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特開2024-135541アッパーサポート及びアッパーサポートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135541
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】アッパーサポート及びアッパーサポートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/54 20060101AFI20240927BHJP
   B60G 15/06 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F16F9/54
B60G15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046286
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】松本 友樹
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 裕太
(72)【発明者】
【氏名】岩井 勉
【テーマコード(参考)】
3D301
3J069
【Fターム(参考)】
3D301AA68
3D301AA69
3D301AA76
3D301AA85
3D301CA09
3D301DA86
3D301DB11
3D301DB17
3J069AA50
3J069CC35
3J069DD44
(57)【要約】
【課題】上下のブラケット金具におけるフランジ状部の重ね合わせ面間の隙間を通じての内部への水の浸入を防止することのできる、新規なアッパーサポートを提供する。
【解決手段】アッパーサポート10であって、ブラケット18が、互いに重ね合わされるフランジ状部46,48を備えた上ブラケット金具50と下ブラケット金具52から構成されており、各フランジ状部46,48の重ね合わせ面70,81は周方向の複数箇所で相互に溶接固定されており、各フランジ状部46,48の重ね合わせ部分には複数本の固定ボルト100が周方向で相互に離隔して設けられており、上下のブラケット金具50,52のフランジ状部46,48の重ね合わせ部分の外周縁部には接着剤106が塗布されており、上下のブラケット金具50,52の各フランジ状部46,48の重ね合わせ面70,81間の外周端が固定ボルト100の外周側領域において接着剤106で封止されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンション部材が取り付けられるサポート本体が、車体側に取り付けられるブラケットの中央部分に組み付けられたアッパーサポートであって、
前記ブラケットが、互いに重ね合わされるフランジ状部を備えた上ブラケット金具と下ブラケット金具から構成されており、
かかる上下のブラケット金具の各該フランジ状部の重ね合わせ面は周方向の複数箇所で相互に溶接固定されており、
該上下のブラケット金具の各該フランジ状部の重ね合わせ部分には該ブラケットを前記車体側に取り付ける複数本の固定ボルトが周方向で相互に離隔して設けられており、
該上下のブラケット金具の各該フランジ状部の重ね合わせ部分の外周縁部には接着剤が塗布されており、該上下のブラケット金具の各該フランジ状部の重ね合わせ面間の外周端が前記固定ボルトの外周側領域において該接着剤で封止されているアッパーサポート。
【請求項2】
前記上下のブラケット金具の各前記フランジ状部の重ね合わせ部分の外周縁部には全周にわたって連続して前記接着剤が塗布されて、該上下のブラケット金具の各該フランジ状部の重ね合わせ面間の外周端が全周にわたって該接着剤で封止されている請求項1に記載のアッパーサポート。
【請求項3】
前記上ブラケット金具の前記フランジ状部には、周方向の複数領域において下方に下がって広がる控え領域があり、該控え領域において、前記上下のブラケット金具の各前記フランジ状部の重ね合わせ面が相互に溶接固定されている請求項1又は2に記載のアッパーサポート。
【請求項4】
前記上ブラケット金具の前記フランジ状部には、前記控え領域を周方向に外れた部分で該控え領域よりも上方で広がる取付領域があり、該取付領域に前記固定ボルトが設けられている請求項3に記載のアッパーサポート。
【請求項5】
前記上下のブラケット金具の各前記フランジ状部の重ね合わせ部分における前記溶接固定が、プロジェクション溶接とされている請求項1又は2に記載のアッパーサポート。
【請求項6】
サスペンション部材が取り付けられるサポート本体が、車体側に取り付けられるブラケットの中央部分に組み付けられたアッパーサポートの製造方法であって、
前記サポート本体を準備する工程と、
前記ブラケットを構成する、互いに重ね合わされるフランジ状部を備えた上ブラケット金具と下ブラケット金具を準備する工程と、
前記サポート本体を上下両側から前記上ブラケット金具と前記下ブラケット金具で挟んで、かかる上下のブラケット金具の中央部分に形成される筒状のサポート収容部内に前記サポート本体を組み付けて、かかる上下のブラケット金具における各該フランジ状部を互いに重ね合わせ状態で位置合わせする工程と、
互いに重ね合わせ状態で位置合わせした前記上下のブラケット金具における各該フランジ状部を周方向の複数箇所で相互に溶接固定する工程と、
各該フランジ状部において相互に溶接固定された前記上下のブラケット金具に対して、外表面に塗装処理する工程と、
互いに重ね合わせ状態で位置合わせした前記上下のブラケット金具において、各該フランジ状部に対して車体側への取付用の固定ボルトをかしめ固定する工程と、
互いに重ね合わせ状態で位置合わせした前記上下のブラケット金具において、各該フランジ状部の重ね合わせ部分の外周縁部に接着剤を塗布して、かかる上下のブラケット金具の各該フランジ状部の重ね合わせ面間の外周端を該接着剤で封止する工程と
