(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135543
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ターボ流体機械、及び冷凍装置
(51)【国際特許分類】
F04D 29/46 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
F04D29/46 J
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046289
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 有弘
(72)【発明者】
【氏名】西村 公佑
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝一
(72)【発明者】
【氏名】福田 大悟
(72)【発明者】
【氏名】河内谷 佑季
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA14
3H130AB27
3H130AB42
3H130AB62
3H130AB65
3H130AC01
3H130BA66D
3H130BA74C
3H130BA97E
3H130CA13
3H130DA02Z
3H130DB05Z
3H130DB06X
3H130DG04X
3H130DG07X
3H130EA06C
3H130EA08D
(57)【要約】
【課題】機械効率の低下を抑制する。
【解決手段】ターボ流体機械(10)は、回転軸(40)と、回転軸(40)を駆動する電動機(30)と、回転軸(40)と一体に回転することにより圧縮室(61a,66a)に吸入された流体を圧縮し、ブレード(53)が設けられる前面(51)が電動機(30)を挟んで互いに向かい合うように配置される一対のインペラ(50a,50b)と、一対のインペラ(50a,50b)のそれぞれに対応する圧縮室(61a,66a)を有するケーシング(20)と、一対の圧縮室(61a,66a)を互いに連通する連通路(11a)と、一対のインペラ(50a,50b)のうち一方のインペラ(50a,50b)の背面空間(61b,66b)の圧力を低減する低減部(71,76)とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入した吸入圧力の流体を前記吸入圧力よりも高圧の中間圧力まで圧縮した後に、前記中間圧力の流体を前記中間圧力よりも高圧の吐出圧力まで圧縮するターボ流体機械であって、
回転軸(40)と、
前記回転軸(40)を駆動する電動機(30)と、
前記回転軸(40)と一体に回転することにより圧縮室(61a,66a)に吸入された流体を圧縮し、ブレード(53)が設けられる前面(51)が前記電動機(30)を挟んで互いに向かい合うように配置される一対のインペラ(50a,50b)と、
前記一対のインペラ(50a,50b)のそれぞれに対応する前記圧縮室(61a,66a)を有するケーシング(20)と、
一対の前記圧縮室(61a,66a)を互いに連通する連通路(11a)と、
前記一対のインペラ(50a,50b)のうち一方のインペラ(50a,50b)の背面空間(61b,66b)の圧力を低減する低減部(71,76)と、を備える
ターボ流体機械。
【請求項2】
前記ケーシング(20)に流体を導入する吸入通路(12a)を更に備え、
前記低減部(71,76)は、
前記背面空間(61b,66b)を第1空間(S1)と第2空間(S2)とに仕切るシール部(72,77)と、
前記第2空間(S2)の流体を前記吸入通路(12a)にバイパスさせるバイパス通路(73a,78a)と、を有し、
前記第1空間(S1)は、前記一方のインペラ(50a,50b)に対応する前記圧縮室(61a,66a)の吐出圧力に相当する圧力であり、
前記第2空間(S2)の圧力は、前記第1空間(S1)の圧力よりも低い
請求項1に記載のターボ流体機械。
【請求項3】
前記一方のインペラ(50a,50b)は、前記一方のインペラ(50a,50b)の背面(52)から軸方向に離れるように延びる筒状の第1部材(80)を有し、
前記ケーシング(20)は、前記第1部材(80)の外周面と対向する第1面(92,96)を有し、
前記シール部(72,77)は、前記第1部材(80)の外周面と前記第1面(92,96)との間に形成される隙間(A)によって構成される
請求項2に記載のターボ流体機械。
【請求項4】
前記ケーシング(20)は、前記一方のインペラ(50a,50b)の背面(52)に対向する壁部(25)を有し、
前記壁部(25)は、前記一方のインペラ(50a,50b)の背面(52)に向かって突出する環状の突出部(97)を有し、
前記シール部(72,77)は、前記一方のインペラ(50a,50b)の背面(52)と前記突出部(97)の先端面(97a)との間に形成される隙間(B)によって構成される
請求項2に記載のターボ流体機械。
【請求項5】
前記低減部(71,76)は、前記バイパス通路(73a,78a)に配置される弁(74,79)を更に有する
請求項2~4のいずれか1つに記載のターボ流体機械。
【請求項6】
前記弁(74,79)を制御する制御部(110)を更に備え、
前記制御部(110)は、一対の前記圧縮室(61a,66a)のそれぞれに導入される流体の吸入圧力、前記ケーシング(20)から吐出される流体の吐出圧力、及び前記一方のインペラ(50a,50b)の背面圧力に基づいて、前記弁(74,79)の開閉又は開度を調節する
請求項5に記載のターボ流体機械。
【請求項7】
前記一対のインペラ(50a,50b)のそれぞれに前記低減部(71,76)が設けられる
請求項1に記載のターボ流体機械。
【請求項8】
前記一対のインペラ(50a,50b)は、
前記ケーシング(20)に導入した吸入圧力の流体を前記吸入圧力よりも高圧の中間圧力まで圧縮する第1インペラ(50a)と、
前記中間圧力の流体を前記中間圧力よりも高圧の吐出圧力まで圧縮する第2インペラ(50b)と、で構成され、
前記第2インペラ(50b)の外径は、前記第1インペラ(50a)の外径よりも小さい
請求項1に記載のターボ流体機械。
【請求項9】
前記ケーシング(20)内に配置されるとともに前記回転軸(40)を回転可能に支持する軸受(41,45,45)を更に備え、
前記軸受(41,45,45)は、フォイル軸受又は磁気軸受である
請求項1に記載のターボ流体機械。
【請求項10】
前記回転軸(40)の最高回転数は、30000rpm以上である
請求項1に記載のターボ流体機械。
【請求項11】
前記ターボ流体機械は、ターボ圧縮機(10)であり、
前記流体は、冷媒である
請求項1に記載のターボ流体機械。
【請求項12】
冷凍サイクルを行う冷媒回路(2)を備える冷凍装置であって、
前記冷媒回路(2)は、請求項11に記載のターボ流体機械を含む
冷凍装置。
【請求項13】
前記冷凍装置の冷凍能力は、100アメリカ冷凍トン以下である
請求項12に記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ターボ流体機械、及び冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のターボ圧縮機は、密閉容器内に、駆動モータと、駆動軸と、2つのインペラが収容される。駆動モータは、密閉容器内の中央部に形成されたモータ室に配置される。駆動軸は、駆動モータに挿し通されるとともに、一端が第1圧縮室に挿入され、他端が第2圧縮室に挿入される。各インペラは、駆動軸の両端に配置される。2つのインペラは、その前面同士が向かい合うように配置される。
【0003】
特許文献1のターボ圧縮機では、モータ室に流入したガスは、一方のインペラが配置された第1圧縮室に吸入されて1次圧縮が行われる。そして、1次圧縮がされたガスは、他方のインペラが配置された第2圧縮室に吸入され、2次圧縮が行われる。
【0004】
特許文献1のターボ圧縮機では、2つのインペラの前面同士が向かい合うように配置されるため、モータ室と第2圧縮室との間をシールすることにより、1次圧縮されたガスがモータ室に漏れることを抑制できる。このように、圧縮されたガスが漏れる流路を減少させることにより、容積効率を向上させることで、圧縮機の効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のようなターボ流体機械では、2つのインペラの前面同士が向かい合うように配置されるので、各圧縮室で圧縮されたガスの圧力が各インペラの背面の全体に作用する。圧縮機の運転条件に応じて各インペラの背面に作用する圧力の差が大きくなると、一方のインペラから作用するスラスト荷重と他方のインペラから作用するスラスト荷重との釣り合いがとれず、駆動軸に設けられるスラスト軸受に大きな負荷がかかる。このような負荷に対応するためには、スラスト軸受を大きくする必要がある。
【0007】
しかし、スラスト軸受を大型化すると、駆動軸が高速回転する際に、駆動軸と密閉容器内のガスとの間で摩擦が生じ、風損が増大してしまう。風損が増大すると、圧縮機の効率が低下してしまう。また、スラスト軸受を大型化することにより、駆動軸全体の剛性が低下するため、運転可能な高速回転数が制限されてしまい、圧縮機の運転範囲が縮小してしまう。このように、スラスト軸受が大型化すると、ターボ流体機械の機械効率が低下するという問題があった。
【0008】
本開示の目的は、機械効率の低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様は、導入した吸入圧力の流体を前記吸入圧力よりも高圧の中間圧力まで圧縮した後に、前記中間圧力の流体を前記中間圧力よりも高圧の吐出圧力まで圧縮するターボ流体機械を対象とする。ターボ流体機械は、回転軸(40)と、前記回転軸(40)を駆動する電動機(30)と、前記回転軸(40)と一体に回転することにより圧縮室(61a,66a)に吸入された流体を圧縮し、ブレード(53)が設けられる前面(51)が前記電動機(30)を挟んで互いに向かい合うように配置される一対のインペラ(50a,50b)と、前記一対のインペラ(50a,50b)のそれぞれに対応する前記圧縮室(61a,66a)を有するケーシング(20)と、一対の前記圧縮室(61a,66a)を互いに連通する連通路(11a)と、前記一対のインペラ(50a,50b)のうち一方のインペラ(50a,50b)の背面空間(61b,66b)の圧力を低減する低減部(71,76)と、を備える。
