(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135539
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】水中ドローン撮影用移動体、水中ドローン撮影システム、水中ドローン位置推定システム、水中ドローン位置推定方法、および自己位置呈示仕様水中ドローン
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H04N7/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046284
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】309015019
【氏名又は名称】地方独立行政法人青森県産業技術センター
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔一
【テーマコード(参考)】
5C054
【Fターム(参考)】
5C054AA02
5C054CA04
5C054CC02
5C054CE01
5C054DA07
5C054HA19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水中ドローンの位置情報を低コストで推定可能な技術を提供すること。
【解決手段】水中ドローン撮影用移動体3は、GPS情報取得手段1と、水中にある水中ドローン10をその上方から撮影するための撮影手段2を備えている移動体であって、水中ドローン10の位置推定に用いられる。水中ドローン位置Xの推定は、GPS情報取得手段1によるGPS情報f1、本水中ドローン撮影用移動体3の高度情報f2、および撮影手段2による水中ドローン撮影記録f3に基づいてなされる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS情報取得手段と、
水中にある水中ドローンをその上方から撮影するための撮影手段を備えている移動体であって、
該水中ドローンの位置推定に用いられる
ことを特徴とする、水中ドローン撮影用移動体。
【請求項2】
前記GPS情報取得手段によるGPS情報、本水中ドローン撮影用移動体の高度情報、および前記撮影手段による水中ドローン撮影記録に基づいて、前記水中ドローンの位置推定に用いられることを特徴とする、請求項1に記載の水中ドローン撮影用移動体。
【請求項3】
前記移動体が航空ドローンであることを特徴とする、請求項2に記載の水中ドローン撮影用移動体。
【請求項4】
前記撮影手段は水中での撮影が可能な仕様であることを特徴とする、請求項3に記載の水中ドローン撮影用移動体。
【請求項5】
前記移動体が着水型ドローンまたはボート型ドローン(水上ドローン)であることを特徴とする、請求項2に記載の水中ドローン撮影用移動体。
【請求項6】
前記移動体が無人または有人の船舶であることを特徴とする、請求項2に記載の水中ドローン撮影用移動体。
【請求項7】
一または複数の請求項1、2、3、4、5、6のいずれかに記載の水中ドローン撮影用移動体と、
該水中ドローン撮影用移動体を撮影対象である水中ドローン撮影のために移動制御する操縦手段と、
からなることを特徴とする、水中ドローン撮影システム。
【請求項8】
請求項7に記載の水中ドローン撮影システムと、演算装置とからなる水中ドローン位置推定システムであって、
該演算装置は、
該水中ドローン撮影システムを構成する水中ドローン撮影用移動体のGPS情報取得手段により取得されたGPS情報、
該水中ドローン撮影用移動体の高度情報、および
該水中ドローン撮影用移動体の撮影手段による水中ドローン撮影記録に基づいて、
水中ドローンの推定位置を演算することを特徴とする、水中ドローン位置推定システム。
【請求項9】
前記演算装置により得られた水中ドローン推定位置を表示する表示装置を備えていることを特徴とする、請求項8に記載の水中ドローン位置推定システム。
【請求項10】
前記演算装置における演算処理では、下記<S>列挙の少なくともいずれか一の補助情報が用いられることを特徴とする、請求項8に記載の水中ドローン位置推定システム。
<S> 水中ドローンが存在する水域の水面標高、水中ドローンの水深、地上設置の測定装置による水中ドローン撮影用移動体の高度
【請求項11】