を、含むアッパーサポートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両のサスペンションを構成するショックアブソーバのピストンロッドを車両ボデーに防振連結するサスペンション用のアッパーサポート及びアッパーサポートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アッパーサポートは、例えば特開2001-280400号公報(特許文献1)に記載のように基本的な構造が知られている。このようなアッパーサポートは、フランジ状部において車両側のボデー部材に重ね合わされて、周方向の複数箇所において固定ボルトで締付固定されて装着されるようになっている。
【0003】
一方、アッパーサポートは、車両走行状態で車輪が撥ね上げる水をかぶることもあり、冠水路などではより多くの水に晒される可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-280400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特にアッパーサポートにおける車両側への取付部分は上下のフランジ状部が重ね合わされた構造とされており、周方向で複数箇所において固定ボルトで締め付けられて車体側へ固定されるようになっている。それ故、例えば固定ボルトの締め付け力による上下のフランジ状部の歪みなどによって上下のフランジ状部の重ね合わせ面間に隙間が発生するおそれもある。また、上下のフランジ状部には、車体側への取付面の構造上の理由や剛性上の補強目的などによって凹凸が付されることもあるが、金属加工上の理由などから上下のフランジ状部における凹凸間に隙間が発生しやすい事情もある。このような避けがたい隙間を通じての水の浸入は、未だ検討の余地があり、浸入した水がアッパーサポートの内部に滞留しやすいことも相俟って、車両の特殊な使用状況までも想定すると、アッパーサポートを構成する上下ブラケット金具について更なる改善の余地があった。
【0006】
本開示の解決課題は、上下のブラケット金具におけるフランジ状部の重ね合わせ面間の隙間を通じての内部への水の浸入を防止することのできる、新規なアッパーサポート及びアッパーサポートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示におけるアッパーサポートは、サスペンション部材が取り付けられるサポート本体が、車体側に取り付けられるブラケットの中央部分に組み付けられたアッパーサポートであって、前記ブラケットが、互いに重ね合わされるフランジ状部を備えた上ブラケット金具と下ブラケット金具から構成されており、かかる上下のブラケット金具の各該フランジ状部の重ね合わせ面は周方向の複数箇所で相互に溶接固定されており、該上下のブラケット金具の各該フランジ状部の重ね合わせ部分には該ブラケットを前記車体側に取り付ける複数本の固定ボルトが周方向で相互に離隔して設けられており、該上下のブラケット金具の各該フランジ状部の重ね合わせ部分の外周縁部には接着剤が塗布されており、該上下のブラケット金具の各該フランジ状部の重ね合わせ面間の外周端が前記固定ボルトの外周側領域において該接着剤で封止されているものである。
【0008】
本開示におけるアッパーサポートの製造方法は、サスペンション部材が取り付けられるサポート本体が、車体側に取り付けられるブラケットの中央部分に組み付けられたアッパーサポートの製造方法であって、前記サポート本体を準備する工程と、前記ブラケットを構成する、互いに重ね合わされるフランジ状部を備えた上ブラケット金具と下ブラケット金具を準備する工程と、前記サポート本体を上下両側から前記上ブラケット金具と前記下ブラケット金具で挟んで、かかる上下のブラケット金具の中央部分に形成される筒状のサポート収容部内に前記サポート本体を組み付けて、かかる上下のブラケット金具における各該フランジ状部を互いに重ね合わせ状態で位置合わせする工程と、互いに重ね合わせ状態で位置合わせした前記上下のブラケット金具における各該フランジ状部を周方向の複数箇所で相互に溶接固定する工程と、各該フランジ状部において相互に溶接固定された前記上下のブラケット金具に対して、外表面に塗装処理する工程と、互いに重ね合わせ状態で位置合わせした前記上下のブラケット金具において、各該フランジ状部に対して車体側への取付用の固定ボルトをかしめ固定する工程と、互いに重ね合わせ状態で位置合わせした前記上下のブラケット金具において、各該フランジ状部の重ね合わせ部分の外周縁部に接着剤を塗布して、かかる上下のブラケット金具の各該フランジ状部の重ね合わせ面間の外周端を該接着剤で封止する工程とを、含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、上下のブラケット金具におけるフランジ状部の重ね合わせ面間の隙間を通じての内部への水の浸入を防止することのできるアッパーサポートを提供することができる。
【0010】
また、本開示の方法によれば、上記の効果を発揮することのできるアッパーサポートを効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の実施形態1に係るアッパーサポートを示す斜視図である。
図2図2は、図1に示されたアッパーサポートにおける底面図である。
図3図3は、図2におけるIII-III断面図である。
図4図4は、図1に示されたアッパーサポートにおける分解斜視図である。
図5図5は、図1に示されたアッパーサポートを構成する上ブラケット金具を示す底面図である。
図6図6は、図1に示されたアッパーサポートを構成する下ブラケット金具を示す平面図である。
図7図7は、本開示の実施形態2に係るアッパーサポートを示す縦断面図であって、図3に対応する図である。
図8図8は、本開示の実施形態3に係るアッパーサポートを示す縦断面図であって、図3に対応する図である。
図9図9は、本開示の実施形態4に係るアッパーサポートを示す縦断面図であって、図3に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のアッパーサポートは、
