(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135527
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】貨幣処理装置及び貨幣処理方法
(51)【国際特許分類】
G07D 11/18 20190101AFI20240927BHJP
G07D 11/237 20190101ALI20240927BHJP
【FI】
G07D11/18
G07D11/237
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046253
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小林 慧
(72)【発明者】
【氏名】小林 清晃
(72)【発明者】
【氏名】陳 楊
(72)【発明者】
【氏名】田頭 健一
【テーマコード(参考)】
3E141
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141AA08
3E141BA06
3E141CA05
3E141FG13
(57)【要約】
【課題】貨幣処理装置内で、所有者の異なる貨幣を分けて処理する。
【解決手段】貨幣処理装置を、貨幣を受け入れる入金部と、貨幣を搬送する搬送部と、貨幣を繰出可能に収納する収納部と、制御部とを備え、制御部は、入金処理時に入金される貨幣が所定の管理店舗の貨幣か管理店舗とは異なる他店舗の貨幣かを示す情報を取得して、管理店舗の貨幣である場合は入金部の貨幣を収納部へ搬送させて、他店舗の貨幣である場合は入金部の貨幣を収納部と異なる搬送先へ搬送させるよう構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨幣を受け入れる入金部と、
貨幣を搬送する搬送部と、
貨幣を繰出可能に収納する収納部と、
制御部と
を備え、
前記制御部は、入金処理時に入金される貨幣が所定の管理店舗の貨幣か前記管理店舗と異なる他店舗の貨幣かを示す情報を取得して、前記管理店舗の貨幣である場合は前記入金部の貨幣を前記収納部へ搬送させて、前記他店舗の貨幣である場合は前記入金部の貨幣を前記収納部と異なる搬送先へ搬送させる
ことを特徴とする貨幣処理装置。
【請求項2】
回収対象の貨幣を収納する回収部と、
貨幣を一時的に収納する一時保留部と
をさらに備え、
前記制御部は、
前記入金処理時に、
前記管理店舗の貨幣は前記入金部から前記収納部へ搬送して収納させ、
前記他店舗の貨幣は前記入金部から前記一時保留部に搬送して収納させた後、前記一時保留部から繰り出して前記回収部へ搬送して収納させる
ことを特徴とする請求項1に記載の貨幣処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記他店舗の貨幣の入金処理を実行している間に障害が発生して、前記一時保留部に貨幣を収納できなくなった場合は、前記貨幣を前記回収部へ搬送して収納させることを特徴とする請求項2に記載の貨幣処理装置。
【請求項4】
貨幣を排出する出金部
をさらに備え、
前記制御部は、前記他店舗の貨幣の入金処理を実行している間に障害が発生して、前記回収部に貨幣を収納できなくなった場合は、前記貨幣を前記出金部へ搬送して排出させる
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の貨幣処理装置。
【請求項5】
回収対象の貨幣を収納する回収部
をさらに備え、
前記制御部は、
前記入金処理時に、
前記管理店舗の貨幣は前記入金部から前記収納部へ搬送して収納させ、
前記他店舗の貨幣は前記入金部から前記回収部へ搬送して収納させる
ことを特徴とする請求項1に記載の貨幣処理装置。
【請求項6】
貨幣を排出する出金部
をさらに備え、
前記制御部は、前記他店舗の貨幣の入金処理を実行している間に障害が発生して、前記回収部に貨幣を収納できなくなった場合は、前記貨幣を前記出金部から排出させる
ことを特徴とする請求項5に記載の貨幣処理装置。
【請求項7】
貨幣を排出する出金部
をさらに備え、
前記制御部は、
前記入金処理時に、
前記管理店舗の貨幣は前記入金部から前記収納部へ搬送して収納させ、
前記他店舗の貨幣は前記入金部から前記出金部へ搬送して排出させる
ことを特徴とする請求項1に記載の貨幣処理装置。
【請求項8】
前記出金部から排出した貨幣の情報と、前記貨幣を収めた貨幣容器を特定可能な識別情報とを関連付けて記憶する記憶部をさらに備えることを特徴とする請求項4、6、7のいずれか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項9】
前記貨幣容器に付されている前記識別情報の入力を受け付ける入力部をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の貨幣処理装置。
【請求項10】
前記識別情報を生成して前記識別情報を前記貨幣容器に付すよう指示する情報を出力する出力部をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の貨幣処理装置。
【請求項11】
回収対象の貨幣を収納する回収部
をさらに備え、
前記制御部は、前記管理店舗による回収指示を受け付けて、前記収納部の貨幣を前記回収部へ搬送して収納する回収処理を実行する
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項12】
貨幣を排出する出金部
をさらに備え、
前記制御部は、前記他店舗による出金指示は受け付けず、前記管理店舗による出金指示は受け付けて、前記収納部から前記出金部へ貨幣を搬送して排出する出金処理を実行する
ことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記入金処理の途中で障害が発生した場合、前記他店舗による障害解除の操作は受け付けず、前記管理店舗による障害解除の操作は受け付けることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項14】
前記入金処理の使用者の認証処理を実行して、入金される貨幣が前記管理店舗の貨幣か前記他店舗の貨幣かを示す情報を取得する取得部をさらに備えることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項15】
