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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135528
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】手鉤具
(51)【国際特許分類】
   B65G 7/12 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B65G7/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046255
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000170325
【氏名又は名称】鴻池運輸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003937
【氏名又は名称】弁理士法人前川知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩瀧 崇嗣
(57)【要約】
【課題】作業性を向上させた手鉤具を提供することを目的とする。
【解決手段】手鉤具10は、本体部14と、把持部16と、複数の中間部18と、押圧部20と、複数の係合部22と、支持部40とを備える。把持部16は、本体部14の一方の端部に設けられる。複数の中間部18は、本体部14の他方の端部から分岐して延びる。押圧部20は、中間部18同士を繋ぐ。複数の係合部22は、複数の中間部18又は押圧部20から延びる。支持部40は、本体部14の第1軸線とは異なる第2軸線に沿って突出する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部の一方の端部に設けられる把持部と、
前記本体部の他方の端部から分岐して延びる複数の中間部と、
前記中間部同士を繋ぐ押圧部と、
前記複数の中間部又は前記押圧部から延びる複数の係合部と、
前記本体部の第1軸線とは異なる第2軸線に沿って突出する支持部とを備える手鉤具。
【請求項2】
少なくとも2つの前記中間部は、前記本体部の他方の端部から分岐して、前記第1軸線に沿った方向のうちの前記把持部から前記本体部に向かう方向である第1方向に延びており、
前記押圧部は、2つの前記中間部のうちの少なくとも一方の前記中間部の先端から他方の前記中間部に延びて、前記中間部同士を繋ぐ、請求項1に記載の手鉤具。
【請求項3】
少なくとも3つの前記中間部のうち2つは、前記本体部の他方の端部から分岐して、前記第1軸線に沿った方向のうちの前記把持部から前記本体部に向かう方向である第1方向に延びており、
前記押圧部は、2つの前記中間部のうちの少なくとも一方の前記中間部の先端から他方の前記中間部に延びて、前記中間部同士を繋ぎ、
少なくとも3つの前記中間部のうちの残りの1つは、前記本体部の延長上に延びており、前記押圧部と接続される、請求項1に記載の手鉤具。
【請求項4】
前記支持部は、少なくとも3つの前記中間部のうちの残りの1つに接続されている、請求項3に記載の手鉤具。
【請求項5】
前記支持部は、前記第1軸線に沿った方向において、前記係合部よりも前記第1方向に向かって突出する、請求項4に記載の手鉤具。
【請求項6】
前記支持部は、弾性部を含み、
前記弾性部は、前記支持部の前記中間部と反対側の端部を前記第2軸線に沿って、前記中間部から離間するように付勢し、
前記支持部の前記中間部側と反対側の端部は、前記弾性部の付勢力に抗して、前記中間部に近接させることが可能とされる、請求項4に記載の手鉤具。
【請求項7】
前記支持部は、走行体と、前記走行体を支持する走行体支持部とを含み、
前記走行体支持部は、前記支持部の前記中間部側と反対側で前記走行体を支持し、
前記弾性部は、前記走行体を前記第2軸線に沿って、前記中間部から離間するように付勢し、
前記走行体は、前記弾性部の付勢力に抗して、前記中間部に近接させることが可能とされる、請求項6に記載の手鉤具。
【請求項8】
前記係合部の先端には、爪部が形成されている、請求項1に記載の手鉤具。
【請求項9】
前記支持部の突出量は、荷役媒体において前記係合部と係脱可能な被係合部の高さに応じて設定され、
前記支持部が接地されている状態で、前記爪部を前記被係合部と同高さに位置させることができる、請求項8に記載の手鉤具。
【請求項10】
