(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135477
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】永久膜形成用感光性樹脂組成物、永久膜および半導体装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20240927BHJP
G03F 7/023 20060101ALI20240927BHJP
G03F 7/075 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/023
G03F7/075 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046174
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】川浪 卓士
【テーマコード(参考)】
2H225
【Fターム(参考)】
2H225AE02P
2H225AF05P
2H225AM62P
2H225AM66P
2H225AM75P
2H225AM86P
2H225AM99P
2H225AN02P
2H225AN23P
2H225AN24P
2H225AN54P
2H225AN61P
2H225AN68P
2H225AN73P
2H225AN84P
2H225BA01P
2H225BA05P
2H225BA09P
2H225BA32P
2H225BA33P
2H225CA12
2H225CB06
2H225CC03
2H225CC21
(57)【要約】
【課題】保存安定性およびリワーク性に優れる永久膜形成用感光性樹脂組成物、ならびに、保存に伴う不良やリワーク不良の発生が少ない永久膜および半導体装置を提供すること。
【解決手段】本発明の永久膜形成用感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(A)と、感光剤(B)と、界面活性剤(C)と、密着助剤(D)と、溶媒(E)と、を含み、前記界面活性剤(C)は、式(1)で表される有機変性ジメチルシロキサンを含み、前記溶媒(E)は、主溶剤、および、分子中に2個または3個のメチル基を有する非プロトン性極性溶媒を含む。
【化1】
(式(1)中、Xは、ポリエーテル基、ポリエステル基またはアラルキル基を表し、m、nは、それぞれ1以上100以下の整数を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性樹脂(A)と、
感光剤(B)と、
界面活性剤(C)と、
密着助剤(D)と、
溶媒(E)と、
を含み、
前記界面活性剤(C)は、式(1)で表される有機変性ジメチルシロキサンを含み、
前記溶媒(E)は、主溶剤、および、分子中に2個または3個のメチル基を有する非プロトン性極性溶媒を含むことを特徴とする永久膜形成用感光性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Xは、ポリエーテル基、ポリエステル基またはアラルキル基を表し、m、nは、それぞれ1以上100以下の整数を表す。)
【請求項2】
前記溶媒(E)における、分子中に2個または3個のメチル基を有する非プロトン性極性溶媒の含有率は、1質量%以上30質量%以下である請求項1に記載の永久膜形成用感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記主溶剤は、ラクトン系溶媒である請求項1または2に記載の永久膜形成用感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記密着助剤(D)は、シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物および3-アミノプロピルトリエトキシシランの縮合物を含む請求項1または2に記載の永久膜形成用感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記式(1)中のXは、式(2-1)で表される請求項1または2に記載の永久膜形成用感光性樹脂組成物。
【化2】
(式(2-1)中、R
20は炭素数1以上6以下のアルキル基を表し、R
21は、水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルキルエーテル基、または炭素数1以上6以下の不飽和アルキルエーテル基を表し、EOはエチレンオキシド基を表し、POはプロピレンオキシド基を表す。oは1以上の整数を表し、pは0以上の整数を表す。EOとPOの順序については、ランダムであってもよい。)
【請求項6】
前記エチレンオキシド基と前記プロピレンオキシド基との合計モル量に対する前記プロピレンオキシド基のモル比は、1%以上99%以下である請求項5に記載の永久膜形成用感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)は、ポリアミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂およびポリイミド樹脂からなる群より選択される1種以上である請求項1または2に記載の永久膜形成用感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1または2に記載の永久膜形成用感光性樹脂組成物の硬化物で構成されることを特徴とする永久膜。
【請求項9】
請求項8に記載の永久膜を含むことを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久膜形成用感光性樹脂組成物、永久膜および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、例えば絶縁層、保護層等の用途で永久膜を有する。このような永久膜は、感光性樹脂組成物を用いて形成することができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位、および、架橋性基を有する構成単位を有する重合体と、フッ素系界面活性剤と、を有する感光性樹脂組成物が記載されている。また、特許文献1には、この感光性樹脂組成物を用いて硬化膜を形成すること、および、この硬化膜を層間絶縁膜として用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワークに対して感光性樹脂組成物を塗布し、露光および現像に供した後、得られた現像膜に対してリワークを行う場合がある。リワークとは、現像膜を溶剤に接触させて除去し、ワークを再生することをいう。リワークでは、現像膜の残渣を生じないことが求められる。しかしながら、特許文献1に記載の感光性樹脂組成物を用いて形成した現像膜は、リワーク後に残渣が生じることが課題となっている。このため、感光性樹脂組成物には、リワーク性、つまり、リワークに伴う残渣の発生を抑制し得る特性が求められている。また、感光性樹脂組成物が吸湿した場合も、同様に残渣の発生が懸念されていることから、保存安定性を高めることも課題となっている。
【0006】
本発明の目的は、保存安定性およびリワーク性に優れる永久膜形成用感光性樹脂組成物、リワーク不良の少ない永久膜、ならびに、前記永久膜を備える半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)~(9)に記載の本発明により達成される。
(1) アルカリ可溶性樹脂(A)と、
感光剤(B)と、
界面活性剤(C)と、
密着助剤(D)と、
溶媒(E)と、
を含み、
前記界面活性剤(C)は、式(1)で表される有機変性ジメチルシロキサンを含み、
前記溶媒(E)は、主溶剤、および、分子中に2個または3個のメチル基を有する非プロトン性極性溶媒を含むことを特徴とする永久膜形成用感光性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Xは、ポリエーテル基、ポリエステル基またはアラルキル基を表し、m、nは、それぞれ1以上100以下の整数を表す。)
【0008】
(2) 前記溶媒(E)における、分子中に2個または3個のメチル基を有する非プロトン性極性溶媒の含有率は、1質量%以上30質量%以下である上記(1)に記載の永久膜形成用感光性樹脂組成物。
【0009】
(3) 前記主溶剤は、ラクトン系溶媒である上記(1)または(2)に記載の永久膜形成用感光性樹脂組成物。
【0010】
(4) 前記密着助剤(D)は、シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物および3-アミノプロピルトリエトキシシランの縮合物を含む上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の永久膜形成用感光性樹脂組成物。
【0011】
(5) 前記式(1)中のXは、式(2-1)で表される上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の永久膜形成用感光性樹脂組成物。
【化2】
(式(2-1)中、R
20は炭素数1以上6以下のアルキル基を表し、R
21は、水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルキルエーテル基、または炭素数1以上6以下の不飽和アルキルエーテル基を表し、EOはエチレンオキシド基を表し、POはプロピレンオキシド基を表す。oは1以上の整数を表し、pは0以上の整数を表す。EOとPOの順序については、ランダムであってもよい。)
【0012】
(6) 前記エチレンオキシド基と前記プロピレンオキシド基との合計モル量に対する前記プロピレンオキシド基のモル比は、1%以上99%以下である上記(5)に記載の永久膜形成用感光性樹脂組成物。
【0013】
(7) 前記アルカリ可溶性樹脂(A)は、ポリアミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂およびポリイミド樹脂からなる群より選択される1種以上である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の永久膜形成用感光性樹脂組成物。
【0014】
(8) 上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の永久膜形成用感光性樹脂組成物の硬化物で構成されることを特徴とする永久膜。
(9) 上記(8)に記載の永久膜を含むことを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、保存安定性およびリワーク性に優れる永久膜形成用感光性樹脂組成物が得られる。
【0016】
また、本発明によれば、保存に伴う不良やリワーク不良の発生が少なく、生産性に優れる永久膜および半導体装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る永久膜を備える半導体装置(実施形態に係る半導体装置)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る永久膜形成用感光性樹脂組成物、永久膜および半導体装置について添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0019】
1.永久膜形成用感光性樹脂組成物
本実施形態に係る永久膜形成用感光性樹脂組成物は、例えば半導体装置用の永久膜(樹脂膜)を形成するために用いられる樹脂材料である。本実施形態に係る永久膜形成用感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(A)、感光剤(B)、界面活性剤(C)、密着助剤(D)、および溶媒(E)を含む。
