(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135493
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】太陽電池の製造方法および回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0224 20060101AFI20240927BHJP
H01L 31/0747 20120101ALN20240927BHJP
【FI】
H01L31/04 260
H01L31/06 455
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046202
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】藤原 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 一輝
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA02
5F251AA03
5F251AA05
5F251BA11
5F251CB27
5F251DA10
5F251FA04
5F251FA06
5F251FA13
5F251FA15
5F251FA17
5F251FA18
5F251FA21
5F251HA04
(57)【要約】
【課題】反りを低減する太陽電池の製造方法を提供する。
【解決手段】太陽電池1の製造方法は、半導体基板11の主面に導電型半導体層25,35を形成する工程と、半導体基板11の主面における金属電極層の非形成領域に、物理的に剥離可能な物理剥離樹脂のパターンを形成する工程と、減圧溶射法を用いて、減圧環境下で、放電によって金属粒子を溶融させ、キャリアガスによって溶融された金属粒子を半導体基板11に噴射し、半導体基板11の導電型半導体層25,35および物理剥離樹脂上に金属粒子を堆積させることにより、金属電極層の材料膜を形成する工程と、物理剥離樹脂を剥離することによって、物理剥離樹脂上の金属電極層の材料膜を除去し、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する金属電極層29,39を形成する工程とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、前記半導体基板の主面に配置された導電型半導体層と、前記導電型半導体層に対応する金属電極層とを備える太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の主面に前記導電型半導体層を形成する半導体層形成工程と、
前記半導体基板の主面における前記金属電極層の非形成領域に、物理的に剥離可能な物理剥離樹脂のパターンを形成する物理剥離樹脂形成工程と、
減圧溶射法を用いて、減圧環境下で、放電によって金属粒子を溶融させ、キャリアガスによって溶融された金属粒子を前記半導体基板に噴射し、前記半導体基板の前記導電型半導体層および前記物理剥離樹脂上に金属粒子を堆積させることにより、前記金属電極層の材料膜を形成する金属電極層材料膜形成工程と、
前記物理剥離樹脂を剥離することによって、前記物理剥離樹脂上の前記金属電極層の材料膜を除去し、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する前記金属電極層を形成する金属電極層形成工程と、
を含む、太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記金属電極層は、下地層とめっき層との積層構造を有し、
前記金属電極層材料膜形成工程では、前記金属電極層の材料膜として前記下地層の材料膜を形成し、
前記金属電極層形成工程では、
前記物理剥離樹脂上の前記下地層の材料膜を除去し、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する前記下地層を形成し、
めっき法を用いて、前記下地層上に金属のめっき層を形成することによって、前記金属電極層を形成する、
請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項3】
誘電体層と金属配線とを備える回路基板の製造方法であって、
前記誘電体層における前記金属配線の非形成領域に、物理的に剥離可能な物理剥離樹脂のパターンを形成する物理剥離樹脂形成工程と、
減圧溶射法を用いて、減圧環境下で、放電によって金属粒子を溶融させ、キャリアガスによって溶融された金属粒子を前記誘電体層に噴射し、前記誘電体層および前記物理剥離樹脂上に金属粒子を堆積させることにより、前記金属配線の材料膜を形成する金属配線材料膜形成工程と、
前記物理剥離樹脂を剥離することによって、前記物理剥離樹脂上の前記金属配線の材料膜を除去し、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する前記金属配線を形成する金属配線形成工程と、
を含む、回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記金属配線は、下地層とめっき層との積層構造を有し、
前記金属配線材料膜形成工程では、前記金属配線の材料膜として前記下地層の材料膜を形成し、
前記金属配線形成工程では、
前記物理剥離樹脂上の前記下地層の材料膜を除去し、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する前記下地層を形成し、
めっき法を用いて、前記下地層上に金属のめっき層を形成することによって、前記金属配線を形成する、
請求項3に記載の回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の製造方法および回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板を用いた太陽電池として、受光面側および裏面側の両面に電極が形成された両面電極型の太陽電池と、裏面側のみに電極が形成された裏面電極型の太陽電池とがある。特許文献1には両面電極型の太陽電池が開示されており、特許文献2には裏面電極型の太陽電池が開示されている。特許文献1および2に開示されているように、両面電極型であっても裏面電極型であっても、太陽電池は、半導体基板と、半導体基板の主面に配置された導電型半導体層と、導電型半導体層に対応する金属電極層とを備える。
【0003】
また、回路基板でも、金属配線を備えることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-152620号公報
【特許文献2】特開2019-121627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、太陽電池では、半導体基板に金属電極層が形成されているため、半導体基板に反りが生じ、半導体基板の内部に応力が生じる。このような傾向は、裏面電極型の太陽電池において顕著である。半導体基板の内部応力が大きくなると、太陽電池の信頼性が低下する。
【0006】
また、回路基板でも、金属配線が形成されているため、回路基板に反りが生じる。
【0007】
本発明は、反りを低減(抑制、緩和)する太陽電池の製造方法および回路基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る太陽電池の製造方法は、半導体基板と、前記半導体基板の主面に配置された導電型半導体層と、前記導電型半導体層に対応する金属電極層とを備える太陽電池の製造方法であって、前記半導体基板の主面に前記導電型半導体層を形成する半導体層形成工程と、前記半導体基板の主面における前記金属電極層の非形成領域に、物理的に剥離可能な物理剥離樹脂のパターンを形成する物理剥離樹脂形成工程と、減圧溶射法を用いて、減圧環境下で、放電によって金属粒子を溶融させ、キャリアガスによって溶融された金属粒子を前記半導体基板に噴射し、前記半導体基板の前記導電型半導体層および前記物理剥離樹脂上に金属粒子を堆積させることにより、前記金属電極層の材料膜を形成する金属電極層材料膜形成工程と、前記物理剥離樹脂を剥離することによって、前記物理剥離樹脂上の前記金属電極層の材料膜を除去し、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する前記金属電極層を形成する金属電極層形成工程とを含む。
【0009】
