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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135501
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】歯車素材
(51)【国際特許分類】
   B21K 1/30 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B21K1/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046218
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】391037799
【氏名又は名称】株式会社ゴーシュー
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】瀧戸 一晶
(72)【発明者】
【氏名】田崎 賢児
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮
(72)【発明者】
【氏名】津田 卓児
【テーマコード(参考)】
4E087
【Fターム(参考)】
4E087AA10
4E087CA26
4E087CB03
4E087HA02
4E087HA04
(57)【要約】
【課題】小モジュールの2段歯車を冷間鍛造により、低コストで製造することができるようにした歯車素材を提供すること。
【解決手段】2段歯車を製造するための歯車素材であって、冷間鍛造により成形された、外径φ20~30mm、厚さ5~10mmの第一の円柱部1と、それより直径の小さい外径φ20~30mm、厚さ5~10mmの第二の円柱部2と、第一の円柱部1及び第二の円柱部2の外周面に形成されたモジュールが0.2~1.0の歯形31、32と、その両端面に形成された窪み形状の軸穴41、42とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外径φ20~30mm、厚さ5~10mmの第一のリング部と、それより直径の小さい外径φ20~30mm、厚さ5~10mmの第二のリング部とが、中心軸を同一にして一体となり、かつ、第一のリング部及び第二のリング部の外周面に、歯形が形成されてなる2段歯車を製造するための歯車素材であって、前記歯車素材が、冷間鍛造により成形された、外径φ20~30mm、厚さ5~10mmの第一の円柱部と、それより直径の小さい外径φ20~30mm、厚さ5~10mmの第二の円柱部と、第一の円柱部及び第二の円柱部の外周面に形成された歯形とを備えてなることを特徴とする歯車素材。
【請求項2】
前記歯車素材は、その両端面に形成された窪み形状の軸穴を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の歯車素材。
【請求項3】
前記歯形のモジュールが、0.2~1.0であることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯車素材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車素材に関し、特に、小モジュールの2段歯車を製造するための歯車素材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外周面に歯形を形成してなる歯車を成形するに当たっては、ホブ盤、シェービング盤などの切削加工装置による切削加工を繰り返して行うのが一般的である。しかしながら、小モジュール(本明細書において、1.0以下のモジュールを、「小モジュール」という。)になると、ホブ加工用の特殊な工具の製作が必要となるため、通常、ギヤシェーパによる切削加工が用いられるが、この場合、サイクルタイムが長くなり、コスト高になるという問題があった。
【0003】
また、小モジュールの2段歯車を製造する場合、小さい直径(大径)の歯形を加工する際に、工具が、大きい直径(大径)の歯形に干渉するため、ホブ加工が難しく、そこで、異なった直径(大径)の歯形を持つ歯車を別々に製作し、後からすき間嵌めや中間嵌めにより嵌合する方法が採用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
一方、最近、歯車の製造工程の合理化を図るために、粗加工に冷間鍛造方法を採用することが試みられている。冷間鍛造により歯車を成形するには、ダイスの内部に素材を配置し、その軸方向の両側からパンチとダイスリーブにより加圧する。そして、ダイスの内部に形成した成形面の形状を素材の外周面に転写して歯車の成形を行う方法が採用されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
しかしながら、小モジュールの2段歯車を同時に成形しようとすると、モジュールが大きい歯車を成形する場合に比べて、成形金型内に材料が充満しやすく、これにより、材料が軸方向に流れるため、歯面にキズが発生したり、分割面にバリが発生したりすることが多いという問題があった。
さらに、2段歯車の1段のみを冷間鍛造で成形する場合は、大きい直径(大径)の歯形の成形に限られ、小さい直径(大径)の歯形はギヤシェーパなどの加工方法で加工する必要があり、著しく生産性が低下し、コスト高になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-162036号公報