界面活性剤(C)は、式(1)で表される有機変性ジメチルシロキサンを含む。
【0020】
【化3】
(式(1)中、Xは、ポリエーテル基、ポリエステル基またはアラルキル基を表し、m、nは、それぞれ1以上100以下の整数を表す。)
【0021】
また、溶媒(E)は、主溶剤(E1)、および、分子中に2個または3個のメチル基を有する非プロトン性極性溶媒(E2)を含む。
【0022】
このような永久膜形成用感光性樹脂組成物は、上記の構成を有することにより、リワーク性に優れる半永久膜形成を経て、永久膜を形成可能なものとなる。リワークとは、半導体装置の製造過程で、塗布、露光および現像を経て形成された半永久膜に不具合が発生した場合、形成した半永久膜を除去した後、除去面に再び半永久膜を形成することをいう。リワーク性とは、半永久膜に溶剤を接触させて除去したとき、半永久膜の残渣(リワーク残渣)を生じさせない特性または抑制する特性のことをいう。リワーク性に優れる永久膜形成用感光性樹脂組成物は、半導体装置の生産性向上に寄与する。
【0023】
1.1.アルカリ可溶性樹脂(A)
アルカリ可溶性樹脂(A)は、樹脂膜に要求される機械的特性、光学特性等の物性に応じて選択することができる。アルカリ可溶性樹脂(A)としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、環状オレフィン樹脂等が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂(A)には、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。アルカリ可溶性樹脂(A)は、ポリアミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂またはポリイミド樹脂を含むことが好ましく、ポリアミド樹脂またはポリベンゾオキサゾール樹脂を含むことがより好ましく、ポリベンゾオキサゾール樹脂を含むことがさらに好ましい。これにより、永久膜形成用感光性樹脂組成物におけるアルカリ可溶性樹脂(A)の分散性を向上できる。また、永久膜形成用感光性樹脂組成物の硬化物で構成される永久膜の機械的強度といった物性を向上させることで、膜厚の均一性を向上させ、欠損が生じることを抑制できる。
【0024】
1.1.1.ポリアミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂
ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミドの構造単位に芳香族環を含む芳香族ポリアミドを用いることが好ましく、式(PA1)で表される構造単位を含むものがより好ましい。これにより、永久膜の機械的強度といった物性を向上できる。したがって、膜厚の均一性を向上し、欠損が生じることを抑制できる観点でも好ましい。
【0025】
芳香族環としては、例えば、ベンゼン環;ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環のような縮合芳香環;ピリジン環、ピロール環のような複素芳香環等が挙げられる。ポリアミド樹脂は、機械的強度等の観点から、芳香族環としてベンゼン環を含むことが好ましい。
【0026】
【0027】
式(PA1)で表される構造単位を含むポリアミド樹脂は、ポリベンゾオキサゾール樹脂の前駆体である。式(PA1)で表される構造単位を含むポリアミド樹脂は、例えば、150℃以上380℃以下の温度で、30分間以上50時間以下の条件で熱処理されることによって、脱水閉環し、ポリベンゾオキサゾール樹脂とすることができる。式(PA1)の構造単位は、脱水閉環によって、式(PBO1)で示される構造単位となる。
【0028】
【0029】
アルカリ可溶性樹脂(A)が式(PA1)で表される構造単位を含むポリアミド樹脂である場合、永久膜形成用感光性樹脂組成物に上記熱処理を行うことで、脱水閉環し、ポリベンゾオキサゾール樹脂としてもよい。すなわち、上記熱処理をした永久膜形成用感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(A)であるポリベンゾオキサゾール樹脂を含んでいてもよい。また、アルカリ可溶性樹脂(A)が式(PA1)で表される構造単位を含むポリアミド樹脂である場合、後述する永久膜や半導体装置を作製した後、上記熱処理を行うことで、脱水閉環させ、ポリベンゾオキサゾール樹脂としてもよい。ポリアミド樹脂を脱水開環することによってポリベンゾオキサゾール樹脂とした場合、機械的特性や熱的特性等を向上できる。これにより、永久膜の変形を抑制できる。
【0030】
1.1.2.ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂
また、ポリアミド樹脂としては、例えば、式(PA2)で表される構造単位を含むものを用いてもよい。
【0031】
式(PA2)で表される構造単位を含むポリアミド樹脂は、ポリイミド樹脂の前駆体である。式(PA2)で表される構造単位を含むポリアミド樹脂は、例えば、150℃以上380℃以下の温度で、30分間以上50時間以下の条件で熱処理されることによって、脱水閉環し、ポリイミド樹脂とすることができる。ここで、式(PA2)の構造単位は、脱水閉環によって、式(PI1)で示される構造単位となる。
【0032】
アルカリ可溶性樹脂(A)が式(PA2)で表される構造単位を含むポリアミド樹脂である場合、永久膜形成用感光性樹脂組成物に上記熱処理を行うことで、脱水閉環し、ポリイミド樹脂としてもよい。すなわち、上記熱処理をした永久膜形成用感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(A)であるポリイミド樹脂を含んでいてもよい。
【0033】
また、アルカリ可溶性樹脂(A)が式(PA2)で表される構造単位を含むポリアミド樹脂である場合、後述する永久膜や半導体装置を作製した後、上記熱処理を行うことで、脱水閉環させ、ポリイミド樹脂としてもよい。
【0034】
【化6】
式(PA2)中、R
BおよびR
Cは、それぞれ独立して炭素数1以上30以下の有機基である。
【0035】
【化7】
式(PI1)中、R
BおよびR
Cは、式(PA2)と同様である。
【0036】
式(PA2)および式(PI1)におけるRBおよびRCは、具体的には、芳香族環を有する有機基であることが好ましい。
【0037】
芳香族環を有する有機基としては、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環またはアントラセン環を含むものが好ましく、ベンゼン環を含むものがより好ましい。これにより、アルカリ可溶性樹脂(A)の分散性が向上し、リワーク不良の原因となるリワーク残渣の発生を抑制することができる。
【0038】
1.1.3.ポリアミド樹脂の製造方法
上記のポリアミド樹脂は、例えば、以下のように重合される。
まず、重合工程(S1)によって、ジアミンモノマーと、ジカルボン酸モノマーとを重縮合させることで、ポリアミドを重合する。次いで、低分子量成分除去工程(S2)によって、低分子量成分を除去し、ポリアミドを主成分とするポリアミド樹脂を得る。
【0039】
1.1.3.1.重合工程(S1)
重合工程(S1)では、ジアミンモノマーと、ジカルボン酸モノマーとを重縮合させる。ポリアミドを重合する重縮合の方法としては限定されず、具体的には、溶融重縮合、酸塩化物法、直接重縮合等が挙げられる。
【0040】
なお、後述するジカルボン酸モノマーとして挙げている化合物、テトラカルボン酸二無水物、トリメリット酸無水物およびジカルボン酸ジクロライドからなる群から選択される化合物と、水酸基を有する化合物と、を反応させて、活性エステル型ジカルボン酸を得る方法を用いてもよい。つまり、この活性エステル型ジカルボン酸を、ジカルボン酸モノマーとしてもよい。水酸基を有する化合物としては、例えば、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールまたはこの1-ヒドロキシベンゾトリアゾールの誘導体等が挙げられる。また、この活性エステル型ジカルボン酸を得る際には、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド等の、通常のエステル合成の際に用いられる縮合剤を用いることができる。その他、塩酸、硫酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の酸触媒を加えた上で、加熱し、アルコール化合物とカルボン酸化合物から発生する水を除去させつつ反応を進行させ、エステル化を進めて、上記の活性エステル型ジカルボン酸を得るようにしてもよい。
【0041】
以下に、ポリアミド樹脂の重合に用いるジアミンモノマーと、ジカルボン酸モノマーとについて説明する。なお、ジアミンモノマーと、ジカルボン酸モノマーとは、それぞれ、1種ずつのみ用いてもよいし、2種以上のジアミンモノマーおよび/または2種以上のジカルボン酸モノマーを用いてもよい。
【0042】
(ジアミンモノマー)
重合に用いるジアミンモノマーとしては限定されず、例えば、構造中に芳香族環を含むジアミンモノマーを用いることが好ましく、構造中にフェノール性ヒドロキシル基を含むジアミンモノマーを用いることがより好ましい。このようなジアミンモノマーを原料としてポリアミド樹脂を製造することで、ポリアミド樹脂のコンホメーションを制御し、組成物としたときの分散性をより向上できる。
【0043】
ここで、構造中にフェノール性ヒドロキシル基を含むジアミンモノマーとしては、例えば、式(DA1)で表される物が好ましい。このようなジアミンモノマーを原料としてポリアミド樹脂を製造することで、ポリアミド樹脂のコンホメーションを制御し、ポリアミド樹脂の分子鎖同士が、より密な構造を形成できる。したがって、アルカリ可溶性樹脂(A)の分子および金属分子がより強力に結びついた配位で、分子構造を凍結でき、基板との密着性を向上できると考えられる。
【0044】
なお、例えば、式(DA1)で表されるジアミンモノマーを用いた場合、ポリアミド樹脂は、式(PA3)で表される構造単位を含む。すなわち、本実施形態に係るポリアミド樹脂は、例えば、式(PA3)で表される構造単位を含むことが好ましい。
【0045】
【化8】
式(DA1)において、R
4は、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、塩素原子、フッ素原子、臭素原子からなる群より選択される1種または2種以上の原子によって形成される基である。R
5~R
10は、それぞれ独立して、水素または炭素数1以上30以下の有機基を表す。
【0046】
【化9】
式(PA3)において、R
4、R
5~R
10は、式(DA1)と同様である。
【0047】
式(DA1)および式(PA3)におけるR4は、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、塩素原子、フッ素原子、臭素原子からなる群より選択される1種または2種以上の原子によって形成される基である。
【0048】
なお、R4は、2価の基である。ここで、2価の基とは、原子価のことを示す。すなわち、R4が他の原子と結合する結合手が2個であることを示す。
【0049】
式(DA1)および式(PA3)におけるR4が炭素原子を含む場合、R4は、例えば、炭素数1以上30以下の基であり、炭素数1以上10以下の基であることが好ましく、炭素数1以上5以下の基であることがより好ましく、炭素数1以上3以下の基であることがさらに好ましい。
【0050】
