(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135535
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】太陽電池パネル、及び太陽電池システム
(51)【国際特許分類】
H02S 50/00 20140101AFI20240927BHJP
【FI】
H02S50/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046279
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 真治
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251BA11
5F251JA02
5F251JA03
5F251KA08
(57)【要約】
【課題】太陽電池部を覆うカバー部材の劣化の判定に利用可能な情報を出力する。
【解決手段】太陽電池パネル2は、太陽電池部10と、カバー部材13と、光センサ15と、を備える。太陽電池部10は、少なくとも1の太陽電池セル20によって構成される。カバー部材13は、透光性を有し、太陽電池部10の受光面22を覆う。光センサ15は、受光量に応じた電気信号を出力する。光センサ15は、自身の受光部25がカバー部材13に覆われるように配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1の太陽電池セルによって構成される太陽電池部と、
透光性を有し、前記太陽電池部の受光面を覆うカバー部材と、
受光量に応じた電気信号を出力する光センサと、を備え、
前記光センサは、自身の受光部が前記カバー部材に覆われるように配置される
太陽電池パネル。
【請求項2】
前記カバー部材は、樹脂製である
請求項1に記載の太陽電池パネル。
【請求項3】
前記カバー部材は、ポリカーボネート樹脂を含む
請求項2に記載の太陽電池パネル。
【請求項4】
前記太陽電池部における前記受光面側とは反対側の面を覆う背面部材を備え、
前記光センサは、前記カバー部材と前記背面部材との間の領域に配置され、前記カバー部材と前記背面部材が対向する方向と直交する方向における前記領域の中心と端との間において端寄りの位置に配置される
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の太陽電池パネル。
【請求項5】
前記太陽電池部は、湾曲した形状をなす湾曲部を有し、
前記光センサの前記受光部は、前記湾曲部における湾曲形状の両端の間において、両端よりも中間寄りの位置に配置される
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の太陽電池パネル。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の太陽電池パネルと、
前記電気信号から特定される前記光センサの受光量が閾値以下となった場合に所定の対応処理を行う処理部と、を備える
太陽電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、太陽電池パネル、及び太陽電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、太陽電池劣化異常判定システムが開示されている。このシステムは、太陽電池ストリングの出力電流値と出力電圧値とが決められた基準範囲内にあるか否かを判別した結果に基づいて、太陽電池ストリングに異常が発生しているか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、太陽電池ストリングが異常となる原因は複数存在する。例えば、太陽電池を覆うカバー部材の劣化に起因して受光量が低下すること、カバー部材や配線が剥がれること、配線が腐食すること、などの原因が考えられる。特許文献1の構成では、異常の原因を特定しにくいという問題がある。
【0005】
本開示は、太陽電池部を覆うカバー部材の劣化の判定に利用可能な情報を出力し得る技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の太陽電池パネルは、
少なくとも1の太陽電池セルによって構成される太陽電池部と、
透光性を有し、前記太陽電池部の受光面を覆うカバー部材と、
受光量に応じた電気信号を出力する光センサと、を備え、
