(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135514
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両用ドアハンドル装置
(51)【国際特許分類】
E05B 85/10 20140101AFI20240927BHJP
E05B 15/00 20060101ALI20240927BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
E05B85/10
E05B15/00 B
B60J5/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046234
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000155067
【氏名又は名称】ミネベアアクセスソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 誠司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 忠士
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250LL01
2E250PP12
(57)【要約】
【課題】部品点数を削減することが可能な車両用ドアハンドル装置を提供する。
【解決手段】車両用ドアハンドル装置1は、孔部25aを有するハンドルケース3と、孔部25aに臨むように配置されており、ドアロック装置をロック状態及びアンロック状態に切り替えるためのシリンダ錠部と、ハンドルケース3に回動可能に軸支されており、孔部25aにおいてシリンダ錠部のキー孔を覆う被覆状態と露出させる露出状態とを回動によって切替可能なカバー部材170と、ドアロック装置のラッチ部を開放させるためのレバー部材190と、レバー部材190を初期位置へ付勢する付勢部材200と、を備え、カバー部材170は、被覆状態から露出状態に回転することによってレバー部材190を作動させる作動部173を備え、付勢部材200は、作動したレバー部材190を初期位置へ戻す際に、作動部173を介してカバー部材170を露出状態から被覆状態に回転させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔部を有するハンドルケースと、
前記孔部に臨むように配置されており、ドアロック装置をロック状態及びアンロック状態に切り替えるためのシリンダ錠部と、
前記ハンドルケースに回動可能に軸支されており、前記孔部において前記シリンダ錠部のキー孔を覆う被覆状態と露出させる露出状態とを回動によって切替可能なカバー部材と、
前記ドアロック装置のラッチ部を開放させるためのレバー部材と、
前記レバー部材を初期位置へ付勢する付勢部材と、
を備え、
前記カバー部材は、前記被覆状態から前記露出状態に回転することによって前記レバー部材を作動させる作動部を備え、
前記付勢部材は、作動した前記レバー部材を初期位置へ戻す際に、前記作動部を介して前記カバー部材を前記露出状態から前記被覆状態に回転させる
ことを特徴とする車両用ドアハンドル装置。
【請求項2】
前記作動部は、前記レバー部材と当接しており、
前記作動部及び前記レバー部材の当接部位の少なくとも一方は、回動軸の軸線視で湾曲形状を呈する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項3】
前記レバー部材は、前記ドアロック装置がアンロック状態の場合には前記ラッチ部を開放することができ、前記ドアロック装置がロック状態の場合には前記ラッチ部を開放することができない
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用ドアハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアに設けられるハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シリンダ錠のキー孔を覆うカバー部材(フラップ)を備える車両用ドアハンドル装置が記載されている。かかる車両用ドアハンドル装置では、フラップがハウジングに対して回動可能に軸支されており、当該フラップの一端部を押すことによってフラップが回転し、キー孔が露出してキーを挿入可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開2021/028524号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車両用ドアハンドル装置では、ドアを開けるためには、フラップを押して開いた状態でキーをシリンダ錠に挿入及び回転させてドアロックを解除し、その後、ハンドルを引き操作することによってレバー部材を作動させてラッチを開放させる必要がある。また、バネで初期位置方向に付勢されているフラップを初期位置に戻らないように指で押さえながらハンドルを操作する。そのため、フラップを初期位置方向に付勢するバネと、レバー部材を初期位置方向に付勢するバネと、が必要であり、部品点数が多くなる。