請求項8に記載の水中ドローン位置推定システムを用い、前記水中ドローン撮影用移動体を撮影対象水中ドローン撮影可能な位置に移動させ、撮影を行い、所定の情報に基づき前記演算装置によって対象水中ドローンの推定位置を得ることを特徴とする、水中ドローン位置推定方法。
【請求項12】
請求項1、2、3、4、5、6のいずれかに記載の水中ドローン撮影用移動体による撮影に適した仕様であるところの被写体仕様を備えていることを特徴とする、自己位置呈示仕様水中ドローン。
【請求項13】
前記被写体仕様が水面方向に光を照射する投光装置であることを特徴とする、請求項12に記載の自己位置呈示仕様水中ドローン。
【請求項14】
前記被写体仕様が水面方向に向けられた光沢面であることを特徴とする、請求項12に記載の自己位置呈示仕様水中ドローン。
【請求項15】
前記被写体仕様がカラーリングによるものであることを特徴とする、請求項12に記載の自己位置呈示仕様水中ドローン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中ドローン撮影用移動体、水中ドローン撮影システム、水中ドローン位置推定システム、水中ドローン位置推定方法、および自己位置呈示仕様水中ドローンに係り、特に、本発明は水中ドローンに搭載したセンサ類の測定結果を地図上に位置合わせする際に必要な水中ドローンの位置情報を、低コストで推定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地上での広範囲の測量手法として無人航空機を用いたレーザー測量があり、測定時のGPS(Global Positioning System 全地球測位システム)情報から測定箇所の位置情報が分かるため、地図上へ重ねて表示したりすることが可能である。湖やダム、海中などの水中では、ソナーやナローマルチビームと呼ばれる音響測深機を使用することで広範囲の地形情報の測定が可能である。水中での測量や地形探査または水質調査などで水中ドローンが活用されているが、調査内容によっては水中ドローン自体の位置を把握しながら調査を行いたい場合がある。
【0003】
一般的に、地上ではGPS信号を受信することで自己位置を推定できるが、水中は電波減衰率が大きく、GPSの電波も受信できないため、GPSを用いた自己位置の推定ができない。つまり、航空ドローンと違い水中ドローンでは自己位置が分からない。したがって水中ドローンでは、電波通信にたよらず位置を計測する必要がある。
【0004】
また、水中ドローンにソナーを搭載して水中の地形を計測することは可能だが、地上に対して基準になるものがない水中地形、たとえば水中に設置された人工魚礁などを、地図上に正確に位置合わせするのは難しい。そこで従来、水中ドローンの位置推定には、水上のGPS受信機と水中音響測位技術を組み合わせたものが一般的である。後掲特許文献1開示技術はその一例であり、水中で音響通信することにより測位する音響測位システムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-128968号公報「水中測位システムおよび水中測位方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、水中ドローンに搭載したセンサ類の測定結果を地図上に位置合わせする際には、水中ドローンの位置情報を得る必要がある。上述の通り、かかる目的に対応するものとしては現在、水上に設置したGPS受信機と水中音響測位技術を組み合わせた製品が販売されている。しかしこれは、数百万~数千万円以上という高額なものであり、導入は決して容易ではない。より低コストで水中ドローンの位置推定を可能とする技術が求められる。
【0007】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術を踏まえ、水中ドローンの位置情報を低コストで推定可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は上記課題について検討した。その結果、低価格化が進んでいる航空ドローンと水中ドローンを併用し、航空ドローンのGPS位置情報とカメラ画像に映る水中ドローンの位置、さらに飛行高度の情報から、電子計算機を用いた計算によって水中ドローンの位置を推定できることに想到し、これに基づき、さらに検討・考察を加えて、本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0009】