前記光センサは、自身の受光部が前記カバー部材に覆われるように配置される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、太陽電池部を覆うカバー部材の劣化の判定に利用可能な情報を出力し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態の太陽電池システムを概略的に示す構成図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態の太陽電池システムを概略的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。
【0010】
〔1〕少なくとも1の太陽電池セルによって構成される太陽電池部と、
透光性を有し、前記太陽電池部の受光面を覆うカバー部材と、
受光量に応じた電気信号を出力する光センサと、を備え、
前記光センサは、自身の受光部が前記カバー部材に覆われるように配置される
太陽電池パネル。
【0011】
上記太陽電池パネルは、光センサを備えており、光センサの受光部によってカバー部材を透過した光を受けることができる。光センサの受光部による受光量は、カバー部材の劣化状態によって変化する。つまり、上記太陽電池パネルは、カバー部材の劣化の判定に利用可能な情報を出力することができる。
【0012】
〔2〕前記カバー部材は、樹脂製である
〔1〕に記載の太陽電池パネル。
【0013】
樹脂製のカバー部材は、ガラス製のカバー部材と比較して、破損しにくい反面、劣化しやすい。このため、カバー部材の劣化を判定することがより重要となる。つまり、上記太陽電池パネルは、カバー部材の劣化の判定において、重要性の高い情報を出力することができる。
【0014】
〔3〕前記カバー部材は、ポリカーボネート樹脂を含む
〔2〕に記載の太陽電池パネル。
【0015】
上記太陽電池パネルは、カバー部材の劣化の判定において、より重要性の高い情報を出力することができる。
【0016】
〔4〕前記太陽電池部における前記受光面側とは反対側の面を覆う背面部材を備え、
前記光センサは、前記カバー部材と前記背面部材との間の領域に配置され、前記カバー部材と前記背面部材が対向する方向と直交する方向における前記領域の中心と端との間において端寄りの位置に配置される
〔1〕から〔3〕のいずれか一つに記載の太陽電池パネル。
【0017】
上記太陽電池パネルでは、光センサが、カバー部材と背面部材の間の領域に配置されるため、光センサに接続される配線を上記領域の端から引き出す必要がある。この点、上記太陽電池パネルは、光センサが上記領域の中心と端との間において端寄りの位置に配置されるため、上記領域の端から配線を引き出しやすい。
【0018】
〔5〕前記太陽電池部は、湾曲した形状をなす湾曲部を有し、
前記光センサの前記受光部は、前記湾曲部における湾曲形状の両端の間において、両端よりも中間寄りの位置に配置される
〔1〕から〔4〕のいずれか一つに記載の太陽電池パネル。
【0019】
湾曲部を有する太陽電池部においては、受光する位置によって受光量に差が生じやすい。上記太陽電池パネルの光センサは、湾曲形状の両端よりも中間寄りの位置で受光することで、平均的な受光量を得ることができる。よって、上記太陽電池パネルは、カバー部材の劣化の判定に利用可能な情報として、より正確な情報を出力することができる。
【0020】
〔6〕〔1〕から〔5〕のいずれか一つに記載の太陽電池パネルと、
前記電気信号から特定される前記光センサの受光量が閾値以下となった場合に所定の対応処理を行う処理部と、を備える
太陽電池システム。
【0021】
上記太陽電池システムは、光センサの受光量が低下したことに応じて対応処理を行うことができる。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
1.第1実施形態
図1には、太陽電池システム1が開示されている。太陽電池システム1は、太陽電池パネル2と、処理部3と、を備える。
【0023】
太陽電池パネル2は、太陽光によって発電することで、光エネルギーを電気エネルギーに変換する装置である。太陽電池パネル2は、例えば車両等の移動体に設置される。太陽電池パネル2は、太陽電池部10と、封止材11,12と、カバー部材13と、背面部材14と、光センサ15と、を備える。
【0024】
太陽電池部10は、複数の太陽電池セル20によって構成される。複数の太陽電池セル20は、互いに直列に接続される。複数の太陽電池セル20は、図示しないインタコネクタによって互いに接続される。太陽電池セル20は、板状をなす。複数の太陽電池セル20は、板厚方向と直交する方向に並んで配置される。これにより、太陽電池部10は、シート状に構成される。太陽電池部10は、太陽電池部10の厚さ方向(以下、単に厚さ方向ともいう)一方側の面に受光面22を有する。太陽電池部10は、受光面22で受光した光エネルギーを電気エネルギーに変換する。受光面22は、各太陽電池セル20のセル受光面23によって構成される。
