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特開2024-135545画像処理装置、画像処理方法、プログラム及び画像処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135545
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、プログラム及び画像処理システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240927BHJP
【FI】
A61B6/00 350M
A61B6/00 330B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046291
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 良平
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA13
4C093AA26
4C093DA03
4C093EC04
4C093FA18
4C093FC26
4C093FF19
4C093FF22
(57)【要約】
【課題】静止画像と動態画像とで撮影方式が異なる場合でも最適な散乱線補正処理を実施することができる画像処理装置等を提供する。
【解決手段】画像処理装置は、静止画撮影により得られた静止画像及び動態画像撮影により得られた動態画像に散乱線補正処理を実施する画像処理部と、画像処理部により実施される散乱線補正処理に関する散乱線パラメーターの設定を受け付ける設定部と、を備え、設定部は、静止画像の場合と動態画像の場合とで、散乱線パラメーターの設定を受け付ける際の設定手段を変更する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線撮影により得られた静止画像及び動態画像に散乱線補正処理を実施する画像処理部と、
前記散乱線補正処理に関するパラメーターの設定を受け付ける設定部と、を備え、
前記設定部は、前記静止画像の場合と前記動態画像の場合とで、設定可能な設定条件を変更する、
画像処理装置。
【請求項2】
前記散乱線補正処理は、前記放射線撮影の撮影条件に基づいて被写体の体厚を計測して散乱線補正を実施する第1の補正処理と、前記静止画像又は前記動態画像のヒストグラム解析により被写体の体厚を推定して散乱線補正を実施する第2の補正処理と、を含み、
前記設定条件は、前記パラメーターの前記設定の受け付けの可否を含み、
前記設定部は、画像の種別が前記動態画像の場合、前記第2の補正処理に関する前記パラメーターの前記設定の受け付けを不可に変更する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記散乱線補正処理は、前記静止画像又は前記動態画像のヒストグラム解析により被写体の体厚を推定して散乱線補正を実施する体厚推定補正処理を含み、
前記設定条件は、前記体厚推定補正処理に関する前記パラメーターの曝射線量の選択肢の下限値を含み、
前記設定部は、画像の種別が前記動態画像の場合、前記静止画撮影の場合よりも曝射線量の選択肢の下限値を拡大する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記散乱線補正処理は、前記静止画像又は前記動態画像のヒストグラム解析により被写体の体厚を推定して散乱線補正を実施する体厚推定補正処理を含み、
前記設定条件は、前記体厚推定補正処理に関する前記パラメーターの曝射線量の選択肢の刻み含み、
前記設定部は、画像の種別が前記動態画像の場合、前記静止画撮影の場合よりも曝射線量の選択肢の刻みを増やす、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
放射線撮影により得られた静止画像及び動態画像に散乱線補正処理を実施する画像処理工程と、
前記散乱線補正処理に関するパラメーターの設定を受け付ける設定工程と、を有し、
前記設定工程では、前記静止画像の場合と前記動態画像の場合とで、設定可能な設定条件を変更する、
画像処理方法。
【請求項6】
コンピューターを、
放射線撮影により得られた静止画像及び動態画像に散乱線補正処理を実施する画像処理部、
前記画像処理部により実施される前記散乱線補正処理に関するパラメーターの設定を受け付ける設定部、として機能させ、
前記設定部は、前記静止画像の場合と前記動態画像の場合とで、設定可能な設定条件を変更する、
プログラム。
【請求項7】
被写体の静止画像及び動態画像を撮影する放射線撮影装置と、
前記放射線撮影装置により撮影された前記静止画像及び前記動態画像に散乱線補正処理を実施する画像処理部と、前記散乱線補正処理に関するパラメーターの設定を受け付ける設定部と、を有する画像処理装置と、を備え、
前記設定部は、
前記設定部は、前記静止画像の場合と前記動態画像の場合とで、設定可能な設定条件を変更する、
