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特開2024-135492フレキシブルプリント回路基板およびフレキシブルプリント回路基板の製造方法
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  • 特開-フレキシブルプリント回路基板およびフレキシブルプリント回路基板の製造方法 図1
  • 特開-フレキシブルプリント回路基板およびフレキシブルプリント回路基板の製造方法 図2A
  • 特開-フレキシブルプリント回路基板およびフレキシブルプリント回路基板の製造方法 図2B
  • 特開-フレキシブルプリント回路基板およびフレキシブルプリント回路基板の製造方法 図3A
  • 特開-フレキシブルプリント回路基板およびフレキシブルプリント回路基板の製造方法 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135492
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】フレキシブルプリント回路基板およびフレキシブルプリント回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 28/02 20060101AFI20240927BHJP
   C23C 4/123 20160101ALI20240927BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240927BHJP
   H05K 3/14 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C23C28/02
C23C4/123
B32B15/08 J
H05K3/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046201
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】藤原 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 一輝
【テーマコード(参考)】
4F100
4K031
4K044
5E343
【Fターム(参考)】
4F100AB12B
4F100AB13B
4F100AB16B
4F100AB16C
4F100AB17C
4F100AB20B
4F100AB21C
4F100AB24C
4F100AK42A
4F100AK49A
4F100AT00
4F100BA03
4F100DE01B
4F100DE04B
4F100EH562
4F100EH56B
4F100EH71C
4F100GB43
4F100JG05
4K031AA06
4K031AB02
4K031AB07
4K031CB35
4K031DA04
4K031EA10
4K031FA06
4K044AA16
4K044AB02
4K044BA06
4K044BB03
4K044BB11
4K044BB13
4K044BC05
4K044BC14
4K044CA11
4K044CA15
4K044CA18
4K044CA23
4K044CA24
4K044CA29
4K044CA44
4K044CA48
5E343AA02
5E343AA12
5E343AA18
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB44
5E343DD33
5E343DD43
5E343DD80
5E343GG02
(57)【要約】
【課題】フィルム基材と金属配線との密着性を損なうことなく、高周波信号に対する誘電体損失および抵抗を低減するフレキシブルプリント回路基板を提供する。
【解決手段】フレキシブルプリント回路基板1は、フィルム基材10上に金属配線20が配置されたフレキシブルプリント回路基板であって、金属配線20は、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する下地層21と、金属のめっき層22との積層構造を有し、フィルム基材10の主面側からみて、下地層21における金属粒子の大きさは0.9μm以上500μm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材上に金属配線が配置されたフレキシブルプリント回路基板であって、
前記金属配線は、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する下地層と、金属のめっき層との積層構造を有し、
前記フィルム基材の主面側からみて、前記下地層における前記金属粒子の大きさは0.9μm以上500μm以下である、
フレキシブルプリント回路基板。
【請求項2】
前記フィルム基材の主面に沿う前記下地層の断面、および、前記フィルム基材の主面に交差する前記下地層の断面において、前記金属粒子の粒界には隙間が存在し、
前記下地層における前記めっき層側の一部の前記金属粒子の粒界の隙間には、前記めっき層の一部が埋め込まれている、
請求項1に記載のフレキシブルプリント回路基板。
【請求項3】
前記フィルム基材の主面に交差する断面において、前記フィルム基材と前記下地層の前記金属粒子との境界には隙間が存在する、請求項1または2に記載のフレキシブルプリント回路基板。
【請求項4】
請求項1に記載のフレキシブルプリント回路基板の製造方法であって、