【0005】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、部品点数を削減することが可能な車両用ドアハンドル装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本発明の車両用ドアハンドル装置は、孔部を有するハンドルケースと、前記孔部に臨むように配置されており、ドアロック装置をロック状態及びアンロック状態に切り替えるためのシリンダ錠部と、前記ハンドルケースに回動可能に軸支されており、前記孔部において前記シリンダ錠部のキー孔を覆う被覆状態と露出させる露出状態とを回動によって切替可能なカバー部材と、前記ドアロック装置のラッチ部を開放させるためのレバー部材と、前記レバー部材を初期位置へ付勢する付勢部材と、を備え、前記カバー部材は、前記被覆状態から前記露出状態に回転することによって前記レバー部材を作動させる作動部を備え、前記付勢部材は、作動した前記レバー部材を初期位置へ戻す際に、前記作動部を介して前記カバー部材を前記露出状態から前記被覆状態に回転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、車両用ドアハンドル装置において、部品点数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用ドアハンドル装置を備える車両用ドアシステムを模式的に示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両用ドアハンドル装置を模式的に示す斜視図である。
【
図3】車両用ドアハンドル装置が設けられたサイドドアを模式的に示す断面図であって、
図2のIII-III線断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る車両用ドアハンドル装置を模式的に示す分解斜視図である。
【
図5】ケース部材を車幅方向外方から見た斜視図である。
【
図6】ケース部材を車幅方向内方から見た斜視図である。
【
図8】カバー部材を車幅方向外方から見た斜視図である。
【
図9】カバー部材を車幅方向内方から見た斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る車両用ドアハンドル装置を車幅方向外方から見た図であって、カバー部材が閉じている状態を示す模式図(要部拡大図)である。
【
図11】本発明の実施形態に係る車両用ドアハンドル装置を車幅方向内方から見た図であって、カバー部材が閉じている状態を示す模式図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る車両用ドアハンドル装置を車幅方向外方から見た図であって、カバー部材が開いている状態を示す模式図(要部拡大図)である。
【
図14】本発明の実施形態に係る車両用ドアハンドル装置を車幅方向内方から見た図であって、カバー部材が開いている状態を示す模式図(要部拡大図)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について、本発明の車両用ドアハンドル装置を車両の左側の前席(左ハンドル車における運転席)用のサイドドアに適用した場合を例にとり、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、参照図面において、「前後」は、車両の進行方向における前後方向すなわち車体前後方向を示し、「左右」は、運転席から見た左右方向(車幅方向)をそれぞれ示している。かかる方向に関する表現は、サイドドアが閉じられた状態を基準とする。
【0010】
<ドアシステム>
図1に示すように、本発明の実施形態に係るドアシステムAは、サイドドア2(