前記爪部が、荷役媒体の差込口に挿入され、前記押圧部が前記荷役媒体と当接している状態において、前記押圧部は、前記支持部よりも前記荷役媒体側に位置する、請求項8に記載の手鉤具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、手鉤具に関する。
【背景技術】
【0002】
物流倉庫や工場等の作業現場では、貨物の載せた又は収納した荷役媒体の運搬作業が行われる。荷役媒体を移動させる方法として、例えば、フォークリフトやハンドリフト等の運搬装置により移動させる方法があるが、より簡便な移動方法として棒状の手鉤具を用い牽引する等の方法がある。
【0003】
例として、特許文献1には、シャフト部材、前記シャフト部材の先端に設けられたL字状の掛止部材からなり、荷物を引きずりながら牽引するための手鉤具(牽引具)が開示されている。この手鉤具は、荷役媒体(物品収納容器)の取手に掛止部材を下方から引っ掛け、把持部材を握って引っ張ることにより、荷役媒体を引きずりながら牽引する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-74619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の手鉤具は、あくまで、荷役媒体を牽引するために用いられる。そのため、例えば、倉庫内の角に荷役媒体を配置する場面では、作業者が倉庫内の角の近くまで荷役媒体を牽引し、そこから手作業で荷役媒体を倉庫内の角まで運ぶ必要がある。このように、引張操作のみに対応する手鉤具では、対応が困難な場面があり、押圧操作にも対応可能な手鉤具が求められている。
【0006】
本開示は、上記実情を鑑みてなされたものであり、作業性を向上させた手鉤具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本開示に係る手鉤具は、本体部と、把持部と、複数の中間部と、押圧部と、複数の係合部と、支持部とを備える。前記把持部は、前記本体部の一方の端部に設けられる。前記複数の中間部は、前記本体部の他方の端部から分岐して延びる。前記押圧部は、前記中間部同士を繋ぐ。前記複数の係合部は、前記複数の中間部又は前記押圧部から延びる。前記支持部は、前記本体部の第1軸線とは異なる第2軸線に沿って突出する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、作業性を向上させた手鉤具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の手鉤具の構成の一例を示す概略図である。
図2】本実施形態の手鉤具の支持部の周辺の構成の一例を示す概略図である。
図3】本実施形態の手鉤具の構成の一例を示す概略図である。
図4】本実施形態の手鉤具の構成の一例を示す概略図である。
図5】本実施形態の荷役媒体の構成の一例を示す概略図である。
図6】本実施形態の手鉤具の第1使用例を説明するための概略図である。
図7】本実施形態の手鉤具の第1使用例を説明するための概略図である。
図8】本実施形態の手鉤具の第1使用例を説明するための概略図である。
図9】本実施形態の手鉤具の第1使用例を説明するための概略図である。
図10】本実施形態の手鉤具の第2使用例を説明するための概略図である。
図11】本実施形態の手鉤具の第2使用例を説明するための概略図である。
図12】本実施形態の手鉤具の第2使用例を説明するための概略図である。
図13】本実施形態の手鉤具の変形例を示す概略図である。
図14】本実施形態の手鉤具の変形例を示す概略図である。
図15】本実施形態の手鉤具の変形例を示す概略図である。
図16】本実施形態の手鉤具の変形例を示す概略図である。
図17】本実施形態の手鉤具の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.本実施形態の手鉤具の構成
図1は、本実施形態の手鉤具10の全体構成の一例を示す概略図である。図2は、本実施形態の手鉤具10の支持部40の周辺の構成の一例を示す概略図である。図3、及び図4は、本実施形態の手鉤具10の一例を示す斜視図である。また、図3及び図4では、手鉤具10の一部の図示を省略する。なお、本実施形態の手鉤具10は、図1~4に示すような状態が標準状態とされる。以下、図1図4を参照して、本実施形態の手鉤具10について説明する。
【0011】
