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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135505
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】運動マネージャ、及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B60T7/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046223
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519373914
【氏名又は名称】株式会社J-QuAD DYNAMICS
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】二宮 和生
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 雅信
(72)【発明者】
【氏名】口ノ町 敦史
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246BA02
3D246BA08
3D246DA02
3D246GB15
3D246GC16
3D246HA58A
3D246HA94A
3D246HA95A
3D246HB07B
3D246JB11
3D246JB12
3D246JB41
3D246LA13Z
(57)【要約】
【課題】パーキングブレーキがオン状態に切り替わり終わる前に停止保持要求がなくなっても車両の停止状態を保持する。
【解決手段】運動マネージャは、受付部、及び出力部を備えている。受付部は、アプリケーションソフトウェアからの運動要求の1つとして、車両の停止状態を保持する停止保持要求を受け付ける。出力部は、受付部が停止保持要求を受け付けたことを条件に、油圧ブレーキをオン状態にするための指示値を当該油圧ブレーキに出力する。また、出力部は、パーキングブレーキに対して当該パーキングブレーキをオン状態にするための指示値を出力する場合、当該指示値の出力を開始して以降、パーキングブレーキがオン状態に切り替わり終わるまでは、停止保持要求の有無に拘わらず、パーキングブレーキへの指示値の出力を継続する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アプリケーションソフトウェアからの運動要求の1つとして、車両の停止状態を保持する停止保持要求を受け付ける受付部と、
前記受付部が前記停止保持要求を受け付けたことを条件に、油圧ブレーキをオン状態にするための指示値を当該油圧ブレーキに出力する出力部と、
を備え、
前記出力部は、パーキングブレーキに対して当該パーキングブレーキをオン状態にするための指示値を出力する場合、当該指示値の出力を開始して以降、前記パーキングブレーキがオン状態に切り替わり終わるまでは、前記停止保持要求の有無に拘わらず、前記パーキングブレーキへの指示値の出力を継続することを実行する
運動マネージャ。
【請求項2】
前記出力部は、
前記受付部が前記停止保持要求を受け付けていること、且つ、前記停止状態の継続を許可する条件として予め定められた停止継続条件を満たしていることを条件に、前記パーキングブレーキに対して当該パーキングブレーキをオン状態にするための指示値を出力することと、
前記受付部が前記停止保持要求を受け付けていること、且つ、前記停止継続条件を満たしていないことを条件に、前記パーキングブレーキに対して当該パーキングブレーキをオン状態にするための指示値を出力せずに、前記油圧ブレーキに対して当該油圧ブレーキをオフ状態にするための指示値を出力することと、
を実行する
請求項1に記載の運動マネージャ。
【請求項3】
前記停止継続条件は、前記車両が位置する路面の勾配が予め定められた規定勾配未満のであることを含む
請求項2に記載の運動マネージャ。
【請求項4】
前記受付部が前記停止保持要求を受け付けていること、且つ、前記パーキングブレーキのオン状態への切り替えを許可する条件として予め定められた切り替え条件を満たしていることを条件に、前記パーキングブレーキに対して当該パーキングブレーキをオン状態にするための指示値を出力することと、