〔1〕 GPS情報取得手段と、水中にある水中ドローンをその上方から撮影するための撮影手段を備えている移動体であって、該水中ドローンの位置推定に用いられることを特徴とする、水中ドローン撮影用移動体。
〔2〕 前記GPS情報取得手段によるGPS情報、本水中ドローン撮影用移動体の高度情報、および前記撮影手段による水中ドローン撮影記録に基づいて、前記水中ドローンの位置推定に用いられることを特徴とする、〔1〕に記載の水中ドローン撮影用移動体。
〔3〕 前記移動体が航空ドローンであることを特徴とする、〔2〕に記載の水中ドローン撮影用移動体。
〔4〕 前記撮影手段は水中での撮影が可能な仕様であることを特徴とする、〔3〕に記載の水中ドローン撮影用移動体。
〔5〕 前記移動体が着水型ドローンまたはボート型ドローン(水上ドローン)であることを特徴とする、〔2〕に記載の水中ドローン撮影用移動体。
【0010】
〔6〕 前記移動体が無人または有人の船舶であることを特徴とする、〔2〕に記載の水中ドローン撮影用移動体。
〔7〕 一または複数の〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕のいずれかに記載の水中ドローン撮影用移動体と、該水中ドローン撮影用移動体を撮影対象である水中ドローン撮影のために移動制御する操縦手段とからなることを特徴とする、水中ドローン撮影システム。
〔8〕 〔7〕に記載の水中ドローン撮影システムと、演算装置とからなる水中ドローン位置推定システムであって、該演算装置は、該水中ドローン撮影システムを構成する水中ドローン撮影用移動体のGPS情報取得手段により取得されたGPS情報、該水中ドローン撮影用移動体の高度情報、および該水中ドローン撮影用移動体の撮影手段による水中ドローン撮影記録に基づいて、水中ドローンの推定位置を演算することを特徴とする、水中ドローン位置推定システム。
〔9〕 前記演算装置により得られた水中ドローン推定位置を表示する表示装置を備えていることを特徴とする、〔8〕に記載の水中ドローン位置推定システム。
〔10〕 前記演算装置における演算処理では、下記<S>列挙の少なくともいずれか一の補助情報が用いられることを特徴とする、〔8〕に記載の水中ドローン位置推定システム。
<S> 水中ドローンが存在する水域の水面標高、水中ドローンの水深、地上設置の測定装置による水中ドローン撮影用移動体の高度
【0011】
〔11〕 〔8〕に記載の水中ドローン位置推定システムを用い、前記水中ドローン撮影用移動体を撮影対象水中ドローン撮影可能な位置に移動させ、撮影を行い、所定の情報に基づき前記演算装置によって対象水中ドローンの推定位置を得ることを特徴とする、水中ドローン位置推定方法。
〔12〕 〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕のいずれかに記載の水中ドローン撮影用移動体による撮影に適した仕様であるところの被写体仕様を備えていることを特徴とする、自己位置呈示仕様水中ドローン。
〔13〕 前記被写体仕様が水面方向に光を照射する投光装置であることを特徴とする、〔12〕に記載の自己位置呈示仕様水中ドローン。
〔14〕 前記被写体仕様が水面方向に向けられた光沢面であることを特徴とする、〔12〕に記載の自己位置呈示仕様水中ドローン。
〔15〕 前記被写体仕様がカラーリングによるものであることを特徴とする、〔12〕に記載の自己位置呈示仕様水中ドローン。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水中ドローン撮影用移動体、水中ドローン撮影システム、水中ドローン位置推定システム、水中ドローン位置推定方法、および自己位置呈示仕様水中ドローンは上述のように構成されるため、これらによれば、従来のような水中用測位製品を使用する際と比較して、低コストで水中ドローンの位置を推定することができる。
【0013】
水中ドローンに搭載したセンサ類の測定結果を地図上に位置合わせする際には、水中ドローンの位置情報が必要だが、本発明を用いて計算により求めた水中ドローンの位置情報と水中ドローンに搭載されたセンサ類の測定結果を関連付けることで、地図上への重ね合わせや、地理情報システム・3D空間への位置合わせなどのデータ分析と表示が、低コストにて可能となる。それにより、水中ドローンを利用した各種の測定をより行いやすくなり、利用拡大に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明水中ドローン撮影用移動体の基本構成を概念的に示す説明図である。
