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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135490
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】太陽電池および太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0224 20060101AFI20240927BHJP
   H01L 31/0747 20120101ALN20240927BHJP
【FI】
H01L31/04 260
H01L31/06 455
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046199
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】藤原 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 一輝
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA02
5F251AA03
5F251AA05
5F251BA11
5F251CB12
5F251CB14
5F251CB21
5F251CB27
5F251DA03
5F251DA07
5F251DA10
5F251FA04
5F251FA06
5F251FA13
5F251FA15
5F251FA17
5F251FA21
5F251HA03
(57)【要約】
【課題】半導体基板の内部応力を低減する太陽電池を提供する。
【解決手段】太陽電池1は、半導体基板11と、半導体基板11の主面に配置された導電型半導体層25,35と、導電型半導体層25,35に対応する金属電極層29,39とを備える太陽電池であって、金属電極層29,39は帯状の形状を有し、金属電極層29,39は、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する下地層29l,39lと、金属のめっき層29u,39uとの積層構造を有し、半導体基板11の主面側からみて、下地層29l,39lにおける金属粒子の大きさは0.9μm以上500μm以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、前記半導体基板の主面に配置された導電型半導体層と、前記導電型半導体層に対応する金属電極層とを備える太陽電池であって、
前記金属電極層は帯状の形状を有し、
前記金属電極層は、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する下地層と、金属のめっき層との積層構造を有し、
前記半導体基板の主面側からみて、前記下地層における前記金属粒子の大きさは0.9μm以上500μm以下である、
太陽電池。
【請求項2】
前記半導体基板の主面に沿う前記下地層の断面、および、前記半導体基板の主面に交差する前記下地層の断面において、前記金属粒子の粒界には隙間が存在し、
前記下地層における前記めっき層側の一部の前記金属粒子の粒界の隙間には、前記めっき層の一部が埋め込まれている、
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記半導体基板の主面に交差する断面において、前記下地層に隣接する層と前記下地層の前記金属粒子との境界には隙間が存在する、請求項1または2に記載の太陽電池。
【請求項4】
請求項1に記載の太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の主面に前記導電型半導体層を形成する工程と、
減圧溶射法を用いて、減圧環境下で、放電によって金属粒子を溶融させ、キャリアガスによって溶融された金属粒子を前記半導体基板に噴射し、前記半導体基板の前記導電型半導体層上に金属粒子を堆積させることにより、前記下地層を形成する工程と、
めっき法を用いて、前記下地層上に金属のめっき層を形成する工程と、
を含む、太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池および太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板を用いた太陽電池として、受光面側および裏面側の両面に電極が形成された両面電極型の太陽電池と、裏面側のみに電極が形成された裏面電極型の太陽電池とがある。特許文献1には両面電極型の太陽電池が開示されており、特許文献2には裏面電極型の太陽電池が開示されている。特許文献1および2に開示されているように、両面電極型であっても裏面電極型であっても、太陽電池は、半導体基板と、半導体基板の主面に配置された導電型半導体層と、導電型半導体層に対応する金属電極層とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-152620号公報
【特許文献2】特開2019-121627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、太陽電池では、半導体基板に金属電極層が形成されているため、半導体基板に反りが生じ、半導体基板の内部に応力が生じる。このような傾向は、裏面電極型の太陽電池において顕著である。半導体基板の内部応力が大きくなると、太陽電池の信頼性が低下する。
【0005】
本発明は、半導体基板の内部応力を低減(抑制、緩和)する太陽電池および太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る太陽電池は、半導体基板と、前記半導体基板の主面に配置された導電型半導体層と、前記導電型半導体層に対応する金属電極層とを備える太陽電池であって、前記金属電極層は帯状の形状を有し、前記金属電極層は、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する下地層と、金属のめっき層との積層構造を有し、前記半導体基板の主面側からみて、前記下地層における前記金属粒子の大きさは0.9μm以上500μm以下である。