前記受付部が前記停止保持要求を受け付けていること、且つ、前記切り替え条件を満たしていないことを条件に、前記パーキングブレーキに対して当該パーキングブレーキをオン状態にするための指示値を出力せずに、前記油圧ブレーキに対して当該油圧ブレーキをオン状態にするための指示値の出力を継続することと、
を実行する
請求項1に記載の運動マネージャ。
【請求項5】
前記切り替え条件は、前記車両の運転者が降車しようとしたことを含む
請求項4に記載の運動マネージャ。
【請求項6】
情報処理装置が、
アプリケーションソフトウェアからの運動要求の1つとして、車両の停止状態を保持する停止保持要求を受け付けることと、
前記停止保持要求を受け付けたことを条件に、油圧ブレーキをオン状態にするための指示値を当該油圧ブレーキに出力することと、
を実行可能であり、
前記情報処理装置が、
パーキングブレーキに対して当該パーキングブレーキをオン状態にするための指示値を出力する場合、当該指示値の出力を開始して以降、前記パーキングブレーキがオン状態に切り替わり終わるまでは、前記停止保持要求の有無に拘わらず、前記パーキングブレーキへの指示値の出力を継続すること、
を実行する
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動マネージャ、及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の車両は、運動マネージャ、油圧ブレーキ、及び電動パーキングブレーキを備えている。運動マネージャは、アプリケーションソフトウェアからの運動要求の1つとして、車両の停止状態を保持する停止保持要求を受け付ける。また、運動マネージャは、停止保持要求に基づいて、油圧ブレーキ及び電動パーキングブレーキを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-127419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような運動マネージャは、一般的に、停止保持要求を受け付けたことを条件に、油圧ブレーキをオン状態にするための指示値を当該油圧ブレーキに出力する。ここで、何らかの原因、例えば運転者が降車しようとした場合には、停止状態の保持を実現する装置を、油圧ブレーキから電動パーキングブレーキへと途中で切り替えることが好ましい。この場合、油圧ブレーキから電動パーキングブレーキへの切り替えが完了する前に、停止保持要求が途中で途絶えることがあり得る。停止保持要求が途中で途絶えると、電動パーキングブレーキによる停止状態の保持が不要なものとして取り扱われることで、電動パーキングブレーキによる車両の停止状態の保持を実現できないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための運動マネージャは、アプリケーションソフトウェアからの運動要求の1つとして、車両の停止状態を保持する停止保持要求を受け付ける受付部と、前記受付部が前記停止保持要求を受け付けたことを条件に、油圧ブレーキをオン状態にするための指示値を当該油圧ブレーキに出力する出力部と、を備え、前記出力部は、パーキングブレーキに対して当該パーキングブレーキをオン状態にするための指示値を出力する場合、当該指示値の出力を開始して以降、前記パーキングブレーキがオン状態に切り替わり終わるまでは、前記停止保持要求の有無に拘わらず、前記パーキングブレーキへの指示値の出力を継続することを実行する。
【0006】
上記課題を解決するための情報処理方法は、情報処理装置が、アプリケーションソフトウェアからの運動要求の1つとして、車両の停止状態を保持する停止保持要求を受け付けることと、前記停止保持要求を受け付けたことを条件に、油圧ブレーキをオン状態にするための指示値を当該油圧ブレーキに出力することと、を実行可能であり、前記情報処理装置が、パーキングブレーキに対して当該パーキングブレーキをオン状態にするための指示値を出力する場合、当該指示値の出力を開始して以降、前記パーキングブレーキがオン状態に切り替わり終わるまでは、前記停止保持要求の有無に拘わらず、前記パーキングブレーキへの指示値の出力を継続すること、を実行する。
【発明の効果】
【0007】
上記構成によれば、パーキングブレーキがオン状態に切り替わり終わる前に停止保持要求がなくなっても、パーキングブレーキがオン状態になることで車両の停止状態を保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両の概略構成図である。
図2】運動マネージャの基本構成を示す機能ブロック図である。
