(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135508
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】エンジンのスロットル装置
(51)【国際特許分類】
F02D 9/10 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
F02D9/10 E
F02D9/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046226
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕太
【テーマコード(参考)】
3G065
【Fターム(参考)】
3G065CA11
3G065CA24
3G065CA27
3G065DA04
3G065HA16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】組付性が良好で、高精度の吸気流量の調整機能を有し、高い耐久性を達成できるエンジンのスロットル装置を提供する。
【解決手段】それぞれスロットルボアが形成されて、互いの接合面4rを当接させて結合した複数のスロットルボディ2rと、複数のスロットル弁7l,7r、各スロットル弁7l,7rの間の中央軸部8m、及び両端部で回動可能に支持される一対の端軸部8l,8rを一体化したバルブ一体型スロットル軸6と、各接合面4r上で円形状をなして開口してスロットルボアまで貫設され、内部に中央軸部8mが挿入されて回動可能に支持する複数の軸孔25rと、平板状をなして透孔29aが貫設され、透孔29aに中央軸部8mが嵌め込まれた状態で接合面4rの間に挟み込まれるシール材29とを備えた。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれスロットルボアが形成されて、互いの接合面を当接させて結合した複数のスロットルボディと、
前記各スロットルボア内にそれぞれ配設された複数のスロットル弁、前記各スロットル弁の間に形成された中央軸部、及び両端部に形成されて前記スロットルボディ内でそれぞれ回動可能に支持される一対の端軸部を一体化してなるバルブ一体型スロットル軸と、
前記複数のスロットルボディの前記接合面上で軸線を中心とした円形状をなして開口し、前記各接合面から軸線に沿って前記スロットルボアまでそれぞれ貫設されて、内部に前記中央軸部がそれぞれ挿入されて回動可能に支持すると共に、隣り合う前記スロットルボアの連通を前記中央軸部により防止された複数の軸孔と、
前記複数のスロットルボディの前記接合面上で前記軸孔を横切るように開口し、前記各接合面から軸線に沿って前記スロットルボアまでそれぞれ貫設されて、前記軸孔への前記中央軸部の挿入に伴って前記スロットル弁を前記スロットルボアへと通過させる複数の挿入スリットと、
平板状をなして透孔が貫設され、前記透孔に前記バルブ一体型スロットル軸の前記中央軸部が嵌め込まれた状態で前記接合面の間に挟み込まれて、前記挿入スリットを介した隣り合う前記スロットルボアの連通を防止するシール材と、
を備えたことを特徴とするエンジンのスロットル装置。
【請求項2】
前記複数のスロットルボディは、第1及び第2スロットルボディを結合してなり、
前記接合面は、前記第1及び第2スロットルボディの相対向する部位にそれぞれ形成され、
前記バルブ一体型スロットル軸は、前記複数のスロットル弁として第1及び第2スロットル弁が形成されると共に、前記第1及び第2スロットル弁の間に前記中央軸部が形成され、前記一対の端軸部が前記第1及び第2スロットルボディ内でそれぞれ回動可能に支持され、
前記軸孔及び前記挿入スリットは、前記第1及び第2スロットルボディの前記接合面にそれぞれ開口し、
前記シール材は、前記第1及び第2スロットルボディの前記接合面の間に挟み込まれている
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項3】
前記複数のスロットルボディは、第3スロットルボディの両側に第1及び第2スロットルボディを結合してなり、
前記接合面は、前記第1及び第3スロットルボディの相対向する部位にそれぞれ形成されると共に、前記第2及び第3スロットルボディの相対向する部位にそれぞれ形成され、
前記バルブ一体型スロットル軸は、前記複数のスロットル弁として第3スロットル弁の両側に第1及び第2スロットル弁が形成されると共に、前記第3スロットル弁と前記第1スロットル弁との間、及び前記第3スロットル弁と前記第2スロットル弁との間にそれぞれ前記中央軸部が形成され、前記一対の端軸部が前記第1及び第2スロットルボディ内でそれぞれ回動可能に支持され、
前記軸孔及び前記挿入スリットは、前記第1及び第2スロットルボディの前記接合面、及び第3スロットルボディの一対の前記接合面にそれぞれ開口し、
前記シール材は、前記第1及び第3スロットルボディの前記接合面の間、及び前記第2及び第3スロットルボディの前記接合面の間にそれぞれ挟み込まれている
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項4】
前記シール材は、可撓性を有し、前記接合面上に開口する前記挿入スリットを避けた位置に、前記中央軸部を前記透孔内に嵌め込むための切れ目が形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項5】
前記切れ目は、前記透孔から前記シール材の外周縁まで前記挿入スリットと平行に形成されている
ことを特徴とする請求項4に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項6】
前記シール材は、伸縮性を有し、前記透孔を拡張して前記スロットル弁を通過させ得る
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項7】
互いに当接した前記接合面の間に、前記シール材を包囲する環状をなす封止部材が介装されている
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項8】
前記中央軸部及び前記一対の端軸部の外径は、前記軸孔の内径と同一に設定されている
