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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135507
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】コンクリート締固め用振動装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/06 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
E04G21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046225
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000235543
【氏名又は名称】飛島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221615
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 祐子
(72)【発明者】
【氏名】前田 智弘
(72)【発明者】
【氏名】濱西 将之
(72)【発明者】
【氏名】川島 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】山路 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】井上 浩杜
(72)【発明者】
【氏名】吉田 優汰
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172FA08
2E172FA13
2E172FA22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】足場を活用して締固め作業を行うことができ、振動機の貫入深さや加振時間を作業者個人の知識や技量に左右されることなく、人力で作業する場合と同等の品質や美観を確保しつつ、遜色なく均一にコンクリートの締固め作業を行うことができ、作業者の作業負担を極力軽減するとともに、コンクリートの締固め作業を省力化できるコンクリート締固め用振動装置を提供する。
【解決手段】本発明は、コンクリート構造体の施工領域を囲う複数の型枠パネル2で形成されたコンクリート型枠本体3と、コンクリート型枠本体3の内側にコンクリート型枠本体3の長手方向に向かい間隔をあけて複数設置された支柱部材4と、複数の支柱部材4の上方に架設され、コンクリート型枠本体3の長手方向に向かい延出するガイドレール部材5と、ガイドレール部材5に沿って走行可能に構成された締固め用振動車とを備えたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造体の施工領域を囲う複数の型枠パネルで形成されたコンクリート型枠本体と、
前記コンクリート型枠本体の内側に該コンクリート型枠本体の長手方向に向かい間隔をあけて複数設置された支柱部材と、
前記複数の支柱部材の上方に架設され、前記コンクリート型枠本体の長手方向に向かい延出するガイドレール部材と、
前記ガイドレール部材に沿って走行可能に構成された締固め用振動車と、を備え、
前記締固め用振動車は、前記型枠パネルの表面に沿って昇降するケーブル部材と、前記ケーブル部材の先端に設けられ、振動する振動子を備えた振動手段と、前記ケーブル部材および前記振動手段を揺動可能とした駆動手段と、を有し、
振動した状態の前記振動子が前記コンクリート型枠本体内に打設された打設コンクリート中の所定箇所に位置するまで降下しその後前記所定箇所から上昇するように、前記振動手段および前記ケーブル部材を前記駆動手段により揺動させて打設コンクリートの締固めを行う、
ことを特徴とするコンクリート締固め用振動装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記振動手段および前記ケーブル部材を、所定高さまで所定時間で降下させ、その後減速または停止させ、その後上昇させるように自動制御される、
ことを特徴とする請求項1記載のコンクリート締固め用振動装置。
【請求項3】
