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特開2024-135537電気的接触子及び電気的接触子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135537
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電気的接触子及び電気的接触子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/067 20060101AFI20240927BHJP
   G01R 1/073 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01R1/067 G
G01R1/067 C
G01R1/073 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046281
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】久我 智昭
【テーマコード(参考)】
2G011
【Fターム(参考)】
2G011AA09
2G011AB01
2G011AC14
2G011AE03
(57)【要約】
【課題】 単一の材料から上下方向の竹の子ばね構造が一体的に形成され、機械的にシンプルで機能性に優れ、且つ電気回路としてロスの無い接続ができる電気的接触子の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、導電性を有する断面円形の単一の棒状部材から形成される電気的接触子の製造方法であって、前記棒状部材の円筒状に形成される上部及び又は下部に対して、螺旋状のスリットを形成する第1の工程と、前記第1の工程によりスリット加工を行った前記棒状部材の上部及び又は下部を円錐状になる様に巻き上げる第2の工程と、前記第2の工程により巻き上げた螺旋状の前記棒状部材の上部及び又は下部の各階層の螺旋構造が重なるまで圧縮した後、硬化熱処理を施して、螺旋構造の弾性部を備える電気的接触子を形成する3の工程とを有する。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する断面円形の単一の棒状部材から形成される電気的接触子の製造方法であって、
前記棒状部材の円筒状に形成される上部及び又は下部に対して、螺旋状のスリットを形成する第1の工程と、
前記第1の工程によりスリット加工を行った前記棒状部材の上部及び又は下部を円錐状になる様に巻き上げる第2の工程と、
前記第2の工程により巻き上げた螺旋状の前記棒状部材の上部及び又は下部の各階層の螺旋構造が重なるまで圧縮した後、硬化熱処理を施して、螺旋構造の弾性部を備える電気的接触子を形成する3の工程と
を有することを特徴とする電気的接触子の製造方法。
【請求項2】
前記第1の工程は、レーザー加工により、螺旋状のスリットを形成することを特徴とする請求項1に記載の電気的接触子の製造方法。
【請求項3】
前記棒状部材の上部又は下部の端面が、クラウン状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気的接触子の製造方法。
【請求項4】
前記棒状部材の中央部にも、前記スリットと独立した別のスリットを形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の電気的接触子の製造方法。
【請求項5】
導電性を有する断面円形の単一の棒状部材から形成される電気的接触子であって、
前記棒状部材の円筒状に形成される上部及び又は下部に対して、螺旋状のスリットを形成する加工を行い、スリット加工を行った前記棒状部材の上部及び又は下部を円錐状になる様に巻き上げて各階層の螺旋構造が重なるまで圧縮した後、硬化熱処理を施して形成された1又は2の弾性部と、
前記棒状部材そのものである中央部と
を有することを特徴とする電気的接触子。
【請求項6】
導電性を有する断面円形の単一の棒状部材から形成される電気的接触子であって、
前記棒状部材の上部及び又は下部に形成される1又は2の螺旋構造の弾性部と、
前記棒状部材そのものである中央部とを有し、