貨幣処理装置に実行させる貨幣処理方法であって、
入金処理時に入金される貨幣が所定の管理店舗の貨幣か前記管理店舗と異なる他店舗の貨幣かを示す情報を取得する取得工程と、
入金部から入金される貨幣を前記情報に基づいて搬送する搬送工程と
を含み、
前記搬送工程において、前記管理店舗の貨幣は、前記入金部から、貨幣を収納する収納部へ搬送されて、前記他店舗の貨幣は、前記収納部と異なる搬送先へ搬送される
ことを特徴とする貨幣処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、所有者の異なる貨幣を分けて処理することができる貨幣処理装置及び貨幣処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、店舗では、客との取引を行うために貨幣処理装置が利用されている。例えば、特許文献1には、店舗のレジで客との取引に利用する釣銭機と、釣銭機から回収した売上金を入金するための貨幣処理装置とが開示されている。この貨幣処理装置は、貨幣処理装置が設置された店舗の売上金の入金処理と、他店舗の売上金の入金処理とを実行する。入金処理で貨幣処理装置に収納された売上金は、警送会社が所定のタイミングで回収して現金センターへ輸送する。現金センターでは、例えば売上金を計数して店舗の口座に入金する処理が行われる。他店舗は、貨幣処理装置の設置店舗に手数料を支払って貨幣処理装置を利用する。設置店舗は、他店舗から手数料を得ることができる。他店舗は、貨幣処理装置に入金した売上金を現金センターへ運んでもらうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の貨幣処理装置は、入金された貨幣を、該貨幣の所有者を区別することなく同じ方法で処理して、装置内に設けられた同じ収納部に収納していた。貨幣処理の途中で装置内に貨幣の詰まりが生じた場合、装置内部を露出させて、詰まりを解消する作業が行われる。現金処理装置が設置された店舗と、それ以外の店舗とを区別せず、売上金が同じ収納部に収納されていると、作業時に、所有権のない貨幣に触れることが可能となり、セキュリティ上好ましくない。
【0005】
本開示は、上記従来の課題に鑑みてなされたもので、その目的の1つは、所有者の異なる貨幣を分けて処理することができる貨幣処理装置及び貨幣処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る貨幣処理装置は、貨幣を受け入れる入金部と、貨幣を搬送する搬送部と、貨幣を繰出可能に収納する収納部と、制御部とを備え、前記制御部は、入金処理時に入金される貨幣が所定の管理店舗の貨幣か前記管理店舗と異なる他店舗の貨幣かを示す情報を取得して、前記管理店舗の貨幣である場合は前記入金部の貨幣を前記収納部へ搬送させて、前記他店舗の貨幣である場合は前記入金部の貨幣を前記収納部と異なる搬送先へ搬送させる。
【0007】
上記構成において、回収対象の貨幣を収納する回収部と、貨幣を一時的に収納する一時保留部とをさらに備え、前記制御部は、前記入金処理時に、前記管理店舗の貨幣は前記入金部から前記収納部へ搬送して収納させ、前記他店舗の貨幣は前記入金部から前記一時保留部に搬送して収納させた後、前記一時保留部から繰り出して前記回収部へ搬送して収納させてもよい。
【0008】
上記構成において、前記制御部は、前記他店舗の貨幣の入金処理を実行している間に障害が発生して、前記一時保留部に貨幣を収納できなくなった場合は、前記貨幣を前記回収部へ搬送して収納させてもよい。
【0009】
上記構成において、貨幣を排出する出金部をさらに備え、前記制御部は、前記他店舗の貨幣の入金処理を実行している間に障害が発生して、前記回収部に貨幣を収納できなくなった場合は、前記貨幣を前記出金部へ搬送して排出させてもよい。
【0010】
上記構成において、回収対象の貨幣を収納する回収部をさらに備え、前記制御部は、前記入金処理時に、前記管理店舗の貨幣は前記入金部から前記収納部へ搬送して収納させ、前記他店舗の貨幣は前記入金部から前記回収部へ搬送して収納させてもよい。
【0011】
上記構成において、貨幣を排出する出金部をさらに備え、前記制御部は、前記他店舗の貨幣の入金処理を実行している間に障害が発生して、前記回収部に貨幣を収納できなくなった場合は、前記貨幣を前記出金部から排出させてもよい。
【0012】
上記構成において、貨幣を排出する出金部をさらに備え、前記制御部は、前記入金処理時に、前記管理店舗の貨幣は前記入金部から前記収納部へ搬送して収納させ、前記他店舗の貨幣は前記入金部から前記出金部へ搬送して排出させてもよい。
【0013】
上記構成において、前記出金部から排出した貨幣の情報と、前記貨幣を収めた貨幣容器を特定可能な識別情報とを関連付けて記憶する記憶部をさらに備えていてもよい。
【0014】
上記構成において、前記貨幣容器に付されている前記識別情報の入力を受け付ける入力部をさらに備えていてもよい。
【0015】
上記構成において、前記識別情報を生成して前記識別情報を前記貨幣容器に付すよう指示する情報を出力する出力部をさらに備えていてもよい。
【0016】
上記構成において、回収対象の貨幣を収納する回収部をさらに備え、前記制御部は、前記管理店舗による回収指示を受け付けて、前記収納部の貨幣を前記回収部へ搬送して収納する回収処理を実行してもよい。
【0017】
上記構成において、貨幣を排出する出金部をさらに備え、前記制御部は、前記他店舗による出金指示は受け付けず、前記管理店舗による出金指示は受け付けて、前記収納部から前記出金部へ貨幣を搬送して排出する出金処理を実行してもよい。
【0018】
上記構成において、前記制御部は、前記入金処理の途中で障害が発生した場合、前記他店舗による障害解除の操作は受け付けず、前記管理店舗による障害解除の操作は受け付けてもよい。
【0019】
上記構成において、前記入金処理の使用者の認証処理を実行して、入金される貨幣が前記管理店舗の貨幣か前記他店舗の貨幣かを示す情報を取得する取得部をさらに備えていてもよい。
【0020】
本開示に係る貨幣処理方法は、貨幣処理装置に実行させる貨幣処理方法であって、入金処理時に入金される貨幣が所定の管理店舗の貨幣か前記管理店舗と異なる他店舗の貨幣かを示す情報を取得する取得工程と、入金部から入金される貨幣を前記情報に基づいて搬送する搬送工程とを含み、前記搬送工程において、前記管理店舗の貨幣は、前記入金部から、貨幣を収納する収納部へ搬送されて、前記他店舗の貨幣は、前記収納部と異なる搬送先へ搬送される。