【
図2】本発明水中ドローン撮影用移動体による水中ドローン位置推定の原理を示す説明図である。
【
図3(a)】本発明水中ドローン撮影用移動体を用いることによる作用を示す説明図である。
【
図3(b)】本発明水中ドローン撮影用移動体を用いることによる作用を示す説明図である。
【
図3(c)】本発明水中ドローン撮影用移動体を用いることによる作用を示す説明図である。
【
図4】本発明水中ドローン撮影用移動体の仕様例を示す説明図である(その1)。
【
図4-2】本発明水中ドローン撮影用移動体の仕様例を示す説明図である(その2)。
【
図5】本発明水中ドローン撮影システムの基本構成を概念的に示す説明図である。
【
図6】本発明水中ドローン位置推定システムの基本構成を概念的に示す説明図である。
【
図7】本発明水中ドローン位置推定システムによる水中ドローン位置推定の原理を示す説明図である。
【
図8】本発明水中ドローン位置推定方法の構成を示すフロー図である。
【
図9】複数の水中ドローン撮影用移動体を用いた本発明水中ドローン位置推定方法を示す説明図である。
【
図10】本発明自己位置呈示仕様水中ドローンの基本構成および仕様例を概念的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明水中ドローン撮影用移動体の基本構成を概念的に示す説明図である。また、
図2は、本発明水中ドローン撮影用移動体による水中ドローン位置推定の原理を示す説明図である。
図1に示すように本水中ドローン撮影用移動体3は、GPS情報取得手段1と、水中にある水中ドローン10をその上方から撮影するための撮影手段2を備えている移動体であって、水中ドローン10の位置推定に用いるためのものであることを、基本構成とする。
【0016】
そして
図2に示すように、本発明水中ドローン撮影用移動体による水中ドローン位置Xの推定は、GPS情報取得手段1によるGPS情報f1、本水中ドローン撮影用移動体3の高度情報f2、および撮影手段2による水中ドローン撮影記録f3に基づいてなされる。
【0017】
すなわち、かかる基本構成を有する本発明水中ドローン撮影用移動体3を用いることにより、そのGPS情報取得手段1によってGPS情報f1が得られ、またその撮影手段2によって水中にある水中ドローンを撮影した記録であるところの水中ドローン撮影記録f3が得られ、これらに加え水中ドローン撮影用移動体3自身の高度情報f2が用いられて、水中ドローン10の位置Xが推定され得る。
【0018】
水中ドローン撮影用移動体3の撮影手段2すなわちカメラやビデオカメラは、可視光の物に限らず赤外線カメラ等の可視光以外を対象とする物であってもよい。また、光学フィルタや偏光フィルタを併用する等、具体的な撮影仕様は適宜設計可能である。撮影手段2にはさらに、フードを備えた構成としてもよい。フードにより、不要な光をカットしてフレアやゴーストの発生を防止したり、カメラのレンズの表面の損傷や汚れ付着を防止したり、雨・雪・海水等によるレンズの水濡れを防止することができる。
【0019】
図3(a)、3(b)、3(c)は、本発明水中ドローン撮影用移動体を用いることによる作用を示す説明図である。このうち
図3(a)は水中ドローン撮影用移動体の使用状態、
図3(b)は水中ドローン撮影用移動体により水中ドローンの推定位置Xが取得された結果、
図3(c)は水中ドローンの測定対象の測定結果が地図上に関係づけて取得された結果を、それぞれ示す。
図3(a)に示すように、水中の水中ドローン110はその測定対象TGに対する測定を行い、その測定結果MRを得ているが、かかる水中ドローン110を本発明水中ドローン撮影用移動体13が撮影手段12によって撮影し、撮影記録を得る。
【0020】
図3(b)に示すように、この撮影記録、およびGPS情報取得手段により取得されるGPS情報ならびに水中ドローン撮影用移動体3自身の高度情報により、水中ドローン110の位置が推定される。そして、