【0010】
第1の態様では、低減部(71,76)により一方のインペラ(50a,50b)の背面空間(61b,66b)の圧力を低減できるので、一対のインペラ(50a,50b)のそれぞれの背面(52)に作用する圧力の差を低減できる。これにより、スラスト軸受の大型化を抑制できる。その結果、ターボ流体機械(10)の機械効率の低下を抑制できる。
【0011】
第2の態様は、第1の態様において、前記ケーシング(20)に流体を導入する吸入通路(12a)を更に備え、前記低減部(71,76)は、前記背面空間(61b,66b)を第1空間(S1)と第2空間(S2)とに仕切るシール部(72,77)と、前記第2空間(S2)の流体を前記吸入通路(12a)にバイパスさせるバイパス通路(73a,78a)と、を有し、前記第1空間(S1)は、前記一方のインペラ(50a,50b)に対応する前記圧縮室(61a,66a)の吐出圧力に相当する圧力であり、前記第2空間(S2)の圧力は、前記第1空間(S1)の圧力よりも低い。
【0012】
第2の態様では、バイパス通路(73a,78a)により、第2空間(S2)の圧力は吸入圧力に相当する圧力になるとともに、第2空間(S2)の圧力は第1空間(S1)の圧力よりも低い。そのため、一方のインペラ(50a,50b)の背面(52)全体に作用する圧力が、第2空間(S2)が形成されていない場合に比べて、小さくなる。これにより、一対のインペラ(50a,50b)のそれぞれの背面(52)に作用する圧力の差を低減できる。
【0013】
第3の態様は、第2の態様において、前記一方のインペラ(50a,50b)は、前記一方のインペラ(50a,50b)の背面(52)から軸方向に離れるように延びる筒状の第1部材(80)を有し、前記ケーシング(20)は、前記第1部材(80)の外周面と対向する第1面(92,96)を有し、前記シール部(72,77)は、前記第1部材(80)の外周面と前記第1面(92,96)との間に形成される隙間(A)によって構成される。
【0014】
第3の態様では、一方のインペラ(50a,50b)に設けられた第1部材(80)とケーシング(20)の第1面(92,96)との間に形成される隙間(A)によってシール部(72,77)が構成されるので、少ない部品の追加でシール部(72,77)を形成できる。
【0015】
第4の態様は、第2の態様において、前記ケーシング(20)は、前記一方のインペラ(50a,50b)の背面(52)に対向する壁部(25)を有し、前記壁部(25)は、前記一方のインペラ(50a,50b)の背面(52)に向かって突出する環状の突出部(97)を有し、前記シール部(72,77)は、前記一方のインペラ(50a,50b)の背面(52)と前記突出部(97)の先端面(97a)との間に形成される隙間(B)によって構成される。
【0016】
第4の態様では、一方のインペラ(50a,50b)の背面(52)とケーシング(20)に設けられた突出部(97)の先端面(97a)との間に隙間(B)が形成される。この隙間(B)によってシール部(72,77)が構成されるので、新たな部品を追加することなくシール部(72,77)を形成することができる。
【0017】
第5の態様は、第2~第4のいずれか1つの態様において、前記低減部(71,76)は、前記バイパス通路(73a,78a)に配置される弁(74,79)を更に有する。
【0018】
第5の態様では、弁(74,79)の開閉又は開度を変更することにより、第2空間(S2)の圧力を調節できる。
【0019】
第6の態様は、第5の態様において、前記弁(74,79)を制御する制御部(110)を更に備え、前記制御部(110)は、一対の前記圧縮室(61a,66a)のそれぞれに導入される流体の吸入圧力、前記ケーシング(20)から吐出される流体の吐出圧力、及び前記一方のインペラ(50a,50b)の背面圧力に基づいて、前記弁(74,79)の開閉又は開度を調節する。
【0020】
第6の態様では、制御部(110)が、回転軸(40)に作用するスラスト荷重に直接的な指標である圧力に基づいて、弁(74,79)の開閉又は開度を調節するので、ターボ流体機械(10)の信頼性を向上できる。
【0021】
第7の態様は、第1~第6のいずれか1つの態様において、前記一対のインペラ(50a,50b)のそれぞれに前記低減部(71,76)が設けられる。
【0022】
第7の態様では、一対のインペラ(50a,50b)の両方に低減部(71,76)が設けられるので、様々な運転条件においてインペラ(50a,50b)の背面空間(61b,66b)の圧力を調節できる。
【0023】
第8の態様は、第1~第7のいずれか1つの態様において、前記一対のインペラ(50a,50b)は、前記ケーシング(20)に導入した吸入圧力の流体を前記吸入圧力よりも高圧の中間圧力まで圧縮する第1インペラ(50a)と、前記中間圧力の流体を前記中間圧力よりも高圧の吐出圧力まで圧縮する第2インペラ(50b)と、で構成され、前記第2インペラ(50b)の外径は、前記第1インペラ(50a)の外径よりも小さい。
【0024】
第8の態様では、第2インペラ(50b)の外径が第1インペラ(50a)の外径よりも小さいので、第2インペラ(50b)の背面(52)から作用する荷重を小さくできる。
【0025】
第9の態様は、第1~第9のいずれか1つの態様において、前記ケーシング(20)内に配置されるとともに前記回転軸(40)を回転可能に支持する軸受(41,45,45)を更に備え、前記軸受(41,45,45)は、フォイル軸受又は磁気軸受である。
【0026】
第9の態様では、軸受(41,45,45)は、フォイル軸受又は磁気軸受であるので、オイルを用いていない軸受である。
【0027】
第10の態様は、第1~第9のいずれか1つの態様において、前記回転軸(40)の最高回転数は、30000rpm以上である。
【0028】
第10の態様では、回転軸(40)の最高回転数が30000rpm以上であるので、高速回転するターボ流体機械(10)として適用できる。
【0029】
第11の態様は、第1~第10のいずれか1つの態様において、前記ターボ流体機械は、ターボ圧縮機(10)であり、前記流体は、冷媒である。
【0030】
第11の態様では、流体が冷媒である。流体が冷媒の場合には、流体が空気である場合に比べて、インペラ(50a,50b)の背面(52)に作用する圧力が大きくなる。そのため、回転軸(40)に作用するスラスト荷重が大きくなる。
【0031】
第12の態様は、冷凍サイクルを行う冷媒回路(2)を備える冷凍装置を対象とする。冷媒回路(2)は、第11の態様のターボ流体機械を含む。
【0032】
第13の態様は、第12の態様において、前記冷凍装置の冷凍能力は、100アメリカ冷凍トン以下である。
【0033】
第13の態様では、冷凍装置の冷凍能力が100アメリカ冷凍トン以下であるので、冷凍能力の比較的小さい冷凍装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、実施形態の冷凍装置の概略の構成図である。
【
図2】
図2は、ターボ圧縮機の全体構成を示す概略の縦断面図である。
【
図5】
図5は、ターボ圧縮機の運転エリアマップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比または数を誇張または簡略化して表す場合がある。
【0036】
《実施形態》
実施形態のターボ流体機械について説明する。本実施形態のターボ流体機械は、ターボ圧縮機(10)である。ターボ圧縮機(10)(以下、圧縮機という)は、冷凍装置(1)に設けられる。
【0037】
(1)冷凍装置
図1に示すように、冷凍装置(1)は、冷媒回路(2)を備える。冷媒回路(2)には、冷媒が充填される。本例の圧縮機(10)で圧縮される流体は、冷媒である。例えば、冷媒は、R32などのHFC(Hydro Fluoro Carbon)冷媒、R1234yfなどのHFO(Hydro Fluoro Olefin)冷媒、プロパンなどのHCを含む自然冷媒、またはR454C(R32とR1234yfとの混合冷媒)などのそれらの混合冷媒である。
【0038】
冷媒回路(2)は、圧縮機(10)と、放熱器(凝縮器)(3)と、減圧機構(4)と、蒸発器(5)とを含む。圧縮機(10)、放熱器(3)、減圧機構(4)および蒸発器(5)は、配管によって直列に接続される。減圧機構(4)は、例えば膨張弁である。冷媒回路(2)は、冷媒を循環させて、蒸気圧縮方式の冷凍サイクルを行う。
【0039】
冷凍サイクルでは、圧縮機(10)によって圧縮された冷媒が、放熱器(3)において空気に放熱する。このとき、冷媒が液化する。放熱した冷媒は、減圧機構(4)によって減圧される。減圧された冷媒は、蒸発器(5)において蒸発する。蒸発した冷媒は、圧縮機(10)に吸入される。圧縮機(10)は、吸入した冷媒を圧縮する。
【0040】
冷凍装置(1)は、例えば空気調和装置である。空気調和装置は、冷房と暖房とを切り換える冷暖房兼用機であってもよい。この場合、空気調和装置は、冷媒の循環方向を切り換える切換機構を有する。切換機構は、例えば四方切換弁である。空気調和装置は、冷房専用機または暖房専用機であってもよい。
【0041】
また、冷凍装置(1)は、給湯器、チラーユニット、庫内の空気を冷却する冷却装置などであってもよい。冷却装置は、冷蔵庫、冷凍庫、コンテナなどの内部の空気を冷却する装置である。
【0042】
本実施形態の冷凍装置(1)の冷凍能力は、100アメリカ冷凍トン以下である。言い換えると、本実施形態の冷凍装置(1)は、冷凍能力が比較的小さい冷凍装置である。
【0043】
(2)圧縮機
圧縮機(10)は、低圧のガス冷媒を吸入し、吸入したガス冷媒を圧縮する。圧縮機(10)は、圧縮した後の高圧のガス冷媒を吐出する。本実施形態の圧縮機(10)は、冷媒を二段階で圧縮する二段式の圧縮機である。
【0044】
なお、以下の説明において、圧縮機(10)の回転軸(40)の軸心に沿う方向を「軸方向」と称し、軸方向に垂直な方向を「径方向」と称し、回転軸(40)の周囲に沿う方向を「周方向」と称する。
【0045】
本実施形態では、回転軸(40)の最高回転数が30000rpm以上である。最高回転数は、電動機(30)の回転数の最大値を規定する。圧縮機(10)において、回転軸(40)の最高回転数を高くすることは、冷媒回路(2)における冷媒の循環量を増加させ、冷媒の最大循環量を確保するのに好ましい。このことは、冷房運転での冷房能力を高め、暖房運転での暖房能力を高めるのに有利である。