式(DA1)および式(PA3)におけるR4が炭素原子を含む場合、R4としては、具体的には、アルキレン基、アリーレン基、ハロゲン置換アルキレン基、ハロゲン置換アリーレン基等が挙げられる。
【0051】
アルキレン基としては、例えば、直鎖形状のアルキレン基でもよく、分岐鎖形状のアルキレン基でもよい。直鎖形状のアルキレン基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デカニレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。分岐鎖形状のアルキレン基としては、具体的には、-C(CH3)2-、-CH(CH3)-、-CH(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH2CH3)-、-C(CH2CH3)2-等のアルキルメチレン基;-CH(CH3)CH2-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-C(CH3)2CH2-、-CH(CH2CH3)CH2-、-C(CH2CH3)2-CH2-等のアルキルエチレン基等が挙げられる。
【0052】
アリーレン基としては、具体的には、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、2個またはそれ以上のアリーレン基同士が結合したもの等が挙げられる。
【0053】
ハロゲン置換アルキレン基、ハロゲン置換アリーレン基としては、具体的には、それぞれ、上述したアルキレン基、アリーレン基中の水素原子を、フッ素原子、塩素原子、臭素原子といったハロゲン原子で置換したものを用いることができる。これらの中でも、フッ素原子によって水素原子を置換したものを用いるものが好ましい。
【0054】
式(DA1)および式(PA3)におけるR4が炭素原子を含まない場合、R4としては、具体的には、酸素原子または硫黄原子からなる基等が挙げられる。
【0055】
式(DA1)および式(PA3)におけるR5~R10は、それぞれ独立して、水素または炭素数1以上30以下の有機基であり、例えば、水素または炭素数1以上10以下の有機基であることが好ましく、水素または炭素数1以上5以下の有機基であることがより好ましく、水素または炭素数1以上3以下の有機基であることがさらに好ましく、水素または炭素数1以上2以下の有機基であることが特に好ましい。これにより、ポリアミド樹脂の芳香族環同士が密に配列することができる。したがって、アルカリ可溶性樹脂(A)の分子および金属分子がより強力に結びついた配位で、分子構造を凍結でき、密着性を向上できる。
【0056】
式(DA1)および式(PA3)におけるR5~R10の炭素数1以上30以下の有機基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;アリル基、ペンテニル基、ビニル基等のアルケニル基;エチニル基等のアルキニル基;メチリデン基、エチリデン基等のアルキリデン基;トリル基、キシリル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;アダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基;トリル基、キシリル基等のアルカリル基等が挙げられる。
【0057】
式(DA1)で表されるジアミンモノマーとしては、具体的には、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-メチレンビス(2-アミノ-3,6ジメチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2-アミノフェノール)、1,1-ビス(3-アミノ4-ヒドロキシフェニル)エタン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル等が挙げられる。これらのジアミンモノマーを用いることにより、ポリアミド樹脂の芳香族環同士が密に配列する。したがって、アルカリ可溶性樹脂(A)の分子および金属分子がより強力に結びついた配位で、分子構造を凍結でき、密着性を向上できる。なお、ジアミンモノマーとしては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
以下に、これらのジアミンモノマーの構造式を示す。
【0058】
【0059】
(ジカルボン酸モノマー)
重合に用いるジカルボン酸モノマーとしては限定されず、例えば、構造中に芳香族環を含むジカルボン酸モノマーを用いることが好ましい。
【0060】
芳香族環を含むジカルボン酸モノマーとしては、例えば、式(DC1)で表されるものを用いることが好ましい。このようなジカルボン酸モノマーを原料としてポリアミド樹脂を製造することで、ポリアミド樹脂のコンホメーションを制御し、混合溶媒中での分散性を向上できる。そして、分散性向上により、リワーク不良の原因となるリワーク残渣の発生を抑制することができる。
【0061】
【化11】
式(DC1)において、R
11は、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、塩素原子、フッ素原子、臭素原子からなる群より選択される1種または2種以上の原子によって形成される基である。R
12~R
19は、それぞれ独立して、水素または炭素数1以上30以下の有機基を表す。
【0062】
なお、例えば、式(DC1)で表されるジカルボン酸モノマーを用いた場合、ポリアミド樹脂は、典型的には式(PA4)で表される構造単位を含む。式(PA4)において、R11、R12~R19の定義は、式(DC1)と同様である。
【0063】
【0064】
式(DC1)および式(PA4)におけるR11は、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、塩素原子、フッ素原子、臭素原子からなる群より選択される1種または2種以上の原子によって形成される基である。
【0065】
なお、R11は、2価の基である。ここで、2価の基とは、原子価のことを示す。すなわち、R11が他の原子と結合する結合手が2個であることを示す。
【0066】
式(DC1)および式(PA4)におけるR11が炭素原子を含む場合、R11は、例えば、炭素数1以上30以下の基であり、炭素数1以上10以下の基であることが好ましく、炭素数1以上5以下の基であることがより好ましく、炭素数1以上3以下の基であることがさらに好ましい。
【0067】
式(DC1)および式(PA4)におけるR11が炭素原子を含む場合、R11としては、具体的には、アルキレン基、アリーレン基、ハロゲン置換アルキレン基、ハロゲン置換アリーレン基等が挙げられる。
【0068】
アルキレン基としては、例えば、直鎖形状のアルキレン基でもよく、分岐鎖形状のアルキレン基でもよい。直鎖形状のアルキレン基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デカニレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。分岐鎖形状のアルキレン基としては、具体的には、-C(CH3)2-、-CH(CH3)-、-CH(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH2CH3)-、-C(CH2CH3)2-等のアルキルメチレン基;-CH(CH3)CH2-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-C(CH3)2CH2-、-CH(CH2CH3)CH2-、-C(CH2CH3)2-CH2-等のアルキルエチレン基等が挙げられる。
【0069】
アリーレン基としては、具体的には、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、および、2個またはそれ以上のアリーレン基同士が結合したもの等が挙げられる。
【0070】
ハロゲン置換アルキレン基、ハロゲン置換アリーレン基としては、具体的には、それぞれ、上述したアルキレン基、アリーレン基中の水素原子を、フッ素原子、塩素原子、臭素原子といったハロゲン原子で置換したものを用いることができる。これらの中でも、フッ素原子によって水素原子を置換したものを用いるものが好ましい。
【0071】
式(DC1)および式(PA4)におけるR11が炭素原子を含まない場合、R11としては、具体的には、酸素原子または硫黄原子からなる基等が挙げられる。
【0072】
式(DC1)および式(PA4)におけるR12~R19は、それぞれ独立して、水素または炭素数1以上30以下の有機基であり、例えば、水素または炭素数1以上10以下の有機基であることが好ましく、水素または炭素数1以上5以下の有機基であることがより好ましく、水素または炭素数1以上3以下の有機基であることがさらに好ましく、水素であることが一層好ましい。
【0073】
式(DC1)および式(PA4)におけるR12~R19の炭素数1以上30以下の有機基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;アリル基、ペンテニル基、ビニル基等のアルケニル基;エチニル基等のアルキニル基;メチリデン基、エチリデン基等のアルキリデン基;トリル基、キシリル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;アダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基;トリル基、キシリル基等のアルカリル基等が挙げられる。
【0074】
ジカルボン酸モノマーとしては、具体的には、ジフェニルエーテル4,4’-ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸等を用いることができる。ジカルボン酸モノマーとしては、上記具体例のうち、ジフェニルエーテル4,4’-ジカルボン酸またはイソフタル酸を用いることが好ましく、ジフェニルエーテル4,4’-ジカルボン酸を用いることがより好ましい。これにより、ポリアミド樹脂の芳香族環同士が密に配列する。したがって、アルカリ可溶性樹脂(A)の分子および金属分子がより強力に結びついた配位で、分子構造を凍結でき、密着性を向上できる。
【0075】
なお、重合工程(S1)と同時、または、重合工程(S1)の後に、ポリアミド樹脂の末端に存在するアミノ基を修飾することが好ましい。修飾は、例えば、ジアミンモノマーまたはポリアミド樹脂に対して、特定の酸無水物または特定のモノカルボン酸を反応させることで行うことができる。したがって、本実施形態に係るポリアミド樹脂は、末端のアミノ基が特定の酸無水物または特定のモノカルボン酸によって修飾されてなることが好ましい。なお、上記特定の酸無水物、上記特定のモノカルボン酸とは、アルケニル基、アルキニル基、およびヒドロキシル基からなる群よりなる1種以上の官能基を有するものである。また、上記特定の酸無水物、特定のモノカルボン酸としては、例えば窒素原子を含むものが好ましい。これにより、ポストベーク後の永久膜形成用感光性樹脂組成物と、Cu、Al等の金属との濡れ性を向上できる。
【0076】
上記特定の酸無水物としては、具体的には、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、exo-3,6-エポキシ-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、3,6-エンドメチレン-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、イタコン酸無水物、ヘット酸無水物、4-エチニルフタル酸無水物、4-フェニルエチニルフタル酸無水物、4-ヒドロキシフタル酸無水物等が挙げられる。特定の酸無水物としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