(1)サスペンション部材が取り付けられるサポート本体が、車体側に取り付けられるブラケットの中央部分に組み付けられたアッパーサポートであって、前記ブラケットが、互いに重ね合わされるフランジ状部を備えた上ブラケット金具と下ブラケット金具から構成されており、かかる上下のブラケット金具の各該フランジ状部の重ね合わせ面は周方向の複数箇所で相互に溶接固定されており、該上下のブラケット金具の各該フランジ状部の重ね合わせ部分には該ブラケットを前記車体側に取り付ける複数本の固定ボルトが周方向で相互に離隔して設けられており、該上下のブラケット金具の各該フランジ状部の重ね合わせ部分の外周縁部には接着剤が塗布されており、該上下のブラケット金具の各該フランジ状部の重ね合わせ面間の外周端が前記固定ボルトの外周側領域において該接着剤で封止されているものである。
【0013】
本態様によれば、上下のブラケット金具の各フランジ状部の重ね合わせ部分の外周縁部において、接着剤を塗布して、上下ブラケット金具の各フランジ状部の重ね合わせ面の外周側への開口(特に隙間の発生リスクが大きい、上述の如き固定ボルトの外周側領域)を当該接着剤によって封止した。これにより、上下のブラケット金具における各フランジ状部の重ね合わせ面間の隙間を通じての、アッパーサポート内部への水の浸入が防止され得る。
【0014】
(2)上記(1)において、前記上下のブラケット金具の各前記フランジ状部の重ね合わせ部分の外周縁部には全周にわたって連続して前記接着剤が塗布されて、該上下のブラケット金具の各該フランジ状部の重ね合わせ面間の外周端が全周にわたって該接着剤で封止されていることが好ましい。
【0015】
本態様によれば、上ブラケット金具におけるフランジ状部と下ブラケット金具におけるフランジ状部との間からの水の浸入がより確実に防止され得る。
【0016】
(3)上記(1)または(2)において、前記上ブラケット金具の前記フランジ状部には、周方向の複数領域において下方に下がって広がる控え領域があり、該控え領域において、前記上下のブラケット金具の各前記フランジ状部の重ね合わせ面が相互に溶接固定されていることが好ましい。
【0017】
本態様によれば、上ブラケット金具のフランジ状部において下ブラケット金具のフランジ状部と重ね合わされて溶接される控え領域が下方に下がって設けられることから、下ブラケット金具のフランジ状部との隙間がより小さくされた状態で溶接され得て、両フランジ状部間の隙間を通じた水の浸入がより確実に防止され得る。
【0018】
(4)上記(3)において、前記上ブラケット金具の前記フランジ状部には、前記控え領域を周方向に外れた部分で該控え領域よりも上方で広がる取付領域があり、該取付領域に前記固定ボルトが設けられていることが好ましい。
【0019】
本態様によれば、取付領域が周方向で相互に離隔して複数設けられることから、アッパーサポートが車両に装着された状態において車両ボデーとの重ね合わせ面積を小さくすることができて、走行時の振動に伴ってアッパーサポートと車両ボデーとが打ち当たることを回避するか、または打ち当たり時の異音を低減することができる。
【0020】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つにおいて、前記上下のブラケット金具の各前記フランジ状部の重ね合わせ部分における前記溶接固定が、プロジェクション溶接とされていることが好ましい。
【0021】
本態様によれば、例えばスポット溶接に比べて電極からの熱や圧力をプロジェクション溶接用の突起に対して集中的に及ぼすことができて、上下のブラケット金具が比較的厚肉とされる場合でも安定して溶接を行うことができる。
【0022】
本開示のアッパーサポートの製造方法は、
(6)サスペンション部材が取り付けられるサポート本体が、車体側に取り付けられるブラケットの中央部分に組み付けられたアッパーサポートの製造方法であって、前記サポート本体を準備する工程と、前記ブラケットを構成する、互いに重ね合わされるフランジ状部を備えた上ブラケット金具と下ブラケット金具を準備する工程と、前記サポート本体を上下両側から前記上ブラケット金具と前記下ブラケット金具で挟んで、かかる上下のブラケット金具の中央部分に形成される筒状のサポート収容部内に前記サポート本体を組み付けて、かかる上下のブラケット金具における各該フランジ状部を互いに重ね合わせ状態で位置合わせする工程と、互いに重ね合わせ状態で位置合わせした前記上下のブラケット金具における各該フランジ状部を周方向の複数箇所で相互に溶接固定する工程と、各該フランジ状部において相互に溶接固定された前記上下のブラケット金具に対して、外表面に塗装処理する工程と、互いに重ね合わせ状態で位置合わせした前記上下のブラケット金具において、各該フランジ状部に対して車体側への取付用の固定ボルトをかしめ固定する工程と、互いに重ね合わせ状態で位置合わせした前記上下のブラケット金具において、各該フランジ状部の重ね合わせ部分の外周縁部に接着剤を塗布して、かかる上下のブラケット金具の各該フランジ状部の重ね合わせ面間の外周端を該接着剤で封止する工程とを、含むものである。
【0023】
本態様によれば、上記(1)に記載の効果を発揮し得るアッパーサポートを効率的に製造することができる。なお、本態様において記載の各工程は、実施される順序が限定されるものではなく、任意の適切な順序により実施され得る。
【0024】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示のアッパーサポートの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0025】
<実施形態1>
以下、本開示の実施形態1のアッパーサポート10について、図1から図6を用いて説明する。このアッパーサポート10は、サスペンション部材12が取り付けられるサポート本体14が、車体側の車両ボデー16に取り付けられるブラケット18の中央部分に組み付けられた構造を有している。なお、アッパーサポート10が車両ボデー16に取り付けられる際の向きは限定されるものではないが、以下の説明では、原則として、上下方向とは図3中の上下方向をいう。
【0026】
<サスペンション部材12>
サポート本体14に取り付けられるサスペンション部材12としては、例えば公知のショックアブソーバが採用され得て、サポート本体14における後述する内側部材26に固定されるピストンロッド20を備えている。ピストンロッド20は、内側部材26における中心孔32に挿通されてナット22が締結されることにより、内側部材26に固定される。また、サスペンション部材12は、後述する下ブラケット金具52における保持金具94に圧入されるバウンドストッパ24を備えている。