図3】ブレーキ切り替え制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<車両の概略構成>
以下、本発明の一実施形態を図1図3にしたがって説明する。先ず、車両100の概略構成について説明する。
【0010】
図1に示すように、車両100は、パワートレイン装置71、ステアリング装置72、及びブレーキシステム73を備えている。
パワートレイン装置71は、エンジン及びトランスミッション等を含んでいる。エンジンは、トランスミッションを介して車両100の駆動輪へと駆動力を付与可能である。ステアリング装置72の一例は、ラック&ピニオン式の電動ステアリング装置である。ステアリング装置72は、図示しないラック及びピニオンを制御することにより、車両100の操舵輪の向きを変更可能である。
【0011】
ブレーキシステム73は、車両100の制動力を発生させる。ブレーキシステム73は、油圧ブレーキ73A、及びパーキングブレーキ73Bを含んでいる。ここで、油圧ブレーキ73Aは、油圧を調整することで車両100の制動力を制御する装置である。油圧ブレーキ73Aの一例は、ディスクブレーキである。また、パーキングブレーキ73Bは、電機モータを動作させることによりパッドをディスクロータに押し付けた状態にして車両100の停止状態を保持する装置、いわゆる電動パーキングブレーキである。
【0012】
図1に示すように、車両100は、セントラルECU10、パワートレインECU20、ステアリングECU30、ブレーキECU40、及び先進運転支援ECU50を備えている。また、車両100は、第1外部バス61、第2外部バス62、第3外部バス63、及び第4外部バス64を備えている。なお、「ECU」は、Electronic Control Unitの略称である。
【0013】
セントラルECU10は、車両100の全体を統括して制御する。セントラルECU10は、CPU11、及び記憶装置12を備えている。記憶装置12は、各種のプログラム及び各種のデータを予め記憶している。なお、記憶装置12は、ROM、RAM、及びストレージを含んでいる。CPU11は、記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することにより、各種の処理を実現する。
【0014】
パワートレインECU20は、第1外部バス61を介してセントラルECU10と通信可能である。パワートレインECU20は、パワートレイン装置71に制御信号を出力することにより、パワートレイン装置71を制御する。パワートレインECU20は、CPU21、及び記憶装置22を備えている。記憶装置22は、各種のプログラム及び各種のデータを予め記憶している。また、記憶装置22は、各種のプログラムの一つとして、パワートレインアプリ23Aを予め記憶している。パワートレインアプリ23Aは、パワートレイン装置71を制御するためのアプリケーションソフトウェアである。なお、記憶装置22は、ROM、RAM、及びストレージを含んでいる。CPU21は、記憶装置22に記憶されたパワートレインアプリ23Aを実行することにより、後述するパワートレイン制御部23としての機能を実現する。
【0015】
ステアリングECU30は、第2外部バス62を介してセントラルECU10と通信可能である。ステアリングECU30は、ステアリング装置72に制御信号を出力することにより、ステアリング装置72を制御する。ステアリングECU30は、CPU31、及び記憶装置32を備えている。記憶装置32は、各種のプログラム及び各種のデータを予め記憶している。また、記憶装置32は、各種のプログラムの一つとして、ステアリングアプリ33Aを予め記憶している。ステアリングアプリ33Aは、ステアリング装置72を制御するためのアプリケーションソフトウェアである。なお、記憶装置32は、ROM、RAM、及びストレージを含んでいる。CPU31は、記憶装置32に記憶されたステアリングアプリ33Aを実行することにより、後述するステアリング制御部33としての機能を実現する。
【0016】
