(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135474
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20240927BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20240927BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046171
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三浦 清雅
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA12
2H199DA15
2H199DA30
2H199DA32
2H199DA34
2H199DA43
2H199DA46
3D344AA16
3D344AA19
3D344AA22
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】実像の視認状態及び虚像の視認状態のいずれにおいても良好な輝度及び均斉度が得られるヘッドアップディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】
光源22が出射した光を透過させる表示器21と、表示像を表す光を反射させる反射部31,32と、透光部材WS及び反射部31,32を含む結像光学系の光学焦点Fと表示器21との間の位置関係を、表示器21が光学焦点Fよりも射出口WS側となる第1状態と光源22側となる第2状態との間で切り替わるように移動させる移動機構61とを備え、表示器21は、第1状態用の第1レンズ25aと第2状態用の第2レンズ25bとを含む、第2レンチキュラレンズ25と、第1状態とされる場合は第1レンズ25aが光路上に配置され、第2状態とされる場合は第2レンズ25bが光路上に配置されるよう、第2レンチキュラレンズ25を光軸に交差する方向に駆動する第1駆動機構63とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出口を有し、前記射出口から表示光を透光部材に向けて射出することで前記表示光が表す表示像の虚像を視認させるヘッドアップディスプレイ装置であって、
光源が出射した光を透過させると共に、前記表示像を表示する表示器と、
前記表示器に表示された前記表示像を表す光を前記透光部材に向けて反射させる反射部と、
前記透光部材及び前記反射部を含む結像光学系の光学焦点と前記表示器との間の位置関係を、前記表示器が前記光学焦点よりも前記射出口側となる第1状態、及び、前記表示器が前記光学焦点よりも前記光源側となる第2状態、との間で切り替わるように、光軸方向に沿って移動させる移動機構と、
を備え、
前記表示器は、
前記第1状態用の第1レンズと前記第2状態用の第2レンズとを含む、第2レンチキュラレンズと、
前記移動機構により前記第1状態とされる場合は前記第2レンチキュラレンズの前記第1レンズが光路上に配置され、前記移動機構により前記第2状態とされる場合は前記第2レンチキュラレンズの前記第2レンズが光路上に配置されるよう、当該第2レンチキュラレンズを光軸に交差する方向に駆動する駆動機構と
を有することを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記光源よりも光軸に沿って出射側に配置され、前記光源から入射した光を略平行光とするコンデンサーレンズと、
前記コンデンサーレンズよりも光軸に沿って出射側に配置され、前記コンデンサーレンズから入射した光を垂直方向に集光する第1レンチキュラレンズと、
を備え、