図3参照)が閉じている状態において、当該サイドドア2のロック状態/アンロック状態を切り替えたり、アンロック状態のサイドドア2のラッチ係止状態/ラッチ開放状態を切り替えたりするためのシステムである。サイドドア2は、当該サイドドア2の前端部を回動軸(ヒンジ)として車体側面に形成された開口部を開閉可能なドアである。ドアシステムAは、制御部A1と、ドアロック装置A2と、車両用ドアハンドル装置1と、を備える。
【0011】
<制御部>
制御部A1は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力回路等によって構成されている、いわゆるECU(Electrical Control Unit)である。制御部A1は、車両用ドアハンドル装置1から出力された制御信号を取得し、取得された制御信号に基づいてドアロック装置A2を制御する。
【0012】
<ドアロック装置>
ドアロック装置A2は、ラッチ部A21と、ラッチ作動部A22と、ロック部A23と、ロック作動部A24と、を備える。
【0013】
≪ラッチ部≫
ラッチ部A21は、閉状態のサイドドア2と車体とを互いに係止するラッチ係止状態と、閉状態のサイドドア2と車体との係止が解除されたラッチ開放状態と、を切替可能に構成されたラッチ機構である。
【0014】
≪ラッチ作動部≫
ラッチ作動部A22は、モータ等によって構成されており、制御部A1の制御に基づいて、ラッチ部A21の状態をラッチ係止状態とラッチ開放状態とに切り替える。
【0015】
≪ロック部≫
ロック部A23は、サイドドア2が閉じられてラッチ部A21がラッチ係止状態である場合において、ラッチ係止状態をラッチ開放状態に切替不能なロック状態と、ラッチ係止状態をラッチ開放状態に切替可能なアンロック状態と、を切替可能に構成されたロック機構である。
【0016】
≪ロック作動部≫
ロック作動部A24は、モータ等によって構成されており、制御部A1の制御に基づいて、ロック部A23の状態をロック状態とアンロック状態とに切り替える。
【0017】
<車両用ドアハンドル装置>
図2及び
図3に示すように、本発明の実施形態に係る車両用ドアハンドル装置1は、サイドドア2を構成するアウタパネル2a及びインナパネル2bの間に設けられている。
図4に示すように、車両用ドアハンドル装置1は、ハンドルケース3と、スイッチ部4と、センサ部5と、シリンダ錠部6(
図10参照)と、カバー部7と、レバー部8と、を備える。
【0018】
<ハンドルケース>
ハンドルケース3は、サイドドア2を開閉操作する際に、車両の外にいる利用者が把持する部位である。ハンドルケース3は、ベース部材10と、ケース部材20と、ガスケット30と、モールディング40と、を備える。
【0019】
≪ベース部材≫
ベース部材10は、ハンドルケース3の主部を構成する樹脂製部材である。ベース部材10は、矩形枠状を呈する枠部11と、枠部11の内側に形成されるスイッチ取付部12、シリンダ錠取付部13、レバー取付部14、センサ設置部15及び開口部16と、枠部11の外側に形成される複数(本実施形態では、4個)のフランジ部17と、を一体に備える。
【0020】
(枠部)
枠部11は、互いに上下に離間して前後方向に延設される上辺部11a及び下辺部11bと、上辺部11a及び下辺部11bの前端部同士を繋ぐ前辺部11cと、上辺部11a及び下辺部11bの後端部同士を繋ぐ後辺部11dと、を一体に備える。
【0021】
(スイッチ取付部)
スイッチ取付部12は、スイッチ部4が取り付けられる部位である。スイッチ取付部12は、枠部11の上辺部11aの車幅方向中間部から下方に延設されている。スイッチ取付部12は、下方にいくにつれて車幅方向外方に向かうように傾斜している。スイッチ取付部12には、矩形状の開口部12aが形成されている。
【0022】
(シリンダ錠取付部)
シリンダ錠取付部13は、シリンダ錠部6が取り付けられる部位である。シリンダ錠取付部13は、枠部11の後辺部11dの車幅方向内端部から前方に延設されている。シリンダ錠取付部13には、車幅方向内方に突出する筒部13aが形成されている。筒部13aは、車幅方向外方にいくにつれて前方に向かうように傾斜している。
【0023】
(レバー取付部)
レバー取付部14は、レバー部8が取り付けられる部位である。レバー取付部14は、枠部11の下辺部11b(後部)の車幅方向内端部から上方に延設されている。レバー取付部14には、車幅方向内方に突出する筒部14aが形成されている。
【0024】
(センサ設置部)
センサ設置部15は、センサ部5を車幅方向外方から覆う部位である。センサ設置部15は、枠部11の下辺部11b(前部)の車幅方向外端部から上方に延設されている。
【0025】
(開口部)
