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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135506
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G03G15/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046224
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩本 憲俊
【テーマコード(参考)】
2H200
【Fターム(参考)】
2H200FA16
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA47
2H200JC03
2H200JC07
2H200JC09
2H200JC12
2H200JC13
2H200JC15
2H200JC17
2H200LB02
2H200LB09
2H200LB13
2H200LB35
2H200LB37
2H200MA01
2H200MA03
2H200MA04
2H200MA20
2H200MC02
2H200MC06
2H200MC20
(57)【要約】
【課題】高硬度化したスクレーパでも傷を抑制できるような中間転写ベルトの表面状態のパラメータ見出し、そのパラメータを規定することで、傷に強いベルトを有する画像形成装置を提供する。
【解決手段】中間転写ベルト5と中間転写ベルト5上に当接し転写残トナーをクリーニング部材13を有する画像形成装置100、中間転写ベルト5の面粗さを示す物性のうち、Sal(最小自己相関長さ)およびSpd(山の頂点密度)が下記の[式1]を満足する。Spd×Sal<5×10・・・[式1]
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間転写ベルトと前記中間転写ベルト上に当接し転写残トナーをクリーニング部材を有する画像形成装置であって、
前記中間転写ベルトの面粗さを示す物性のうち、Spd(山の頂点密度)およびSal(最小自己相関長さ)が、Spd×Sal<5×10の[式1]を満足する、画像形成装置。
【請求項2】
前記中間転写ベルトは、基層と、前記基層の表面に凹凸を形成するコート層を有する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記中間転写ベルトの前記コート層はSiを主成分とした層である、
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記クリーニング部材は、前記中間転写ベルトの表面の前記転写残トナーを掻き取るように前記中間転写ベルトに当接されたスクレーパーである、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記スクレーパーは、可撓性の金属スクレーパを含む、
請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記スクレーパーは、前記金属スクレーパの少なくとも前記中間転写ベルトに当接する部分に高硬度のスクレーパコート層を有する、
請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記クリーニング部材が前記中間転写ベルトに当接する部分に対向する前記中間転写ベルトの内側には部材がなく、
前記中間転写ベルトの張力と前記クリーニング部材の当接圧による押し込み量とが調整されている、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記中間転写ベルトの面粗さを示す物性のうち、前記Salが20μm以下(Sal≦20μm)である場合、
前記Spdと前記Salの関係が、Spd×Sal<4×10の[式2]を満足する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記中間転写ベルトは、前記Salと前記Spdを形成するための製造条件の1つがコーティング時の相対湿度であり、
前記相対湿度が45%以下で製造されたベルトである、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記中間転写ベルトの面粗さを示す物性のうち、Sa(算術平均高さ)が0.2以下である、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記中間転写ベルトの面粗さを示す物性のうち、Sq(二乗平均平方根高さ)が1以下である、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記中間転写ベルトの面粗さを示す物性のうち、Sdr(界面の展開面積比)が0.002以上である、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記中間転写ベルトの面粗さを示す物性のうち、Smr1(突出山部とコア部を分離する負荷面積率)が10以下である、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記中間転写ベルトの面粗さを示す物性のうち、Vmp(山部の実体体積)が0.004以上である、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記中間転写ベルトの面粗さを示す物性のうち、Vmc(コア部の実体体積)が0.008以上である、
請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軽印刷機、複写機、プリンター等の画像形成装置において、静電潜像担持体上に形成される静電潜像を荷電したトナーによって現像して可視化した後、記録材へ転写、定着を行う電子写真方式の画像形成装置に関する。より詳しくは、電子写真プロセスの転写部の像担持体である中間転写ベルトの耐傷性に関する。
【背景技術】
【0002】
軽印刷機、複写機、プリンター等の画像形成装置において、像担持体である感光体上のトナーを用紙に転写することで、ユーザー所望の印刷画像を提供する。転写方式には、トナーを感光体から用紙へ転写する直接転写方式と、トナーを感光体から一旦中間転写部に転写し、その後、2次転写部において中間転写部から用紙へ転写する中間転写方式がある。中間転写方式は各色のトナーを現像器および感光体から中間転写部で重ね合わせ、フルカラーの画像を用紙へ転写するために用いられる。この中間転写方式にすることにより、画像品質向上、高速化等のメリットがあるため、高速フルカラー機ではよく用いられる方式である。
【0003】