前記コンクリート型枠本体の長手方向に配置される型枠パネルには、コンクリートを打設する側の側面であって、該型枠パネルの長手方向に向かい伸長する帯状センサ部材を有し、
前記帯状センサ部材は、前記側面の高さ方向に間隔を有して複数配置された、
ことを特徴とする請求項1及び請求項2記載のコンクリート締固め用振動装置。
【請求項4】
前記所定箇所とは、前記帯状センサ部材が貼着されている箇所であり、
前記帯状センサ部材は、前記所定箇所までの前記振動手段の貫入を検知可能である、
ことを特徴とする請求項3記載のコンクリート締固め用振動装置。
【請求項5】
前記締固め用振動車は、前記ガイドレール部材上を走行可能、または、前記ガイドレールに吊下げられた状態で走行可能に構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載のコンクリート締固め用振動装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打設されたコンクリートの締固めに用いられるコンクリート締固め用振動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの締固め作業は、重量のあるバイブレータ(例えば、15kg程度)の上下動を人力で行う重労働である。締固め作業を省力化するための技術としては、例えば建設現場での締固め装置(特開平7-233638号公報、実開平6-63740号公報)のように、任意の位置まで車輪で走行し、作業者のスイッチ操作でモータの駆動力によりバイブレータを上下動させるものが提案されている。
【0003】
ここで、コンクリートの緻密性や美観性を左右する要素としては、生コンクリート内に含有する空隙や余剰水を適切に排除することが挙げられ、コンクリートの打込みからおよそ30分経過後に、再振動を適切に実施することが重要とされている。
【0004】
しかしながら、従来の締固め装置では、車輪で走行するのでニューマチックケーソン工法により導水渠の壁を施工する際の再振動のように、足場上で締固め作業を行う場合には適用できないとの課題があった。また、スイッチ操作で上下動させるので、バイブレータの貫入深さや加振時間が作業者個人の知識や技量に左右されており、人力によって上下動する場合よりも貫入状況を作業者が把握しにくいため、品質や美観が不均一になってしまうおそれがあった。
【0005】
そのため、コンクリートの締固め作業を省力化できるとともに、従来の人力による作業と同等の品質や美観を確保しつつ、均一性を向上できる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-233638号公報
【特許文献2】実開平6-63740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かくして、本発明は前記従来の課題に対処すべく創案されたものであって、足場を活用して締固め作業を行うことができ、例えばバイブレータのような振動機の貫入深さや加振時間を作業者個人の知識や技量に左右されることなく、もって人力で作業する場合と同等の品質や美観を確保しつつ、遜色なく均一にコンクリートの締固め作業を行うことができ、さらには作業者の作業負担を極力軽減するとともに、コンクリートの締固め作業を省力化できるコンクリート締固め用振動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
コンクリート構造体の施工領域を囲う複数の型枠パネルで形成されたコンクリート型枠本体と、
前記コンクリート型枠本体の内側に該コンクリート型枠本体の長手方向に向かい間隔をあけて複数設置された支柱部材と、
前記複数の支柱部材の上方に架設され、前記コンクリート型枠本体の長手方向に向かい延出するガイドレール部材と、
前記ガイドレール部材に沿って走行可能に構成された締固め用振動車と、を備え、
前記締固め用振動車は、前記型枠パネルの表面に沿って昇降するケーブル部材と、前記ケーブル部材の先端に設けられ、振動する振動子を備えた振動手段と、前記ケーブル部材および前記振動手段を揺動可能とした駆動手段と、を有し、
振動した状態の前記振動子が前記コンクリート型枠本体内に打設された打設コンクリート中の所定箇所に位置するまで降下しその後前記所定箇所から上昇するように、前記振動手段および前記ケーブル部材を前記駆動手段により揺動させて打設コンクリートの締固めを行う、