【発明の効果】
【0021】
本開示に係る貨幣処理装置及び貨幣処理方法によれば、所有者が異なる貨幣を区別して、貨幣処理装置内で異なる方法で処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る貨幣処理装置の概要を説明するための図である。
【
図2】
図2は、貨幣処理装置の外観例を示す図である。
【
図3】
図3は、紙幣処理装置の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、紙幣処理装置が実行する入金処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、自店舗の紙幣の入金処理を説明するための図である。
【
図6】
図6は、他店舗の紙幣の入金処理を説明するための図である。
【
図7】
図7は、自店舗の紙幣処理の例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、他店舗の紙幣の入金処理中に障害が発生した場合の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、障害発生時の紙幣処理の例を説明するための図である。
【
図10】
図10は、障害発生時の紙幣処理の別の例を説明するための図である。
【
図11】
図11は、出金部に排出された紙幣の後処理の例を説明するための図である。
【
図12】
図12は、出金部に排出された紙幣の後処理の別の例を説明するための図である。
【
図13】
図13は、他店舗の紙幣の入金処理の別の例を説明するための図である
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係る貨幣処理装置及び貨幣処理方法の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る貨幣処理装置1の概要を説明するための図である。貨幣処理装置1は、貨幣処理装置1を管理する管理店舗に設置されている。管理店舗には、貨幣処理装置1を購入した店舗と、リース契約により貨幣処理装置1を利用する店舗とが含まれる。以下、貨幣処理装置1が設置されている管理店舗を自店舗、それ以外の店舗を他店舗と記載して区別する。
【0024】
貨幣処理装置1は、装置外から貨幣を受け付けて装置内に取り込み、識別計数して装置内に収納する入金処理を実行する。貨幣処理装置1は、入金処理の実行時に、自店舗の店員と他店舗の店員とを区別する(A)。例えば、貨幣処理装置1は、装置使用者の認証処理を実行して、使用者が自店舗の店員か他店舗の店員かを示す情報を取得する。言い換えれば、貨幣処理装置1は、入金される貨幣を処理する前に、この貨幣が自店舗所有の貨幣か他店舗所有の貨幣かを示す情報を取得する。認証処理の方法は特に限定されない。例えば、事前に登録されたパスワード、生体情報等の認証情報を利用して認証処理を実行すればよい。貨幣処理装置1が、記憶装置を有する貨幣カセットを着脱可能に構成され、貨幣カセットを装着して入金処理が実行される場合、貨幣処理装置1が、貨幣カセットの記憶装置に記憶されている認証情報に基づいて認証処理を実行してもよい。貨幣処理装置1が認証情報に応じた取得部を有し、該取得部によって取得した認証情報に基づいて認証処理を実行すればよい。貨幣処理装置1は、認証結果に問題がなければ入金処理を実行し、認証結果に問題があれば入金処理を実行しない。
【0025】
貨幣処理装置1は、使用者が自店舗の店員であるか、他店舗の店員であるかに応じて、貨幣の処理方法を変更する(B)。言い換えれば、貨幣処理装置1は、入金処理で処理する貨幣が自店舗の貨幣であるか、他店舗の貨幣であるかに応じて、貨幣の処理方法を変更する。例えば、貨幣処理装置1は、装置内における貨幣の搬送ルートを変更する。また、例えば、貨幣処理装置1は、装置内における貨幣の収納場所を変更する。貨幣処理装置1は、自店舗の貨幣と他店舗の貨幣を区別して処理するため、従来に比べて貨幣に係るセキュリティが向上する。具体的な貨幣の処理方法は後述する。
【0026】
図2は、貨幣処理装置1の外観例を示す図である。
図2に示す貨幣処理装置1は、紙幣処理装置100及び硬貨処理装置200を含む。貨幣処理装置1は、例えばタッチパネル式の液晶表示装置から成る操作表示部80を備える。貨幣処理装置1の使用者は、操作表示部80で貨幣処理に関する情報の確認及び情報の入力を行うことができる。操作表示部80は、各種情報を出力する出力部の一例であり、使用者の操作による情報を入力する入力部の一例である。
【0027】
紙幣処理装置100は、紙幣の入金処理及び出金処理を実行する。入金処理時には、紙幣入金部10に受け付けた紙幣を識別計数して装置内に収納する。出金処理時には、出金する紙幣を装置内から繰り出して紙幣出金部20へ排出する。硬貨処理装置200は、硬貨の入金処理及び出金処理を実行する。入金処理時には、硬貨入金部11に受け付けた硬貨を装置内に取り込んで識別計数して装置内に収納する。出金処理時には、出金する硬貨を装置内から繰り出して硬貨出金部12へ排出する。以下、重複した説明を避けるため、紙幣処理装置100を例に説明を続ける。以下の説明では、紙幣入金部10及び紙幣出金部20をそれぞれ単に入金部10及び出金部20と記載する。
【0028】
図3は、紙幣処理装置(貨幣処理装置)100の構成例を示す図である。
図3(a)は、紙幣処理装置100の内部構成を示す断面模式図である。
図3(b)は、紙幣処理装置100の機能構成を示すブロック図である。
【0029】
図3(a)に示すように、紙幣処理装置100は、
図2に示した入金部10、出金部20及び操作表示部80に加えて、筐体内部に、搬送部30、識別部40、一時保留部50、収納部60及び回収部70を備える。
【0030】
入金部10は、入金される複数枚の紙幣を受け付けて1枚ずつ装置内の搬送路へ送り出すことができる。搬送部30は、入金部10と、出金部20と、識別部40と、一時保留部50と、収納部60と、回収部70との間を接続する搬送路に沿って紙幣を搬送する。識別部40は搬送部30が搬送する紙幣の金種を識別する。一時保留部50は、紙幣を一時的に収納するために利用される。
【0031】