中間転写部の像担持体は中間転写ベルトが一般的である。中間転写ベルトは高い転写性を有するため導電材を含有させて半導電体としており、一方強靭性を有するためポリイミドなどの強度の高い樹脂で形成されている。強靭性を求めらる理由として、中間転写ベルトは転写する位置が安定するように、ベルト内側のローラによって高い張力がかけられている。中間転写ベルトには、ベルト内側に設けられた駆動ローラにより駆動力がかかる。さらに、中間転写ベルトのベルト表面には、感光体や2次転写ローラ、用紙との接触により負荷がかかる。特に、2次転写後に中間転写ベルト上に残留したトナーを除去するクリーニング装置によって、高い圧力がかかる。
【0004】
クリーニング装置は十分な画像品質を得るためには必要である。クリーニング装置には様々なものがある。一般的には、クリーニング装置には、クリーニングブレードが用いられる。クリーニングブレードは、ウレタンエラストマーなどの弾性体であり、中間転写ベルト回転方向に対しカウンターとなるように当接され、中間転写ベルト上のトナーを除去する。クリーニングブレードには主に位置を固定しブレードの撓みによる圧力で当接するタイプとバネによる圧力で当接するタイプがある。
【0005】
クリーニングブレードをカウンター当接することにより、クリーニングブレードのエッジには負荷がかかり破損する場合がある。この破損を防止するため、クリーニングブレードのエッジには潤滑剤の役割として、常にトナーが存在するようにしている。その装置としては、初期的には、生産時にブレードにトナーなどを塗布して組み立てたり、使用時にはトナーを供給するモードを用意したりしている。さらにトナーを安定的に供給するため、クリーニングブレードより正回転上流側にトナー貯留ローラを配置し、低印字率の場合でも貯留したトナーを常時クリーニングブレードに送ることができるようにしている。
【0006】
このようにクリーニングブレードエッジの破損の防止や摩耗の抑制をしても、紙粉等の外部からの異物が噛み込んだりすることでクリーニング不良が発生してしまう。また、長期の使用によりクリーニングブレードの摩耗量が多くなればクリーニング不良が発生してしまう。そこで、クリーニングブレードの下流にさらにクリーニング装置を設ける画像形成装置が提案されている。
【0007】
第2のクリーニング装置は第1のクリーニング装置と異なり可撓性の金属製スクレーパが用いられる。第1クリーニング装置の下流に設けられる第2クリーニング装置がウレタンエラストマーによる弾性体の場合、エッジへのトナー供給が少なく第1クリーニング装置より早く破損してしまうためである。第2クリーニング装置を金属製スクレーパとすることで、長期にわたり信頼性の高いクリーニングシステムとすることが可能となった。
【0008】
上記のような画像形成装置を開示する先行技術文献として、特開2018-036287号公報(特許文献1)、特開2012-113197号公報(特許文献2)、特開2004-287012号公報(特許文献3)などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2018-036287号公報
【特許文献2】特開2012-113197号公報
【特許文献3】特開2004-287012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一方、中間転写ベルトの耐傷性、耐久性を向上する方法として、ベルト表面の粗さを規定することが、従来より提案されている。中間転写ベルトの表面粗さだけでなく、表面を高硬度化することによってさらに耐傷性、耐久性を向上する方法も提案されている。
【0011】
それに対し、中間転写ベルト表面のクリーニング部材もエッジを高硬度化することで、高硬度化したベルト表面に対して摩耗しないようにし耐久性を向上させている。具体的には、ベルトは樹脂の表層にガラスなどのコーティングをして高硬度化している。ベルト表面を高硬度化したため、耐久により金属スクレーパの摩耗が促進され、寿命が低下した。そのため、中間転写ベルト表面より高硬度のコーティングをしたスクレーパを用いることで寿命低下を抑制した。
【0012】
しかし、スクレーパ表面を高硬度化することで、スクレーパがベルト表面を傷付けてしまう課題が発生した。従来のように表面粗さを規定しても耐傷性、耐久性を向上することができない。
【0013】
この開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、高硬度化したスクレーパでも傷を抑制できるような中間転写ベルトの表面状態のパラメータ見出し、そのパラメータを規定することで、傷に強いベルトを有する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[構成1]:この開示は、中間転写ベルトと上記中間転写ベルト上に当接し転写残トナーをクリーニング部材を有する画像形成装置であって、上記中間転写ベルトの面粗さを示す物性のうち、Spd(山の頂点密度)およびSal(最小自己相関長さ)が、Spd×Sal<5×10の[式1]を満足する。
【0015】
[構成2]:[構成1]に記載の画像形成装置であって、上記中間転写ベルトは、基層と、上記基層の表面に凹凸を形成するコート層を有する。
【0016】
[構成3]:[構成2]に記載の画像形成装置であって、上記中間転写ベルトの上記コート層はSiを主成分とした層である。
【0017】
[構成4]:[構成1]~[構成3]のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、上記クリーニング部材は、上記中間転写ベルトの表面の上記転写残トナーを掻き取るように上記中間転写ベルトに当接されたスクレーパーである。
【0018】
[構成5]:[構成4]に記載の画像形成装置であって、上記スクレーパーは、可撓性の金属スクレーパを含む。
【0019】
[構成6]:[構成5]に記載の画像形成装置であって、上記スクレーパーは、上記金属スクレーパの少なくとも上記中間転写ベルトに当接する部分に高硬度のスクレーパコート層を有する。
【0020】
[構成7]:[構成1]~[構成6]のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、上記クリーニング部材が上記中間転写ベルトに当接する部分に対向する上記中間転写ベルトの内側には部材がなく、上記中間転写ベルトの張力と上記クリーニング部材の当接圧による押し込み量とが調整されている。
【0021】
[構成8]:[構成1]~[構成7]のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、上記中間転写ベルトの面粗さを示す物性のうち、前記Salが20μm以下(Sal≦20μm)である場合、前記Spdと前記Salの関係が、Spd×Sal<4×10の[式2]を満足する。
【0022】
[構成9]:[構成1]~[構成8]のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、上記中間転写ベルトは、上記Sal(自己相関長さ)と上記Spd(山の頂点密度)を形成するための製造条件の1つがコーティング時の相対湿度であり、上記相対湿度が45%以下で製造されたベルトである。