本発明に係る回路基板の製造方法は、誘電体層と金属配線とを備える回路基板の製造方法であって、前記誘電体層における前記金属配線の非形成領域に、物理的に剥離可能な物理剥離樹脂のパターンを形成する物理剥離樹脂形成工程と、減圧溶射法を用いて、減圧環境下で、放電によって金属粒子を溶融させ、キャリアガスによって溶融された金属粒子を前記誘電体層に噴射し、前記誘電体層および前記物理剥離樹脂上に金属粒子を堆積させることにより、前記金属配線の材料膜を形成する金属配線材料膜形成工程と、前記物理剥離樹脂を剥離することによって、前記物理剥離樹脂上の前記金属配線の材料膜を除去し、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する前記金属配線を形成する金属配線形成工程とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、太陽電池および回路基板において、反りを低減(抑制、緩和)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る太陽電池(裏面電極型)を裏面側からみた図である。
【
図2】
図1の太陽電池(裏面電極型)におけるII-II線断面図である。
【
図3A】第1実施形態に係る太陽電池(裏面電極型)の製造方法における半導体層形成工程を示す図である。
【
図3B】第1実施形態に係る太陽電池(裏面電極型)の製造方法における物理剥離樹脂形成工程を示す図である。
【
図3C】第1実施形態に係る太陽電池(裏面電極型)の製造方法における透明電極層材料膜形成工程を示す図である。
【
図3D】第1実施形態に係る太陽電池(裏面電極型)の製造方法における金属電極層材料膜形成工程を示す図である。
【
図3E】第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における透明電極層および金属電極層形成工程を示す図である。
【
図4】第1実施形態の変形例に係る太陽電池(両面電極型)の断面図である。
【
図5】第2実施形態に係る太陽電池(裏面電極型)の断面図であって、
図1におけるII-II線断面図である。
【
図6A】第2実施形態に係る太陽電池(裏面電極型)の製造方法における半導体層形成工程を示す図である。
【
図6B】第2実施形態に係る太陽電池(裏面電極型)の製造方法における物理剥離樹脂形成工程を示す図である。
【
図6C】第2実施形態に係る太陽電池(裏面電極型)の製造方法における透明電極層材料膜形成工程を示す図である。
【
図6D】第2実施形態に係る太陽電池(裏面電極型)の製造方法における金属電極層の下地層材料膜形成工程を示す図である。
【
図6E】第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における透明電極層および金属電極層の下地層形成工程を示す図である。
【
図6F】第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における金属電極層のめっき層形成工程を示す図である。
【
図7】第2実施形態の変形例に係る太陽電池(両面電極型)の断面図である。
【
図8】第3実施形態に係る回路基板の断面図である。
【
図9A】第3実施形態に係る回路基板の製造方法における物理剥離樹脂形成工程を示す図である。
【
図9B】第3実施形態に係る回路基板の製造方法における金属配線材料膜形成工程を示す図である。
【
図9C】第3実施形態に係る回路基板の製造方法における金属配線形成工程を示す図である。
【
図10】第4実施形態に係る回路基板の断面図である。
【
図11A】第4実施形態に係る回路基板の製造方法における物理剥離樹脂形成工程を示す図である。
【
図11B】第4実施形態に係る回路基板の製造方法における金属配線の下地層材料膜形成工程を示す図である。
【
図11C】第4実施形態に係る回路基板の製造方法における金属配線の下地層形成工程を示す図である。
【
図11D】第4実施形態に係る回路基板の製造方法における金属配線のめっき層形成工程を示す図である。
【
図12A】
図2の太陽電池における金属電極層の表面を撮像したSEM画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0013】
(第1実施形態の太陽電池)
図1は、第1実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図であり、
図2は、
図1の太陽電池におけるII-II線断面図である。
図1および
図2に示す太陽電池1は、裏面電極型(バックコンタクト型、裏面接合型ともいう。)であってヘテロ接合型の太陽電池である。
【0014】
太陽電池1は、2つの主面を備える半導体基板11を備え、半導体基板11の主面において第1領域7と第2領域8とを有する。以下では、半導体基板11の主面のうちの受光する側の主面を受光面とし、半導体基板11の主面のうちの受光面の反対側の主面を裏面とする。
【0015】
第1領域7は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部7fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部7bとを有する。バスバー部7bは、半導体基板11の一方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部7fは、バスバー部7bから、第1方向に交差する第2方向(Y方向)に延在する。
【0016】
同様に、第2領域8は、いわゆる櫛型の形状であり、櫛歯に相当する複数のフィンガー部8fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部8bとを有する。バスバー部8bは、半導体基板11の一方の辺部に対向する他方の辺部に沿って第1方向に延在し、フィンガー部8fは、バスバー部8bから、第2方向に延在する。
【0017】
フィンガー部7fとフィンガー部8fとは、第2方向に延在する帯状をなしており、第1方向に交互に設けられている。なお、第1領域7および第2領域8は、ストライプ状に形成されてもよい。
【0018】
図2に示すように、太陽電池1は、半導体基板11の受光面側に順に形成(堆積、積層、製膜)されたパッシベーション層13および光学調整層15を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の裏面側の一部(主に、第1領域7)に順に形成(堆積、積層、製膜)されたパッシベーション層23、第1導電型半導体層25および第1電極層27を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の裏面側の他の一部(主に、第2領域8)に順に形成(堆積、積層、製膜)されたパッシベーション層33、第2導電型半導体層35および第2電極層37を備える。
【0019】
半導体基板11は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成される。半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板である。なお、半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にp型ドーパントがドープされたp型の半導体基板であってもよい。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられる。半導体基板11は、受光面側からの入射光を吸収して光キャリア(電子および正孔)を生成する光電変換基板として機能する。
【0020】
半導体基板11の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であっても比較的高出力(照度によらず安定した出力)が得られる。
【0021】
半導体基板11は、受光面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有していてもよい。これにより、受光面において入射光の反射が低減し、半導体基板11における光閉じ込め効果が向上する。
【0022】
また、半導体基板11は、裏面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有していてもよい。これにより、半導体基板11に吸収されず通過してしまった光の回収効率が高まる。
【0023】
パッシベーション層13は、半導体基板11の受光面側に形成されている。パッシベーション層23は、半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。パッシベーション層33は、半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。パッシベーション層13,23,33は、例えば真性(i型)アモルファスシリコン材料で形成される。パッシベーション層13,23,33は、半導体基板11で生成されたキャリアの再結合を抑制し、キャリアの回収効率を高める。