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のエンジンのスロットル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのスロットル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スロットル装置に備えられたバタフライ式のスロットル弁は、スロットル軸とは別部品として製作され、スロットル軸に貫設されたスリット内に挿入・配置されてビス等で固定されている。このためスロットル弁の開状態では、スロットルボア内に露出したスロットル軸により吸気の流通が妨げられる現象が生じ、特に高い全開吸気量が要求される高性能エンジン等では改善が要望されていた。
【0003】
その対策として、例えば特許文献1には、スロットル弁を一体化したスロットル軸が開示されている。以下、バルブ一体型スロットル軸と称するが、通常のスロットル軸のように軸線に沿ってスロットルボディの軸孔に挿入できないことから、この特許文献1のスロットル装置では、単気筒用の分割式スロットルボディを採用している。即ち、バルブ一体型スロットル軸を境界としてスロットルボディを吸気流通方向に分割してそれぞれボディ部材とし、組付工程では、両ボディ部材の間にバルブ一体型スロットル軸を挟み込んだ状態で結合している。
【0004】
また、スロットル弁の閉弁時には、その周縁先端部で吸気が絞られて負圧が発生する。仮に両ボディ部材の間に形成される接合面をバルブ一体型スロットル軸の軸線と一致させた場合には、接合面とスロットル弁の周縁先端部とが近接して、負圧に起因する外部からのエアリークの要因になり得る。そこで、特許文献1の
図1に示すように、バルブ一体型スロットル軸の軸線からずれた位置に両ボディ部材の接合面を設定することで、スロットル弁の周縁先端部から離間させている。結果として接合面は、バルブ一体型スロットル軸を回動可能に支持する一対のベアリングの軸線に対してもずれた位置に設定される。このため両ボディ部材の結合時には、一方のボディ部材に形成された半円以上のベアリング凹部と、他方のボディ部材に形成された半円未満のベアリング凹部とが組み合わさり、これにより形作られた真円のベアリング保持孔にベアリングが嵌合・保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のスロットル装置は、スロットルボディを分割構成としているが故に、以下に述べる問題が生じた。
【0007】
第1の問題は、組付性が良好とは言い難い点である。
スロットル装置の組付工程では、まず、バルブ一体型スロットル軸の両端にベアリング、モータ駆動ユニット、戻りバネ等の各部材を装着する。次いで、一方のボディ部材上の所定位置にバルブ一体型スロットル軸を配設すると共に、ボディ部材上の所定位置に各部材をそれぞれ配設する。次いで、一方のボディ部材上に、バルブ一体型スロットル軸を挟み込んだ状態で他方のボディ部材を配設する。
【0008】
しかしながら、一方のボディ部材上にバルブ一体型スロットル軸を配設する際に、バルブ一体型スロットル軸はボディ部材上に上方から配設可能であるが、ベアリングは、半円以上の形状をなすベアリング凹部に上方から配設できない。そこで、バルブ一体型スロットル軸の軸線に沿ってベアリングを一旦横にずらした上で、バルブ一体型スロットル軸を配設し、その後に、再び軸線に沿って正規位置に戻しながらベアリング凹部に側方から嵌め込んでいる。微小なベアリングを狭いボディ部材上で取り扱う必要があることから、非常に煩雑且つ高い技量を要する操作となり、組付性の点で改良の余地があった。
【0009】
第2の問題は、スロットル弁の開閉精度が良好とは言い難い点である。
ベアリングを保持するベアリング保持孔は、一対のボディ部材にそれぞれ形成されたベアリング凹部の組み合わせにより形作られるものの、当初から真円のベアリング保持孔を加工する場合に比較して真円度が低い。このため、バルブ一体型スロットル軸の軸精度、ひいてはスロットル弁の開閉精度が低下し、吸気流量の調整機能に関して今一つ改良の余地があった。
【0010】
第3の問題は、耐久性が良好とは言い難い点であり、上記したバルブ一体型スロットル軸の軸精度と関連する。
バルブ一体型スロットル軸の軸精度が悪い場合には、例えばスロットルボアの内周壁とスロットル弁とが所期の位置関係に保たれずに意図しない摺接が発生し、摩耗を促進させてしまう。従って、スロットル装置の耐久性を低下させる要因になり得る。
【0011】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、組付性が良好であると共に、高精度の吸気流量の調整機能を有し、さらに高い耐久性を達成することができるエンジンのスロットル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明のエンジンのスロットル装置は、それぞれスロットルボアが形成されて、互いの接合面を当接させて結合した複数のスロットルボディと、各スロットルボア内にそれぞれ配設された複数のスロットル弁、各スロットル弁の間に形成された中央軸部、及び両端部に形成されてスロットルボディ内でそれぞれ回動可能に支持される一対の端軸部を一体化してなるバルブ一体型スロットル軸と、複数のスロットルボディの接合面上で軸線を中心とした円形状をなして開口し、各接合面から軸線に沿ってスロットルボアまでそれぞれ貫設されて、内部に中央軸部がそれぞれ挿入されて回動可能に支持すると共に、隣り合うスロットルボアの連通を中央軸部により防止された複数の軸孔と、複数のスロットルボディの接合面上で軸孔を横切るように開口し、各接合面から軸線に沿ってスロットルボアまでそれぞれ貫設されて、軸孔への中央軸部の挿入に伴ってスロットル弁をスロットルボアへと通過させる複数の挿入スリットと、平板状をなして透孔が貫設され、透孔にバルブ一体型スロットル軸の中央軸部が嵌め込まれた状態で接合面の間に挟み込まれて、挿入スリットを介した隣り合うスロットルボアの連通を防止するシール材と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