開口部16は、上側のスイッチ取付部12、後側のシリンダ錠取付部13、後下側のレバー取付部14、及び、下側のセンサ設置部15に囲まれている矩形枠状の部位である。利用者は、開口部16に手を入れて当該開口部16の上縁部側を把持することによって、サイドドア2を開閉操作することができる。
【0026】
(フランジ部)
フランジ部17は、枠部11における4個の角部の車幅方向内端部から外側に延設されている。フランジ部17は、カラーC1及びボルト(図示せず)を用いて、サイドドア2のインナパネル2bに取り付けられる。
【0027】
≪ケース部材≫
ケース部材20は、ベース部材10と協働することによって、開口部16の車幅方向内側に閉じられた空間(筐体)を構成する樹脂製部材である。ケース部材20は、スクリュータッピングT1を用いて、ベース部材10に取り付けられている。
図5及び
図6に示すように、ケース部材20は、斜壁部21と、斜壁部21の上端部から上方に延設される内壁部22と、斜壁部21の下端部から車幅方向外方に延設される下壁部23と、を一体に備える。また、ケース部材20は、斜壁部21の前端部から車幅方向外方に延設される前壁部24と、斜壁部21及び内壁部22の後端部から車幅方向外方に延設される後壁部25と、を一体に備える。
【0028】
斜壁部21は、車幅方向外方から見て開口部16と対向する部位であり、上方に向かうにつれて車幅方向内方にいくように傾斜している。
【0029】
内壁部22は、車幅方向外方から見てスイッチ取付部12と対向する部位である。
【0030】
下壁部23は、車幅方向外方に向かうにつれて下方にいくように傾斜している。下壁部23の前端部は、前壁部24の下端部と繋がっており、下壁部23の後端部は、後壁部25の下端部と繋がっている。下壁部23の前端部は、センサ設置部15の上端部と当接する。下壁部23には、孔部23aと、マーク部23bと、が形成されている。
【0031】
後壁部25は、車幅方向外方に向かうにつれて後方にいくように傾斜している。後壁部25のうち、車幅方向外側から見てシリンダ錠取付部13(
図4参照)と重なる位置には、孔部25aが形成されている。後壁部25の車幅方向内側面において、孔部25aの上下の縁部における前後方向中間部のやや前方寄りには、ピン取付部25bが形成されている。ピン取付部25bは、後記するピン160が挿通される筒部である。
【0032】
≪ガスケット≫
図4に示すように、ガスケット30は、開口部16の車幅方向外縁部を覆う矩形枠状の樹脂製部材である。ガスケット30は、当該ガスケット30に形成された爪部がベース部材10に形成された孔部に係止されたり、ベース部材10に形成された爪部が当該ガスケット30に形成されたフランジ部の孔部に係止されたりすることによって、ベース部材10に取り付けられている。
【0033】
≪モールディング≫
モールディング40は、ガスケット30に対して当該ガスケット30から車幅方向外側に突出するように取り付けられる矩形枠状の樹脂製部材である。モールディング40は、ガスケット30よりも柔らかく(弾性を有しており)、サイドドア2のアウタパネル2a(
図3参照)に当接する。
【0034】
<スイッチ部>
スイッチ部4は、利用者の操作によって、ドアロック装置A2のラッチ作動部A22(
図1参照)を電気的に作動させるためのスイッチである。スイッチ部4は、ケース50と、タクトスイッチ60と、スライダ70と、ボタン80と、シール90と、を備える。
【0035】
≪ケース≫
ケース50は、スイッチ取付部12の車幅方向外側に、開口部12aを覆うように取り付けられている箱状の樹脂製部材である。ケース50は、スクリュータッピングT2を用いて、スイッチ取付部12に取り付けられている。ケース50には、孔部50aが形成されている。
【0036】
≪タクトスイッチ≫
タクトスイッチ60は、ケース50内に収容されており、ケース50の孔部50aを通る外部の配線(図示せず)を介して、制御部A1(
図1参照)と電気的に接続されている。
【0037】
≪スライダ≫
スライダ70は、ケース50内において車幅方向にスライド移動可能に収容される樹脂製部材である。スライダ70及びケース50の間には、付勢部材(スプリング)Sが介設されている。
【0038】
≪ボタン≫
ボタン80は、開口部12aにおいて、ケース45の車幅方向内側を覆うように取り付けられている樹脂製部材である。
【0039】
≪シール≫
シール90は、ケース50及びボタン80の間に挟まれるように設けられており、ケース50及びスイッチ取付部12の間を塞ぐ樹脂製部材である。
【0040】
<センサ部>
センサ部5は、利用者の操作によって、ドアロック装置A2のラッチ作動部A22及びロック作動部A24(
図1参照)を電気的に作動させるためのセンサである。