【0023】
[構成10]:[構成1]~[構成9]のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、上記中間転写ベルトの面粗さを示す物性のうち、Sa(算術平均高さ)が0.2以下である。
【0024】
[構成11]:[構成1]~[構成10]のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、上記中間転写ベルトの面粗さを示す物性のうち、Sq(二乗平均平方根高さ)が1以下である。
【0025】
[構成12]:[構成1]~[構成11]のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、上記中間転写ベルトの面粗さを示す物性のうち、Sdr(界面の展開面積比)が0.002以上である。
【0026】
[構成13]:[構成1]~[構成12]のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、上記中間転写ベルトの面粗さを示す物性のうち、Smr1(突出山部とコア部を分離する負荷面積率)が10以下である。
【0027】
[構成14]:[構成1]~[構成13]のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、上記中間転写ベルトの面粗さを示す物性のうち、Vmp(山部の実体体積)が0.004以上である。
【0028】
[構成15]:[構成1]~[構成14]のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、上記中間転写ベルトの面粗さを示す物性のうち、Vmc(コア部の実体体積)が0.008以上である。
【発明の効果】
【0029】
この画像形成装置によれば、高硬度化したスクレーパでも傷を抑制できるような中間転写ベルトの表面状態のパラメータ見出し、そのパラメータを規定することで、傷に強いベルトを有する画像形成装置の提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】画像形成装置の略断面図である。
図2】クリーニング装置の略断面図である。
図3】第2クリーニング装置の当接部の拡大図である。
図4】中間転写ベルト表面の面粗さパラメータのSalとSpdの範囲を示す図である。
図5】解決課題の中間転写ベルト表面の傷が増加する様子を示す拡大図である。
図6】解決課題の原因であるスクレーパエッジの微小突起を示す拡大図である。
図7A】実施の形態の中間転写ベルト表面の観察画像と高さを示すプロファイル(係数5未満、低Sal、高Spd)を示す図である。
図7B】比較例の中間転写ベルト表面の観察画像と高さを示すプロファイル(係数5以上)を示す図である。
図7C】実施の形態の中間転写ベルト表面の観察画像と高さを示すプロファイル(係数5未満、高Sal、低Spd)を示す図である。
図8A】実施の形態の中間転写ベルトとスクレーパの当接状態(係数5未満、低Sal、高Spd)を示す図である。
図8B】比較例の中間転写ベルトとスクレーパの当接状態(係数5以上)を示す図である。
図8C】実施の形態の中間転写ベルトとスクレーパの当接状態(係数5未満、高Sal、低Spd)を示す図である。
図9】実施の形態の中間転写ベルト表面の面粗さパラメータの関係式の係数を示す図である。
図10】中間転写ベルト表層塗布時の相対湿度と傷発生のしやすさの関係を示す図である。
図11】実施の形態の中間転写ベルト表面の面粗さパラメータのSalとSaの範囲を示す図である。
図12】実施の形態の中間転写ベルト表面の面粗さパラメータのSalとSqの範囲を示す図である。
図13】実施の形態の中間転写ベルト表面の面粗さパラメータのSalとSdrの範囲を示す図である。
図14】実施の形態の中間転写ベルト表面の面粗さパラメータのSalとSmr1の範囲を示す図である。
図15】実施の形態の中間転写ベルト表面の面粗さパラメータのSalとVmpの範囲を示す図である。
図16】実施の形態の中間転写ベルト表面の面粗さパラメータのSalとVmcの範囲を示す図である。
図17】実施例と比較例の中間転写ベルト表面の面粗さパラメータ条件と評価結果一覧を示す図である。
図18】実施例と比較例の中間転写ベルト表面の面粗さパラメータ条件、およびコーティング有無と評価結果一覧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図を参照しながら、実施の形態の画像形成装置について説明する。以下に説明する各実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0032】
(画像形成装置100)
図1にフルカラータンデム型の電子写真方式の画像形成装置100の電子写真プロセス主要部の概略構成図を示す。図1は、画像形成装置100の略断面図である。
【0033】
この画像形成装置100は、乾式電子写真方式により感光体1上に形成されたトナー像を紙等の記録媒体Tに転写、定着して画像形成を行うものである。
【0034】
この画像形成装置100は静電潜像をその表層に形成、担持するための感光体1を有しており、感光体1の周辺には、感光体1を均一に帯電するための帯電装置2、感光体1表面を露光して静電潜像を形成するための露光装置3、静電潜像を電界力により帯電トナーで顕像化する現像装置4、感光体1上に現像された各色トナー像を電界力により中間転写ベルト5上に転写するための一次転写ローラ6、及び感光体1上の転写残トナー除去用の感光体クリーニング装置7と感光体への滑材塗布装置8が、感光体1の回転方向に沿って順に配置されている。
【0035】
中間転写ベルト5の移動方向下流位置には、二次転対向ローラ9と相対して二次転写ローラ10とが配置され、中間転写ベルト5上のトナー像を電界力により記録媒体Tへ転写する。記録媒体T上に転写されたトナー像は定着装置11で加えられる熱と圧力により溶融され、記録媒体Tへと定着される。中間転写ベルト5上の転写残トナーは第1中間転写ベルトの第1クリーニング装置12および第2中間転写ベルトの第2クリーニング装置13により清掃、除去される。
【0036】
中間転写ベルト5は、ポリイミドに導電材を添加した材料から成る。中間転写ベルトクリーニング装置は第1クリーニング装置と第2クリーニング装置とで構成される。第1クリーニング装置はポリウレタンやNBRなどのソリッドゴムから成るクリーニングブレードである。第2クリーニング装置はステンレス等の可撓性金属から成るスクレーパ13である。
【0037】
画像形成装置100に用いられる感光体、帯電装置、露光装置、現像装置、清掃装置、定着装置、搬送装置等は、周知の電子写真方式の技術を任意に使用してよい。像担持体は感光体であっても、中間転写ベルトであってもよい。システムによっては、2次転写ベルトであってもよい。中間転写ベルト5の材料、第1クリーニング装置12の材料は上記に限定されるものでない。