前記第2レンチキュラレンズが、前記第1レンチキュラレンズよりも光軸に沿って出射側に配置され、前記第1レンチキュラレンズから入射した光を水平方向に集光し、出射面において光の向きを前記結像光学系に整合させることを特徴とする請求項1記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記第1レンチキュラレンズを光軸方向に沿って移動可能な第1可動機構をさらに有することを特徴とする請求項2記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記第2レンチキュラレンズを光軸方向に沿って移動可能な第2可動機構をさらに有することを特徴とする請求項3記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記駆動機構により前記第1レンズが光路上に配置されるときの、当該第1レンズと前記第1レンチキュラレンズとの間の光軸に沿った距離は、前記駆動機構により前記第2レンズが光路上に配置されるときの、当該第2レンズと前記第1レンチキュラレンズとの間の光軸に沿った距離よりも短い
ことを特徴とする請求項3又は請求項4記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
前記第2レンチキュラレンズは、
前記第1レンズと前記第2レンズとが一体化された一体型レンズであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視認者に対して虚像を用いて所望の表示を行うヘッドアップディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置が知られている。このヘッドアップディスプレイ装置では、画像を表示するスクリーンを動かすことにより、視認者から虚像までの距離を可変に制御している。
【0003】
一方、例えば特許文献2に記載されているように、表示器からの光によりスクリーンに表示された表示像を透光部材へと反射させる構成において、結像光学系の光学焦点とスクリーンとの間の前後位置関係を変更することで、虚像が透光部材の外に視認される状態と、実像が透光部材の内側に視認される状態と、の表示切替を行うものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2018/216552号公報
【特許文献2】特開2011-70074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような構成のヘッドアップディスプレイ装置では、当該表示切替が行われる結果、例えば虚像の視認状態において適正な輝度や均斉度が得られるように調整した場合には、実像の視認状態に切り替わったときには適正な輝度や均斉度が得られず、逆に実像の視認状態にて適正な輝度や均斉度に調整した場合には、虚像の視認状態において不適正になる、という問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、実像の視認状態及び虚像の視認状態のいずれにおいても良好な輝度及び均斉度が得られるヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、射出口52aを有し、前記射出口52aから表示光Lを透光部材WSに向けて射出することで前記表示光Lが表す表示像の虚像V1を視認させるヘッドアップディスプレイ装置1であって、光源22が出射した光を透過させると共に、前記表示像を表示する表示器21と、前記表示器21に表示された前記表示像を表す光を前記透光部材WSに向けて反射させる反射部31,32と、前記透光部材WS及び前記反射部31,32を含む結像光学系の光学焦点Fと前記表示器21との間の位置関係を、前記表示器21が前記光学焦点Fよりも前記射出口52a側となる第1状態、及び、前記表示器21が前記光学焦点Fよりも前記光源22側となる第2状態、との間で切り替わるように、光軸方向に沿って移動させる移動機構61と、を備え、前記表示器21は、前記第1状態用の第1レンズ25aと前記第2状態用の第2レンズ25bとを含む、第2レンチキュラレンズと、前記移動機構61により前記第1状態とされる場合は前記第2レンチキュラレンズ25の前記第1レンズ25aが光路上に配置され、前記移動機構61により前記第2状態とされる場合は前記第2レンチキュラレンズ25の前記第2レンズ25bが光路上に配置されるよう、当該第2レンチキュラレンズ25を光軸に交差する方向に駆動する第1駆動機構63とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、虚像と実像とを切り替えて表示する場合に、虚像の視認状態用のレンチキュラレンズと、実像の視認状態用のレンチキュラレンズとを切り替えることで、虚像の視認状態及び実像の視認状態のいずれにおいても良好な輝度及び均斉度を得ることができる。
