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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135533
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】分割型吸着ロータ
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/06 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B01D53/06 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046274
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】390020215
【氏名又は名称】株式会社西部技研
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 裕次
【テーマコード(参考)】
4D012
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012BA02
4D012BA10
4D012CA01
4D012CA11
4D012CC04
4D012CG01
(57)【要約】
【課題】吸着ロータの設置の際や吸着ロータ素子の劣化や性能低下、目詰まりなどが発生した場合に、分割構造により容易に着脱や交換、組み立てが可能な吸着ロータを提供する。
【解決手段】隣り合うおうぎ形ピース同士の外周側はボルトナットで固定され、おうぎ形ピースの内周側とボスはボルトによって固定される構造とすることで、それぞれのおうぎ形ピースは溶接での固定が不要となり、金属製骨材のレールと吸着ロータ素子側面の溝構造によりおうぎ形ピースの強度を増加させることにより、吸着ロータ素子側面と補強板の間に板材など補強のための部材を必要としない。簡単な構造で強度を持たせることが可能であり、特殊工具を必要とせず、作業に不慣れな人でも容易に交換可能であり、着脱に関わるコストを抑えることができる。また複雑な構造や補強部材が不要なため初期コスト低減にもつながる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数に分割されたおうぎ形ピースとボスを有する吸着ロータであって、
前記おうぎ形ピースは、吸着ロータ素子と、前記吸着ロータ素子の各辺に沿って前記ボスから外周方向にのびる一対の補強板と、アングルフランジと、外周板とを有し、
隣り合う前記おうぎ形ピース同士の外周側はボルトナットで固定され、
前記おうぎ形ピースの内周側と前記ボスはボルトによって固定されていることを特徴とする吸着ロータ。
【請求項2】
前記補強板には内周側端部から外周側端部に向かってレールを形成し、
前記吸着ロータ素子の側面には前記レールに嵌合するように溝を設け、
前記溝を前記レールに沿って挿入し、前記吸着ロータ素子の側面と前記補強板がコーキング材を介して接着されることにより、前記吸着ロータ素子が前記補強板に固定されることを特徴とする請求項1に記載の吸着ロータ。
【請求項3】
前記おうぎ形ピースの内周側において、一対の前記補強板が連結板を介して接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吸着ロータ。
【請求項4】
前記補強板の内周側端部は角鋼が接続され、前記角鋼と前記連結板が連結されており、
前記角鋼には角鋼孔が形成され、
前記ボスにも前記角鋼孔に対応する孔が形成され、
前記ボス側から前記角鋼孔に前記ボルトを通すことにより、前記おうぎ形ピースの内周側が前記ボスに固定されることを特徴とする請求項3に記載の吸着ロータ。
【請求項5】
おうぎ形ピースを装着する場合には、前記おうぎ形ピースの角鋼孔と、ボスの前記角鋼孔に対応する孔を合わせ、前記ボス側より前記角鋼孔にボルトを通して、前記おうぎ形ピースの内周側を前記ボスに固定し、隣り合う前記おうぎ形ピース同士で外周側の孔を合わせて、ボルトナットで連結させることで隣り合う前記おうぎ形ピースの外周側を固定し、
前記おうぎ形ピースを脱離する場合には、前記おうぎ形ピースの外周側の前記ボルトナットと内周側の前記ボルトを外すことを特徴とする吸着ロータの着脱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着ロータの分割構造により、吸着ロータのおうぎ形ピース1ピースごとに容易に着脱や交換することが可能な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸着ロータは疎水性ゼオライトや活性炭を用いて揮発性有機化合物(以下、「VOC」という。)の吸着濃縮を行うものや、親水性ゼオライトやシリカゲルを用いて空気中の湿気を吸着し乾燥空気をつくるもの、イオン交換樹脂を用いて全熱回収を行うものなどがある。