前記弾性部は、螺旋構造の各階層が重なって形成され、一端部は接触対象と接触する接触部を有する
ことを特徴とする電気的接触子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的接触子及び電気的接触子の製造方法に関し、例えば、半導体ウェハ上の集積回路や被検査体の通電試験に用いる電気的接触子及び電気的接触子の製造方法に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ上に形成された集積回路や、パッケージ化された集積回路等の被検査体は、それぞれの製造段階において電気的特性の検査が行なわれる。半導体ウェハ上の集積回路の電気的検査には、プローブカード等の電気的接続装置が用いられ、パッケージ化された集積回路の電気的検査にはソケット等の電気的接続装置が用いられる。このような電気的接続装置では、第1の接触対象と第2の接触対象に接触する電気的接触子が用いられ、電気的接触子を介して第1の接触対象と第2の接触対象との間で電気信号の導通を行なっている。
【0003】
従来、電気的接触子には、様々なものがあるが、複数の構成部品を組み合わせて形成される電気的接触子がある。このような複数の構成部品で形成される電気的接触子を用いて、第1の接触対象と第2の接触対象との間で電気信号を導通させる場合、構成部品同士の接触箇所で抵抗が大きくなり、電気的な導通性に影響が生じ得る。
【0004】
特許文献1には、薄肉帯状の基板を曲げ加工して、螺旋状の筒状スリーブと、筒状スリーブの一端に第1端子と、筒状スリーブの他端に第2端子とを一体成形したスプリングプローブが開示されている。このようなスプリングプローブは、薄肉帯状の基板で一体的に形成されているので、導電性が良好となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-12992号公報
【特許文献2】特開2021-188984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のスプリングプローブを用いて、第1の接触対象と第2の接触対象との間に電気信号を導通させた場合、スプリングプローブにおける電気的な導通経路は、螺旋状に巻き回した1対のコイルスプリングを経由するので、経路長が長くなってしまい、電気的な導通性の向上が要求される。
【0007】
ここで、例えば、板状部材を螺旋状に巻き回した内側部材の一部が外側部材に覆われて形成される竹の子ばねを電気的接触子としてそのまま用いることが考えられる。
【0008】
竹の子ばね構造の電気的接触子は、1個の板状部材(単一部材)を巻き回して形成するので、構成部材間の接触箇所を無くすことができる。そのため、竹の子ばね構造の電気的接触子における導通経路上での抵抗値を小さくできる。さらに、竹の子ばね構造の電気的接触子における導通経路の経路長も短くでき、電気的な導通性も良好となることが期待できる。
【0009】
ただし、単一部材を巻き回して(螺旋巻きして)竹の子ばね構造の電気的接触子を形成する加工方式は、作り込みが安定しない課題がある。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、単一の材料から上下方向の竹の子ばね構造が一体的に形成され、機械的にシンプルで機能性に優れ、且つ電気回路としてロスの無い接続ができる電気的接触子及び電気的接触子の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の本発明は、(1)導電性を有する断面円形の単一の棒状部材から形成される電気的接触子の製造方法であって、(2)前記棒状部材の円筒状に形成される上部及び又は下部に対して、螺旋状のスリットを形成する第1の工程と、(3)前記第1の工程によりスリット加工を行った前記棒状部材の上部及び又は下部を円錐状になる様に巻き上げる第2の工程と、(4)前記第2の工程により巻き上げた螺旋状の前記棒状部材の上部及び又は下部の各階層の螺旋構造が重なるまで圧縮した後、硬化熱処理を施して、螺旋構造の弾性部を備える電気的接触子を形成する3の工程とを有することを特徴とする。
【0012】