ご指示の趣旨を踏まえ、
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態におけるヘッドアップディスプレイ装置において虚像を表示する場合の構成を示す図。
【
図2】本発明の第1の実施形態におけるヘッドアップディスプレイ装置において実像を表示する場合の構成を示す図。
【
図3】本発明の第1の実施形態におけるヘッドアップディスプレイ装置において必要となる配光特性を示す図。
【
図4】本発明の第1の実施形態におけるヘッドアップディスプレイ装置において異なる配光特性で虚像又は実像を表示した場合の表示態様の一例を示す図。
【
図5】本発明の第1の実施形態におけるヘッドアップディスプレイ装置において虚像を表示する場合の表示器のレンズ構成及び光路の一例を示す図。
【
図6】
図5のレンズ構成においてレンチキュラレンズを透過する光路の一例を示す図。
【
図7】本発明の第1の実施形態におけるヘッドアップディスプレイ装置において実像を表示する場合の表示器のレンズ構成及び光路の一例を示す図。
【
図8】
図7のレンズ構成においてレンチキュラレンズを透過する光路の一例を示す図。
【
図9】本発明のその他の実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置において第1レンチキュラレンズと第2レンチキュラレンズとの光路長を変更した場合の光路の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ(Head-Up Display)装置(以下、HUD装置という)について
図1ないし
図8を参照して説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るHUD装置において虚像を表示する場合の構成を示す図、
図2は、本実施形態に係るHUD装置において実像を表示する場合の構成を示す図である。HUD装置1は車両CのウィンドシールドWSの下方(例えばインストゥルメントパネルの内部)に配置され、表示光Lを出射し、ウィンドシールドWSへ投影する。表示光LはHUD装置1の内部の表示器21で生成される。表示器21で生成された表示光Lは光学系(後述する第1反射鏡31や第2反射鏡32)を伝うことで、筐体50の開口部51から出射される。車両Cの乗員は、視点EBからウィンドシールドWSに反射した表示光Lを視認することで、ウィンドシールドWSの奥側に
図1に示すような虚像V1や手前側に
図2に示すような実像V2を見ることができる。上記ウィンドシールド(透光部材)WSは透光部材の一例である。
【0012】
図1に示す虚像V1には、例えば車両Cの速度やエンジン回転数と言った車両情報や、ターンバイターンや地図などの経路案内表示、ブラインドスポットインジケータや制限速度超過警告などの警告表示など、乗員へ注意喚起する必要性が高い情報が、当該乗員から見てウィンドシールドWSの向こう側に表示される。また、
図2に示す実像V2には例えば乗員をサポートするアシスタントやエージェント、それらを示すキャラクターなどが、乗員から見てウィンドシールドWSの手前側に表示される。これらの表示により、視点移動及び眼の焦点距離調整の必要が低減された運転環境が提供される。虚像V1や実像V2にはこれらの情報を示す文字やアイコンの他、背景部分も含まれており、乗員からの平面視ではこれは例えば略矩形状をなしている。
【0013】
虚像V1と実像V2は切り替えて表示される。具体的には、表示器21が光学焦点Fよりも出射口側にある状態(
図1に示す状態であり、以下第1状態という)の場合は、乗員が虚像V1を視認でき、表示器21が光学焦点Fよりも光源側にある状態(
図2に示す状態であり、以下第2状態という)の場合は、乗員が実像V2を視認することができる。第1状態と第2状態との切り替えは、表示器21を光軸方向に沿って移動することで行われる。
【0014】
図1及び