【0024】
光学調整層15は、半導体基板11の受光面側のパッシベーション層13上に形成されている。光学調整層15は、入射光の反射を防止または抑制する反射防止層として機能し、半導体基板11への光の入射効率を向上する。また、光学調整層15は、半導体基板11の受光面側およびパッシベーション層13を保護する保護層として機能する。光学調整層15は、例えば酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、または酸窒化珪素(SiON)のようなそれらの複合物等の絶縁体材料で形成される。
【0025】
第1導電型半導体層25は、パッシベーション層23上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料にp型ドーパント(例えば、上述したホウ素(B))がドープされたp型の半導体層である。
【0026】
第2導電型半導体層35は、パッシベーション層33上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料にn型ドーパント(例えば、上述したリン(P))がドープされたn型半導体層である。
【0027】
なお、第1導電型半導体層25がn型の半導体層であり、第2導電型半導体層35がp型の半導体層であってもよい。
【0028】
第1導電型半導体層25およびパッシベーション層23と、第2導電型半導体層35およびパッシベーション層33とは、第2方向(Y方向)に延在する帯状をなしており、第1方向(X方向)に交互に並んでいる。第2導電型半導体層35およびパッシベーション層33の一部は、隣接する第1導電型半導体層25およびパッシベーション層23の一部の上に重なっていてもよい。
【0029】
第1電極層27は、第1導電型半導体層25に対応して、具体的には半導体基板11の裏面側の第1領域7における第1導電型半導体層25上に形成されている。第1電極層27は、第1導電型半導体層25上に順に形成された第1透明電極層28と第1金属電極層29とを有していてもよいし(
図2)、第1導電型半導体層25上に形成された第1金属電極層29のみを有していてもよい(図示省略)。
【0030】
第2電極層37は、第2導電型半導体層35に対応して、具体的には半導体基板11の裏面側の第2領域8における第2導電型半導体層35上に形成されている。第2電極層37は、第2導電型半導体層35上に順に形成された第2透明電極層38と第2金属電極層39とを有していてもよいし(
図2)、第2導電型半導体層35上に形成された第2金属電極層39のみを有していてもよい(図示省略)。
【0031】
第1電極層27および第2電極層37は、第2方向(Y方向)に延在する帯状をなしており、第1方向(X方向)に交互に並んでいる。第1電極層27と第2電極層37とは互いに分離されている。すなわち、第1透明電極層28および第2透明電極層38は、第2方向に延在する帯状をなしており、第1方向に交互に並んでいる。第1透明電極層28と第2透明電極層38とは互いに分離されている。また、第1金属電極層29および第2金属電極層39は、第2方向に延在する帯状をなしており、第1方向に交互に並んでいる。第1金属電極層29と第2金属電極層39とは互いに分離されている。
【0032】
第1透明電極層28および第2透明電極層38は、透明な導電性材料で形成される。透明導電性材料としては、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムおよび酸化スズの複合酸化物)等が挙げられる。
【0033】
第1金属電極層29および第2金属電極層39は、後述するように、例えば銀、銅、アルミニウム等の粒子状の金属材料を用いた減圧溶射法によって形成される。
図12Aは、第1金属電極層29および第2金属電極層39の表面を撮像したSEM(Scanning Electron Microscope)画像の一例であり、
図12Bは、
図12AのXIIB部分を拡大したSEM画像の一例である。
図12Aおよび
図12Bの例では、粒子径8μmの銅粉末を用いて減圧溶射した。
【0034】
図12Aおよび
図12Bの例に示すように、第1金属電極層29および第2金属電極層39は、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する。裏面側からみて、第1金属電極層29における金属粒子の大きさ(粒子径)は、0.9μm以上500μm以下であり、好ましくは0.9μm以上13μm以下である。また、裏面側からみて、第2金属電極層39における金属粒子の大きさ(粒子径)は、0.9μm以上500μm以下であり、好ましくは0.9μm以上13μm以下である。
【0035】
また、裏面に沿う第1金属電極層29の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、裏面に交差する第1金属電極層29の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、裏面に交差する断面において、第1金属電極層29に隣接する層、すなわち第1透明電極層28、と第1金属電極層29の金属粒子との境界には隙間が存在する(
図2)。なお、第1電極層27が第1透明電極層28を有さない場合、裏面に交差する断面において、第1金属電極層29に隣接する層、すなわち第1導電型半導体層25、と第1金属電極層29の金属粒子との境界には隙間が存在する(図示省略)。
【0036】
また、裏面に沿う第2金属電極層39の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、裏面に交差する第2金属電極層39の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、裏面に交差する断面において、第2金属電極層39に隣接する層、すなわち第2透明電極層38、と第2金属電極層39の金属粒子との境界には隙間が存在する(
図2)。なお、第2電極層37が第2透明電極層38を有さない場合、受光面に交差する断面において、第2金属電極層39に隣接する層、すなわち第2導電型半導体層35、と第2金属電極層39の金属粒子との境界には隙間が存在する(図示省略)。
【0037】
(第1実施形態の太陽電池の製造方法)
次に、
図3A~
図3Eを参照して、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法について説明する。
図3Aは、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における半導体層形成工程を示す図であり、
図3Bは、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における物理剥離樹脂形成工程を示す図である。
図3Cは、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における透明電極層材料膜形成工程を示す図であり、
図3Dは、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における金属電極層材料膜形成工程を示す図である。
図3Eは、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における透明電極層および金属電極層形成工程を示す図である。
【0038】
まず、
図3Aに示すように、半導体基板11の裏面側の一部に、具体的には第1領域7に、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25を形成する(半導体層形成工程)。以下に、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25の形成方法の一例を示すが、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25の形成方法はこれに限定されない。
【0039】