【0007】
本発明に係る太陽電池の製造方法は、上記の太陽電池の製造方法であって、前記半導体基板の主面に前記導電型半導体層を形成する工程と、減圧溶射法を用いて、減圧環境下で、放電によって金属粒子を溶融させ、キャリアガスによって溶融された金属粒子を前記半導体基板に噴射し、前記半導体基板の前記導電型半導体層上に金属粒子を堆積させることにより、前記下地層を形成する工程と、めっき法を用いて、前記下地層上に金属のめっき層を形成する工程とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、太陽電池において、半導体基板の内部応力を低減(抑制、緩和)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る太陽電池(裏面電極型)を裏面側からみた図である。
図2図1の太陽電池(裏面電極型)におけるII-II線断面図である。
図3A】本実施形態に係る太陽電池(裏面電極型)の製造方法における半導体層形成工程を示す図である。
図3B】本実施形態に係る太陽電池(裏面電極型)の製造方法における透明電極層形成工程を示す図である。
図3C】本実施形態に係る太陽電池(裏面電極型)の製造方法における金属電極層の下地層形成工程を示す図である。
図3D】本実施形態に係る太陽電池(裏面電極型)の製造方法における金属電極層のめっき層形成工程を示す図である。
図4】本実施形態の変形例に係る太陽電池(両面電極型)の断面図である。
図5A図2の太陽電池における金属電極層の下地層の表面を撮像したSEM画像の一例である。
図5B図5AのVB部分を拡大したSEM画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0011】
(太陽電池)
図1は、本実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図であり、図2は、図1の太陽電池におけるII-II線断面図である。図1および図2に示す太陽電池1は、裏面電極型(バックコンタクト型、裏面接合型ともいう。)であってヘテロ接合型の太陽電池である。
【0012】
太陽電池1は、2つの主面を備える半導体基板11を備え、半導体基板11の主面において第1領域7と第2領域8とを有する。以下では、半導体基板11の主面のうちの受光する側の主面を受光面とし、半導体基板11の主面のうちの受光面の反対側の主面を裏面とする。
【0013】
第1領域7は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部7fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部7bとを有する。バスバー部7bは、半導体基板11の一方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部7fは、バスバー部7bから、第1方向に交差する第2方向(Y方向)に延在する。
【0014】
同様に、第2領域8は、いわゆる櫛型の形状であり、櫛歯に相当する複数のフィンガー部8fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部8bとを有する。バスバー部8bは、半導体基板11の一方の辺部に対向する他方の辺部に沿って第1方向に延在し、フィンガー部8fは、バスバー部8bから、第2方向に延在する。
【0015】
フィンガー部7fとフィンガー部8fとは、第2方向に延在する帯状をなしており、第1方向に交互に設けられている。なお、第1領域7および第2領域8は、ストライプ状に形成されてもよい。
【0016】
図2に示すように、太陽電池1は、半導体基板11の受光面側に順に形成(堆積、積層、製膜)されたパッシベーション層13および光学調整層15を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の裏面側の一部(主に、第1領域7)に順に形成(堆積、積層、製膜)されたパッシベーション層23、第1導電型半導体層25および第1電極層27を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の裏面側の他の一部(主に、第2領域8)に順に形成(堆積、積層、製膜)されたパッシベーション層33、第2導電型半導体層35および第2電極層37を備える。
【0017】
半導体基板11は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成される。半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板である。なお、半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にp型ドーパントがドープされたp型の半導体基板であってもよい。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられる。半導体基板11は、受光面側からの入射光を吸収して光キャリア(電子および正孔)を生成する光電変換基板として機能する。
【0018】
半導体基板11の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であっても比較的高出力(照度によらず安定した出力)が得られる。
【0019】
半導体基板11は、受光面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有していてもよい。これにより、受光面において入射光の反射が低減し、半導体基板11における光閉じ込め効果が向上する。
【0020】
また、半導体基板11は、裏面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有していてもよい。これにより、半導体基板11に吸収されず通過してしまった光の回収効率が高まる。