その他の態様として、複数のスロットルボディが、第1及び第2スロットルボディを結合してなり、接合面が、第1及び第2スロットルボディの相対向する部位にそれぞれ形成され、バルブ一体型スロットル軸が、複数のスロットル弁として第1及び第2スロットル弁が形成されると共に、第1及び第2スロットル弁の間に中央軸部が形成され、一対の端軸部が第1及び第2スロットルボディ内でそれぞれ回動可能に支持され、軸孔及び挿入スリットが、第1及び第2スロットルボディの接合面にそれぞれ開口し、シール材が、第1及び第2スロットルボディの接合面の間に挟み込まれていてもよい。
【0014】
その他の態様として、複数のスロットルボディが、第3スロットルボディの両側に第1及び第2スロットルボディを結合してなり、接合面が、第1及び第3スロットルボディの相対向する部位にそれぞれ形成されると共に、第2及び第3スロットルボディの相対向する部位にそれぞれ形成され、バルブ一体型スロットル軸が、複数のスロットル弁として第3スロットル弁の両側に第1及び第2スロットル弁が形成されると共に、第3スロットル弁と第1スロットル弁との間、及び第3スロットル弁と第2スロットル弁との間にそれぞれ中央軸部が形成され、一対の端軸部が第1及び第2スロットルボディ内でそれぞれ回動可能に支持され、軸孔及び挿入スリットが、第1及び第2スロットルボディの接合面、及び第3スロットルボディの一対の接合面にそれぞれ開口し、シール材が、第1及び第3スロットルボディの接合面の間、及び第2及び第3スロットルボディの接合面の間にそれぞれ挟み込まれていてもよい。
【0015】
その他の態様として、シール材が、可撓性を有し、接合面上に開口する挿入スリットを避けた位置に、中央軸部を透孔内に嵌め込むための切れ目が形成されていてもよい。
【0016】
その他の態様として、切れ目が、透孔からシール材の外周縁まで挿入スリットと平行に形成されていてもよい。
【0017】
その他の態様として、シール材が、伸縮性を有し、透孔を拡張してスロットル弁を通過させ得るように構成されていてもよい。
【0018】
その他の態様として、互いに当接した接合面の間に、シール材を包囲する環状をなす封止部材が介装されていてもよい。
【0019】
その他の態様として、中央軸部及び一対の端軸部の外径が、軸孔の内径と同一に設定されていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のエンジンのスロットル装置によれば、組付性が良好であると共に、高精度の吸気流量の調整機能を有し、さらに高い耐久性を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態のエンジンのスロットル装置を示す斜視図である。
【
図8】バルブ一体型スロットル軸の中央軸部にシール材を組み付けるときの説明図である。
【
図9】右スロットルボディの軸孔及び挿入スリットにバルブ一体型スロットル軸の右軸部及び右スロットル弁を挿入するときの説明図である。
【
図10】同じく挿入を完了したときの説明図である。
【
図11】シール材に伸縮性を付与した別例を示す説明図である。
【
図12】第2実施形態のエンジンのスロットル装置を示す斜視図である。
【
図14】右スロットルボディの軸孔及び挿入スリットにバルブ一体型スロットル軸の右軸部及び右スロットル弁を挿入するときの説明図である。
【
図15】右スロットルボディに中央スロットルボディを結合したときの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下、本発明を自動二輪車に搭載される2気筒エンジン用のスロットル装置に具体化した第1実施形態を説明する。
図1は、本実施形態のエンジンのスロットル装置を示す斜視図、
図2は、同じく分解斜視図、
図3は、
図2のA矢視図である。
図示しない自動二輪車の車体には走行用動力源としてエンジンが搭載され、エンジンの後側に本実施形態のスロットル装置1が取り付けられる。以下の説明では、自動二輪車に搭乗した運転者を基準として、前後、左右及び上下方向を規定し、例えば
図1においては、スロットル装置1の奥側にエンジンが位置し、手前側にエアクリーナが位置している。
【0023】
スロットル装置1は、左スロットルボディ2lと右スロットルボディ2rとを結合してなる。左スロットルボディ2lの右側には右方に向けて結合ブロック部3lが突設され、右スロットルボディ2rの左側には左方に向けて結合ブロック部3rが突設されている。以下、各結合ブロック部3l,3rの端面をそれぞれ接合面4l,4rと称するが、これらの接合面4l,4rは前後方向に延びる長方形状をなし、互いに当接して図示しないボルトで締結され、これにより左及び右スロットルボディ2l,2rが結合されている。
結合ブロック部3l,3rは、本発明の「相対向する部位」に相当し、左スロットルボディ2lと右スロットルボディ2rとの何れか一方は、本発明の「第1スロットルボディ」に相当し、何れか他方は、本発明の「第2スロットルボディ」に相当する。結合ブロック部3l,3rの周辺は本発明の特徴部分のため、その詳細については後述する。
【0024】
左及び右スロットルボディ2l,2rには、それぞれ前後方向に単一のスロットルボア5l,5rが貫設されている。車体への搭載時には、各スロットルボア5l,5rの前端がエンジン側と接続され、後端がエアクリーナ側と接続される。
【0025】
図4は、
図3のIV-IV線断面図、
図5は、
図3のV-V線断面図である。
左スロットルボディ2l、各結合ブロック部3l,3r及び右スロットルボディ2rには、各部材2l,3l,3r,2rを左右方向に貫通するように1本のスロットル軸が配設されている。スロットル軸は、一対のスロットル弁7l,7rを一体化したバルブ一体型スロットル軸6として構成されている。詳しくは、バルブ一体型スロットル軸6は、左右一対のスロットル弁7l,7rと、左右に延びる軸線Cを中心とした円筒状をなす3箇所の軸部8l,8m,8rとを一体形成してなる。左及び右スロットル弁7l,7rは各スロットルボア5l,5rと対応する位置に形成され、それぞれスロットルボア5l,5r内に配設されて、その内周と対応する略円形板状をなしている。左及び右スロットル弁7l,7rの間には中央軸部8mが形成され、この中央軸部8mを介して左及び右スロットル弁7l,7rが互いに同一角度で連結されている。左スロットル弁7lと右スロットル弁7rとの何れか一方は、本発明の「第1スロットル弁」に相当し、何れか他方は、本発明の「第2スロットル弁」に相当する。