【0038】
(クリーニング装置)
図2に実施の形態のクリーニング装置の概略構成図を示す。図2は、クリーニング装置の略断面図である。このクリーニング装置は、中間転写ベルト5上の転写残トナーを第1クリーニング装置であるクリーニングブレード12により中間転写ベルト5上から除去し、さらに第2クリーニング装置であるスクレーパ13により中間転写ベルト5上から除去するものである。
【0039】
クリーニングブレード12は弾性体のブレード12-1と支持部材12-2を有する。クリーニングブレード12は図示しないバネによるバネ圧接タイプのクリーニングブレードでも、図示しないネジなどでクリーニングユニットハウジング15に固定された固定圧接タイプのクリーニングブレードでもよい。スクレーパ13は可撓性の金属スクレーパ13-1と、第1支持部材13-2、および、第2支持部材13-3を有する。スクレーパ13はクリーニングブレード12と同様に、バネ圧接タイプのスクレーパでも固定圧接タイプのスクレーパでもよい。
【0040】
第1クリーニング装置であるクリーニングブレード12の当接位置について、中間転写ベルト5の裏側にクリーニング対向ローラ19が必要である。クリーニング対向ローラ19があることで、弾性体のブレード12-1が撓み当接力が得られる。弾性体のブレード12-1のエッジは中間転写ベルト5の表面に沿うように密着して安定したニップを形成しクリーニングすることができる。
【0041】
一方、第2クリーニング装置であるスクレーパ13の当接位置について、中間転写ベルト5の裏側には何もない状態とすることが必要である。ただし、クリーニング対向ローラ19、駆動ローラ20等のローラの間で中間転写ベルト5に十分なテンションがかかった部分で当接するようにしている。テンションのかかった中間転写ベルト5に当接することで、可撓性の金属スクレーパ13-1が撓み当接力が得られる。金属スクレーパ13-1のエッジに沿って中間転写ベルト5が密着することで、クリーニングすることができる。
【0042】
中間転写ベルト5上のトナーはクリーニングブレード12により除去され、クリーニングユニット15内に入り、搬送スクリュ14によって図示しない廃トナーボトルの中に搬送される。使用によるクリーニングブレード12の破損や摩耗、もしくは突発的な異物の噛み込みなどにより除去できなかったトナーは金属スクレーパ13-1により除去され、クリーニングユニット15内に入り、搬送スクリュ14によって図示しない廃トナーボトルの中に搬送される。
【0043】
クリーニングブレード12により除去されたトナーのうち一部のトナーはトナー貯留ローラ16によりトナー貯留部18に蓄積される。規制部材17により一定量のトナー層をトナー貯留ローラ16上に形成し、中間転写ベルト5に当接する位置でトナーを転移し、クリーニングブレード12に供給される。このトナー貯留ローラ16により、常にクリーニングブレード12のエッジに潤滑剤としてのトナーが供給されることで、クリーニングブレード12のエッジの破損を防止し、長寿命化を達成することができる。
【0044】
一方、金属スクレーパ13-1にはクリーニングブレード12で除去できないトナーしか来ないため、エッジに潤滑剤としてのトナーがないと破損するクリーニングブレードを用いることはできず、スクレーパ13を用いている。そのため、金属スクレーパ13-1で除去されたトナーを貯留しておく必要はなく、除去されたトナーは全て搬送スクリュ14により図示しない廃トナーボトルの中に搬送される。
【0045】
トナー貯留ローラ16はNBR等からなる発泡ローラであるが、材料や構成はこの限りではない。規制部材17はSUS等からなる可撓性金属部材であるが、材料や構成はこの限りではない。同様にクリーニングユニット内で用いられている部品の材料は特に限定されるものではない。構成についても上記内容に限定されるものではなく、トナー極性を調整するローラやブラシ等を用いてもよい。
【0046】
図3に第2のクリーニング装置であるスクレーパ13の概略構成図を示す。図3は、第2のクリーニング装置の当接部の拡大図である。図3において、中間転写ベルト5は、基層5-1と、この基層5-1の表面には転写性向上、耐久性向上を目的とし、Siを主成分とした高硬度のベルト表層5-2がコーティングされている。一方、第2のクリーニング装置である金属スクレーパ13-1のベルト当接部表面には耐久性向上を目的とし、カーボンを主成分とした高硬度のスクレーパコート層13-4がコーティングされている。中間転写ベルト5およびスクレーパのコーティングの材料や構成はこの限りではない。
【0047】
図4に中間転写ベルトの表層の状態を表すパラメータSal(最小自己相関長さ)とSpd(山の頂点密度)の関係を示す。図4は、中間転写ベルト表面の面粗さパラメータのSalとSpdの範囲を示す図である。
【0048】
図4は機種Aの中間転写ベルトにおける、傷付きやすい表層の中間転写ベルトと傷付きにくい表層の中間転写ベルト、同様に機種Bの中間転写ベルトにおける、傷付きやすい表層のベルトと傷付きにくい表層のベルトの各ベルトのSal、Spdを測定し、グラフにプロットしたものである。傷付きやすい中間転写ベルトと傷付きにくい中間転写ベルトの分類については、ベルト傷試験を行い、傷付きやすさを数値化して求めた。詳細は後述する。
【0049】
中間転写ベルトの表層のSal、Spdについて、表面状態を示す面粗さパラメーターであり、以下の方法で測定した。測定器はキーエンス製レーザー顕微鏡VK-X3000シリーズのバイオレットレーザータイプのVK-3100であり、中間転写ベルト表面を非接触で面粗さ測定を実施した。表層は透明体であるため、白色干渉用対物レンズ10倍(CF IC EPIPlan DI 10X)を用い、光の干渉縞を観測することで高さ、粗さを測定した。視野は1394×1045μmの全領域において各面粗さパラメータ―を測定した。中間転写ベルトの測定位置として、周方向2カ所、長手方向中央および両端部(中間転写ベルト端から約50mm)の3カ所、計6ヶ所を測定し、平均値をとった。
【0050】
測定したパラメーターは以下に示す24種である。Sa(算術平均高さ)、Sz(最大高さ粗さ)、Str(表面性状のアスペクト比)、SPc(山頂点の算術平均曲率)、Sdr(界面の展開面積比)、Sq(二乗平均平方根高さ)、Ssk(スキューネス(偏り度))、Sku(クルトシス(尖り度))、Sp(最大山高さ)、Sv(最大谷深さ)、Sal(最小自己相関長さ)、Std(表面性状の方向)、Sdq(二乗平均平方根傾斜)、Spd(山の頂点密度)、Sk(コア部のレベル差)、Spk(突出山部高さ)、Svk(突出谷部高さ)、Smr1(突出山部とコア部を分離する負荷面積率)、Smr2(コア部と突出谷部をわける負荷面積率)、Sxp(極点高さ)、Vvv(突出谷部の空間の容積)、Vvc(コア部の空間の容積)、Vmp(山部の実体体積)、Vmc(コア部の実体体積)。
【0051】