【0046】
図2に示すように、圧縮機(10)は、ケーシング(20)と、電動機(30)と、回転軸(40)と、軸受(41,45,45)と、一対のインペラ(50a,50b)とを備える。電動機(30)、回転軸(40)、軸受(41,45,45)、及び一対のインペラ(50a,50b)は、ケーシング(20)に収容される。圧縮機(10)は、連絡管(11)を更に備える。連絡管(11)は、ケーシング(20)の外に設けられる。圧縮機(10)は、低減部(71,76)を更に備える。
【0047】
(2-1)ケーシング
図2に示すように、ケーシング(20)は、両端が密閉された概ね円筒状の密閉容器である。ケーシング(20)は、その中心線が実質的に水平となる姿勢で配置される。ケーシング(20)は、胴部(21)と、第1閉塞部(22)と、第2閉塞部(24)とを有する。胴部(21)は、軸方向の両端が開放する略円筒状に形成される。胴部(21)は、軸方向に延びる。
【0048】
第1閉塞部(22)は、胴部(21)の軸方向の一端側(
図2における左側)の開放部を閉塞する。第1閉塞部(22)は、肉厚円筒状に形成される。第1閉塞部(22)は、第1ハウジング(23)を含む。第1ハウジング(23)は、第1閉塞部(22)の軸方向の一端(
図2における左端)の孔(22a)に嵌め込まれる。第1ハウジング(23)は、肉厚円筒状に形成される。第1ハウジング(23)は、その軸心が第1閉塞部(22)の軸心と一致するように配置される。
【0049】
第2閉塞部(24)は、胴部(21)の軸方向の他端側(
図2における右側)の開放部を閉塞する。第2閉塞部(24)は、肉厚円筒状に形成される。第2閉塞部(24)は、第2ハウジング(25)を含む。第2ハウジング(25)は、第1閉塞部(22)の軸方向の他端(
図2における右端)の孔(24a)に嵌め込まれる。第2ハウジング(25)は、肉厚円筒状に形成される。第2ハウジング(25)は、その軸心が第2閉塞部(24)の軸心と一致するように配置される。
【0050】
ケーシング(20)は、区画壁(26)を有する。区画壁(26)は、胴部(21)の内部に配置される。区画壁(26)は、胴部(21)の軸方向の他端部に配置される。言い換えると、区画壁(26)は、胴部(21)における第2閉塞部(24)側に配置される。区画壁(26)の中央部には、挿通孔(26a)が形成される。挿通孔(26a)には、回転軸(40)が挿通される。区画壁(26)は、胴部(21)の内部空間(27)を、電動機室(28)と中間圧流路(29)とに区画する。
【0051】
電動機室(28)は、内部空間(27)における区画壁(26)よりも軸方向一方側(
図2における左側)に位置する。電動機室(28)は、内部空間(27)において、第1閉塞部(22)と区画壁(26)との間に形成される。中間圧流路(29)は、内部空間(27)における区画壁(26)よりも軸方向他方側(
図2における右側)に位置する。中間圧流路(29)は、内部空間(27)において、第2閉塞部(24)と区画壁(26)との間に形成される。
【0052】
第1閉塞部(22)の内部には、第1インペラ室(61)と、ディフューザ(62)と、スクロール流路(63)とが形成される。第1インペラ室(61)は、概ね円錐形状に形成された空間である。第1インペラ室(61)は、電動機室(28)に連通する。ディフューザ(62)は、第1閉塞部(22)における第1インペラ室(61)の外周に形成される。ディフューザ(62)は、第1インペラ室(61)とスクロール流路(63)との間に環状に形成される。ディフューザ(62)は、第1インペラ室(61)とスクロール流路(63)とを連通させる。スクロール流路(63)は、ディフューザ(62)の周囲に渦巻き状に形成される。
【0053】
第2閉塞部(24)の内部には、第2インペラ室(66)と、ディフューザ(67)と、スクロール流路(68)とが形成される。第2インペラ室(66)は、概ね円錐形状に形成された空間である。第2インペラ室(66)は、中間圧流路(29)に連通する。ディフューザ(67)は、第2閉塞部(24)における第2インペラ室(66)の外周に形成される。ディフューザ(67)は、第2インペラ室(66)とスクロール流路(68)との間に環状に形成される。ディフューザ(67)は、第2インペラ室(66)とスクロール流路(68)とを連通させる。スクロール流路(68)は、ディフューザ(67)の周囲に渦巻き状に形成される。
【0054】
ケーシング(20)には、第1吸入口(20a)と、第1吐出口(20b)と、第2吸入口(20c)と、第2吐出口(20d)とが設けられる。第1吸入口(20a)は、胴部(21)における軸方向の第1閉塞部(22)寄りの位置に形成される。第1吸入口(20a)は、電動機室(28)に連通する。第1吸入口(20a)には、吸入管(12)が接続される。吸入管(12)の内部には、吸入通路(12a)が形成される。第1吐出口(20b)は、第1閉塞部(22)のスクロール流路(63)の外側端に形成される。第1吐出口(20b)は、スクロール流路(63)に連通する。第1吐出口(20b)には、連絡管(11)が接続される。
【0055】
第2吸入口(20c)は、胴部(21)における軸方向の第2閉塞部(24)側の端部に形成される。第2吸入口(20c)は、中間圧流路(29)に連通する。第2吸入口(20c)には、連絡管(11)が接続される。第2吐出口(20d)は、第2閉塞部(24)のスクロール流路(68)の外側端に形成される。第2吐出口(20d)は、スクロール流路(68)に連通する。第2吐出口(20d)には、吐出管(13)が接続される。吐出管(13)の内部には、吐出通路(13a)が形成される。
【0056】
(2-2)連絡管
連絡管(11)は、ケーシング(20)の第1吐出口(20b)及び第2吸入口(20c)を繋ぐ。連絡管(11)は、第1吐出口(20b)と第2吸入口(20c)とを連通させる。連絡管(11)の内部には、連通路(11a)が形成される。連通路(11a)の流入端は、第1吐出口(20b)に接続される。連通路(11a)の流出端は、第2吸入口(20c)に接続される。連通路(11a)は、第1インペラ室(61)と第2インペラ室(66)とを互いに連通させる。
【0057】
(2-3)電動機
電動機(30)は、回転軸(40)を回転駆動する。
図2に示すように、電動機(30)は、胴部(21)の内部に収容される。電動機(30)は、胴部(21)における軸方向の概ね中央部に配置される。電動機(30)は、固定子(31)及び回転子(32)を有する。固定子(31)は、筒状に形成される。固定子(31)は、胴部(21)の内周面に固定される。回転子(32)は、筒状に形成される。回転子(32)は、固定子(31)の径方向内側に配置される。回転子(32)は、回転軸(40)の外周面に固定される。
【0058】
電動機(30)は、インバータ装置によって運転周波数(回転数)が調節される。圧縮機(10)は、回転数が可変なインバータ式である。このため、電動機(30)の回転数は、低速から高速までの間で変化する。
【0059】
(2-4)回転軸
図2に示すように、回転軸(40)は、ケーシング(20)の胴部(21)の一端から他端に亘って、ケーシング(20)の中心線に沿って延びる。回転軸(40)は、水平方向に沿って延びる。
【0060】
本実施形態の回転軸(40)には、スラストプレート(40a)が設けられる。スラストプレート(40a)は、回転軸(40)において、電動機(30)よりも第2閉塞部(24)寄りに固定される。スラストプレート(40a)は、円盤状に形成される。スラストプレート(40a)は、回転軸(40)から径方向外方に延出する。本実施形態では、スラストプレート(40a)は、回転軸(40)と別部品で構成される。スラストプレート(40a)は、回転軸(40)と一体に構成されてもよい。
【0061】
(2-5)軸受
圧縮機(10)は、軸受(41,45,45)として、スラスト軸受(41)と、一対のラジアル軸受(45,45)とを有する。
【0062】
スラスト軸受(41)は、電動機室(28)における電動機(30)よりも軸方向の他方側に配置される。スラスト軸受(41)は、オイルを用いない軸受で構成される。本実施形態のスラスト軸受(41)は、磁気軸受である。スラスト軸受(41)は、回転軸(40)のスラストプレート(40a)を電磁力により浮かせて、非接触で回転可能に支持する。スラスト軸受(41)は、回転軸(40)の軸方向に作用するスラスト荷重を受ける。スラスト軸受(41)は、ケーシング(20)の区画壁(26)に取り付けられる。
【0063】
スラスト軸受(41)は、一対の電磁石(42)を有する。一対の電磁石(42)のそれぞれは、円環状に形成される。一対の電磁石(42)は、回転軸(40)のスラストプレート(40a)を介して、互いに対向して配置される。各電磁石(42)は、スラストプレート(40a)との間に間隔を空けて配置される。
【0064】
ラジアル軸受(45)は、電動機室(28)において、電動機(30)の両側に配置される。ラジアル軸受(45)は、不図示の保持部材によって、ケーシング(20)の胴部(21)に保持される。保持部材は、胴部(21)の内壁に固定される。
【0065】
ラジアル軸受(45)は、回転軸(40)を回転可能に支持する。ラジアル軸受(45)は、回転軸(40)の外周に配置される。ラジアル軸受(45)は、オイルを用いない軸受で構成される。本実施形態のラジアル軸受(45)は、フォイル軸受である。ラジアル軸受(45)は、回転軸(40)との間にガス膜を形成することで、そのガス膜により回転軸(40)を浮かせて、非接触で回転可能に支持する。ラジアル軸受(45)は、回転軸(40)の径方向における外側に作用するラジアル荷重を受ける。ラジアル軸受(45)は、軸受ハウジングと、トップフォイルと、バックフォイルとを有する。
【0066】
なお、スラスト軸受(41)は、フォイル軸受であってもよい。また、ラジアル軸受(45)は、磁気軸受であってもよい。
【0067】
(2-6)インペラ
図2に示すように、圧縮機(10)は、一対のインペラ(50a,50b)を備える。一対のインペラ(50a,50b)は、第1インペラ(50a)と、第2インペラ(50b)とで構成される。なお、
図2における各インペラ(50a,50b)は、図をわかりやすくするために外周面を示している。言い換えると、