減圧溶射法を用いて、減圧環境下で、放電によって金属粒子を溶融させ、キャリアガスによって溶融された金属粒子を前記フィルム基材に噴射し、前記フィルム基材上に金属粒子を堆積させることにより、前記下地層を形成する工程と、
めっき法を用いて、前記下地層上に金属のめっき層を形成する工程と、
を含む、フレキシブルプリント回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント回路基板およびフレキシブルプリント回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド等のフィルム基材上に金属配線が配置されたフレキシブルプリント回路(Flexible printed circuits:FPC)基板が知られている(例えば特許文献1参照)。このようなフレキシブルプリント回路基板では、フィルム基材の表面を疎らにする表面疎化処理を行ったり、フィルム基材の表面に接着剤を塗布したりすることにより、フィルム基材と金属配線との密着性を高めることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-123640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなフレキシブルプリント回路基板では、高周波化が求められている。しかし、フィルム基材の表面を疎らにする表面疎化処理を行ったり、フィルム基材の表面に接着剤を塗布したりすると、高周波信号に対する誘電体損失が増大してしまう。また、フィルム基材の表面を疎らにする表面疎化処理を行うことにより、金属配線の表面も疎化されると、表皮効果に起因して、高周波信号に対する抵抗が増大してしまう。
【0005】
本発明は、フィルム基材と金属配線との密着性を損なうことなく、高周波信号に対する誘電体損失および抵抗を低減するフレキシブルプリント回路基板およびフレキシブルプリント回路基板の製造方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るフレキシブルプリント回路基板は、フィルム基材上に金属配線が配置されたフレキシブルプリント回路基板であって、前記金属配線は、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する下地層と、金属のめっき層との積層構造を有し、前記フィルム基材の主面側からみて、前記下地層における前記金属粒子の大きさは0.9μm以上500μm以下である。
【0007】
本発明に係るフレキシブルプリント回路基板の製造方法は、上記のフレキシブルプリント回路基板の製造方法であって、減圧溶射法を用いて、減圧環境下で、放電によって金属粒子を溶融させ、キャリアガスによって溶融された金属粒子を前記フィルム基材に噴射し、前記フィルム基材上に金属粒子を堆積させることにより、前記下地層を形成する工程と、めっき法を用いて、前記下地層上に金属のめっき層を形成する工程とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フレキシブルプリント回路基板において、フィルム基材と金属配線との密着性を損なうことなく、高周波信号に対する誘電体損失および抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るフレキシブルプリント回路基板の側面を示す概略図である。
図2A】本実施形態に係るフレキシブルプリント回路基板の製造方法における金属配線の下地層形成工程を示す図である。
図2B】本実施形態に係るフレキシブルプリント回路基板の製造方法における金属配線のめっき層形成工程を示す図である。
図3A図1のフレキシブルプリント回路基板における金属配線の下地層の表面を撮像したSEM画像の一例である。
図3B図3AのIIIB部分を拡大したSEM画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0011】
(フレキシブルプリント回路基板)
図1は、本実施形態に係るフレキシブルプリント回路基板の側面を示す概略図である。図1に示すように、フレキシブルプリント回路(Flexible printed circuits:FPC)基板1は、フィルム基材10と、フィルム基材10上に配置された金属配線20とを備える。
【0012】
フィルム基材10は、絶縁性を有する誘電体材料で構成されている。フィルム基材10の材料としては、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0013】
金属配線20は、フィルム基材10上に配置されており、任意のパターンにパターン化されている。金属配線20は、フィルム基材10上に順に配置された下地層21とめっき層22との積層構造を有する。
【0014】
下地層21は、後述するように、例えばNi、Cr、Ti、Mo等の粒子状の金属材料を用いた減圧溶射法によって形成される。図3Aは、金属配線20の下地層21の表面を撮像したSEM(Scanning Electron Microscope)画像の一例であり、図3Bは、図3AのIIIB部分を拡大したSEM画像の一例である。図3Aおよび図3Bの例では、粒子径8μmの銅粉末を用いて減圧溶射した。
【0015】
図3Aおよび図3Bの例に示すように、下地層21は、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する。フィルム基材10の主面側からみて、下地層21における金属粒子の大きさ(粒子径)は、0.9μm以上500μm以下であり、好ましくは0.9μm以上13μm以下である。
【0016】