【0027】
<サポート本体14>
サポート本体14は、内側部材26と外側部材28とが本体ゴム弾性体30によって弾性連結されることで構成されている。
【0028】
内側部材26は、金属等で形成された硬質の部材であって、全体として略円環板形状を有しているとともに、径方向中央部分が下面において下側へ突出して部分的に厚肉とされている。この内側部材26の径方向中央部分には、上下に貫通する中心孔32が形成されている。
【0029】
外側部材28は、金属等で形成された硬質の部材であって、全体として略円筒形状を有しており、内径寸法が内側部材26の外径寸法よりも大きくされている。
【0030】
そして、外側部材28の内周側に内側部材26が同軸的に配設されて、これら内側部材26と外側部材28とが本体ゴム弾性体30によって弾性連結されている。本体ゴム弾性体30は、全体として略円環状とされて、内周側が内側部材26の外周部分に加硫接着されているとともに、外周面が外側部材28の内周面に加硫接着されている。本実施形態では、本体ゴム弾性体30が、内側部材26と外側部材28とを備える一体加硫成形品として形成されている。
【0031】
本体ゴム弾性体30における内周側の部分は、内側部材26の上方に位置する上部ストッパゴム36と、内側部材26の下方に位置する下部ストッパゴム38とを備えている。これら上部ストッパゴム36と下部ストッパゴム38とは、本体ゴム弾性体30において、内側部材26の外周面を覆う部分により接続されている。上部ストッパゴム36と下部ストッパゴム38は何れも略円筒形状であり、内側部材26の外周端部においてそれぞれ上下方向外方に突出している。本実施形態において、上部ストッパゴム36と下部ストッパゴム38とは、それぞれ径方向寸法が上下方向外方になるにつれて次第に小さくされている。
【0032】
また、本体ゴム弾性体30の外周端部には、被覆ゴム層40が設けられている。被覆ゴム層40は、全体として比較的薄肉の円筒形状であり、外側部材28の内周面の略全面に固着されている。上述の上部ストッパゴム36及び下部ストッパゴム38と被覆ゴム層40とは径方向で離隔しており、本体ゴム弾性体30において上部ストッパゴム36及び下部ストッパゴム38と被覆ゴム層40との径方向間には、周方向に延びる環状の凹溝42,44が上下方向外方に開口して形成されている。これら凹溝42,44の深さ寸法や径方向位置等は、要求される本体ゴム弾性体30のばね特性等に応じて適切に設定され得る。
【0033】
<ブラケット18>
ブラケット18は、互いに重ね合わされるフランジ状部(上フランジ状部46および下フランジ状部48)を備えた上ブラケット金具50と下ブラケット金具52とから構成されている。
【0034】
<上ブラケット金具50>
上ブラケット金具50は、全体として上下逆向きの鍔付皿形状であって、図2図5にも示されるように、平面視において略三角形状とされている。この上ブラケット金具50の中央部分には上下に延びる上側筒状部54が設けられているとともに、上側筒状部54の上端部は内周側へ屈曲されて略円環板形状の上側壁部56が構成されている。上側壁部56の内周側には上下に貫通する上側挿通孔58が形成されている。本実施形態では、上側壁部56の内周面から内周側に突出する突出片60が設けられており、これにより、上側挿通孔58の内径寸法が周方向で変化している。特に、本実施形態では、この突出片60が周方向の4箇所に形成されており、各突出片60が周方向で相互に離隔して略等間隔に形成されている。
【0035】
そして、上側筒状部54の下端部には、外周側へ環状に突出する上フランジ状部46が一体形成されている。本実施形態では、上フランジ状部46が平面視において略角丸の正三角形状とされている。特に、本実施形態では、上フランジ状部46が軸直角方向に対して傾斜して広がっており、三角形状のうちの1つの角部である図3中の右側部分が、残り2つの角部である図3中の左側部分に対して上方に位置している。また、この上フランジ状部46の外周縁部には、上下のブラケット金具50,52が相互に重ね合わされた状態において、下フランジ状部48の外周端縁よりも外周に延びて下方に向けて湾曲した覆い部62が一体形成されている。
【0036】
さらに、上フランジ状部46は、上面63において、周方向の複数領域において下方に下がって広がる控え領域64を有しているとともに、控え領域64を周方向に外れた部分で控え領域64よりも上方で広がる取付領域66を有している。
【0037】
具体的には、上側筒状部54の下端部における周方向の複数箇所から、取付領域66が径方向外方に突出している。本実施形態では、周方向の3箇所において取付領域66が設けられており、上側筒状部54の下端から略正三角形状とされた上フランジ状部46の各角部に向かって各取付領域66が延び出している。これにより、各取付領域66は、周方向で相互に離隔して略等間隔に設けられている。各取付領域66は、所定の周方向寸法(幅寸法)をもって形成されており、各取付領域66は、平面視において内周側に比べて外周側の方が大きな領域をもって形成されている。そして、各取付領域66において大きな領域をもって形成される外周部分には、上フランジ状部46を厚さ方向で貫通するボルト挿通孔68が形成されている。
【0038】
また、各控え領域64は、各取付領域66の周方向間に設けられており、周方向で隣接する取付領域66,66を接続している。すなわち、各控え領域64は、上フランジ状部46における周方向の3箇所において、それぞれ所定の周方向寸法をもって形成されている。本実施形態では、後述するように、上ブラケット金具50が、1枚の金属平板をプレス加工することによって構成されており、上ブラケット金具50は全体にわたって略一定の厚さ寸法を有している。これにより、上フランジ状部46の下面70において各取付領域66と対応する部分は各控え領域64と対応する部分よりも上方に位置しており、各取付領域66の形成位置には下方に開口して径方向外方に延びる凹状領域72が形成されている。要するに、凹状領域72は、上フランジ状部46の下面70において周方向の3箇所に形成されており、各凹状領域72が周方向で相互に離隔して略等間隔に形成されている。また、周方向の3箇所に設けられた控え領域64のうちの2つには、上フランジ状部46を厚さ方向で貫通する貫通孔74が形成されており、各貫通孔74には、上ブラケット金具50と下ブラケット金具52とを固定する際に利用される図示しない位置決めピンが挿通されるようになっている。