図2において、HUD装置1は、表示光Lを生成する表示器21と、表示器21から出射した表示光Lを反射する第1反射鏡31と、第1反射鏡31で反射した表示光Lを拡大してウィンドシールドWSに反射させる第2反射鏡32と、これらを収容する筐体50と、筐体50の内部を保護するために開口部51に配置されるカバーガラス52とを備える。HUD装置1は、表示器21を光軸方向に沿って移動するための移動機構61(図示しない)と、表示器21の表示内容を制御するための制御基板62(図示しない)とを備える。なお、カバーガラス52には表示光Lを透光する透光部52aが設けられており、この透光部(射出口)52aは射出口の一例である。また、第1反射鏡31及び第2反射鏡32は反射部の一例である。
【0015】
表示器21は、例えば赤色、青色、緑色のそれぞれの光を放射するLEDからなる光源22と、光源22よりも光軸に沿って出射側に配置され、当該光源22から入射した光を略平行光とするコンデンサーレンズ23と、コンデンサーレンズ23よりも光軸に沿って出射側に配置され、当該コンデンサーレンズ23から入射した光を垂直方向に集光する第1レンチキュラレンズ24と、第1レンチキュラレンズ24よりも光軸に沿って出射側に配置され、当該第1レンチキュラレンズ24から入射した光を水平方向に集光し、出射面において光の向きを後段の結像光学系に整合させる第2レンチキュラレンズ25と、第2レンチキュラレンズ25から出射された光で画像を生成し、表示光Lとして出射する液晶ディスプレイ(以下、LCDという)26とを備える。上記画像の内容は、制御基板62の制御にしたがって生成される。
【0016】
第1反射鏡31及び第2反射鏡32は、例えば合成樹脂やガラス等から形成された凹面状の基材と、その基材の凹面に形成された金属の反射膜とからなり、LCD26からの表示光Lを補正、拡大等しながらウィンドシールドWSに導く光学系を構成する。
【0017】
筐体50は、遮光性を有する樹脂により箱状に形成され、表示器21、第1反射鏡31及び第2反射鏡32を収容する。筐体50の上部には、表示光Lを透過させるための開口部51が設けられており、当該開口部51には、筐体50の内部を保護すると共に第2反射鏡32で反射された表示光LをウィンドシールドWSに透光するカバーガラス52が被覆されている。
【0018】
また表示器21は、表示光Lの出射面であるLDC26が光学焦点Fよりも出射口側にある第1状態の位置と、LCD26が光学焦点Fよりも光源側になる第2状態の位置との間を移動機構61により移動する。上述したように乗員に虚像V1を視認させる場合は、移動機構61が表示器21を
図1に示す第1状態の位置に移動させ、乗員に実像V2を視認させる場合には、移動機構61が表示器21を
図2に示す第2状態の位置に移動させる。移動機構61は、例えばモーターやアクチュエーター等の駆動部と、当該駆動部の駆動力を表示器21に直線運動として伝達する伝達機構とからなる。
【0019】
ここで、虚像V1を表示する場合と実像V2を表示する場合とで必要となる表示器21からの配光特性について説明する。
図3は、本実施形態に係るHUD装置において必要となる配光特性を示す図、
図4は、本実施形態に係るHUD装置において異なる配光特性で虚像V1又は実像V2を表示した場合の表示態様の一例を示す図である。
図3(A)は虚像V1を表示する場合に必要となる垂直方向の配光特性、
図3(B)は虚像V1を表示する場合に必要となる水平方向の配光特性、
図3(C)は実像V2を表示する場合に必要となる垂直方向の配光特性、
図3(D)は実像V2を表示する場合に必要となる水平方向の配光特性を示している。また、
図4(A)は、虚像V1の表示に必要な配光特性、すなわち
図3(A)、(B)に示す配光特性で虚像V1及び実像V2をそれぞれ表示した場合の表示態様を示し、
図4(B)は、実像V2の表示に必要な配光特性、すなわち
図3(C)、(D)に示す配光特性で虚像V1及び実像V2をそれぞれ表示した場合の表示態様を示している。
【0020】
乗員が実像V2を視認できる状態で表示するためには、水平方向(以下、H方向という)及び垂直方向(以下、V方向という)ともに光軸を交差させる(絞る)必要があるため、
図3(C)、(D)に示すような狭い配光特性が求められる。仮に
図3(A)、(B)の配光特性で虚像V1及び実像V2を表示すると、
図4(A)に示す通り、虚像V1は適正な輝度及び均斉度で表示されるが、実像V2は上記のことから結像光学系が変更されることで適正な輝度及び均斉度を保つことができなくなる。
【0021】
一方、
図3(C)、(D)の配光特性で虚像V1及び実像V2を表示すると、