図2の各インペラ(50a,50b)は、断面を示していない。
【0068】
第1インペラ(50a)は、第1インペラ室(61)に収容される。第1インペラ(50a)には、回転軸(40)の一端部(
図2における左端部)が連結される。第2インペラ(50b)は、第2インペラ室(66)に収容される。第2インペラ(50b)には、回転軸(40)の他端部(
図2における右端部)が連結される。各インペラ(50a,50b)は、回転軸(40)と一体に回転し、冷媒を圧送する。
【0069】
各インペラ(50a,50b)は、概ね円錐形状に形成される。各インペラ(50a,50b)は、前面(51)と背面(52)とを有する。背面(52)は、前面(51)と軸方向の反対側の面である。各インペラ(50a,50b)の前面(51)には、複数のブレード(53)が設けられる。一対のインペラ(50a,50b)は、それぞれの前面(51)が電動機(30)を挟んで互いに向かい合うように配置される。本実施形態の第2インペラ(50b)の外径D2は、第1インペラ(50a)の外径D1よりも小さい(D1>D2)。
【0070】
第1インペラ室(61)は、第1圧縮室(61a)と第1背面空間(61b)とを有する。第1圧縮室(61a)では、第1圧縮室(61a)に流入した冷媒が第1インペラ(50a)のブレード(53)によって圧縮される。第1圧縮室(61a)は、第1インペラ室(61)において、第1インペラ(50a)の前面(51)側に形成される。具体的には、第1圧縮室(61a)は、第1インペラ(50a)の前面(51)と、第1閉塞部(22)の内面との間に形成される。
【0071】
第1背面空間(61b)は、第1インペラ室(61)において、第1インペラ(50a)の背面(52)側に形成される。具体的には、第1背面空間(61b)は、第1インペラ(50a)の背面(52)と、第1ハウジング(23)の内面との間に形成される。第1圧縮室(61a)の吸入側は、電動機室(28)に連通する。第1圧縮室(61a)の吐出側は、第1背面空間(61b)に連通する。第1圧縮室(61a)と吐出側は、ディフューザ(62)に連通する。
【0072】
第2インペラ室(66)は、第2圧縮室(66a)と第2背面空間(66b)とを有する。第2圧縮室(66a)では、第2圧縮室(66a)に流入した冷媒が第2インペラ(50b)のブレード(53)によって圧縮される。第2圧縮室(66a)は、第2インペラ室(66)において、第2インペラ(50b)の前面(51)側に形成される。具体的には、第2圧縮室(66a)は、第2インペラ(50b)の前面(51)と、第2閉塞部(24)の内面との間に形成される。
【0073】
第2背面空間(66b)は、第2インペラ室(66)において、第2インペラ(50b)の背面(52)側に形成される。具体的には、第2背面空間(66b)は、第2インペラ(50b)の背面(52)と、第2ハウジング(25)の内面との間に形成される。第2圧縮室(66a)の吸入側は、中間圧流路(29)に連通する。第2圧縮室(66a)の吐出側は、第2背面空間(66b)に連通する。第2圧縮室(66a)の吐出側は、ディフューザ(67)に連通する。
【0074】
第1圧縮室(61a)では、第1インペラ(50a)によって、ケーシング(20)に導入した吸入圧力(低圧)の冷媒が吸入圧力よりも高圧の中間圧力まで圧縮される。第1圧縮室(61a)から吐出された中間圧力の冷媒は、ディフューザ(62)、スクロール流路(63)、連通路(11a)及び中間圧流路(29)を経由して、第2圧縮室(66a)に流入する。これと同時に、第1圧縮室(61a)から吐出された中間圧力の冷媒は、第1背面空間(61b)に流入する。
【0075】
第2圧縮室(66a)では、第2インペラ(50b)によって、中間圧力の冷媒が該中間圧力よりも高圧の吐出圧力(高圧)まで圧縮される。第2圧縮室(66a)から吐出された吐出圧力の冷媒は、ディフューザ(67)及びスクロール流路(68)を経由して、吐出通路(13a)に流入する。これと同時に、第2圧縮室(66a)から吐出された吐出圧力の冷媒は、第2背面空間(66b)に流入する。
【0076】
ここで、本実施形態の一対のインペラ(50a,50b)は、それぞれの前面(51)が電動機(30)を挟んで互いに向かい合うように配置されるので、各圧縮室(61a,66a)から吐出された冷媒が各圧縮室(61a,66a)に対応する背面空間(61b,66b)に流入し、各背面空間(61b,66b)の圧力が各背面空間(61b,66b)に対応するインペラ(50a,50b)の背面(52)の全体に作用する。
【0077】
詳細には、第1圧縮室(61a)の吐出側は第1背面空間(61b)に連通するため、第1背面空間(61b)の圧力は中間圧力となる。一方、第2圧縮室(66a)の吐出側は、第2背面空間(66b)に連通するため、第2背面空間(66b)の圧力は高圧となる。このため、第2インペラ(50b)の背面(52)に作用する圧力P2は、第1インペラ(50a)の背面(52)に作用する圧力P1よりも大きい(P1<P2)。
【0078】
回転軸(40)の片側に作用するスラスト荷重Lは、片側のインペラにおける背面面積Zと、該インペラの背面に作用する圧力Pとを掛けることにより算出される(L=Z×P)。そのため、第1インペラ(50a)の背面面積Z1と第2インペラ(50b)の背面面積Z2とが同じであった場合には、第1インペラ(50a)側から作用するスラスト荷重L1よりも第2インペラ(50b)側から作用するスラスト荷重L2が大きくなってしまい(L1<L2)、回転軸(40)の両側から作用するスラスト荷重が釣り合わない状態となる。両側のスラスト荷重のバランスが悪いと、スラスト軸受(41)の負荷が増大してしまう。
【0079】
これに対し、上述のように本実施形態では、第2インペラ(50b)の外径D2は、第1インペラ(50a)の外径D1よりも小さい(D1>D2)。第2インペラ(50b)の外径D2を第1インペラ(50a)の外径D1よりも小さくすることにより、第2インペラ(50b)の背面面積Z2は第1インペラ(50a)の背面面積Z1がよりも小さくなる(Z1>Z2)。これにより、第1インペラ(50a)側からのスラスト荷重L1と第2インペラ(50b)側からのスラスト荷重L2のバランスを取りやすくできる。
【0080】
ところで、インペラのブレードの高さは、インペラの径によって決まる。具体的には、インペラの径が大きい場合にはブレードの高さは低くなり、インペラの径が小さい場合にはブレードの高さは高くなる。本実施形態では、第2インペラ(50b)の外径D2が第1インペラ(50a)の外径D1よりも小さい(D1>D2)ので、第2インペラ(50b)のブレード(53)の高さは、第1インペラ(50a)のブレード(53)の高さよりも高くできる。第2インペラ(50b)のブレード(53)の高さを相対的に高くすることにより、第2圧縮室(66a)において、第2閉塞部(24)と第2インペラ(50b)のブレード(53)との間の隙間を相対的に小さくすることができる。これにより、第2圧縮室(66a)で圧縮された冷媒が上記隙間から漏れ出ることを抑制でき、圧縮効率を向上できる。
【0081】
(2-7)低減部
低減部(71,76)は、一対のインペラ(50a,50b)のうち一方のインペラ(50a,50b)の背面空間(61b,66b)の圧力を低減する。本実施形態では、一対のインペラ(50a,50b)のそれぞれに低減部(71,76)が設けられる。具体的には、圧縮機(10)は、第1インペラ(50a)に設けられる第1低減部(71)と、第2インペラ(50b)に設けられる第2低減部(76)を備える。
【0082】
図2に示すように、第1低減部(71)は、第1シール部(72)と、第1バイパス通路(73a)と、第1流量調節弁(74)とを有する。第2低減部(76)は、第2シール部(77)と、第2バイパス通路(78a)と、第2流量調節弁(79)とを有する。流量調節弁(74,79)は、本開示の弁に対応する。
【0083】
ここで、本実施形態の第1低減部(71)及び第2低減部(76)のそれぞれは、同じ構造である。以下の説明では、
図3を参照しながら第2低減部(76)を例にして説明する。なお、
図2において、第1低減部(71)及び第2低減部(76)において、同一構成については同一の符号を付す。
【0084】
(2-7-1)第2低減部
図3に示すように、第2シール部(77)は、第2背面空間(66b)を第1空間(S1)と第2空間(S2)とに仕切る。言い換えると、第2シール部(77)は、第1空間(S1)と第2空間(S2)との間をシールする。第2シール部(77)は、仕切り部材(80)と第2ハウジング(25)との間に形成される隙間(A)によって構成される。仕切り部材(80)は、本開示の第1部材に対応する。
【0085】
仕切り部材(80)は、第2インペラ(50b)の背面(52)に設けられる。仕切り部材(80)は、第2背面空間(66b)に配置される。本実施形態の仕切り部材(80)は、筒部(81)を有する。筒部(81)は、円筒状に形成される。筒部(81)は、第2インペラ(50b)の背面(52)から軸方向の他方側(
図3における右側)に向かって延びる。言い換えると、筒部(81)は、第2インペラ(50b)の背面(52)から軸方向に離れるように延びる。筒部(81)は、第2インペラ(50b)の背面(52)の中央部に配置される。筒部(81)の軸心は、回転軸(40)の軸心と概ね一致する。
【0086】
第2ハウジング(25)の中央部には、第1孔(91)と第2孔(92)とが形成される。第1孔(91)及び第2孔(92)は、軸方向に延びる。第2ハウジング(25)の軸心、第1孔(91)の中心、及び第2孔(92)中心は、概ね一致する。第1孔(91)と第2孔(92)とは、連続して形成される。
【0087】
第1孔(91)は、第2ハウジング(25)の軸方向の一端(
図3における左端)に形成される。第2孔(92)は、第2ハウジング(25)の軸方向の他端(
図3における右端)に形成される。第1孔(91)の径は、第2孔(92)の径よりも大きい。第1孔(91)の軸方向の長さは、第2孔(92)の軸方向の長さよりも短い。
【0088】
第2孔(92)には、仕切り部材(80)の筒部(81)の先端部が挿入されている。第2孔(92)と、筒部(81)の先端部の外周面との間には、円筒状の微小な隙間が形成される。本例では、第2孔(92)が、本開示の第1面に対応する。
【0089】
