電池の導入が進められている。大型蓄電池として期待されるレドックスフロー電池の電解液には水系と非水系があるが、安全性やコストの面で水系電解液が優れている。そのため、活物質には水への高い溶解度が求められ、且つ高いエネルギー密度を達成するために適切な酸化還元電位を有することが望まれる。
また、現在主流のレドックスフロー電池にはバナジウムが活物質として用いられているが、資源的制約があり、価格の変動が課題となっている(非特許文献1,2)。そのため、活物質には資源的に豊富な材料を用いることが望まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Jan Winsberg al., Angew. Chem. Int. Ed. 2017, 56, 686-711
【非特許文献2】P. Leung et al., Journal of Power Sources 360 (2017) 243-283
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、資源的制約が少なく、かつ、高いエネルギー密度とサイクル特性を有し、かつ、安定性に優れたレドックスフロー電池用電解液の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、活物質及び溶解助剤を含み、該活物質の含有モル当量をA、該溶解助剤の含有モル当量をB、とした場合、B/Aで算出される値が、0.001~30の範囲である、レドックスフロー電池用電解液が、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
即ち本発明は、以下の1)~4)に関する。
1)
活物質及び溶解助剤を含み、該活物質の含有モル当量をA、該溶解助剤の含有モル当量をB、とした場合、B/Aで算出される値が、0.001~30の範囲である、レドックスフロー電池用電解液。
2)
上記活物質が、分子内にフェニレンジアミン構造を有する活物質を含む、1)に記載のレドックスフロー電池用電解液。
3)
上記分子内にフェニレンジアミン構造を有する活物質が、下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物からなる群から選択される、1)又は2)に記載のレドックスフロー電池用電解液。
【0007】
【0008】
(式(1)中、R1~R10は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、メルカプト基、シアノ基、ハロゲン基、アリール基、スルホン基、カルボキシ基、カルボニル基、スルホニル基、ヘテロアリール基を表し、式(2)中、R11~R24は、それぞれ独立に、水素原子、スルホン基、アルキル基、アリール基又はカルボニル基を表す。)
4)
上記溶解助剤が、尿素、アミノ酸からなる群から選択される少なくともいずれかを含む、1)~3)のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池用電解液。
5)
1)~4)のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池用電解液を備えるレドックスフロー電池。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、資源的制約が少なく、かつ、高いエネルギー密度とサイクル特性を有し、かつ、安定性に優れたレドックスフロー電池用電解液を提供しうる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。本明細書においては実施例等を含めて、特に断りの無い限り「部」及び「%」は、いずれも質量基準である。なお、本明細書中において、レドックスフロー電池用電解液を「電解液」と略記する場合がある。
【0011】
上記レドックスフロー電池用電解液は、活物質及び溶解助剤を含み、該活物質の含有モル当量をA、該溶解助剤の含有モル当量をB、とした場合、B/Aで算出される値が、0.001~30の範囲である。
【0012】
上記活物質としては、複素環式化合物等が挙げられ、分子内にフェニレンジアミン構造を有する活物質が好ましく、上記式(1)で表される化合物及び上記式(2)で表される化合物からなる群から選択されることがより好ましく、上記式(1)で表される化合物であることがさらに好ましい。
【0013】
上記複素環式化合物とは、複素環構造を有する化合物を指し、複素環式化合物としては、例えば、チアゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、チアゾリン、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、オキサゾリン、セレナゾール、ベンゾセレナゾール、ナフトセレナゾール、キノリン、フェニレンジアミン、カルバゾール、フェノチアジン、フェノキサジン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、キノキサリンの各構造をそれぞれ有する化合物などが挙げられる。
【0014】