各パラメーターと傷付きやすさの相関を確認したところ、相関の高いパラメーターをいくつか抽出したものの、明確に1つのパラメーターで傷付きやすさを判断できる指標は見出せなかった。そこで、2つのパラメーターの関係から傷付きやすさを示すことができるものを確認したところ、Sal(最小自己相関長さ)とSpd(山の頂点密度)の関係から傷付きやすさを判断できる指標を見出すことができた。
【0052】
Sal(最小自己相関長さ)は座標を水平方向にずらしたときに整合する最も短い距離を示し、凹凸の周期を示すものである。単位はμmである。一方、Spd(山の頂点密度)は単位面積あたりに存在する山の頂点の数を示すものである。単位は個/mmである。この2つのパラメーターは双方が影響するものであり、例えば同じ形状の凹凸が整然と並んでいる状態を想定すると、Spd=(1000/Sal)となる。しかし実際には同じ形状の凹凸が整然と並ぶことはなく、形状が崩れたり、凹凸の並びにムラがあったりする。そのバラツキを係数Kで示すと、Spd=(1000/Sal)×Kとなり、K×10=Spd×Salとなる。つまりベルト表層が整然と均一にコーティングされていれば係数Kは1に近くなり、凝集して不均一にコーティングされていれば係数Kは大きくなっていく。
【0053】
図4で示すように、傷付きにくい中間転写ベルトは機種によってSalが大きく異なるが、係数1のラインに近く、少なくとも係数5のラインより小さい。一方、傷付きやすい中間転写ベルトは係数5のラインより大きく、不均一なコーティングになっていることがわかる。機種Aと機種Bとの表層はそれぞれ異なる形状をしているが、機種Aの悪いものはSalが大きくなり、係数5以上となる。機種Bの悪いものはSpdが大きくなり、係数5以上となる。
【0054】
図4に示すように、傷に対して強い中間転写ベルトの表層はSalとSpdの関係式の係数が5未満となる。それを本開示においては、Spd×Sal<5×10[式1]と規定している。
【0055】
本開示は図2および図3の概略構成図、図4の中間転写ベルトの表層の面粗さパラメーター、および、[式1]が示すものを実施の形態としている。それに対し、従来の中間転写ベルトのクリーニングシステムは概略構成は本開示の図2および図3と同じであり、図4の中間転写ベルトの表層の面粗さパラメーター、および、[式1]を満たさない点が相違する。
【0056】
その違いは図4でも示すことができる。例えば、機種Aだけであれば、Salだけで傷付きやすさを判断できる。しかし、機種Bを加えるとSalだけでは傷付きやすさを判断できない。同様に、機種Bだけであれば、Spdだけで傷付きやすさを判断できるが、機種Aを加えるとSpdだけでは傷付きやすさを判断できない。図示しないが、他の面粗さパラメーターおよび線粗さパラメーターについても同様である。
【0057】
特開2012-113197号公報(特許文献1)および特開2004-287012号公報(特許文献2)で中間転写ベルト表面傷に対し、線粗さパラメーターを規定しているものがこれに該当する。ある特定のベルト表面の条件では1つのパラメーターで傷付きやすさを判断できるかもしれないが、あらゆるベルト表面に対し傷付きやすさを判断することはできず、課題の中間転写ベルト傷を解決することはできない。
【0058】
ここで、図5を参照して、本開示が解決する課題としている新品のスクレーパ13の搭載時に発生する中間転写ベルトの傷について説明する。図5は、解決課題である中間転写ベルトの表面の傷が増加する様子を示す拡大図である。
【0059】
図5は中間転写ベルト5の表面の傷を顕微鏡で1000倍で観察したものを示した。図5で示すように、この傷は1本の幅が1μm程度、深さも1μm程度の細く浅い傷であり、中間転写ベルト5が駆動により何周も回転することで、幅方向に傷本数が増えていき、細い傷の集合体が全体で数10~数100μmの幅になると目視で顕在化するようになる。1本は細く浅い傷のため画像への影響はないが、目視で傷がみえることにより出荷検査時の検査員やユニットだし入れ時のユーザーおよびサービスマンが認識することになる。
【0060】
この傷は長期使用による傷や何らかの異常で発生する傷と見分けがつくものではないため、検査員としては不良と判断したり、ユーザーやサービスマンは交換すべきと判断することになる。結果、短期の使用かつ画像ノイズにならないにも関わらず、廃棄されることとなる。製造時においては、不良率が増えてコストアップにつながり、ユーザーにとってベルトやユニット交換により大きな損失となる。
【0061】
本開示が解決する課題としている傷の発生原因については、エッジの微小な突起が中間転写ベルトの表面を傷付けることである。図6は、解決課題の原因であるスクレーパエッジの微小突起を示す拡大図である。図6は、中間転写ベルトに傷が発生した位置において、スクレーパ13の当接部側のエッジを4000倍に拡大で観察したもの示した。図6で示すように突起は幅10~20μmで高さ5μm程度であり、その先端の一部に力が集中することで、幅1μmの傷をベルトに付けている。
【0062】
このような突起は金属スクレーパ13-1のエッジには数多くあり、金属スクレーパ13-1の製造時の精度改善によってなくすことができるようなものではない。金属スクレーパ13-1の製造工程は、圧延した薄い金属板をフォトレジストで残す部分にマスキングを施し、エッチングによりマスキングしていない部分を溶かして所望の形状を作る。圧延方向やエッチング方法の変更をしても、エッジの微小な突起をなくすことはできなかった。
【0063】
金属スクレーパ13-1にコーティングしたものでも、コート層の下地にこのような微小な突起があれば、1μm程度の厚みのコーティングでは突起はそのまま残り、傷を発生させてしまう。この傷はスクレーパ13全体のうねり、中間転写ベルト5側の表層の状態、中間転写ベルトとスクレーパ13の接触状態にもよるため、どの微小な突起が傷を発生させるか、観察や検査では特定して除去することはできない。顕微鏡の倍率の点においても検査時間がかかりすぎて現実的ではない。さらに、エッジの異常や打痕などの大きな突起は力が集中しないため本開示が課題とするような細い傷の集合体を発生させない。この点からも傷となる突起を特定することは困難である。
【0064】
製造時においてスクレーパ13のエッジの微小な突起をなくすことは困難である。そこで、中間転写ベルトによって傷付きにくくなる改善案を考える。そのため、傷つきやすいベルトと傷付きにくいベルトは表層の状態がどのように異なるのか調査することとした。
【0065】
まず、傷付きやすい中間転写ベルトと傷付きにくい中間転写ベルトを分類することを行った。方法としては、中間転写ベルトを摺擦し、傷の入りやすさを評価する試験を実施した。詳細は下記のとおりである。レスカ製フリクションプレーヤーFPR2200に円盤に円形に切り抜いた中間転写ベルトをセットする。摺擦する部品は幅15mm、角度30°、カウンター当接となるように設置した金属板で、表面にラッピングフィルム(3M製粒度320)を配置して摺擦させる。摺擦時の条件は荷重150g、回転半径38mm、回転速度400mm/s、1000回転とした。摺擦後、中間転写ベルトの表面の傷を画像撮影し、二値化し、傷の面積率を求め、傷付きやすい中間転写ベルトと傷付きにくい中間転写ベルトを分類した。傷面積率が8~10%程度のものを傷付きやすいベルトとし、傷面積率が4~6%程度のものを傷付きにくいベルトとした。
