(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135511
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】管状留置具
(51)【国際特許分類】
A61F 2/95 20130101AFI20240927BHJP
A61F 2/86 20130101ALI20240927BHJP
【FI】
A61F2/95
A61F2/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046230
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】下條 光
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA42
4C267AA45
4C267AA50
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB19
4C267BB26
4C267BB40
4C267GG02
4C267GG24
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】生体管腔に対する侵襲性の低いフックを有する管状留置具を提供する。
【解決手段】長尺の留置装置20により生体管腔2内に導入され、留置装置20から遠位側に放出されて生体管腔2に留置される管状留置具1は、径方向に拡縮可能な環状骨格部11と、環状骨格部11を管状に被覆する皮膜部12と、管状留置具1の遠位端に設けられ、留置装置20に設けられた係合部23と係合するフック部13と、を備える。フック部13は、非金属の線状部材で屈曲自在に形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の留置装置により生体管腔内に導入され、前記留置装置から遠位側に放出されて前記生体管腔に留置される管状留置具であって、
径方向に拡縮可能な環状骨格部と、
前記環状骨格部を管状に被覆する皮膜部と、
前記管状留置具の遠位端に設けられ、前記留置装置に設けられた係合部と係合するフック部と、を備え、
前記フック部は、非金属の線状部材で屈曲自在に形成される
管状留置具。
【請求項2】
前記フック部は、前記環状骨格部および前記皮膜部に縫着される
請求項1に記載の管状留置具。
【請求項3】
前記環状骨格部は、軸方向にジグザグ状に折り返された線材が周方向に環状をなすように構成され、
前記フック部は、前記線材の折り返しの頂点からずれた位置で前記環状骨格部に取り付けられる
請求項1に記載の管状留置具。
【請求項4】
前記環状骨格部は、軸方向にジグザグ状に折り返された線材が周方向に環状をなすように構成され、
前記フック部は、遠位側が開くように折り返した前記線材に前記線状部材を環状に掛け渡して1つの結び目で結んで形成される
請求項1に記載の管状留置具。
【請求項5】
前記結び目は、前記管状留置具を前記留置装置に充填したときに、前記係合部と前記管状留置具の間に配置される
請求項4に記載の管状留置具。
【請求項6】
前記フック部は、前記皮膜部の内側に取り付けられる
請求項1に記載の管状留置具。
【請求項7】
前記線状部材は、生体吸収される材料で形成されている
請求項1に記載の管状留置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状留置具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管などの生体管腔に生じた病変部位に留置され、病変部位への体液の流入を遮断させる管状留置具が知られている。
この種の管状留置具は、カテーテルなどの留置装置を用いて生体管腔内に導入される。また、留置装置の先端チップに係止するために、管状留置具の遠位側に金属線材でフックが設けられることもある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属線材のフックは、生体管腔よりも硬いため、接触により生体管腔の内壁を傷つける可能性がある。また、例えば、MRI検査の際に、管状留置具から突出した状態の金属線材のフックが発熱し、生体管腔にダメージを与える可能性もある。
【0005】