ことを特徴とし、
または、
前記駆動手段は、前記振動手段および前記ケーブル部材を、所定高さまで所定時間で降下させ、その後減速または停止させ、その後上昇させるように自動制御される、
ことを特徴とし、
または、
前記コンクリート型枠本体の長手方向に配置される型枠パネルには、コンクリートを打設する側の側面であって、該型枠パネルの長手方向に向かい伸長する帯状センサ部材を有し、
前記帯状センサ部材は、前記側面の高さ方向に間隔を有して複数配置された、
ことを特徴とし、
または、
前記所定箇所とは、前記帯状センサ部材が貼着されている箇所であり、
前記帯状センサ部材は、前記所定箇所までの前記振動手段の貫入を検知可能である、
ことを特徴とし、
または、
前記締固め用振動車は、前記ガイドレール部材上を走行可能、または、前記ガイドレールに吊下げられた状態で走行可能に構成されている、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、足場を活用して締固め作業を行うことができ、例えばバイブレータのような振動機の貫入深さや加振時間を作業者個人の知識や技量に左右されることなく、もって人力で作業する場合と同等の品質や美観を確保しつつ、遜色なく均一にコンクリートの締固め作業を行うことができ、さらには作業者の作業負担を極力軽減するとともに、コンクリートの締固め作業を省力化できるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の架設型締固め用振動車を使用したコンクリート締固め用振動装置を説明した説明図(1)である。
図2】本発明の架設型締固め用振動車を使用したコンクリート締固め用振動装置を説明した説明図(2)である。
図3】画面上に描画された締固め状況を識別する説明図である。
図4】本発明の吊下型締固め用振動車を使用したコンクリート締固め用振動装置を説明した説明図(1)である。
図5】本発明の吊下型締固め用振動車を使用したコンクリート締固め用振動装置を説明した説明図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例1及び実施例2に基づき説明する。なお、各実施例はあくまでも例示であって以下実施例に限定されるものではない。
コンクリート構造体の施工にあたっては、複数の型枠パネル2を用いてコンクリート型枠本体3を形成し、該コンクリート型枠本体3によって前記コンクリート構造体の施工領域を囲うように設置されている。
【0012】
まず、実施例1につき図1及び図2に基づき説明する。
図1及び図2は、コンクリート締固め用振動装置1の構成を説明した図である。図1は正面から見た断面図であり、図2は側面から見た断面図である。図1及び図2から理解されるとおり、本件発明のコンクリート締固め用振動装置1は、該コンクリート締固め用振動装置1を構成する締固め用振動車6がコンクリート構造体の打設箇所の上方であって、コンクリート型枠本体3の幅方向に跨がる様にして設けられている。
【0013】
本実施例1では、このコンクリート型枠本体3の内側、すなわちコンクリートが打設される側に、前記コンクリート型枠本体3の高さと略同等の高さ(長さ)を有する複数の支柱部材4が直立した状態で設置されて足場が仮設されている。前記支柱部材4は、前記コンクリート型枠本体3の長手方向に向かい間隔をあけて設置されており(図2参照)、図1から理解されるとおり、前記支柱部材4は、前記コンクリート型枠本体3の幅方向両端側に対となるよう設けられる。
【0014】
そして、コンクリート型枠本体3の長手方向に向かい間隔をあけて複数設置された支柱部材4の上方には、前記コンクリート型枠本体3の長手方向に向かい延出するガイドレール部材5が複数の支柱部材4を架設する状態で設けられている(図2参照)。
【0015】
つまり、一対の支柱部材4の上方には一対のガイドレール部材5が設けられている。そして、前記一対のガイドレール部材5上に架設型締固め用振動車6が載置され、前記一対のガイドレール部材5上を架設型締固め用振動車6がコンクリート型枠本体3の長手方向に向かい走行可能に構成されている。前記ガイドレール部材5は、例えば一定の長さを有するH型鋼が用いられており、H型鋼のウェブ上を前記架設型締固め用振動車6が走行し、フランジ部分が脱輪等を防止するストッパーの役割を有している。