【0066】
次に、傷付きやすいベルトと傷付きにくいベルトの表面を上述した白色干渉用レーザー顕微鏡を用い、24種の面粗さパラメーターを測定した。24種のパラメータはSa、Sz、Str、Spc、Sdr、Sq、Ssk、Sku、Sp、Sv、Sal、Std、Sdq、Spd、Sk、Spk、Svk、Smr1、Smr2、Sxp、Vvv、Vvc、Vmp、Vmcである。
【0067】
各パラメータと傷面積率について、目的変数を傷面積率、説明変数を面粗さパラメーターとして重回帰分析を実施し、影響の大きいパラメーターを抽出した。抽出したパラメーターは以下の8種類である。Sa(算術平均高さ)、Sq(二乗平均平方根高さ)、Sal(最小自己相関長さ)、Sdr(界面の展開面積比)、Spd(山の頂点密度)、Smr1(突出山部とコア部を分離する負荷面積率)、Vmp(山部の実体体積)、Vmc(コア部の実態体積)。
【0068】
これらのパラメーターの相関から傷付きにくいベルトがどのような特徴を持つかわかる。例えば、Sa、Sqから高さが低くバラツキの少ないものが傷付きにくいことがわかる。Sdr、Spdから凹凸があるが、山の頂点が少ないものが傷付きにくいことがわかる。Smr1から山部の比率が高いものが傷付きにくいことがわかる。Vmp、Vmcから山部とコア部の体積が大きいものが傷付きにくいことがわかる。
【0069】
各パラメーターから傷付きにくいベルトの傾向はわかるが、いずれのパラメーターも単独では傷付きやすさを判断することができなかった。そこで抽出した8種のパラメーターを総当たりで2つのパラメータ―毎に相関を確認した。その結果、Sal(最小自己相関長さ)とSpd(山の頂点密度)の組み合わせのみ、傷付きやすい中間転写ベルト群と傷付きにくい中間転写ベルト群を分ける境界線を引けることを見出した。その結果が図4であり、前述したSalとSpdの関係式の係数5のラインが傷付きやすい中間転写ベルト群と傷付きにくい中間転写ベルト群を分ける境界線にあたる。
【0070】
以上のように、面粗さパラメーターのSal、Spdを所定範囲にした中間転写ベルトを用いることで、中間転写ベルト傷を抑制することができることを見出した。ベルト表層の状態とスクレーパの当接状態を詳細に観察、考察することで、中間転写ベルト傷が発生する現象を説明することができる。
【0071】
図4に示したSal、Spdの中から代表的な中間転写ベルト表層の観察結果を、図7A図7Bおよび図7Cに示す。図7A図7Bおよび図7Cの画像は白色干渉レンズによるレーザー顕微鏡で撮影した中間転写ベルト表面を高さで示したものである。画像の下に示すのは、画像の中心部(S-S線矢視断面)の高さを表すプロファイルである。
【0072】
図7Aは、中間転写ベルト表面の観察画像と高さを示すプロファイル(係数5未満、低Sal、高Spd)を示す図である(図4中のVII(A)で囲む範囲)。図7Aは機種A傷少の範囲の中間転写ベルトの観察結果である。Salが小さく、Spdが大きい状態であるため、周期が短く山の頂点が多い状態であり、プロファイルも同様の傾向を示している。
【0073】
図7Bは、中間転写ベルト表面の観察画像と高さを示すプロファイル(係数5以上)を示す図である(図4中のVII(B)で囲む範囲)。図7Bは機種A傷多の範囲の中間転写ベルトの観察結果である。Salが大きく、Spdが大きい状態であるため、周期が長いが、山の頂点が多い状態であり、プロファイルも同様の傾向を示している。
【0074】
図7Cは、中間転写ベルト表面の観察画像と高さを示すプロファイル(係数5未満、高Sal、低Spd)を示す図となる(図4中のVII(C)で囲む範囲)。図7Cは機種B傷少の範囲の中間転写ベルトの観察結果である。周期が長く、山の頂点が少ない状態であり、プロファイルも同様の傾向を示している。
【0075】
図7A図7Bおよび図7Cの中間転写ベルト表面とスクレーパのエッジの当接状態を簡略図として表したのが図8A図8Bおよび図8Cである。図8Aは、中間転写ベルトとスクレーパの当接状態(係数5未満、低Sal、高Spd)を示す図、図8Bは、ベルトとスクレーパの当接状態(係数5以上)を示す図、図8Cは、中間転写ベルトとスクレーパの当接状態(係数5未満、高Sal、低Spd)を示す図である。
【0076】
図8A図8Bおよび図8Cは、金属スクレーパ13-1のエッジを拡大したものである。金属スクレーパ13-1のエッジの突起部13-5は、図6で示した5μm程度の微小な突起であることを示している。図8Aのベルト表面の形状は、図7Aで示したように、短い周期で山の頂点が多い状態である。このような場合、当接した金属スクレーパ13-1のエッジの突起部13-5が、中間転写ベルト5の表層の谷部分に入り込むことがなく、山の頂点を削ることがないため傷が付きにくい。
【0077】
図8Bの中間転写ベルト5の表面の形状は、図7Bで示したように、周期は長いが山の頂点が多い状態である。これは図7Aのコート剤が凝集したような状態である。このような場合、当接した金属スクレーパ13-1のエッジの突起部13-5が中間転写ベルト5の谷部分に入り込み、山の頂点を削り取ることで傷を付けやすくなっている。
【0078】
図8Cの中間転写ベルト5の表面の形状は、図7Cで示したように、周期が長く山の頂点が少ない状態である。このような場合、当接した金属スクレーパ13-1のエッジの突起部13-5が中間転写ベルト5の表層の谷部分に入り込むが、山の1つ1つが大きな塊りとなっているため、山の頂点を削りにくく傷を付けにくい。その結果、Sal、Spdの値と傷の発生には以上のような現象が起きていると説明することができる。
【0079】
以上のように、本開示は図2および図3に示す画像形成装置100の構成であり、スクレーパ13の硬度が高い構成において、図4に示すように、面粗さパラメーターのSal、Spdを所定範囲にした中間転写ベルトを用いることで、ベルト傷を抑制することができる。
【0080】
上記は主に[構成1]に記載の内容である。ただし、一部にその他の[構成]も含んでいる。各[構成1]については、以下に記載する。
【0081】
[構成2]において、中間転写ベルト5の表面に高硬度のコーティングが施されている。上記説明では、本開示の経緯をわかりやすくするため、高硬度のコーティングをした図3で説明していたが、実際には面粗さと傷の関係であるため、[構成1]では、高硬度のコーティングなしも含めている。[構成2]で高硬度のコーティングを規定する。
【0082】
[構成3]において、中間転写ベルト5のコート層がSiを主成分としたものであるとしている。上記説明では、本開示をした経緯をわかりやすくするため、高硬度のコーティングがSiを主成分としたものであると説明していたが、実際には面粗さと傷の関係であるため、[構成1]では、特に材料の規定はしていない。[構成3]において、材料を規定する。