そこで、本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであって、生体管腔に対する侵襲性の低いフックを有する管状留置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、長尺の留置装置により生体管腔内に導入され、留置装置から遠位側に放出されて生体管腔に留置される管状留置具である。管状留置具は、径方向に拡縮可能な環状骨格部と、環状骨格部を管状に被覆する皮膜部と、管状留置具の遠位端に設けられ、留置装置に設けられた係合部と係合するフック部と、を備える。フック部は、非金属の線状部材で屈曲自在に形成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、生体管腔に対する侵襲性の低いフックを有する管状留置具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の管状留置具の構成例を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態の管状留置具が生体管腔に留置された使用状態を模式的に示す図である。
【
図3】管状留置具の遠位端を周方向に展開して内周側からみた状態の一例を示す図である。
【
図4】(a)は本実施形態の留置装置の分解図であり、(b)は本実施形態の留置装置の組立状態を示す図である。
【
図5】先端チップとフック部の係合状態の例を示す斜視図である。
【
図6】(a)は先端チップの平面図であり、(b)は先端チップの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、実施形態に係るカバードステントの構成例について説明する。なお、図面における各部の形状、寸法等は模式的に示したもので、実際の形状や寸法等を示すものではない。
【0010】
また、図面では、管状留置具および留置装置の軸方向Axを適宜矢印で示す。また、軸方向Axに略直交する方向を径方向と定義し、軸方向Axを中心とする回転方向を周方向と定義する。また、図面において管状留置具および留置装置の遠位側を符号Dで示し、管状留置具および留置装置の近位側を符号Pで示す。
【0011】
図1は、本実施形態の管状留置具の構成例を示す斜視図である。
図2は、本実施形態の管状留置具が生体管腔に留置された使用状態を模式的に示す図である。
図3は、管状留置具の遠位端を周方向に展開して内周側からみた状態の一例を示す図である。
【0012】
本実施形態の管状留置具1は、生体管腔の一例である血管2の病変部位3(例えば、血管2で瘤が生じている部位)に留置され、これらの病変部位3への血流を遮断させるために適用されるステントグラフトである。管状留置具1は、拡張状態の形状が記憶されたいわゆる自己拡張型の構成であって、径方向内側に収縮した収縮状態から径方向外側に拡張する拡張状態へと拡縮可能である。
【0013】
管状留置具1は、後述する長尺の留置装置20を用いて、径方向内側に収縮された状態(不図示)で血管2内に導入される。管状留置具1は、血管2内の病変部位3に運ばれた後に留置装置20のシース21から遠位側に放出され、径方向外側に拡張することで、
図2に示すように血管2の内壁と密着した状態で留置される。
【0014】
図1、
図2に示す管状留置具1は、軸方向Axの両端部に設けられた開口が連通しており、血管2内を流れる体液等が通過可能な管状流路4を内部に形成する。管状留置具1の寸法などの仕様は、例えば、管状留置具1を留置する血管2の太さや、管状留置具1の留置範囲の長さなどに応じて適宜設定される。また、本実施形態では、一例として全体形状が直管形状である管状留置具1を示すが、管状留置具1は、例えば弓状に湾曲した形状や捻れを有する形状に賦形(プリシェイプ)されていてもよい。
【0015】
図1、
図2に示すように、管状留置具1は、全体形状が管状をなす環状骨格部11と、環状骨格部11に取り付けられた皮膜部12と、フック部13とを備えている。
【0016】
環状骨格部11は、例えば、山部14aと谷部14bとが交互に形成されるように線材(金属細線)14を軸方向にジグザグ状に折り返しながら周方向に環状をなすように形成された骨格片を用い、当該骨格片を軸方向に複数並べて構成されている。なお、隣り合う骨格片同士は、連結部材(不図示)で軸方向に連結されていてもよい。また、環状骨格部11は、径方向内側に収縮した収縮状態から、径方向外側に拡張した拡張状態へと自己拡張するように変形可能に構成されている。
【0017】
環状骨格部11の線材の材料としては、例えば、Ni-Ti合金(ニチノール)、コバルト-クロム合金、チタン合金、及びステンレス鋼等に代表される公知の金属又は金属合金が挙げられる。環状骨格部11の材料としてNi-Ti合金を用いる場合、環状骨格部11を拡張状態の形状に整えた後に所定の熱処理を施すことにより、拡張状態の形状を環状骨格部11に記憶させることができる。
【0018】