【0016】
ここで、架設型締固め用振動車6の構成につき説明する。
前記架設型締固め用振動車6は、前記一対のガイドレール部材5上を走行するため、例えば片側に3つ、計6つの車輪が台枠に取り付けられている(図2参照)。なお、この台枠上には下記構成部材の他に人が乗っても問題なく走行できる程度の強度を有している。
【0017】
そして、図1及び図2に示されるとおり、前記台枠上には、型枠パネル2に沿って昇降するケーブル部材7と、前記ケーブル部材7を上下方向に揺動(昇降)可能とした駆動手段8と、前記ケーブル部材7の先端に設けられ、振動する振動子9を備えた振動手段(バイブレータ)とが、幅方向両側に設けられて構成されている。なお、駆動手段8により昇降させる対象は、ケーブル部材7の先端に振動手段8が取り付けられたいわゆるバイブレータユニットである。
これにより、架設型締固め用振動車6は、幅方向両側の締固め作業を一度に行うことができるのである。
【0018】
ここで、前記駆動手段8は、例えばエアシリンダーが活用され、前記駆動手段8に接続された小型コンプレッサを用いて、エアシリンダーの上下端に圧縮空気を給排気することで、伸縮する。これにより、シリンダーに固定されたケーブル部材7を上下方向に揺動可能としているのである。また、本実施例1では、駆動手段8、ここではエアシリンダーを立てて設置し、前記ケーブル部材7と固定することで1層ごとの打ち込み範囲を前記ケーブル部材7の先端に設けられた振動子9を備えた振動手段が振動しつつ、上下動することで打設したコンクリートの締固めを行う。
【0019】
なお、駆動手段8に前記ケーブル部材7を固定する方法としては、ケーブル用受け部材(例えば断面が半円状のパイプなど)にケーブル部材7をはめ込み、後述するケーブル部材7のマーカー18に基づいて位置決めをし、クランプで固定することなどが考えられる(図5参照)。
【0020】
さらに、エアシリンダーを用いて上下動を機械化することにより省力化を実現しつつ、排気量・吸気量の調整により、エアシリンダーの上下動の速度を容易に制御することもできるのである。
【0021】
ここで、コンクリート構造体の施工は、図1及び図2から理解されるとおり、コンクリートを例えば50cm程度の厚み分(高さ分)打設して、それを1層目とし、その1層目の打設したコンクリート層の上に、再びコンクリートを同程度の厚み分(高さ分)打ち重ねて2層目とする。このコンクリート層の打ち重ねを繰り返して複数層として施工する。
【0022】
そのため、先端に振動子9を備えた振動手段を有するケーブル部材5には、コンクリートの打設高さに応じて(例えば50cm間隔で)異なった色のマーカー18が付されているため、振動を加える深さを調整でき、駆動手段8に前記ケーブル部材7を固定する位置決めが容易に行えるよう構成されている。
【0023】
コンクリート構造体の品質や美観性を左右する要素としては、コンクリート内に含有する空隙や余剰水を適切に排除することが挙げられている。そのため、コンクリート打設後約30分経過後に実施する再振動時に、前記振動子9の貫入の深さや降下時と上昇時の貫入速度、加振時間などが重要となる。特に、コンクリート層とコンクリート層とが打ち重なる境界面、すなわち打ち重ね面部10の締固め作業の正確性や均質性は、コンクリート構造体の品質や美観性に大きな影響を与えるのである。
【0024】
そこで、コンクリート打設後の再振動時に本発明を用いることで、本発明の効果が最大限に生かされることとなる。また、再振動のタイミングは、コンクリート打設後約30分経過後に実施することでコンクリート内に含有する空隙や余剰水を適切に排除することでき、コンクリートの品質や美観性が向上する。
【0025】
本実施例1では、振動子9を備えた振動手段の貫入位置は、型枠パネル2と埋設配筋との間のかぶり部分に貫入する(図1参照)。この貫入作業は、駆動手段8(例えばエアシリンダー)により振動子9を備えた振動手段の上下動が自動制御されており、最適な締固め時間と速度が確保される。
【0026】