【0083】
[構成4]において、クリーニング部材がスクレーパであるとしている。上記説明では、本開示をした経緯をわかりやすくするため、クリーニング部材がスクレーパであると説明していたが、実際には面粗さと傷の関係であるため、[構成1]では、特にクリーニング部材の形態を規定していない。[構成4]において、スクレーパであることを規定する。
【0084】
[構成5]において、クリーニング部材がスクレーパであり、スクレーパが可撓性の金属であるとしている。上記説明では、本発明をした経緯をわかりやすくするため、スクレーパが可撓性の金属であると説明していたが、実際には面粗さと傷の関係であるため、[構成1]では、特にスクレーパの材質を規定していない。[構成5]において、スクレーパが可撓性の金属であることを規定する。
【0085】
[構成6]において、クリーニング部材がスクレーパであり、スクレーパが可撓性の金属であるとし、当接部に高硬度のコーティングが形成されているとしている。上記説明では、本開示をした経緯をわかりやすくするため、スクレーパに高硬度のコーティングが形成されていると説明していたが、実際には面粗さと傷の関係であるため、[構成1]では、特にスクレーパのコーティングを規定していない。[構成6]において、スクレーパの当接部に高硬度のコーティングが形成されていることを規定する。
【0086】
[構成7]において、スクレーパの当接部の対向となるベルトの内側には部材がなく、ベルトの張力とスクレーパーの当接圧により押し込み量がフレキシブルに設定されるとしている。上記説明においても同様の記載をしているが、[構成1]では特に規定はせず、[構成7]において規定する。
【0087】
[構成8]において、中間転写ベルトの面粗さを示す物性のうち、Sal(最小自己相関長さ)が20μm以下である場合、Sal(自己相関長さ)とSpd(山の頂点密度)の関係式が係数4であるとしている。これは、図9で示すように、機種Aの傷付きにくいベルトはSalが20μmより小さく、関係式の係数が4以下となっている。そのため、Salの値により範囲を絞ることで、より傷付きにくい表層の条件を設定することができる。
【0088】
図10は、中間転写ベルト表層塗布時の相対湿度と傷発生のしやすさの関係を示す図である。[構成9]では、Sal(自己相関長さ)とSpd(山の頂点密度)を形成するための製造条件の1つがコーティング時の相対湿度であり、相対湿度45%以下であるとしている。図10で示すように、コート層を塗布する時の相対湿度が45%以下であれば、傷面積率が低く、傷付きにくい中間転写ベルトを得ることができる。
【0089】
ただし、Sal、Spdとの相関が完全には一致していない。これは、相対湿度以外にもコート層塗布条件に影響していることが考えられる。SalとSpdを変える因子として、例えばコート剤の各材料比率を変更したり、塗布速度、塗布回数を変更することが挙げられる。また、塗布する装置の種類や形状、塗布時の温度など様々な要因がある。少なくとも、Sal、Spdを変える因子の1つとして相対湿度を見出し、[構成9]にて規定する。
【0090】
図11は、中間転写ベルト表面の面粗さパラメータのSalとSaの範囲を示す図である。[構成10]以降はSal、Spdの関係の元、他のパラメーターとの関係を規定していく。[構成10]では、Sa(算術平均高さ)が0.2以下であることを規定している。Saが小さい方が削られる山が小さく、傷付きにくいベルトとなる。図11に示すように、周期が短くなるSalが15以下の場合でも、Saが0.2以下となることで、傷付きにくいベルトとなる。
【0091】
図12は、中間転写ベルト表面の面粗さパラメータのSalとSqの範囲を示す図である。[構成11]では、Sq(二乗平均平方根高さ)が1以下であることを規定している。Sqが小さい方が高さバラツキが小さく、傷付きにくいベルトとなる。図12に示すように、周期が短くなるSalが15以下の場合でも、Sqが1以下となることで、傷付きにくいベルトとなる。
【0092】
図13は、中間転写ベルト表面の面粗さパラメータのSalとSdrの範囲を示す図である。[構成12]では、Sdr(界面の展開面積比)が0.002以上であることを規定している。Sdrが大きい方が凹凸があり、平滑面よりも、ある程度の凹凸があることで接触点が限定されることで傷付きにくいベルトとなる。図13に示すように、周期が短くなるSalが15以下の場合でも、Sdrが0.002以上となることで、傷付きにくいベルトとなる。
【0093】
図14は、中間転写ベルト表面の面粗さパラメータのSalとSmr1の範囲を示す図である。[構成13]では、Smr1(突出山部とコア部を分離する負荷面積率)が10以下であることを規定している。Smr1が小さい方が山部の比率が小さく、削られる部分が少ないため傷付きにくいベルトとなる。図14に示すように、周期が短くなるSalが15以下の場合でも、Smr1が10以下となることで、傷付きにくいベルトとなる。
【0094】
図15は、中間転写ベルト表面の面粗さパラメータのSalとVmpの範囲を示す図である。[構成14]では、Vmp(山部の実体体積)が0.004以上であることを規定している。Vmpが大きい方が山部の体積が大きく、個々の山が大きく削られにくいため、傷付きにくいベルトとなる。図15に示すように、周期が短くなるSalが15以下の場合でも、Vmpが0.004以上となることで、傷付きにくいベルトとなる。
【0095】
図16は、中間転写ベルト表面の面粗さパラメータのSalとVmcの範囲を示す図である。[構成15]では、Vmc(コア部の実体体積)が0.008以上であることを規定している。Vmcが大きい方が山の中腹部分の体積が大きく、個々の山が大きく削られにくいため、傷付きにくいベルトとなる。図16に示すように、周期が短くなるSalが15以下の場合でも、Vmcが0.008以上となることで、傷付きにくいベルトとなる。
【0096】
[比較例]
比較例の構成としても実施例と同様に、図1図2に示すように中間転写ベルト5とスクレーパ13を有する中間転写ベルト5のクリーニングシステムである。また、実施の形態と同様に、[構成2]に記載のように中間転写ベルト5の表層に高硬度のコーティングがあり、[構成6]に記載のようにスクレーパ13の当接部に中間転写ベルト表層より高硬度のコーティングがある構成である。
【0097】
実施の形態との差は[構成1]に記載のSalとSpdの関係式[式1]の範囲外であり、係数Kが5以上である点である。比較例1~3の違いは中間転写ベルト5の表層の面粗さパラメータである。実施例と同様に、ベルト製造条件や製造時の相対湿度条件などを変更し、Sal、Spdが異なる組み合わせとなる条件をそれぞれ用意した。
【0098】
[本開示の評価結果比較例]
本開示はベルト傷の発生しやすい新品のスクレーパを用いる。傷の発生本数、発生状態を比較するため常に新品の中間転写ベルトを用いる。