図4及び
図7に示すように、センサ部5は、ケース100と、基板(制御部)110と、センサプレート120と、スイッチ130と、ボタン140と、NFC(Near Field Communication)アンテナ150と、を備える。
【0041】
≪ケース≫
ケース100は、下部に開口を有する筐体形状を呈する樹脂製部材である。ケース100の上壁部には、孔部100aが形成されている。ケース100は、スクリュータッピングT3を用いて、ケース部材20の下壁部23の下面側に取り付けられている。
【0042】
≪基板≫
基板110は、ケース100内に収容されている。基板110は、当該基板110上に各種部品が実装されており、ケース100に配置された配線を介して、制御部A1(
図1参照)と通信可能に接続されている。
【0043】
≪センサプレート≫
センサプレート120は、基板110に電気的に接続された状態で、ケース100内に収容されている静電容量センサである。ケース100の上壁部においてセンサプレート120の上方となる部位には、ブチルテープBTが貼り付けられている。
【0044】
基板110及びセンサプレート120は、ケース100内に充填されたポッティングPによって、ケース100に固定されている。
【0045】
≪スイッチ≫
スイッチ130は、基板110上に取り付けられた状態で、ケース100内に収容されている。スイッチ130の先端部は、ケース100の孔部100aから上方に突出している。
【0046】
≪ボタン≫
ボタン140は、ケース部材20の下壁部23の孔部23aに配置されている。
【0047】
≪NFCアンテナ≫
NFCアンテナ150は、ケース100の上壁部に配置されており、基板110と通信可能に接続されている。
【0048】
<シリンダ錠部>
図1に示すように、シリンダ錠部6は、鍵(キー)を用いた利用者の操作によって、ロック部A23を作動させる。シリンダ錠部6の先端部(車幅方向外端部)には、鍵を挿入可能なキー孔6aが形成されている。シリンダ錠部6は、孔部25aに臨むように、すなわち、孔部25aよりも車内側、かつ、サイドドア2に直交する方向から見て(少なくともキー孔6aが)孔部25aと重なる位置に配置されており、シリンダ錠取付部13の筒部13aに収容された状態で、ナットN及びボルト(図示せず)を用いてベース部材10に取り付けられている(
図4参照)。
【0049】
<カバー部>
図4に示すように、カバー部7は、開口部16を塞ぐことによって、シリンダ錠部6を車幅方向外方から覆う状態と、開口部16を開放することによって、シリンダ錠部6に車幅方向外方からアクセス可能な状態と、を切替可能に構成されている。カバー部7は、ピン160と、カバー部材170と、を備える。
【0050】
≪ピン≫
ピン160は、カバー部材170の回動(正逆回転)軸となる棒状の樹脂製部材である。
【0051】
≪カバー部材≫
カバー部材170は、開口部16を塞ぐことによって、シリンダ錠部6を車幅方向外方から覆う平板形状を呈する樹脂製部材である。
図8及び
図9に示すように、カバー部材170は、孔部25aに倣う形状を呈するカバー部171及び操作部172と、作動部173と、フランジ部174と、ピン取付部175と、を一体に備える。
【0052】
(カバー部)
カバー部171は、孔部25aのうち、車幅方向外方から見てシリンダ錠取付部13と重なる位置に配置される。
【0053】
(操作部)
操作部172は、カバー部171の前端部から前方に延設されており、孔部25aのうち、車幅方向外方から見て開口部16と重なる位置に配置される。
【0054】
(作動部)
作動部173は、カバー部材170の回転によって後記するレバー部材190を作動させる部位である。作動部173は、操作部172の車幅方向内側面から車幅方向内方に延設される軸部173aと、軸部173aの先端部に形成される係合部173bと、を一体に備える。係合部173bは、球形状(球冠形状)を呈する。
【0055】
(フランジ部)
フランジ部174は、操作部172の前端部における車幅方向内端部から前方に延設されている。
【0056】
(ピン取付部)
ピン取付部175は、カバー部171及び操作部172の境界部(車幅方向内側)に形成されており、ピン160が挿通される筒部である。
【0057】
<レバー部>
図4に示すように、レバー部8は、カバー部材170の回転によってラッチ部A21(
図1参照)を作動させる部位である。レバー部8は、シャフト180と、レバー部材190と、付勢部材200と、ブッシュ210と、ロッド220と、を備える。
【0058】
≪シャフト≫