例えば、CVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全てにパッシベーション膜および第1導電型半導体膜を製膜した後、フォトリソグラフィ技術を用いて生成するマスクまたはメタルマスクを利用したエッチング法を用いて、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25をパターニングしてもよい。なお、p型半導体膜に対するエッチング溶液としては、例えばオゾンを含有するフッ酸や、硝酸とフッ酸の混合液のような酸性溶液が挙げられ、n型半導体膜に対するエッチング溶液としては、例えば水酸化カリウム水溶液のようなアルカリ性溶液が挙げられる。
【0040】
または、CVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側にパッシベーション層および第1導電型半導体層を積層する際に、マスクを用いて、パッシベーション層23およびp型半導体層25の製膜およびパターニングを同時に行ってもよい。
【0041】
次に、半導体基板11の裏面側の他の一部に、具体的には第2領域8に、パッシベーション層33および第2導電型半導体層35を形成する(半導体層形成工程)。以下に、パッシベーション層33および第2導電型半導体層35の形成方法の一例を示すが、パッシベーション層33および第2導電型半導体層35の形成方法はこれに限定されない。
【0042】
例えば、上述同様に、CVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全てにパッシベーション膜および第2導電型半導体膜を製膜した後、フォトリソグラフィ技術を用いて生成するマスクまたはメタルマスクを利用したエッチング法を用いて、パッシベーション層33および第2導電型半導体層35をパターニングしてもよい。
【0043】
または、CVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側にパッシベーション層および第2導電型半導体層を積層する際に、マスクを用いて、パッシベーション層33および第2導電型半導体層35の製膜およびパターニングを同時に行ってもよい。
【0044】
なお、この半導体層形成工程において、半導体基板11の受光面側の全面に、パッシベーション層13を形成してもよい。
【0045】
次に、
図3Bに示すように、半導体基板11の裏面における第1電極層27および第2電極層37の非形成領域、すなわち第1金属電極層29および第2金属電極層39の非形成領域に、物理的に剥離可能な物理剥離樹脂のパターン40を形成する(物理剥離樹脂形成工程)。
【0046】
物理剥離樹脂パターン40の材料としては、アクリル、エポキシ、ポリイミド、シリコーン、シルセスキオキサン、オキセタン等が用いられる。これにより、物理剥離樹脂パターン40は、機械剥離が可能となり、外力が加わると半導体基板11から剥離する。半導体基板11に対する物理剥離樹脂パターン40の剥離強度は、1N以下であると好ましい。
【0047】
次に、
図3Cに示すように、例えばCVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全てに、すなわち第1導電型半導体層25、第2導電型半導体層35および物理剥離樹脂パターン40上にこれらに跨って、透明電極層の材料膜28Zを形成する(透明電極層材料膜形成工程)。
【0048】
なお、このとき、半導体基板11の受光面側の全面に、光学調整層15を形成してもよい。
【0049】
次に、
図3Dに示すように、半導体基板11の裏面側の全てに、すなわち第1導電型半導体層25、第2導電型半導体層35および物理剥離樹脂パターン40上にこれらに跨って、金属電極層の材料膜29Zを形成する(金属電極層材料膜形成工程)。
【0050】
例えば、粒子状の金属材料を用いた減圧溶射法を用いて、金属電極層の材料膜29Zを形成する。減圧溶射法とは、減圧環境下で、
・プラズマ放電等の放電によって、粒子状の金属材料を溶融させ、
・キャリアガスによって、溶融粒子を対象物表面に噴射し、
・溶融粒子を対象物表面に堆積する、
製膜方法である。対象物表面に堆積した溶融粒子は、瞬時に冷却され、金属膜を形成する。
【0051】
これにより、上述したように、第1金属電極層29および第2金属電極層39は、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する。また、裏面に沿う第1金属電極層29および第2金属電極層39の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、裏面に交差する第1金属電極層29および第2金属電極層39の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。
【0052】
また、裏面に交差する断面において、第1金属電極層29に隣接する層(第1透明電極層28、或いは第1導電型半導体層25)と第1金属電極層29の金属粒子との境界には隙間が存在する。また、裏面に交差する断面において、第2金属電極層39に隣接する層(第2透明電極層38、或いは第2導電型半導体層35)と第2金属電極層39の金属粒子との境界には隙間が存在する。
【0053】
次に、
図3Eに示すように、物理剥離樹脂パターン40を物理的に剥離することによって、物理剥離樹脂パターン40上の透明電極層材料膜28Zおよび金属電極層材料膜29Zを除去する。これにより、第1導電型半導体層25上に、具体的には第1領域7に、第1透明電極層28および第1金属電極層29を形成し、第2導電型半導体層35上に、具体的には第2領域8に、第2透明電極層38および第2金属電極層39を形成する(透明電極層形成工程および金属電極層形成工程)。
【0054】
以上の工程により、
図2に示す第1実施形態の裏面電極型の太陽電池1が得られる。
【0055】
以上説明したように、第1実施形態の太陽電池の製造方法によれば、粒子状の金属材料を用いた減圧溶射法を用いて、第1金属電極層29および第2金属電極層39を形成する。これにより、第1実施形態の太陽電池1によれば、第1金属電極層29および第2金属電極層39は、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する。
【0056】
そのため、第1金属電極層29および第2金属電極層39は、ヤング率が低く、柔軟性が高い。したがって、第1実施形態の太陽電池1によれば、半導体基板11の反りを低減することができ、半導体基板11の内部応力を低減(抑制、緩和)することができる。
【0057】
また、第1実施形態の太陽電池の製造方法によれば、第1金属電極層29および第2金属電極層39は、ヤング率が低く、柔軟性が高いため、第1金属電極層29および第2金属電極層39のパターニングにおいて、物理的に剥離可能な物理剥離樹脂パターン40を用いた機械的なリフトオフ法を用いることができ、太陽電池の製造を簡易化することができる。
【0058】
また、本実施形態の減圧溶射法を用いる金属電極層の形成方法によれば、めっき法を用いる金属電極層の形成方法と比較して、金属電極層の密着性、抵抗、接合強度は同等であり、更に半導体基板の反りを低減することができ、半導体基板の内部応力を低減(抑制、緩和)することができることを確認した。
【0059】
なお、金属電極層の密着性の評価では、JIS-K5400規格に準拠したクロスカット試験を行った。金属電極層の抵抗の評価では、JIS-C2139-3、JIS K6911に準拠した体積低効率・表面抵抗率測定を行った。金属電極層の接合強度の評価では、JIS-Z3198-8、JIS-K6855に準拠したツィーザーピール強度試験を行った。また、半導体基板の反り(半導体基板の内部応力)の評価では、JIS-H8626(品質、項目12、電着応力)に準拠したテストストリップ試験を行った。
【0060】
(第1実施形態の変形例の太陽電池)
以上、本発明の第1実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、裏面電極型の太陽電池1について例示した(例えば
図2)。しかし、本発明の特徴はこれに限定されず、両面電極型の太陽電池にも適用可能である。
【0061】
図4は、第1実施形態の変形例に係る太陽電池の断面図である。
図4に示す太陽電池1は、両面電極型であってヘテロ接合型の太陽電池である。
図4に示す太陽電池1は、半導体基板11の受光面側に順に形成(堆積、積層、製膜)されたパッシベーション層23、第1導電型半導体層25および第1電極層27を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の裏面側に順に形成(堆積、積層、製膜)されたパッシベーション層33、第2導電型半導体層35および第2電極層37を備える。
【0062】
パッシベーション層23および第1導電型半導体層25は、半導体基板11の受光面側の全面に順に形成されている。パッシベーション層33および第2導電型半導体層35は、半導体基板11の裏面側の全面に形成されている。