なお、環形状の特定の酸無水物によって、ポリアミド樹脂の末端に存在するアミノ基を修飾した場合、環形状の特定の酸無水物は開環する。ここで、ポリアミド樹脂を修飾した後、環形状の特定の酸無水物に由来する構造単位を閉環することで、イミド環としてもよい。閉環する方法としては、例えば、熱処理等が挙げられる。
【0078】
また、上記特定のモノカルボン酸としては、具体的には、5-ノルボルネン-2-カルボン酸、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。上記特定のモノカルボン酸としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
また、重合工程(S1)と同時、または、重合工程(S1)の後に、ポリアミド樹脂の末端に存在するカルボキシル基を修飾してもよい。修飾は、例えば、ジカルボン酸モノマーまたはポリアミド樹脂に対して、特定の窒素原子含有複素芳香族化合物を反応させることで行うことができる。したがって、ポリアミド樹脂は、末端のカルボキシル基が特定の窒素原子含有複素芳香族化合物によって修飾されてなることが好ましい。なお、上記特定の窒素原子含有複素芳香族化合物とは、1-(5-1H-トリアゾイル)メチルアミノ基、3-(1H-ピラゾイル)アミノ基、4-(1H-ピラゾイル)アミノ基、5-(1H-ピラゾイル)アミノ基、1-(3-1H-ピラゾイル)メチルアミノ基、1-(4-1H-ピラゾイル)メチルアミノ基、1-(5-1H-ピラゾイル)メチルアミノ基、(1H-テトラゾル-5-イル)アミノ基、1-(1H-テトラゾル-5-イル)メチル-アミノ基および3-(1H-テトラゾル-5-イル)ベンズ-アミノ基からなる群より選択される1種以上の官能基を有するものである。これにより、永久膜形成用感光性樹脂組成物中の孤立電子対の数を増加できる。したがって、プリベーク後、ポストベーク後の永久膜形成用感光性樹脂組成物と、Cu、Al等の金属との濡れ性を向上できる。
【0080】
上記特定の窒素原子含有複素芳香族化合物としては、具体的には、5-アミノテトラゾール等が挙げられる。
【0081】
1.1.3.2.低分子量成分除去工程(S2)
上記重合工程(S1)に次いで、低分子量成分除去工程(S2)を行い、低分子量成分を除去することが好ましい。
【0082】
具体的には、低分子量成分と、ポリアミド樹脂との混合物が含まれた有機層を、濾過等によって濃縮した後、水/イソプロパノール等の有機溶媒に再度溶解させる。これにより、沈殿物を濾別し、低分子量成分が除去されたポリアミド樹脂を得ることができる。
【0083】
なお、ポリアミド樹脂については、例えば、上記低分子量成分除去工程の後、溶媒が完全に揮発しドライとなる工程を経ることなくワニスである永久膜形成用感光性樹脂組成物を調製することが好ましい。これにより、ポリアミド樹脂の分子間における、アミド結合に由来する相互作用によって、ポリアミドの分散性が低下することを抑制できる。その結果、リワーク不良の原因となるリワーク残渣の発生を抑制することができる。
【0084】
1.2.感光剤(B)
感光剤(B)としては、光エネルギーを吸収することにより酸を発生する光酸発生剤が挙げられる。
【0085】
光酸発生剤としては、具体的には、ジアゾキノン化合物;ジアリールヨードニウム塩;2-ニトロベンジルエステル化合物;N-イミノスルホネート化合物;イミドスルホネート化合物;2,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン化合物;ジヒドロピリジン化合物等が挙げられる。これらの中でも、感光性ジアゾキノン化合物を用いることが好ましい。これにより、永久膜形成用感光性樹脂組成物の感度を向上することができる。したがって、パターンの精度を向上でき、外観を向上させることができる。なお、光酸発生剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を含むことができる。
【0086】
また、永久膜形成用感光性樹脂組成物がポジ型である場合には、感光剤(B)として、上記具体例に加えて、トリアリールスルホニウム塩;スルホニウム・ボレート塩等のオニウム塩等を併せて用いてもよい。これにより、永久膜形成用感光性樹脂組成物の感度をさらに向上できる。
【0087】
以下、ジアゾキノン化合物を、化学式を用いて例示する。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
以上の各ジアゾキノン化合物において、Qは、式(a)、式(b)および式(c)に表される構造または水素原子である。ただし、各ジアゾキノン化合物のQのうち少なくとも1つは、式(a)、式(b)および式(c)によって表される構造である。
【0094】
ジアゾキノン化合物のQとしては、式(a)または式(b)を含むことが好ましい。これにより、永久膜形成用感光性樹脂組成物の透明性を向上させることができる。したがって、永久膜形成用感光性樹脂組成物の外観を向上させることができる。
【0095】
【0096】
永久膜形成用感光性樹脂組成物における感光剤(B)の含有量の下限値は、アルカリ可溶性樹脂(A)を100質量部としたとき、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましい。これにより、永久膜形成用感光性樹脂組成物は適切な感度を有するものとなる。永久膜形成用感光性樹脂組成物中の感光剤(B)の含有量の上限値は、アルカリ可溶性樹脂(A)を100質量部としたとき、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。これにより、永久膜形成用感光性樹脂組成物が、半導体装置の基板表面に存在する金属材料によって弾かれることを抑制できる。
【0097】
1.3.界面活性剤(C)
界面活性剤(C)は、式(1)で表される有機変性ジメチルシロキサンを含む。界面活性剤(C)の望ましい物性としては、極性が高いこと、および表面張力低下能が低いことが挙げられる。極性が高い界面活性剤(C)を用いることにより、アルカリ可溶性樹脂(A)と後述する溶剤を含む他の成分との相溶性を高め、ひいては、永久膜形成用感光性樹脂組成物を用いて塗膜を形成する場合の塗膜性能を向上させることができる。また、表面張力低下能を低くすることで、金属材料に対する濡れ性を高め、永久膜形成用感光性樹脂組成物を用いて塗膜を形成する場合の塗膜性能を向上させることができる。さらに、本実施形態に用いられる界面活性剤(C)は、後述する特定の官能基による有機変性ジメチルシロキサンを含んでいる。これにより、永久膜形成用感光性樹脂組成物が吸湿した場合でも、界面活性剤(C)の機能が低下しにくくなり、各構成成分の溶解状態(分散状態)を維持できる。これにより、永久膜形成用感光性樹脂組成物に意図しない反応性が生じて反応物が発生したり、構成成分の溶解性が低下して析出物が生じたりするのを抑制できる。その結果、永久膜形成用感光性樹脂組成物の保存安定性を高めるとともに、リワーク残渣となり得る反応物や析出物の発生を抑制することができる。
【0098】
【化19】
式(1)中、Xは、ポリエーテル(ポリオキシアルキレン)基、ポリエステル基またはアラルキル基を表し、m、nはそれぞれ1以上100以下の整数を表す。また、式(1)中のXがポリエーテル基である場合、Xとしては、式(2-1)で表されるポリエーテル基が好ましく用いられる。
【0099】
【化20】
式(2-1)中、R
20は炭素数1以上6以下のアルキル基を表し、R
21は、水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルキルエーテル基、または炭素数1以上6以下の不飽和アルキルエーテル基を表し、EOはエチレンオキシド基を表し、POはプロピレンオキシド基を表す。oは1以上の整数を表し、pは0以上の整数を表す。EOとPOの順序については、ランダムであってもよい。
【0100】
これにより、永久膜形成用感光性樹脂組成物の保存安定性を特に高めるとともに、リワーク残渣となり得る反応物や析出物の発生を特に抑制することができる。
【0101】
式(1)中のXがプロピレンオキシド基を含む場合、エチレンオキシド基とプロピレンオキシド基との合計モル量に対するプロピレンオキシド基のモル比の下限は、1%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましい。一方、上記プロピレンオキシド基のモル比の上限は、99%以下が好ましく、90%以下がより好ましく、80%以下がさらに好ましい。プロピレンオキシド基のモル比を上記範囲とすることで金属との濡れ性を向上させることができる。
【0102】
式(1)中のXがポリエステル基である場合、Xとしては、式(2-2)で表されるポリエステル基が好ましく用いられる。
【0103】
【化21】
式(2-2)中、R
22、R
23、R
24およびR
25は、それぞれ独立に炭素数1以上20以下のアルキル基を表し、rは、1以上の整数を表す。
【0104】
式(1)中のXがアラルキル基である場合、Xとしては、式(2-3)で表されるアラルキル基が好ましく用いられる。
【0105】
【化22】
式(2-3)中、R
26は、炭素数1以上30以下のアルキル基を表す。
【0106】
式(1)で示されたmとnとの合計に対するmの割合の下限は、0.5%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、5%以上がさらに好ましく、10%以上が特に好ましい。一方、上記mの割合の上限は、60%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、40%以下がさらに好ましく、30%以下が特に好ましい。mの割合を上記範囲とすることで金属との濡れ性を向上させることができる。
【0107】
永久膜形成用感光性樹脂組成物における界面活性剤(C)の含有量は、特に制限されないが、含有量の下限値は、界面活性剤による効果を十分に得る観点から、永久膜形成用感光性樹脂組成物の溶媒を含む全体の0.001質量%(10ppm)以上が好ましく、0.01質量%(100ppm)以上がより好ましい。また、含有量の上限値は、永久膜形成用感光性樹脂組成物の溶媒を含む全体の1質量%(10000ppm)以下であることが好ましく、0.5質量%(5000ppm)以下であることであることがより好ましく、0.1質量%(1000ppm)以下であることがさらに好ましい。界面活性剤(C)の含有量を上記範囲内とすることで、アルカリ可溶性樹脂(A)と後述する溶媒を含む他の成分との相溶性を高めるという界面活性剤としての効果を一層高めることができる。
【0108】
1.4.密着助剤(D)
密着助剤(D)としては、具体的には、トリアゾール化合物、アミノシラン化合物またはイミド化合物が挙げられ、特にアミノシラン化合物が好ましく用いられる。これらを用いることにより、永久膜形成用感光性樹脂組成物と、Cu、Alといった金属部材との親和性を向上できる。
【0109】