なお、環状骨格部11の構成は上記に限定されるものではない。例えば、1本の金属細線をジグザグ状に折り返しながら螺旋状に巻回して管状をなす環状骨格部11を構成してもよく、あるいは、金属細線を格子状に編み込んで管状をなす環状骨格部11を構成してもよい。また、環状骨格部11は、例えば、1本の金属パイプ(例えば、Ni-Ti合金からなるパイプ等)をレーザー加工(レーザーカット)することで形成されてもよい。また、環状骨格部11は、金属以外の材料(例えば、セラミックや樹脂等)で形成されていてもよい。
【0019】
皮膜部12は、管状の可撓性膜体であって、環状骨格部11の隙間部分を閉塞して管状に被覆するように環状骨格部11に取り付けられている。皮膜部12の材料としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0020】
本実施形態の皮膜部12は、一例として、環状骨格部11の外周側に取り付けられている。つまり、管状留置具1において、山部14aと谷部14bとが交互に形成されるようにジグザグ状に折り返した線材14(環状骨格部11)の外周側に皮膜部12が取り付けられている。
【0021】
皮膜部12は、環状骨格部11に対し、例えば、糸での縫い付けや、接着、溶着、テープによる貼着などで取り付けられている。また、管状留置具1の軸方向Axの両端部には、環状骨格部11を内側から部分的に覆う内側皮膜部12a(
図1、
図2では不図示)が形成されている。内側皮膜部12aは、例えば、環状骨格部11の外側から内側に皮膜部12が折り返されて形成されるが、皮膜部12を帯状に形成したものを環状骨格部11の内側から重ね合わせて内側皮膜部12aが形成されてもよい。
【0022】
フック部13は、管状留置具1の遠位端から遠位側に円弧状に突出した非金属の線状部材で形成される。フック部13は、管状留置具1を血管2内に導入するときには後述する先端チップ23と係合し、留置装置20によって保持される。フック部13は、非金属の線状部材であるため屈曲自在である。また、フック部13は、金属材料と比べて軽量で加工も容易であり、MRI検査で発熱を生じさせることもない。
【0023】
フック部13の線状部材としては、例えば、絹糸などの天然素材や、PE(ポリエチレン)、ポリアミド、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)などの樹脂材料などが挙げられる。また、フック部13の線状部材は、ポリグラチンなどの生体吸収される材料で形成されていてもよい。線状部材が生体吸収される材料で形成される場合には、管状留置具1の留置後にフック部13が生体吸収されて血管2内で消失する。これにより、例えば、後日の別手術で管状留置具1内にカテーテル等を通すときに、フック部13に引っ掛かる事象を抑制することができる。
【0024】
フック部13の線状部材は、モノフィラメント構造でもよく、細いフィラメントを編み込んだブレイド構造であってもよい。また、線状部材の径は、線状部材が結びやすく破断しない強度となる寸法に適宜設定される。なお、フック部13の線状部材の長さや、線状部材の管状留置具1への取付方法は自由に調整できる。
【0025】
また、
図3に示すように、環状骨格部11の遠位端には、環状骨格部11の外側から内側に皮膜部12が折り返されて内側皮膜部12aが形成されている。内側皮膜部12aの部位では、環状骨格部11の遠位側が内側皮膜部12aで内周側から覆われ、遠位側に位置する線材14の山部14aが管状留置具1の内周に露出しないように構成されている。
【0026】
フック部13の線状部材は、例えば、1つの結び目13aで環状に結びつけた状態で皮膜部12の内側に取り付けられている。フック部13の線状部材を皮膜部12の内側に配置することで、フック部13の線状部材が皮膜部12と血管2との密着性を妨げることを抑制できる。なお、フック部13における線状部材の結び目13aは、先端チップ23との係合を妨げない限りにおいて任意の位置に配置できる。
【0027】
環状に結びつけられたフック部13の線状部材は、遠位側が開くように折り返した線材14に掛け渡されている。フック部13の線状部材を線材14の間に掛け渡して結ぶことで、留置装置20側からフック部13に力がかかるときに管状留置具1からフック部13が外れにくくなる。また、フック部13の線状部材を1つの結び目13aで環状に結ぶことで結び目13aの数が最小限になり、シース21内の充填率を低減できる。
【0028】
フック部13の線状部材が線材14に掛け渡される位置は、内側皮膜部12aで線材14が覆われる部位よりも近位側に位置している。すなわち、フック部13の線状部材は、遠位側の線材14の折り返しの頂点(山部14a)からずれた位置で線材14に掛け渡されている。これにより、皮膜部12の折り返しの内側に線材14の遠位端を収容した状態でフック部13を取り付けることができ、管状留置具1の遠位端で皮膜部12がめくれにくくなる。