【特許文献2】特開平5-154598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、小モジュールの2段歯車の成形に係る従来の問題点に鑑みてなされたもので、小モジュールの2段歯車を冷間鍛造により、低コストで製造することができるようにした歯車素材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の歯車素材は、外径φ20~30mm、厚さ5~10mmの第一のリング部と、それより直径の小さい外径φ20~30mm、厚さ5~10mmの第二のリング部とが、中心軸を同一にして一体となり、かつ、第一のリング部及び第二のリング部の外周面に、歯形が形成されてなる2段歯車を製造するための歯車素材であ
って、前記歯車素材が、冷間鍛造により成形された、外径φ20~30mm、厚さ5~10mmの第一の円柱部と、それより直径の小さい外径φ20~30mm、厚さ5~10mmの第二の円柱部と、第一の円柱部及び第二の円柱部の外周面に形成された歯形とを備えてなることを特徴とする。
【0009】
この場合において、前記歯車素材は、その両端面に形成された窪み形状の軸穴を備えてなることができる。
【0010】
また、前記歯形のモジュールが、0.2~1.0であることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の歯車素材によれば、2段歯車のための歯車素材を、一工程の冷間鍛造により製造することができ、小モジュールの2段歯車を低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の歯車素材の製造に用いるビレットの一例を示す説明図である。
図2】本発明の歯車素材の製造工程の説明図である。
図3】本発明の歯車素材の製造工程の説明図である。
図4】本発明の歯車素材の製造工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の歯車素材の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0014】
図1に、本発明の歯車素材に用いるビレットの一例を示す。
歯車素材Mは、歯車素材外径φ20~30mm、厚さ5~10mmの第一のリング部と、それより直径の小さい外径φ20~30mm、厚さ5~10mmの第二のリング部とが、中心軸を同一にして一体となり、かつ、第一のリング部及び第二のリング部の外周面に、スパー又はヘリカル歯形が形成されてなる2段歯車を製造するための歯車素材Mであって、冷間鍛造により成形された、外径φ20~30mm、厚さ5~10mmの第一の円柱部1と、それより直径の小さい外径φ20~30mm、厚さ5~10mmの第二の円柱部2と、第一の円柱部1及び第二の円柱部2の外周面に形成されたモジュールが0.2~1.0のスパー又はヘリカル歯形31、32と、その両端面に形成された窪み形状の軸穴41、42とを備えてなるようにしている。
【0015】
この歯車素材Mは、例えば、第一の円柱部1は、厚さH1:5.8mm、第一の円柱部1に形成された歯形31は、大径D11:φ24.5mm、小径D12:φ23.0mm、歯数:79、モジュール:0.3、第一の円柱部1の端面に形成された窪み形状の軸穴41は、径D41:φ11.0mm、深さH41:1.5mmであり、第二の円柱部2は、厚さH2:6.7mm、第二の円柱部2に形成された歯形32は、大径D21:φ23.3mm、小径D22:φ21.5mm、歯数:74、モジュール:0.3、第二の円柱部2の端面に形成された窪み形状の軸穴42は、径D42:φ11.0mm、深さH42:3.5mmである。
【0016】
歯車素材Mは、歯形31、32に生成したバリを切除したり、軸穴41、42を貫通させたりする等の適宜の簡易な機械加工を施すことで、歯車素材外径φ20~30mm、厚さ5~10mmの第一のリング部と、それより直径の小さい外径φ20~30mm、厚さ5~10mmの第二のリング部とが、中心軸を同一にして一体となり、かつ、第一のリング部及び第二のリング部の外周面に、スパー又はヘリカル歯形が形成されてなる2段歯車を製造することができる。
【0017】
歯車素材Mを製造するために用いるビレットBは、歯車素材Mの第二の円柱部2の歯形32の小径D22よりも小さい直径Dを有する円柱形状のビレットBを用いるようにしている。
【0018】
このビレットBは、例えば、直径D:φ21.7mm、高さH:14.0mmの円柱形状である。
【0019】
図2に、この歯車素材Mの製造工程の第一の例を示す。
図2(a)に示すように、円柱形状のビレットBを中央に挿入して、冷間鍛造により成形を行う成形金型は、ビレットBの軸方向における一方の端面である第一の端面11を加圧するためのパンチ加圧面を有するパンチ200と、ビレットBの外周面に歯形31を形成するための外周成形面を有する第一のダイス100と、ビレットBの外周面に歯形32を形成するための外周成形面を有する第二のダイス300と、ビレットBの軸方向における他方の端面である第二の端面12を加圧するための対向加圧面を有するインサート402及びインサート402の中心に配置したダイピン401とを備えている。
【0020】
ここで、ビレットBの直径Dは、歯車素材Mの第二の円柱部2の歯形32の小径D22よりも小さい直径D、すなわち、第二のダイス300の小径よりも小さい直径を有する円柱形状のビレットBを用いるようにする。
これにより、成形初期において、歯形との干渉による歯面のキズや歯車の段差部分のキズの発生を防止することができる(以下の実施例でも同様。)。
【0021】