ブレーキECU40は、第3外部バス63を介してセントラルECU10と通信可能である。ブレーキECU40は、ブレーキシステム73に制御信号を出力することにより、ブレーキシステム73を制御する。ブレーキECU40は、CPU41、及び記憶装置42を備えている。記憶装置42は、各種のプログラム及び各種のデータを予め記憶している。また、記憶装置42は、各種のプログラムの一つとして、ブレーキアプリ43Aを予め記憶している。ブレーキアプリ43Aは、ブレーキシステム73を制御するためのアプリケーションソフトウェアである。さらに、記憶装置42は、各種のプログラムの一つとして、運動マネージャアプリ45Aを予め記憶している。運動マネージャアプリ45Aは、複数の運動要求を調停するためのアプリケーションソフトウェアである。なお、記憶装置42は、ROM、RAM、及びストレージを含んでいる。CPU41は、記憶装置42に記憶されたブレーキアプリ43Aを実行することにより、後述するブレーキ制御部43としての機能を実現する。また、CPU41は、記憶装置42に記憶された運動マネージャアプリ45Aを実行することにより、後述する運動マネージャ45としての機能を実現する。換言すると、CPU41は、記憶装置42に記憶された運動マネージャアプリ45Aを実行することにより、情報処理方法における各種の処理を実行する。なお、ブレーキECU40は、情報処理装置の一例である。
【0017】
先進運転支援ECU50は、第4外部バス64を介してセントラルECU10と通信可能である。先進運転支援ECU50は、各種の運転支援を実行する。先進運転支援ECU50は、CPU51、及び記憶装置52を備えている。記憶装置52は、各種のプログラム及び各種のデータを予め記憶している。各種のプログラムは、第1支援アプリ56A、第2支援アプリ57A、及び第3支援アプリ58Aを含んでいる。第1支援アプリ56Aの一例は、車両100への衝突の被害を軽減させるために自動的に制動をかける衝突被害軽減ブレーキ、いわゆるAEB(Autonomous Emergency Braking)用のアプリケーションソフトウェアである。第2支援アプリ57Aの一例は、車両100が走行している車線の維持を行う車線維持支援、いわゆるLKA(Lane Keeping Assist)用のアプリケーションソフトウェアである。第3支援アプリ58Aの一例は、車両100の前方を走行する前走車両との車間距離を一定に保ちながら追従走行、いわゆるACC(Adaptive Cruise Control)用のアプリケーションソフトウェアである。本実施形態において、第1支援アプリ56A、第2支援アプリ57A、及び第3支援アプリ58Aのそれぞれは、車両100の運転支援機能を実現するアプリケーションソフトウェアである。なお、記憶装置52は、ROM、RAM、及びストレージを含んでいる。CPU51は、記憶装置52に記憶された第1支援アプリ56Aを実行することにより、後述する第1支援部56としての機能を実現する。また、CPU51は、記憶装置52に記憶された第2支援アプリ57Aを実行することにより、後述する第2支援部57としての機能を実現する。CPU51は、記憶装置52に記憶された第3支援アプリ58Aを実行することにより、後述する第3支援部58としての機能を実現する。
【0018】
図1に示すように、車両100は、加速度センサ81、及び複数のシートベルトスイッチ82を備えている。加速度センサ81は、いわゆる三軸センサである。すなわち、加速度センサ81は、前後加速度GX、左右加速度GY、及び上下加速度GZを検出可能である。前後加速度GXは、車両100の前後軸に沿う加速度である。左右加速度GYは、車両100の左右軸に沿う加速度である。上下加速度GZは、車両100の上下軸に沿う加速度である。シートベルトスイッチ82は、シートベルトの装着状態を示す装着信号SWを検出する。本実施形態において、シードベルトが装着されている場合、装着信号SWはオン信号である。また、シードベルトが装着されていない場合、装着信号SWはオフ信号である。本実施形態において、車両100は、当該車両100が備える複数のシートベルトに対応して複数のシートベルトスイッチ82を備えている。なお、図1では、1つのシートベルトスイッチ82のみを代表して図示している。
【0019】
ブレーキECU40は、加速度センサ81、及びシートベルトスイッチ82から各種の信号を取得する。また、ブレーキECU40は、予め定められた制御周期毎に、前後加速度GX、左右加速度GY、及び上下加速度GZに基づいて、車両100が位置する路面の勾配である路面勾配ARを算出する。
【0020】
<運動マネージャに関する基本構成>
次に、図2を参照して、運動マネージャ45に関する基本的な構成を説明する。図2に示すように、運動マネージャ45は、第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58と互いに通信可能である。また、運動マネージャ45は、パワートレイン制御部23、ステアリング制御部33、及びブレーキ制御部43と互いに通信可能である。