この微小な隙間が、冷媒が流れる冷媒流路(R)を形成する。冷媒流路(R)は、軸方向に沿って真っ直ぐに延びる。言い換えると、本実施形態の第2シール部(77)は、軸方向に沿って真っ直ぐに延びる冷媒流路(R)で構成される。本実施形態の冷媒流路(R)は非常に狭いので、冷媒が第1空間(S1)から冷媒流路(R)に流入する際に、狭い流路が抵抗になり、シールとして機能する。
【0090】
第2背面空間(66b)において、筒部(81)の径方向外側の空間が、第1空間(S1)である。第2背面空間(66b)において、筒部(81)の径方向内側の空間が、第2空間(S2)である。
【0091】
第2バイパス通路(78a)は、第2空間(S2)の冷媒を吸入通路(12a)にバイパスさせるための通路である。第2バイパス通路(78a)は、第2空間(S2)と吸入通路(12a)とを連通させる。第2バイパス通路(78a)の流入端は、第2空間(S2)に接続される。第2バイパス通路(78a)の流出端は、吸入通路(12a)に接続される。本実施形態の第2バイパス通路(78a)は、第2バイパス管(78)の内部に形成される。
【0092】
第2流量調節弁(79)は、第2バイパス通路(78a)に配置される。第2流量調節弁(79)は、その開度が調節可能に構成される。第2流量調節弁(79)は、開閉可能に構成される。第2流量調節弁(79)は、第2バイパス通路(78a)を流れる冷媒の流量を調節する。
【0093】
第2背面空間(66b)の第1空間(S1)は、第2圧縮室(66a)に連通する。そのため、第1空間(S1)の圧力は、第2圧縮室(66a)の吐出圧力である高圧に相当する圧力となる。第2背面空間(66b)の第2空間(S2)は、第2バイパス通路(78a)に連通する。そのため、第2流量調節弁(79)が開放されているときには、第2空間(S2)が吸入通路(12a)に連通するので、第2空間(S2)の圧力は、低圧(吸入圧力)に相当する圧力となる。言い換えると、このとき、第2空間(S2)の圧力は、第1空間(S1)の圧力よりも低い。
【0094】
第2流量調節弁(79)が閉鎖されているときには、第2空間(S2)の圧力は、第1空間(S1)の圧力に相当する。言い換えると、このとき、第2空間(S2)の圧力と第1空間(S1)の圧力とは、同一である。これは、第2空間(S2)は吸入通路(12a)と遮断されるとともに、第1空間(S1)の冷媒が隙間(A)を介して僅かに第2空間(S2)に流れ込むからである。
【0095】
このように、第2流量調節弁(79)を開放することにより、第2空間(S2)の圧力を下げることができる。これにより、低減部を備えないインペラに比べて、第2インペラ(50b)の背面(52)の全体に作用する圧力を低減できる。その結果、第2インペラ(50b)側から回転軸(40)に作用するスラスト荷重を相対的に小さくできる。
【0096】
(2-7-2)第1低減部
第1低減部(71)の第1シール部(72)は、第1背面空間(61b)を第1空間(S1)と第2空間(S2)とに仕切る。第1低減部(71)における仕切り部材(80)の筒部(81)は、第1インペラ(50a)の背面(52)から軸方向の一方側(
図2における左側)に向かって延びる。
【0097】
第1ハウジング(23)の中央部には、第1孔(91)と第2孔(92)とが形成される。第1ハウジング(23)の軸心、第1孔(91)の軸心、及び第2孔(92)軸心は、概ね一致する。第1孔(91)は、第1ハウジング(23)の軸方向の他端(
図2における右端)に形成される。第2孔(92)は、第1ハウジング(23)の軸方向の他端(
図2における左端)に形成される。
【0098】
第2孔(92)と、筒部(81)の先端部の外周面との間には、微小な隙間が形成される。この微小な隙間によって、第1シール部(72)が構成される。第1背面空間(61b)において、筒部(81)の径方向外側の空間が、第1空間(S1)である。第1背面空間(61b)において、筒部(81)の径方向内側の空間が、第2空間(S2)である。第1バイパス通路(73a)は、第2バイパス通路(78a)と同じ構成である。本実施形態の第1バイパス通路(73a)は、第1バイパス管(73)の内部に形成される。第1流量調節弁(74)は、第2流量調節弁(79)と同じ構成である。
【0099】
第1背面空間(61b)の第1空間(S1)は、第1圧縮室(61a)に連通する。そのため、第1空間(S1)の圧力は、第1圧縮室(61a)の吐出圧力である中間圧に相当する圧力となる。第1背面空間(61b)の第2空間(S2)は、第1バイパス通路(73a)に連通する。そのため、第1流量調節弁(74)が開放されているときには、第2空間(S2)が吸入通路(12a)に連通する。これにより、第2空間(S2)の圧力は、低圧(吸入圧力)に相当する圧力となる。言い換えると、このとき、第2空間(S2)の圧力は、第1空間(S1)の圧力よりも低い。一方、第1流量調節弁(74)が閉鎖されているときには、第2空間(S2)の圧力は、第1空間(S1)の圧力に相当する。言い換えると、このとき、第2空間(S2)と第1空間(S1)との圧力は、同一である。
【0100】
このように、第1流量調節弁(74)を開放することにより、第2空間(S2)の圧力を下げることができる。これにより、低減部を備えないインペラに比べて、第1インペラ(50a)の背面(52)の全体に作用する圧力を低減できる。その結果、第1インペラ(50a)側から回転軸(40)に作用するスラスト荷重を相対的に小さくできる。
【0101】
上述のように、圧縮機(10)が低減部(71,76)を備えることにより、運転条件に応じて生じる一対のインペラ(50a,50b)のそれぞれの背面(52)に作用する圧力の差を低減できる。
【0102】
(2-7)センサ
図4に示すように、圧縮機(10)は、5つの圧力センサ(101,102,103,104,105)を備える。
【0103】
第1圧力センサ(101)は、吸入管(12)に配置される。第1圧力センサ(101)は、吸入通路(12a)の圧力を検出する。言い換えると、第1圧力センサ(101)は、第1圧縮室(61a)に導入される冷媒の圧力を検出する。第1圧力センサ(101)は、ケーシング(20)内の第1吸入口(20a)付近又は電動機室(28)に配置されてもよい。
【0104】
第2圧力センサ(102)は、連絡管(11)に配置される。第2圧力センサ(102)は、連通路(11a)の圧力を検出する。言い換えると、第2圧力センサ(102)は、第2圧縮室(66a)に導入される冷媒の圧力を検出する。第2圧力センサ(102)は、ケーシング(20)内の第1吐出口(20b)付近又は第2吸入口(20c)に配置されてもよい。
【0105】
第3圧力センサ(103)は、吐出管(13)に配置される。第3圧力センサ(103)は、吐出通路(13a)の圧力を検出する。言い換えると、第3圧力センサ(103)は、ケーシング(20)から吐出される冷媒の圧力を検出する。第3圧力センサ(103)は、ケーシング(20)内の第2吐出口(20d)付近に配置される。
【0106】
第4圧力センサ(104)は、第1ハウジング(23)の第2孔(92)に配置される。第4圧力センサ(104)は、第1背面空間(61b)の第2空間(S2)の圧力を検出する。言い換えると、第4圧力センサ(104)は、第1インペラ(50a)の背面圧力を検出する。第4圧力センサ(104)は、第1バイパス管(73)に配置されてもよい。この場合、第4圧力センサ(104)は、第1バイパス管(73)内の第1バイパス通路(73a)の流入端付近に配置される。
【0107】
第5圧力センサ(105)は、第2ハウジング(25)の第2孔(92)に配置される。第5圧力センサ(105)は、第2背面空間(66b)の第2空間(S2)の圧力を検出する。言い換えると、第5圧力センサ(105)は、第2インペラ(50b)の背面圧力を検出する。第5圧力センサ(105)は、第2バイパス管(78)に配置されてもよい。この場合、第5圧力センサ(105)は、第2バイパス管(78)内の第2バイパス通路(78a)の流入端付近に配置される。
【0108】
(2-8)制御部
制御部(110)は、圧縮機(10)の運転を制御する。制御部(110)は、マイクロコンピュータと、メモリデバイスとを含む。メモリデバイスは、各種のプログラム及びデータを記憶する。マイクロコンピュータは、メモリデバイスから読み出したプログラムを実行する。
【0109】
制御部(110)は、第1流量調節弁(74)及び第2流量調節弁(79)の動作を制御する。制御部(110)は、第1圧力センサ(101)、第2圧力センサ(102)、第3圧力センサ(103)、第4圧力センサ(104)、及び第5圧力センサ(105)の検出値に基づいて、第1流量調節弁(74)及び第2流量調節弁(79)の開閉又は開度を調節する。
【0110】
詳細には、制御部(110)は、第1~第5圧力センサ(101,102,103,104,105)のそれぞれの検出値を取得する。制御部(110)は、各圧力センサ(101,102,103,104,105)の検出値に基づいて、回転軸(40)の両側から作用するスラスト荷重を算出する。制御部(110)は、算出したスラスト荷重に基づいて、第1流量調節弁(74)及び第2流量調節弁(79)の開閉又は開度を調節する。
【0111】
これにより、回転軸(40)に作用するスラスト荷重に対して直接的な指標である圧力に基づいて各流量調節弁(74,79)の開閉又は開度を調節するので、実際に作用するスラスト荷重に応じて各流量調節弁(74,79)を制御できる。これにより、圧縮機(10)の信頼性を向上できる。
【0112】
(3)運転動作
圧縮機(10)の運転動作について説明する。
【0113】
圧縮機(10)の運転時には、電動機(30)が通電状態となる。これにより、回転軸(40)が回転する。回転軸(40)が回転すると、回転軸(40)に連結する各インペラ(50a,50b)が回転する。第1インペラ(50a)が回転すると、低圧(吸入圧力)の冷媒が吸入管(12)から第1吸入口(20a)を経由して電動機室(28)に流入する。電動機室(28)に流入した冷媒は、第1圧縮室(61a)に流れる。第1圧縮室(61a)では、第1インペラ(50a)のブレード(53)によって冷媒が径方向外方へ送られ、冷媒の流速が早くなる。この冷媒の速度が加速されることで、冷媒の圧力が上昇する。
【0114】
第1圧縮室(61a)に流入した低圧の冷媒は、吸入圧力よりも高い中間圧力まで圧縮される。中間圧力まで圧縮された冷媒は、ディフューザ(62)を経由してスクロール流路(63)を流れる。スクロール流路(63)を流れた冷媒は、第1吐出口(20b)を経由して、連通路(11a)に流入する。