トリアゾール化合物としては、具体的には、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、4H-1,2,4-トリアゾール-3-アミン、4-アミノ-3,5-ジ-2-ピリジル-4H-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール、4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-アミン、3,4-ジアミノ-4H-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-4H-1,2,4-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール-3,4,5-トリアミン、3-ピリジル-4H-1,2,4-トリアゾール、4H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド、3,5-ジアミノ-4-メチル-1,2,4-トリアゾール、3-ピリジル-4-メチル-1,2,4-トリアゾール、4-メチル-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド等の1,2,4-トリアゾールが挙げられる。トリアゾール化合物としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0110】
アミノシラン化合物としては、具体的には、シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物および3-アミノプロピルトリエトキシシランの縮合物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物および3-アミノプロピルトリエトキシシランの縮合物、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N’ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’-ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N,N’-ビス[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’-ビス[3-(メチルジエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’-ビス[3-(ジメチルメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N-[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]-N’-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ジアミノプロパン、N,N’-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ジアミノヘキサン、N,N’-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ジエチレントリアミン等が挙げられる。アミノシラン化合物としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0111】
イミド化合物としては、以下に例示される化合物が挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0112】
【0113】
永久膜形成用感光性樹脂組成物における密着助剤(D)の含有量の下限は、アルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましく、2.0質量部以上であることがさらに好ましく、3.0質量部以上であることが特に好ましい。永久膜形成用感光性樹脂組成物における密着助剤(D)の含有量の上限は、アルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、7質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。
【0114】
密着助剤(D)の含有量を上記範囲内とすることで、永久膜形成用感光性樹脂組成物中に密着助剤が好適に分散し、永久膜形成用感光性樹脂組成物の被着体に対する密着力を向上できるとともに、リワーク性が向上する。
【0115】
密着助剤(D)は、カップリング剤を含んでいてもよい。カップリング剤としては、上述したアミノシラン化合物以外の、加水分解性基を有するシラン系化合物(シランカップリング剤)等が挙げられる。
【0116】
シラン系化合物としては、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン;p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリルシラン;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリルシラン;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリルシラン;イソシアヌレートシラン;アルキルシラン;3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン等のウレイドシラン;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネートシラン等が挙げられる。シランカップリング剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0117】
密着助剤(D)は、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤を含んでいてもよい。
【0118】
1.5.熱架橋剤
永久膜形成用感光性樹脂組成物は、熱によってアルカリ可溶性樹脂(A)と反応可能な熱架橋剤を含んでいてもよい。これにより、永久膜形成用感光性樹脂組成物をポストベークした硬化物について、引張破断伸びといった機械的特性を向上できる。また、永久膜形成用感光性樹脂組成物により形成される樹脂膜の感度を向上できる。
【0119】
熱架橋剤としては、具体的には、1,2-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノール(パラキシレングリコール)、1,3,5-ベンゼントリメタノール、4,4-ビフェニルジメタノール、2,6-ピリジンジメタノール、2,6-ビス(ヒドロキシメチル)-p-クレゾール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジアルコキシメチルフェノール)等のメチロール基を有する化合物;フロログルシド等のフェノール類;1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メトキシメチル)ベンゼン、4,4’-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、3,4’-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、3,3’-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、2,6-ナフタレンジカルボン酸メチル、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメトキシメチルフェノール)等のアルコキシメチル基を有する化合物;ヘキサメチロールメラミン、ヘキサブタノールメラミン等から代表されるメチロールメラミン化合物;ヘキサメトキシメラミン等のアルコキシメラミン化合物;テトラメトキシメチルグリコールウリル等のアルコキシメチルグリコールウリル化合物;メチロールベンゾグアナミン化合物、ジメチロールエチレンウレア等のメチロールウレア化合物;ジシアノアニリン、ジシアノフェノール、シアノフェニルスルホン酸等のシアノ化合物;1,4-フェニレンジイソシアナート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアナート等のイソシアナート化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、イソシアヌル酸トリグリシジル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン系エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂型エポキシ樹脂等のエポキシ基含有化合物;N,N’-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N’-メチレンジマレイミド等のマレイミド化合物等が挙げられる。熱架橋剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0120】
永久膜形成用感光性樹脂組成物における熱架橋剤の含有量の下限は、アルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましく、6質量部以上であることが特に好ましい。永久膜形成用感光性樹脂組成物における熱架橋剤の含有量の上限は、アルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。これにより、熱架橋剤がフェノール性水酸基のような溶媒和する官能基を備える場合でも、ポストベーク後の耐薬品性が低下することを抑制できる。
【0121】
1.6.溶解調整剤
永久膜形成用感光性樹脂組成物は、溶解調整剤を含んでいてもよい。これにより、永久膜形成用感光性樹脂組成物の固形分の溶媒に対する溶解性を調整することができる。その結果、永久膜形成用感光性樹脂組成物のリワーク性を向上できる。
【0122】
溶解調整剤としては、上述したシラン系化合物以外のシラン系化合物が挙げられ、特に、疎水性官能基および加水分解性基を有するシランカップリング剤が好ましく用いられる。疎水性官能基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基等が挙げられる。このようなシランカップリング剤としては、例えば、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0123】
永久膜形成用感光性樹脂組成物における溶解調整剤の含有量の下限は、アルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましく、1.5質量部以上であることがさらに好ましい。永久膜形成用感光性樹脂組成物における溶解調整剤の含有量の上限は、アルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることがさらに好ましい。これにより、永久膜形成用感光性樹脂組成物のリワーク性を向上できる。
【0124】
1.7.酸化防止剤
永久膜形成用感光性樹脂組成物は、酸化防止剤を含んでもよい。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤およびチオエーテル系酸化防止剤から選択される1種以上を使用できる。酸化防止剤は、永久膜形成用感光性樹脂組成物により形成される永久膜の酸化を抑制できる。
【0125】