【0026】
左スロットル弁7lの左側、即ち、バルブ一体型スロットル軸6の左端部には左軸部8lが形成され、右スロットル弁7rの右側、即ち、バルブ一体型スロットル軸6の右端部には右軸部8rが形成され、それぞれ各スロットルボディ2l,2r内で回動可能に支持されている。詳しくは、左及び右スロットルボディ2l,2rには軸線Cを中心としてベアリング保持孔10l,10rが形成され、各ベアリング保持孔10l,10rにそれぞれベアリング9l,9rが嵌合・保持されている。左側のベアリング9lには左軸部8lが段差状に縮径して嵌め込まれ、右側のベアリング9rには右軸部8rが嵌め込まれている。これにより、バルブ一体型スロットル軸6全体が軸線Cを中心として回動し、各スロットルボア5l,5r内で左及び右スロットル弁7l,7rが開閉動作する。左軸部8l及び右軸部8rは、本発明の「一対の端軸部」に相当する。
【0027】
図3,4に示すように、右スロットルボディ2rの右側にはギヤ収容室11が右方に向けて開口形成され、その内部にバルブ一体型スロットル軸6の右軸部8rが突出して円弧状をなす被動ギヤ13が固定されている。被動ギヤ13と右スロットルボディ2rとの間には戻りバネ14が巻回され、被動ギヤ13を介してバルブ一体型スロットル軸6をスロットル弁7l,7rの閉方向に付勢している。被動ギヤ13の下方位置には、バルブ一体型スロットル軸6の軸線Cと平行にギヤピン15が立設され、このギヤピン15に中間ギヤ16が回転可能に支持されている。中間ギヤ16は小径部16aと大径部16bとからなり、小径部16aが被動ギヤ13と噛合している。
【0028】
右スロットルボディ2rの下部にはモータ17を収容したモータ収容室18が画成され、ギヤ収容室11の下部と連通している。モータ17の出力軸17aはギヤ収容室11内に突出して駆動ギヤ19が固定され、この駆動ギヤ19は中間ギヤ16の大径部16bと噛合している。ギヤ収容室11の開口部は脱着可能なカバー部材20で閉塞されると共に、ギヤ収容室11の周囲の凹溝11aとカバー部材20の周囲の凹溝20aとの間にはOリング21が介装されている。これによりギヤ収容室11及びモータ収容室18が液密保持され、内部の各ギヤ13,16,19やモータ17が雨水等から保護されている。図示はしないが、カバー部材20にはコネクタが設けられ、モータ17と電気的に接続されている。
【0029】
図1に示すように、左スロットルボディ2l及び右スロットルボディ2rにはIJ取付部22やネジ孔23等が設けられ、図示はしないが、IJ取付部22には燃料噴射用のインジェクタが取り付けられ、ネジ孔23にはアイドル吸気量を調整するバイパスエアスクリュが螺合する。車両への搭載時には、インジェクタのコネクタ及びカバー部材20のコネクタが図示しないハーネスを介して車両側のコントローラと接続され、エンジンの運転中にコントローラからの信号に基づきインジェクタやモータ17が駆動される。例えば、運転者のアクセル操作に応じてモータ17が駆動され、モータ17の駆動力が駆動ギヤ19、中間ギヤ16の大径部16b、小径部16a、被動ギヤ13を介して減速されながらバルブ一体型スロットル軸6に伝達される。
【0030】
これによりバルブ一体型スロットル軸6は、戻りバネ14の付勢力を受けながらアクセル操作に応じた方向にスロットル弁7l,7rを開閉させ、各スロットルボア5l,5rを流通するエンジンの吸気量が調整される。スロットルボア5l,5r内には円形板状のスロットル弁7l,7rだけが露出し、軸部8l,8m.8rは露出していない。従って、通常のスロットル軸のように軸部で吸気の流通が妨げられる現象は発生せず、高い全開吸気量を達成することができる。
【0031】
ところで、既述したようにバルブ一体型スロットル軸6では、通常のスロットル軸のように軸線Cに沿ってスロットルボディ2l,2rに組み付けることができない。その対策として特許文献1の発明では、バルブ一体型スロットル軸を境界としてスロットルボディを吸気流通方向に分割しているが、組付性、スロットル弁の開閉精度、及び耐久性の点で問題が生じた。そこで、本実施形態では、それぞれのスロットルボディ2l,2rを分割式とすることなく、これらの部材2l,2rに形成した挿入スリット26l,26rを介してスロットル弁7l,7rを各スロットルボア5l,5r内に配設する構造を採用しており、その詳細を以下に説明する。
【0032】
左及び右スロットルボディ2l,2rの接合面4l,4rには、それぞれ軸孔25l,25r及び挿入スリット26l,26rが開口形成されている。左右の軸孔25l,25rは、それぞれの接合面4l,4r上で軸線Cを中心とした円形状をなして開口し、左右方向においては接合面4l,4rから軸線Cに沿ってスロットルボア5l,5rまでそれぞれ貫設されている。左右の挿入スリット26l,26rは、それぞれの接合面4l,4r上で軸孔25l,25rを前後方向に直線状に横切るように開口し、左右方向においては接合面4l,4rから軸線Cに沿ってスロットルボア5l,5rまでそれぞれ貫設されている。
【0033】
従って、左及び右スロットルボディ2l,2rの接合面4l,4rを互いに当接させると、軸孔25l,25rが左右方向に連続し、挿入スリット26l,26rが左右方向に連続し、これらの軸孔25l,25r及び挿入スリット26l,26rを介して左右のスロットルボア5l,5rが連通することになる。
【0034】
なお、本実施形態では、各スロットルボディ2l,2rの接合面4l,4rにドリルで軸孔25l,25rを穿設し、その後にメタルソーを用いたすり割り加工により挿入スリット26l,26rを形成している。しかし、これに限るものではなく、任意の加工法を適用することができる。
【0035】
左及び右スロットルボディ2l,2rにバルブ一体型スロットル軸6が組み付けられた状態では、左右の軸孔25l,25r内にバルブ一体型スロットル軸6の中央軸部8mが挿入される。中央軸部8m、左軸部8l及び右軸部8rの外径は、軸孔25l,25rの内径と同一に設定され、特に中央軸部8mと軸孔25l,25rとは、互いの間に隙間を形成することなく、且つ軸孔25l,25r内での中央軸部8mの回動が許容されるように公差管理されている。このため、左右の軸孔25l,25rが中央軸部8mを回動可能に支持する軸受として機能し、これと共に、左右の軸孔25l,25r内に挿入された中央軸部8mが左右のスロットルボア5l,5rを隔絶して、軸孔25l,25rを介した互いの連通を防止する機能を奏する。