第2の本発明は、導電性を有する断面円形の単一の棒状部材から形成される電気的接触子であって、(1)前記棒状部材の円筒状に形成される上部及び又は下部に対して、螺旋状のスリットを形成する加工を行い、スリット加工を行った前記棒状部材の上部及び又は下部を円錐状になる様に巻き上げて各階層の螺旋構造が重なるまで圧縮した後、硬化熱処理を施して形成された1又は2の弾性部と、(2)前記棒状部材そのものである中央部とを有することを特徴とする。
【0013】
第3の本発明は、導電性を有する断面円形の単一の棒状部材から形成される電気的接触子であって、(1)上部及び又は下部に形成される1又は2の螺旋構造の弾性部と、(2)前記棒状部材そのものである中央部とを有し、(3)前記弾性部は、螺旋構造の各階層が重なって形成され、一端部は接触対象と接触する接触部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、単一の材料から上下方向の竹の子ばね構造が一体的に形成され、機械的にシンプルで機能性に優れ、且つ電気回路としてロスの無い接続ができる電気的接触子及び電気的接触子の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る接続子の構成を示す構成図である。
図2】実施形態に係る電気的接続装置の構成を示す構成図である。
図3】実施形態に係る接続子の形成過程の概略を示す説明図である。
図4】実施形態に係る形成過程の接続子の構成を示す説明図である。
図5】変形形態に係る接続子の構成を示す構成図(その1)である。
図6】変形形態に係る接続子の構成を示す構成図(その2)である。
図7】変形形態に係る接続子の構成を示す構成図(その3)である。
図8】変形形態に係る接続子の構成を示す構成図(その4)である。
図9】変形形態に係る接続子の構成を示す構成図(その5)である。
図10】変形形態に係る接続子の構成を示す構成図(その6)である。
図11】実施形態に係る接続子のハウジング状態を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(A)主たる実施形態
以下では、本発明に係る電気的接触子及び電気的接触子の製造方法のこの実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
この実施形態では、本発明に係る電気的接触子を、後述するように、電気的接続装置の構成部材である電気的接続ユニットに搭載される接続子に適用する場合を例示する。本発明に係る電気的接触子は、第1の接触対象と第2の接触対象に電気的に接触し、第1の接触対象と第2の接触対象との間で電気信号を導通可能なものに適用できる。なお、この実施形態では、電気的接続ユニットの接続子に、本発明の電気的接触子を適用する場合を例示するが、本発明は被検査体の電極端子と接続するプローブ等にも適用できる。
【0018】
また、この実施形態では、本発明に係る電気的接続装置が、半導体ウェハ上に形成されている集積回路を被検査体とし、当該被検査体の電気的検査に用いられる電気的接続装置とする場合を例示する。なお、本発明に係る電気的接続装置は、本発明に係る電気的接触子を用いて、第1の接触対象と第2の接触対象との間で電気信号を導通させて電気的に接続させるものに適用できる。
【0019】
(A-1)実施形態の構成
(A-1-1)電気的接続装置
図2は、実施形態に係る電気的接続装置の構成を示す構成図である。
【0020】
図2の電気的接続装置10は、主要な構成部材を図示しているが、これらの構成部材に限定されず、実際には図2に示していない構成部材も有する。また、以下では、図2中の上下方向に着目して、「上」、「下」を言及するものとする。
【0021】
図2において、この実施形態に係る電気的接続装置10は、平板状の支持部材12と、前記支持部材12の下面12aに保持される平板状の配線基板14と、前記配線基板14と電気的に接続される電気的接続ユニット15と、前記電気的接続ユニット15と電気的に接続すると共に複数のプローブ20を有するプローブ基板16とを有する。
【0022】
電気的接続装置10は、支持部材12、配線基板14、電気的接続ユニット15、プローブ基板16を組み立てる際に、多数の固定部材(例えば、ボルト等の螺合部材など)を用いているが、図2ではこれらの固定部材を図示していない。