フェノ-ル系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、3,9-ビス{2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル}2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6-ヘキサンジオール-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、4,4’-チオビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、2-オクチルチオ-4,6-ジ(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノキシ)-s-トリアジン、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチル-6-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス〔3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4’-ブチリデンビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4-s-ブチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2-t-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-t-ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリス〔(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2-t-ブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-t-ブチル-5-メチルベンジル)フェノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4-8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン-ビス〔β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコ-ルビス〔β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、1,1’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(6-(1-メチルシクロヘキシル)-4-メチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス(2-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルプロピオニロキシ)1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)サルファイド、4,4’-チオビス(6-t-ブチル-2-メチルフェノール)、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,4-ジメチル-6-(1-メチルシクロヘキシル、スチレネイティッドフェノール、2,4-ビス((オクチルチオ)メチル)-5-メチルフェノール等が挙げられる。
【0126】
リン系酸化防止剤としては、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニルホスファイト)、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート-ジエチルエステル、ビス-(2,6-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ミックスドモノandジ-ノニルフェニルホスファイト)、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メトキシカルボニルエチル-フェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-オクタデシルオキシカルボニルエチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
【0127】
チオエ-テル系酸化防止剤としては、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ビス(2-メチル-4-(3-n-ドデシル)チオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル)スルフィド、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリル)チオプロピオネート等が挙げられる。
【0128】
1.8.溶媒(E)
溶媒(E)は、質量比で最も含有率が大きい主溶剤(E1)、および、分子中に2個または3個のメチル基を有する非プロトン性極性溶媒(E2)を含む。このような溶媒(E)は、1分子当たりの個数が最適化されたメチル基が持つ疎水性に由来して、永久膜形成用感光性樹脂組成物の耐湿性の向上に寄与できる。また、1分子当たりのメチル基の数が前記範囲内であれば、永久膜形成用感光性樹脂組成物に付与する耐湿性と、各構成成分の溶解性と、のバランスをとることができる。このため、非プロトン性極性溶媒(E2)は、永久膜形成用感光性樹脂組成物が吸湿した場合でも、各構成成分の変性を抑制し、各構成成分の溶解状態(分散状態)を維持する。これにより、永久膜形成用感光性樹脂組成物に意図しない反応性が生じて反応物が発生したり、構成成分の溶解性が低下して析出物が生じたりするのを抑制できる。
【0129】
このようにして、永久膜形成用感光性樹脂組成物の保存安定性を高めるとともに、リワーク残渣となり得る反応物や析出物の発生を抑制することができる。なお、1分子当たりのメチル基の数が1個の場合は、永久膜形成用感光性樹脂組成物に付与する耐湿性が不十分になり、1分子当たりのメチル基の数が4個以上の場合、各構成成分の溶解性が低下して、残渣等の発生を招く場合がある。
【0130】
分子中に2個または3個のメチル基を有する非プロトン性極性溶媒(E2)としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、3-メトキシ-N、N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N-ジエチルアセトアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジブチルホルムアミド等のアミド系溶媒;1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、1,3-ジメトキシ-1,3-ジメチル尿素等のウレア系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3-ブチレングリコール-3-モノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、等のアセテート系溶媒;2-ヘプタノン等のケトン系溶媒;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホン系溶媒;ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル-3-メトキシプロピオネート等のエステル系溶媒等が挙げられる。非プロトン性極性溶媒(E2)には、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0131】
非プロトン性極性溶媒(E2)には、アミド系溶媒およびスルホン系溶媒の少なくとも一方が好ましく用いられる。
【0132】
また、この非プロトン性極性溶媒(E2)は、特に、分子中に2個のメチル基を有するものが好ましく用いられる。これにより、永久膜形成用感光性樹脂組成物の保存安定性およびリワーク性をより高めることができる。
【0133】
主溶剤(E1)は、上記の非プロトン性極性溶媒(E2)よりも質量比での含有率が大きい有機溶剤である。このような有機溶剤としては、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル-1,3-ブチレングリコールアセテート等のアセテート系溶媒;γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン等のラクトン系溶媒;エチレンカルボナート、炭酸プロピレン等のカーボネート系溶媒;メシチレン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。主溶剤(E1)には、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0134】
また、主溶剤(E1)には、上述した非プロトン性極性溶媒(E2)以外の非プロトン性極性溶媒に分類される有機溶剤、つまり、1分子当たりのメチル基の数が1個以下または4個以上である非プロトン性極性溶媒が好ましく用いられる。また、より好ましくは分子中にメチル基を有しない(メチル基の数が0個の)非プロトン性極性溶媒が用いられる。これにより、永久膜形成用感光性樹脂組成物の極性が損なうことなく、アルカリ可溶性樹脂(A)の分散性をより向上できる。
【0135】
さらに、主溶剤(E1)には、アセテート系溶媒およびラクトン系溶媒の少なくとも一方が好ましく用いられ、1分子当たりのメチル基の数が1個以下であるアセテート系溶媒およびラクトン系溶媒の少なくとも一方がより好ましく用いられ、分子中にメチル基を有しないラクトン系溶媒がさらに好ましく用いられる。これにより、アルカリ可溶性樹脂(A)の分散性を特に向上できるとともに、非プロトン性極性溶媒(E2)が奏する上述した効果を主溶剤(E1)が特に阻害しにくくなる。
【0136】
溶媒(E)の全体における非プロトン性極性溶媒(E2)の含有量の下限は、1質量%以上であるのが好ましく、3質量%以上であるのがより好ましく、5質量%以上であるのがさらに好ましい。これにより、永久膜形成用感光性樹脂組成物の極性を損なうことなく、耐湿性を高めることができる。その結果、アルカリ可溶性樹脂(A)の分散性を確保しつつ、リワーク性を高めることができる。溶媒(E)の全体における非プロトン性極性溶媒(E2)の含有量の上限は、30質量%以下であるのが好ましく、15質量%以下であるのがより好ましく、10質量%以下であるのがさらに好ましい。これにより、アルカリ可溶性樹脂(A)の分散性が低下するのを抑制できる。
【0137】
溶媒(E)の全体における主溶剤(E1)の含有量は、70質量%以上であるのが好ましく、80質量%以上であるのがより好ましい。
【0138】
永久膜形成用感光性樹脂組成物における溶媒(E)の含有量は、永久膜形成用感光性樹脂組成物に求められる粘度等の特性に応じて適宜調整される。永久膜形成用感光性樹脂組成物をスリットコートにより塗布する場合、永久膜形成用感光性樹脂組成物における溶媒(E)の含有量は、好ましくは0.0001質量%(1ppm)以上1質量%(10000ppm)以下とされる。
【0139】
1.9.その他の成分
永久膜形成用感光性樹脂組成物は、上記の各構成成分の他、フィラー、増感剤等の添加剤を含んでもよい。
【0140】
フィラーとしては、永久膜形成用感光性樹脂組成物によって形成される樹脂膜に求められる機械的特性、熱的特性に応じて適宜選択される。
【0141】
フィラーとしては、具体的には、無機フィラーまたは有機フィラー等が挙げられる。