【0063】
第1電極層27は、第1導電型半導体層25に対応して、具体的には第1導電型半導体層25上に形成されている。第1電極層27は、第1導電型半導体層25上に順に形成された第1透明電極層28と第1金属電極層29とを有していてもよいし(
図4)、第1導電型半導体層25上に形成された第1金属電極層29のみを有していてもよい(図示省略)。
【0064】
第2電極層37は、第2導電型半導体層35に対応して、具体的には第2導電型半導体層35上に形成されている。第2電極層37は、第2導電型半導体層35上に順に形成された第2透明電極層38と第2金属電極層39とを有していてもよいし(
図4)、第2導電型半導体層35上に形成された第2金属電極層39のみを有していてもよい(図示省略)。
【0065】
第1透明電極層28は、第1導電型半導体層25上の全面に形成されており、第2透明電極層38は、第2導電型半導体層35上の全面に形成されている。一方、第1金属電極層29および第2金属電極層39は、第2方向に延在する帯状をなしており、第1方向に交互に並んでいる。なお、裏面側の第2金属電極層39は、第2導電型半導体層35上の全面に形成されていてもよい。
【0066】
上述したように、第1金属電極層29および第2金属電極層39は、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する。
【0067】
また、受光面に沿う第1金属電極層29の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、受光面に交差する第1金属電極層29の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、受光面に交差する断面において、第1金属電極層29に隣接する層、すなわち第1透明電極層28、と第1金属電極層29の金属粒子との境界には隙間が存在する(
図2)。なお、第1電極層27が第1透明電極層28を有さない場合、裏面に交差する断面において、第1金属電極層29に隣接する層、すなわち第1導電型半導体層25、と第1金属電極層29の金属粒子との境界には隙間が存在する(図示省略)。
【0068】
また、裏面に沿う第2金属電極層39の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、裏面に交差する第2金属電極層39の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、裏面に交差する断面において、第2金属電極層39に隣接する層、すなわち第2透明電極層38、と第2金属電極層39の金属粒子との境界には隙間が存在する(
図2)。なお、第2電極層37が第2透明電極層38を有さない場合、受光面に交差する断面において、第2金属電極層39に隣接する層、すなわち第2導電型半導体層35、と第2金属電極層39の金属粒子との境界には隙間が存在する(図示省略)。
【0069】
(第1実施形態の変形例の太陽電池の製造方法)
図4に示す太陽電池1にも、上述した太陽電池の製造方法を適用することができる。まず、上述同様に、例えばCVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の受光面側にパッシベーション層23および第1導電型半導体層25を形成し、半導体基板11の裏面側にパッシベーション層33および第2導電型半導体層35を形成する(半導体層形成工程)。
【0070】
次に、上述同様に、例えばCVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の受光面側に第1透明電極層28を形成し、半導体基板11の裏面側に第2透明電極層38を形成する(透明電極層形成工程)。
【0071】
次に、上述同様に、半導体基板11の受光面における第1金属電極層29の非形成領域、および、半導体基板11の裏面における第2金属電極層39の非形成領域に、物理的に剥離可能な物理剥離樹脂のパターンを形成する(物理剥離樹脂形成工程)。
【0072】
次に、上述同様に、減圧溶射法を用いて、半導体基板11の受光面側の全てに、すなわち第1導電型半導体層25および物理剥離樹脂パターン上にこれらに跨って、金属電極層の材料膜を形成する(金属電極層材料膜形成工程)。また、半導体基板11の裏面側の全てに、すなわち第2導電型半導体層35および物理剥離樹脂パターン40上にこれらに跨って、金属電極層の材料膜を形成する(金属電極層材料膜形成工程)。
【0073】
次に、上述同様に、物理剥離樹脂パターンを物理的に剥離することによって、物理剥離樹脂パターン上の金属電極層材料膜を除去する。これにより、半導体基板11の受光面側に第1金属電極層29を形成し、半導体基板11の裏面側に第2金属電極層39を形成する(金属電極層形成工程)。
【0074】
以上の工程により、
図4に示す第1実施形態の変形例の両面電極型の太陽電池1が得られる。
【0075】
(第2実施形態の太陽電池)
第1実施形態では、減圧溶射法により形成された金属電極層29,39を備える太陽電池1を例示した。第2実施形態では、減圧溶射法により形成された下地層とめっき層との積層構造を有する金属電極層を備える太陽電池を例示する。
【0076】
図5は、第2実施形態に係る太陽電池の断面図であって、
図1におけるII-II線断面図である。
図5に示す第2実施形態の太陽電池1は、
図1に示す第1実施形態の太陽電池1と比較して、金属電極層29,39の構成が異なる。第2実施形態の太陽電池1の他の構成は、第1実施形態の太陽電池1の構成と同様である。
【0077】
第1金属電極層29は、第1下地層29lと第1めっき層29uとを有し、第2金属電極層39は、第2下地層39lと第2めっき層39uとを有する。
【0078】
第1下地層29lおよび第2下地層39lは、後述するように、例えば銀、銅、アルミニウム等の粒子状の金属材料を用いた減圧溶射法によって形成される。これにより、上述した
図12Aおよび
図12Bの例と同様に、第1下地層29lおよび第2下地層39lは、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する。裏面側からみて、第1下地層29lにおける金属粒子の大きさ(粒子径)は、0.9μm以上500μm以下であり、好ましくは0.9μm以上13μm以下であり、裏面側からみて、第2下地層39lにおける金属粒子の大きさ(粒子径)は、0.9μm以上500μm以下であり、好ましくは0.9μm以上13μm以下である。
【0079】
また、裏面に沿う第1下地層29lの断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、裏面に交差する第1下地層29lの断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、裏面に交差する断面において、第1下地層29lに隣接する層、すなわち第1透明電極層28、と第1下地層29lの金属粒子との境界には隙間が存在する(
図2)。なお、第1電極層27が第1透明電極層28を有さない場合、裏面に交差する断面において、第1下地層29lに隣接する層、すなわち第1導電型半導体層25、と第1下地層29lの金属粒子との境界には隙間が存在する(図示省略)。
【0080】
また、裏面に沿う第2下地層39lの断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、裏面に交差する第2下地層39lの断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、裏面に交差する断面において、第2下地層39lに隣接する層、すなわち第2透明電極層38、と第2下地層39lの金属粒子との境界には隙間が存在する(
図2)。なお、第2電極層37が第2透明電極層38を有さない場合、受光面に交差する断面において、第2下地層39lに隣接する層、すなわち第2導電型半導体層35、と第2下地層39lの金属粒子との境界には隙間が存在する(図示省略)。
【0081】
第1めっき層29uおよび第2めっき層39uは、後述するように、例えば銀、銅、アルミニウム等の金属材料を用いためっき法(電解めっき法または無電解めっき法)によって形成される。これにより、第1下地層29lにおける第1めっき層29u側の一部の金属粒子の粒界の隙間には、第1めっき層29uの一部が埋め込まれており、第2下地層39lにおける第2めっき層39u側の一部の金属粒子の粒界の隙間には、第2めっき層39uの一部が埋め込まれている。
【0082】
(太陽電池の製造方法)
次に、
図6A~