【0023】
電気的接続装置10は、例えば半導体ウェハ上に形成された半導体集積回路等を被検査体2とし、被検査体2の電気的な検査を行なうものである。具体的には、被検査体2をプローブ基板16に向けて押圧し、プローブ基板16の各プローブ20の先端部と被検査体2の電極端子2aとを電気的に接触させ、図示しないテスタ(検査装置)から被検査体2の電極端子2aに電気信号を供給し、さらに被検査体2の電極端子2aからの電気信号をテスタ側に与えることにより、被検査体2の電気的な検査を行なう。
【0024】
検査対象である被検査体2はチャックトップ3の上面に載置される。チャックトップ3は、水平方向のX軸方向、水平面上においてX軸方向に対して垂直なY軸方向、水平面(X-Y平面)に対して垂直なZ軸方向に位置調整が可能であり、さらに、Z軸回りのθ方向に回転姿勢も調整可能である。被検査体2の電気的検査を実施する際には、上下方向(Z軸方向)に昇降可能なチャックを移動させて、被検査体2の電極端子2aをプローブ基板16の各プローブ20の先端部に電気的に接触させる。そのため、電気的接続装置10のプローブ基板16の下面と、チャックトップ3の上面の被検査体2とが相対的に近づくように移動させる。
【0025】
[支持部材]
支持部材12は、配線基板14の変形(例えば、撓み等)を抑えるものである。例えば、プローブ基板16は多数のプローブ20を有しているため、配線基板14側に取り付けられるプローブ基板16の重量は大きくなっている。また、被検査体2の電気的な検査を行なう際、プローブ基板16が、チャックトップ3上の被検査体2によって押し付けられることにより、プローブ基板16の下面に突出しているプローブ20の先端部と被検査体2の電極端子2aとが電気的に接触する。このように、電気的検査の際、下から上に向けて突き上げる反力(コンタクト荷重)が作用し、配線基板14にも大きな荷重が加えられる。支持部材12は、配線基板14の変形(例えば、撓み等)を抑える部材として機能する。
【0026】
また、支持部材12には、上面と下面とを貫通させた複数の貫通孔121が設けられている。複数の貫通孔121のそれぞれは、後述するプローブ基板16の上面に配置させる複数のアンカー50のそれぞれの位置と対応する位置に設けられており、かつ、配線基板14に設けた複数の貫通孔141のそれぞれの位置と対応する位置に設けられている。
【0027】
支持部材12の各貫通孔121には、スペーサ(以下、「支持部」とも呼ぶ。)51が、支持部材12の上方から下方に向けて挿通され、スペーサ(支持部)51の下端部と、対応するアンカー50とが固定可能な構成となっている。例えば、スペーサ(支持部)51の下端部は雄ネジ部となっており、またプローブ基板16の上面に配置されるアンカー50の略中央部は雌ネジ部501となっており、スペーサ(支持部)51の下端部(雄ネジ部)がアンカー50の雌ネジ部に螺合することで固定できる。これにより、プローブ基板16の上面と、支持部材12の上面との間の距離を所定の距離長に保持できるようにしている。
【0028】
[配線基板]
配線基板14は、例えばポリイミド等の樹脂材料で形成されたものであり、例えば略円形板状に形成されたプリント基板等である。配線基板14の上面の周縁部には、テスター(検査装置)のテストヘッド(図示しない)と電気的に接続するための多数の電極端子(図示しない)が配置されている。また、配線基板14の下面には、配線パターンが形成されており、配線パターンの接続端子14aが、電気的接続ユニット15に設けられている接続子30の上端部と電気的に接続するようになっている。
【0029】
さらに、配線基板14の内部には配線回路(図示しない)が形成されており、配線基板14の下面の配線パターンと、配線基板14の上面の電極端子とは、配線基板14内部の配線回路を介して接続可能となっている。したがって、配線基板14内の配線回路を介して、配線基板14の下面の配線パターンの接続端子14aに電気的に接続する電気的接続ユニット15の各接続子30と、配線基板14の上面の電極端子に接続するテストヘッドとの間で電気信号を導通させることができる。配線基板14の上面には、被検査体2の電気的検査に必要な複数の電子部品も配置されている。
【0030】