上記無機フィラーとしては、具体的には、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶性シリカ、2次凝集シリカ、微粉シリカ等のシリカ;アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化チタン、炭化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、チタンホワイト等の金属化合物;タルク;クレー;マイカ;ガラス繊維等が挙げられる。無機フィラーには、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0142】
上記有機フィラーとしては、具体的には、オルガノシリコーンパウダー、ポリエチレンパウダー等が挙げられる。有機フィラーには、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0143】
1.10.永久膜形成用感光性樹脂組成物の調製方法
永久膜形成用感光性樹脂組成物を調製する方法は限定されず、構成成分に応じて、公知の方法が用いられる。
【0144】
例えば、上記各構成成分を、溶媒に混合して溶解することにより調製することができる。これにより、ワニス状の永久膜形成用感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0145】
また、永久膜形成用感光性樹脂組成物の吸湿をできるだけ抑制する観点から、永久膜形成用感光性樹脂組成物の調製は、全て窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0146】
2.永久膜
次に、実施形態に係る永久膜について説明する。
実施形態に係る永久膜形成用感光性樹脂組成物を乾燥または硬化させることにより硬化物が得られる。実施形態に係る永久膜は、この硬化物で構成されている。このような永久膜は、半導体装置に用いられる。半導体装置が有する永久膜としては、例えば、バッファーコート膜等の保護膜、再配線用絶縁膜等の層間膜、ダム材等が挙げられる。中でも、上記永久膜は、バッファーコート膜として好適に使用することができる。
【0147】
上述した永久膜は、例えば、永久膜形成用感光性樹脂組成物に対してプリベーク、露光および現像を行い、所望の形状にパターニングした後、ポストベークすることによって硬化させることにより得られた硬化物で構成される。
【0148】
また、永久膜形成用感光性樹脂組成物を塗工する場合、スリットコートによって行われることが好ましい。これにより、基板上により均一な塗布膜を形成することができる。
【0149】
永久膜の厚みは、特に限定されないが、例えば2~30μm程度、好ましくは5~20μm程度である。
【0150】
永久膜形成用感光性樹脂組成物の塗工後、溶媒を除去する方法については、加熱等の各種の方法を適用することができるが、パネルレベルパッケージに用いる場合には、比較的大面積であることに鑑みると、減圧乾燥を適用することが好ましい。つまり、感光性樹脂組成物を塗工したパネルを、減圧環境下(例えば30Pa以下の環境下)で乾燥させることが好ましい。なお、減圧乾燥を行うと、塗工時に発生しうるマイクロバブルを低減しうるメリットもある。
【0151】
プリベークを行う場合、その条件は、例えば、70~160℃で5秒~30分程度である。
【0152】
露光については、様々な波長の電磁波や粒子線等を用いることができる。例えばg線、i線のような紫外線、可視光線、レーザー、X線、電子線等が用いられる。好ましくはg線またはi線のような紫外線である。露光量は、感光性接着剤組成物の感度等に応じて適宜設定されるが、一例として30~3000mJ/cm2程度である。
【0153】
現像については、種々の現像液を適用することができる。例えば、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の水酸化物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドのようなアルカリ現像液、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ブチル等の有機系現像液等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ現像液が好ましく、特に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液が好ましい。現像液の供給方法としては、スプレー、パドル、浸漬等の方式が挙げられる。大面積のパネルの処理という点ではスプレー方式が好ましい。
【0154】
ポストベークの条件(硬化条件)は特に限定されないが、例えば80~300℃で30~300分である。
【0155】
3.半導体装置
次に、実施形態に係る半導体装置について説明する。
図1は、実施形態に係る永久膜を備える半導体装置(実施形態に係る半導体装置)を示す断面図である。
【0156】
図1に示す半導体装置100は、上記永久膜を備える。具体的には、半導体装置100のうち、絶縁層42および絶縁層44のうちの1つ以上に上記永久膜が用いられる。
【0157】
半導体装置100は、例えば半導体チップである。この場合、半導体装置100を、バンプ52を介して配線基板上に搭載することにより半導体パッケージが得られる。
図1に示す半導体装置100は、トランジスター等の半導体素子が設けられた図示しない半導体基板と、半導体基板上に設けられた層間絶縁膜30および最上層配線34を含む多層配線層と、パッシベーション膜32と、再配線層40と、UBM層50と、バンプ52と、を備える。
【0158】
層間絶縁膜30および最上層配線34は、多層配線層の最上部に設けられている。
最上層配線34は、例えばアルミニウムにより構成される。また、層間絶縁膜30上および最上層配線34上には、パッシベーション膜32が設けられている。パッシベーション膜32の一部には、最上層配線34が露出する開口が設けられている。
【0159】
パッシベーション膜32上には、再配線層40が設けられている。再配線層40は、パッシベーション膜32上に設けられた絶縁層42と、絶縁層42上に設けられた再配線46と、絶縁層42上および再配線46上に設けられた絶縁層44と、を有する。絶縁層42には、最上層配線34に接続する開口が形成されている。再配線46は、絶縁層42上および絶縁層42に設けられた開口内に形成され、最上層配線34に接続されている。絶縁層44には、再配線46に接続する開口が設けられている。
【0160】
絶縁層44に設けられた開口内には、UBM層50(Under Bump Metallurgy)を介してバンプ52が形成される。半導体装置100は、バンプ52を介して配線基板等に接続される。
【0161】
絶縁層42および絶縁層44のうちの1つ以上に上記永久膜を適用する場合、例えば、永久膜形成用感光性樹脂組成物により形成される塗布膜に対し、紫外線を露光し、現像を行うことによりパターニングした後、これを加熱硬化することによって、絶縁層42または絶縁層44を形成する。つまり、永久膜形成用感光性樹脂組成物を塗布して塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、形成された塗布膜を露光する露光工程と、露光された塗布膜を現像する現像工程と、現像後に残存した塗布膜を加熱して硬化させ、永久膜を形成する加熱工程と、により、永久膜が形成され、絶縁層42または絶縁層44として用いられる。
【0162】
なお、塗布膜(半永久膜)の形成後、リワークを行う場合には、塗布膜(半永久膜)を溶剤に接触させて除去する。前記実施形態に係る永久膜形成用感光性樹脂組成物は、リワーク性に優れるため、実施形態に係る永久膜は、リワーク不良の発生が抑えられ、半導体装置100の生産性の向上に寄与できる。
【0163】
4.前記実施形態が奏する効果
以上のように、前記実施形態に係る永久膜形成用感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(A)と、感光剤(B)と、界面活性剤(C)と、密着助剤(D)と、溶媒(E)と、を含み、前記界面活性剤(C)は、式(1)で表される有機変性ジメチルシロキサンを含み、前記溶媒(E)は、主溶剤、および、分子中に2個または3個のメチル基を有する非プロトン性極性溶媒を含む。
【0164】
【化24】
(式(1)中、Xは、ポリエーテル基、ポリエステル基またはアラルキル基を表し、m、nは、それぞれ1以上100以下の整数を表す。)
【0165】
このような構成によれば、保存安定性およびリワーク性に優れる永久膜形成用感光性樹脂組成物が得られる。
【0166】
また、溶媒(E)における、分子中に2個または3個のメチル基を有する非プロトン性極性溶媒の含有率は、1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0167】
このような構成によれば、アルカリ可溶性樹脂(A)の分散性を確保しつつ、リワーク性を高めることができる。
【0168】
また、主溶剤は、ラクトン系溶媒であることが好ましい。
このような構成によれば、アルカリ可溶性樹脂(A)の分散性を特に向上できるとともに、非プロトン性極性溶媒(E2)が奏する効果を主溶剤(E1)が特に阻害しにくくなる。
【0169】
また、密着助剤(D)は、シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物および3-アミノプロピルトリエトキシシランの縮合物を含むことが好ましい。
【0170】
このような構成によれば、永久膜形成用感光性樹脂組成物と、Cu、Alといった金属部材との親和性を向上できる。
【0171】
また、式(1)中のXは、式(2-1)で表されることが好ましい。
【0172】
【化25】
(式(2-1)中、R
20は炭素数1以上6以下のアルキル基を表し、R
21は、水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルキルエーテル基、または炭素数1以上6以下の不飽和アルキルエーテル基を表し、EOはエチレンオキシド基を表し、POはプロピレンオキシド基を表す。oは1以上の整数を表し、pは0以上の整数を表す。EOとPOの順序については、ランダムであってもよい。)
【0173】
このような構成によれば、永久膜形成用感光性樹脂組成物の保存安定性を特に高めるとともに、リワーク残渣となり得る反応物や析出物の発生を特に抑制することができる。
【0174】
また、エチレンオキシド基とプロピレンオキシド基との合計モル量に対する前記プロピレンオキシド基のモル比は、1%以上99%以下であることが好ましい。
【0175】
このような構成によれば、永久膜形成用感光性樹脂組成物と金属との濡れ性を向上させることができる。
【0176】
また、アルカリ可溶性樹脂(A)は、ポリアミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂およびポリイミド樹脂からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0177】
このような構成によれば、永久膜形成用感光性樹脂組成物におけるアルカリ可溶性樹脂(A)の分散性を向上できる。また、永久膜形成用感光性樹脂組成物の硬化物で構成される永久膜の機械的強度といった物性を向上させることで、膜厚の均一性を向上させ、欠損が生じることを抑制できる。
【0178】
実施形態に係る永久膜は、実施形態に係る永久膜形成用感光性樹脂組成物の硬化物で構成される。
このような構成によれば、保存に伴う不良やリワーク不良の発生が少なく、生産性に優れる永久膜が得られる。
【0179】
実施形態に係る半導体装置は、実施形態に係る永久膜を含む。
このような構成によれば、保存に伴う不良やリワーク不良の発生が少なく、生産性に優れる半導体装置が得られる。
【0180】