【0029】
また、フック部13の線状部材は、環状骨格部11の線材14および皮膜部12に糸15によって縫着されている。これにより、留置装置20側からフック部13に力がかかるときにフック部13と管状留置具1のずれを抑制できる。なお、管状留置具1の遠位端には、管状留置具1の遠位端の拡張状態を制御する調整ワイヤ(不図示)が配設されるが、フック部13の線状部材を縫着する糸15で輪(不図示)を形成し、調整ワイヤを輪に挿通させて保持してもよい。この場合には、管状留置具1の縫合箇所を削減でき、管状留置具1の製造時の作業効率を向上させることもできる。
【0030】
次に、本実施形態における留置装置20の構成例について説明する。
図4(a)は本実施形態の留置装置の分解図であり、
図4(b)は本実施形態の留置装置の組立状態を示す図である。留置装置20は、管状のシース21と、シース21の内側に配置される管状のシャフト22と、を備えている。
【0031】
シース21は、収縮状態の管状留置具1をその内側に収容可能である。シース21は、シース本体部21aと、シース本体部21aの他方側の端部に設けられるハブ21bとを有している。ハブ21bは、シャフト22に対してシース21を固定するためのナット(不図示)や、上記の調整ワイヤへの操作を行う操作部材(不図示)等を有している。
【0032】
シース本体部21aは、可撓性を有する材料で形成された管体である。シース本体部21aの材料としては、例えば、フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、及び、ポリ塩化ビニル系樹脂等から選択された生体適合性を有する合成樹脂(エラストマー)、これら樹脂に他の材料が混合された樹脂コンパウンド、これらの合成樹脂による多層構造体、並びに、これら合成樹脂と金属線との複合体などが挙げられる。
【0033】
シャフト22は、シース21よりも長尺の軸状部材であって、軸方向Axに沿って進退可能に構成されている。シャフト22は、シャフト本体部22aと、シャフト本体部22aの遠位側に形成されるシャフト小径部22bとを有している。シャフト22の材料としては、例えば、樹脂(プラスチック及びエラストマー等)並びに金属など、適度な硬度及び柔軟性を有する種々の材料が挙げられる。
【0034】
シャフト小径部22bは、シャフト本体部22aと同軸であり、シャフト本体部22aよりも小径である。留置装置20においては、シャフト小径部22bの外周とシース本体部21aの内周の間に形成される空間に管状留置具1が収容される。また、シャフト22のシャフト本体部22aおよびシャフト小径部22bには、血管2内に留置装置20を導入するガイドワイヤ(不図示)を挿通させる穴が軸方向Axに沿って形成されている。
【0035】
また、シャフト小径部22bの遠位端には、シース21の遠位側の端部開口を塞ぐ先端チップ23が取り付けられている。先端チップ23は、係合部の一例であって、外周の一部に管状留置具1のフック部13を受ける溝24を有する。
【0036】
図5は、先端チップ23とフック部13の係合状態の例を示す斜視図である。
図6(a)は先端チップ23の平面図であり、
図6(b)は先端チップ23の側面図である。
【0037】
先端チップ23の溝24は、先端チップ23の外周表面から内側に凹むように切り欠かれ、軸方向と交差方向に延びている。溝24は、
図6(b)に示すように、底部側が近位側に近づくように軸方向に斜めに傾いて形成されている。また、溝24の軸方向の幅は、フック部13の線状部材の径よりも広い幅に形成されており、溝24内に線状部材を通過させることが可能である。
【0038】
シャフト小径部22bに管状留置具1を取り付ける場合、先端チップ23の溝24内に線状部材を通過させて掛け渡すことで先端チップ23にフック部13が係合される。先端チップ23とフック部13が係合した状態で、管状留置具1は紐状部材(不図示)で外側から拘束されて径方向内側に収縮した状態でシャフト22に保持される。そして、径方向内側に収縮した管状留置具1をシャフト22とともにシース21内に収容することで、管状留置具1がシース21に充填される。
【0039】
本実施形態のフック部13は屈曲自在であるため、管状留置具1を留置装置20に充填するときにフック部13は変形し、シース21の充填率を低減できる。また、管状留置具1を留置装置20に充填するときには、
図5に示すように、先端チップ23と管状留置具1の間にフック部13の結び目13aが配置されるようにしてもよい。この場合、シース21内で骨格量の少ない管状留置具1の外側にフック部13の結び目13aが配置されるので、シース21の充填率をより低減できる。