【0036】
図6は、
図4のVI-VI線断面図、
図7は、
図6のVII-VII線断面図である。
左右の挿入スリット26l,26rは、バルブ一体型スロットル軸6の各スロットル弁7l,7rを挿入可能なように、その位置及び形状が設定されている。詳しくは、
図6に示すように、バルブ一体型スロットル軸6と軸孔25l,25rとの軸線Cを一致させた位置関係において、挿入スリット26l,26rの前後長さ、即ち前後方向の領域は、スロットル弁7l,7rの前後方向の領域を含むように設定されている。また、挿入スリット26l,26rの厚み、即ち上下方向の領域は、スロットル弁7l,7rの上下方向の領域を含むように設定されている。結果として、バルブ一体型スロットル軸6の左軸部8lを左スロットルボディ2lの軸孔25lに挿入した状態で、挿入スリット26l内に左スロットル弁7lを挿入可能であり、また、右軸部8rを右スロットルボディ2rの軸孔25rに挿入した状態で、挿入スリット26r内に右スロットル弁7rを挿入可能となっている。
【0037】
一方、
図6,7に示すように、左及び右スロットルボディ2l,2rの接合面4l,4rの周囲には、軸孔25l,25r及び挿入スリット26l,26rを包囲するように、換言すると後述するシール材29を包囲するように、それぞれ四角環状をなす凹溝27l,27rが形成されている。そして、左及び右スロットルボディ2l,2rを結合する際に、互いの凹溝27l,27rの間にOリング28が介装されている。このOリング28は、本発明の「封止部材」に相当する。
【0038】
上記したようにバルブ一体型スロットル軸6の中央軸部8mにより、軸孔25l,25rを介した左及び右スロットルボア5l,5rの連通は防止されるものの、挿入スリット26l,26rを介して左及び右スロットルボア5l,5rは連通している。このため、双方のスロットルボア5l,5rを流通する吸気の圧力差により、挿入スリット26l,26rを介して吸気が相互に流通するエアリークが生じてしまう。このような不具合を防止すべく、本実施形態では、左及び右スロットルボディ2l,2rの接合面4l,4rの間にシール材29を介装する対策を講じている。
【0039】
図2,6には、外力を受けない状態のシール材29が示されている。本実施形態のシール材29は接合面4l,4rの形状に倣った長方形の平板状をなし、例えばバネ鋼等の板材をプレスにより打ち抜いて製作されることで、外力により弾性変形する可撓性を有している。シール材29の外周縁は接合面4l,4rのOリング21よりも若干内周側に位置し、中央には軸孔25l,25rと同一径の透孔29aが貫設されている。
【0040】
また、シール材29には、透孔29aから後縁までの領域に亘って切れ目29bが形成され、これによりシール材29の透孔29aよりも後側の部位が上下に分断されている。切れ目29bは挿入スリット26l,26rを避けた位置に形成されており、詳しくは、挿入スリット26l,26rよりも若干上側の位置で、挿入スリット26l,26rと平行な直線状をなすように形成されている。
【0041】
シール材29の透孔29a内にはバルブ一体型スロットル軸6の中央軸部8mが嵌め込まれ、この状態で左右の接合面4l,4rの間にシール材29が挟み込まれている。この位置関係において、
図6に示すように、シール材29の上下方向の領域が挿入スリット26l,26rの上下方向の領域を含むだけでなく、シール材29の前後方向の領域も挿入スリット26l,26rの前後方向の領域を含むように設定されている。結果として、挿入スリット26l,26rを含んだ接合面4l,4r上の領域がシール材29により覆われている。
【0042】
加えて、上記のようにシール材29の透孔29a内には中央軸部8mが嵌め込まれて塞がれると共に、切れ目29bは挿入スリット26l,26rを避けた位置に形成されている。結果として、左右の接合面4l,4rに開口する挿入スリット26l,26rの全ての領域がシール材29により閉塞され、これにより左右の挿入スリット26l,26rが隔絶されて、挿入スリット26l,26rを介した左右のスロットルボア5l,5rの連通が防止されている。従って、左及びスロットルボア5l,5rの間のエアリークを防止でき、それぞれのスロットルボア5l,5r内でスロットル開度に応じて吸気量を問題なく調整することができる。
【0043】
次いで、各スロットルボディ2l、2rへのバルブ一体型スロットル軸6の組付手順を説明する。
なお、以下の説明では、まず、バルブ一体型スロットル軸6を右スロットルボディ2rに組み付け、その後に左スロットルボディ2lを結合する場合を述べるが、組付手順はこれに限るものではない。逆に、バルブ一体型スロットル軸6を左スロットルボディ2lに組み付け、その後に右スロットルボディ2rを結合してもよい。
【0044】
図8は、バルブ一体型スロットル軸6の中央軸部8mにシール材29を組み付けるときの説明図、
図9は、右スロットルボディ2rの軸孔25r及び挿入スリット26rにバルブ一体型スロットル軸6の右軸部8r及び右スロットル弁7rを挿入するときの説明図、
図10は、同じく挿入を完了したときの説明図である。
【0045】
まず、シール材29の後縁の切れ目29bよりも上側の部位と下側の部位とをそれぞれ把持し、例えば
図8に矢印で示すように、上側の部位に右方への力を加え、下側の部位に左方への力を加える。シール材29は、それぞれの部位を撓ませながら、切れ目29bと共に透孔29aを後方に向けて開放する。このシール材29の変形を保ったまま、切れ目29bを経て透孔29a内にバルブ一体型スロットル軸6の中央軸部8mを導いて嵌め込む。シール材29に対する力を解除すると、自己の弾性でシール材29は元の平板状に戻り、切れ目29bが閉じられて中央軸部8mは透孔29a内からの離脱を規制される。
【0046】
次いで、バルブ一体型スロットル軸6の右軸部8rを右スロットルボディ2rの軸孔25rに相対向させた上で、軸線Cに沿って右方へと移動させる。まず、右軸部8rが軸孔25rに挿入され、その後に