シャフト180は、レバー部材190の回動軸となる軸状の金属製部材である。シャフト180は、レバー取付部14の筒部14aに収容される。
【0059】
≪レバー部材≫
レバー部材190は、ドアロック装置A2のラッチ部A21(
図1参照)をラッチ係止状態からラッチ開放状態に切り替えるための金属製部材である。レバー部材190は、全体として略L字形状を呈しており、基部191と、基部191から径方向に延設される第一の片部192及び第二の片部193と、を一体に備える。
【0060】
(基部)
基部191は、レバー部材190の回動中心となる部位である。基部191には、孔部191aが形成されている。孔部191aには、当該基部191をシャフト180に取り付けるためのピンが挿通されている。
【0061】
(第一の片部)
第一の片部192の先端部には、カバー部材170の作動部173と係合(当接)する係合部(フランジ部)192aが形成されている。
【0062】
(第二の片部)
第二の片部193は、第一の片部192に対して周方向にオフセットする位置(第一の片部192とは異なる位相)に設けられている。第二の片部193の先端部には、孔部193aが形成されている。
【0063】
≪付勢部材≫
付勢部材200は、レバー部材190を初期位置(係合部192aが、閉状態のカバー部材170の作動部173と当接する位置)の方向に付勢するスプリングである。付勢部材200は、シャフト180に外挿されており、付勢部材200及びレバー部材190の基部191の間には、カラーC3が介設されている。
【0064】
≪ブッシュ≫
ブッシュ210は、ロッド220を第二の片部193の孔部193aに係合する樹脂製部材である。
【0065】
≪ロッド≫
ロッド220は、レバー部材190の回動をドアロック装置A2のラッチ部A21に伝達するための棒状の金属製部材である。ロッド220の一端部は、ブッシュ210を介して第二の片部193の孔部193aに取り付けられている。ロッド220の他端部は、図示しないリンク機構等を介して、ラッチ部A21に係合している。
【0066】
<動作例>
続いて、車両用ドアハンドル装置1を備えるドアシステムAの動作例について、主に
図1を用いて説明する(適宜、他の図面を参照)。
【0067】
≪通常の乗車時のドア開動作(手動)≫
スマートキー(FOB)を携行した利用者が車両に近付くと、制御部A1は、当該スマートキーとの通信によって当該スマートキーを検知し、当該検知結果に基づいてドアロック装置A2のロック作動部A24を作動させて、ロック部A23をロック状態からアンロック状態に切り替える。続いて、利用者が開口部12aに手を入れてボタン80を手指で車幅方向外側に押すと、スライダ70は、付勢部材Sの付勢力に抗して車幅方向外側にスライド移動し、タクトスイッチ60に当接する。かかる状態において、タクトスイッチ60は、配線を介して電気信号を制御部A1へ出力する。制御部A1は、かかる電気信号に基づいて、ドアロック装置A2のラッチ作動部A22を作動させて、ラッチ部A21をラッチ係止状態からラッチ開放状態に切り替える。かかる状態において、利用者は、車両用ドアハンドル装置1の開口部12aの周縁部を把持することによって、サイドドア2を手動で開けることができる。
【0068】
≪通常の乗車時のドア開動作(自動)≫
利用者が開口部16に手を入れてボタン140を手指で押圧して当該ボタン140を介してスイッチ130を押圧すると、基板110は、ボタン140の操作結果(すなわち、スイッチ130の押圧結果)に応じて、電気信号を制御部A1へ出力する。制御部A1は、かかる電気信号に基づいて、ドアロック装置A2のロック作動部A24及びラッチ作動部A22を作動させて、ロック部A23をロック状態からアンロック状態に切り替えるとともに、ラッチ部A21をラッチ係止状態からラッチ開放状態に切り替える。続いて、制御部A1は、図示しないドア作動部を制御することによって、サイドドア2を自動で開ける。
【0069】
≪スマートキー不携行時のドア開動作(手動)≫
利用者が開口部16に端末装置(スマートフォン等)を入れて当該端末装置をNFCアンテナ150にかざすと、基板110は、NFCアンテナ150を介した制御信号に応じて、電気信号を制御部A1(
図1参照)へ出力する。制御部A1は、かかる電気信号に基づいて、ドアロック装置A2のロック作動部A24を作動させて、ロック部A23をロック状態からアンロック状態に切り替える。なお、端末装置の電力が切れている場合でも、NFCアンテナ150が端末装置へ電力を供給することによって、端末装置が制御信号をNFCアンテナ150へ送信することが可能である。
【0070】