本実施形態の手鉤具10は、貨物の載せた又は収納した荷役媒体50(図5参照)の運搬作業に使用することができる。荷役媒体50は、例えば、貨物を載置する載置部52を有する樹脂製、又は木製等の材質により形成されたパレットである。
【0012】
手鉤具10は、操作部12、支持部40、及び固定部60を備える。手鉤具10の操作部12は、本体部14、把持部16、複数の中間部18、押圧部20、及び複数の係合部22を含む。
【0013】
本体部14は、長尺な円柱棒状の部材である。把持部16は、本体部14の一方の端部に設けられ、複数の中間部18は、本体部14の他方の端部から分岐して延びる。つまり、本体部14は、把持部16と、複数の中間部18とを接続する長尺な円柱棒状の部材である。
【0014】
把持部16は、長尺な円柱棒状の部材である。把持部16は、図3、及び図4に示すように、本体部14の軸線Aに対して中央部において略直角に接続される。したがって、把持部16は、T字状に本体部14と接続される。把持部16は、その把持部16の略中央において接続された本体部14を挟んだ一方の端部、及び他方の端部を両手で把持して、手鉤具10の引張操作、及び押圧操作等に使用される。
【0015】
複数の中間部18は、本体部14の第1方向D1側の端部から分岐して延びる。第1方向D1は、A軸に沿った方向(A軸方向)のうち把持部16から本体部14に向かう方向である。以下、第1方向D1と逆方向を第2方向D2と記載する。
【0016】
複数の中間部18は、本体部14と同一平面上に存在する。本実施形態では、中間部18は第1中間部18a、第2中間部18b、第3中間部18cの3つからなる。なお、中間部18の数は3つに限られない。例えば、中間部18の数が2つの場合、本体部14と、中間部18との成す角は、それぞれ同じであることが好ましい。つまり、この場合、中間部18が、軸線Aを線対象として配置されるのが好ましい。また、中間部18が3つ以上の場合、本体部14と、中間部18郡のうちの端に位置する中間部18との成す角はそれぞれ同じであり、かつ、隣り合う中間部18が成す角もそれぞれ同じであることが好ましい。さらにまた、複数の中間部18の数が奇数の場合、1つの中間部18は、本体部14の延長線上に位置するのが好ましい。
【0017】
複数の中間部18の少なくとも2つの中間部18は、本体部14の第1方向D1側の端部から分岐して、さらに第1方向D1に延びる。本実施形態では3つの中間部18のうち2つの中間部18は、本体部14の第1方向D1側の端部から分岐して、その第1方向D1に延び、少なくとも3つの中間部18のうちの残りの1つは、本体部14の延長上に延びる。
【0018】
図3、及び図4に示す本実施形態では、第1中間部18a、及び第2中間部18bは、3つの中間部18のうちの端に位置する。そのため、第1中間部18aと、本体部14との成す角は、第2中間部18bと、本体部14との成す角と同じである。また、第1中間部18aと、第3中間部18cとの成す角は、第2中間部18bと、第3中間部18cとの成す角と、同じである。さらに、第1中間部18a、及び第2中間部18bは、本体部14の端部から分岐して、第1方向D1に延び、第3中間部18cは、本体部14の延長線上に延びて、押圧部20に接続される。
【0019】
押圧部20は、中間部18同士を繋ぐ棒状部材である。押圧部20は、本体部14、及び複数の中間部18と同一平面上に存在する。また、押圧部20については、形状、及び個数は特に限定されない。そのため、押圧部20は、例えば、屈曲、又は湾曲していてもよい。
【0020】
中間部18同士を繋ぐ押圧部20の少なくとも一方の端部は、中間部18の先端に位置する。つまり、押圧部20は、2つの中間部18のうちの少なくとも一方の中間部18の先端から他方の中間部18に延びて、中間部18同士を繋ぐ。図3、及び図4に示す例では、押圧部20は、第1中間部18aの先端と、第2中間部18bの先端とを繋ぐ。また、上述したように、第3中間部18cは、本体部14からその本体部14の延長線上に延びて押圧部20に接続される。
【0021】
係合部22は、中間部18、又は押圧部20から延びるJ字状のフック部である。係合部22は、基部24、底部26、及び爪部28を含む。基部24は、底部26に向けて延びる棒状部材である。底部26は、基部24の先端から90度よりもやや鈍角に屈曲して形成される。爪部28は、底部26の先端から基部24側へ略直角に折り曲げるよう形成される。
【0022】