上記フェニレンジアミン構造とは、RaRbN-Ph-NRcRd骨格を有するジアミン構造であり、フェニル(Ph)基に結合されている2つのアミノ基(RaRbN-及び-NRcRd)は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基のいずれであってもよく、o位、m位、p位のいずれの配置関係であってもよく、RaRbN-のRa及びRbは互いに結合して環を形成していてもよく、-RcRdNのRc及びRdは互いに結合して環を形成していてもよい。また、RaまたはRbが、RcまたはRdと結合して環を形成してもよい。このような有機化合物を二次電池用材料、好ましくはレドックスフロー電池用電解液の活物質、特に水系電解液の活物質として使用することにより、レドックスフロー電池のエネルギー密度とサイクル特性を向上させることができる。
【0015】
上記式(1)中、R1~R10は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、メルカプト基、シアノ基、ハロゲン基、アリール基、スルホン基、カルボキシ基、カルボニル基、スルホニル基、ヘテロアリール基で表される。
【0016】
また、上記式(2)で表される化合物中、R11~R24は、それぞれ独立に、水素原子、スルホン基、アルキル基、アリール基又はカルボニル基を表す。
【0017】
上記式(1)及び式(2)中、アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
【0018】
上記式(1)中、アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基等が挙げられる。
【0019】
上記式(1)中、アミノ基とは、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基などが挙げられ、アミノ基等が好ましい。
【0020】
上記式(1)中、ハロゲン基とは、例えば、フッ素基、塩素基、臭素基、ヨウ素基などが挙げられる。
【0021】
上記式(1)及び式(2)中、アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0022】
上記式(1)及び式(2)中、カルボニル基とは、例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基などが挙げられる。
【0023】
上記式(1)中、スルホニル基とは、例えば、メタンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、o-ニトロベンゼンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基などが挙げられる。
【0024】
上記式(1)中、ヘテロアリール基とは、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基など、ヘテロ原子を環構成要素に含む環等が挙げられる。
【0025】
上記式(1)で表される化合物及び上記式(2)で表される化合物が、それぞれ同じあるいは独立に、ヒドロキシ基、スルホン基、カルボキシ基等の酸性基を有する場合、これら基はそれぞれ遊離酸であっても、塩を形成していても良い。
【0026】
上記塩を形成する場合、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等のアンモニウム塩等であっても良く、上記式(1)で表される化合物及び上記式(2)で表される化合物が、上記酸性基を複数有する場合、それらは、全て遊離酸、全て塩、一部が遊離酸で一部が塩、であっても良く、複数の塩が存在する場合、それらの塩は同じ種類の塩であっても良いし、異なる種類の塩であっても良い。
【0027】
上記式(1)で表される化合物中、R1~R8のうち少なくともいずれか2つがスルホン酸アンモニウム塩基(-SO3NH4)であり、R9とR10がそれぞれ水素原子である組み合わせ、R1~R8のうち少なくとも1つがメチル基であり、R1~R8のうち少なくともいずれか2つがスルホン酸アンモニウム塩基(-SO3NH4)であり、R9とR10がそれぞれ水素原子である組み合わせ、であることが好ましい。
【0028】
上記式(1)で表される化合物は、互変異性体、立体異性体、光学異性体等の異性体である場合があり、各々任意の異性体であってもよく、あるいは、異なる異性体の混合物であっても良い。
【0029】
上記レドックスフロー電池用電解液は上記活物質を含んでいる。上記活物質は、1種単独で含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。2種以上の活物質を組み合わせて用いる場合は、これらは任意の割合で配合することができる。電解液中に含まれる活物質の濃度は、0.1mol/L以上5mol/L以下の範囲であることが好ましく、その下
限値は0.2mol/Lであることがより好ましく、その上限値は3mol/Lであることがより好ましい。
【0030】
上記「溶解助剤」とは、活物質とともに溶媒に加えることで、活物質濃度を高めた溶液を調製する際に用いる物質を指し、溶液中における活物質の濃度を高めることができる物質であれば特に限定は無い。上記溶解助剤は、尿素、アミノ酸からなる群から選択される少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0031】
上記レドックスフロー電池用電解液中に含まれる尿素の量としては、0.01M~10Mであることが好ましく、0.5M~8Mであることがより好ましく、1M~8Mであることがさらに好ましく、3M~7Mであることが極めて好ましい。
【0032】
上記アミノ酸としては、例えば、グリシン、アルギニン、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等が挙げられる。また、上記アミノ酸は、塩酸塩や硫酸塩等の塩体であっても良い。