【0021】
第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58は、各種の制御を実行するにあたって、運動マネージャ45に対して運動要求を出力する。このとき、第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58は、例えば各種の制御が必要になってからその制御が必要でなくなるまで運動要求の出力を継続する。ここで、運動要求は、車両100の前後方向の加速度を制御するための加速度要求値、及び車両100の停止状態を保持するための停止保持要求RS等を含んでいる。
【0022】
図2に示すように、運動マネージャ45は、受付部46、及び出力部48を備えている。運動マネージャ45の受付部46は、第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58からの運動要求を受け付ける。本実施形態において、第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58からの運動要求を受け付けることは、アプリケーションソフトウェアから運動要求を受け付けることに相当する。また、運動マネージャ45の出力部48は、受付部46が受け付けた運動要求を調停する。例えば、受付部46が各支援部から加速度要求値を受け付けたときには、出力部48は、最も小さい加速度要求値を調停結果として選択する。また、受付部46がいずれかの支援部から停止保持要求RSを受け付けたときには、出力部48は、他の運動要求に拘わらず、当該停止保持要求RSを調停結果として選択する。そして、運動マネージャ45の出力部48は、調停結果に基づいて、各種のアクチュエータを制御するための動作要求の指示値を生成する。ここで、各種のアクチュエータは、パワートレイン装置71、ステアリング装置72、及びブレーキシステム73等である。例えばパワートレイン装置71を制御させる場合、運動マネージャ45の出力部48は、パワートレイン制御部23に対して動作要求の指示値を出力する。そして、パワートレイン制御部23は、動作要求の指示値に基づいて、パワートレイン装置71に制御信号を出力する。このように、出力部48が出力した指示値は、制御しようとするアクチュエータに対応する制御部に受信され、当該制御部によりアクチュエータが制御される。ここで、出力部48が調停結果として停止保持要求RSを選択した場合、出力部48は、先ず、油圧ブレーキ73Aをオン状態にするための指示値を、ブレーキ制御部43を介して油圧ブレーキ73Aに出力する。
【0023】
<ブレーキ切り替え制御>
次に、図3を参照して、運動マネージャ45の出力部48が実行するブレーキ切り替え制御について説明する。出力部48は、受付部46が停止保持要求RSを受け付けていることを条件に、ブレーキ切り替え制御を繰り返し実行する。
【0024】
図3に示すように、運動マネージャ45の出力部48は、ブレーキ切り替え制御を開始すると、ステップS11の処理を実行する。ステップS11において、出力部48は、予め定められた前提条件を満たしているか否かを判定する。ここで、前提条件の一例は、油圧ブレーキ73Aがオン状態であり、且つ、パーキングブレーキ73Bがオフ状態であるという条件である。ステップS11において、前提条件を満たしていないと出力部48が判定した場合(S11:NO)、出力部48は、今回のブレーキ切り替え制御を終了する。そして、出力部48は、再び処理をステップS11に進める。一方、ステップS11において、前提条件を満たしていると出力部48が判定した場合(S11:YES)、出力部48は、処理をステップS12に進める。
【0025】
ステップS12において、出力部48は、車両100の停止状態の継続を許可する条件として予め定められた停止継続条件を満たしているか否かを判定する。ここで、停止継続条件の一例は、路面勾配ARが予め定められた規定勾配未満であることである。したがって、例えば、車両100が水平な路面に位置していたり、車両100が緩やかな傾斜の路面に位置していたりする場合に、停止継続条件が満たされる。ステップS12において、停止継続条件を満たしていると出力部48が判定した場合(S12:YES)、出力部48は、処理をステップS13に進める。換言すると、出力部48は、受付部46が停止保持要求RSを受け付けていること、且つ、停止継続条件を満たしていることを条件に、処理をステップS13に進める。
【0026】