収納部60は、搬送部30が搬送してきた紙幣の収納と、収納している紙幣の搬送路への繰り出しとを行う。収納部60の数は限定されないが、紙幣処理装置100内には複数の収納部60が設けられる。例えば、複数の収納部60に紙幣が金種別に収納される。
【0032】
回収部70は、搬送部30が搬送してきた紙幣を収納するが、紙幣の繰り出しは行わない。回収部70は、収納した紙幣を繰り出す機構を有さず、構造的に繰り出し不可になっていてもよい。紙幣処理装置100の装置外へ回収される回収対象の紙幣が回収部70に収納される。例えば、回収部70は、紙幣処理装置100に対して着脱可能に設けられ、回収対象の紙幣が収納された回収部70が取り外されて回収部ごと回収される。また、例えば、回収部70は、着脱可能な袋等の容器の中に紙幣を収納するよう構成され、回収対象の紙幣が収納された容器が回収部70から取り外されて回収される。
【0033】
筐体内部は、上部100aと、中間部100bと、下部100cとに分かれている。紙幣処理装置100の前面には、中間部100b及び下部100cに対応する扉101が設けられている。
【0034】
入金部10、出金部20、搬送部30、識別部40及び一時保留部50は上部100aに設けられている。収納部60は中間部100bに設けられている。回収部70は下部100cに設けられている。搬送部30は、上部100a、中間部100b、下部100cそれぞれの間で紙幣を搬送することができる。紙幣処理装置100が金庫を含み、中間部100b及び下部100cが金庫内に収められていてもよい。紙幣処理装置100が2つの金庫を含み、中間部100b及び下部100cが各金庫内に別々に収められる態様であってもよい。
【0035】
自店舗の紙幣及び他店舗の紙幣の両方が上部100aの識別部40で識別される。中間部100bの収納部60は、自店舗の紙幣のみを収納し、他店舗の紙幣は収納しない。下部100cにある回収部70は、自店舗及び他店舗の回収対象の紙幣を収納する。
【0036】
紙幣処理装置100の上部100a又は中間部100bで障害が発生した場合、紙幣処理装置100は、自店舗の店員が障害解除のために行う操作は受け付けるが、他店舗の店員による操作は受け付けない。
【0037】
例えば、中間部100bにある搬送路で紙幣詰まりが生じた場合、紙幣処理装置100は、自店舗の店員による操作を受け付けて、紙幣が詰まった位置等の情報を店員に報知する。紙幣処理装置100は、自店舗の店員が、扉101を開いて搬送路に詰まった紙幣を取り除けるように、扉101のロックを解除する。紙幣処理装置100は、自店舗の店員が、収納部60が設けられたラック部を装置外へ引き出して、搬送路に詰まった紙幣を取り除けるように、ラック部のロックを解除する。
【0038】
紙幣処理装置100から紙幣を回収する警送会社は、扉101を開いて、回収部70の紙幣を回収する。例えば、紙幣処理装置100は、警送会社の認証情報を操作表示部80に受け付けて認証処理を実行し、認証結果に基づいて扉101のロックを解除する。紙幣処理装置100は、警送会社が、回収部70が設けられたラック部を装置外へ引き出して、紙幣が収納された回収部70、又は回収部70に装着された袋等の容器を回収できるように、ラック部のロックを解除する。警送会社は、回収した紙幣を金融機関、現金センター等へ輸送する。
【0039】
中間部100bに対応する扉と、下部100cに対応する扉とを独立して設け、紙幣処理装置100が、自店舗の店員による障害解除の作業時には中間部100bの扉のロックを解除して、警送会社の担当者による回収作業時には下部100cの扉を解除してもよい。紙幣処理装置100は、自店舗の店員及び警送会社の担当者が、それぞれが作業権限を有する筐体内の領域にのみアクセスできるようにすることで、紙幣に係るセキュリティを維持している。
【0040】
図3(b)に示すように、紙幣処理装置100は、
図3(a)に示した構成に加えて、制御部111、記憶部112及び通信部113を有する。通信部113は、外部装置と情報を送受信するために利用される。例えば、金融機関のサーバ装置を外部装置として、回収対象の自店舗の紙幣の金額及び他店舗の紙幣の金額が送信され、金融機関で、自店舗の口座及び他店舗の口座に各店舗の回収金額分を入金する口座処理が実行される。
【0041】
記憶部112は、紙幣処理装置100の動作に必要な各種情報の保存に利用される不揮発性の記憶装置である。紙幣処理装置100で行われた入金処理に関する情報が記憶部112に保存される。収納部60に収納されている自店舗の紙幣の金種及び金種別枚数を示す情報が記憶部112に保存される。回収部70に収納されている自店舗の紙幣の金種及び金種別枚数を示す情報と、他店舗の紙幣の金種及び金種別枚数を示す情報とが記憶部112に保存される。他店舗の紙幣の入金処理で、入金紙幣の一部又は全部が紙幣処理装置100の装置外に保管される場合は、保管される入金紙幣の金額が、他店舗の識別情報及び入金金額と関連付けて保存される。これについての詳細は後述する。
【0042】
制御部111に対応するプログラムが記憶部112又は専用の記憶装置に予め保存されている。このプログラムがCPU等のハードウェアによって実行されることにより、制御部111の機能及び動作が実現される。制御部111は、操作表示部80を介して各種情報を受け付けて、記憶部112に保存された各種情報に基づいて、紙幣処理装置100の各部を制御する。これにより、本実施形態に記載する紙幣処理装置100の機能及び動作が実現されている。
【0043】
図4は、紙幣処理装置100が実行する入金処理の流れを示すフローチャートである。紙幣処理装置100は、使用者の認証処理を実行する。例えば、紙幣処理装置100は、予め発行された使用者ID及びパスワードの入力を操作表示部80に受け付けて認証処理を実行する。紙幣処理装置100は、認証結果に基づいて、入金処理を実行する使用者が、自店舗の店員か他店舗の店員かを判定する(ステップS1)。
【0044】
自店舗の店員である場合(ステップS1;Yes)、紙幣処理装置100は、入金部10に受け付けた紙幣を識別し、識別結果に基づいて、対応する収納部60に収納して(ステップS2)、入金処理を終了する。
【0045】
図5は、自店舗の紙幣の入金処理を説明するための図である。紙幣処理装置100は、
図5に矢印で示すように、入金部10の自店舗の紙幣を、搬送部30によって搬送して識別部40で識別し、識別結果に基づいて、複数の収納部60のいずれかに収納する。例えば、各収納部60に収納する紙幣の金種が予め設定されており、紙幣は、金種に対応する収納部60に収納される。紙幣処理装置100は、入金された紙幣を識別して得られた入金金額等、入金処理に関する情報を記憶部112に保存する。