図3、及び図4に示す例では、第1係合部22aは、第1中間部18aの先端から延び、第2係合部22bは、第2中間部18bの先端から延びる。また、第1係合部22a、及び第2係合部22bは、押圧部20の一端及び他端から延びているとも言える。
【0023】
手鉤具10の支持部40は、本体部14の軸線Aとは異なる軸線Bに沿って突出する。なお、軸線Aと軸線Bとの成す角は、鋭角である。また、支持部40の先端は、係合部22よりも第1方向D1において、先に位置している。
【0024】
支持部40は、操作部12の第3中間部18cに固定部60を介して固定される。固定部60は、支持部40を傾けた状態で操作部12の第3中間部18cに固定する。本体部14、及び複数の中間部18を含む平面からみて、係合部22の爪部28が存在する方向を手鉤具10の前方とし、逆方向を手鉤具10の後方とするのであれば、支持部40は、固定部60を介して第3中間部18cの後方側に固定される。なお、支持部40については、固定部60を介して本体部14に固定されてもよい。
【0025】
支持部40は、具体的に、第3方向D3に向かって突出する。第3方向D3は、軸線Bに沿った方向(B軸方向)のうち、操作部12の第3中間部18cから離間する方向である。以下、第3方向D3と逆方向、すなわち、B軸方向のうち、操作部12の第3中間部18cに近接する方向を第4方向D4と記載する。
【0026】
支持部40は、シリンダ42、ロッド44、弾性部46、走行体支持部48、及び走行体49を含む。シリンダ42は、B軸方向に延びる筒状部材であって、ロッド44の挿入が可能とされる。また、シリンダ42の側面、つまり、B軸方向に延びる面には、そのB軸方向に延びる長孔状のスリット42aが形成されている。さらに、シリンダ42の第4方向D4側の端部は、閉塞されている。
【0027】
ロッド44は、B軸方向に延びる棒部材であって、少なくとも一部がシリンダ42に挿入される。また、ロッド44の側面、つまり、B軸方向に延びる面には、引掛部44aが形成されている。さらに、ロッド44の第3方向D3側の端部は、閉塞されている。
【0028】
シリンダ42のスリット42aには、ロッド44の引掛部44aが挿通される。このことによれば、ロッド44は、B軸方向のピストン運動が可能とされ、さらに、スリット42aの端部に引掛部44aが引っ掛かることで、ロッド44のシリンダ42からの脱落が防止される。
【0029】
また、支持部40に関し、第3方向D3側の端部(支持端部)40aのその第3方向D3への動作、つまり、支持端部40aの操作部12からの離間動作は、スリット42aの端部に引掛部44aが引っ掛かることで規制される。
【0030】
弾性部46は、支持端部40aと、第3中間部18cとのそれぞれをB軸方向に沿って互いに離間させるように付勢する。例えば、操作部12の位置が定められている場合、弾性部46は、支持端部40aを第3方向D3に移動するように、すなわち、支持端部40aを第3中間部18cから離間するように付勢する。また、この場合、支持端部40aは、弾性部46の付勢力に抗して、第4方向D4に移動させることができる。
【0031】
弾性部46は、支持端部40aと、支持部40の第4方向D4側の端部(支持端部40b)との間に予めある程度圧縮された状態で設けられる。また、弾性部46の付勢力は、操作部12の重量と、シリンダ42の重量と、固定部60の重量との合計の重量では圧縮されない程度の強さで設定される。
【0032】
また、弾性部46は、図2に示すように、シリンダ42、内に設けられ、一方の端部は、シリンダ42の第4方向D4側の端部と接触し、他方の端部は、ロッド44の第4方向D4側の端部と接触する。
【0033】
ロッド44の第3方向D3側の端部には、走行体支持部48が設けられる。走行体支持部48は、軸受部48a、及び軸部48bを含む。軸受部48aは、ロッド44の第3方向D3側の端部に設けられ、軸部48bを支持する。軸部48bは、走行体49を回転可能に支持する。なお、走行体49は、車輪である。
【0034】
なお、弾性部46の形状、及び位置は、上述したように、支持部40の支持端部40aと、操作部12の第3中間部18cとのそれぞれをB軸方向に沿って互いに離間させることが可能であれば、特に限定されない。例えば、弾性部46は、ロッド44が挿通されるようにそのロッド44に設けられてもよい。また、弾性部46は、圧縮コイルばねに限られず、エアダンパ等であってもよい。
【0035】