図3(c)に示すように、水中ドローン110の測定対象TGの測定結果が、地図上に関係づけて取得される。つまり、水中ドローン撮影用移動体13に搭載されている撮影手段12で記録された画像や映像から水中ドローン110の位置を特定し、水中ドローン撮影用移動体13のGPS情報、高度情報と合わせて計算することにより、水中ドローン110の位置情報が求められる。
【0021】
さらに、計算により求めた水中ドローン110の位置情報と水中ドローン110に搭載されたセンサ類による測定結果MRを関連付けることで、地図上への重ね合わせや地理情報システム、3D空間への位置合わせなどのデータ分析と表示が可能となる。なお、水中ドローンの位置推定には、上記の各情報の他にも撮影手段12すなわちカメラの倍率など種々のパラメータを適宜用いるものとすることができる。本
図3で示した作用は、本発明の一つである水中ドローン位置推定システムの作用でもあるが、同システムについては追って説明を加える。本
図3(a)に示すように本発明水中ドローン撮影用移動体3としては、航空ドローンを好適に用いることができる。
【0022】
図4は、本発明水中ドローン撮影用移動体の仕様例を概念的に示す説明図である(その1)。図示するように本水中ドローン撮影用移動体23は、その撮影手段22を、水中での撮影が可能な仕様とすることができる。図に例示するように、航空ドローンを用いた水中ドローン撮影用移動体23において、棒やワイヤーなどの延長手段2Lで延長した水中用のカメラを撮影手段22として搭載し、飛行しながら撮影手段22のみ水中に沈めて撮影することで、水面の影響を除去することができ、水中ドローンの位置の計算精度を高めることができる。
【0023】
図4-2は、本発明水中ドローン撮影用移動体の仕様例を示す説明図である(その2)。図中(a)、(b)に示すように水中ドローン撮影用移動体23a、23bとしては、着水手段2Fa、2Fbを備えた着水型ドローンを用いることとしてもよい。着水型の航空ドローンを使用することで、水中ドローン210a、210bの位置の計算精度を高めたり、飛行時間の節約によって航空ドローンの稼働時間の延長を図ることができる。
【0024】
なお、図中(a)は水中カメラ、(b)は通常のカメラを用いる例であり、撮影精度の点では(a)のタイプがより好ましいが、(b)も着水によって撮影対象の水中ドローン210bとの距離は相当に短くできるため、相応の精度向上を期待できる。なお、図示しないが、GPS受信機を搭載したボート型ドローン(水上ドローン)や無人・有人の船舶、GPS受信機を搭載したラジコン(無線操縦による移動体)も、本発明水中ドローン撮影用移動体として使用可能である。
【0025】
図5は、本発明水中ドローン撮影システムの基本構成を概念的に示す説明図である。図示するように本水中ドローン撮影システム5は、これまで述べたいずれかの構成の水中ドローン撮影用移動体3を一または複数用い、さらに、水中ドローン撮影用移動体3を撮影対象である水中ドローン10撮影のために移動制御する操縦手段4を備えて構成されることを、主たる構成とする。
【0026】
かかる構成により本水中ドローン撮影システム5によれば、一または複数の水中ドローン撮影用移動体3は、操縦手段4により移動制御されて、水中ドローン撮影用移動体3を撮影対象である水中ドローン撮影のために移動せしめられ、水中ドローン位置推定のための、移動先の所定位置における水中ドローンの撮影がなされる。なお、本水中ドローン撮影システム5は、自動追従制御の方式としてもよい。すなわち、水中ドローンの位置を追いかけるよう水中ドローン撮影用移動体3を制御する方式である。
【0027】
本水中ドローン撮影用移動体3は、撮影対象である水中ドローンの位置に合わせて移動させ、撮影手段2の撮影範囲内に収めるようにするが、操縦手段4による移動制御は、できる限り常時、撮影対象水中ドローンの真上に制御するものであることが望ましい。水中から空中に光が出る際、光の屈折によって撮影精度が低下するが、これを極力を防止し、精度を高めるためである。水中ドローン撮影用移動体3として航空ドローンを用いる場合であれば、常時、水中ドローン上空で滞空し、真下方向をカメラで撮影できるようにする制御である。
【0028】
図6は、本発明水中ドローン位置推定システムの基本構成を概念的に示す説明図である。図示するように本水中ドローン位置推定システム8は、
図5により説明した水中ドローン撮影システム5と、演算装置6とからなるシステムである。演算装置6は、前出