画像処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、プログラム及び画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線等を用いた放射線撮影では、被写体の体厚に応じて散乱線が生じる。散乱線の影響を受けた医用画像は、コントラストが低下したり、ノイズが増加したりする。その結果、医師等による読影診断の妨げとなる。散乱線の対策としては、一般的に、FPDパネル等の検出器に対してグリッドを装着する方法がある。しかし、検出器にグリッドの重量が加算される分、ユーザーが検出器を操作する際の負担が増加する。
【0003】
このような課題に対し、グリッドを用いた散乱線除去の代わりとして、ソフトウェアによる散乱線補正処理が開発されている。散乱線補正処理では、撮影した医用画像や撮影条件等を用いて、患者の体厚及び散乱線含有率等を推定することで散乱線を除去する。散乱線補正処理には、ヒストグラムの画像解析により被写体の体厚を推定する方法と、撮影条件から被写体の体厚を計測する方法とがある。散乱線補正処理を行うことで、被写体による散乱線が除去された見易い静止画像を得ることができ、医師等のユーザーによる読影作業の効率化を図ることができる。
【0004】
特許文献1には、以下に示す技術が記載されている。まず、放射線画像中の各画素の信号値のヒストグラムから被写体の体厚を推定する。次に、体厚に応じた散乱線含有率等に基づいて散乱線成分を算出等することで、散乱線成分が除去された放射線画像を得る。特許文献2には、放射線動画像の各フレームについて、フィルターの種類、管電圧等の撮影条件に応じた散乱線推定パラメーターを用いて散乱線低減処理を行う画像処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-202219号公報
【特許文献2】特開2020-81326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年では、診断に用いられる医用画像として、静止画像に限らず、パルス照射によるシリアル撮影を行うことで被写体の動態を撮影する動態撮影が市場展開されている。動態画像は、1回の撮影で取得するフレーム画像数が多い。そのため、動態画像の場合に、ヒストグラムを作成する散乱線補正処理を適用すると、処理時間が増えることで表示遅延が生じる。動態撮影は、静止画撮影の場合よりも総合的な線量が多い。そのため、動態撮影では、付加フィルター等の使用により静止画撮影とは撮影条件が異なる場合がある。したがって、撮影方式に応じて最適な散乱線補正の適用、散乱線補正パラメーターの設定が必要となる。引用文献1及び2には、撮影方式によって散乱線補正処理の種類等の適用を変更することについては開示されていない。
【0007】
そこで、本発明は、静止画像と動態画像とで最適な散乱線補正処理を実施することができる画像処理装置、画像処理方法、プログラム及び画像処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る画像処理装置は、
放射線撮影により得られた静止画像及び動態画像に散乱線補正処理を実施する画像処理部と、
前記散乱線補正処理に関するパラメーターの設定を受け付ける設定部と、を備え、
前記設定部は、前記静止画像の場合と前記動態画像の場合とで、設定可能な設定条件を変更する。
【0009】
本発明に係る画像処理方法は、
放射線撮影により得られた静止画像及び動態画像に散乱線補正処理を実施する画像処理工程と、
前記散乱線補正処理に関するパラメーターの設定を受け付ける設定工程と、を有し、
前記設定工程では、前記静止画像の場合と前記動態画像の場合とで、設定可能な設定条件を変更する。
【0010】
本発明に係るプログラムは、
コンピューターを、
放射線撮影により得られた静止画像及び動態画像に散乱線補正処理を実施する画像処理部、
前記画像処理部により実施される前記散乱線補正処理に関するパラメーターの設定を受け付ける設定部、として機能させ、
前記設定部は、前記静止画像の場合と前記動態画像の場合とで、設定可能な設定条件を変更する。
【0011】
本発明に係る画像処理システムは、
被写体の静止画像及び動態画像を撮影する放射線撮影装置と、
前記放射線撮影装置により撮影された前記静止画像及び前記動態画像に散乱線補正処理を実施する画像処理部と、前記散乱線補正処理に関するパラメーターの設定を受け付ける設定部と、を有する画像処理装置と、を備え、
前記設定部は、
前記設定部は、前記静止画像の場合と前記動態画像の場合とで、設定可能な設定条件を変更する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、静止画像と動態画像とで最適な散乱線補正処理を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態に係る画像処理システムの概略構成の一例を示す図である。
図2】本実施の形態に係る移動型放射線撮影装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3】本実施の形態に係る撮影条件テーブルの構成の一例を示す図である。
図4A】本実施の形態に係る散乱線補正処理の第1の補正処理を説明するための図である。
図4B】本実施の形態に係る散乱線補正処理の第1の補正処理を説明するための図である。
図5】本実施の形態に係る体厚変換テーブルの一例を示す図である。
図6】本実施の形態に係る散乱線補正処理の第2の補正処理を説明するための図である。
図7】本実施の形態に係る表示部に表示される検査画面の構成の一例を示す図である。