また、支持部40の突出量は、支持端部40bから支持端部40aまでの距離を意味しており、支持端部40aが接地しているとき、言い換えると、操作部12が支持部40に支持されているとき、支持部40の突出量は、係合部22の爪部28の高さに作用する。そのため、標準状態の手鉤具10に関し、支持部40の突出量に基づいて、係合部22の爪部28の高さが設定されるとも言える。
【0036】
2.手鉤具と荷役媒体との関係
本実施形態の荷役媒体50について、図5、及び図6を参照して説明する。図5は、本実施形態の荷役媒体50の一例を示す概略図である。荷役媒体50は、貨物の載置部52を有するパレットである。荷役媒体50は、全体が略正方形厚板状に形成されており、ハンドリフトのフォーク部、又はフォークリフトを挿抜可能な差込口54を有する。
【0037】
荷役媒体50は、例えば、上面、及び下面が載置部52をなす平型樹脂パレットである。載置部52には縦横に格子状にリブが延び、複数の開口部52aが形成される。例えば、荷役媒体50の差込口54の載置部52側には、荷役媒体50の側面の長尺方向に亘って形成されるリブが、手鉤具10に対する被係合部56となる。
【0038】
以下、鉛直方向において、互いに重なる被係合部56のうち、上方に位置する被係合部56を上方被係合部56aとし、下方に位置する被係合部56を下方被係合部56bとする。さらに、手鉤具10の前方が荷役媒体50と対向する場合に、第1係合部22aに対応する差込口54を第1差込口54aとし、第2係合部22bに対応する差込口54を第2差込口54bとする。
【0039】
第1係合部22aは、第1差込口54aに対応する上方被係合部56aに対して係脱可能である。第2係合部22bは、第2差込口54bに対応する上方被係合部56aに対して係脱可能である。なお、荷役媒体50の差込口54は、4側面のうちの一方向に貫通して設けられていてもよいし、直交する二方向に貫通して設けられてもよい。
【0040】
標準状態の手鉤具10に関し、支持部40の突出量、つまり、係合部22の爪部28の高さは、上方被係合部56aの高さに応じて設定される。本実施形態では、支持部40の突出量は、係合部22の爪部28の高さが、上方被係合部56aと同高さになるように構成される(図6参照)。また、標準状態の手鉤具10に関し、係合部22の爪部28の高さは、必要に応じて、上方被係合部56aよりも高くなるように構成されていてもよいし、上方被係合部56aよりも低くなるように構成されていてもよい。
【0041】
また、標準状態の手鉤具10に関し、第1係合部22aと、第2係合部22bとの間隔、言い換えると、押圧部20の長さは、第1差込口54aと、第2差込口54bとの間隔に基づいて決まる。第1係合部22aと、第2係合部22bとの間隔は、第1差込口54aと、第2差込口54bとの互いに最も近接する位置の間隔よりも長い。また、第1係合部22aと、第2係合部22bとの間隔は、第1差込口54aと、第2差込口54bとの互いに最も離間する位置の間隔よりも短い。
【0042】
これらのことから、第1係合部22aが第1差込口54aに挿入され、かつ、第2係合部22bが第2差込口54bに挿入されるとき、第1差込口54aと、第2差込口54bとの間の壁58に押圧部20を接触させることができる(図12参照)。
【0043】
3.手鉤具の第1の使用例
次に、手鉤具10の第1の使用例について、具体的には、荷役媒体50を牽引する場合の使用例について、図6図9を参照して説明する。図6図9は、本実施形態の手鉤具10の第1の使用例を説明するための概略図である。なお、手鉤具10の操作は、作業者が把持部16を把持して行う。
【0044】
まず、図6に示すように、標準状態の手鉤具10の前方を荷役媒体50側へ接近させる。次に、図7に示すように、操作部12を荷役媒体50側に傾けることで、走行体49を後方に移動され、係合部22の爪部28を上方被係合部56aよりも低くする。
【0045】
次に、図8に示すように、係合部22の爪部28を差込口54内に挿入し、その爪部28を上方被係合部56aの奥側に位置させる。また、このとき、押圧部20は、差込口54よりも支持部40側に位置する。
【0046】
次に、図9に示すように、操作部12を荷役媒体50側と反対側に傾けることで、走行体49を前方に移動させ、係合部22の爪部28を高くすることで、その爪部28を上方被係合部56aと同高さとする。また、このとき、支持部40を鉛直状態、又は荷役媒体50側と反対側に傾けることで、弾性部46の弾性力を利用して、係合部22の爪部28を上方被係合部56aの奥側に掛ける。図6図9によれば、本実施形態の手鉤具10は、支持部40が接地されている状態で、係合部22の爪部28を上方被係合部56aと同高さに位置させることができる。