また、配線基板14には、当該配線基板14の上面と下面とを貫通させた複数の貫通孔141が設けられている。複数の貫通孔141のそれぞれは、プローブ基板16の上面に配置される複数のアンカー50のそれぞれの位置と対応する位置に配置され、かつ、支持部材12の複数の貫通孔121のそれぞれの位置と対応する位置に配置されている。
【0031】
なお、各貫通孔141の開口形状は、挿通される支持部51の形状に対応した形状とすることができる。また、各貫通孔141に支持部51を挿通可能にするために、各貫通孔141の内径は、支持部51の外径と同程度又はわずかに大きくなっている。
【0032】
この実施形態では、支持部51が円柱部材である場合を例示するため、貫通孔141の開口形状が略円形である場合を例示するが、これに限定されない。例えば、支持部51の断面形状が略正方形等の直角柱の部材や、当該断面形状が多角形の多角柱の部材等であってもよく、そのような例の場合でも、貫通孔141の開口形状は、支持部51を挿通可能な形状とすることができる。
【0033】
[電気的接続ユニット]
電気的接続ユニット15は、複数の接続子30を有している。電気的接続装置10の組み立て状態では、各接続子30の上端部を、配線基板14の下面の配線パターンの接続端子14aに電気的に接続し、また各接続子30の下端部を、プローブ基板16の上面に設けられたパッドに接続する。プローブ20の先端部が被検査体2の電極端子に電気的に接触するので、被検査体2の電極端子はプローブ20及び接続子30を通じてテスター(検査装置)と電気的に接続するので、被検査体2はテスター(検査装置)による電気的な検査が可能となる。
【0034】
例えば、電気的接続ユニット15には、各接続子30を挿通するための複数の挿通孔があり、各挿通孔に接続子30が挿通されることにより、各接続子30の上端部及び下端部が突出するようになっている。なお、電気的接続ユニット15において、複数の接続子30を装着する仕組みは、貫通孔を設ける構成に限定されず、種々の構成を広く適用できる。電気的接続ユニット15の周囲にはフランジ部151が設けられている。
【0035】
[プローブ基板]
プローブ基板16は、複数のプローブ20を有する基板であり、略円形若しくは多角形(例えば16角形等)に形成されたものである。プローブ20は、例えば、カンチレバー型のプローブ等を用いることができるが、これに限定されない。また、プローブ基板16は、例えばセラミック板で形成される基板部材161と、この基板部材161の下面に形成された多層配線基板162とを有する。
【0036】
セラミック基板である基板部材161の内部には、板厚方向に貫通する多数の導電路(図示しない)が形成されており、また基板部材161の上面には、パッド161aが形成されており、基板部材161内の導電路の一端が、当該基板部材161の上面の対応するパッド161aと接続するように形成されている。さらに、基板部材161の下面では、基板部材161内の導電路の他端が、多層配線基板162の上面に設けられた接続端子と接続されるように形成されている。
【0037】
多層配線基板162は、例えばポリイミド等の合成樹脂部材で形成された複数の多層基板で形成されており、複数の多層基板の間に配線路(図示しない)が形成されている。多層配線基板162の配線路の一端は、セラミック基板である基板部材161側の導電路の他端と接続しており、多層配線基板162の他端は、多層配線基板162の下面に設けられたプローブランドに接続されている。多層配線基板162の下面に設けられたプローブランドには、複数のプローブ20が配置されており、プローブ基板16の複数のプローブ20は、電気的接続ユニット15を介して、配線基板14の対応する接続端子14aと電気的に接続している。
【0038】
(A-1-2)接続子(電気的接触子)
図1は、実施形態に係る接続子の構成を示す構成図である。図3は、実施形態に係る接続子の形成過程の概略を示す説明図である。さらに、図11は、実施形態に係る接続子のハウジング状態を例示する説明図である。
【0039】