【0046】
図4に示すように、紙幣処理装置100の使用者が他店舗の店員である場合(ステップS1;No)、紙幣処理装置100は、入金部10に受け付けた紙幣を識別して一時保留部50へ一時保留する(ステップS3)。入金部10の全ての紙幣を一時保留した後、紙幣処理装置100は、一時保留部50の全ての紙幣を、回収部70に収納して(ステップS4)、入金処理を終了する。
【0047】
図6は、他店舗の紙幣の入金処理を説明するための図である。紙幣処理装置100は、
図6(a)に矢印で示すように、入金部10の他店舗の紙幣を、搬送部30によって搬送して識別部40で識別し、一時保留部50に収納する。入金部10の紙幣全てを一時保留部50に収納した後、操作表示部80の画面上に、入金された紙幣を識別して得られた入金金額が表示される。画面上の入金金額を確認した他店舗の店員は、入金金額を確定する操作と、入金処理をキャンセルする操作とのいずれかを選択する。キャンセル操作が行われた場合、紙幣処理装置100は、一時保留部50から全ての紙幣を繰り出して搬送部30によって搬送し、出金部20から排出する。入金部10から一時保留部50に取り込まれた紙幣が、中間部100b及び下部100cへ搬送されることなく、出金部20から返却されることになる。
【0048】
入金金額を確定する操作が行われた場合、紙幣処理装置100は、
図6(b)に矢印で示すように、一時保留部50から全ての紙幣を繰り出して搬送部30によって搬送し、回収部70に収納する。紙幣処理装置100は、入金金額等、入金処理に関する情報を記憶部112に保存する。
【0049】
他店舗の紙幣の入金処理時、紙幣処理装置100は、外部装置300へ回収情報を送信する。回収情報には、紙幣処理装置100を特定可能な装置番号と、入金金額と、入金金額が得られた入金処理を特定可能な取引番号と、入金処理を行った他店舗を特定可能な店舗番号とが含まれる。装置番号、取引番号及び店舗番号は、それぞれが装置、取引及び店舗を一意に特定可能な識別情報である。
【0050】
例えば、金融機関のサーバ装置を外部装置300として回収情報が送信される。金融機関は、サーバ装置に受信した回収情報に基づいて、入金金額を他店舗の口座に入金する口座処理を実行することができる。口座処理の実行後に問題が生じた場合、金融機関は、回収情報に含まれる情報に基づいて、紙幣処理装置100及び他店舗と、他店舗が紙幣処理装置100で実行した入金処理及び入金金額とを特定して、調査することができる。口座番号等の口座処理に必要な情報は、予め金融機関に知らせておいてもよいし、回収情報に含めるようにしてもよい。回収情報が警送会社のサーバ装置に送信されて、警送会社が、口座処理に必要な情報を金融機関のサーバ装置に送信することにより、口座処理が実行される態様であってもよい。
【0051】
図5と
図6の比較から分かるように、紙幣処理装置100は、同じ入金処理であるにも拘わらず、使用者が自店舗の店員であるか他店舗の店員であるかによって、紙幣の搬送経路及び搬送先を変更する。
【0052】
入金処理で入金された他店舗の紙幣は、回収部70に収納される。回収部70の紙幣は、所定のタイミングで警送会社によって回収される。紙幣処理装置100が、他店舗の紙幣を利用して紙幣処理を行うことはない。
【0053】
一方、入金処理で入金された自店舗の紙幣は、収納部60に収納されて、他の紙幣処理に利用される。
図7は、自店舗の紙幣処理の例を説明するための図である。収納部60の紙幣を利用して出金処理が行われる。紙幣処理装置100は、他店舗の店員による出金指示は受け付けないが、自店舗の店員による出金指示は受け付けて、収納部60から出金部20へ紙幣を搬送して排出する出金処理を実行する。
【0054】
自店舗の店員は、操作表示部80を操作して、出金する紙幣の金種及び金種別枚数、又は出金金額を指定する。紙幣処理装置100は、
図7(a)に矢印で示すように、出金対象の紙幣を収納部60から繰り出して搬送部30によって搬送し、出金部20へ排出する。紙幣処理装置100は、収納部60に収納されている紙幣の情報を保持しており、収納部60から繰り出される紙幣の金種を特定することができる。出金対象の紙幣を、この紙幣に対応する収納部60から繰り出すことができるため、紙幣処理装置100は、識別部40による識別を行わずに紙幣を出金する。ただし、収納部60から繰り出した紙幣が識別部40による識別後に出金される態様であってもよい。
【0055】
入金処理時、他店舗の紙幣は回収部70へ直接回収されるのに対して、自店舗の紙幣は収納部60に収納される。自店舗の店員が回収指示の操作を行って、紙幣処理装置100が回収処理を実行することにより、収納部60にある自店舗の紙幣が回収部70へ回収される。自店舗の店員は、操作表示部80を操作して、回収対象の紙幣の金種及び金種別枚数、又は回収金額を指定する。紙幣処理装置100は、
図7(b)に矢印で示すように、回収対象の紙幣を、対応する収納部60から繰り出して、搬送部30によって回収部70へ搬送して収納する。回収部70の紙幣は、所定のタイミングで警送会社によって回収される。紙幣処理装置100は、回収部70に収納された自店舗の紙幣の情報を記憶部112で記憶する。
【0056】
回収部70には、入金処理で収納された他店舗の紙幣と、回収処理で収納された自店舗の紙幣とが収納される。紙幣処理装置100は、回収部70に収納されている、自店舗の紙幣の金額情報と、他店舗の紙幣の金額情報とを区別して、記憶部112に記憶する。金額情報は、少なくとも紙幣の金額を含む。金額情報が、紙幣の金種及び金種別金額をさらに含んでいてもよい。
【0057】
自店舗の紙幣の回収処理時、紙幣処理装置100は、外部装置300へ回収情報を送信する。回収情報には、紙幣処理装置100の装置番号と、回収金額と、回収金額が得られた回収処理を特定可能な取引番号と、自店舗の店舗番号とが含まれる。例えば、回収情報が金融機関のサーバ装置に送信されて、金融機関が、自店舗(紙幣処理装置100の設置店舗)の口座に回収金額を入金する口座処理を実行する。口座番号等の口座処理に必要な情報は、予め金融機関に知らせておいてもよいし、回収情報に含めるようにしてもよい。回収情報が警送会社のサーバ装置に送信されて、警送会社が、口座処理に必要な情報を金融機関のサーバ装置に送信することにより口座処理が実行される態様であってもよい。