【0047】
4.手鉤具の第2の使用例
次に、手鉤具10の第2の使用例について、具体的には、荷役媒体50を押圧する場合の使用例について、図6図10図12を参照して説明する。図10図12は、本実施形態の手鉤具10の第2の使用例を説明するための概略図である。
【0048】
まず、図6に示すように、標準状態の手鉤具10の前方を荷役媒体50側へ接近させる。次に、図10に示すように、操作部12に第1方向D1の力を作用させることで、係合部22の爪部28を上方被係合部56aよりも低くしつつ、押圧部20を支持部40よりも荷役媒体50側へ位置させる。また、押圧部20を支持部40よりも荷役媒体50側へ位置させるとき、操作部12を荷役媒体50側と反対側に傾けることも併せて行われてもよい。
【0049】
次に、図11、及び図12に示すように、作業者は、係合部22の爪部28を差込口54内に挿入しつつ、押圧部20で荷役媒体50の壁58を押圧する。つまり、図11、及び図12によれば、本実施形態の手鉤具10は、その手鉤具10の進行方向に荷役媒体50を押圧することができる。また、図11、及び図12によれば、係合部22の爪部28が、荷役媒体50の差込口54に挿入され、押圧部20が荷役媒体50の壁58と当接している状態において、押圧部20は、支持部40よりも荷役媒体50側に位置する。
【0050】
作業者は、図9に示す状態の手鉤具10の把持部16を引っ張ることで、荷役媒体50を牽引することができる。また、作業者は、係合部22と、上方被係合部56aとの係合状態が解除されないように、操作部12を上方に常に負荷をかけるなどの操作を行わなくても、係合状態を維持させたまま、引張操作を行うだけで荷役媒体50を容易に移動させることができる。また、本実施形態の手鉤具10によれば、作業者は、第1方向D1への押圧操作を行うだけで、荷役媒体50を手鉤具10の進行方向に移動させること、具体的には、荷役媒体50を手鉤具10の進行方向に押し出すことができる。
【0051】
また、本実施形態の手鉤具10では、使用場面に応じて、荷役媒体50の移動方法を選択することができる。例えば、倉庫内の角に荷役媒体50を移動させたい場合、手鉤具10に関する引張操作では、倉庫の壁と荷役媒体50との間に作業者が介在するため、荷役媒体50の倉庫内の角への移動が不可とされる。一方で、手鉤具10に関する押し操作では、倉庫の壁と荷役媒体50との間に作業者が介在することがないため、荷役媒体50の倉庫内の角への移動が可能とされる。
【0052】
これらのことから、本実施形態の手鉤具10によれば、作業者による作業性及び安全性を向上させることができる。また、上述したように、支持部40には、走行体49が含まれるため、引張操作、及び押圧操作に関し、作業差の負担が軽減される。
【0053】
以上、本開示の実施形態を説明したが、この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。
【0054】
本実施形態の手鉤具10では、必要に応じて構造が変更されてもよい。図13図17は、本実施形態の手鉤具10の変形例を示す概略図である。なお、図13図17については、手鉤具10をその前方から見た図である。さらに、図13図17については、支持部40の図示は省略する。
【0055】
本実施形態の手鉤具10では、図13に示すように、第3中間部18cが省略されてもよい。図示は省略するが、この場合、支持部40は、操作部12の本体部14に設けられる。また、この場合、第3方向D3は、B軸方向のうち、操作部12の本体部14から離間する方向であり、第4方向D4は、B軸方向のうち、操作部12の本体部14に近接する方向である。
【0056】
また、本実施形態の手鉤具10では、図14に示すように、押圧部20は湾曲、又は屈曲してもよい。なお、この場合、押圧部20の軸線Aと重なる部分が本体部14に向かう凸状となるように、その押圧部20が湾曲、又は屈曲する。そのため、この場合、押圧部20の両端は、第1方向D1に延び、壁としての役割も担う。したがって、図12に示すように、押圧部20で荷役媒体50が押圧されるとき、押圧部20と荷役媒体50との接触箇所が軸線Aで対称であれば、その荷役媒体50が水平方向において、傾くのが防止される。