図9に示すように、右スロットル弁7rが挿入スリット26rに挿入され、さらに中央軸部8mが軸孔25rに挿入される。右スロットル弁7rは挿入スリット26r内を通過してスロットルボア5r内の正規位置に配設され、これと共に、右軸部8rがベアリング9rに嵌まり込む。
その後、
図10に示すように、中央軸部8m上のシール材29を右方にスライドさせながら右スロットルボディ2rの接合面4rに当接させ、接合面4r上の凹溝27rにOリング28を配置する。以上で右スロットルボディ2rに対するバルブ一体型スロットル軸6の組付が完了する。
【0047】
その後、図示はしないが、右スロットルボディ2rの左側に左スロットルボディ2lを配設し、その軸孔25lにバルブ一体型スロットル軸6の左軸部8lを相対向させて軸線Cに沿って挿入する。左軸部8lに続いて左スロットル弁7lが挿入スリット26lに挿入され、さらに中央軸部8mが軸孔25lに挿入され、左スロットル弁7lは挿入スリット26l内を通過してスロットルボア5l内の正規位置に配設される。左軸部8lはベアリング9lに嵌り込み、これと共に、左及び右スロットルボディ2l,2rの接合面4l,4rがシール材29を挟み込んだ状態で当接すると共に、凹溝27l,27rの間にOリング28が挟み込まれる。そして、互いの結合ブロック部3l,3rをボルトで締結して左右のスロットルボディ2l,2rを結合すると、バルブ一体型スロットル軸6の組付作業が完了する。
【0048】
その後は、モータ収容室18内へのモータ17の組付、及びギヤ収容室11内への各ギヤ13,16,19の組付等の作業を実施するが、本発明の要旨とは直接関係がないため説明を省略する。
【0049】
次いで、本実施形態のスロットル装置1による作用効果を特許文献1のものと比較しながら説明する。
まず、組付性に関して述べる。上記のように本実施形態では、バルブ一体型スロットル軸6の中央軸部8mへのシール材29の嵌合操作、及び各スロットルボディの軸孔25l,25r及び挿入スリット26l,26rへの左及び右軸部8l,8rと左及び右スロットル弁7l,7rとの挿入操作が主たる組付作業となる。前者の嵌合操作は、シール材29を弾性変形させて、その透孔29a内に中央軸部8mを嵌め込むだけの簡単な内容である。また、後者の挿入操作に関しても、バルブ一体型スロットル軸6の軸部8l,8r及びスロットル弁7l,7rをスロットルボディ2l,2rの軸孔25l,25r及び挿入スリット26l,26rにそれぞれ挿入するだけの簡単な内容である。
【0050】
特に本実施形態では、中央軸部8mのみならず左及び右軸部8l,8rの外径も軸孔25l,25rの内径と同一に設定している。左右のスロットルボア5l,5rの連通防止のために中央軸部8mには軸孔25l,25rと同一径が要求されるのに対し、左及び右軸部8l,8rは軸孔25l,25rに挿入可能であれば、より小径であっても問題は生じない。しかしながら、小径の左及び右軸部8l,8rは、軸孔25l,25r内での位置が定まらない。従って、左及び右軸部8l,8rに続いてスロットル弁7l,7rを挿入スリット26l,26rに挿入する際に、軸線Cを中心としてスロットル弁7l,7rを角度調整するだけでなく、前後及び上下方向にスロットル弁7l,7rを位置調整する必要もある。
【0051】
これに対して左及び右軸部8l,8rが軸孔25l,25rと同一径の場合には、軸孔25l,25rに挿入されたときにバルブ一体型スロットル軸6の軸線Cが軸孔25l,25rの軸線Cと一致し、必然的に前後及び上下方向のスロットル弁7l,7rの位置が定まる。従って、軸線Cを中心としてスロットル弁7l,7rを角度調整するだけで挿入スリット26l,26rに挿入することができ、挿入操作を一層容易に実施することができる。但し、必ずしも左及び右軸部8l,8rを軸孔25l,25rと同一径とする必要はなく、これらの軸部8l,8rを軸孔25l,25rよりも小径に設定してもよい。
【0052】
付言すると、組付作業では、中央軸部8m上でのシール材29のスライド、凹溝27l,27rへのOリング28の配置、ボルトによる結合ブロック部3l,3rの締結等も行うが、何れの操作も簡単なため、組付作業を煩雑化する要因にはならない。
以上の理由により、微小なベアリングを狭いボディ部材上で取り扱う必要がある特許文献1の発明に比較して、バルブ一体型スロットル軸6の組付作業を格段に容易に実施でき、しかも高い技量を必要としない。結果として、スロットル装置1の組付性を向上することができる。
【0053】
次いで、スロットル弁7l,7rの開閉精度に関して述べる。本実施形態の左及び右スロットルボディ2l,2rは、特許文献1のスロットルボディのような分割式ではないため、それぞれのベアリング保持孔10l,10rが当初より真円に加工されている。結果として各ベアリング保持孔10l,10rは、一対のベアリング凹部を組み合わせて真円を形作る特許文献1のベアリング保持孔に比較して高い真円度を有し、バルブ一体型スロットル軸6の軸精度が向上する。
【0054】
加えて、左及び右スロットルボディ2l,2rの軸孔25l,25rも軸受として機能するため、バルブ一体型スロットル軸6は左右両端部のみならず中央部も回転可能に支持され、この要因も軸精度の向上に寄与する。そして、このような軸精度の向上はスロットル弁7l,7rの開閉精度の向上につながるため、特許文献1のスロットル装置に比較して良好な吸気流量の調整機能を実現することができる。
【0055】
次いで、スロットル装置1の耐久性に関して述べる。
バルブ一体型スロットル軸6の軸精度が良好であることは、スロットル弁7l,7r等の動作が高精度で行われることを意味し、例えば他の部材との意図しない摺接を防止することにつながる。従って、摺接による無用な摩耗を未然に防止でき、特許文献1のスロットル装置に比較して耐久性を向上させることができる。
【0056】
加えて、本実施形態の左及び右スロットルボディ2l,2rは、特許文献1のスロットル装置のような分割式ではないため、以下の利点も得られる。