【0039】
<下ブラケット金具52>
下ブラケット金具52は、全体として鍔付皿形状であって、図2図6にも示されるように、平面視において略三角形状とされている。下ブラケット金具52の中央部分には上下に延びる下側筒状部76が設けられているとともに、下側筒状部76の下端部は内周側へ屈曲されて略円環板形状の下側壁部78が構成されている。下側壁部78の内周側には上下に貫通する下側挿通孔80が形成されている。
【0040】
そして、下側筒状部76の上端部には、外周側へ環状に突出する下フランジ状部48が一体形成されている。本実施形態では、下フランジ状部48が平面視において上フランジ状部46と相似形状であり、下フランジ状部48は、上フランジ状部46よりも小さい大きさで形成されている。この下フランジ状部48は、軸直角方向に対して上フランジ状部46と同方向に傾斜して広がっている。
【0041】
特に、本実施形態では、平面視で略三角形状とされた下フランジ状部48の上面81における各角部において他の部分よりも上方に位置するボルト固定領域82が設けられているとともに、ボルト固定領域82を周方向で外れた部分でボルト固定領域82よりも下方に位置する溶接領域84が設けられている。要するに、下フランジ状部48において、上フランジ状部46における各取付領域66と対応する位置に各ボルト固定領域82が設けられているとともに、各控え領域64と対応する位置に各溶接領域84が設けられている。これにより、下フランジ状部48における周方向の3箇所に各ボルト固定領域82が形成されているとともに、各ボルト固定領域82の周方向間の3箇所に各溶接領域84が形成されている。各ボルト固定領域82は平面視において所定の大きさを有しており、各ボルト固定領域82の略中央には下フランジ状部48を厚さ方向で貫通するボルト挿通孔86が形成されている。そして、3箇所の各溶接領域84のうちの2箇所において、上フランジ状部46における各貫通孔74と対応する位置には貫通孔87が形成されており、各貫通孔87には上ブラケット金具50と下ブラケット金具52とを固定する際に利用される図示しない位置決めピンが挿通されるようになっている。
【0042】
また、本実施形態では、後述するように、下ブラケット金具52が、1枚の金属平板をプレス加工することによって構成されており、下ブラケット金具52は全体にわたって略一定の厚さ寸法を有している。これにより、下フランジ状部48の下面88において各ボルト固定領域82と対応する部分は各溶接領域84と対応する部分よりも上方に位置しており、各ボルト固定領域82の形成位置には下方に開口する凹所90が形成されている。要するに、凹所90は、下フランジ状部48の下面88において周方向の3箇所に形成されており、各凹所90が周方向で相互に離隔して略等間隔に形成されている。
【0043】
ここで、上ブラケット金具50と下ブラケット金具52とを固定する前における下ブラケット金具52の単品状態において、下フランジ状部48における上面81の各溶接領域84には、プロジェクション溶接用の突起92が上方に突出して形成されている。これら各突起92は、下フランジ状部48に対してプレス加工を行うことにより形成されており、図4図6に示されるように上面81において各突起92が半球形状をもって形成されている。また、本実施形態では、各溶接領域84においてそれぞれ2つの突起92が周方向で相互に離隔して形成されており、下ブラケット金具52において合計で6つの突起92が周方向で相互に離隔して形成されている。
【0044】
さらに、下ブラケット金具52において、下側壁部78の下面には保持金具94が固定されている。保持金具94は、略筒状の保持部96を有しており、前述のようにバウンドストッパ24が圧入されるようになっている。本実施形態では、保持金具94が、下ブラケット金具52における下側壁部78に対してプロジェクション溶接により固定されるようになっている。
【0045】
上述のような形状とされた上ブラケット金具50及び下ブラケット金具52は、それぞれ1枚の金属平板をプレス加工することにより形成されており、本実施形態ではそれぞれ所定の厚さ寸法を有する鋼板により構成されている。そして、これら上ブラケット金具50や下ブラケット金具52には、防錆や後述する塗装の保持等を目的として、1つまたは複数の表面処理が施されてもよい。本実施形態では、上下のブラケット金具50,52の全面にわたってブラスト処理が行われているとともに、このブラスト処理の後に、化成処理が行われて化成皮膜が形成されている。具体的な化成処理の方法は限定されるものではないが、リン酸塩処理、クロメート処理、黒染め処理、不動態化処理等、公知の化成処理の方法が採用され得る。
【0046】
特に、本実施形態では、アッパーサポート10の組立状態において、外部に露出する外表面(上ブラケット金具50の上面および下ブラケット金具52の下面)の全面において、防錆を目的としての塗装処理が施されている。なお、各フランジ状部46,48の各重ね合わせ面(下面70および上面81)に上述のようなブラスト処理や化成処理、または公知のメッキ処理等が行われる場合、後述するようにプロジェクション溶接やスポット溶接が行われ得るように、各処理後の各重ね合わせ面(下面70および上面81)が良好な導電性能を有していることが好ましい。
【0047】
そして、これら上ブラケット金具50と下ブラケット金具52とが、上フランジ状部46と下フランジ状部48において重ね合わされることでブラケット18が構成されている。これにより、上ブラケット金具50と下ブラケット金具52のそれぞれの径方向中央部分に設けられた上側筒状部54と下側筒状部76とにより、ブラケット18においてサポート本体14が収容される筒状のサポート収容部98が形成されるようになっている。本実施形態では、上側筒状部54に比して下側筒状部76の方が径寸法が大きくされており、上側筒状部54の開口部が下側筒状部76により覆われることでサポート収容部98が形成されている。特に、本実施形態では、上側筒状部54に対してサポート本体14が圧入されることで、サポート収容部98にサポート本体14が収容された状態でサポート本体14がブラケット18に対して固定され得る。かかるサポート収容部98へのサポート本体14の収容状態では、サポート本体14における上部ストッパゴム36が上側壁部56に密着しているとともに、下部ストッパゴム38が下側壁部78に密着しており、上側挿通孔58や下側挿通孔80を通じてのブラケット18内部への水の浸入が防止されている。