【0058】
紙幣処理装置100の利用中に装置内で障害が発生すると、紙幣処理装置100の管理店舗である自店舗の店員が、障害解除の作業を行う。例えば、自店舗の店員が入金処理又は出金処理を実行している間に、紙幣処理装置100の装置内で紙幣詰まりが発生した場合、店員は、装置の上部100a及び中間部100bの筐体内部を露出させて、詰まった紙幣を取り除き、入金処理を完了することができる。
【0059】
一方、他店舗の店員は、紙幣処理装置100の装置内部へアクセスできず、障害解除の作業を行うことができない。このため、他店舗の店員が入金処理を実行中に障害が発生した場合、紙幣処理装置100は、障害の発生状況に応じて、紙幣の処理方法を変更する。
【0060】
図8は、他店舗の紙幣の入金処理中に障害が発生した場合の処理の流れを示すフローチャートである。紙幣処理装置100は、搬送路の複数箇所に紙幣検出センサを有し、紙幣詰まりが生じた位置を特定できるようになっている。言い換えれば、紙幣処理装置100は、紙幣を搬送可能なルートを特定することができる。
【0061】
他店舗の店員が入金処理を実行している間に搬送路で紙幣詰まりが生ずると、紙幣処理装置100は、入金部10から入金された紙幣を、回収部70に収納できるか否かを判定する(ステップS11)。回収部70に紙幣を収納できる場合(ステップS11;Yes)、紙幣処理装置100は、入金された紙幣を回収部70へ搬送して収納し(ステップS12)、入金処理を終了する。回収部70に紙幣を収納できない場合(ステップS11;No)、紙幣処理装置100は、入金された紙幣を出金部20から排出して(ステップS13)、入金処理を終了する。以下、具体例を挙げて説明する。
【0062】
図9は、障害発生時の紙幣処理の例を説明するための図である。
図6(a)で説明したように入金部10の他店舗の紙幣を識別部40で識別して一時保留部50へ搬送している間に、
図9(a)に示すように一時保留部50の入口近傍で紙幣詰まり200が生ずると、紙幣を一時保留部50に収納できなくなる。このとき、入金部10の紙幣を回収部70に収納可能であれば(
図8ステップS11;Yes)、紙幣処理装置100は、
図9(b)に示すように、入金部10に残っている紙幣を識別部40で識別した後、回収部70へ搬送して収納する(
図8ステップS12)。この場合、
図6で説明した通常の入金処理と同様に、入金処理が終了する。紙幣処理装置100が、識別部40で紙幣を識別して得られた入金金額を含む回収情報を外部装置300へ送信することにより、入金金額を他店舗の口座へ入金する口座処理が行われる。
【0063】
図10は、障害発生時の紙幣処理の別の例を説明するための図である。入金部10に載置された他店舗の紙幣は、
図6(a)で説明したように、一時保留部50に一時的に収納される。この後、
図6(b)に示すように一時保留部50から紙幣を繰り出して回収部70へ搬送している間に、
図10(a)に示すように、中間部100bの搬送路で紙幣詰まり201が生ずると、紙幣を回収部70に収納できなくなる(
図8ステップS11;No)。このため、紙幣処理装置100は、
図10(b)に示すように、一時保留部50に残っている紙幣を出金部20へ搬送して排出する(
図8ステップS13)。この場合、出金部20に排出された紙幣の後処理が行われる。
【0064】
図11は、出金部20に排出された紙幣の後処理の例を説明するための図である。例えば、紙幣処理装置100の出金部20の近傍に、出金部20から排出された紙幣を収納するための現金袋310が置かれている。また、紙幣処理装置100の設置場所近傍に、現金ポスト320が設置されている。
【0065】
現金袋310は、現金ポスト320で貨幣を保管するための貨幣容器である。現金袋310は、その内部に紙幣を入れて袋の口を閉じると、袋を破らないと紙幣を取り出せないようになっている。現金ポスト320には、現金袋310をポスト内に投函するための投函口321と、現金袋310を現金ポスト320から取り出すための扉322とが設けられている。現金ポスト320の扉322はロックされているが、警送会社の担当者は、ロックを解除して扉322を開き、現金ポスト320から現金袋310を取り出すことができる。
【0066】
図10(b)に示すように出金部20に紙幣を排出した紙幣処理装置100は、
図11に示すように、操作表示部80の画面上に、他店舗の紙幣の入金金額と、他店舗の店員に対する指示とを表示する(S21)。画面上に、入金金額に加えて、出金部20に排出された紙幣の金額が表示されてもよい。
【0067】
操作表示部80には、出金部20の紙幣を現金袋310に入れて封をし、現金袋310を現金ポスト320に投函するよう指示する情報が表示される。また、操作表示部80を操作して、現金袋310袋番号(識別情報)を入力するよう指示する情報が表示される。
【0068】
他店舗の店員は、出金部20に排出された紙幣を現金袋310に入れて封をする(S22)。現金袋310の表面には、袋情報311が印刷されている。袋情報311には、現金袋310を特定可能な袋番号と、袋番号を符号化した図形コードとが含まれる。他店舗の店員は、操作表示部80を操作して、袋番号を入力する。紙幣処理装置100が、図形コードの読取装置を備え、読取装置に図形コードを読み取らせて袋番号が入力される態様であってもよい。現金袋310の袋番号を入力した他店舗の店員は、画面上の終了ボタンを押して入金処理を終了し、現金袋310を現金ポスト320に投函する(S23)。入金処理を終了した紙幣処理装置100は、
図6で説明した通常の入金処理と同様に、回収情報を外部装置300へ送信する(S24)。
【0069】
回収情報に含まれる入金金額は、障害が発生することなく入金処理が行われた場合と同じ金額になる。例えば、回収部70に収納された紙幣の金額と、紙幣処理装置100内に詰まった紙幣の金額と、現金袋310に入れた紙幣の金額との合計金額が入金金額となる。回収情報に基づいて、入金金額を他店舗の口座に入金する口座処理が行われる。
【0070】