仮に特許文献1のスロットル装置をモータ駆動式として構成した場合には、分割式スロットルボディの左右何れかにモータ収容室及びギヤ収容室を形成し、Oリングを介してカバー部材で閉塞することになる。しかしながら、スロットルボディを構成する一対のボディ部材と共にモータ収容室やギヤ収容室も分割され、互いの接合面がOリングを横切ることになる。従って、十分な液密保持が望めなくなり、内部に雨水等が侵入してギヤやモータを腐食させてしまう可能性がある。本実施形態のスロットルボディ2l,2rは共に分割式ではないため、ギヤ収容室11やモータ収容室18も分割する必要がない。このためOリング28により十分な液密を確保でき、雨水等の侵入によるトラブルを未然に防することができる。
【0057】
一方、本実施形態のシール材29は、可撓性を有する板材に切れ目29bを形成しただけの簡単な部材であり、上記のようにバルブ一体型スロットル軸6へのシール材29の組付操作も容易である。従って、製造コストを高騰させることなく、シール材29による作用効果、即ち、左右のスロットルボア5l,5rの間のエアリークの防止効果を達成することができる。
【0058】
また、本実施形態のシール材29は、挿入スリット26l,26rと平行な直線状に切れ目29bを形成しているため、切れ目29bは、挿入スリット26l,26rの前後長の約半分に相当する長さを有している。接合面4l,4rの間にシール材29が挟み込まれた状態でも、雨水等が切れ目29bの上下の微小な間隙を浸透して軸孔25l,25rに到達し、中央軸部8mやスロットル弁7l,7r等を腐食させてしまう可能性がある。しかしながら、切れ目29bの長さに対応する長い間隙が形成されることにより、雨水等が軸孔25l,25rまで到達する可能性、ひいてはこれに起因するトラブルの可能性を低減することができる。
【0059】
加えて、接合面4l,4rの周囲に介装されたOリング28によりシール材29は外部から隔離されている。このため外部の雨水等が軸孔25l,25rに到達するには、まずOリング28をすり抜け、さらに切れ目29bの長く且つ微小な間隙を軸孔25l,25rへと浸透する必要が生じ、起こり得る可能性はほとんどなくなる。従って、外部の雨水等に起因するトラブルを一層低減することができる。
【0060】
なお、シール材29の構成は上記に限るものではない。例えば、シール材29の材質に関しては、バネ鋼のような可撓性と共に剛性を有する材質に限らず、例えばゴムやエラストマーのような柔軟性を有する材質を適用してもよい。たとえ剛性を備えないシール材29であっても、接合面4l,4rの間に挟み込まれることで所期の平板状に保たれて挿入スリット26l,26rを隔絶できるためである。また、シール材29上の切れ目29bの位置や形状に関しても、上記に限るものではない。シール材29上の挿入スリット26l,26rを避けた位置に切れ目29bを形成すれば、問題なくシール材29により挿入スリット26l,26rを隔絶できる。従って、上記とは別の位置に切れ目29bを形成してもよいし、直線状以外の形状の切れ目29bを形成してもよい。
【0061】
また、必ずしもシール材29に切れ目29bを形成する必要はない。例えばゴムやエラストマーを素材としてシール材31に伸縮性を付与し、
図11に実線で示すように、シール材31の一端と他端とを引っ張って透孔31aを前後方向に拡張した上で、バルブ一体型スロットル軸6の何れかのスロットル弁7l,7rを通過させるようにしてもよい。引張り力を解除すると、二点鎖線で示すようにシール材31は元の平板状に戻り、その透孔31a内に中央軸部8mが嵌め込まれる。
【0062】
[第2実施形態]
以下、本発明を自動二輪車に搭載される3気筒エンジン用のスロットル装置101に具体化した第2実施形態を説明する。第1実施形態との主たる相違点は、1気筒分に相当するスロットルボディの追加と、バルブ一体型スロットル軸106への中央スロットル弁の追加にある。このため、共通する箇所の説明は同一部材番号を付して省略し、相違点を重点的に述べる。
【0063】
図12は、本実施形態のエンジンのスロットル装置101を示す斜視図、
図13は、同じく分解斜視図である。
以下の説明では、本実施形態で追加したスロットルボディを中央スロットルボディ2mと称し、この中央スロットルボディ2mの左側に左スロットルボディ2lを結合し、右側に右スロットルボディ2rを結合してスロットル装置101が構成されている。左及び右スロットルボディ2l,2rの構成は、第1実施形態と同様である。中央スロットルボディ2mは、本発明の「第3スロットルボディ」に相当する。
【0064】
詳しくは、中央スロットルボディ2mには、前後方向に単一のスロットルボア5mが貫設されている。中央スロットルボディ2mの左側には左スロットルボディ2lに向けて結合ブロック部3mlが突設され、その端面が接合面4mlとして左スロットルボディ2lの接合面4lと互いに当接して、図示しないボルトで締結されている。中央スロットルボディ2mの右側には右スロットルボディ2rに向けて結合ブロック部3mrが突設され、その端面が接合面4mrとして右スロットルボディ2rの接合面4rと互いに当接して、図示しないボルトで締結されている。各接合面4ml,4mrと相手側の接合面4l,4rとの間にOリング28が介装されている点等も、第1実施形態と同様である。左右の結合ブロック部3ml,3mrは、本発明の「相対向する部位」に相当する。
【0065】
また、バルブ一体型スロットル軸106に追加されたスロットル弁を中央スロットル弁7mと称すると共に、中央スロットル弁7mと左スロットル弁7lとの間の軸部を左中央軸部8mlと称し、中央スロットル弁7mと右スロットル弁7rとの間の軸部を右中央軸部8mrと称する。左及び右スロットル弁7l,7r、左及び右軸部8l,8rの構成は、第1実施形態と同様である。中央スロットル弁7mは、本発明の「第3スロットル」に相当し、左中央軸部8ml及び右中央軸部8mrは、本発明の「中央軸部」に相当する。
【0066】
中央スロットルボディ2mの左側の接合面4mlには、左及び右スロットルボディ2l,2rの接合面4l,4rと同一形状の軸孔25ml及び挿入スリット26mlが開口形成され、それぞれ接合面4mlから軸線Cに沿ってスロットルボア5mまで貫設されている。図示はしないが、中央スロットルボディ2mの右側の接合面4mrには、接合面4l,4rと同一形状の軸孔及び挿入スリットが開口形成され、それぞれ接合面4mrから軸線Cに沿ってスロットルボア5mまで貫設されている。