【0099】
本開示の検証方法として、所定条件において所定枚数の画像形成を行い、その後の中間転写ベルト表面についた傷を目視で評価を行う。傷の評価項目としては、傷の本数、傷の状態である。ここで述べている傷とは、1μm程度の細い傷ではなく、その細い傷の集合体を1本として数える。傷の状態として、次の3段階に分けている。まずは細い傷があるが目視で顕在化していない未発生レベル。当然未発生なので傷本数としてもカウントしない。2段階目は傷発生幅が数10~200μmであり、目視で顕在化するが、サービスマンやユーザーには気付かない傷であり、OKレベルである。3段階目は傷発生幅が200μm以上であり、目視で十分見えるため、画像影響は出なくても不良品と判断されるNGレベルである。
【0100】
実験機としては、コニカミノルタ社製AccurioPress C4080を用いた。搭載する転写ユニットについては実施例および比較例のベルトに交換する以外は標準の構成とする。搭載するクリーニングユニットについては標準の構成とし、実施例と比較例を同じ条件で評価した。環境は通常環境(23℃50%)で行った。中間転写ベルトとスクレーパについては上述したように、各評価常に新品で実施し、その他のユニットについては、画像形成枚数が多くないため、評価前に準備した新品を継続して使用した。転写ユニットやクリーニングユニットは中間転写ベルトとスクレーパ交換時にメンテナンスを実施している。いずれの条件においても、画像形成はカラーモードで各色5%の印字率となる横帯画像をA3で200枚プリント(約5分間の駆動)させ、中間転写ベルト上の傷本数、傷状態を評価する。
【0101】
(評価結果)
図17に示す評価結果を検証する。図17は、実施例と比較例の中間転写ベルト表面の面粗さパラメータ条件と評価結果一覧を示す図である。実施例1~7については、全て総合評価が「A」(傷未発生かOKレベルの傷発生)であり、NGレベルの傷はない。比較例1~3については、いずれも「F」(NGレベルの傷が発生)である。
【0102】
以下に評価結果の詳細を示していく。まず、実施例1~3と比較例1~3を比較する。実施例1~3は係数Kが5より小さく、[構成1]を満たしており、ベルト傷評価は「A」であるが、比較例1~3は係数Kが5以上であり、構成1を満たしておらず、ベルト傷評価は「F」である。実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3がそれぞれ近いにも関わらず、評価結果は[構成1]に記載の関係式[式1]のとおりとなっている。
【0103】
次に実施例の中で効果を比較する。実施例1~6は係数Kが5より小さい範囲で段階的に変えてある。中間転写ベルトやスクレーパのバラツキなどもあるため、係数Kと傷本数の結果には多少誤差はあるが、係数Kが小さくなるほど傷本数は減っている。特に、係数が1前後のものは、中間転写ベルト傷が未発生となっている。より均一な表面状態となることで、傷の発生を抑制することができることを示している。
【0104】
以上のように、各実施例では、中間転写ベルト5の表層の面粗さパラメーターが[構成1]に記載の関係式を満たすことにより、ベルト傷の発生を抑制し、評価結果は全て「A」となる。比較例では、中間転写ベルト5の表層の面粗さパラメーターが[構成1]に記載の関係式を満たしていないため、ベルト傷が発生し、評価結果は「F」となる。
【0105】
図18に示す評価結果を検証する。図18は、実施例と比較例の中間転写ベルト表面の面粗さパラメータ条件、およびコーティング有無と評価結果一覧を示す図である。図18の評価結果は、[構成2]、[構成3]、[構成5]、[構成6]で記載しているコーティングの有無による構成での評価結果である。実施例8および実施例9の場合、中間転写ベルトの表層がコーティングされていない。この場合の面粗さパラメーターはSal、Spdともに低く、係数は1以下となっている。この条件では、課題としている傷は未発生であった。本開示の係数5未満で傷未発生であることを満たしている。コーティングがない中間転写ベルトでは係数Kが5以上のものがなく、比較例はない。
【0106】
実施例10および比較例4は、中間転写ベルトの表層がコーティングされているが、スクレーパ当接部にはコーティングされていない条件である。硬度の関係からベルト側の方が硬く有利であるが、スクレーパのエッジには微小な突起があり、わずかに傷が発生する。実施例10は係数Kが5未満のものであり、傷が発生するがOKレベルのものであり、総合判定は「A」である。比較例4は係数Kが5以上であり、NGレベルの傷が発生し、総合判定は「F」である。中間転写ベルトおよびスクレーパのコーティング有無によらず、[構成1]に記載の関係式と傷発生の条件は満たされている。
【0107】
以上の実施例1から実施例10および比較例1から比較例4に示す結果に基づき、中間転写ベルトの面粗さを示す物性のうち、Spd×Sal<5×10[式1]が満足され、かつ、Sal(最小自己相関長さ)が20μm以下(Sal≦20μm)である場合に、Spd(山の頂点密度)とSalの関係が下記の[式2]を満足するとよいことが導かれる。Spd×Sal<4×10・・・[式2]
(開示の効果)
長寿命化に対応した中間転写ベルト表面より硬いスクレーパを有するクリーニングシステムにおいて、本開示で示す中間転写ベルト表層の面粗さパラメーターSal(最小自己相関長さ)とSpd(山の頂点密度)の関係式を規定し、その中間転写ベルトを用いることにより、中間転写ベルトへの傷の発生を抑制し、NGレベルの傷発生を抑制することができ、課題を改善することができる。
【0108】
これにより、使用開始直後に交換、廃棄されてしまう中間転写ベルトがなくなり、生産での不良率改善、サービスマンの工数削減、コストアップ抑制、ユーザーの信頼度向上につながる。
【0109】
本開示の方法により、長期にわたり信頼性の高いクリーニングシステムを備える画像形成装置を提供することが可能となる。
【0110】
以上、各実施の形態に基づき画像形成装置について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0111】
1 感光体、2 帯電装置、3 露光装置、4 現像装置、5 中間転写ベルト、5-1 基層、5-2 ベルト表層、6 一次転写ローラ、7 クリーニング装置、8 滑材塗布装置、9 二次転対向ローラ、10 二次転写ローラ、11 定着装置、12 クリーニングブレード、12-1 ブレード、12-2 支持部材、13 スクレーパ、13-1 金属スクレーパ、13-2 第1支持部材、13-3 第2支持部材、13-4 スクレーパコート層、13-5 突起部、14 搬送スクリュ、15 クリーニングユニットハウジング、16 トナー貯留ローラ、17 規制部材、18 トナー貯留部、19 クリーニング対向ローラ、100 画像形成装置、T 記録媒体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18