図4(B)に示す通り、実像V2は適正な輝度及び均斉度で表示されるが、虚像V1は結像光学系が変更されることで適正な輝度及び均斉度を保つことができなくなる。このように、虚像V1と実像V2とを表示する場合には、どちらか一方の配光特性に合わせると他方の輝度及び均斉度が適正に保てなくなり、トレードオフの関係となってしまう。そのため、本実施形態においては、それぞれの状態に応じて輝度及び均斉度を適正にするために、虚像V1表示用のレンズ構成と実像V2表示用のレンズ構成とをそれぞれ用意し、第1状態又は第2状態に応じてレンズ構成の入れ替えを行う構成となっている。
【0022】
図5は、本実施形態に係るHUD装置において虚像V1を表示する場合の表示器21のレンズ構成及び光路の一例を示す図、
図6は、
図5のレンズ構成において第1レンチキュラレンズ24及び第2レンチキュラレンズ25を透過する光路の一例を示す図である。
図5(A)はH方向のレンズ構成及び光路を示し、
図5(B)はV方向のレンズ構成及び光路を示している。また、
図6(A)はH方向の光路を示し、
図6(B)はV方向の光路を示している。
図5及び
図6は虚像V1を表示する場合のレンズ構成であることから、表示器21が移動機構61により第1状態の位置に配置されると同時にこのようなレンズ構成となる。
【0023】
図5及び
図6において、光源22であるLEDから放射された光は、H方向及びV方向共にコンデンサーレンズ23により光軸に略平行である平行光となる。第1レンチキュラレンズ24の光源22側の受光面は、V方向の断面において光源22側に凸状の曲面を有するシリンドリカルレンズをV方向に沿って複数並設した構造を有している。第1レンチキュラレンズ24の出射面は、V方向の断面において表示光Lの出射側に凸状の曲面を有するシリンドリカルレンズをV方向に沿って複数並設した構造を有している。第1レンチキュラレンズ24はこのような構造により、V方向に関して光源22の光を集光し多重像を形成する。
【0024】
第2レンチキュラレンズ25の光源22側の受光面は、H方向の断面において光源22側に凸状の曲面を有するシリンドリカルレンズをH方向に沿って複数併設した構造を有している。第2レンチキュラレンズ25の出射面は、V方向及びH方向のいずれにも凹状を有するトロイダル面となっている。第2レンチキュラレンズ25はこのような構成により、H方向に関して光源22の光を集光し多重像を形成すると共に、後段の結像光学系に光の向きを整合させる。この虚像V1表示用の第2レンチキュラレンズ25を第1レンズ25aとする。
【0025】
第1レンズ25aから出射された表示光Lは、拡散板27(
図1には図示しない)で拡散されて輝度ムラなどが低減される。拡散板27で拡散された表示光LはLCD26に入射し、制御基板62の制御にしたがった画像を生成して後段の第1反射鏡31に出射される。このようなレンズ構成及び光路により、乗員は虚像V1を適正な輝度及び均斉度で視認することが可能となる。
【0026】
これに対して、
図7は、本実施形態に係るHUD装置において実像V2を表示する場合のレンズ構成及び光路の一例を示す図、
図8は、
図7のレンズ構成において第1レンチキュラレンズ24及び第2レンチキュラレンズ25を透過する光路の一例を示す図である。
図7(A)はH方向のレンズ構成及び光路を示し、
図7(B)はV方向のレンズ構成及び光路を示している。また、
図8(A)はH方向の光路を示し、
図8(B)はV方向の光路を示している。
図7及び
図8は実像V2を表示する場合のレンズ構成であることから、表示器21が移動機構61により第2状態の位置に配置されると同時にこのようなレンズ構成となる。
【0027】
図7及び
図8において、コンデンサーレンズ23及び第1レンチキュラレンズ24は、
図5及び
図6の場合と同様の機能を実現するために共通の部品となっている。すなわち、コンデンサーレンズ23で光源22から放射された光をH方向及びV方向共に平行光とし、第1レンチキュラレンズ24でV方向に関して光源22の光を集光し多重像を形成する。
【0028】
第2レンチキュラレンズ25についても、H方向に関して光源22の光を集光し多重像を形成する機能は、
図5及び
図6の場合と同じである。そのため、光源22側の受光面は
図5及び