図1に示すように、電気的接触子の一例である接続子30は、第1の接触対象としての配線基板14の接続端子14aと接触する第1接触部31と、第1接触部31が接続端子14aと接触して荷重を受けたときに上下方向に弾性的に付勢する上方向の竹の子ばね構造を備える上部弾性部32と、第2の接触対象としての基板部材161のパッド161aと接触する第2接触部33と、第2接触部33がパッド161aと接触して荷重を受けたときに上下方向に弾性的に付勢する下方向の竹の子ばね構造を備える下部弾性部34と、上部弾性部32及び下部弾性部34を接続する中央部35を有する。
【0040】
図11の例では、電気的接続ユニット15に、接続子30を挿通するための貫通孔70が設けられており、貫通孔70に接続子30が挿通されるものとする。下部の貫通孔70の内径は、中央部35の外径よりわずかに大きい若しくは同程度とする。また、貫通孔70の上部は、貫通孔70下部の内径よりも小さくなっており、貫通孔70の内面において段差71が設けられている。この貫通孔70の内面の段差71に、挿通された接続子30の中央部35の上部が引っ掛るようになっている。即ち、中央部35は、コンタクト動作時においてもバネの抜け止めとしての効果を奏する。なお、段差71は、中央部35の下部が引っ掛るように形成しても良い。何れにしても中央部35の外径は、上部弾性部32及び下部弾性部34の外径よりも大きいため貫通孔70の形状(段差)によって、コンタクト動作時においてもバネの抜け止めとして利用できる。
【0041】
第1接触部31には、第1の接触対象と接触する先端面があり、当該先端面が上方に伸びている。また、第2接触部33には、第2の接触対象と接触する先端面があり、当該先端面が下方に伸びている。第1接触部31及び第2接触部33の形状は特に限定されるものでは無く種々様な加工処理を行っても良い。
【0042】
図1の接続子30の製造方法の各工程における概略としては、図3(A)に示すように円筒状のパイプ材Mの一部を成形加工(スリット加工)して、図3(B)に示すような接続子30P1を形成した後、さらに、スリット加工部を円錐状になる様に巻き上げて図3(C)に示すような接続子30P2を形成した後、後述する圧縮・硬化処理を用いて図3(D)に示すような目的形状(上下方向の竹の子ばね構造)の接続子30を形成する。
【0043】
図3のパイプ材Mは、図1の接続子30(接続子30P1、接続子30P2)の成形加工前の部材であり、導電性材料で形成された全長に渡って円筒状の棒状部材(円筒部材)である。すなわち、接続子30は、単一の円筒部材から、複数の工程を得て、竹の子状に重ねて螺旋巻きする構造(上下方向の竹の子構造)が形成されることになるので、電気信号の導通性を安定化させることができる。換言すると、複数の部品を組み合わせて形成される電気的接触子は、複数の部品同士が互いに接触しあって電気信号を導通することになるので、複数の部品間の接触箇所で抵抗が大きくなり、導通性が不安定になることがある。これに対して、単一の円筒部材を成形加工して形成される接続子30は、部品間の接触箇所がないので、抵抗値を小さくでき、電気信号の導通性を安定化できる。
【0044】
また、接続子30は、上下方向に対して竹の子状の弾性体を有するため、第1の接触対象と、第2の接触対象との接触を確実にすることができる。このため、この実施形態の接続子30は、片方向だけの竹の子状の弾性体を有する接続子よりも、有利な効果を奏する。
【0045】
図3(A)に示すパイプ材Mには、導電性を有する貴金属又は金属で形成された円筒部材等種々様々な円筒部材を適用することができるが、例えば、Cu-Be系合金(ベリリウム銅)等の析出硬化型銅合金が高ばね性を有する材料として好適である。析出硬化型銅合金では、溶体化処理された過飽和固溶体を時効処理することにより、微細な析出物が均一に分散して、合金の強度が高くなると同時に、銅中の固溶元素量が減少し電気伝導性を向上できる。また、パラジウム合金も析出硬化型銅合金と同様に、パイプ材Mとして好適である。
【0046】
図3(B)に示す接続子30P1は、パイプ材Mの一部をスリット加工して形成される接続子である。接続子30P1は、上述の接続子30の各構成部と対応する構成を有する。即ち、図3(B)に示すように、接続子30P1は、第1接触部31Pと、上部弾性部32P1と、第2接触部33Pと、下部弾性部34P1と、上部弾性部32P1及び下部弾性部34P1を接続する中央部35Pを有する。
【0047】