紙幣処理装置100は、出金部20に排出した紙幣の情報と、紙幣を収めた現金袋310の袋番号とを関連付けて記憶する。例えば、紙幣処理装置100は、障害発生により出金部20に排出した紙幣の金額と、紙幣が入った現金袋310の袋番号とを、回収情報と関連付けて記憶部112に保存する。紙幣処理装置100が、出金部20に排出した紙幣の金額と、現金袋310の袋番号とを回収情報に含めて、該回収情報を、記憶部112に保存すると共に、金融機関のサーバ装置、警送会社のサーバ装置等の外部装置300へ送信してもよい。紙幣処理装置100が、入金処理で処理された他店舗の紙幣の一部が現金ポスト320に投函されたことを警送会社へ知らせる報知処理を実行してもよい。
【0071】
紙幣処理装置100は、障害の発生を自店舗の店員へ知らせる報知処理を実行する。例えば、紙幣処理装置100は、自店舗の店員が所持する通信端末を介して、障害解除の必要があることを報知する。報知を受けた自店舗の店員は、紙幣処理装置100で障害解除の作業を行って紙幣詰まりを解消する。自店舗の店員は、詰まっていた紙幣を紙幣処理装置100から取り出して、取り出した紙幣を回収部70に収納させる。自店舗の店員が、取り出した紙幣の金額を入力して、紙幣処理装置100が、入力された金額分の紙幣を収納部60から回収部70に収納してもよい。例えば、取り出した紙幣が破れていて機械処理が困難である場合に、取り出した紙幣を自店舗の紙幣にして装置外で管理し、該紙幣に代えて、収納部60の紙幣を他店舗の入金紙幣として回収部70に収納させればよい。こうして他店舗の店員が入金して装置内に詰まった紙幣は回収部70に収納される。
【0072】
紙幣処理装置100は、記憶部112に記憶している情報を更新する。例えば、紙幣処理装置100内に詰まっていた紙幣の金額が、回収部70に収納されていた他店舗の紙幣の金額に加算されると共に、装置内に詰まっている紙幣の金額が0(ゼロ)に更新される。障害が発生した入金処理で他店舗の店員が入金した紙幣は、一部が回収部70に収納され、残りが現金袋310に保管された状態となる。
【0073】
警送会社の担当者は、紙幣処理装置100の回収部70に収納された紙幣を回収する。警送会社の担当者が、紙幣処理装置100の操作表示部80で、回収部70の紙幣を回収するための所定操作を行うと、紙幣処理装置100は、回収対象である他店舗の紙幣の一部が現金ポスト320に投函されたことを報知する。例えば、現金ポスト320から現金袋310を回収し、現金袋310の紙幣を入金するよう指示する情報が操作表示部80の画面上に表示される。警送会社の担当者は、
図11に示すように、現金ポスト320から現金袋310を回収し(S25)、現金袋310を破って、他店舗の紙幣を紙幣処理装置100に入金する(S26)。
【0074】
警送会社の担当者は、現金袋310に印刷された袋情報311に含まれる袋番号を、操作表示部80に入力する。袋番号の入力は、手入力であってもよいし、操作表示部80と接続された読取装置で袋情報311の図形コードを読み取ることによって行われてもよい。
【0075】
紙幣処理装置100は、入力された袋番号に基づいて、記憶部112に保存された回収情報を探索して、障害発生時に出金部20へ排出した紙幣の金額、すなわち現金袋310に入っている紙幣の金額を特定する。特定された金額が、操作表示部80に表示されてもよい。
【0076】
紙幣処理装置100は、現金袋310から取り出されて入金部10に載置された紙幣を識別部40で識別して、一時保留部50に収納する。紙幣処理装置100は、識別部40で識別して得られた紙幣の金額が、袋番号に基づいて特定した紙幣の金額と一致することを確認する。
【0077】
金額が一致しなかった場合、紙幣処理装置100は、金額の不一致を報知する報知画面を操作表示部80に表示して、一時保留部50から全ての紙幣を繰り出して出金部20から排出する。出金部20には、現金袋310から取り出されて入金された紙幣現物が排出される。報知画面を確認した警送会社の担当者は、出金部20に排出された紙幣を取り出して、取引番号、他店舗の店舗番号等に基づいて、不一致の原因を調べることになる。
【0078】
金額が一致した場合、紙幣処理装置100は、一時保留部50から全ての紙幣を繰り出して回収部70に収納し、金額の一致及び回収部70への収納完了を報知する報知画面を操作表示部80に表示する。報知画面を確認した警送会社の担当者は、金額の一致を確認した後、紙幣処理装置100の回収部70に収納された紙幣を回収する。
【0079】
こうして、他店舗の店員が行った入金処理で入金された紙幣のうち、障害発生により現金ポスト320へ投函されていた紙幣も、警送会社の担当者によって回収部70に収納されて回収される。
【0080】
なお、警送会社の担当者が、現金袋310の紙幣を紙幣処理装置100に入金して回収部70に収納してから回収する態様に限定されず、現金袋310のまま回収する態様であってもよい。この場合、警送会社の担当者は、回収部70の紙幣及び現金袋310を現金センター等の所定の拠点へ輸送した後、現金袋310から取り出した紙幣の金額が、障害発生により出金部20に排出された紙幣の金額と一致することを調べればよい。他店舗の店員による入金金額と、障害発生により出金部20に排出された紙幣の金額とを含む回収情報が外部装置300である警送会社のサーバ装置へ送信されるため、警送会社の担当者は、回収情報に基づいて金額の一致を確認することができる。金額が一致しなかった場合は、金融機関への通知が行われて、口座へ入金済みの回収金額を実際の金額に一致させるために口座残高を調整する口座処理が行われることになる。
【0081】
図11では、袋番号を含む袋情報311が現金袋310に付されている例を説明したが、紙幣処理装置100が、袋番号を出力してもよい。紙幣処理装置100が、新たに袋番号を生成してもよいし、障害発生時の入金処理の取引番号を袋番号として出力してもよい。紙幣処理装置100が、シールプリンタを備え、シールプリンタで袋番号を符号化した図形コード又は袋番号をシールに印刷し、このシールを現金袋310に貼り付けるように他店舗の店員に指示する態様であってもよい。袋番号を示すシールを現金袋310に貼り付けることで、現金袋310の紙幣を上述したように処理することができる。
【0082】
図12は、出金部20に排出された紙幣の後処理の別の例を説明するための図である。
図12に示す例では、他店舗の店員が所持するスマートフォン等の通信端末400で、専用のアプリケーションを利用して紙幣の後処理が行われる。
【0083】
図10(b)に示すように出金部20に紙幣を排出した紙幣処理装置100は、