【0115】
連通路(11a)に流入した中間圧力の冷媒は、第2吸入口(20c)を経由して、中間圧流路(29)に流入する。中間圧流路(29)に流入した冷媒は、第2圧縮室(66a)に流れる。第2圧縮室(66a)では、第1圧縮室(61a)と同様に、第2インペラ(50b)のブレード(53)によって冷媒の速度が加速されることで第2圧縮室(66a)の圧力が上昇する。第2圧縮室(66a)に流入した冷媒は、中間圧力よりも高い高圧(吐出圧力)まで圧縮される。
【0116】
吐出圧力まで圧縮された冷媒は、ディフューザ(67)を経由してスクロール流路(68)を流れる。スクロール流路(68)を流れた冷媒は、第2吐出口(20d)を経由して、吐出管(13)に流入する。吐出管(13)に流入した高圧の冷媒は、ケーシング(20)の外部へ送られる。圧縮機(10)から吐出された冷媒は、冷凍装置(1)の冷凍サイクルに利用される。
【0117】
(4)流量調節弁の動作
次に、第1流量調節弁(74)及び第2流量調節弁(79)の動作について説明する。
【0118】
圧縮機(10)では、運転条件によって、回転軸(40)の両側から作用するスラスト荷重の釣り合いが崩れることがある。具体的には、運転条件によって、第1インペラ(50a)側から作用するスラスト荷重L1に対して、第2インペラ(50b)側から作用するスラスト荷重L2が大きくなる場合と、スラスト荷重L2が小さくなる場合とがある。以下の説明において、圧縮機(10)の運転開始時には、第1流量調節弁(74)及び第2流量調節弁(79)は閉鎖されているものとする。
【0119】
また、
図5は、横軸を蒸発温度Teとし、縦軸を凝縮温度Tcとする運転エリアマップを示す。
図5の運転エリアマップにおいて、灰色の領域は運転可能エリアを示し、黒色の領域は運転不可エリアを示す。
【0120】
図5において、(a)は第1流量調節弁(74)及び第2流量調節弁(79)がともに閉鎖されている場合を示し、(b)は第1流量調節弁(74)のみが開放された場合を示し、(c)は第2流量調節弁(79)のみが開放された場合を示し、(d)は第1流量調節弁(74)及び第2流量調節弁(79)がともに開放されている場合を示す。
図5(e)は、
図5(a)~(d)を統合した図を示し、圧縮機(10)全体として運転可能なエリアを示す。なお、
図5において、詳細な数値は省略する。
【0121】
(4-1)第1流量調節弁のみ開放する場合
制御部(110)は、スラスト荷重L1がスラスト荷重L2よりも大きい場合(L1<L2)、第1流量調節弁(74)を開放させる。第1流量調節弁(74)が開放されると、第1背面空間(61b)の第2空間(S2)と吸入通路(12a)とが連通し、該第2空間(S2)の圧力が小さくなる。これに伴い、第1インペラ(50a)の背面(52)全体に作用する圧力が相対的に小さくなる。これにより、第1インペラ(50a)側のスラスト荷重L1と第2インペラ(50b)側のスラスト荷重L2との釣り合いをとることができる。
【0122】
ここで、第1流量調節弁(74)を開放することにより、第1圧縮室(61a)から吐出される冷媒の一部が吸入通路(12a)に流入するので、第1圧縮室(61a)から連通路(11a)に流入する冷媒の流量が減少する。連通路(11a)に流入する冷媒の流量が減少することに伴って、第2圧縮室(66a)で圧縮される冷媒の量が減少する。これにより、ケーシング(20)から外部に吐出される冷媒の流量も減少する。このとき、
図5の(a)と(b)に示すように、圧縮機(10)の運転可能エリアは、
図5における中央の領域から右下の領域に遷移する。
【0123】
なお、第1流量調節弁(74)を開放させる場合において、各流量調節弁(74,79)の開度を調節することにより、ケーシング(20)から外部に吐出される冷媒の流量を調節してもよい。
【0124】
(4-2)第2流量調節弁のみ開放する場合
制御部(110)は、スラスト荷重L2がスラスト荷重L1よりも大きい(L1<L2)場合、第2流量調節弁(79)を開放させる。第2流量調節弁(79)が開放されると、第2背面空間(66b)の第2空間(S2)と吸入通路(12a)とが連通し、該第2空間(S2)の圧力が小さくなる。これに伴い、第2インペラ(50b)の背面(52)全体に作用する圧力が相対的に小さくなる。これにより、第1インペラ(50a)側のスラスト荷重L1と第2インペラ(50b)側のスラスト荷重L2との釣り合いをとることができる。
【0125】
ここで、第2流量調節弁(79)を開放することにより、第2圧縮室(66a)から吐出される冷媒の一部が吸入通路(12a)に流入するので、第2圧縮室(66a)から吐出通路(13a)に流入する冷媒の流量が減少する。これにより、ケーシング(20)から外部に吐出される冷媒の流量も減少する。このとき、
図5の(a)と(c)に示すよう、圧縮機(10)の運転可能エリアは、
図5における中央の領域から左上の領域に遷移する。
【0126】
なお、第2流量調節弁(79)を開放させる場合において、各流量調節弁(74,79)の開度を調節することにより、ケーシング(20)から外部に吐出される冷媒の流量を調節してもよい。
【0127】
(4-3)第1流量調節弁及び第2流量調節弁を開放する場合
制御部(110)は、ケーシング(20)から外部に吐出される冷媒の量を大きく減少させたい場合、第1流量調節弁(74)及び第2流量調節弁(79)を開放させる。このとき、第1背面空間(61b)の第2空間(S2)および第2背面空間(66b)の第2空間(S2)とは、ともに圧力が小さくなるので、第1インペラ(50a)側のスラスト荷重L1と第2インペラ(50b)側のスラスト荷重L2との釣り合いは維持される。
【0128】
第1流量調節弁(74)が開放されると、第1圧縮室(61a)から吐出される冷媒の一部が吸入通路(12a)に流入するので、第1圧縮室(61a)から連通路(11a)を介して第2圧縮室(66a)に流入する冷媒の流量が減少する。そして、第2流量調節弁(79)も開放されるので、第2圧縮室(66a)から吐出される冷媒の一部が吸入通路(12a)に流入する。そのため、第2圧縮室(66a)から吐出通路(13a)に流入する冷媒の流量が更に減少する。これにより、ケーシング(20)から外部に吐出される冷媒の流量を大幅に減少できる。このとき、
図5の(a)と(d)に示すように、圧縮機(10)の運転可能エリアは、その領域が拡大する。
【0129】
なお、第1流量調節弁(74)及び第2流量調節弁(79)を開放させる場合において、各流量調節弁(74,79)の開度を調節することにより、ケーシング(20)から外部に吐出される冷媒の流量を調節してもよい。
【0130】
上述のように、第1流量調節弁(74)及び第2流量調節弁(79)の開閉及び開度を変更することにより、圧縮機(10)の運転可能エリアを変更及び拡大することができる。その結果、
図5(e)に示すように、圧縮機(10)全体として運転可能エリアを拡大することができる。
【0131】
ここで、本実施形態の圧縮機(10)は、圧縮機の効率を評価する運転条件(定格条件)において、第1流量調節弁(74)及び第2流量調節弁(79)を閉鎖した状態で最も効率が良くなるように設計される。圧縮機の効率を評価する運転条件(定格条件)は、圧縮機の運転条件として頻度の高い条件と言える。したがって、圧縮機(10)の運転において、第1流量調節弁(74)又は第2流量調節弁(79)を開放する頻度は比較的低い。
【0132】
第1流量調節弁(74)又は第2流量調節弁(79)を開放すると、第1圧縮室(61a)及び第2圧縮室(66a)で圧縮された冷媒の一部が吸入通路(12a)に流入するため、圧縮機の効率が低下することがある。しかし、第1流量調節弁(74)又は第2流量調節弁(79)を開放する頻度は比較的低いため、圧縮機(10)が第1低減部(71)及び第2低減部(76)を備えていても、圧縮機(10)の効率はあまり低下しない。
【0133】
一方で、定格条件以外の運転条件で圧縮機(10)を運転した場合、上述のように、運転条件によって、回転軸(40)の両側から作用するスラスト荷重の釣り合いが崩れることがある。このような場合に、第1流量調節弁(74)又は第2流量調節弁(79)を開放することにより、軸方向両側のスラスト荷重のバランスを保つことができる。これにより、所定の運転条件におけるスラスト軸受(41)の負荷を低減でき、スラスト軸受(41)の大型化を抑制できる。加えて、第1流量調節弁(74)又は第2流量調節弁(79)を開放する、若しくは第1流量調節弁(74)又は第2流量調節弁(79)の開度を調節することにより、冷媒の流量を調節できるので、スラスト軸受(41)の大型化することなく、圧縮機(10)の運転可能エリアを拡大できる。
【0134】
(5)特徴
(5-1)
本実施形態の圧縮機(10)は、ブレード(53)が設けられる前面(51)が前記電動機(30)を挟んで互いに向かい合うように配置される一対のインペラ(50a,50b)と、一対のインペラ(50a,50b)のうち一方のインペラ(50a,50b)の背面空間(61b,66b)の圧力を低減する低減部(71,76)とを備える。
【0135】
そのため、低減部(71,76)により一方のインペラ(50a,50b)の背面空間(61b,66b)の圧力を低減できるので、一対のインペラ(50a,50b)のそれぞれの背面(52)に作用する圧力の差を低減できる。これにより、スラスト軸受(41)の負荷を低減できるので、スラスト軸受(41)の大型化を抑制できる。その結果、回転軸(40)が高速回転した際に生じる風損を低減できる。加えて、スラスト軸受(41)の大型化を抑制できるので、回転軸(40)全体の剛性の低下を抑制できる。このように、ターボ流体機械(10)の機械効率の低下を抑制できる。
【0136】
(5-2)
本実施形態の圧縮機(10)は、ケーシング(20)に流体を導入する吸入通路(12a)を更に備える。低減部(71,76)は、背面空間(61b,66b)を第1空間(S1)と第2空間(S2)とに仕切るシール部(72,77)と、第2空間(S2)の流体を吸入通路(12a)にバイパスさせるバイパス通路(73a,78a)とを有する。第1空間(S1)は、一方のインペラ(50a,50b)に対応する圧縮室(61a,66a)の吐出圧力に相当する圧力である。第2空間(S2)の圧力は、第1空間(S1)の圧力よりも低い。
【0137】