図2に示した水中ドローン撮影用移動体3のGPS情報取得手段により取得されたGPS情報f1、水中ドローン撮影用移動体の高度情報f2、および水中ドローン撮影用移動体の撮影手段による水中ドローン撮影記録f3、の各情報に基づいて、水中ドローンの推定位置を演算する機能を有する。
【0029】
かかる構成により本水中ドローン位置推定システム8によれば、これを構成する水中ドローン撮影システム5によって撮影された情報等に基づいて、演算装置6において所定の演算処理がなされ、前出
図3で示したような水中ドローン位置推定、またはこれに加えて水中ドローンによる測定結果の地図上等への関係付けの結果が得られる。演算装置6における水中ドローン推定位置の演算処理は、GPS情報f1、水中ドローン撮影用移動体の高度情報f2、および水中ドローン撮影記録f3の各データに基づいてなされる。
【0030】
演算装置6における演算処理は、各データ取得と同時に、あるいは取得後速やかになされる方式とすることができる。一方、後処理される方式としても、あるいは両方式を併設したものであってもよい。また、図示するように本システム8には、演算装置6により得られた水中ドローン推定位置を表示する表示装置7を備えた構成とすることができる。これにより、リアルタイムに水中ドローンの位置を推定して表示することも可能である。
【0031】
なおまた、水中ドローン撮影用移動体3が水中ドローンを斜めから撮影した場合には、光の屈折現象を考慮して水中ドローンの位置を計算するアルゴリズムを備えた演算装置6としてもよい。
【0032】
図7は、本発明水中ドローン位置推定システムによる水中ドローン位置推定の原理を示す説明図である。図示するように、本水中ドローン位置推定システム8の演算装置6における演算処理では、下記<S>列挙の少なくともいずれか一の補助情報を用いることとしてもよい。
<S>
水中ドローンが存在する水域の水面標高sf4、
水中ドローンの水深sf5、
地上設置の測定装置による水中ドローン撮影用移動体の高度sf6
【0033】
これらの補助情報を用いることによって、水中ドローンの位置情報の精度を高めることができる。このうち、補助情報sf6の取得には、たとえば、地上に設けたトータルステーション等の測定器を用いることができる。また、水中ドローンの水深から鉛直方向の距離を算出するなど、ここに列挙した以外の情報・パラメータを適宜用いて演算処理を行う構成とすることができる。
【0034】
図8は、本発明水中ドローン位置推定方法の構成を示すフロー図である。図示するように本水中ドローン位置推定方法は、以上述べたいずれかの構成の水中ドローン位置推定システム8を用い、水中ドローン撮影用移動体を撮影対象水中ドローン撮影可能な位置に移動させる移動過程P10、対象の水中ドローンの撮影を行う撮影過程P20、および所定の情報に基づき前記演算装置によって対象水中ドローンの推定位置を得る演算過程P30により構成される。
【0035】
かかる構成の本水中ドローン位置推定方法によれば、水中ドローン位置推定システム8を用いて、まず移動過程P10において、水中ドローン撮影用移動体が撮影対象の水中ドローン撮影可能な位置に移動せしめられ、これにより所定の移動が完了すると、次に撮影過程P20において対象の水中ドローンの撮影が行われ、ここで得られた所定の諸情報に基づき、演算過程P30において、演算装置による対象水中ドローンの推定位置を得る演算処理がなされる。
【0036】
本方法を連続的に行うことで、水中ドローンに搭載されたセンサ類の測定結果と推定した位置情報を関連付けることができ、測定結果を地図上に重ね合わせて表示したり、地理情報システムや3D空間への位置合わせなどのデータ分析と表示を行うことができる。
【0037】
図9は、複数の水中ドローン撮影用移動体を用いた本発明水中ドローン位置推定方法を示す説明図である。ここでは水中ドローン撮影用移動体として航空ドローンを用いる例を示している。図示するように、複数の水中ドローン撮影用移動体43a、43b、43c、・・・を使用して水中ドローン410の位置推定の計算精度を高めることができる。この場合、用いる水中ドローン撮影用移動体43a等の数は限定されない。
【0038】
なお、複数、単体いずれの場合であっても、水中ドローン撮影用移動体として航空ドローンを用いる場合は、低空で飛行させることで、水中ドローンの位置の計算精度を向上させることができる。また、本発明水中ドローン位置推定方法では、