ステップS13において、出力部48は、パーキングブレーキ73Bのオフ状態からオン状態への切り替えを許可する条件として予め定められた切り替え条件を満たしているか否かを判定する。本実施形態において、切り替え条件は、車両100の運転者が降車しようとしたことである。例えば、出力部48は、車両100の運転席に対応する装着信号SWがオン信号からオフ信号になった場合に、車両100の運転者が降車しようとしたと判定する。ステップS13において、切り替え条件を満たしていないと出力部48が判定した場合(S13:NO)、出力部48は、今回のブレーキ切り替え制御を終了する。そして、出力部48は、再び処理をステップS11に進める。
【0027】
ところで、ステップS13の処理は、ステップS11において前提条件が満たされた場合に実行される。そのため、ステップS13の処理を実行する時点では、油圧ブレーキ73Aはオン状態である。そして、ステップS13において否定判定される場合、出力部48は、油圧ブレーキ73Aをオン状態にするための指示値を、ブレーキ制御部43を介して油圧ブレーキ73Aに出力し続ける。換言すると、出力部48は、受付部46が停止保持要求RSを受け付けていること、且つ、切り替え条件を満たしていないことを条件に、パーキングブレーキ73Bに対して当該パーキングブレーキ73Bをオン状態にするための指示値を出力せずに、油圧ブレーキ73Aに対して当該油圧ブレーキ73Aをオン状態にするための指示値の出力を継続する。
【0028】
一方、ステップS13において、切り替え条件を満たしていると出力部48が判定した場合(S13:YES)、出力部48は、処理をステップS21に進める。換言すると、出力部48は、受付部46が停止保持要求RSを受け付けていること、且つ、切り替え条件を満たしていることを条件に、処理をステップS21に進める。
【0029】
ステップS21において、出力部48は、パーキングブレーキ73Bをオン状態にするための指示値を、ブレーキ制御部43を介してパーキングブレーキ73Bに出力する。ここで、出力部48は、ステップS21の処理時点から後述するステップS23の処理時点まで、停止保持要求RSの有無に拘わらず、パーキングブレーキ73Bをオン状態にするための指示値の出力を継続する。ステップS21の後、出力部48は、処理をステップS22に進める。
【0030】
ステップS22において、出力部48は、パーキングブレーキ73Bのオフ状態からオン状態への切り替えが完了しているか否かを判定する。例えば、出力部48は、パーキングブレーキ73Bから出力された当該パーキングブレーキ73Bの状態を示す信号である状態信号に基づいて、パーキングブレーキ73Bのオフ状態からオン状態への切り替えが完了しているか否かを判定する。ここで、状態信号は、パーキングブレーキ73Bがオン状態であることを示す信号、パーキングブレーキ73Bがオフ状態であることを示す信号、及びパーキングブレーキ73Bの状態が遷移中であることを示す信号を含んでいる。したがって、出力部48は、状態信号としてパーキングブレーキ73Bがオン状態であることを示す信号を受信している場合に、パーキングブレーキ73Bのオフ状態からオン状態への切り替えが完了していると判定する。ステップS22において、パーキングブレーキ73Bのオフ状態からオン状態への切り替えが完了していないと出力部48が判定した場合(S22:NO)、出力部48は、再び処理をステップS22に進める。一方、ステップS22において、パーキングブレーキ73Bのオフ状態からオン状態への切り替えが完了していると出力部48が判定した場合(S22:YES)、出力部48は、処理をステップS23に進める。
【0031】
ステップS23において、出力部48は、パーキングブレーキ73Bをオン状態にするための指示値の出力を終了する。したがって、出力部48は、パーキングブレーキ73Bに対して当該パーキングブレーキ73Bをオン状態にするための指示値を出力する場合、当該指示値の出力を開始して以降、パーキングブレーキ73Bがオン状態に切り替わり終わるまでは、停止保持要求RSの有無に拘わらず、パーキングブレーキ73Bへの指示値の出力を継続する。ステップS23の後、出力部48は、処理をステップS24に進める。
【0032】
ステップS24において、出力部48は、油圧ブレーキ73Aをオフ状態にするための指示値を、ブレーキ制御部43を介して油圧ブレーキ73Aに出力する。ステップS24の後、出力部48は、今回のブレーキ切り替え制御を終了する。
【0033】