【0067】
各スロットルボディ2l,2m,2rにバルブ一体型スロットル軸106が組み付けられた状態では、中央スロットルボディ2mのスロットルボア5m内に中央スロットル弁7mが配設され、左側の軸孔25ml内に左中央軸部8mlが挿入され、右側の軸孔内に右中央軸部8mrが挿入される。左及び右中央軸部8ml,8mrの外径は、左及び右軸孔25mlの内径と同一に設定され、第1実施形態と同じく軸受としての機能及び連通防止の機能を奏する。
【0068】
バルブ一体型スロットル軸106の左及び右中央軸部8ml,8mrには、それぞれ第1実施形態と同様のシール材29が配設され、その透孔29a内に左中央軸部8ml及び右中央軸部8mrが嵌め込まれている。左側のシール材29により、挿入スリット26l,26mlを介した左側のスロットルボア5lと中央のスロットルボア5mとの連通が防止されている。また、右側のシール材29により、挿入スリット26r,26mrを介した右側のスロットルボア5rと中央のスロットルボア5mとの連通が防止されている。
各スロットルボディ2l,2m,2rへのバルブ一体型スロットル軸106の組付手順は、以下の手順で実施される。この組付手順についても、第1実施形態との相違点を重点的に述べる。なお、組付手順は一例にすぎず、これに限定されるものではない。
【0069】
図14は、右スロットルボディ2rの軸孔25r及び挿入スリット26rにバルブ一体型スロットル軸106の右軸部8r及び右スロットル弁7rを挿入するときの説明図、
図15は、右スロットルボディ2rに中央スロットルボディ2mを結合したときの説明図である。
【0070】
まず、シール材29を撓ませながら、その透孔29a内にバルブ一体型スロットル軸106の右中央軸部8mrを嵌め込む。次いで、
図14に示すように、右スロットルボディ2rの軸孔25rにバルブ一体型スロットル軸106の右軸部8rを挿入し、続いて挿入スリット26rに右スロットル弁7rを挿入する。右スロットル弁7rはスロットルボア5r内の正規位置に配設され、右中央軸部8mr上のシール材29を右スロットルボディ2rの接合面4rに当接させ、接合面4r上の凹溝27rにOリング28を配置する。
【0071】
その後、右スロットルボディ2rの左側に中央スロットルボディ2mを配設し、その右側の軸孔にバルブ一体型スロットル軸106の左軸部8lを相対向させて軸線Cに沿って挿入する。左軸部8lに続いて左スロットル弁7lが挿入スリットに挿入され、これらの左軸部8l及び左スロットル弁7lは、スロットルボア5m内を経た後に軸孔25ml及び挿入スリット26ml内を通過し、その後、
図15に示すように中央スロットルボディ2mから左方に突出する。このとき、中央スロットル弁7mは中央のスロットルボア5m内の正規位置に配設され、右及び中央スロットルボディ2r,2mの接合面4r,4mrがシール材29を挟み込んだ状態で当接する。そして、互いの結合ブロック部3r,3mrをボルトで締結する。
【0072】
次いで、シール材29を撓ませながら、その透孔29a内にバルブ一体型スロットル軸106の左中央軸部8mlを嵌め込む。シール材29を中央スロットルボディ2mの接合面4mlに当接させ、接合面4ml上の凹溝27mlにOリング28を配置する。
【0073】
その後、図示はしないが、中央スロットルボディ2mの左側に左スロットルボディ2lを配設し、その軸孔25lにバルブ一体型スロットル軸106の左軸部8lを相対向させて軸線Cに沿って挿入する。左軸部8lに続いて左スロットル弁7lが挿入スリット26lに挿入され、左スロットル弁7lはスロットルボア5l内の正規位置に配設され、中央及び左スロットルボディ2m,2lの接合面4ml,4lがシール材29を挟み込んだ状態で当接する。そして、互いの結合ブロック部3ml,3lをボルトで締結すると、バルブ一体型スロットル軸106の組付作業が完了する。
【0074】
以上のように本実施形態のスロットル装置101は、第1実施形態のものに比較して1気筒分の部材が追加されているものの、各気筒における軸孔及び挿入スリットと軸部及びスロットル弁との関係等は第1実施形態のものと同一である。従って、重複する説明はしないが、スロットル装置101の組付性、スロットル弁7l,7r,7mの開閉精度、耐久性等に関して、第1実施形態のものと同様の作用効果を達成できる。
【0075】
なお、本実施形態においても、シール材29の材質及び切れ目29bの位置や形状等に関して任意に変更可能であると共に、
図11に示すように、切れ目29bを廃止してシール材29に伸縮性を付与することもできる。
【0076】
本発明の態様は上記実施形態に限定されるものではない。例えば第1実施形態では、2気筒エンジン用のスロットル装置1に具体化し、第2実施形態では、3気筒エンジン用のスロットル装置101に具体化したが、これに限るものではない。例えば4気筒エンジン用のスロットル装置に適用する場合には、第2実施形態の構成をベースとして、新たに中央スロットルボディ2mや中央スロットル弁7m等を追加すればよい。
【0077】
また、上記各実施形態では、モータ駆動式のスロットル装置1,101に具体化したが、例えば、車両のスロットルとバルブ一体型スロットル軸6,106とをワイヤを介して接続したワイヤ駆動式のスロットル装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1,101 スロットル装置
2l 左スロットルボディ(第1または第2スロットルボディ)
2r 右スロットルボディ(第2または第1スロットルボディ)
2m 中央スロットルボディ(第3スロットルボディ)
3l,3r,3ml,3mr 結合ブロック部(相対向する部位)
4l,4r,4ml,4mr 接合面
5l,5r,5m スロットルボア
6 バルブ一体型スロットル軸
7l 左スロットル弁(第1または第2スロットル弁)
7r 右スロットル弁(第2または第1スロットル弁)
7m 中央スロットル弁(第3スロットル弁)
8l 左軸部(端軸部)
8r 右軸部(端軸部)
8m 中央軸部
8ml 左中央軸部
8mr 右中央軸部
25l,25r,25ml 軸孔
26l,26r,26ml 挿入スリット
28 Oリング(封止部材)
29,31 シール材
29a,31a 透孔
29b 切れ目