以上、本発明に係る永久膜形成用感光性樹脂組成物、永久膜および半導体装置を前記実施形態に基づいて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明に係る永久膜形成用感光性樹脂組成物、永久膜および半導体装置は、前記実施形態の各部が同様の機能を有する任意の構成のものに置換されたものであってもよく、前記実施形態に任意の構成物が付加されたものであってもよい。
【実施例0181】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
5.永久膜形成用感光性樹脂組成物の調製
表1または表2に示す各構成成分を用いて、各実施例および各比較例のワニス状の永久膜形成用感光性樹脂組成物を調製した。表1および表2に記載の各構成成分の詳細は、以下の通りである。
【0182】
・アルカリ可溶性樹脂a1:式(A-1)で表される構造を有するポリベンゾオキサゾール前駆体(300~400℃で加熱すると脱水閉環し、ポリベンゾオキサゾールとなる樹脂)
【0183】
【0184】
・アルカリ可溶性樹脂a1の製造方法
ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸258.2g(1モル)と、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール270.3g(2モル)とを、N-メチルピロリドン(1500g)に溶解した後、N-メチルピロリドン(412g)に溶解したジシクロヘキシルカルボジイミド412.7g(2モル)を内温0~5℃に保ちながら2時間かけて滴下した。滴下終了後、内温を室温に戻し、さらに12時間撹拌して反応させた。
【0185】
反応終了後、析出したジシクロヘキシルカルボジウレアを濾過によって取り除き、得られた濾液に純水4000gを滴下し、結晶を析出させた。
【0186】
この結晶を濾過によって採取し、イソプロピルアルコール8000mlを用いて洗浄した後、真空乾燥し、ジカルボン酸誘導体467gを得た。
【0187】
得られたジカルボン酸誘導体40.87g(0.083モル)と、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン36.63g(0.1モル)とを、温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れ、N-メチルピロリドン(180.8g)を加えて溶解させた。その後窒素を流しながら、オイルバスを用いて75℃まで昇温し、75℃にて12時間反応させた。
【0188】
次に、N-メチルピロリドン(13.0g)に溶解させた3,6-エンドメチレン-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物5.58g(0.034モル)を加え、さらに3時間撹拌した後、室温まで冷却し反応を終了した。
【0189】
次に、反応混合物を濾過した後、反応混合物を水/イソプロピルアルコール=3/1の溶液に投入、沈殿物を濾集し、水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、式(A-1)の繰り返し単位を持つアミド結合を有する前駆体(300~400℃で加熱すると脱水閉環し、ポリベンゾオキサゾールとなるアルカリ可溶性樹脂a1)を得た。
【0190】
・感光剤b1:式(Q-1)で表される構造を有する化合物
【0191】
【0192】
・感光剤b1の製造方法
温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、式(P-1)で表される化合物11.04g(0.026mol)と、1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホニルクロライド18.81g(0.070mol)と、アセトン170gとを入れて撹拌し、溶解させた。
【0193】
次いで、反応溶液の温度が35℃以上にならないようにウォーターバスでフラスコを冷やしながら、トリエチルアミン7.78g(0.077mol)とアセトン5.5gの混合溶液をゆっくり滴下した。そのまま室温で3時間反応させた後、酢酸1.05g(0.017mol)を添加し、さらに30分反応させた。次いで、反応混合物を濾過した後、濾液を水/酢酸(990mL/10mL)の混合溶液に投入した。次いで、沈殿物を濾集して水で充分洗浄した後、真空下で乾燥した。これにより、式(Q-1)の構造で表される感光剤b1を得た。
【0194】
・界面活性剤c1-1:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン株式会社製、BYK-349)
・界面活性剤c1-2:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(ポリエーテル基を有する液状シリコーン化合物、ビックケミー・ジャパン株式会社製、BYK-333)
・界面活性剤c1-3:ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン株式会社製、BYK-313)
・界面活性剤c1-4:アラルキル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン株式会社製、BYK-323)
・界面活性剤c1-5:フッ素系界面活性剤(スリーエムジャパン株式会社製、FC4430)
【0195】
・密着助剤d1-1:式(3)で表される構造を有するアミノシラン化合物
【0196】
【0197】
・密着助剤d1-1の製造方法
撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物(45.6g、300mmol)をN-メチル-2-ピロリドン(970g)に溶解させ、恒温槽にて30℃に調整した。次いで、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(62g、280mmol)を滴下ロートに仕込み、60分かけて溶解液へ滴下した。滴下完了後、30℃、18時間の条件下で撹拌し、式(3)で表される構造を有するアミノシラン化合物を得た。
【0198】
・密着助剤d1-2:信越化学工業株式会社製、X-12-5263HP
【0199】
・熱架橋剤1:PXG(パラキシレングリコール)
・熱架橋剤2:フロログルシド
【0200】
・溶解調整剤1:シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、CHMS-112)
・酸化防止剤1:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン株式会社製、IRGANOX(登録商標)1035)
【0201】
・安定剤1:シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製、KBM-503P)
・安定剤2:ODPA(オキシジフタル酸二無水物)
【0202】
・溶媒e2-1:GBL(γ-ブチロラクトン)
・溶媒e2-2:NMP(N-メチル-2-ピロリドン)
・溶媒e2-3:DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)
・溶媒e2-4:DMSO(ジメチルスルホキシド)
・溶媒e2-5:DMA(N,N-ジメチルアセトアミド)
・溶媒e2-6:TMU(テトラメチル尿素)
【0203】
6.永久膜形成用感光性樹脂組成物の評価
調製した永久膜形成用感光性樹脂組成物について、以下の項目の評価を行った。
【0204】
6.1.粘度変化
各実施例および各比較例の永久膜形成用感光性樹脂組成物について、1週間での粘度変化率を以下の方法で測定、評価した。
【0205】
まず、永久膜形成用感光性樹脂組成物の初期粘度を、E型粘度計(TVE-25L)にて測定した。この時の粘度をaとした。その後、永久膜形成用感光性樹脂組成物を、窒素加圧雰囲気下(2気圧)で23℃にて7日間保管を行い、再度粘度を測定した。この時の粘度をbとした。粘度aおよび粘度bを下記式に代入して、粘度変化率を算出した。算出した粘度変化率を以下の評価基準に照らして評価した。評価結果を表1および表2に示す。なお、安定した膜厚の塗布膜を得るため、粘度変化率は低い方が好ましい。
粘度変化率[%]={(粘度a-粘度b)/粘度a}×100
【0206】
A:粘度変化率が5%以下である
B:粘度変化率が5%超10%以下である
C:粘度変化率が10%超である
【0207】
6.2.耐湿性
各実施例および各比較例の永久膜形成用感光性樹脂組成物について、以下の方法で耐湿性を評価した。
【0208】
まず、永久膜形成用感光性樹脂組成物を、気温23℃、相対湿度90%の恒温恒湿器に入れ、24時間保管した。保管後の永久膜形成用感光性樹脂組成物について、Si基板上にコーター・デベロッパー(東京エレクトロン社製、ACT-12)により塗工を行った。次に、ホットプレートを用いて、温度110℃で4分間プリベークした。これにより、膜厚10.9μmのプリベークした樹脂乾燥膜を得た。
【0209】
次に、得られた樹脂乾燥膜について、電子顕微鏡で観察し、所定面積の樹脂乾燥膜に発生した異物(パーティクル)の数を計数した。そして、計数結果を以下の評価基準に照らして評価した。評価結果を表1および表2に示す。
【0210】
A:パーティクルの発生数が20個以下である
B:パーティクルの発生数が20個超100個以下である
C:パーティクルの発生数が100個超である
【0211】
6.3.リワーク性
各実施例および各比較例の永久膜形成用感光性樹脂組成物について、以下の方法でリワーク性を評価した。
【0212】
まず、永久膜形成用感光性樹脂組成物を、Si基板上にコーター・デベロッパー(東京エレクトロン社製、ACT-12)により塗工を行った。次に、ホットプレートを用いて、温度110℃で4分間プリベークした。これにより、膜厚10.9μmのプリベークした樹脂乾燥膜を得た。プリベークした樹脂膜にパターンマスキングを施し、ブロードバンドマスクアライナーを用いてブロードバンド露光を行った。露光後、現像液として2.38質量%テトラメチルアンモニウム水溶液を用いて現像処理を行い、パターンマスキングを取り除いた。これにより、パターニングされた樹脂膜(半永久膜)を得た。
【0213】
次に、得られた樹脂膜を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に23℃で10分間浸漬処理し、風乾させた。その後、浸漬風乾処理した樹脂膜を、電子顕微鏡で観察し、所定面積の樹脂膜に発生した異物(パーティクル)の数を計数した。なお、異物のうち、大きさ(最大長)が0.6μm以上のもののみを計数した。そして、計数結果を以下の評価基準に照らして評価した。評価結果を表1および表2に示す。
【0214】
A:パーティクルの発生数が100個以下である
B:パーティクルの発生数が100個超10000個以下である
C:パーティクルの発生数が10000個超である
【0215】
【0216】
【0217】
表1および表2に示すように、各実施例の永久膜形成用感光性樹脂組成物は、保管時の粘度変化が少なく、耐湿性およびリワーク性の双方が良好であることが認められた。
【0218】
また、表1および表2に示す結果から、次のことが認められた。
・分子中に2個または3個のメチル基を有する非プロトン性極性溶媒を溶媒に含有させることで、永久膜形成用感光性樹脂組成物の保存安定性および耐湿性が向上した。
・有機変性ジメチルシロキサンを含む界面活性剤(C)を用いることで、フッ素系界面活性剤を用いた場合に比べて、リワーク性が高められた。
・フッ素系界面活性剤に安定剤を併用することで、リワーク性の改善がみられたが、逆に保存安定性が低下した。