例えば、コンクリート1層あたりの厚み(高さ)を50cmとした場合、コンクリート層とコンクリート層との境界面である打ち重ね面部10から下層のコンクリート層に振動子9を備えた振動手段が貫入する深さ(高さ)、すなわち打継ぎ部分11の深さ(高さ)を20cm程度とし、振動子9を備えた振動手段が打継ぎ部分11まで到達するよう、前記駆動手段8(例えばエアシリンダー)の上下動のストローク長を設定する。この場合、駆動手段8のストローク長は70cmとなる。
【0027】
ここで、前記駆動手段8により振動子9を備えた振動手段を一定の貫入速度で下降させると、新たに打設したコンクリート層(上層)と既存のコンクリート層(下層)との境界、すなわち打ち重ね面部10において、上層と下層のコンクリートの硬さ(凝結の進行具合)の違いより振動子9を備えた振動手段が傾いてしまい、既存のコンクリート層(下層)の打継ぎ部分11に適切に貫入されないことがある。なお、貫入速度が速い場合も同様である。
【0028】
そこで、駆動手段8は、振動手段およびケーブル部材7を、所定高さ(振動手段の先端部が打ち重ね面部10に到達する高さ)、または、振動手段の先端部が既存のコンクリート層(下層)に貫入する高さまで所定時間(所定速度)で降下させ、その後降下速度を減速または停止させ、その後上昇させるように自動制御される。つまり、新たに打設したコンクリート層(上層)と既存のコンクリート層(下層)との境界面である打ち重ね面部10から、振動子9を備えた振動手段が降下する貫入速度を減速または停止させることで、振動子9を備えた振動手段の姿勢を修正しつつ確実に既存のコンクリート層(下層)の打継ぎ部分11に貫入させることができるのである。
【0029】
コンクリート1層あたりの厚み(高さ)を50cmとした場合は、まず新たに打設したコンクリート層では所定時間(例えば3秒間)で降下させる(降下距離50cm)。
【0030】
そして、振動子9を備えた振動手段の先端が打ち重ね面部10以深の打継ぎ部分11(下降距離50~70cmの間)では、既存のコンクリート層(下層)のコンクリート抵抗力が増大するため、振動子9を備えた振動手段の貫入速度を減速または停止させる(例えば2秒間)。
【0031】
その後、所定時間(例えば5秒間)をかけて振動子9を備えた振動手段を上昇させてコンクリート層から抜き取る。この場合も前記振動子9を備えた振動手段は振動させた状態で上昇させる必要があり、打設したコンクリートに跡が残ってしまったり、振動手段が抜けなくなることを防止するためである。
【0032】
特に、振動子9を備えた振動手段を上昇させるためにかける所定時間は、降下にかかる所定時間より少し長めの時間をかけて上昇させる。つまり、上昇させる方がゆっくり上昇させるため、例えば貫入速度は降下速度が233mm/sとした場合、上昇速度は140mm/sと減速させて上昇させることとなる。
【0033】
ここで、振動子9を備えた振動手段の振動が打継ぎ部分11にまで伝達していることを確認するため、前記打継ぎ部分11の最深降下位置(打ち重ね面部10から例えば20cm降下した位置)に柔軟性を有する細長い帯状をした帯状センサ部材12がコンクリート型枠本体3の長手方向に向かい伸長して貼着されている(図2参照)。
【0034】
前記帯状センサ部材12は、前記コンクリート型枠本体3の長手方向に配置される型枠パネル2の内側、つまりコンクリート打設する側の側面に、例えば伸長方向に1m間隔で貼着される(図2参照)。そして、前記型枠パネル2の高さ方向に間隔を有して貼着されているが、もっとも各コンクリート層の打継ぎ部分11の最深降下位置に貼着されることとなる。
【0035】
また、帯状センサ部材12は、型枠パネル2に貼着されているため、打設したコンクリートの養生後、前記型枠パネル2を取り外す際に前記帯状センサ部材12も共に取り外されることとなるのである。
【0036】
そして、この帯状センサ部材12は、例えばシート状の圧力センサ、あるいはシート状の薄型振動センサが用いられ、打継ぎ部分11の最深降下位置まで振動子9を備えた振動手段が貫入すると、圧力あるいは振動により貫入を検知することができる。前記帯状センサ部材12が圧力あるいは振動を検知すると、通信端末の画面上にマッピングされた状態で表示され、この表示されたマッピングによりリアルタイムに締固め状況を識別できるのである。
【0037】