図8で示したフロー中の撮影過程P20をどのような条件で行うかが重要である。かかる条件としては、時間帯や気象条件なども考慮対象だが、たとえば、月の出ていない夜間は、撮影に最適な条件の一つと考えられる。
【0039】
図10は、本発明自己位置呈示仕様水中ドローンの基本構成および仕様例を概念的に示す説明図である。図中の(o)に示すように本発明自己位置呈示仕様水中ドローン510は、既に説明したいずれかの構成の水中ドローン撮影用移動体3等による撮影に適した仕様、すなわち被写体仕様59を備えていることを、主たる構成とする。
【0040】
かかる構成により本自己位置呈示仕様水中ドローン510は、備えている被写体仕様59が、水中ドローン撮影用移動体3等による撮影に適した仕様であるため、水中ドローン撮影用移動体3等は、水中ドローン510をより良好な条件で撮影することができる。したがって水中ドローン撮影用移動体3等はより良好な水中ドローン撮影記録を得ることができ、より良好な水中ドローン位置推定結果を得ることができる。
【0041】
図10中の(a)に示すように自己位置呈示仕様水中ドローン510Aは、被写体仕様59Aとして、水面方向に光を照射する投光装置を備える構成とすることができる。たとえば、直進性の高い光を投光できるLEDライトやレーザーを光源とする投光装置59Aを、好適に用いることができる。投光装置59Aは、上方に位置する水中ドローン撮影用移動体3等の撮影手段2等が照射された光を確実に受光して自己位置呈示仕様水中ドローン510Aを良好に撮影できるよう、常に上空方向を向くように構成、設置されていることが望ましい。
【0042】
なお、投光装置59Aにより投光(照射)される光として、混濁物質を含む水中での光の減衰率を考慮して、最適な波長を選択し、設定するものとすることができる。たとえば、不純物の少ない水中に自己位置呈示仕様水中ドローンがある場合は、より適した波長として、黄色や赤色、赤外線など長波長の光源を用いるものとすることができる。一方、夜間の場合であれば、光源の波長については特に限定しなくてもよい。
【0043】
図10中の(b)に示すように自己位置呈示仕様水中ドローン510Bは、被写体仕様59Bとして、水面方向に向けられた光沢面を備える構成とすることができる。光沢面としては鏡面を好適に用いることができるが、これには限定されず、水中ドローン撮影用移動体3等の撮影手段2等により撮影しやすいような光沢を放つ面であればよい。
【0044】
なお、本発明自己位置呈示仕様水中ドローン510の被写体仕様59の具体的構成は、(a)や(b)に例示した構成に限定されない。たとえばカラーリング、すなわちカメラに写りやすい色による彩色や、反射率の高い外装など、適宜に構成し得る。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の水中ドローン撮影用移動体、水中ドローン撮影システム、水中ドローン位置推定システム、水中ドローン位置推定方法、および自己位置呈示仕様水中ドローンによれば、水中ドローンの位置を航空ドローンを使って計測することができ、従来のような水中用測位製品を使用する際と比較して、低コストで水中ドローンの位置を推定することができる。したがって、ドローン製造・使用分野、水中測定技術分野、および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0046】
1…GPS情報取得手段
2、12、22、22a、22b…撮影手段
2Fa、2Fb…着水手段
2L…延長手段
3、13、23、23a、23b、43a、43b、43c…水中ドローン撮影用移動体
4…操縦手段
5…水中ドローン撮影システム
6…演算装置
7…表示装置
8…水中ドローン位置推定システム
10、110、210、210a、210b、410…水中ドローン
59、59A、59B…被写体仕様
510、510A、510B…自己位置呈示仕様水中ドローン
A…気圏
f1…GPS情報
f2…水中ドローン撮影用移動体の高度情報
f3…水中ドローン撮影記録
MR…測定結果
P10…移動過程
P20…撮影過程
P30…演算過程
sf4…補助情報(水面標高)
sf5…補助情報(水中ドローンの水深)
sf6…補助情報(地上設置の測定装置による水中ドローン撮影用移動体の高度)
TG…水中ドローンの測定対象
X…水中ドローンの位置
W…水圏