【0040】
また、管状留置具1を血管2に留置するときには、血管2内に留置装置20を導入する。そして、病変部位3において、管状留置具1が拘束されているシャフト22の位置を保持しつつ、シース21を近位側に向けて引き抜くように移動させる。この状態で、紐状部材の拘束を解除すると管状留置具1が径方向外側に自己拡張して血管2と密着する。これにより、留置装置20の遠位端から管状留置具1が放出される。
【0041】
その後、管状留置具1が血管2内に留置された状態で、シャフト22を動かして先端チップ23の溝24からフック部13を離脱させる。これにより、先端チップ23とフック部13の係合が解除される。
【0042】
ここで、屈曲自在に構成されたフック部13を先端チップ23の溝24から容易に離脱させるため、先端チップ23の溝24は以下のように構成されてもよい。
【0043】
例えば、先端チップ23において、
図6(a)に示すように、溝24の延長方向(軸方向と交差方向)の寸法を大きくして、線状部材を受ける近位側の部位24aを幅広にしてもよい。これにより、フック部13の線状部材をねじれにくくできる。また、先端チップ23へのフック部13の食い込みを避けるために、線状部材を受ける近位側の部位24aを平坦にして面積を大きくし、線状部材にかかる応力を分散させてもよい。また、先端チップ23へのフック部13の食い込みを避けるために、溝24の延長方向の両端部(
図6(a)にて破線で囲んだ部分)では軸方向近位側に延びる隙間をできるだけ小さくすることが好ましい。
【0044】
また、例えば、先端チップ23の溝24の傾き角を軸方向に対して大きく設定し、かつ溝24の底部24b近傍に軸方向に広がる部位を設けてもよい。これにより、先端チップ23に対してフック部13が相対的に遠位側に動くようにシャフト22を操作したときに、フック部13が溝24から外れやすくなる。
【0045】
図7(a)、(b)は、それぞれ先端チップ23の他の例を示す図である。
図7の例では、先端チップ23にフック部13を掛け止め可能な切り欠き状の溝24が設けられている。溝24は、先端チップ23の表面から近位側に向けて斜めに傾くように径方向内側に延びており、溝24の入口がU字状をなすように先端チップ23に形成される。また、溝24の開口幅は、フック部13の線状部材の径に対応する寸法である。
【0046】
溝24の内側には、溝24に掛け渡されたフック部13を支持する支持部が形成されている。支持部は、溝24内で線状部材を受ける近位側の部位であり、フック部13が掛けられて線状部材に接触する第1部位27aと、第1部位27aよりも近位側に凹んで線状部材と接触しない第2部位(非接触部)27bとを有する。
【0047】
例えば、
図7(a)に破線で示すように、支持部は、接線方向に並ぶ2つの円弧状の第1部位27aの間にくぼみ状の第2部位27bが形成された形状であってもよい。あるいは、
図7(b)に破線で示すように、支持部は、階段状に配置された第1部位27aと、第1部位27aの間に配置されてくぼんだ第2部位27bを有する形状であってもよい。
図7(a)、(b)の支持部の構成では、支持部の第2部位27bは線状部材と接触しないため、切り欠き26内で線状部材と支持部の接触面積が小さくなる。なお、先端チップ23において、上記の支持部の形成は比較的容易な加工で行うことができる。
【0048】
図7の例では、管状留置具1のフック部13を切り欠き状の溝24に掛け渡すことで、先端チップ23と管状留置具1のフック部13を容易に係合させることができる。一方、先端チップ23とフック部13の係合を解除するときには、先端チップ23を軸方向に移動させることで、フック部13を溝24の入り口から外して管状留置具1を離脱させればよい。
【0049】
以下、本実施形態の管状留置具1の効果を述べる。
本実施形態において、長尺の留置装置20により血管2(生体管腔)内に導入され、留置装置20から遠位側に放出されて血管2に留置される管状留置具1は、径方向に拡縮可能な環状骨格部11と、環状骨格部11を管状に被覆する皮膜部12と、管状留置具1の遠位端に設けられ、留置装置20に設けられた先端チップ23(係合部)と係合するフック部13と、を備える。フック部13は、非金属の線状部材で屈曲自在に形成される。
本実施形態の管状留置具1では、屈曲自在に形成されたフック部13は血管2と接触したときに反発せずに変形するので、フック部13が血管2の内壁を傷つけにくい。また、フック部13は非金属の線状部材であるため、例えば、MRI検査でフック部13が発熱して血管2を傷つけることもない。したがって、本実施形態によれば、血管2に対するフック部13での侵襲性を大幅に低減できる。