【0021】
パッシベーション層13は、半導体基板11の受光面側に形成されている。パッシベーション層23は、半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。パッシベーション層33は、半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。パッシベーション層13,23,33は、例えば真性(i型)アモルファスシリコン材料で形成される。パッシベーション層13,23,33は、半導体基板11で生成されたキャリアの再結合を抑制し、キャリアの回収効率を高める。
【0022】
光学調整層15は、半導体基板11の受光面側のパッシベーション層13上に形成されている。光学調整層15は、入射光の反射を防止または抑制する反射防止層として機能し、半導体基板11への光の入射効率を向上する。また、光学調整層15は、半導体基板11の受光面側およびパッシベーション層13を保護する保護層として機能する。光学調整層15は、例えば酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、または酸窒化珪素(SiON)のようなそれらの複合物等の絶縁体材料で形成される。
【0023】
第1導電型半導体層25は、パッシベーション層23上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料にp型ドーパント(例えば、上述したホウ素(B))がドープされたp型の半導体層である。
【0024】
第2導電型半導体層35は、パッシベーション層33上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料にn型ドーパント(例えば、上述したリン(P))がドープされたn型半導体層である。
【0025】
なお、第1導電型半導体層25がn型の半導体層であり、第2導電型半導体層35がp型の半導体層であってもよい。
【0026】
第1導電型半導体層25およびパッシベーション層23と、第2導電型半導体層35およびパッシベーション層33とは、第2方向(Y方向)に延在する帯状をなしており、第1方向(X方向)に交互に並んでいる。第2導電型半導体層35およびパッシベーション層33の一部は、隣接する第1導電型半導体層25およびパッシベーション層23の一部の上に重なっていてもよい。
【0027】
第1電極層27は、第1導電型半導体層25に対応して、具体的には半導体基板11の裏面側の第1領域7における第1導電型半導体層25上に形成されている。第1電極層27は、第1導電型半導体層25上に順に形成された第1透明電極層28と第1金属電極層29とを有していてもよいし(図2)、第1導電型半導体層25上に形成された第1金属電極層29のみを有していてもよい(図示省略)。
【0028】
第2電極層37は、第2導電型半導体層35に対応して、具体的には半導体基板11の裏面側の第2領域8における第2導電型半導体層35上に形成されている。第2電極層37は、第2導電型半導体層35上に順に形成された第2透明電極層38と第2金属電極層39とを有していてもよいし(図2)、第2導電型半導体層35上に形成された第2金属電極層39のみを有していてもよい(図示省略)。
【0029】
第1電極層27および第2電極層37は、第2方向(Y方向)に延在する帯状をなしており、第1方向(X方向)に交互に並んでいる。第1電極層27と第2電極層37とは互いに分離されている。すなわち、第1透明電極層28および第2透明電極層38は、第2方向に延在する帯状をなしており、第1方向に交互に並んでいる。第1透明電極層28と第2透明電極層38とは互いに分離されている。また、第1金属電極層29および第2金属電極層39は、第2方向に延在する帯状をなしており、第1方向に交互に並んでいる。第1金属電極層29と第2金属電極層39とは互いに分離されている。
【0030】
第1透明電極層28および第2透明電極層38は、透明な導電性材料で形成される。透明導電性材料としては、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムおよび酸化スズの複合酸化物)等が挙げられる。
【0031】
第1金属電極層29は、第1下地層29lと第1めっき層29uとを有し、第2金属電極層39は、第2下地層39lと第2めっき層39uとを有する。
【0032】
第1下地層29lおよび第2下地層39lは、後述するように、例えば銀、銅、アルミニウム等の粒子状の金属材料を用いた減圧溶射法によって形成される。図5Aは、第1下地層29lおよび第2下地層39lの表面を撮像したSEM(Scanning Electron Microscope)画像の一例であり、図5Bは、図5AのVB部分を拡大したSEM画像の一例である。図5Aおよび図5Bの例では、粒子径8μmの銅粉末を用いて減圧溶射した。
【0033】
図5Aおよび図5Bの例に示すように、第1下地層29lおよび第2下地層39lは、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する。裏面側からみて、第1下地層29lにおける金属粒子の大きさ(粒子径)は、0.9μm以上500μm以下であり、好ましくは0.9μm以上13μm以下であり、裏面側からみて、第2下地層39lにおける金属粒子の大きさ(粒子径)は、0.9μm以上500μm以下であり、好ましくは0.9μm以上13μm以下である。
【0034】
また、裏面に沿う第1下地層29lの断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、裏面に交差する第1下地層29lの断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、裏面に交差する断面において、第1下地層29lに隣接する層、すなわち第1透明電極層28、と第1下地層29lの金属粒子との境界には隙間が存在する(図2)。なお、第1電極層27が第1透明電極層28を有さない場合、裏面に交差する断面において、第1下地層29lに隣接する層、すなわち第1導電型半導体層25、と第1下地層29lの金属粒子との境界には隙間が存在する(図示省略)。