図6Fを参照して、本実施形態に係る太陽電池の製造方法について説明する。
図6Aは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における半導体層形成工程を示す図であり、
図6Bは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における物理剥離樹脂形成工程を示す図である。
図6Cは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における透明電極層材料膜形成工程を示す図であり、
図6Dは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における金属電極層の下地層材料膜形成工程を示す図である。
図6Eは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における透明電極層および金属電極層の下地層形成工程を示す図であり、
図6Fは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における金属電極層のめっき層形成工程を示す図である。
【0083】
まず、上述同様に、
図6Aに示すように、半導体基板11の裏面側の一部に、具体的には第1領域7に、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25を形成する(半導体層形成工程)。
【0084】
次に、上述同様に、半導体基板11の裏面側の他の一部に、具体的には第2領域8に、パッシベーション層33および第2導電型半導体層35を形成する(半導体層形成工程)。
【0085】
なお、この半導体層形成工程において、半導体基板11の受光面側の全面に、パッシベーション層13を形成してもよい。
【0086】
次に、上述同様に、
図6Bに示すように、半導体基板11の裏面における第1電極層27および第2電極層37の非形成領域、すなわち第1金属電極層29および第2金属電極層39の非形成領域に、物理的に剥離可能な物理剥離樹脂のパターン40を形成する(物理剥離樹脂形成工程)。
【0087】
次に、上述同様に、
図6Cに示すように、例えばCVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全てに、すなわち第1導電型半導体層25、第2導電型半導体層35および物理剥離樹脂パターン40上にこれらに跨って、透明電極層の材料膜28Zを形成する(透明電極層材料膜形成工程)。
【0088】
なお、このとき、半導体基板11の受光面側の全面に、光学調整層15を形成してもよい。
【0089】
次に、上述同様に、
図6Dに示すように、半導体基板11の裏面側の全てに、すなわち第1導電型半導体層25、第2導電型半導体層35および物理剥離樹脂パターン40上にこれらに跨って、金属電極層の下地層の材料膜29lZを形成する(金属電極層の下地層材料膜形成工程)。
【0090】
例えば、粒子状の金属材料を用いた減圧溶射法を用いて、下地層の材料膜29lZを形成する。減圧溶射法とは、減圧環境下で、
・プラズマ放電等の放電によって、粒子状の金属材料を溶融させ、
・キャリアガスによって、溶融粒子を対象物表面に噴射し、
・溶融粒子を対象物表面に堆積する、
製膜方法である。対象物表面に堆積した溶融粒子は、瞬時に冷却され、金属膜を形成する。
【0091】
これにより、上述したように、第1下地層29lおよび第2下地層39lは、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する。また、裏面に沿う第1下地層29lおよび第2下地層39lの断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、裏面に交差する第1下地層29lおよび第2下地層39lの断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。
【0092】
また、裏面に交差する断面において、第1下地層29lに隣接する層(第1透明電極層28、或いは第1導電型半導体層25)と第1下地層29lの金属粒子との境界には隙間が存在する。また、裏面に交差する断面において、第2下地層39lに隣接する層(第2透明電極層38、或いは第2導電型半導体層35)と第2下地層39lの金属粒子との境界には隙間が存在する。
【0093】
次に、
図6Eに示すように、物理剥離樹脂パターン40を物理的に剥離することによって、物理剥離樹脂パターン40上の透明電極層材料膜28Zおよび金属電極層の下地層材料膜29lZを除去する。これにより、第1導電型半導体層25上に、具体的には第1領域7に、第1透明電極層28および第1金属電極層の第1下地層29lを形成し、第2導電型半導体層35上に、具体的には第2領域8に、第2透明電極層38および第2金属電極層の第2下地層39lを形成する(透明電極層形成工程および金属電極層の下地層形成工程)。
【0094】
次に、
図6Fに示すように、めっき法を用いて、第1下地層29l上に、具体的には第1領域7に、第1金属電極層の第1めっき層29uを形成し、第2下地層39l上に、具体的には第2領域8に、第2金属電極層の第2めっき層39uを形成する(金属電極層のめっき層形成工程)。
【0095】
以上の工程により、
図5に示す第2実施形態の裏面電極型の太陽電池1が得られる。
【0096】
以上説明したように、第2実施形態の太陽電池の製造方法によれば、粒子状の金属材料を用いた減圧溶射法を用いて、第1金属電極層29の第1下地層29lおよび第2金属電極層39の第2下地層39lを形成する。これにより、第2実施形態の太陽電池1によれば、第1金属電極層29の第1下地層29lおよび第2金属電極層39の第2下地層39lは、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する。
【0097】
そのため、第1下地層29lおよび第2下地層39lは、ヤング率が低く、柔軟性が高い。したがって、第2実施形態の太陽電池1によれば、半導体基板11の反りを低減することができ、半導体基板11の内部応力を低減(抑制、緩和)することができる。
【0098】
また、第2実施形態の太陽電池の製造方法によれば、第1下地層29lおよび第2下地層39lは、ヤング率が低く、柔軟性が高いため、第1下地層29lおよび第2下地層39lのパターニングにおいて、物理的に剥離可能な物理剥離樹脂パターン40を用いた機械的なリフトオフ法を用いることができ、太陽電池の製造を簡易化することができる。
【0099】
また、本実施形態の減圧溶射法を用いる金属電極層の下地層の形成方法によれば、めっき法を用いる金属電極層の形成方法と比較して、金属電極層の密着性、抵抗、接合強度は同等であり、更に半導体基板の反りを低減することができ、半導体基板の内部応力を低減(抑制、緩和)することができることを確認した。
【0100】
なお、金属電極層の密着性の評価では、JIS-K5400規格に準拠したクロスカット試験を行った。金属電極層の抵抗の評価では、JIS-C2139-3、JIS K6911に準拠した体積低効率・表面抵抗率測定を行った。金属電極層の接合強度の評価では、JIS-Z3198-8、JIS-K6855に準拠したツィーザーピール強度試験を行った。また、半導体基板の反り(半導体基板の内部応力)の評価では、JIS-H8626(品質、項目12、電着応力)に準拠したテストストリップ試験を行った。
【0101】
また、第2実施形態の太陽電池の製造方法によれば、めっき法を用いて、第1金属電極層29の第1めっき層29uおよび第2金属電極層39の第2めっき層39uを形成する。これにより、第2実施形態の太陽電池1によれば、第1金属電極層29は第1めっき層29uを有し、第2金属電極層39は第2めっき層39uを有する。そのため、第1金属電極層29および第2金属電極層39の抵抗を低くすることができる。また、第1金属電極層29および第2金属電極層39の表面の平滑性(表面粗さ)を高めることができ、半田接合性を高めることができる。
【0102】
(第2実施形態の変形例の太陽電池)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、裏面電極型の太陽電池1について例示した(例えば
図5)。しかし、本発明の特徴はこれに限定されず、両面電極型の太陽電池にも適用可能である。
【0103】
図7は、第2実施形態の変形例に係る太陽電池の断面図である。
図7に示す太陽電池1は、両面電極型であってヘテロ接合型の太陽電池である。