これにより、振動子9を備えた振動手段が振動した状態で、駆動手段8が上下動することによって締固め作業を行い、前記振動子9を備えた振動手段が下層のコンクリート層の打継ぎ部分11に貫入していることを帯状センサ部材12により確認する。そして仮に、下層のコンクリート層への貫入を帯状センサ部材12が検知しなかった場合には、振動子9を備えた振動手段の下降速度が遅くなるように調整する。この調整は、駆動手段8の排気量・吸気量を調整し上下動の速度を調節することで降下速度を制御することができる。なお、下降速度の調整は検知結果から自動で行うよう制御してもよい。
【0038】
そして、上述のとおり、帯状センサ部材12により下層のコンクリート層への貫入が検知され、振動子9を備えた振動手段が振動した状態で所定回数(例えば1往復)上下動して締固め作業が完了する。その後、架設型締固め用振動車6が次の締固め作業を行う箇所までガイドレール部材5上を移動し、締固め作業が実施される。なお、締固め作業が行われる間隔は、現場の状況にもよるが30~40cm間隔で実施され、次の締固め作業が行われる位置まで自動で移動するよう前記架設型締固め用振動車6を制御してもよい。
【0039】
前記架設型締固め用振動車6が締固め作業を行った場所とその際の貫入深さ(下層のコンクリート層への貫入)を自動記録(マッピング)し、例えば管理帳票を自動で作成するようシステム化してもよい(図3参照)。なお、図3は例えばタブレットなどの画面上に描画された締固め状況を識別する説明図である。
【0040】
次に、実施例2につき図4及び図5に基づき説明する。
前述した実施例1は、打設箇所上方であってコンクリート構造体の長手方向に平行して一対のガイドレール部材5が設けられ、前記一対のガイドレール部材5上を架設型締固め用振動車6が移動しつつ、締固め作業を行う発明に対し、実施例2は、作業員が作業する足場用踏板13の上空に吊下され、吊下された状態で前記コンクリート構造体の長手方向に向かって吊下型締固め用振動車16が移動しつつ、締固め作業を行う発明である。
【0041】
実施例2において、コンクリート締固め用振動装置1は、コンクリート型枠本体3を形成する型枠パネル2の外側に組まれた足場用支柱部材14が利用される(図4図5参照)。前記足場用支柱部材14は、型枠パネル2の外側に該型枠パネル2と所定距離離した状態で設置され、コンクリート型枠本体3の外周に複数の足場用支柱部材14が所定の間隔を有して設置される。本発明ではコンクリート型枠本体3の幅方向一方側であって(図4では左側)、長手方向に向かい設置された複数の足場用支柱部材14が活用されることとなる。
【0042】
前記複数の足場用支柱部材14の上方には、コンクリート型枠本体3側に略水平方向に延出する支持部材15がそれぞれ取り付けられている。そして、前記複数の支持部材15に架設され、吊下された状態で、前記コンクリート型枠本体3の長手方向に向かって平行に延出する2本のガイドレール部材5が取り付けられている(図4図5参照)。
【0043】
このガイドレール部材5を架設する位置は、コンクリート型枠本体3の上端面より高い位置に組まれた足場用踏板13の上空位置であって、前記ガイドレール部材5に吊下された吊下型締固め用振動車16本体が前記足場用踏板13と接触しない位置に設けられる(図5参照)。
【0044】
前記吊下型締固め用振動車16は、前記ガイドレール部材5の長手方向に移動可能に構成された走行部材17を有している。前記走行部材17は、前記ガイドレール部材5の長手方向に移動するための車輪などを構成部品としている。
【0045】
図5に示すように走行部材17は、1本のガイドレール部材5を左右から挟み込むようにして取り付けられ、前記ガイドレール部材5の長手方向に間隔をあけて例えば2つ取り付けられている。1本のガイドレール部材5には、4つの走行部材17が取り付けられているが、この数に限定されるものではなく、4つ以上走行部材17を取り付けてもかまわない。
そして、この走行部材16に前記吊下型締固め用振動車16が吊下されて構成されている。
【0046】
ここで、吊下型締固め用振動車16の構成につき説明する。なお、基本的構成は実施例1の架設型締固め用振動車6の構成と同様であり、ここでは、実施例1の架設型締固め用振動車6の構成と異なる構成について説明する。
【0047】