【0003】
VOCの吸着濃縮を行う吸着ロータにあっては、吸着剤として活性炭や疎水性ゼオライトを用いたものなどがある。これを用いたVOC濃縮装置は、低濃度・大風量のVOC排出ガスを高濃度・低風量に濃縮回収できるので、処理設備全体の設備費及びランニングコストを大幅に削減でき、効率のよいVOC処理を実現することができる。
【0004】
湿気の吸着除去に用いられる吸着ロータにあっては、吸着剤として親水性ゼオライトやシリカゲルを用いたものなどがある。これを用いたデシカント除湿機は、湿分を含む被処理空気から水分を除去して低露点にし、乾燥空気を供給することができる。
【0005】
全熱回収を行う全熱交換ロータにあっては、吸着剤としてイオン交換樹脂やシリカゲル、ゼオライトを用いたものなどがある。これを用いた全熱交換器は、換気によって失われるエネルギーを回収するので、省エネルギー効果を高めることができる。
【0006】
VOCの吸着濃縮を行う吸着ロータや湿気の吸着除去に用いられる吸着ロータ、全熱回収を行う全熱交換ロータ(以下、総称して「吸着ロータ」という。)は製造コストを考え、図1のようにおうぎ形の吸着ロータ素子1と金属製(例えば鋼板)の骨材であるボス2、補強板3、アングルフランジ4、外周板5により一体型で製作され、ロータに固定される(以下、「一体型吸着ロータ」という。)。特許文献1には、一体型吸着ロータにおいて、吸着部材(吸着ロータ素子)の損傷を低減しつつ、吸着部材の脱落を防止するために、吸着部材とスポーク(補強板)との間に脱落防止部材を配置し、補強部材によって脱落防止部材の固定を補強するという複雑な構造が必要であることが開示されている。
【0007】
吸着ロータは長時間運転することにより塵埃で吸着ロータ表面に目詰まりが発生した場合や塗装ミストが温度低下により気相から液相に変わることによる異物などが吸着ロータ表面に付着したり、被処理空気中に酸性ガスやアルカリ性ガスなどの吸着ロータに悪影響を与えるガス成分が含まれたりすることによって、吸着ロータ素子の劣化や性能低下、圧力損失上昇が発生した場合、新しい吸着ロータへの交換が必要となる。一体型吸着ロータは、初期製造コストが比較的安いが、交換スペースが無い場合、ロータを強制的に分解して新しいロータと交換することになり、交換の手間が掛かり交換のコストが増大する。
【0008】
そこで、吸着ロータ素子の設置の際や、劣化や性能低下、目詰まりなどが発生した場合の交換の際に、初期コスト及び着脱コストを増大させること無く、表層面のみを交換できるような着脱可能な吸着ロータについて、特許文献2に示されている。
【0009】
一方、例えば直径が2mを超える吸着ロータは、図2のように複数のおうぎ形ピース6に分割し、おうぎ形ピース1ピースごとに容易に着脱や組み立てが可能である分割型で製作される(以下、「分割型吸着ロータ」という。)。分割型吸着ロータは、一体型吸着ロータに比べて初期コストが比較的高いが、おうぎ形ピース6を固定しているボルトなどを外すことにより容易に新しいおうぎ形ピースと交換することができ、交換のコストが減少する。また、大型の吸着ロータは直径が4mを超えるものがあり、図5のように複数のおうぎ形ピース6に分割して分割型吸着ロータとする(以下、「大型分割型吸着ロータ」という。)。このような分割型吸着ロータのおうぎ形ピースごとに設置現場へ送り、設置現場で組み立てるようにしており、設置現場での取り扱い性を良くしている。
【0010】
このような分割型吸着ロータのおうぎ形の分割ピースを局所的に交換できる構造について特許文献3に開示されている。また、分割型吸着ロータの各おうぎ形ピースを組み合わせたときに形成される、補強部材(補強板)と吸着ロータ素子の端部間の隙間にマイカよりなる埋め込み部材を挿入して耐熱性を向上させる技術について特許文献4に開示されている。
【0011】
分割型吸着ロータの場合、おうぎ形ピース毎に強度を持たせる必要があるため、金属製の骨材を一体型と比較して頑丈にするため初期コストが増大するという問題がある。上述の特許文献1に記載の吸着ロータの複雑な構造は一体型吸着ロータに関するものであるが、従来の分割型吸着ロータではおうぎ形ピースごとに強度を持たせるため、さらに複雑な構造が必要であった。例えば、分割型吸着ロータの強度維持や組み立て時の吸着ロータ素子の損傷回避のため、吸着ロータ素子の側面と金属製の骨材との間に板材を挟むことが特許文献5に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第6408162号