【0035】
また、裏面に沿う第2下地層39lの断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、裏面に交差する第2下地層39lの断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、裏面に交差する断面において、第2下地層39lに隣接する層、すなわち第2透明電極層38、と第2下地層39lの金属粒子との境界には隙間が存在する(図2)。なお、第2電極層37が第2透明電極層38を有さない場合、受光面に交差する断面において、第2下地層39lに隣接する層、すなわち第2導電型半導体層35、と第2下地層39lの金属粒子との境界には隙間が存在する(図示省略)。
【0036】
第1めっき層29uおよび第2めっき層39uは、後述するように、例えば銀、銅、アルミニウム等の金属材料を用いためっき法(電解めっき法または無電解めっき法)によって形成される。これにより、第1下地層29lにおける第1めっき層29u側の一部の金属粒子の粒界の隙間には、第1めっき層29uの一部が埋め込まれており、第2下地層39lにおける第2めっき層39u側の一部の金属粒子の粒界の隙間には、第2めっき層39uの一部が埋め込まれている。
【0037】
(太陽電池の製造方法)
次に、図3A図3Dを参照して、本実施形態に係る太陽電池の製造方法について説明する。図3Aは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における半導体層形成工程を示す図であり、図3Bは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における透明電極層形成工程を示す図である。図3Cは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における金属電極層の下地層形成工程を示す図であり、図3Dは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における金属電極層のめっき層形成工程を示す図である。
【0038】
まず、図3Aに示すように、半導体基板11の裏面側の一部に、具体的には第1領域7に、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25を形成する(半導体層形成工程)。以下に、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25の形成方法の一例を示すが、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25の形成方法はこれに限定されない。
【0039】
例えば、CVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全てにパッシベーション膜および第1導電型半導体膜を製膜した後、フォトリソグラフィ技術を用いて生成するマスクまたはメタルマスクを利用したエッチング法を用いて、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25をパターニングしてもよい。なお、p型半導体膜に対するエッチング溶液としては、例えばオゾンを含有するフッ酸や、硝酸とフッ酸の混合液のような酸性溶液が挙げられ、n型半導体膜に対するエッチング溶液としては、例えば水酸化カリウム水溶液のようなアルカリ性溶液が挙げられる。
【0040】
または、CVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側にパッシベーション層および第1導電型半導体層を積層する際に、マスクを用いて、パッシベーション層23およびp型半導体層25の製膜およびパターニングを同時に行ってもよい。
【0041】
次に、半導体基板11の裏面側の他の一部に、具体的には第2領域8に、パッシベーション層33および第2導電型半導体層35を形成する(半導体層形成工程)。以下に、パッシベーション層33および第2導電型半導体層35の形成方法の一例を示すが、パッシベーション層33および第2導電型半導体層35の形成方法はこれに限定されない。
【0042】
例えば、上述同様に、CVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全てにパッシベーション膜および第2導電型半導体膜を製膜した後、フォトリソグラフィ技術を用いて生成するマスクまたはメタルマスクを利用したエッチング法を用いて、パッシベーション層33および第2導電型半導体層35をパターニングしてもよい。
【0043】
または、CVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側にパッシベーション層および第2導電型半導体層を積層する際に、マスクを用いて、パッシベーション層33および第2導電型半導体層35の製膜およびパターニングを同時に行ってもよい。
【0044】
なお、この半導体層形成工程において、半導体基板11の受光面側の全面に、パッシベーション層13を形成してもよい。
【0045】
次に、図3Bに示すように、第1導電型半導体層25上に、具体的には第1領域7に、第1透明電極層28を形成し、第2導電型半導体層35上に、具体的には第2領域8に、第2透明電極層38を形成する(透明電極層形成工程)。以下に、第1透明電極層28および第2透明電極層38の形成方法の一例を示すが、第1透明電極層28および第2透明電極層38の形成方法はこれに限定されない。
【0046】