図6の場合と同様に、H方向の断面において光源22側に凸状の曲面を有するシリンドリカルレンズをH方向に沿って複数併設した構造を有している。一方の出射面は、
図3(C)、(D)において説明した配光特性を実現するために、V方向及びH方向のいずれにも凸状を有するトロイダル面となっている。出射面を凸状に形成することでH方向及びV方向共に配光特性を狭くする構成となっている。この実像V2表示用の第2レンチキュラレンズ25を第2レンズ25bとする。
【0029】
第2レンズ25bから出射された表示光Lは、拡散板27(
図2には図示しない)で拡散されて輝度ムラなどが低減され、LCD26に入射し、制御基板62の制御にしたがった画像を生成して後段の第1反射鏡31に出射される。
図7に示すように、実像V2を表示する場合は、当該実像V2を作るためにH方向及びV方向の光軸をウィンドシールドWSから視点EBまでの間に交差させる。この場合の光軸の交点は、表示する実像V2の位置及び倍率に応じて任意に設定可能とする。このようなレンズ構成及び光路により、乗員は実像V2を適正な輝度及び均斉度で視認することが可能となる。
【0030】
上記のことから、虚像V1表示用のレンズ構成と、実像V2表示用のレンズ構成とでは、第2レンチキュラレンズ25、すなわち第1レンズ25aと第2レンズ25bとが異なることとなる。つまり、移動機構61により表示器21が第1状態の位置に配置された場合は、
図5及び
図6に示す第1レンズ25aが光路上に配置され、移動機構61により表示器21が第2状態の位置に配置された場合は、
図7及び
図8に示す第2レンズ25bが光路上に配置されるように、第1駆動機構63(図示しない)が第2レンチキュラレンズ25を光軸に交差する方向に駆動する。第1駆動機構63は駆動機構の一例である。
【0031】
なお、第1駆動機構63による第1レンズ25aと第2レンズ25bとの切り替えは、例えばそれぞれ別体のレンズを横方向に並設し、スライド移動させて入れ替わる構成としてもよいし、第1レンズ25aと第2レンズ25bとが一体化された一体型レンズで形成し、第1駆動機構63がスライド移動させて入れ替わる構成としてもよい。第1駆動機構63による第1レンズ25aと第2レンズ25bとのスライド移動は、例えばモーターやアクチュエーター等の駆動部と、当該駆動部の駆動力を第2レンチキュラレンズ25に直線運動として伝達する伝達機構とで実現される。
【0032】
このように、本実施形態に係るHUD装置においては、虚像V1と実像V2とを切り替えて表示する場合に、それぞれの表示状態に応じて虚像V1が表示された視認状態である第1状態用の第2レンチキュラレンズ25と、実像V2が表示された視認状態である第2状態用の第2レンチキュラレンズ25とを切り替えることで、虚像V1の視認状態及び実像V2の視認状態のいずれにおいても良好な輝度及び均斉度を得ることができる。
【0033】
また、光源22よりも光軸に沿って出射側に配置され、光源22から入射した光を略平行光とするコンデンサーレンズ23と、コンデンサーレンズ23よりも光軸に沿って出射側に配置され、コンデンサーレンズ23から入射した光を垂直方向に集光する第1レンチキュラレンズ24と、第1レンチキュラレンズ24よりも光軸に沿って出射側に配置され、第1レンチキュラレンズ24から入射した光を水平方向に集光し、出射面において光の向きを後段の結像光学系に整合させる第2レンチキュラレンズ25とを備えることで、表示器21で所望の表示光Lを生成して適正な表示光Lを後段の結合光学系に出射ことができる。
【0034】
さらに、第2レンチキュラレンズ25が第1レンズ25aと第2レンズ25bとを一体化した一体型レンズとすることで、構成部品数を減らすと共にコンパクトな装置構成にすることができる。
【0035】
(本発明のその他の実施形態)
本実施形態に係るHUD装置について
図9を参照して説明する。本実施形態に係るHUD装置は、第1の実施形態の場合と同様に、第1駆動機構63が第2レンチキュラレンズ25(第1レンズ25a,第2レンズ25b)を第1状態と第2状態とに応じて切り替えることで、虚像V1の表示及び実像V2の表示の輝度及び均斉度を整えると共に、
図3に示した配光特性の切り替えを第1レンチキュラレンズ24及び第2レンチキュラレンズ25の光路長を変更することで行うものである。なお、本実施形態において第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0036】