【0025】
封止材11,12は、太陽電池部10の周囲を覆う。封止材11,12は、透光性を有する。封止材11,12は、例えば樹脂によって形成される。封止材11,12は、それぞれシート状をなす。封止材11,12は、厚さ方向両側から太陽電池部10を挟み込む。封止材11は、太陽電池部10よりも厚さ方向一方側に配置される。封止材11は、太陽電池部10の受光面22を覆う。封止材12は、太陽電池部10よりも厚さ方向他方側に配置される。
【0026】
カバー部材13は、太陽電池部10の受光面22を覆う。カバー部材13は、透光性を有する。カバー部材13は、例えば樹脂製である。カバー部材13は、例えばポリカーボネート樹脂を含む。カバー部材13は、太陽電池部10よりも厚さ方向一方側に配置される。カバー部材13は、封止材11よりも厚さ方向一方側に配置される。つまり、封止材11は、太陽電池部10とカバー部材13との間に配置される。
【0027】
背面部材14は、板状をなす。背面部材14は、例えば樹脂製である。背面部材14は、太陽電池部10よりも厚さ方向他方側に配置される。背面部材14は、太陽電池部10の厚さ方向他方側の面を覆う。背面部材14は、封止材12よりも厚さ方向他方側に配置される。つまり、封止材12は、太陽電池部10と背面部材14との間に配置される。
【0028】
光センサ15は、受光部25を有する。光センサ15は、受光部25で受光した光エネルギーを電気エネルギーに変換する。光センサ15は、封止材11,12の間に配置され、カバー部材13と背面部材14との間に配置される。光センサ15は、受光部25を厚さ方向一方側に向けて配置される。光センサ15の受光部25は、封止材11及びカバー部材13に覆われる。光センサ15は、カバー部材13と背面部材14との間の領域に配置され、カバー部材13と背面部材14が対向する方向と直交する方向における当該領域の中心OAと端EAとの間において端EA寄りの位置に配置される。光センサ15には、配線26が接続されている。配線26は、封止材11と封止材12の間、つまりカバー部材13と背面部材14との間から太陽電池パネル2の外部に引き出されている。
【0029】
太陽電池部10の受光面22は、封止材11及びカバー部材13を透過した太陽光を受光し、受光量に応じた電気信号を出力する。光センサ15の受光部25は、封止材11及びカバー部材13を透過した太陽光を受光し、受光量に応じた電気信号を出力する。
【0030】
処理部3は、電気信号から特定される光センサ15の受光量が閾値以下となった場合に所定の対応処理を行う。所定の対応処理は、例えば所定の情報を報知する処理であってもよいし、その他の処理であってもよい。所定の情報は、カバー部材13の表面研磨の時期であることであってもよいし、太陽電池パネル2の交換時期であることであってもよい。処理部3は、判定部31と、報知部32と、を有する。
【0031】
判定部31は、電気信号から特定される光センサ15の受光量を取得する。判定部31は、取得した受光量が閾値以下となったか否かを判定する。閾値は、予め定められた値であってもよいし、外部情報(例えば太陽光の入射角など)に基づいて設定される値であってもよい。判定部31は、例えば公知の方法で太陽光の入射角を特定し、特定した入射角に基づいて閾値を設定してもよい。判定部31は、太陽電池パネル2が配置される位置の高度情報や天候の情報などに基づいて閾値を設定してもよい。判定部31は、取得した受光量が閾値以下となったと判定した場合に、その旨を通知する通知信号を出力する。判定部31は、例えば、マイクロコンピュータを含んで構成されてもよいし、その他の制御回路によって構成されてもよい。
【0032】
報知部32は、情報を報知する装置によって構成される。報知部32は、例えば、スピーカ等の音声出力部であってもよいし、LEDや液晶表示器等の表示部であってもよい。報知部32は、判定部31から通知信号を受信した場合、所定の情報を報知する。
【0033】
上述した第1実施形態の太陽電池パネル2は、光センサ15を備えており、光センサ15の受光部25によって封止材11及びカバー部材13を透過した光を受けることができる。光センサ15の受光部25による受光量は、カバー部材13の劣化状態によって変化する。つまり、太陽電池パネル2は、カバー部材13の劣化の判定に利用可能な情報を出力することができる。
【0034】
太陽電池パネル2は、樹脂製のカバー部材13を備える。樹脂製のカバー部材13は、ガラス製のカバー部材と比較して、破損しにくい反面、劣化しやすい。このため、カバー部材13の劣化を判定することがより重要となる。つまり、太陽電池パネル2は、カバー部材13の劣化の判定において、重要性の高い情報を出力することができる。特に、カバー部材13は、ポリカーボネート樹脂を含む。このため、太陽電池パネル2は、カバー部材13の劣化の判定において、より重要性の高い情報を出力することができる。