一方、上述したステップS12において、停止継続条件を満たしていないと出力部48が判定した場合(S12:NO)、出力部48は、処理をステップS31に進める。換言すると、出力部48は、受付部46が停止保持要求RSを受け付けていること、且つ、停止継続条件を満たしていないことを条件に、処理をステップS31に進める。
【0034】
ステップS31において、出力部48は、油圧ブレーキ73Aをオフ状態にするための指示値を、ブレーキ制御部43を介して油圧ブレーキ73Aに出力する。換言すると、出力部48は、パーキングブレーキ73Bに対して当該パーキングブレーキ73Bをオン状態にするための指示値を出力せずに、油圧ブレーキ73Aに対して当該油圧ブレーキ73Aをオフ状態にするための指示値を出力する。ステップS31の後、出力部48は、今回のブレーキ切り替え制御を終了する。
【0035】
<本実施形態の作用>
例えば、受付部46が第1支援部56から停止保持要求RSを受け付けたことにより、当該停止保持要求RSが調停結果として選択されたとする。この場合、出力部48は、先ず、油圧ブレーキ73Aをオン状態にするための指示値を、ブレーキ制御部43を介して油圧ブレーキ73Aに出力する。すると、油圧ブレーキ73Aによる車両100の停止状態の保持が実現される。さらに、図3に示すように、車両100では、受付部46が停止保持要求RSを受け付けていることを条件に、ブレーキ切り替え制御が実行される。そして、ステップS11の前提条件、ステップS12の停止継続条件、及びステップS13の切り替え条件の全てが満たされたものとする。この場合、ステップS21において、出力部48は、パーキングブレーキ73Bをオン状態にするための指示値を、ブレーキ制御部43を介してパーキングブレーキ73Bに出力する。ここで、パーキングブレーキ73Bのオフ状態からオン状態への切り替えが完了するまでには、ある程度の時間を要する。仮に、パーキングブレーキ73Bがオン状態になる前に停止保持要求RSが途絶えたとする。このとき、停止保持要求RSが途絶えたことに伴いパーキングブレーキ73Bへの指示値の出力が失われると、パーキングブレーキ73Bが動作を停止する。つまり、オン状態になっているはずのパーキングブレーキ73Bが、オフ状態のままになってしまう。この点、パーキングブレーキ73Bをオン状態にするための指示値を出力して以降、パーキングブレーキ73Bがオン状態に切り替わり終わるまでは、停止保持要求RSの有無に拘わらず、出力部48がパーキングブレーキ73Bへの指示値の出力を継続する。
【0036】
<本実施形態の効果>
(1)本実施形態によれば、パーキングブレーキ73Bのオフ状態からオン状態への切り替わりが完了する前に停止保持要求RSがなくなっても、出力部48によりパーキングブレーキ73Bをオン状態にするための指示値が出力され続ける。これにより、パーキングブレーキ73Bのオフ状態からオン状態への切り替わりが完了する前に停止保持要求RSがなくなっても、パーキングブレーキ73Bがオン状態になることで車両100の停止状態を保持できる。
【0037】
(2)本実施形態において、出力部48は、受付部46が停止保持要求RSを受け付けていること、且つ、切り替え条件を満たしていないことを条件に、パーキングブレーキ73Bに対して当該パーキングブレーキ73Bをオン状態にするための指示値を出力せずに、油圧ブレーキ73Aに対して当該油圧ブレーキ73Aをオン状態にするための指示値を出力する。一方、出力部48は、受付部46が停止保持要求RSを受け付けていること、且つ、切り替え条件を満たしていることを条件に、パーキングブレーキ73Bに対して当該パーキングブレーキ73Bをオン状態にするための指示値を出力する。これにより、例えば受付部46が停止保持要求RSを受け付けていることのみを条件にパーキングブレーキ73Bをオン状態にするための指示値を出力する構成に比べて、パーキングブレーキ73Bが無用にオン状態になることは抑制できる。
【0038】
(3)本実施形態において、切り替え条件は、車両100の運転者が降車しようとしたことである。これにより、車両100の運転者が降車しようとしたという、パーキングブレーキ73Bをオン状態にする必要性が高い状況において、パーキングブレーキ73Bをオン状態にできる。
【0039】