上記アミノ酸としては、グリシン、アルギニン塩酸塩であることが好ましく、グリシンであることがさらに好ましい。上記レドックスフロー電池用電解液中に含まれるアミノ酸の量としては、0.01M~10Mであることが好ましく、0.2M~8Mであることがより好ましく、0.5M~5Mであることがさらに好ましく、0.8M~4Mであることが極めて好ましい。
【0033】
上記溶解助剤は、1種単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。2種以上を組み合わせる場合は、それら間の配合比は任意に設定できる。
【0034】
上記レドックスフロー電池用電解液中に含まれる、上記活物質の含有モル当量をA、上記溶解助剤の含有モル当量をB、とした場合、B/Aで算出される値が、0.01~25であることが好ましく、0.1~20であることがより好ましく、0.5~17であることがさらに好ましく、0.7~10であることが特に好ましく、0.8~8であることが殊に好ましく、1~5であることが極めて好ましい。
上記レドックスフロー電池用電解液中に含まれる、活物質の含有モル当量をA、溶解助剤の含有モル当量をB、とした場合、B/Aで算出される値が、0.001~30の範囲とすることにより、溶解助剤が水分子の水素結合ネットワークに介在して活物質の溶解度を相乗的に増大させるものとなり、電解液中における活物質の析出が抑制され、安定性に優れた電解液が得られているものと推察している。
【0035】
上記レドックスフロー電池用電解液は、水を含んでいても良い。水を含む場合、水はイオン交換水、ミリポア水等を用いることが可能であり、ミリポア水であることが好ましい。
【0036】
上記電解液中における水の含有率は任意で設定可能であるが、1質量%~99質量%であることが好ましく、5質量%~90質量%であることがさらに好ましく、10質量%~80質量%であることが特に好ましい。
【0037】
上記レドックスフロー電池用電解液は、消泡剤を含んでいても良い。消泡剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類等、あるいは各種市販の消泡剤が挙げられ、アルコール類であることが好ましく、エタノールであることが好ましい。上記電解液中における上記消泡剤の含有量は特に限定はないが、上記電解液中に含まれる水の量に対し、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上8質量%以下であることがさらに好ましい。
【0038】
上記レドックスフロー電池用電解液は、上記活物質、上記溶解助剤、上記消泡剤以外に、さらにpH緩衝剤を含んでいてもよい。pH緩衝剤は、2以上13以下のpKaを有する有機酸塩又は無機酸塩であることが好ましい。このようなpH緩衝剤として、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、ギ酸リチウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、ギ酸アンモニウム、リン酸三リチウム、リン酸二水素リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、酢酸、リン酸、ギ酸、硫酸等が挙げられる。これらの中でも、塩化アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウムであることが好ましく、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウムであることが特に好ましい。これらpH緩衝剤は、1種単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせる場合は、これらは任意の割合で配合することができる。
【0039】
上記レドックスフロー電池用電解液の調製方法としては、例えば、酸化、或いは還元状態にある活物質を電解液に溶解させる方法や、活物質が溶解した電解液を電解で価数を調製する方法等が挙げられる。
【0040】
上記レドックスフロー電池用電解液を含むレドックスフロー電池も本願発明に含まれる。
上記レドックスフロー電池は、電極、隔膜等をその構成として含むことが可能である。
【0041】
レドックスフロー電池で使用する上記電極としては、電極として機能するものであれば任意で選択し用いることができるが、例えば、カーボンフェルト、カーボンペーパー、カーボンクロスを用いることが好ましく、カーボンフェルトであることがさらに好ましい。
【0042】
レドックスフロー電池で使用する上記隔膜としては、電極間の隔膜として機能するものであれば任意で選択し用いることができるが、例えば、イオン交換膜、多孔質膜等を用いることが好ましく、イオン交換膜を用いることがさらに好ましい。
【0043】
本発明のレドックスフロー電池用電解液は、資源的制約が少なく、エネルギー密度が高く、サイクル特性にも優れる。特に、水系電解液を用いたレドックスフロー電池として高いエネルギー密度を得ることを可能とするため、有機溶剤等を用いたものと比較し、安全性が高く、レドックスフロー電池作製時や電解液交換時等における取り扱い易さやメンテナンス性に優れる。加えて、安定性に優れる。
【実施例0044】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
[合成例1]