【0048】
また、下フランジ状部48は上フランジ状部46よりも小さい大きさで形成されており、下フランジ状部48は、上フランジ状部46における覆い部62の内周側で上フランジ状部46に重ね合わされている。かかる上フランジ状部46と下フランジ状部48との重ね合わせは前述のように、各貫通孔74,87に挿通される位置決めピンを利用して行われて、上フランジ状部46における各ボルト挿通孔68と下フランジ状部48における各ボルト挿通孔86とが相互に位置合わせされて連通するようになっている。
【0049】
<固定ボルト100>
相互に連通された各ボルト挿通孔68と各ボルト挿通孔86には、固定ボルト100が挿通される。本実施形態では、各固定ボルト100がかしめ用のローレットボルトにより構成されており、各固定ボルト100の軸部102において、周方向で連続する凹凸が形成されている。
【0050】
各固定ボルト100は、各ボルト挿通孔68および各ボルト挿通孔86に対して下方から挿通されている。本実施形態では、各固定ボルト100の軸部102に設けられたローレットが上フランジ状部46における各ボルト挿通孔68の内周面に圧入されているとともに、各ボルト挿通孔68から上方に突出するローレットの上端部を潰してかしめ加工を行うことで、上ブラケット金具50と下ブラケット金具52とが相互に固定されている。これにより、上下のブラケット金具50,52の各フランジ状部46,48の重ね合わせ部分には、ブラケット18を車体側の車両ボデー16に取り付ける複数本の各固定ボルト100が周方向で相互に離隔して設けられている。
【0051】
このように、各固定ボルト100により上ブラケット金具50と下ブラケット金具52とが固定された状態において、各固定ボルト100の先端は、上ブラケット金具50から上方に突出しており、アッパーサポート10と車両ボデー16との固定に供されるようになっている。一方、各固定ボルト100の頭部104は、下フランジ状部48の下面88に設けられた各凹所90に収容されるようになっている。
【0052】
<接着剤106>
上述のブラケット18において、上フランジ状部46における覆い部62の内周側には接着剤106が塗布されている。これにより、覆い部62と下ブラケット金具52の下フランジ状部48の外周端との間が各固定ボルト100の外周側領域(例えば、凹所90の周囲の領域)において接着剤106で封止されている。要するに、下フランジ状部48の外周端は覆い部62よりも内周側に位置していることから、上下のフランジ状部46,48の重ね合わせ部分の外周縁部に接着剤106が塗布されて、各フランジ状部46,48の重ね合わせ面(下面70および上面81)間の外周端が、各固定ボルト100の外周側領域において接着剤106で封止されている。特に、本実施形態では、覆い部62の内周面と下フランジ状部48の外周面とが所定の径方向幅寸法を有する凹溝108を隔てて対向しており、かかる凹溝108が周方向の全周にわたって連続して形成されている。そして、当該凹溝108の全周にわたって接着剤106が塗布されている。これにより、覆い部62と下ブラケット金具52の下フランジ状部48の外周端との間が全周にわたって接着剤106で封止されている。要するに、上下のフランジ状部46,48の重ね合わせ部分の外周縁部において全周にわたって連続して接着剤106が塗布されている。そして、この接着剤106により、各フランジ状部46,48の重ね合わせ面間(下面70および上面81)間の外周端が全周にわたって封止されている。なお、図2,3および後述する実施形態2から実施形態4を示す図7から図9中において、接着剤106を灰色に着色して示す。
【0053】
<アッパーサポート10の製造方法>
以下、本実施形態のアッパーサポート10の製造方法の具体的な一例について説明する。なお、アッパーサポート10の製造方法は、以下の記載に限定されるものではない。
【0054】
本実施形態のアッパーサポート10の製造方法は、以下の各工程を含んでいる。
(a)サポート本体14を準備する工程
(b)ブラケット18を構成する、互いに重ね合わされるフランジ状部(上フランジ状部46および下フランジ状部48)を備えた上ブラケット金具50と下ブラケット金具52を準備する工程
(c)サポート本体14を上下両側から上ブラケット金具50と下ブラケット金具52で挟んで、かかる上下のブラケット金具50,52の中央部分に形成される筒状のサポート収容部98内にサポート本体14を組み付けて、かかる上下のブラケット金具50,52における各フランジ状部46,48を互いに重ね合わせ状態で位置合わせする工程
【0055】
(d)互いに重ね合わせ状態で位置合わせした上下のブラケット金具50,52における各フランジ状部46,48を周方向の複数箇所で相互に溶接固定する工程
(e)各フランジ状部46,48において相互に溶接固定された上下のブラケット金具50,52に対して、外表面に塗装処理する工程
(f)互いに重ね合わせ状態で位置合わせした上下のブラケット金具50,52において、各フランジ状部46,48に対して車体側への取付用の固定ボルト100をかしめ固定する工程
(g)互いに重ね合わせ状態で位置合わせした上下のブラケット金具50,52において、各フランジ状部46,48の重ね合わせ部分の外周縁部に接着剤106を塗布して、かかる上下のブラケット金具50,52の各フランジ状部46,48の重ね合わせ面(上フランジ状部46の下面70および下フランジ状部48の上面81)間の外周端を接着剤106で封止する工程
【0056】