前記吊下型締固め用振動車16は、図4及び図5に示されるとおり、コンクリート型枠本体3側に、前記型枠パネル2に沿って昇降するケーブル部材7と、前記ケーブル部材7を上下方向に揺動可能とした駆動手段8と、前記ケーブル部材7の先端に設けられ、振動する振動子9を備えた振動手段とを有して構成されている。
【0048】
前記駆動手段8は、例えばエアシリンダーが活用され、小型コンプレッサを用いて、エアシリンダーの上下端に圧縮空気を給排気することで、伸縮する。ここで、吊下型締固め用振動車16は、架設型締固め用振動車6と異なり、前記小型コンプレッサは重量があるため吊下させず、足場用踏板13上に載置し、前記駆動手段8に延長ホースなどを接続して圧縮空気の給排気を行っている。
【0049】
次に、本発明を再振動時の締固め作業に用いた場合の作業方法を簡単に説明する。なお、コンクリート1層あたりの厚み(高さ)を50cmとした。
コンクリート型枠本体3にコンクリートを打設し、該打設から約30分経過後にケーブル部材7の先端に設けられた振動子9を備えた振動手段をコンクリートの加振箇所であって、型枠パネル2と配筋との間のかぶり部分に挿入する。
【0050】
なお、前記ケーブル部材5にはコンクリートの打設高さに応じて(例えば50cm間隔で)異なった色のマーカー18が付されているため、振動を加える深さを調整でき、駆動手段8に前記ケーブル部材7を固定する位置決めが容易に行えるよう構成されている。
【0051】
そして、駆動手段8、ここではエアシリンダーを駆動して、前記ケーブル部材7の先端に設けられた振動子9を備えた振動手段が該エアシリンダーの上下動により自動的に1往復される。
【0052】
ここで、振動子9を備えた振動手段を自然落下の状態で降下させ打設コンクリートに挿入させると、新たに打設したコンクリート層(上層)と既存のコンクリート層(下層)との境界、すなわち打ち重ね面部10において、上層と下層のコンクリートの硬さの違いより振動子9を備えた振動手段が傾いてしまい、既存のコンクリート層(下層)の打継ぎ部分11に貫入されないことがある。
【0053】
そのため、まず3秒間で新たに打設したコンクリート層の厚み(高さ)である50cmの距離を降下させ、そして、振動子9を備えた振動手段の先端が打ち重ね面部10以深の打継ぎ部分11(下降距離50~70cmの間)では、振動子9を備えた振動手段の貫入速度を約2秒間減速または停止させ、その後、5秒間かけて振動子9を備えた振動手段を上昇させた。なお、この上下動の間は、常に振動子9を備えた振動手段は振動した状態である。
【0054】
また、振動子9を備えた振動手段の振動が打継ぎ部分11まで伝達していることを確認するため、前記打継ぎ部分11の最深降下位置(打ち重ね面部10から例えば20cm降下した位置)に柔軟性を有する細長い帯状をした帯状センサ部材12がコンクリート型枠本体3の長手方向に向かい伸長して貼着されている。
【0055】
これにより、帯状センサ部材12が圧力あるいは振動を検知すると、通信端末の画面上にマッピングされた状態で表示され、この表示されたマッピングによりリアルタイムに締固め状況を把握できるのである。
【0056】
その後、次の加振箇所とした既に加振した箇所から30~40cm程度進行方向に締固め用振動車を移動させて締固め作業を行う。次の加振箇所でも上記手順で締固め作業を行い、この作業を各コンクリート層ごとに繰り返し行っていくこととなる。
【0057】
本発明を構成する架設型締固め用振動車6あるいは吊下型締固め用振動車16は、加振箇所に容易に移動できるよう構成されており、また振動子9を備えた振動手段の上下動を自動化することで作業者の作業負担を極力軽減するとともに、コンクリートの締固め作業を省力化につながる。
【0058】
さらに、振動子9を備えた振動手段の貫入深さや加振時間を作業者個人の知識や技量に左右されることが少ないため、人力で作業する場合と同等の品質や美観を確保しつつ、遜色なく均一にコンクリートの締固め作業を行うことができるのである。
【符号の説明】
【0059】
1 コンクリート締固め用振動装置
2 型枠パネル
3 コンクリート型枠本体
4 支柱部材
5 ガイドレール部材
6 架設型締固め用振動車
7 ケーブル部材
8 駆動手段
9 振動子
10 打ち重ね面部
11 打継ぎ部分
12 帯状センサ部材
13 足場用踏板
14 足場用支柱部材
15 支持部材
16 吊下型締固め用振動車
17 走行部材
18 マーカー

図1
図2
図3
図4
図5