また、図3(C)に示す接続子30P2は、接続子30P1のスリット加工部(上部弾性部32P1、下部弾性部34P1)を円錐状になるまで巻き上げて形成される接続子である。接続子30P2も、上述の接続子30、30P1の各構成部と対応する構成を有する。即ち、図3(C)に示すように、接続子30P2は、第1接触部31Pと、上部弾性部32P2と、第2接触部33Pと、下部弾性部34P2と、上部弾性部32P2及び下部弾性部34P2を接続する中央部35Pを有する。
【0048】
接続子30と接続子30P2との違いは、接続子30P1が、パイプ材Mの一部(上部弾性部32、下部弾性部34)を螺旋状に巻き、巻き回した内側部材の一部が外側部材に覆われて形成される竹の子構造となっているのに対して、接続子30P2は、パイプ材Mが重ならずに螺旋状に巻かれて形成されるたる状である。
【0049】
この実施形態では、目的形状(上下方向の竹の子構造)の接続子30を形成するために、まず、図3(A)に示すパイプ材Mの一部に対してスリット加工を施して接続子30P1を形成した後、さらに、スリット加工部を巻き上げて接続子30P2を形成し、後述する圧縮・硬化処理により、図3(D)に示す接続子30を作り込む。以下では、接続子30の製造方法について述べる。
【0050】
[接続子の製造方法]
<スリット加工>
まず、接続子30を製造する手順として、レーザー加工等の既存の技術を用いて、棒状のパイプ材Mの一部をスリット加工して接続子30P1を形成する。
【0051】
パイプ材M(パイプ材Mの上部及び下部)に対してスリット加工を施すことによって、図4に示すように接続子30P1に螺旋状のスリットS1~スリットS6が形成される。図4では、図面の説明上、スリット(隙間)幅を認識できるようにやや誇張してスリットを入れた例を示しているが、レーザー加工等によってどのように螺旋状のスリットの構造を形成するかは特に限定されるものではない。
【0052】
なお、接続子30P1の中央部35Pは、スリット加工が施されないので、パイプ材Mのままである。即ち、接続子30P1の中央部35Pは、剛性が高い。
【0053】
<絞り巻き付け加工>
続けて、接続子30P1を固定した状態で、第1接触部31P(先端部)をパイプ材Mの軸心に沿って絞り巻き付けながら収縮させ、上部の弾性部を形成させる。同様に、第2接触部33P(先端部)をパイプ材Mの軸心に沿って絞り巻き付けながら収縮させ、下部の弾性部を形成させる。
【0054】
図3(C)の接続子30P2では、絞り巻き付け加工を行った状態の弾性部である上部弾性部32P2及び下部弾性部34P2が示されている。この状態では、各弾性部は、上下の重なりがなくたるんだ状態である。
【0055】
この実施形態では、接続子30P2(上部弾性部32P2及び下部弾性部34P2)は、中央部35Pを介して上下対称の螺旋構造が形成されるが、必ずしも上部弾性部32P2及び下部弾性部34P2は、上下対称の螺旋構造で形成しなければならない訳ではない(即ち、非対称の螺旋構造でも良い)。
【0056】
<圧縮・硬化熱処理>
次に、接続子30P2の上部弾性部32P2及び下部弾性部34P2が図3(D)に示すように、上下に重なるように圧縮した状態(即ち、竹の子構造になるまで圧縮した状態)のままで、硬化熱処理を行う。圧縮・硬化熱処理の具体的な方法は、例えば、特許文献2に記載の技術を適用することができる。
【0057】
(A-2)実施形態の効果
以上のように、本実施形態によれば、螺旋状に重ね巻きする竹の子ばね構造の加工制約を解決することが可能となった。即ち、パイプ材の一部を螺旋状にスリット加工した後、スリット加工部を絞り巻き付けた後、圧縮・硬化することにより目的形状(竹の子構造)を安定的に作り込む事が可能となった。
【0058】
上記製造方法で製造されたこの実施形態の電気的接触子(接続子)は、単一の材料から上下方向の竹の子ばね構造が一体的に形成されることから、機械的にシンプルで機能性に優れ(単一部品による摺動性の向上)、且つ電気回路としてロスの無い接続ができる。
【0059】
また、本製造法のパイプスリット加工方式により製造された接続子30は、本体(中央部35)がパイプ材Mのままなので、剛性が高い。さらに、本製造方法のパイプスリット加工方式は、バネ全長の設定が容易である利点もある。