2,3-ジクロロキノキサリン 13.0部と3,4-ジアミノトルエン 8.0部をDMF 130部に溶解し、80℃まで加熱した。80℃を維持して6時間攪拌後、室温まで放冷し、反応液を水 300部に攪拌しながら注ぎ込んだ。析出物を減圧下にてろ過分離し、メタノール及びアセトンで洗浄する事で、式(I)の化合物を含むウェットケーキを得た。このウェットケーキを80℃で2時間減圧乾燥させることにより、下記式(I)で表されるフルオフラビン化合物 9.82部を得た。
【0045】
【0046】
[合成例2]
上記合成例1で得られた、上記式(I)で表されるフルオフラビン化合物 10.0部を、0℃に冷却した15%発煙硫酸 120部に30分かけて加え、0℃で30分攪拌した。室温まで30分かけて徐々に昇温し、そのまま室温で18時間攪拌した。反応終了後、反応液を氷 500部中に攪拌しながら滴下し、そのまま室温で30分攪拌した。析出物を減圧下にてろ過分離し、冷水及び酢酸で洗浄する事で、下記式(II)で表されるフルオフラビン化合物を含むウェットケーキを得た。このウェットケーキを15%アンモニア水 30部に加え、得られた水溶液をアセトン 500部に注ぎ込んだ。析出物を減圧下にてろ過分離し、アセトン及びエタノールで洗浄した。得られたウェットケーキを80℃で6時間減圧乾燥させることで、下記式(II)で表されるフルオフラビン化合物 3.40部を得た。
【0047】
【0048】
[実施例1]
上記式(II)で表されるフルオフラビン化合物の濃度が0.4mol/L、硫酸アンモニウム(純正化学株式会社、特級)が1.2mol/L、硫酸(関東化学株式会社、特級)が0.12mol/L、尿素(関東化学株式会社、特級)が6.0mol/Lになるように水に溶解し、電解液1を調製した。調製した電解液は固体の析出が確認されず、良好な溶液であった。
[実施例2]
上記式(II)で表されるフルオフラビン化合物の濃度が0.4mol/L、硫酸アンモニウム(純正化学株式会社、特級)が1.2mol/L、硫酸(関東化学株式会社、特級)が0.12mol/L、グリシン(富士フィルム和光純薬株式会社、特級)が2.0mol/Lになるように水に溶解し、電解液2を調製した。調製した電解液は固体の析出が確認されず、良好な溶液であった。
【0049】
[比較例1]
上記式(II)で表されるフルオフラビン化合物の濃度が0.4mol/L、硫酸アンモニウム(純正化学株式会社、特級)が1.2mol/L、硫酸(関東化学株式会社、特級)が0.12mol/Lになるように水に溶解し、電解液3を調製した。調製した電解液は固体の析出が確認された。
【0050】
【0051】
上記表1に示されるように、実施例1、2の電解液は、析出物が見られず、安定性の高い電解液であることがわかる。
【0052】
[合成例3]
2,3-ジクロロキノキサリン 25.2部とo-フェニレンジアミン 13.7部をDMF 500部に溶解し120℃まで加熱した。120℃を維持して3時間攪拌後、室温まで放冷し、析出物を減圧下にてろ過分離することで下記式(III)の化合物を含むウェットケーキ 50部を得た。このウェットケーキにアセトン 200部を加え30分攪拌し、析出物を減圧下にてろ過分離することで得られたウェットケーキを80℃で1日乾燥させることにより、下記式(III)で表されるフルオフラビン化合物 23.4部を得た。
【0053】
【0054】
[合成例4]
上記合成例3で得られた、上記式(III)で表されるフルオフラビン化合物 2.5部を10℃以下まで冷却した15%発煙硫酸 30部に30分かけて加え、投入終了後15℃以下で5時間攪拌した。反応終了後、反応液を氷水 100部中に滴下し、20℃以下で30分攪拌した後、析出物を減圧下にてろ過分離することで、下記式(IV)で表される化合物を含むウェットケーキ 10部を得た。このウェットケーキにイソプロパノール 100部を加え30分攪拌し、析出物を減圧下にてろ過分離することで得られたウェットケーキを80℃で1日乾燥させることにより、下記式(IV)で表されるフルオフラビン化合物 3.8部を得た。
【0055】
【0056】
[実施例3]
上記式(IV)で表されるフルオフラビン化合物の濃度が0.4mol/L、硫酸アンモニウム(純正化学株式会社、特級)が1.2mol/L、硫酸(関東化学株式会社、特級)が0.12mol/L、尿素(関東化学株式会社、特級)が6.0mol/Lになるように水に溶解し、電解液4を調製した。調製した電解液は固体の析出が確認されず、良好な溶液であった。
[実施例4]
上記式(IV)で表されるフルオフラビン化合物の濃度が0.4mol/L、硫酸アンモニウム(純正化学株式会社、特級)が1.2mol/L、硫酸(関東化学株式会社、特級)が0.12mol/L、グリシン(富士フィルム和光純薬株式会社、特級)が2.0mol/Lになるように水に溶解し、電解液5を調製した。調製した電解液は固体の析出が確認されず、良好な溶液であった。
【0057】
[比較例2]
上記式(IV)で表されるフルオフラビン化合物の濃度が0.4mol/L、硫酸アンモニウム(純正化学株式会社、特級)が1.2mol/L、硫酸(関東化学株式会社、特級)が0.12mol/Lになるように水に溶解し、電解液6を調製した。調製した電解液は固体の析出が確認された。
【0058】
【0059】
上記表2に示されるように、実施例3、4の電解液は、析出物が見られず、安定性の高い電解液であることがわかる。
本願発明の電解液及びそれを用いたレドックスフロー電池は、高いエネルギー密度が得られ、かつ、良好なサイクル特性を提供しうる。また、水系電解液であるため、有機溶剤系電解液と比べ、安全かつ取り扱いが容易であり、かつ、安定性に優れ、広範な用途への応用も可能となる。