続いて、利用者が開口部12aに手を入れてボタン80を手指で車幅方向外側に押すと、スライダ70は、付勢部材Sの付勢力に抗して車幅方向外側にスライド移動し、タクトスイッチ60に当接する。かかる状態において、タクトスイッチ60は、配線を介して電気信号を制御部A1へ出力する。制御部A1は、かかる電気信号に基づいて、ドアロック装置A2のラッチ作動部A22を作動させて、ラッチ部A21をラッチ係止状態からラッチ開放状態に切り替える。かかる状態において、利用者は、車両用ドアハンドル装置1の開口部12aの周縁部を把持することによって、サイドドア2を手動で開けることができる。
【0071】
≪降車後のドアロック操作≫
利用者が開口部16に手を入れてケース部材20の下壁部23のマーク23bを手指で触ると、基板110は、センサプレート120の検知結果(静電容量の変化)に応じて、電気信号を制御部A1へ出力する。制御部A1は、かかる電気信号に基づいて、ドアロック装置A2のロック作動部A24を作動させて、ロック部A23をアンロック状態からロック状態に切り替える。例えば、制御部A1は、センサプレート120の検知結果を取得した後の所定時間の間、スマートキーの検知結果が取得されても、ロック部A23をロック状態に切り替えて維持することができる。
【0072】
≪車両のバッテリーが切れている状態におけるドア開動作(手動)≫
まず、利用者が開口部16に手を入れてカバー部材170の操作部172を手指で押圧すると、カバー部材170は、ピン160を軸として回転する。カバー部171は、シリンダ錠部6のキー孔6aを覆う被覆状態(
図10、
図11及び
図12参照)からキー孔6aを露出させる露出状態(
図13、
図14及び
図15参照)に切り替わる。
【0073】
ここで、カバー部材170の作動部173(係合部173b)は、付勢部材200の付勢力に抗してレバー部材190の係合部192aを摺動しながら押圧することによって、レバー部材190を作動させる(シャフト180周りに回転させる)。なお、ロック部A23がロック状態であるため、レバー部8は、ラッチ部A21をラッチ係止状態からラッチ開放状態に切り替えることができない。
【0074】
続いて、利用者が鍵(スマートキー)をキー孔6aに挿入してシリンダ錠部6を操作すると、シリンダ錠部6は、ロック部A23をロック状態からアンロック状態に切り替える。
【0075】
続いて、利用者が操作部172から手指を離すと、カバー部材170は、付勢部材200の付勢力によってレバー部材190から押されて、ピン160を軸として回転する。カバー部171は、キー孔6aを露出させる露出状態(
図13、
図14及び
図15参照)からシリンダ錠部6のキー孔6aを覆う被覆状態(
図10、
図11及び
図12参照)に切り替わる。
【0076】
ここで、フランジ部174は、孔部25aの周縁部の車幅方向内面に当接することによって、カバー部材170の回動範囲を規制する。なお、本実施形態において、孔部25aの内周面及びカバー部材170の外周面のうち、回動軸(ピン160)から離れて回動軸方向に延びる部位(孔部25aの内周面における部位25a1,25a2(
図5及び
図6参照)、カバー部材170の外周面における部位171a,172a(
図8及び
図9参照))は、カバー部材170が孔部25aを塞ぐ状態から操作部172の押し操作による回転を許容するとともに、反対方向への回転を規制するように傾斜している。
【0077】
続いて、利用者が開口部16に手を入れてカバー部材170の操作部172を手指で再び押圧すると、カバー部材170は、ピン160を軸として回転する。カバー部171は、シリンダ錠部6のキー孔6aを覆う被覆状態(
図10、
図11及び
図12参照)からキー孔6aを露出させる露出状態(
図13、
図14及び
図15参照)に切り替わる。
【0078】
ここで、カバー部材170の作動部173(係合部173b)は、付勢部材200の付勢力に抗してレバー部材190の係合部192aを摺動しながら押圧することによって、レバー部材190を作動させる(シャフト180周りに回転させる)。今回は、ロック部A23がアンロック状態であるため、レバー部8は、ラッチ部A21をラッチ係止状態からラッチ開放状態に切り替える。かかる状態において、利用者は、車両用ドアハンドル装置1の開口部12aの周縁部を把持することによって、サイドドア2を手動で開けることができる。
【0079】
<カバー部材及びレバー部材の係合部位の形状>