図12に示すように、操作表示部80の画面上に、他店舗の紙幣の入金金額と、他店舗の店員に対する指示とを表示する(S31)。画面上に、入金金額に加えて、出金部20に排出された紙幣の金額が表示されてもよい。
【0084】
操作表示部80には、出金部20の紙幣を現金袋310に入れて封をし、現金袋310を現金ポスト320に投函するよう指示する情報が表示される。また、通信端末400で専用のアプリケーションを起動して、操作表示部80の画面に表示した図形コード330と、紙幣を入れた現金袋310の袋情報311に含まれる図形コードとを読み取るよう指示する情報が表示される。
【0085】
現金袋310の図形コードは、現金袋310の袋番号を含む。操作表示部80の画面に表示される図形コード330は回収情報を含む。回収情報には、紙幣処理装置100の装置番号と、紙幣を出金部20に排出した入金処理の取引番号と、入金金額と、入金金額のうち出金部20に排出した紙幣の金額と、入金処理を行った他店舗の店舗番号とが含まれる。
【0086】
他店舗の店員は、出金部20の紙幣を現金袋310に入れて封をする(S32)。他店舗の店員は、通信端末400のカメラで、現金袋310の袋情報311に含まれる図形コードと、操作表示部80に表示された図形コード330とを読み取った後、操作表示部80の画面で終了ボタンを押して入金処理を終了する。他店舗の店員は、紙幣を入れた現金袋310を現金ポスト320に投函する(S33)。
【0087】
通信端末400は、操作表示部80の図形コードから得られた回収情報に、現金袋310の図形コードから得られた袋番号を含めて、金融機関のサーバ装置、警送会社のサーバ装置等の外部装置300へ送信する(S34)。回収情報に基づいて、入金金額を他店舗の口座へ入金する口座処理が行われる。
【0088】
図11で説明した例と同様に、現金ポスト320に投函された紙幣があることが警送会社に報知される。
図12に示すように、警送会社の担当者は、現金ポスト320から現金袋310を回収して現金センター等の所定の拠点へ輸送する(S35)。その後、現金袋310から取り出した紙幣の金額が、障害発生により出金部20に排出された紙幣の金額と一致することを確認する処理が行われて、金額が一致しなかった場合は不一致の原因調査が行われる。
【0089】
このように、紙幣処理装置100では、他店舗の店員による入金処理の実行時に障害が発生した場合でも、現金袋310及び現金ポスト320を利用して、入金処理を完了することができる。入金処理の完了により、入金金額を他店舗の口座に入金する口座処理が行われるため、他店舗は、店舗の売上金等の大量の紙幣の入金処理についても、安心して紙幣処理装置100を利用することができる。
【0090】
なお、
図12では現金ポスト320の現金袋310を輸送する例を説明したが、
図12に示す例においても、
図11で説明したように、警送会社の担当者が、現金袋310から紙幣を取り出して紙幣処理装置100に入金し、回収部70に収納してから回収する態様であってもよい。紙幣処理装置100が、シールプリンタで袋番号をシールに印刷して、他店舗の店員がこのシールを現金袋310に貼り付ける態様であってもよい。この場合、紙幣処理装置100が、操作表示部80に表示する図形コード330に、シールに印刷した袋番号を含めればよい。これにより、現金袋310の紙幣を上述したように処理することができる。
【0091】
本実施形態では、紙幣処理装置100で障害が発生した際に、現金ポスト320及び現金袋310を利用する例を説明したが、他店舗の紙幣の通常の入金処理が、現金ポスト320及び現金袋310を利用して行われる態様であってもよい。この場合、
図13(a)に示すように、入金部10の紙幣を識別部40で識別した後、出金部20から排出すればよい。
図11及び
図12で説明したように、他店舗の店員が、出金部20に排出された紙幣を現金袋310に入れて現金ポスト320へ投函し、紙幣処理装置100が現金袋310の袋番号を回収情報に含めて記憶すればよい。上述したように、紙幣処理装置100又は通信端末400から外部装置300へ回収情報を送信すればよい。
【0092】
本実施形態の
図5では、自店舗の紙幣の入金処理について、入金部10の紙幣が収納部60へ搬送される例を示したが、識別部40による識別後に一時保留部50に収納されて、その後、一時保留部50から繰り出されて収納部60に収納される態様であってもよい。
【0093】
本実施形態の
図6では、他店舗の紙幣の入金処理について、入金部10の紙幣が一時保留部50に収納された後、回収部70に収納される例を示したが、
図13(b)に実線矢印で示すように、識別部40による識別後に回収部70へ搬送されて収納される態様であってもよい。この場合、他店舗の店員による入金処理のキャンセル時には、入金金額分を収納部60から出金部20へ搬送して返却し、回収部70に収納した紙幣を収納部60から回収された自店舗の紙幣として処理すればよい。入金処理の途中で中間部100bにある搬送路で紙幣詰まりが生じた場合は、入金部10の紙幣を識別部40で識別した後、
図13(b)に破線矢印で示すように、出金部20から排出して、
図11及び
図12で説明したように現金袋310及び現金ポスト320を利用して紙幣の後処理を行えばよい。
【0094】
本実施形態では、貨幣処理装置1が自店舗の店舗内に設置された例を説明したが、自店舗と、他店舗と、自店舗と他店舗が共有するエリアとがあって、この共有エリアに、自店舗の貨幣処理装置1が設置される態様であってもよい。
【0095】
上述したように、本実施形態に係る貨幣処理装置及び貨幣処理方法によれば、入金処理で処理される貨幣が、所定の管理店舗の貨幣か、管理店舗とは異なる他店舗の貨幣かに応じて貨幣の搬送経路や収納場所を変更することができる。管理店舗の入金貨幣は管理店舗がアクセス可能な筐体内の領域に収納して、他店舗の入金貨幣は、管理店舗がアクセスできず警送会社がアクセス可能な筐体内の領域に収納することで、管理店舗の貨幣と他店舗の貨幣とを分けることが可能となり、従来に比べて貨幣に係るセキュリティを向上させることができる。
【符号の説明】
【0096】
1 貨幣処理装置
10 紙幣入金部
11 硬貨入金部
12 硬貨出金部
20 紙幣出金部
30 搬送部
40 識別部
50 一時保留部
60 収納部
70 回収部
80 操作表示部
100 紙幣処理装置
111 制御部
112 記憶部
113 通信部
200 硬貨処理装置
300 外部装置
310 現金袋
320 現金ポスト
400 通信端末