【特許文献2】特許第5826627号
【特許文献3】中国実用新案第212594842号明細書
【特許文献4】特開2004-025132号公報
【特許文献5】中国特許出願公開第108159840号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、吸着ロータ素子の設置の際や、劣化や性能低下、目詰まりなどが発生した場合の交換の際に、簡単な構造でありながら強度があり、省スペースに対応し、重機を必要とせず、吸着ロータのおうぎ形ピース1ピースごとに容易に取り外しや組み立て作業が可能な吸着ロータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、吸着ロータの設置の際や吸着ロータ素子の劣化や性能低下、目詰まりなどが発生した場合に、分割構造により吸着ロータのおうぎ形ピース1ピースごとに容易に着脱や交換、組み立てを可能とすることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の吸着ロータは、吸着ロータ素子と金属製骨材の構造により、吸着ロータを複数のおうぎ形ピースに分割して、おうぎ形ピースごとに着脱が可能とした。スペースに制限がある場合にも作業が容易である。一体型吸着ロータと比較して、分割することで人力で運べる重さになるため、重機などを必要としないという利点がある。
【0016】
金属製骨材である補強板のレールと吸着ロータ素子側面の溝構造により強度を増加させているため、吸着ロータ素子側面と補強板の間に板材など補強のための部材や複雑な構造を必要としない。
【0017】
簡単な構造で強度を持たせることが可能なため、それぞれのピースは溶接での固定が不要であり、分割されたそれぞれのおうぎ形ピース同士はボルトナットで、おうぎ形ピースとボス部はボルトで固定することができる。そのため特殊工具を必要とせず、作業に不慣れな人でも容易に交換可能である。
【0018】
複雑な補強構造を有する従来の分割型吸着ロータと比較して、製造時の初期コストの低減につながる。金属部材が減ることで重量低減にもつながるため、ボルトナットでの固定も容易となる。また、人力での着脱が容易となり、着脱コストの低減にもつながる。
【0019】
一体型吸着ロータのように、吸着ロータ全体を交換する必要がなく、おうぎ形ピース1ピースのみの交換も可能なため、問題の無いロータ素子を交換する必要がなく材料の無駄が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は従来の一体型吸着ロータの斜視図である。
図2図2は本発明の実施例1の分割型吸着ロータの斜視図である。
図3図3は本発明の実施例1の分割型吸着ロータ骨材の外周側の拡大図である。
図4図4は本発明の実施例1の分割型吸着ロータ骨材のボス側(内周側)の拡大図である。
図5図5は本発明の実施例2の大型分割型吸着ロータ骨材の斜視図である。
図6図6は本発明の実施例2の大型分割型吸着ロータ骨材のおうぎ形ピース1ピースの斜視図である。
図7図7は本発明の実施例2の大型分割型吸着ロータ骨材のおうぎ形ピース同士の連結の図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は吸着ロータの設置の際や吸着ロータ素子の劣化や性能低下、目詰まりなどが発生した場合に、初期コスト及び着脱コストを増大させることなく容易に着脱や交換、組み立てが可能な分割構造の吸着ロータを提供できるという目的を実現するものである。以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は以下の実施例について限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
従来の一体型吸着ロータは図1に示す形状であり、おうぎ形の吸着ロータ素子1を金属製の骨材であるボス2、補強板3、アングルフランジ4、外周板5にて一体型でロータに固定されている。本発明の実施例1の分割型吸着ロータは図2に示す形状であり、図1の一体型吸着ロータと同様に、おうぎ形の吸着ロータ素子1と、金属製の骨材であるボス2、補強板3、アングルフランジ4、外周板5にて構成される点は共通するが、複数に分割されたおうぎ形ピース6ごとに着脱可能である点で異なる。例えば、図2に示した分割型吸着ロータは8つのおうぎ形ピース6に分割され、その8つのおうぎ形ピース6とボス2を組み合わせて分割型吸着ロータとして完成する。各おうぎ形ピース6は、おうぎ形の吸着ロータ素子1と、この吸着ロータ素子1の各辺に沿ってボス2から外周方向にのびる一対(2枚)の補強板3とアングルフランジ4、外周板5とを有し、これによって各おうぎ形の吸着ロータ素子1は補強板3、アングルフランジ4と外周板5に囲まれた状態となる。