具体的には、先ず、サポート本体14を、内側部材26と外側部材28とを備えた本体ゴム弾性体30の一体加硫成形品として形成する(上記工程(a))。また、所定の厚さ寸法を有する鋼板に対してプレス加工を施し、前述の形状とされた上ブラケット金具50および下ブラケット金具52を形成する(上記工程(b))。その後、これら上ブラケット金具50および下ブラケット金具52の全面にわたってブラスト処理および化成処理を行う。次に、上ブラケット金具50における上側筒状部54に対してサポート本体14を圧入して組み付けるとともに、この上ブラケット金具50に対して下ブラケット金具52を接近させて、上下のフランジ状部46,48を互いに重ね合わせ状態で位置合わせする(上記工程(c))。これら上下のフランジ状部46,48の位置合わせは、例えば各貫通孔74,87に挿通される図示しない位置決めピンを利用することでなされる。
【0057】
そして、相互に重ね合わせた上下のフランジ状部46,48において、下フランジ状部48における各溶接領域84に設けられた各突起92の形成位置において、プロジェクション溶接を行い、上下のフランジ状部46,48の重ね合わせ面(下面70および上面81)を相互に溶接する(上記工程(d))。続いて、上下のブラケット金具50,52の外表面となる上ブラケット金具50における上面と下ブラケット金具52における下面のそれぞれの全面に対して、塗装処理を行う(上記工程(e))。次に、これらのブラケット金具50,52において、相互に連通された各ボルト挿通孔68,86に対して下方から各固定ボルト100を挿通してかしめ固定する(上記工程(f))。その後、上フランジ状部46における覆い部62と下フランジ状部48の外周面との間の凹溝108に接着剤106を塗布して、上下のフランジ状部46,48の重ね合わせ面(下面70および上面81)の外周端を封止する(上記工程(g))。以上により、本実施形態のアッパーサポート10の製造が完了する。
【0058】
このように製造された本実施形態のアッパーサポート10は、前述のように、サスペンション部材12(ショックアブソーバ)の上端部分に取り付けられた状態で、車両ボデー16に固定される。かかるアッパーサポート10における車両ボデー16への固定は、各固定ボルト100を利用して行われる。
【0059】
本実施形態のアッパーサポート10によれば、上フランジ状部46における覆い部62と下フランジ状部48との間に形成される凹溝108内に接着剤106を塗布しており、例えば各固定ボルト100の締結に伴って上下のフランジ状部46,48間に隙間が生じる場合でも、当該隙間を通じての水の浸入が防止されている。これにより、アッパーサポート10の防錆性能が向上されて、耐久性の向上も図られる。特に、本実施形態では、覆い部62と下フランジ状部48との間において全周にわたって連続して凹溝108が形成されており、かかる凹溝108の全周にわたって接着剤106が塗布されている。これにより、上記の防錆性能および耐久性の向上がより確実に達成され得る。
【0060】
そして、本実施形態では、上下のブラケット金具50,52の各フランジ状部46,48の重ね合わせ部分における溶接固定が、各フランジ状部46,48において通電に伴って発生する熱を利用したプロジェクション溶接とされている。特に、上フランジ状部46において溶接される部分は、他の部分よりも下方に位置する各控え領域64であり、上下のフランジ状部46,48間の離隔距離を小さくした状態で溶接することができて、これら上下のフランジ状部46,48間の隙間を通じての水の浸入が一層効果的に防止され得る。
【0061】
また、上フランジ状部46において各控え領域64を周方向に外れた部分は、各固定ボルト100が設けられる各取付領域66である。これら各取付領域66は周方向で部分的に設けられることから、アッパーサポート10が車両に装着された状態において車両ボデー16とアッパーサポート10との接触面積を小さくすることができて、車両走行の振動に伴う異音の発生等を抑制することができる。
【0062】
<実施形態2>
以下、本開示の実施形態2のアッパーサポート110について、図7を用いて説明する。本実施形態のアッパーサポート110の基本的な構造は実施形態1と同様であるが、上ブラケット金具50の形状が実施形態1とは異ならされている。以下の説明において、前記実施形態と同一の部材および部位には、図中に、前記実施形態と同一の符号を付すことにより詳細な説明を省略する。
【0063】
本実施形態においても、上ブラケット金具50における上フランジ状部46は、平面視において下ブラケット金具52における下フランジ状部48よりも大きい大きさで形成されているが、上フランジ状部46の外周縁部には下方に延びる覆い部62は設けられておらず、下フランジ状部48の外周端縁が覆い部62によって覆われない態様となっている。すなわち、各フランジ状部46,48が相互に位置合わせ状態で重ね合わされた際に、上フランジ状部46の外周端面と下フランジ状部48の外周端面とはそれぞれ段差状の態様をもって位置しており、当該段差の形成位置に接着剤106が塗布されている。これにより、本実施形態では、各フランジ状部46,48の重ね合わせ部分における外周縁部、要するに上フランジ状部46の下面70における下フランジ状部48の外周縁部に接着剤106が塗布されており、各フランジ状部46,48の重ね合わせ面(下面70および上面81)の間が接着剤106により封止されている。この結果、これら重ね合わせ面(下面70および上面81)間の隙間を通じての水の浸入が防止されることから、実施形態1と同様の効果が発揮され得る。
【0064】
特に、本実施形態においても、上下のブラケット金具50,52の各フランジ状部46,48における重ね合わせ部分の外周縁部は、全周にわたって連続して接着剤106が塗布されることが好ましい。これにより、各フランジ状部46,48の重ね合わせ面(下面70および上面81)の間における外周端が全周にわたって接着剤106で封止されて、重ね合わせ面(下面70および上面81)間の隙間を通じての水の浸入がより確実に防止され得る。
【0065】
<実施形態3>