【0057】
さらに、本実施形態の手鉤具10では、図15に示すように、押圧部20が複数設けられてもよい。図15に示す例では、一方の押圧部20に関し、一方の端部は、第1中間部18aの先端に位置し、他方の端部は、第2中間部18bの中間に位置する。他方の押圧部20については、一方の端部は、第2中間部18bの先端に位置し、他方の端部は、第1中間部18aの中間に位置する。また。このような場合、図13の手鉤具10と同様に、荷役媒体50が水平方向において、傾くのが防止される。
【0058】
さらにまた、本実施形態の手鉤具10では、図16に示すように、係合部22が3つ以上設けられてもよい。図15に示す例では、第1係合部22a、及び第2係合部22bは、押圧部20から延びている。また、図15に示す例では、第3係合部22c、及び第4係合部22dは、中間部18から延びているとも言えるが、押圧部20から延びているとも言える。
【0059】
また、本実施形態の手鉤具10では、図15に示すような構成と、図16に示すような構成を図17に示すように組み合わせてもよい。
【0060】
本開示は、例えば以下の態様を含む。
[1]
本体部と、
前記本体部の一方の端部に設けられる把持部と、
前記本体部の他方の端部から分岐して延びる複数の中間部と、
前記中間部同士を繋ぐ押圧部と、
前記複数の中間部又は前記押圧部から延びる複数の係合部と、
前記本体部の第1軸線とは異なる第2軸線に沿って突出する支持部とを備える手鉤具。
[2]
少なくとも2つの前記中間部は、前記本体部の他方の端部から分岐して、前記第1軸線に沿った方向のうちの前記把持部から前記本体部に向かう方向である第1方向に延びており、
前記押圧部は、2つの前記中間部のうちの少なくとも一方の前記中間部の先端から他方の前記中間部に延びて、前記中間部同士を繋ぐ、[1]に記載の手鉤具。
[3]
少なくとも3つの前記中間部のうち2つは、前記本体部の他方の端部から分岐して、前記第1軸線に沿った方向のうちの前記把持部から前記本体部に向かう方向である第1方向に延びており、
前記押圧部は、2つの前記中間部のうちの少なくとも一方の前記中間部の先端から他方の前記中間部に延びて、前記中間部同士を繋ぎ、
少なくとも3つの前記中間部のうちの残りの1つは、前記本体部の延長上に延びており、前記押圧部と接続される、[1]に記載の手鉤具。
[4]
前記支持部は、少なくとも3つの前記中間部のうちの残りの1つに接続されている、[3]に記載の手鉤具。
[5]
前記支持部は、前記第1軸線に沿った方向において、前記係合部よりも前記第1方向に向かって突出する、[2]から[4]のいずれか一項に記載の手鉤具。
[6]
前記支持部は、弾性部を含み、
前記弾性部は、前記支持部の前記中間部と反対側の端部を前記第2軸線に沿って、前記中間部から離間するように付勢し、
前記支持部の前記中間部側と反対側の端部は、前記弾性部の付勢力に抗して、前記中間部に近接させることが可能とされる、[1]から[5]のいずれか一項に記載の手鉤具。
[7]
前記支持部は、走行体と、前記走行体を支持する走行体支持部とを含み、
前記走行体支持部は、前記支持部の前記中間部側と反対側で前記走行体を支持し、
前記弾性部は、前記走行体を前記第2軸線に沿って、前記中間部から離間するように付勢し、
前記走行体は、前記弾性部の付勢力に抗して、前記中間部に近接させることが可能とされる、[6]に記載の手鉤具。
[8]
前記係合部の先端には、爪部が形成されている、[1]から[7]のいずれか一項に記載の手鉤具。
に記載の手鉤具。
[9]
前記支持部の突出量は、荷役媒体において前記係合部と係脱可能な被係合部の高さに応じて設定され、
前記支持部が接地されている状態で、前記爪部を前記被係合部と同高さに位置させることができる、[8]に記載の手鉤具。
[10]
前記爪部が、荷役媒体の差込口に挿入され、前記押圧部が前記荷役媒体と当接している状態において、前記押圧部は、前記支持部よりも前記荷役媒体側に位置する、[8]に記載の手鉤具。
【符号の説明】
【0061】
10 手鉤具
12 操作部
14 本体部
16 把持部
18 中間部
20 押圧部
22 係合部
28 爪部
40 支持部
46 弾性部
48 走行体支持部
49 走行体
50 荷役媒体
54 差込口
56 被係合部
A 軸線
B 軸線

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17