図7に示す太陽電池1は、半導体基板11の受光面側に順に形成(堆積、積層、製膜)されたパッシベーション層23、第1導電型半導体層25および第1電極層27を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の裏面側に順に形成(堆積、積層、製膜)されたパッシベーション層33、第2導電型半導体層35および第2電極層37を備える。
【0104】
パッシベーション層23および第1導電型半導体層25は、半導体基板11の受光面側の全面に順に形成されている。パッシベーション層33および第2導電型半導体層35は、半導体基板11の裏面側の全面に形成されている。
【0105】
第1電極層27は、第1導電型半導体層25に対応して、具体的には第1導電型半導体層25上に形成されている。第1電極層27は、第1導電型半導体層25上に順に形成された第1透明電極層28と第1金属電極層29とを有していてもよいし(
図7)、第1導電型半導体層25上に形成された第1金属電極層29のみを有していてもよい(図示省略)。
【0106】
第2電極層37は、第2導電型半導体層35に対応して、具体的には第2導電型半導体層35上に形成されている。第2電極層37は、第2導電型半導体層35上に順に形成された第2透明電極層38と第2金属電極層39とを有していてもよいし(
図7)、第2導電型半導体層35上に形成された第2金属電極層39のみを有していてもよい(図示省略)。
【0107】
第1透明電極層28は、第1導電型半導体層25上の全面に形成されており、第2透明電極層38は、第2導電型半導体層35上の全面に形成されている。一方、第1金属電極層29および第2金属電極層39は、第2方向に延在する帯状をなしており、第1方向に交互に並んでいる。第1金属電極層29は、第1下地層29lと第1めっき層29uとを有し、第2金属電極層39は、第2下地層39lと第2めっき層39uとを有する。なお、裏面側の第2金属電極層39は、第2導電型半導体層35上の全面に形成されていてもよい。
【0108】
上述したように、第1下地層29lおよび第2下地層39lは、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する。
【0109】
また、受光面に沿う第1下地層29lの断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、受光面に交差する第1下地層29lの断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、受光面に交差する断面において、第1下地層29lに隣接する層、すなわち第1透明電極層28、と第1下地層29lの金属粒子との境界には隙間が存在する(
図2)。なお、第1電極層27が第1透明電極層28を有さない場合、裏面に交差する断面において、第1下地層29lに隣接する層、すなわち第1導電型半導体層25、と第1下地層29lの金属粒子との境界には隙間が存在する(図示省略)。
【0110】
また、裏面に沿う第2下地層39lの断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、裏面に交差する第2下地層39lの断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、裏面に交差する断面において、第2下地層39lに隣接する層、すなわち第2透明電極層38、と第2下地層39lの金属粒子との境界には隙間が存在する(
図2)。なお、第2電極層37が第2透明電極層38を有さない場合、受光面に交差する断面において、第2下地層39lに隣接する層、すなわち第2導電型半導体層35、と第2下地層39lの金属粒子との境界には隙間が存在する(図示省略)。
【0111】
(第2実施形態の変形例の太陽電池の製造方法)
図7に示す太陽電池1にも、上述した太陽電池の製造方法を適用することができる。まず、上述同様に、例えばCVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の受光面側にパッシベーション層23および第1導電型半導体層25を形成し、半導体基板11の裏面側にパッシベーション層33および第2導電型半導体層35を形成する(半導体層形成工程)。
【0112】
次に、上述同様に、例えばCVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の受光面側に第1透明電極層28を形成し、半導体基板11の裏面側に第2透明電極層38を形成する(透明電極層形成工程)。
【0113】
次に、上述同様に、半導体基板11の受光面における第1金属電極層29の非形成領域、および、半導体基板11の裏面における第2金属電極層39の非形成領域に、物理的に剥離可能な物理剥離樹脂のパターンを形成する(物理剥離樹脂形成工程)。
【0114】
次に、上述同様に、減圧溶射法を用いて、半導体基板11の受光面側の全てに、すなわち第1導電型半導体層25および物理剥離樹脂パターン上にこれらに跨って、金属電極層の下地層の材料膜を形成する(金属電極層の下地層材料膜形成工程)。また、半導体基板11の裏面側の全てに、すなわち第2導電型半導体層35および物理剥離樹脂パターン40上にこれらに跨って、金属電極層の下地層の材料膜を形成する(金属電極層の下地層材料膜形成工程)。
【0115】
次に、上述同様に、物理剥離樹脂パターンを物理的に剥離することによって、物理剥離樹脂パターン上の金属電極層の下地層材料膜を除去する。これにより、半導体基板11の受光面側に第1金属電極層29の下地層29lを形成し、半導体基板11の裏面側に第2金属電極層39の下地層を形成する(金属電極層の下地層形成工程)。
【0116】
次に、上述同様に、めっき法を用いて、第1下地層29l上に、第1金属電極層29の第1めっき層29uを形成し、第2下地層39l上に、第2金属電極層39の第2めっき層39uを形成する(金属電極層のめっき層形成工程)。
【0117】
以上の工程により、
図7に示す第2実施形態の変形例の両面電極型の太陽電池1が得られる。
【0118】
(第3実施形態の回路基板)
図8は、第3実施形態に係る回路基板の側面を示す概略図である。
図8に示すように、回路基板100は、誘電体層110と、誘電体層110上に配置された金属配線120とを備える。
【0119】
誘電体層110は、絶縁性を有する誘電体材料で構成されている。誘電体層110の材料としては、ガラス、シリコーン、エポキシ、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0120】
金属配線120は、誘電体層110上に配置されており、任意のパターンにパターン化されている。
【0121】
金属配線120は、後述するように、例えば銅、アルミ、ニッケル、銀、錫等の粒子状の金属材料を用いた減圧溶射法によって形成される。これにより、上述した
図12Aおよび
図12Bの例と同様に、金属配線120は、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する。誘電体層110の主面側からみて、金属配線120における金属粒子の大きさ(粒子径)は、0.9μm以上500μm以下であり、好ましくは0.9μm以上13μm以下である。
【0122】
また、誘電体層110の主面に沿う金属配線120の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、誘電体層110の主面に交差する金属配線120の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、誘電体層110の主面に交差する金属配線120の断面において、誘電体層110と金属配線120の金属粒子との境界には隙間が存在する。
【0123】
(第3実施形態の回路基板の製造方法)
次に、
図9A~
図9Cを参照して、第3実施形態に係る回路基板の製造方法について説明する。
図9Aは、第3実施形態に係る回路基板の製造方法における物理剥離樹脂形成工程を示す図であり、
図9Bは、第3実施形態に係る回路基板の製造方法における金属配線材料膜形成工程を示す図である。
図9Cは、第3実施形態に係る回路基板の製造方法における金属配線形成工程を示す図である。
【0124】
まず、
図9Aに示すように、誘電体層110の主面における金属配線120の非形成領域に、物理的に剥離可能な物理剥離樹脂のパターン40を形成する(物理剥離樹脂形成工程)。
【0125】
次に、
図9Bに示すように、誘電体層110の主面の全面に、すなわち誘電体層110および物理剥離樹脂パターン40上にこれらに跨って、金属配線の材料膜120Zを形成する(金属配線材料膜形成工程)。例えば、粒子状の金属材料を用いた減圧溶射法を用いて、金属配線の材料膜120Zを形成する。減圧溶射法とは、減圧環境下で、