そのため、一方のインペラ(50a,50b)の背面(52)全体に作用する圧力が、第2空間(S2)が形成されていない場合に比べて、小さくなる。これにより、一対のインペラ(50a,50b)のそれぞれの背面(52)に作用する圧力の差を低減できる。
【0138】
(5-3)
本実施形態の圧縮機(10)では、一方のインペラ(50a,50b)は、一方のインペラ(50a,50b)の背面(52)から軸方向に離れるように延びる筒状の第1部材(80)を有する。ケーシング(20)は、第1部材(80)の外周面と対向する第1面(92)を有する。シール部(72,77)は、第1部材(80)の外周面と第1面(92)との間に形成される隙間(A)によって構成される。そのため、少ない部品の追加でシール部(72,77)を形成できる。
【0139】
(5-4)
本実施形態の圧縮機(10)は、低減部(71,76)は、バイパス通路(73a,78a)に配置される弁(74,79)を更に有する。そのため、弁(74,79)の開閉又は開度を変更することにより、第2空間(S2)の圧力を調節できる。
【0140】
(5-5)
本実施形態の圧縮機(10)は、弁(74,79)を制御する制御部(110)を更に備える。制御部(110)は、一対の圧縮室(61a,66a)のそれぞれに導入される流体の吸入圧力、ケーシング(20)から吐出される流体の吐出圧力、及び一方のインペラ(50a,50b)の背面圧力に基づいて、弁(74,79)の開閉又は開度を調節する。
【0141】
(5-6)
本実施形態の圧縮機(10)は、一対のインペラ(50a,50b)のそれぞれに低減部(71,76)が設けられる。そのため、様々な運転条件においてインペラ(50a,50b)の背面空間(61b,66b)の圧力を調節できる。
【0142】
(5-7)
本実施形態の圧縮機(10)は、一対のインペラ(50a,50b)は、ケーシング(20)に導入した吸入圧力の流体を吸入圧力よりも高圧の中間圧力まで圧縮する第1インペラ(50a)と、中間圧力の流体を中間圧力よりも高圧の吐出圧力まで圧縮する第2インペラ(50b)とで構成される。第2インペラ(50b)の外径は、第1インペラ(50a)の外径よりも小さい。そのため、第2インペラ(50b)の背面(52)から作用する荷重を小さくできる。
【0143】
(5-8)
本実施形態の圧縮機(10)は、ケーシング(20)内に配置されるとともに回転軸(40)を回転可能に支持する軸受(41,45,45)を更に備える。軸受(41,45,45)は、フォイル軸受又は磁気軸受である。軸受(41,45,45)は、フォイル軸受又は磁気軸受であるので、オイルを用いていない軸受である。
【0144】
(5-9)
本実施形態の圧縮機(10)では、回転軸(40)の最高回転数は、30000rpm以上である。回転軸(40)の最高回転数が30000rpm以上であるので、高速回転するターボ流体機械(10)として適用できる。
【0145】
(5-10)
本実施形態のターボ流体機械(10)は、ターボ圧縮機である。流体は、冷媒である。ここで、流体が冷媒の場合には、流体が空気である場合に比べて、インペラ(50a,50b)の背面(52)に作用する圧力が大きくなる。そのため、回転軸(40)に作用するスラスト荷重が大きくなる。
【0146】
(5-11)
本実施形態の冷凍装置(1)は、冷凍サイクルを行う冷媒回路(2)を備える。冷媒回路(2)は、ターボ圧縮機(10)を含む。
【0147】
(5-12)
本実施形態の冷凍装置(1)の冷凍能力は、100アメリカ冷凍トン以下である。冷凍装置(1)の冷凍能力が100アメリカ冷凍トン以下であるので、冷凍能力の比較的小さい冷凍装置(1)にターボ圧縮機(10)を適用できる。
【0148】
(6)変形例
上記実施形態については以下のような変形例としてもよい。なお、以下の説明では、原則として上記実施形態と異なる点について説明する。
【0149】
(6-1)変形例1
上記実施形態の第1シール部(72)又は第2シール部(77)は、ラビリンス構造を有するラビリンスシールであってもよい。
図6に示すように、本変形例のシール部(72,77)は、膨張室を有する膨張型のラビリンスシールである。なお、
図6では、第2低減部(76)を拡大して示す。第1低減部(71)の第1シール部(72)は、本変形例の第2シール部(77)と同様の構造としてもよい。
【0150】
第2シール部(77)は、仕切り部材(80)と第2ハウジング(25)との間に形成される隙間(A)によって構成される。本変形例では、第2シール部(77)は、冷媒流路(R)と複数の膨張室(E)とで構成される。
【0151】
本変形例の第2ハウジング(25)は、上記実施形態と同一の構成である。本変形例の仕切り部材(80)は、筒部(81)と、複数の突起部(82)とを有する。筒部(81)は、上記実施形態と同一の構成である。各突起部(82)は、筒部(81)の外周面から径方向外側に向かって突出する。各突起部(82)は、筒部(81)の周囲を囲む円環状に形成される。各突起部(82)同士の間には、膨張室(E)が形成される。複数の膨張室(E)は、軸方向に一定の間隔で並ぶ。
【0152】
各突起部(82)の先端は、第2ハウジング(25)の第2孔(92)と対向する。各突起部(82)の先端と第2ハウジング(25)の第2孔(92)との間には、微小な隙間が形成される。微小な隙間が、冷媒流路(R)を形成する。冷媒流路(R)は、軸方向に沿って真っ直ぐに延びる。冷媒流路(R)は、複数の膨張室(E)に連通する。
【0153】
本変形例では、第1空間(S1)から第2空間(S2)に向かう冷媒は、冷媒流路(R)に沿って流れる。その際、冷媒が冷媒流路(R)の途中に形成される膨張室(E)に流入すると、冷媒が膨張して減圧される。膨張室(E)を流出した冷媒は冷媒流路(R)に流出した後、隣接する膨張室(E)に流入する。このように、冷媒が、冷媒流路(R)から膨張室(E)への流入が複数回繰り返される。冷媒が膨張室(E)から冷媒流路(R)に流入することにより、急にその流れやすさが阻害される。これにより、流れの抵抗が生じ圧力損失が発生する。この圧力損失が発生することで、第1空間(S1)から第2空間への冷媒の流入を抑制できる。
【0154】
(6-2)変形例2
上記実施形態の第1シール部(72)又は第2シール部(77)は、別のラビリンス構造を有するラビリンスシールであってもよい。
図7に示すように、本変形例のシール部(72,77)は、迷路型のラビリンスシールである。なお、
図7では、第2低減部(76)を拡大して示す。第1低減部(71)の第1シール部(72)は、本変形例の第2シール部(77)と同様の構造としてもよい。
【0155】
第2シール部(77)は、仕切り部材(80)と第2ハウジング(25)との間に形成される隙間(A)によって構成される。本変形例では、第2シール部(77)は、冷媒流路(R)によって構成される。
【0156】
本変形例の仕切り部材(80)は、筒部(81)と、複数の突起部(82)とを有する。筒部(81)は、上記実施形態と同一の構成である。各突起部(82)は、筒部(81)の外周面から径方向外側に向かって突出する。各突起部(82)は、筒部(81)の周囲を囲む円環状に形成される。複数の突起部(82)は、軸方向に一定の間隔で並ぶ。
【0157】
本変形例の第2ハウジング(25)は、第2孔(92)に、複数の凹部(94)が形成される。凹部(94)は、径方向外側に窪んでいる。複数の凹部(94)は、軸方向に一定の間隔で並ぶ。凹部(94)は、仕切り部材(80)の突起部(82)に対向する。
【0158】
仕切り部材(80)の各突起部(82)は、第2ハウジング(25)の凹部(94)のそれぞれに噛み合うように配置される。各突起部(82)と第2ハウジング(25)の凹部(94)との間には、微小な隙間が形成される。この微小な隙間が、冷媒流路(R)を形成する。冷媒流路(R)は、ジグザグに曲がっている。
【0159】
本変形例では、第1空間(S1)の冷媒の一部は、第2ハウジング(25)の第2孔(92)と、仕切り部材(80)における左端の突起部(82)の先端との間の隙間から冷媒流路(R)に流入する。この隙間に入り込んだ冷媒は、左端の突起部(82)の右側面に沿って径方向内方に流れた後、筒部(81)の外周面に沿って軸方向他方側に流れる。その後、隣接する他の突起部(82)の左側面に沿って径方向外方に流れる。このように、冷媒は、隙間(A)を軸方向の他方側に流れつつ、径方向の内方と外方とを交互に向きを変えて流れることにより、非常に狭い流路を比較的長い距離に亘って流れる。これにより、第1空間(S1)から第2空間への冷媒の流入を抑制できる。
【0160】
(6-3)変形例3
上記実施形態の第1シール部(72)又は第2シール部(77)は、別のラビリンス構造を有するラビリンスシールであってもよい。
図8に示すように、本変形例のシール部(72,77)は、迷路型のラビリンスシールである。なお、
図8では、第2低減部(76)を拡大して示す。第1低減部(71)の第1シール部(72)は、本変形例の第2シール部(77)と同様の構造としてもよい。
【0161】
第2シール部(77)は、仕切り部材(80)と第2ハウジング(25)との間に形成される隙間(A)によって構成される。本変形例では、第2シール部(77)は、冷媒流路(R)によって構成される。
【0162】
本変形例の仕切り部材(80)は、筒部(81)を有する。筒部(81)は、第2インペラ(50b)の背面(52)から軸方向に延びる。筒部(81)の外周面には、第1段差部(83)が設けられる。第1段差部(83)は、軸方向の他方側(
図8における右側)に向かって、各段の外径が小さくなっている。
【0163】
第2ハウジング(25)の内周面には、第2段差部(95)が設けられる。第2段差部(95)は、第2ハウジング(25)における第1孔(91)と第2孔(92)との間に形成される。第2段差部(95)は、軸方向の他方側(
図8における右側)に向かって、各段の内径が小さくなっている。
【0164】
第1段差部(83)と第2段差部(95)とは、互いに対応する。第1段差部(83)の外周面と第2段差部(95)の内周面(96)との間には、微小な隙間が形成される。この微小な隙間が冷媒流路(R)を形成する。冷媒流路(R)は、階段状に形成される。第2段差部(95)の内周面(96)が、本開示の第1面に対応する。
【0165】
本変形例では、第1空間(S1)の冷媒の一部が、階段状に形成される冷媒流路(R)に流入するので、非常に狭い流路を比較的長い距離に亘って流れる。これにより、第1空間(S1)から第2空間への冷媒の流入を抑制できる。