【0060】
(B)他の実施形態
上述した実施形態においても、本発明の変形実施形態を言及したが、本発明は、以下の実施形態においても適用できる。
【0061】
(B-1)上述したパイプスリット加工方式によるスリット加工部の螺旋の巻き方向(片側巻き方向)は特に限定されるものではない。例えば、図5に示すように、螺旋の巻き方向を上記実施形態とは逆に形成し(図5(A))、圧縮・硬化処理により、接続子30(図5(B))を製造しても良い。
【0062】
(B-2)上述した実施形態では、接続子30のボディ部(中央部35)には、特にスリット加工を行わなかったが、図6に示すようなスリット加工を行っても良い。図6の接続子30Aは、中央部35Aにスリット(例えば、上部や下部のスリットと連続しない独立した螺旋状のスリット)を入れることにより、上下螺旋巻きバネ(上部弾性部32、下部弾性部34)と合わせてストロークと荷重をコントロールすることができる。
【0063】
(B-3)上述した実施形態では、接続子30の上部弾性部32及び下部弾性部34は、螺旋巻き構造(竹の子構造)としていたが、いずれか一方を別形状としても良い。例えば、図7に示す接続子30Bでは、上部弾性部32Bがクラウン形状となっている。図7(A)は、接続子30Bを真横から見た図であり、図7(B)は、接続子30Bを真上方面から見た図である。クラウン型は、先端部(第1接触部31B)が4カ所存在するため、電極パッドへの接触性に優れる。
【0064】
また、図8に示すように、接続子30Bのクラウン(上部弾性部32)には各底部分の真下にスリットを入れても良い(4カ所全てでも良いし、4カ所未満でも良い)。スリットを入れることにより、コンタクト時には第1接触部31を含む各構成(多角形)が横に広がりながら接触することができる。電極パッドの仕様によってはこのようにクラウンが変形する方が良い場合もある。何れにしても、上部弾性部32(又は下部弾性部34)を如何なる形状にするかは特に限定されるものではない。
【0065】
(B-4)上述した実施形態では、全長に渡って円筒状で棒状のパイプ材Mから接続子30を製造したが、図9に示すように、円柱棒状のパイプ材の両端部にザグリ加工を施した棒状部材Nから上述した実施形態と同様の手順、すなわち、ザグリ加工により円筒状になった上部及び下部にスリット加工を施して圧縮、硬化熱処理を施すことにより、接続子30Cを製造しても良い。接続子30Cの外観上は接続子30と変わらないが、中央部35の内部(中央部Z1)は、中実構造であることからパイプ材Mから製造した接続子30に比べて電気的に有利となる。同様に、接続子30Cの中央部35の剛性は、接続子30よりも高くなる。
【0066】
(B-5)また、図10に示すように、ザグリ加工に加えて中央部Z2の外周面が全周に渡って凸状となった棒状部材Oから上述した実施形態と同様の手順により、接続子30Dを製造しても良い。接続子30Dは、上述の接続子30Cで述べた電気的優位性及び剛性の向上に加えて、中央部35(中央部Z2)が凸状のため、コンタクト動作時においてもバネの抜け止めとしての効果を備える。
【0067】
(B-6)上述した実施形態では、接続子30の上部弾性部32及び下部弾性部34の螺旋構造を実現するために、スリット加工を用いていたが、これに限定されるものではない。例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)制作のために用いられるエッチング技術を適用しても良い。
【0068】
(B-7)上述した実施形態では、円筒状又は円柱状のパイプ材M(棒状部材)から螺旋構造のバネを製造する例を示したが、材料はこれら棒状の金属部材に限らず、種々様々な形状(例えば、角型)の金属を用いても良い。
【符号の説明】
【0069】
30、30A、30B、30C、30D、30P1、30P2…接続子、31、31B、31P…第1接触部、32、32B、32P1、32P2…上部弾性部、33、33P…第2接触部、34、34P1、34P2…下部弾性部、35、35A、35P…中央部、70…貫通孔、71…段差、M…パイプ材、N、O…棒状部材、S1~S6…スリット。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11