また、本実施形態のフック部13は屈曲自在であり、管状留置具1を留置装置20に充填するときに変形してシース21内の充填率が低減するので、管状留置具1の放出抵抗を抑制することもできる。
【0050】
また、フック部13は、環状骨格部11および皮膜部12に縫着される。
これにより、フック部13は環状骨格部11および皮膜部12に保持されるので、留置装置20側からフック部13に力がかかるときにフック部13と管状留置具1のずれを抑制できる。
【0051】
また、環状骨格部11は、軸方向にジグザグ状に折り返された線材14が周方向に環状をなすように構成され、フック部13は、線材14の折り返しの頂点からずれた位置で環状骨格部11に取り付けられる。
これにより、皮膜部12の折り返しの内側に線材14の遠位端を収容した状態でフック部13を取り付けることができ、管状留置具1の遠位端で皮膜部12がめくれにくくなる。
【0052】
また、環状骨格部11は、軸方向にジグザグ状に折り返された線材14が周方向に環状をなすように構成され、フック部13は、遠位側が開くように折り返した線材14に線状部材を環状に掛け渡して1つの結び目13aで結んで形成される。
これにより、留置装置20側からフック部13に力がかかるときに、線材14の間に環状に掛け渡されたフック部13が管状留置具1から外れにくくなる。また、線状部材を1つの結び目13aで環状に結ぶことで結び目の数が最小限になり、シース21内の充填率が低減して管状留置具1の放出抵抗を抑制できる。
【0053】
また、結び目13aは、管状留置具1を留置装置20に充填したときに、先端チップ23と管状留置具1の間に配置される。
これにより、シース21内で骨格量の少ない管状留置具1の外側にフック部13の結び目13aが配置され、シース21内の充填率が低減して管状留置具1の放出抵抗を抑制できる。
【0054】
また、フック部13は、皮膜部12の内側に取り付けられる。
これにより、フック部13の線状部材が皮膜部12と血管2との密着性を妨げることを抑制でき、管状留置具1の遠位端でのエンドリークをより生じにくくできる。
【0055】
また、線状部材は、生体吸収される材料で形成されてもよい。
これにより、管状留置具1の留置後にフック部13が消失するので、例えば、別手術で管状留置具1内にカテーテル等を通すときにフック部13に引っ掛かる事象などを抑制できる。
【0056】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0057】
環状骨格部11に対するフック部13の線状部材の取付位置は、上記実施形態に限定されない。例えば、環状骨格部11において、線材14の遠位側の折り返し部位(山部14a)に線状部材を環状に掛け渡してもよい。
【0058】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0059】
なお、上記の実施形態の開示は以下の技術的思想を包含する。
(1)長尺の留置装置により生体管腔内に導入され、前記留置装置から遠位側に放出されて前記生体管腔に留置される管状留置具であって、径方向に拡縮可能な環状骨格部と、前記環状骨格部を管状に被覆する皮膜部と、前記管状留置具の遠位端に設けられ、前記留置装置に設けられた係合部と係合するフック部と、を備え、前記フック部は、非金属の線状部材で屈曲自在に形成される管状留置具。
(2)前記フック部は、前記環状骨格部および前記皮膜部に縫着される上記(1)に記載の管状留置具。
(3)前記環状骨格部は、軸方向にジグザグ状に折り返された線材が周方向に環状をなすように構成され、前記フック部は、前記線材の折り返しの頂点からずれた位置で前記環状骨格部に取り付けられる上記(1)または上記(2)に記載の管状留置具。
(4)前記環状骨格部は、軸方向にジグザグ状に折り返された線材が周方向に環状をなすように構成され、前記フック部は、遠位側が開くように折り返した前記線材に前記線状部材を環状に掛け渡して1つの結び目で結んで形成される上記(1)または上記(2)に記載の管状留置具。
(5)前記結び目は、前記管状留置具を前記留置装置に充填したときに、前記係合部と前記管状留置具の間に配置される上記(4)に記載の管状留置具。
(6)前記フック部は、前記皮膜部の内側に取り付けられる上記(1)から上記(5)のいずれか一項に管状留置具。
(7)前記線状部材は、生体吸収される材料で形成されている上記(1)から上記(6)のいずれか一項に記載の管状留置具。
【符号の説明】
【0060】
1…管状留置具、2…血管、3…病変部位、4…管状流路、11…環状骨格部、12…皮膜部、13…フック部、13a…結び目、14…線材、14a…山部、14b…谷部、2…糸、20…留置装置、21…シース、22…シャフト、23…先端チップ、24…溝