・プラズマ放電等の放電によって、粒子状の金属材料を溶融させ、
・キャリアガスによって、溶融粒子を対象物表面に噴射し、
・溶融粒子を対象物表面に堆積する、
製膜方法である。対象物表面に堆積した溶融粒子は、瞬時に冷却され、金属膜を形成する。
【0126】
これにより、上述したように、金属配線120は、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する。また、誘電体層110の主面に沿う金属配線120の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、誘電体層110の主面に交差する金属配線120の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、誘電体層110の主面に交差する断面において、誘電体層110と金属配線20の金属粒子との境界には隙間が存在する。
【0127】
次に、
図9Cに示すように、物理剥離樹脂パターン40を物理的に剥離することによって、物理剥離樹脂パターン40上の金属配線の材料膜120Zを除去し、金属配線120を形成する(金属配線形成工程)。
【0128】
以上の工程により、
図8に示す第3実施形態の回路基板100が得られる。
【0129】
以上説明したように、第3実施形態の回路基板の製造方法によれば、粒子状の金属材料を用いた減圧溶射法を用いて、金属配線120を形成する。これにより、第3実施形態の回路基板100によれば、金属配線120は、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する。
【0130】
そのため、金属配線120は、ヤング率が低く、柔軟性が高い。したがって、第3実施形態の回路基板100によれば、反りを低減することができる。
【0131】
また、第3実施形態の回路基板の製造方法によれば、金属配線120は、ヤング率が低く、柔軟性が高いため、金属配線120のパターニングにおいて、物理的に剥離可能な物理剥離樹脂パターン40を用いた機械的なリフトオフ法を用いることができ、回路基板の製造を簡易化することができる。
【0132】
(第4実施形態の回路基板)
第3実施形態では、減圧溶射法により形成された金属配線120を備える回路基板100を例示した。第4実施形態では、減圧溶射法により形成された下地層とめっき層との積層構造を有する金属配線を備える太陽電池を例示する。
【0133】
図10は、第4実施形態に係る回路基板の側面を示す概略図である。
図10に示す第4実施形態の回路基板100は、
図8に示す第3実施形態の回路基板100と比較して、金属配線120の構成が異なる。第4実施形態の回路基板100の他の構成は、第3実施形態の回路基板100の構成と同様である。
【0134】
金属配線120は、誘電体層110上に順に配置された下地層121とめっき層122との積層構造を有する。
【0135】
下地層121は、後述するように、例えば銅、アルミ、ニッケル、銀、錫等の粒子状の金属材料を用いた減圧溶射法によって形成される。これにより、上述した
図12Aおよび
図12Bの例と同様に、下地層121は、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する。誘電体層110の主面側からみて、下地層121における金属粒子の大きさ(粒子径)は、0.9μm以上500μm以下であり、好ましくは0.9μm以上13μm以下である。
【0136】
また、誘電体層110の主面に沿う下地層121の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、誘電体層110の主面に交差する下地層121の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、誘電体層110の主面に交差する下地層121の断面において、誘電体層110と下地層21の金属粒子との境界には隙間が存在する。
【0137】
めっき層122は、後述するように、例えば銅、アルミ、ニッケル、銀、錫等の金属材料を用いためっき法(電解めっき法または無電解めっき法)によって形成される。これにより、下地層121におけるめっき層122側の一部の金属粒子の粒界の隙間には、めっき層122の一部が埋め込まれている。
【0138】
(第4実施形態の回路基板の製造方法)
次に、
図11A~
図11Dを参照して、第4実施形態に係る回路基板の製造方法について説明する。
図11Aは、第4実施形態に係る回路基板の製造方法における物理剥離樹脂形成工程を示す図であり、
図11Bは、第4実施形態に係る回路基板の製造方法における金属配線の下地層材料膜形成工程を示す図である。
図11Cは、第4実施形態に係る回路基板の製造方法における金属配線の下地層形成工程を示す図であり、
図11Dは、第4実施形態に係る回路基板の製造方法における金属配線のめっき層形成工程を示す図である。
【0139】
まず、上述同様に、
図11Aに示すように、誘電体層110の主面における金属配線120の非形成領域に、物理的に剥離可能な物理剥離樹脂のパターン40を形成する(物理剥離樹脂形成工程)。
【0140】
次に、上述同様に、
図11Bに示すように、誘電体層110の主面の全面に、すなわち誘電体層110および物理剥離樹脂パターン40上にこれらに跨って、金属配線の下地層の材料膜121Zを形成する(金属配線の下地層材料膜形成工程)。例えば、粒子状の金属材料を用いた減圧溶射法を用いて、金属配線の下地層の材料膜121Zを形成する。
【0141】
これにより、上述したように、金属配線120の下地層121は、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する。また、誘電体層110の主面に沿う下地層121の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、誘電体層110の主面に交差する下地層121の断面において、金属粒子の粒界には隙間が存在する。また、誘電体層110の主面に交差する断面において、誘電体層110と下地層121の金属粒子との境界には隙間が存在する。
【0142】
次に、上述同様に、
図11Cに示すように、物理剥離樹脂パターン40を物理的に剥離することによって、物理剥離樹脂パターン40上の金属配線の下地層の材料膜121Zを除去し、金属配線の下地層121を形成する(金属配線の下地層形成工程)。
【0143】
次に、
図11Dに示すように、めっき法(電解めっき法または無電解めっき法)を用いて、下地層121上にめっき層122を形成する(金属配線のめっき層形成工程)。これにより、下地層121におけるめっき層122側の一部の金属粒子の粒界の隙間には、めっき層122の一部が埋め込まれる。
【0144】
以上の工程により、
図10に示す第4実施形態の回路基板100が得られる。
【0145】
以上説明したように、第4実施形態の回路基板の製造方法によれば、粒子状の金属材料を用いた減圧溶射法を用いて、金属配線120の下地層121を形成する。これにより、第4実施形態の回路基板100によれば、金属配線120の下地層121は、金属粒子が連なって堆積した層構造を有する。
【0146】
そのため、金属配線120の下地層121は、ヤング率が低く、柔軟性が高い。したがって、第4実施形態の回路基板100によれば、反りを低減することができる。
【0147】
また、第4実施形態の回路基板の製造方法によれば、金属配線120の下地層121は、ヤング率が低く、柔軟性が高いため、金属配線120の下地層121のパターニングにおいて、物理的に剥離可能な物理剥離樹脂パターン40を用いた機械的なリフトオフ法を用いることができ、回路基板の製造を簡易化することができる。
【0148】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。
【符号の説明】
【0149】
1 太陽電池
7 第1領域
8 第2領域
7b,8b バスバー部
7f,8f フィンガー部
11 半導体基板
13,23,33 パッシベーション層
25 第1導電型半導体層
27 第1電極層
28 第1透明電極層
28Z 透明電極層の材料膜
29 第1金属電極層
29l 第1下地層
29lZ 下地層の材料膜
29u 第1めっき層
35 第2導電型半導体層
37 第2電極層
38 第2透明電極層
39 第2金属電極層
39l 第2下地層
39u 第2めっき層
40 物理剥離樹脂
100 回路基板
110 誘電体層
120 金属配線
120Z 金属配線の材料膜
121 下地層
121Z 下地層の材料膜
122 めっき層