(4)本実施形態において、出力部48は、受付部46が停止保持要求RSを受け付けていること、且つ、停止継続条件を満たしていることを条件に、パーキングブレーキ73Bに対して当該パーキングブレーキ73Bをオン状態にするための指示値を出力する。一方、出力部48は、受付部46が停止保持要求RSを受け付けていること、且つ、停止継続条件を満たしていないことを条件に、出力部48は、パーキングブレーキ73Bに対して当該パーキングブレーキ73Bをオン状態にするための指示値を出力せずに、油圧ブレーキ73Aに対して当該油圧ブレーキ73Aをオフ状態にするための指示値を出力する。換言すると、アプリケーションソフトウェアの要求による車両100の停止状態の継続を禁止すべき状況では、油圧ブレーキ73A及びパーキングブレーキ73Bをオフ状態にすることで、車両100が移動可能な状態になる。このように車両100が移動可能な状態において、例えば車両100が移動すれば、車両100の運転者は、アプリケーションソフトウェアの要求による車両100の停止状態の継続を禁止すべき状況であることを把握可能である。そして、車両100の運転者に対して当該車両100の操作を促すことができる。
【0040】
(5)一般的に、車両100が急な傾斜の路面に位置している状況では、車両100が移動可能な状態になったときに当該車両100が移動しやすい。この点、本実施形態において、停止継続条件は、路面勾配ARが予め定められた規定勾配未満であることである。したがって、路面勾配ARが予め定められた規定勾配以上であるという、車両100の運転者が車両100の移動を認識しやすい状況下において、車両100の運転者に対して当該車両100の操作を促すことができる。
【0041】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0042】
・上記実施形態において、ブレーキ切り替え制御は変更してもよい。
例えば、ステップS12の停止継続条件は変更してもよい。具体例として、停止継続条件は、路面勾配ARが予め定められた規定勾配未満であることに加えて、又は代えて、他の要件を含んでいてもよい。
【0043】
・例えば、ステップS12の処理は省略してもよい。具体例として、出力部48は、ステップS11において肯定判定した場合、処理をステップS13に進めてもよい。この場合、ステップS31の処理も省略すればよい。
【0044】
・例えば、ステップS13の切り替え条件は変更してもよい。具体例として、出力部48は、車両100の運転席に対応するドアが閉状態から開状態になったときに、車両100の運転者が降車しようとしたと判定してもよい。また、具体例として、切り替え条件は、車両100の運転者が降車しようとしたことに加えて、又は代えて、他の要件を含んでいてもよい。
【0045】
・例えば、ステップS13の処理は省略してもよい。具体例として、出力部48は、ステップS12において肯定判定した場合、処理をステップS21に進めてもよい。すなわち、パーキングブレーキ73Bをオフ状態からオン状態へと切り替える状況であれば、停止保持要求RSの有無に拘わらず、出力部48がパーキングブレーキ73Bをオン状態にするための指示値の出力を継続するという本件技術を適用でき得る。
【0046】
・例えば、ステップS31の処理は変更してもよい。具体例として、出力部48は、油圧ブレーキ73Aをオフ状態にするための指示値を出力することに加えて、又は代えて、アプリケーションソフトウェアの要求による車両100の停止状態の継続を禁止すべき状況であることを運転者等に報知してもよい。なお、車両100の運転者等に対して報知する構成としては、例えば、ディスプレイ及びスピーカ等により報知する構成を採用できる。
【0047】
・上記実施形態において、車両100の構成は変更してもよい。
例えば、運動マネージャ45の機能を実現するECUは、ブレーキECU40以外であってもよい。具体例として、ブレーキECU40に代えて、セントラルECU10のCPU11は、記憶装置12に記憶された運動マネージャアプリ45Aを実行することにより、運動マネージャ45の機能を実現してもよい。すなわち、セントラルECU10、パワートレインECU20、ステアリングECU30、ブレーキECU40、及び先進運転支援ECU50は、運動マネージャ45の機能を実現でき得る。
【符号の説明】
【0048】
10…セントラルECU、20…パワートレインECU、30…ステアリングECU、40…ブレーキECU、41…CPU、42…記憶装置、43…ブレーキ制御部、43A…ブレーキアプリ、45…運動マネージャ、45A…運動マネージャアプリ、46…受付部、48…出力部、50…先進運転支援ECU、71…パワートレイン装置、72…ステアリング装置、73…ブレーキシステム、73A…油圧ブレーキ、73B…パーキングブレーキ、81…加速度センサ、82…シートベルトスイッチ、100…車両。
図1
図2
図3