作動部173(詳細には、係合部173b)の係合部192aと係合(当接)する部位の形状は、カバー部材170の回動軸の軸線視(本実施形態では、平面視)で、係合部192a側に凸となる湾曲形状(本実施形態では、円弧形状)を呈する。なお、係合部192aの作動部173(詳細には、係合部173b)と係合(当接)する部位の形状は、レバー部材190の回動軸の軸線視(本実施形態では、車幅方向外方から見て)で、係合部173b側に凸となる湾曲形状(例えば、円弧形状)を呈する構成であってもよい。
【0080】
また、係合部173b及び係合部192aの係合(当接)部位の少なくとも一方は、他方側に凸となる球冠形状を呈する構成であってもよい。また、係合部173b及び係合部192aの係合(当接)部位の少なくとも一方は、これらの摺動方向に沿って他方側に凸となる湾曲形状(例えば、円弧形状)を呈する構成であってもよい。
【0081】
前記した構造によると、係合部173b,192aが互いに摺動して係合部位を変えながら、係合部173b,192aの湾曲形状を利用して力を伝達し合うことができる。
【0082】
本発明の実施形態に係る車両用ドアハンドル装置1は、孔部25aを有するハンドルケース3と、前記孔部25aに臨むように配置されており、ドアロック装置A2をロック状態及びアンロック状態に切り替えるためのシリンダ錠部6と、前記ハンドルケース3に回動可能に軸支されており、前記孔部25aにおいて前記シリンダ錠部6のキー孔6aを覆う被覆状態と露出させる露出状態とを回動によって切替可能なカバー部材170と、前記ドアロック装置A2のラッチ部A21を開放させるためのレバー部材190と、前記レバー部材190を初期位置へ付勢する付勢部材200と、を備え、前記カバー部材170は、前記被覆状態から前記露出状態に回転することによって前記レバー部材190を作動させる作動部173を備え、前記付勢部材200は、作動した前記レバー部材190を初期位置へ戻す際に、前記作動部173を介して前記カバー部材170を前記露出状態から前記被覆状態に回転させる。
したがって、車両用ドアハンドル装置1は、カバー部材170の初期位置への戻りをレバー部材190のための付勢部材200の付勢力で行うので、カバー部材170専用の付勢部材を設ける必要がなく、部品点数を削減することができる。また、車両用ドアハンドル装置1は、カバー部材170の脱落及び紛失を防止することができる。
【0083】
車両用ドアハンドル装置1において、前記作動部173は、前記レバー部材190と当接しており、前記作動部173及び前記レバー部材190の当接部位の少なくとも一方は、回動軸の軸線視で湾曲形状を呈する。
したがって、車両用ドアハンドル装置1は、カバー部材170及びレバー部材190間の力の伝達を好適化するとともにカバー部材170及びレバー部材190の動作を円滑化することによって、操作性を向上することができる。
【0084】
車両用ドアハンドル装置1において、前記レバー部材190は、前記ドアロック装置A2がアンロック状態の場合には前記ラッチ部A21を開放することができ、前記ドアロック装置A2がロック状態の場合には前記ラッチ部A21を開放することができない。
したがって、車両用ドアハンドル装置1は、ロック状態でレバー部材190が作動した場合に、ロック状態及びドア閉状態を好適に維持することができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、車両用ドアハンドル装置1が適用されるドアは、ヒンジドアに限定されず、スライドドアであってもよい。また、車両用ドアハンドル装置1が適用されたドアは、手動で開閉可能なタイプであってもよく、自動で開閉可能なタイプであってもよい。また、車両用ドアハンドル装置1が適用されるドアは、サイドドアに限定されず、車体の後面に設けられるバックドアであってもよい。
【0086】
また、車両用ドアハンドル装置1のカバー部材170は、押し操作による操作部172に代えて、カバー部171を引っ張る操作による操作部(引っ張り用の突起部等)を備える構成であってもよい。また、車両用ドアハンドル装置1のカバー部材170は、非常用に限定されず、通常のドアラッチ解除用のハンドルとしても使用可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 車両用ドアハンドル装置
3 ハンドルケース
6 シリンダ錠部
6a キー孔
16 開口部
170 カバー部材
171 カバー部
172 操作部
173 作動部
174 フランジ部
190 レバー部材
200 付勢部材
A2 ドアロック装置
A21 ラッチ部
A23 ロック部
【手続補正書】
【提出日】2024-04-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開2021/0285264号