図9は、本実施形態に係るHUD装置において第1レンチキュラレンズ24と第2レンチキュラレンズ25との光路長を変更した場合の光路の一例を示す図である。
図9(A)は虚像を表示する場合の光路長における光路(H方向)の一例を示す図、
図9(B)は実像を表示する場合の光路長における光路(H方向)の一例を示す図である。
図9においては、一例として、第1レンチキュラレンズ24の光源側の受光面を凹状に形成し、第1レンチキュラレンズ24の出射面を凹状に形成している。また、第2レンチキュラレンズ25の光源22側の受光面は凸状に形成し、出射面は第1の実施形態の場合と同じである。すなわち、第1レンチキュラレンズ24は凹レンズにより光を発散して負の焦点距離を持ち、第2レンチキュラレンズ25は凸レンズにより光を集光して正の焦点距離を持っている。なお、第1レンチキュラレンズ24を凸レンズとし、第2レンチキュラレンズ25を凹レンズとしてもよい。
【0037】
表示器21は、第1レンチキュラレンズ24や第2レンチキュラレンズ25を光軸に沿って駆動する第2駆動機構(第1可動機構及び第2可動機構)64(
図9には図示しない)を備えており、第1可動機構により第1レンチキュラレンズ24が光軸方向に沿って移動し、第2可動機構により第2レンチキュラレンズ25が光軸方向に沿って移動してそれぞれの光路長を変更する。なお、第2駆動機構64は、第1レンチキュラレンズ24のみを光軸方向に沿って移動することでそれぞれのレンチキュラレンズの光路長を変更してもよいし、第2レンチキュラレンズ25のみを光軸方向に沿って移動することでそれぞれのレンチキュラレンズの光路長を変更してもよいし、第1レンチキュラレンズ24及び第2レンチキュラレンズ25の両方を光軸方向に沿って移動することでそれぞれのレンチキュラレンズの光路長を変更してもよい。
【0038】
図9に示すように、虚像V1を表示する場合は、合成焦点距離が負の値を取るように第1レンチキュラレンズ24及び第2レンチキュラレンズ25の光路長を変更してそれぞれの配置関係を調整することで、
図3(A)、(B)に示したような虚像V1の表示に適した配光特性を実現することができる。また、実像V2を表示する場合は、合成焦点距離が正の値を取るように第1レンチキュラレンズ24及び第2レンチキュラレンズ25の光路長を変更してそれぞれの配置関係を調整することで、
図3(C)、(D)に示したような実像V2の表示に適した配光特性を実現することができる。
【0039】
特に、第2駆動機構64により第1レンズ25aが光路上に配置されるときの当該第1レンズ25aと第1レンチキュラレンズ24との間の光路長D1を、第2レンズ25bが光路上に配置されるときの当該第2レンズ25bと第1レンチキュラレンズ24との間の光路長D2よりも短くする、すなわちD1<D2とすることで、
図3に示したそれぞれの配光特性をより効果的に実現することができる。虚像V1及び実像V2におけるそれぞれの輝度及び均斉度の調整については、第1の実施形態の場合と同様に第1駆動機構63が第1レンズ25aと第2レンズ25bとを切り替えることで行われる。
【0040】
なお、第2駆動機構64による各レンチキュラレンズの移動は、例えばモーターやアクチュエーター等の駆動部と、当該駆動部の駆動力を各レンチキュラレンズに直線運動として伝達する伝達機構とで実現されるようにしてもよい。
【0041】
このように、本実施形態に係るHUD装置においては、第1レンチキュラレンズ24と第2レンチキュラレンズ25との間の光路長を変更することで、虚像V1を視認するのに適した配光特性と、実像V2を視認するのに適した配光特性とを微細に調整して切り替えることができる。
【符号の説明】
【0042】
C 車両
EB 視点
F 光学焦点
L 表示光
V1 虚像
V2 実像
WS ウィンドシールド
1 HUD装置
21 表示器
22 光源
23 コンデンサーレンズ
24 第1レンチキュラレンズ
25 第2レンチキュラレンズ
25a 第1レンズ
25b 第2レンズ
26 LCD
27 拡散板
31 第1反射鏡
32 第2反射鏡
50 筐体
51 開口部
52 カバーガラス
52a 透光部
61 移動機構
62 制御基板
63 第1駆動機構
64 第2駆動機構