以下、本開示の実施形態3のアッパーサポート120について、図8を用いて説明する。本実施形態においては、下ブラケット金具52における下フランジ状部48が、平面視において上ブラケット金具50における上フランジ状部46よりも大きい大きさで形成されている。これにより、本実施形態においても、各フランジ状部46,48が相互に位置合わせ状態で重ね合わされた際に、上フランジ状部46の外周端面と下フランジ状部48の外周端面とがそれぞれ段差状の態様をもって位置しており、当該段差の形成位置に接着剤106が塗布されている。すなわち、実施形態3では、下フランジ状部48の上面81における上フランジ状部46の外周縁部に接着剤106が塗布されており、この結果、実施形態1と同様の効果が発揮され得る。なお、本実施形態においても、接着剤106は、各フランジ状部46,48における重ね合わせ部分の外周縁部において、全周にわたって連続して塗布されることが好ましい。
【0066】
<実施形態4>
以下、本開示の実施形態4のアッパーサポート130について、図9を用いて説明する。本実施形態においては、上ブラケット金具50における上フランジ状部46と下ブラケット金具52における下フランジ状部48とが略等しい大きさで形成されており、各フランジ状部46,48が相互に位置合わせ状態で重ね合わされた際に、上フランジ状部46における外周端面と下フランジ状部48における外周端面とが略段差なく連続するようになっている。そして、本実施形態では、これら上フランジ状部46における外周端面と下フランジ状部48における外周端面とにまたがって接着剤106が塗布されており、この結果、各フランジ状部46,48の重ね合わせ面(下面70および上面81)間の隙間を通じての水の浸入が防止される。これにより、実施形態1と同様の効果が発揮され得る。なお、本実施形態においても、接着剤106は、各フランジ状部46,48における重ね合わせ部分の外周縁部において、全周にわたって連続して塗布されることが好ましい。
【0067】
<変形例>
以上、本開示の具体例として、実施形態1から実施形態4について詳述したが、本開示はこの具体的な記載によって限定されない。本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれるものである。例えば次のような実施形態の変形例も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0068】
(1)前記実施形態では、上フランジ状部46と下フランジ状部48の各ボルト挿通孔68,86に挿通された各固定ボルト100がかしめ固定されていたが、この態様に限定されるものではない。すなわち、上下の各ボルト挿通孔に挿通された固定ボルトは、かしめ固定以外の方法で固定されてもよいし、例えば下フランジ状部に対して上方に突出する固定ボルトが固定的に設けられてもよい。
【0069】
(2)前記実施形態1では、上フランジ状部46の覆い部62と下フランジ状部48の外周面との間に形成される凹溝108に対して全周にわたって連続して接着剤106が設けられていたが、この態様に限定されるものではない。すなわち、接着剤は、少なくとも各固定ボルトの締結に際して上下のフランジ状部間に隙間が生じやすい各固定ボルトの外周側領域(例えば、凹所90の周囲の領域)に設けられればよい。同様に、実施形態2から実施形態4においても、接着剤は、上下のブラケット金具の各フランジ状部の重ね合わせ部分の外周縁部において周方向の全周にわたって連続して塗布される必要はなく、少なくとも各固定ボルトの外周側領域に設けられればよい。
【0070】
(3)前記実施形態では、上フランジ状部46と下フランジ状部48との溶接がプロジェクション溶接により行われていたが、この態様に限定されるものではなく、例えば上フランジ状部と下フランジ状部とはスポット溶接により溶接されてもよい。
【0071】
(4)前記実施形態では、アッパーサポート10,110,120,130において3本の固定ボルト100が設けられていたが、固定ボルトの本数は複数本であれば限定されるものではなく、例えば固定ボルトの本数に応じて上フランジ状部における取付領域および控え領域の数や、下フランジ状部におけるボルト固定領域および溶接領域の数が設定されてもよい。すなわち、上フランジ状部や下フランジ状部の形状は限定されるものではない。また、上フランジ状部および下フランジ状部において、取付領域や控え領域、ボルト固定領域や溶接領域は必須なものではなく、上フランジ状部および下フランジ状部は何れも凹凸がない平坦な形状であってもよい。
【0072】
(5)前記実施形態では、各溶接領域84において2つずつプロジェクション溶接用の突起92が設けられており、下フランジ状部48において合計で6つの突起92が設けられていたが、この態様に限定されるものではない。すなわち、上フランジ状部と下フランジ状部とは周方向で相互に離隔する複数箇所で溶接されればよい。なお、プロジェクション溶接用の突起は、下フランジ状部に代えて、または加えて、上フランジ状部に設けられてもよい。
【0073】
(6)前記実施形態1において記載したアッパーサポート10の製造方法における各工程(a)~(g)の順序は限定されるものではなく、各工程(a)~(g)は、適切な任意の順序で行われてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 アッパーサポート(実施形態1)
12 サスペンション部材
14 サポート本体
16 車両ボデー
18 ブラケット
20 ピストンロッド
22 ナット
24 バウンドストッパ
26 内側部材
28 外側部材
30 本体ゴム弾性体
32 中心孔
36 上部ストッパゴム
38 下部ストッパゴム
40 被覆ゴム層
42,44 凹溝
46 上フランジ状部
48 下フランジ状部
50 上ブラケット金具
52 下ブラケット金具
54 上側筒状部
56 上側壁部
58 上側挿通孔
60 突出片
62 覆い部
63 上面
64 控え領域
66 取付領域
68 ボルト挿通孔
70 下面
72 凹状領域
74 貫通孔
76 下側筒状部
78 下側壁部
80 下側挿通孔
81 上面
82 ボルト固定領域
84 溶接領域
86 ボルト挿通孔
87 貫通孔
88 下面
90 凹所
92 突起
94 保持金具
96 保持部
98 サポート収容部
100 固定ボルト
102 軸部
104 頭部
106 接着剤
108 凹溝
110 アッパーサポート(実施形態2)
120 アッパーサポート(実施形態3)
130 アッパーサポート(実施形態4)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9