【0166】
(6-4)変形例4
上記実施形態の第1シール部(72)又は第2シール部(77)は、別の構造を有するシールであってもよい。
図9に示すように、本変形例のシール部(72,77)は、第2インペラ(50b)の背面(52)と第2ハウジング(25)との間の隙間(B)によって構成される。言い換えると、本変形例の第2インペラ(50b)には、仕切り部材が設けられていない。なお、
図9では、第2低減部(76)を拡大して示す。第1低減部(71)の第1シール部(72)は、本変形例の第2シール部(77)と同様の構造としてもよい。
【0167】
具体的には、
図9に示すように、第2ハウジング(25)は、第2インペラ(50b)の背面(52)に対向して配置される。第2ハウジング(25)は、本開示の壁部に対応する。第2ハウジング(25)は、突出部(97)を有する。突出部(97)は、第2インペラ(50b)の背面(52)に向かって突出する。突出部(97)は、第2ハウジング(25)の中央に形成された貫通孔の周囲を囲むように円環状に形成される。
【0168】
第2インペラ(50b)の背面(52)と第2ハウジング(25)の突出部(97)における先端面(97a)との間には、隙間(B)が形成される。本変形例のシール部(72,77)は、隙間(B)によって構成される。シール部(72,77)は、径方向に真っ直ぐに延びる冷媒流路(R)によって構成される。本変形例では、第2背面空間(66b)において、突出部(97)の径方向外側の空間が、第1空間(S1)である。第2背面空間(66b)において、突出部(97)の径方向内側の空間が、第2空間(S2)である。
【0169】
本実施形態の冷媒流路(R)は非常に狭いので、冷媒が第1空間(S1)から冷媒流路(R)に流入する際に、狭い流路が抵抗になり、シールとして機能する。
【0170】
(6-5)変形例5
上記実施形態の低減部(71,76)は、流量調節弁(74,79)に代えて、開閉弁を有してもよい。言い換えると、弁は流量を調節できなくてもよい。本変形例においても、開閉弁の開閉を変更することにより、第2空間(S2)の圧力を変更できる。
【0171】
(6-6)変形例6
上記実施形態の低減部(71,76)は、シール部(72,77)とバイパス通路(73a,78a)とで構成されてもよい。言い換えると、低減部(71,76)は、弁を有さなくてもよい。
【0172】
(6-7)変形例7
上記実施形態の圧縮機(10)は、第1低減部(71)及び第2低減部(76)のいずれか一方を備えていてもよい。言い換えると、圧縮機(10)は、第1低減部(71)及び第2低減部(76)の両方を備えていなくてもよい。
【0173】
圧縮機(10)が第1低減部(71)のみ備える場合には、圧縮機(10)は、第5圧力センサ(105)を備えていない。そして、この場合、制御部(110)は、第1圧力センサ(101)、第2圧力センサ(102)、第3圧力センサ(103)、及び第4圧力センサ(104)の検出値に基づいて、第1流量調節弁(74)の開閉又は開度を調節する。
【0174】
圧縮機(10)が第2低減部(76)のみ備える場合には、圧縮機(10)は、第4圧力センサ(104)を備えていない。そして、この場合、制御部(110)は、第1圧力センサ(101)、第2圧力センサ(102)、第3圧力センサ(103)、及び第5圧力センサ(105)の検出値に基づいて、第2流量調節弁(79)の開閉又は開度を調節する。
【0175】
(6-8)変形例8
上記実施形態の制御部(110)は、冷媒の温度に基づいて、第1流量調節弁(74)及び第2流量調節弁(79)の開閉又は開度を調節してもよい。
【0176】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0177】
上記実施形態の低減部(71,76)は、インペラ(50a,50b)の背面に設けられるスクリューであってもよい。この場合、スクリューは、インペラ(50a,50b)の背面の中央部に固定され、回転軸(40)と一体となって回転する。スクリューの羽根は、回転に伴ってインペラ(50a,50b)の背面空間(61b,66b)の圧力を外に逃がすように設けられる。これにより、スクリューの回転に伴って、スクリューが設けられた部分の圧力が低下するので、インペラ(50a,50b)の背面(52)の全体に作用する圧力を低減できる。
【0178】
上記実施形態の連通路(11a)は、連絡管(11)に代えて、ケーシング(20)に形成された通路であってもよい。
【0179】
上記実施形態のターボ流体機械を、ターボ圧縮機(10)ではなく、ポンプ(例えば遠心ポンプ)としてもよい。この場合、流体として液体が適用される。
【0180】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0181】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0182】
以上説明したように、本開示は、ターボ流体機械、及び冷凍装置について有用である。
【符号の説明】
【0183】
1 冷凍装置
2 冷媒回路
11a 連通路
12a 吸入通路
20 ケーシング
25 第2ハウジング(壁部)
30 電動機
40 回転軸
41,45,45 軸受
50a 第1インペラ(インペラ)
50b 第2インペラ(インペラ)
51 前面
52 背面
53 ブレード
61a,66a 圧縮室
61b,66b 背面空間
71,76 低減部
72,77 シール部
73a,78a バイパス通路
74,79 流量調節弁(弁)
80 仕切り部材(第1部材)
97 突出部
97a 先端面
110 制御部
S1 第1空間
S2 第2空間
【手続補正書】
【提出日】2024-07-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入した吸入圧力の流体を前記吸入圧力よりも高圧の中間圧力まで圧縮した後に、前記中間圧力の流体を前記中間圧力よりも高圧の吐出圧力まで圧縮するターボ流体機械であって、
回転軸(40)と、
前記回転軸(40)を駆動する電動機(30)と、
前記回転軸(40)と一体に回転することにより圧縮室(61a,66a)に吸入された流体を圧縮し、ブレード(53)が設けられる前面(51)が前記電動機(30)を挟んで互いに向かい合うように配置される一対のインペラ(50a,50b)と、
前記一対のインペラ(50a,50b)のそれぞれに対応する前記圧縮室(61a,66a)を有するケーシング(20)と、
一対の前記圧縮室(61a,66a)を互いに連通する連通路(11a)と、
前記一対のインペラ(50a,50b)のうち一方のインペラ(50a,50b)の背面空間(61b,66b)の圧力を低減する低減部(71,76)と、を備え、
前記ケーシング(20)に流体を導入する吸入通路(12a)を更に備え、
前記低減部(71,76)は、
前記背面空間(61b,66b)を第1空間(S1)と第2空間(S2)とに仕切るシール部(72,77)と、
前記第2空間(S2)の流体を前記吸入通路(12a)にバイパスさせるバイパス通路(73a,78a)と、を有し、
前記第1空間(S1)は、前記一方のインペラ(50a,50b)に対応する前記圧縮室(61a,66a)の吐出圧力に相当する圧力であり、
前記第2空間(S2)の圧力は、前記第1空間(S1)の圧力よりも低い
ターボ流体機械。
【請求項2】
前記一方のインペラ(50a,50b)は、前記一方のインペラ(50a,50b)の背面(52)から軸方向に離れるように延びる筒状の第1部材(80)を有し、
前記ケーシング(20)は、前記第1部材(80)の外周面と対向する第1面(92,96)を有し、
前記シール部(72,77)は、前記第1部材(80)の外周面と前記第1面(92,96)との間に形成される隙間(A)によって構成される
請求項1に記載のターボ流体機械。
【請求項3】
前記ケーシング(20)は、前記一方のインペラ(50a,50b)の背面(52)に対向する壁部(25)を有し、
前記壁部(25)は、前記一方のインペラ(50a,50b)の背面(52)に向かって突出する環状の突出部(97)を有し、
前記シール部(72,77)は、前記一方のインペラ(50a,50b)の背面(52)と前記突出部(97)の先端面(97a)との間に形成される隙間(B)によって構成される
請求項1に記載のターボ流体機械。
【請求項4】
前記低減部(71,76)は、前記バイパス通路(73a,78a)に配置される弁(74,79)を更に有する
請求項1~3のいずれか1つに記載のターボ流体機械。
【請求項5】
前記弁(74,79)を制御する制御部(110)を更に備え、
前記制御部(110)は、一対の前記圧縮室(61a,66a)のそれぞれに導入される流体の吸入圧力、前記ケーシング(20)から吐出される流体の吐出圧力、及び前記一方のインペラ(50a,50b)の背面圧力に基づいて、前記弁(74,79)の開閉又は開度を調節する
請求項4に記載のターボ流体機械。
【請求項6】
前記一対のインペラ(50a,50b)のそれぞれに前記低減部(71,76)が設けられる
請求項1に記載のターボ流体機械。
【請求項7】
前記一対のインペラ(50a,50b)は、
前記ケーシング(20)に導入した吸入圧力の流体を前記吸入圧力よりも高圧の中間圧力まで圧縮する第1インペラ(50a)と、
前記中間圧力の流体を前記中間圧力よりも高圧の吐出圧力まで圧縮する第2インペラ(50b)と、で構成され、
前記第2インペラ(50b)の外径は、前記第1インペラ(50a)の外径よりも小さい
請求項1に記載のターボ流体機械。
【請求項8】
前記ケーシング(20)内に配置されるとともに前記回転軸(40)を回転可能に支持する軸受(41,45,45)を更に備え、
前記軸受(41,45,45)は、フォイル軸受又は磁気軸受である
請求項1に記載のターボ流体機械。
【請求項9】
前記回転軸(40)の最高回転数は、30000rpm以上である
請求項1に記載のターボ流体機械。
【請求項10】
前記ターボ流体機械は、ターボ圧縮機(10)であり、
前記流体は、冷媒である
請求項1に記載のターボ流体機械。
【請求項11】
冷凍サイクルを行う冷媒回路(2)を備える冷凍装置であって、
前記冷媒回路(2)は、請求項10に記載のターボ流体機械を含む
冷凍装置。
【請求項12】
前記冷凍装置の冷凍能力は、100アメリカ冷凍トン以下である
請求項11に記載の冷凍装置。