また、フィルム基材10の主面に沿う下地層21の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、フィルム基材10の主面に交差する下地層21の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、フィルム基材10の主面に交差する下地層21の断面において、フィルム基材10と下地層21の金属粒子との境界には隙間が存在する。
【0017】
めっき層22は、後述するように、例えば銅、ニッケル、銀、錫等の金属材料を用いためっき法(電解めっき法または無電解めっき法)によって形成される。これにより、下地層21におけるめっき層22側の一部の金属粒子の粒界の隙間には、めっき層22の一部が埋め込まれている。
【0018】
(フレキシブルプリント回路基板の製造方法)
次に、図2Aおよび図2Bを参照して、本実施形態に係るフレキシブルプリント回路基板の製造方法について説明する。図2Aは、本実施形態に係るフレキシブルプリント回路基板の製造方法における金属配線の下地層形成工程を示す図であり、図2Bは、本実施形態に係るフレキシブルプリント回路基板の製造方法における金属配線のめっき層形成工程を示す図である。
【0019】
まず、図2Aに示すように、フィルム基材10の主面に、金属配線20の下地層21を形成する(金属配線の下地層形成工程)。例えば、粒子状の金属材料を用いた減圧溶射法を用いて、金属配線20の下地層21を形成する。減圧溶射法とは、減圧環境下で、
・プラズマ放電等の放電によって、粒子状の金属材料を溶融させ、
・キャリアガスによって、溶融粒子を対象物表面に噴射し、
・溶融粒子を対象物表面に堆積する、
製膜方法である。対象物表面に堆積した溶融粒子は、瞬時に冷却され、金属膜を形成する。
【0020】
これにより、上述したように、金属配線20の下地層21は、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する。また、フィルム基材10の主面に沿う金属配線20の下地層21の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、フィルム基材10の主面に交差する金属配線20の下地層21の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、フィルム基材10の主面に交差する断面において、フィルム基材10と金属配線20の下地層21の金属粒子との境界には隙間が存在する。
【0021】
次に、図2Bに示すように、めっき法(電解めっき法または無電解めっき法)を用いて、下地層21上にめっき層22を形成する(金属配線のめっき層形成工程)。これにより、下地層21におけるめっき層22側の一部の金属粒子の粒界の隙間には、めっき層22の一部が埋め込まれる。
【0022】
以上の工程により、本実施形態のフレキシブルプリント回路基板1が得られる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態のフレキシブルプリント回路基板の製造方法によれば、粒子状の金属材料を用いた減圧溶射法を用いて、金属配線20の下地層21を形成する。これにより、本実施形態のフレキシブルプリント回路基板1によれば、金属配線20の下地層21は、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する。
【0024】
また、フィルム基材10の主面に沿う金属配線20の下地層21の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、フィルム基材10の主面に交差する金属配線20の下地層21の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。
【0025】
また、フィルム基材10の主面に交差する断面において、フィルム基材10と金属配線20の下地層21の金属粒子との境界には隙間が存在する。
【0026】
これにより、フィルム基材10の表面を疎らにする表面疎化処理を行ったり、フィルム基材10の表面に接着剤を塗布したりしなくても、フィルム基材10と金属配線20との密着性を高めることができる。そのため、フィルム基材10の表面疎化または接着剤に起因する、高周波信号に対する誘電体損失を低減することができる。また、フィルム基材10の表面疎化による、金属配線の表面疎化による、表皮効果に起因する、高周波信号に対する抵抗を低減することができる。これにより、フィルム基材10と金属配線20との密着性を損なうことなく、高周波信号に対する誘電体損失および抵抗を低減することができる。
【0027】
ここで、本願発明者(ら)の知見によれば、減圧溶射法を用いて金属膜を厚く形成すると、熱によりフィルム基材の表面が改質してしまう。この点に関し、本実施形態のフレキシブルプリント回路基板の製造方法によれば、めっき法を用いて、金属配線20のめっき層22を形成する。これにより、本実施形態のフレキシブルプリント回路基板1によれば、金属配線20は、めっき層22を有し、金属配線20の抵抗を低減することができる。
【0028】
これにより、減圧溶射の時間、すなわち下地層21の厚さ、を調整(低減)することができ、減圧溶射の熱によるフィルム基材10の表面の改質をも低減することができる。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 フレキシブルプリント回路基板
10 フィルム基材
20 金属配線
21 下地層
22 めっき層
図1
図2A
図2B
図3A
図3B