この場合、予め冷間鍛造の成形開始時の成形金型内のビレットBの位置を調整するとともに、必要に応じて、パンチ200の直径及び突起形状、ダイピン401の突起形状等を適宜設定することで、図2(b)に示すように、冷間鍛造時の歯形31、32の成形中に、第一の円柱部1と第二の円柱部2との境界域における軸方向の材料の流れを無くす、すなわち、第一のダイス100と第二のダイス300の間で、材料が流動せず、径方向に張り出す成形のみが行われるようにする。
【0022】
本実施例の成形金型は、冷間鍛造の成形時は、ダイピン401及びインサート402は移動せず、パンチ200のみが下降するシンプルな構造としている。
【0023】
成形後、パンチ200は上昇し、その後、ダイピン401が上昇して、図2(c)に示す歯車素材Mが成形金型内から排出される。
【0024】
ここで、パンチ200の突起形状及び(/又は)ダイピン401の突起形状を無くすことで、図2(d)に示す、端面に窪み形状の軸穴41、42とを備えない、端面が平面形状の歯車素材Mを成形することができる(以下の実施例でも同様。)。
【0025】
図3に、この歯車素材Mの製造工程の第二の例を示す。
図3(a)に示すように、円柱形状のビレットBを中央に挿入して、冷間鍛造により成形を行う成形金型は、ビレットBを中央に挿入するようにし、ビレットBの外周面に歯形32を形成するための外周成形面を有する下ダイス301と、下降することで下ダイス301とで閉塞状態を作るようにし、ビレットBの外周面に歯形31を形成するための外周成形面を有する上ダイス101と、ビレットBの軸方向における一方の端面である第一の端面11を加圧するためのパンチ加圧面を有するパンチ201と、ビレットBの軸方向における他方の端面である第二の端面12を加圧するための対向加圧面を有するインサート404及びインサート404の中心に配置したダイピン403とを備えている。
【0026】
この場合、予め冷間鍛造の成形開始時の成形金型内のビレットBの位置を調整するとと
もに、必要に応じて、パンチ201の直径及び突起形状、ダイピン403の突起形状等を適宜設定することで、図3(b)~(c)に示すように、冷間鍛造時の歯形31、32の成形中に、第一の円柱部1と第二の円柱部2との境界域における軸方向の材料の流れを無くす、すなわち、上ダイス101と下ダイス301の間で、材料が流動せず、径方向に張り出す成形のみが行われるようにする。
【0027】
本実施例の成形金型は、冷間鍛造の成形時は、図3(a)~(b)に示すように、下ダイス301、ダイピン403及びインサート404は移動せず、上ダイス101が先に下降して閉塞状態を作った後、図3(b)~(c)に示すように、パンチ201が下降する構造としている。
【0028】
成形後、パンチ201は、歯車素材Mを上ダイス101から押し出しながら上ダイス101と共に上昇し、その後、ダイピン403が上昇して、図3(d)に示す、例えば、ヘリカル歯形を備えた歯車素材Mが成形金型内から排出される。
【0029】
図4に、この歯車素材Mの製造工程の第三の例を示す。
本実施例は、歯車素材Mの歯形31、32の歯先を構成する材料の充満が不足する場合に、成形金型を一連の工程の中で部分的に動かして、材料を充満させることができるようにしたものである。
図4(a)に示すように、円柱形状のビレットBを中央に挿入して、冷間鍛造により成形を行う成形金型は、ビレットBの軸方向における一方の端面である第一の端面11を加圧するためのパンチ加圧面を有するパンチスリーブ202と、パンチスリーブ202の中心に配置したパンチピン203と、ビレットBの外周面に歯形31を形成するための外周成形面を有する第一のダイス103と、ビレットBの外周面に歯形32を形成するための外周成形面を有する第二のダイス303と、ビレットBの軸方向における他方の端面である第二の端面12を加圧するための対向加圧面を有するダイスリーブ406及びダイスリーブ406の中心に配置したダイピン405とを備えている。
【0030】
この場合、予め冷間鍛造の成形開始時の成形金型内のビレットBの位置を調整するとともに、必要に応じて、パンチピン203の突起形状や挿入深さ、ダイピン405の突起形状や挿入深さ等を適宜設定することで、図4(b)に示すように、冷間鍛造時の歯形31、32の成形中に、第一の円柱部1と第二の円柱部2との境界域における軸方向の材料の流れを無くす、すなわち、第一のダイス103と第二のダイス303の間で、材料が流動せず、径方向に張り出す成形のみが行われるようにする。
そして、歯車素材Mの歯形31、32の歯先を構成する材料が充満しない場合は、分流鍛造の原理を適用し、図4(c)に示すように、成形途中で、パンチピン203及び/又はダイピン405を動かし、材料の無い空間を作ることにより、その空間に材料が流動し、歯車素材Mの歯形31、32の歯先を構成する材料を充満させることができる。
【0031】
成形後、パンチスリーブ202及びパンチピン203は上昇し、その後、ダイスリーブ406が上昇して、図4(d)に示す、歯車素材Mが成形金型内から排出される。
【0032】
以上、本発明の歯車素材について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の歯車素材は、小モジュールの2段歯車を冷間鍛造により、低コストで製造することができることから、小モジュールの2段歯車を製造する用途に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0034】
B ビレット
M 歯車素材
1 第一の円柱部
2 第二の円柱部
31 歯形
32 歯形
41 軸穴
42 軸穴
図1
図2
図3
図4