【0023】
吸着ロータ素子1はセラミック繊維紙やガラス繊維紙などの不燃性の繊維紙をコルゲート(波付け)加工し、ロータ状に積層又は巻付け加工したもので、ゼオライトなどの吸着剤が担持されている。なお、吸着ロータとしたが、VOC濃縮装置やデシカント除湿機に用いられるものに限らず、全熱交換器やその他のガス成分を処理する用途のものであってもよい。また、おうぎ形ピースごとに異なる種類の吸着剤を担持した吸着ロータ素子を用いるようにしてもよい。
【0024】
補強板3は吸着ロータ素子1の厚み(軸方向長さ)より少し小さく形成され、吸着ロータ素子1の外にはみ出さないようにされている。分割型吸着ロータのおうぎ形ピースごとに着脱可能とするため、1つのおうぎ形ピースにつき、補強板3はおうぎ形ピース6のボス2から外周方向にのびる各辺に配置される。すなわち、1つのおうぎ形ピースにつき2枚の補強板3を有する。図2に示す8つのおうぎ形ピースでは、必要な補強板3は合計16枚となる。よって、図2において隣り合うおうぎ形ピース6の吸着ロータ素子1は2枚の補強板3で隔てられることとなる。一方、図1の一体型吸着ロータにおいては、隣り合うおうぎ形の吸着ロータ素子1を隔てる補強板は1枚でよく、必要な補強板3は合計8枚である。
【0025】
隣り合うおうぎ形ピース6同士の外周側は、ボルトナットにより連結されて固定されている。図3はおうぎ形ピースの外周側の拡大図である。外周側にのびる補強板3の外周側端部の孔とアングルフランジ4の孔を重ね合わせて孔7となるように、アングルフランジ4は外周板5にリベットや溶接などにより固定してある。補強板3の外周側縁部と外周板5が接する辺Aはリベットや溶接などにより連結し固定する。隣り合うおうぎ形ピース同士でこの孔7を合わせて、ボルトナットで連結させることで隣り合うおうぎ形ピース同士を固定する。これにより、おうぎ形ピース6の外周側は固定される。なお、図3乃至図7は、便宜上、吸着ロータ素子1は図示せず、金属製の骨材のみを示す。
【0026】
図4はおうぎ形ピースのボス側(内周側)の拡大図である。ボス2は吸着ロータの中心部に設けられ、ボス2に軸部材を挿通することで吸着ロータは軸部材を回転軸として回転可能となる。一体型吸着ロータでは補強板3がボス2に溶接などにより固定される。一方、分割型吸着ロータでは、図4の角鋼孔11を通して、ボス2と補強板3をボルトで連結する。補強板3のボス側(内周側)端部は角鋼9が溶接などで接続されており、さらにこの角鋼9と連結板10とが溶接などで連結されている。すなわち、おうぎ形ピース6の内周側は、一対(2枚)の補強板3が連結板10を介して接続されている。角鋼9には角鋼孔11を形成し、ボス2にもこの角鋼孔11に対応する孔を形成する。角鋼孔11にはねじ切り加工が施されており、ボス2側からこの角鋼孔11にボルトを通して、補強板3をボス2に固定する。これにより、おうぎ形ピース6の内周側がボス2に固定されることになる。なお、図4では角鋼孔11を4つとしたが、これに限定されるものではない。また、おうぎ形ピースの内周側は補強板3の角鋼9と連結板10で接続し、角鋼9に設けた角鋼孔11にボス2側からボルトを通すようにしたが、これに限るものではなく、例えばおうぎ形ピースの内周側でボス2の外縁に合わせた形状の骨材を形成し、この骨材と補強板3を接続し、ボス2とこの骨材をボルトで固定するようにしてもよい。
【0027】
補強板3には内周側端部の角鋼9から外周側端部に向かって、すなわち、吸着ロータ素子1の側面においてボス2から外周側にのびる方向であって、ロータ厚み方向中央部にレール8を形成する。このレール8は、溶接などにより補強板3に連結固定されている。吸着ロータ素子1の側面の厚み方向中央部にも、補強板3に設けられたレール8に嵌合するように溝を設ける。また吸着ロータ素子のボス側も図4に示す骨材(角鋼9や連結板10)に嵌合するように、溝を設ける。吸着ロータ素子1の側面に設けた溝をレール8に沿って挿入することにより機械的に固定されるとともに、吸着ロータ素子1の側面と補強板3はコーキング材を介して接着される。これにより、吸着ロータ素子1は補強板3に固定される。吸着ロータ素子1と金属製の骨材(補強板3、外周板5、レール8、角鋼9、連結板10)はコーキング材を介して接着される。なお、レール8は吸着ロータ素子1と補強板3が接する面にのみ設ける。レール8は補強板3に設けるようにしたが、外周板5にもレールを形成してもよく、上述のおうぎ形ピースの内周側でボスの外縁に合わせた形状の骨材を形成した場合には、この骨材にレールを設けるようにしてもよい。レール8は本実施例では1本としたが、これに限らず、複数形成してもよい。この場合、吸着ロータ素子1は形成したレール8に合わせて溝を設けるようにする。
【0028】