【0035】
太陽電池パネル2では、光センサ15が、カバー部材13と背面部材14の間の領域に配置されるため、光センサ15に接続される配線を上記領域の端EAから引き出す必要がある。この点、太陽電池パネル2は、光センサ15が上記領域の中心OAと端EAとの間において端EA寄りの位置に配置されるため、上記領域の端EAから配線26を引き出しやすい。
【0036】
太陽電池システム1は、光センサ15の受光量が低下したことに応じて対応処理を行うことができる。
【0037】
2.第2実施形態
太陽電池パネルは、湾曲した構成であってもよい。第2実施形態では、湾曲した太陽電池パネルを備える太陽電池システムについて説明する。なお、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付して、詳しい説明を省略する。
【0038】
第2実施形態の太陽電池システム201は、
図3に示すように、太陽電池パネル202と、処理部3と、を備える。太陽電池パネル202は、
図4に示すように、湾曲している。太陽電池パネル202は、フレキシブルであってもよいし、フレキシブルで無くてもよい。
【0039】
第2実施形態の太陽電池パネル202は、太陽電池部210と、封止材211,212と、カバー部材213と、背面部材214と、光センサ15と、を備える。太陽電池部210、封止材211,212、カバー部材213、及び背面部材214は、湾曲している点を除き、第1実施形態で説明した太陽電池部10、封止材11,12、カバー部材13、及び背面部材14と同じ構成である。
【0040】
太陽電池部210は、湾曲した形状をなす湾曲部40を有する。光センサ15の受光部25は、湾曲部40の湾曲形状の両端41,42の間において、両端41,42よりも中間43寄りの位置に配置される。また、光センサ15は、カバー部材213と背面部材214との間の領域に配置され、当該領域の中心OBと端EBとの間において端EB寄りの位置に配置される。
【0041】
第2実施形態の太陽電池パネル202は、湾曲部40を有する太陽電池部210においては、受光する位置によって受光量に差が生じやすい。太陽電池パネル202の光センサ15は、湾曲形状の両端41,42よりも中間43寄りの位置で受光することで、平均的な受光量を得ることができる。よって、太陽電池パネル202は、カバー部材213の劣化の判定に利用可能な情報として、より正確な情報を出力することができる。
【0042】
しかも、太陽電池パネル202は、光センサ15が、中間43寄りの位置に配置されつつも、中心OAと端EAとの間において端EA寄りの位置に配置される。このため、太陽電池パネル202は、端EAから配線26を引き出しやすい。
【0043】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上述した実施形態や後述する実施形態の様々な特徴は、矛盾しない組み合わせであればどのように組み合わされてもよい。
【0044】
(1)上記各実施形態では、カバー部材が樹脂製であったが、樹脂製でなくてもよい。例えば、カバー部材は、ガラス製であってもよい。
【0045】
(2)上記各実施形態では、太陽電池部が複数の太陽電池セルによって構成されていたが、1の太陽電池セルによって構成されてもよい。
【0046】
(3)上記各実施形態では、光センサの数が1であったが、複数であってもよい。光センサの数が複数である場合、判定部は、複数の光センサからの電気信号に基づいて光の受光量を特定してもよい。特に太陽電池部が湾曲部を有する構成においては、判定部は、湾曲形状に沿って配置される複数の光センサからの電気信号に基づいて光の受光量を特定してもよい。例えば、判定部は、各光センサからの電気信号に基づく受光量の平均値を受光量として特定してもよい。
【0047】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0048】
1…太陽電池システム
2…太陽電池パネル
3…処理部
10…太陽電池部
11…封止材
12…封止材
13…カバー部材
14…背面部材
15…光センサ
20…太陽電池セル
21…リード線
22…受光面
23…セル受光面
25…受光部
26…配線
31…判定部
32…報知部
40…湾曲部
41,42…湾曲形状の両端
43…湾曲形状の中間
201…太陽電池システム
202…太陽電池パネル
210…太陽電池部
211…封止材
212…封止材
213…カバー部材
214…背面部材
EA…端
EB…端
OA…中心
OB…中心