例えば、CVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全てに、すなわち第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35上にこれらに跨って、透明導電膜を製膜した後、フォトリソグラフィ技術を用いて生成するマスクまたはメタルマスクを利用したエッチング法を用いて、透明導電膜をパターニングすることにより、互いに分離された第1透明電極層28および第2透明電極層38を形成してもよい。エッチング法としては例えばウェットエッチング法が挙げられ、エッチング溶液としては塩酸(HCl)等の酸性溶液が挙げられる。
【0047】
または、CVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側に第1透明電極層および第2透明電極層を積層する際に、マスクを用いて、第1透明電極層28および第2透明電極層38の製膜およびパターニングを同時に行ってもよい。
【0048】
なお、このとき、半導体基板11の受光面側の全面に、光学調整層15を形成してもよい。
【0049】
次に、図3Cに示すように、第1透明電極層28上に、具体的には第1領域7に、第1金属電極層29の第1下地層29lを形成し、第2透明電極層38上に、具体的には第2領域8に、第2金属電極層39の第2下地層39lを形成する(金属電極層の下地層形成工程)。
【0050】
例えば、粒子状の金属材料を用いた減圧溶射法を用いて、第1下地層29lおよび第2下地層39lを形成する。減圧溶射法とは、減圧環境下で、
・プラズマ放電等の放電によって、粒子状の金属材料を溶融させ、
・キャリアガスによって、溶融粒子を対象物表面に噴射し、
・溶融粒子を対象物表面に堆積する、
製膜方法である。対象物表面に堆積した溶融粒子は、瞬時に冷却され、金属膜を形成する。
【0051】
これにより、上述したように、第1下地層29lおよび第2下地層39lは、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する。また、裏面に沿う第1下地層29lおよび第2下地層39lの断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、裏面に交差する第1下地層29lおよび第2下地層39lの断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。
【0052】
また、裏面に交差する断面において、第1下地層29lに隣接する層(第1透明電極層28、或いは第1導電型半導体層25)と第1下地層29lの金属粒子との境界には隙間が存在する。また、裏面に交差する断面において、第2下地層39lに隣接する層(第2透明電極層38、或いは第2導電型半導体層35)と第2下地層39lの金属粒子との境界には隙間が存在する。
【0053】
次に、図3Dに示すように、めっき法を用いて、第1下地層29l上に、具体的には第1領域7に、第1金属電極層29の第1めっき層29uを形成し、第2下地層39l上に、具体的には第2領域8に、第2金属電極層39の第2めっき層39uを形成する(金属電極層のめっき層形成工程)。
【0054】
以上の工程により、本実施形態の裏面電極型の太陽電池1が得られる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、粒子状の金属材料を用いた減圧溶射法を用いて、第1金属電極層29の第1下地層29lおよび第2金属電極層39の第2下地層39lを形成する。これにより、本実施形態の太陽電池1によれば、第1金属電極層29の第1下地層29lおよび第2金属電極層39の第2下地層39lは、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する。
【0056】
また、裏面に沿う第1下地層29lおよび第2下地層39lの断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、裏面に交差する第1下地層29lおよび第2下地層39lの断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。
【0057】
また、裏面に交差する断面において、第1下地層29lに隣接する層(第1透明電極層28、或いは第1導電型半導体層25)と第1下地層29lの金属粒子との境界には隙間が存在する。また、裏面に交差する断面において、第2下地層39lに隣接する層(第2透明電極層38、或いは第2導電型半導体層35)と第2下地層39lの金属粒子との境界には隙間が存在する。
【0058】
これにより、第1下地層29lおよび第2下地層39lは、ヤング率が低く、柔軟性が高い。そのため、本実施形態の太陽電池1によれば、半導体基板11の反りを低減することができ、半導体基板11の内部応力を低減(抑制、緩和)することができる。
【0059】
ここで、太陽電池の金属電極層の形成方法として、スクリーン印刷法を用いて、導電性ペースト(Ag、Cu、Al、等)をパターン印刷して焼成することにより、金属電極層を形成する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。これによれば、パターン印刷により比較的に材料費を低減することができる反面、抵抗が比較的に高い。
【0060】
また、太陽電池の金属電極層の形成方法として、スパッタリング法により下地層(シード層)を形成した後、フォトリソグラフィ法により下地層をパターン化し、電解めっき法により下地層上にめっき層を形成することにより、金属電極層を形成する方法が知られている(例えば特許文献2参照)。これによれば、抵抗が比較的に低い反面、フォトリソグラフィ法により下地層をパターン化する際に下地層の一部を除去するため、比較的に材料費が高い。
【0061】
これらの点に関し、本実施形態によれば、太陽電池の金属電極層の下地層の形成方法として減圧溶射法を用いることにより、比較的に抵抗を低くすることができ、かつ、比較的に材料費を低減することができる。
【0062】
また、本実施形態の減圧溶射法を用いる金属電極層の下地層の形成方法によれば、めっき法を用いる金属電極層の形成方法と比較して、金属電極層の密着性、抵抗、接合強度は同等であり、更に半導体基板の反りを低減することができ、半導体基板の内部応力を低減(抑制、緩和)することができることを確認した。