このように、おうぎ形ピース6はボルトナットのみで固定可能となり、着脱する際、特殊な工具を用いる必要が無く、作業に不慣れな人でも容易に着脱できる。また、ロータ軸方向や径方向からの着脱も可能となり、チャンバー内からおうぎ形ピースの着脱ができ、重機などの必要も無く着脱に関わるコストを抑えることができる。なお、本実施例では1つの吸着ロータを8分割としたが、吸着ロータの大きさによって2分割や4分割、6分割など任意の複数のピースに分割するようにしてもよい。
【0029】
(実施例2)
図5は大型分割型吸着ロータ骨材である。吸着ロータの直径が4mを超えるなど大きくなると吸着ロータ素子1の重量が重くなるため、図5のようにおうぎ形ピースを内周部、中央部、外周部と分割して吸着ロータを製作するとよい。なお、実施例1と重複する部分の説明は省略する。
【0030】
図6は大型分割型吸着ロータ骨材のおうぎ形ピース1ピースである。図6では、おうぎ形ピース1ピースを仕切り板12や間仕切り板13を介して、内周部1つ、中央部1つ、外周部2つの4つの吸着ロータ素子に分割している。本実施例ではおうぎ形ピース1ピースを4つの吸着ロータ素子に分割したが、ロータの大きさによって2分割や3分割など、任意の複数の分割数にするようにしてもよい。
【0031】
実施例1と同様に、補強板3にはボス側(内周側)端部の角鋼9から外周側端部に向かって、ロータ厚み方向中央部にレール8を形成する。間仕切り板13にもレール8を形成する(間仕切り板13は吸着ロータ素子1に両面接するので、両面にレール8を形成する)。レール8に嵌合するように側面に溝を設けた吸着ロータ素子1を、内周部、中央部、外周部の順にレール8に沿って挿入し、コーキング材を介して接着することにより、吸着ロータ素子1は補強板3に固定される。仕切り板12及び間仕切り板13は吸着ロータ素子1を補強板3に装着した後、リベットなどで仕切り板12は補強板3に、間仕切り板13は仕切り板12に固定される。吸着ロータ素子1と仕切り板12や間仕切り板13もコーキング材を介して接着される。おうぎ形ピース6の外周側は実施例1と同様に、図7のように、隣り合うおうぎ形ピース6同士で孔7を合わせて、ボルトナットで連結させることで固定される。なお、本実施例では、仕切り板12にレール8を形成していないが、仕切り板12にレール8を設けるようにしてもよい。
【0032】
吸着ロータのおうぎ形ピース1ピースごとに着脱や交換、組み立てを行う場合について説明する。例えば吸着ロータを最初から組み立てる場合は、まず1つ目のおうぎ形ピース6の角鋼孔11と、ボス2の角鋼孔11に対応する孔を合わせ、ボス2側よりこの角鋼孔11にボルトを通して、1つ目のおうぎ形ピース6の内周側をボス2に固定する。次に、1つ目のおうぎ形ピース6と隣り合う2つ目のおうぎ形ピース6を組込み、ボス2側から角鋼孔11にボルトを通して、2つ目のおうぎ形ピース6の内周側をボス2に固定する。1つ目と2つ目の隣り合うおうぎ形ピース6同士で外周側の孔7を合わせて、ボルトナットで連結させることで隣り合うおうぎ形ピース6の外周側を固定する。順次、最後のおうぎ形ピースまで同様に行い、最後に全てのおうぎ形ピースの位置や状態を調整する。このようにして、おうぎ形ピース6を装着していく。反対に、吸着ロータからおうぎ形ピース6を脱離する場合には、外すおうぎ形ピース6の外周側のボルトナットと内周側のボルトを外すことにより容易に脱離することができる。複数のおうぎ形ピース6を脱離する場合には、最初に外したおうぎ形ピースと隣り合うおうぎ形ピースの外周側のボルトナットと内周側のボルトを外して、最初のおうぎ形ピースと同様に脱離する。この着脱方法により、おうぎ形ピース1ピースのみや複数のおうぎ形ピースの交換なども行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、吸着ロータ素子の劣化や性能低下、目詰まりなどが発生した場合であっても、吸着ロータのおうぎ形ピース1ピースのみ着脱することが可能な吸着ロータを提供することができる。また、本発明によれば、大型の吸着ロータの設置現場での組み立ての際に、おうぎ形ピースごとに設置現場へ送り、組み立てることが可能な吸着ロータを提供することができる。さらに、既設の一体型吸着ロータを本発明の分割型吸着ロータで置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 吸着ロータ素子
2 ボス
3 補強板
4 アングルフランジ
5 外周板
6 おうぎ形ピース
7 孔
8 レール
9 角鋼
10 連結板
11 角鋼孔
12 仕切り板
13 間仕切り板
A 補強板の外周側縁部と外周板が接する辺
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7