【0063】
なお、金属電極層の密着性の評価では、JIS-K5400規格に準拠したクロスカット試験を行った。金属電極層の抵抗の評価では、JIS-C2139-3、JIS K6911に準拠した体積低効率・表面抵抗率測定を行った。金属電極層の接合強度の評価では、JIS-Z3198-8、JIS-K6855に準拠したツィーザーピール強度試験を行った。また、半導体基板の反り(半導体基板の内部応力)の評価では、JIS-H8626(品質、項目12、電着応力)に準拠したテストストリップ試験を行った。
【0064】
また、本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、めっき法を用いて、第1金属電極層29の第1めっき層29uおよび第2金属電極層39の第2めっき層39uを形成する。これにより、本実施形態の太陽電池1によれば、第1金属電極層29は第1めっき層29uを有し、第2金属電極層39は第2めっき層39uを有する。そのため、第1金属電極層29および第2金属電極層39の抵抗を低くすることができる。また、第1金属電極層29および第2金属電極層39の表面の平滑性(表面粗さ)を高めることができ、半田接合性を高めることができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、裏面電極型の太陽電池1について例示した(例えば図2)。しかし、本発明の特徴はこれに限定されず、両面電極型の太陽電池にも適用可能である。
【0066】
図4は、本実施形態の変形例に係る太陽電池の断面図である。図4に示す太陽電池1は、両面電極型であってヘテロ接合型の太陽電池である。図4に示す太陽電池1は、半導体基板11の受光面側に順に形成(堆積、積層、製膜)されたパッシベーション層23、第1導電型半導体層25および第1電極層27を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の裏面側に順に形成(堆積、積層、製膜)されたパッシベーション層33、第2導電型半導体層35および第2電極層37を備える。
【0067】
パッシベーション層23および第1導電型半導体層25は、半導体基板11の受光面側の全面に順に形成されている。パッシベーション層33および第2導電型半導体層35は、半導体基板11の裏面側の全面に形成されている。
【0068】
第1電極層27は、第1導電型半導体層25に対応して、具体的には第1導電型半導体層25上に形成されている。第1電極層27は、第1導電型半導体層25上に順に形成された第1透明電極層28と第1金属電極層29とを有していてもよいし(図4)、第1導電型半導体層25上に形成された第1金属電極層29のみを有していてもよい(図示省略)。
【0069】
第2電極層37は、第2導電型半導体層35に対応して、具体的には第2導電型半導体層35上に形成されている。第2電極層37は、第2導電型半導体層35上に順に形成された第2透明電極層38と第2金属電極層39とを有していてもよいし(図4)、第2導電型半導体層35上に形成された第2金属電極層39のみを有していてもよい(図示省略)。
【0070】
第1透明電極層28は、第1導電型半導体層25上の全面に形成されており、第2透明電極層38は、第2導電型半導体層35上の全面に形成されている。一方、第1金属電極層29および第2金属電極層39は、第2方向に延在する帯状をなしており、第1方向に交互に並んでいる。第1金属電極層29は、第1下地層29lと第1めっき層29uとを有し、第2金属電極層39は、第2下地層39lと第2めっき層39uとを有する。なお、裏面側の第2金属電極層39は、第2導電型半導体層35上の全面に形成されていてもよい。
【0071】
上述したように、第1下地層29lおよび第2下地層39lは、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する。
【0072】
また、受光面に沿う第1下地層29lの断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、受光面に交差する第1下地層29lの断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、受光面に交差する断面において、第1下地層29lに隣接する層、すなわち第1透明電極層28、と第1下地層29lの金属粒子との境界には隙間が存在する(図2)。なお、第1電極層27が第1透明電極層28を有さない場合、裏面に交差する断面において、第1下地層29lに隣接する層、すなわち第1導電型半導体層25、と第1下地層29lの金属粒子との境界には隙間が存在する(図示省略)。
【0073】
また、裏面に沿う第2下地層39lの断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、裏面に交差する第2下地層39lの断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、裏面に交差する断面において、第2下地層39lに隣接する層、すなわち第2透明電極層38、と第2下地層39lの金属粒子との境界には隙間が存在する(図2)。なお、第2電極層37が第2透明電極層38を有さない場合、受光面に交差する断面において、第2下地層39lに隣接する層、すなわち第2導電型半導体層35、と第2下地層39lの金属粒子との境界には隙間が存在する(図示省略)。
【符号の説明】
【0074】
1 太陽電池
7 第1領域
8 第2領域
7b,8b バスバー部
7f,8f フィンガー部
11 半導体基板
13,23,33 パッシベーション層
25 第1導電型半導体層
27 第1電極層
28 第1透明電極層
29 第1金属電極層
29l 第1下地層
29u 第1めっき層
35 第2導電型半導体層
37 第2電極層
38 第2透明電極層
39 第2金属電極層
39l 第2下地層
39u 第2めっき層
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B