図8】本実施の形態に係る検査画面に表示される散乱線補正パラメーターの各設定項目の値を調整するためのダイアログの構成の一例を示す図である。
図9】本実施の形態に係る散乱性補正処理を実施する場合における画像処理システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図10】本実施の形態に係る動態画像の場合における散乱線補正パラメーターを調整する場合のダイアログの表示の一例を示す図である。
図11】本実施の形態に係る静止画像のmAs値の下限値と動態画像のmAs値の下限値との比較図である。
図12】本実施の形態に係る静止画像のmAs値の選択肢の刻みと動態画像のmAs値の選択肢の刻みとの比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0015】
[医用画像処理システム100の構成例]
図1は、本実施形態に係る医用画像処理システム100の概略構成の一例を示している。
図1に示すように、医用画像処理システム100は、移動型放射線撮影装置10と、動態解析装置20と、RIS(Radiology Information System)30と、PACS(Picture Archiving and Communication System)40とを備える。医用画像処理システム100は、画像処理システムとして機能する。移動型放射線撮影装置10と、動態解析装置20と、RIS30と、PACS40とは、ネットワークNを介して互いに接続されている。ネットワークNには、例えば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット、電話回線等が含まれる。移動型放射線撮影装置10は、無線LANの無線アクセスポイント(図1等において「AP」)6を介してネットワークNに接続されている。なお、通信方式は、有線LAN等の有線通信であってもよい。無線アクセスポイント6は、医用画像処理システム100が設置された医療施設内に複数設置されている。医用画像処理システム100を構成する各装置は、例えば、DICOM(Dital Image and Communications in Medicine)規格に準じている。各装置間の通信は、DICOMに則って行われる。
【0016】
移動型放射線撮影装置10は、例えば、移動が困難な患者の放射線撮影を回診で行うための装置である。移動型放射線撮影装置10は、画像処理装置として機能する。移動型放射線撮影装置10は、本体1と、放射線源3と、FPD(Flat Panel Detector)3と、曝射スイッチ4とを備える。放射線源3は、曝射スイッチ4のオン操作等に基づいて被写体Sに対して放射線Xを照射する。FPD2は、放射線源3から照射されて被写体Sを透過した放射線Xを検出する。
【0017】
移動型放射線撮影装置10は、本体1に車輪Wを有し、移動可能な回診車として構成されている。なお、移動型放射線撮影装置10は、車輪を有していないポータブルのものであってもよい。本体1は、FPD2を収納するための収納部5を有する。収納部5は、内部に収納されたFPD2と接続可能なインターフェース106(図2参照)を有する。収納部5に収納されたFPD2をインターフェース106に接続することで、FPD2のバッテリーを充電しながら搬送できるようになっている。
【0018】
移動型放射線撮影装置10は、例えば手術室、集中治療室(ICU)や病室等に持ち込まれる。移動型放射線撮影装置10は、ベッドBに寝ている被写体Sとベッドとの間にFPD2に差し込む、又はベッドBに設けられた図示しない挿入口に差し込む等した状態で、放射線源3から放射線を照射して被写体Sの静止画撮影又は動態撮影を行う。本実施形態において、静止画撮影とは、1回の撮影操作に応じて一枚の被写体Sの画像を取得することをいう。動態撮影とは、1回の撮影操作に応じて、被写体Sに対し、X線等の放射線をパルス状にして所定時間間隔で繰り返し照射するか(パルス照射)、又は低線量率にして途切れなく継続して照射する(連続照射)ことで、被写体Sの複数の画像を取得することをいう。動態撮影により得られた一連の画像を動態画像と呼ぶ。また、動態画像を構成する複数の画像のそれぞれをフレーム画像と呼ぶ。ここで、動態撮影には動画撮影が含まれるが、動画を表示しながら静止画を撮影するものは含まれない。動態画像には、動画像が含まれるが、動画像を表示しながら静止画像を撮影して得られた画像は含まれない。
【0019】
動態解析装置20は、移動型放射線撮影装置10から送信された動態画像に対して被写体の動態解析等の解析処理を実施する。動態解析装置20は、動態画像及び解析結果をPACS40に送信する。動態解析装置50は、複数種類の動態解析の実施が可能であり、複数種類の動態解析の中からオーダー情報により指定された種類の動態解析を実施する。動態解析装置50は、例えば、被写体の胸部を撮影した動態画像の場合、血流解析処理や換気解析処理等の動態解析処理を実施する。
【0020】
RIS30は、検査オーダー情報を発行して記憶するとともに、発行された検査オーダー情報を、通信ネットワークNを介して移動型放射線撮影装置10に送信する。オーダー情報には、例えば、検査ID等の検査識別情報、検査日付、被写体Sとなる患者に関する患者情報、検査で行われる各撮影に関する情報が含まれる。患者情報には、例えば、患者ID、氏名、性別、年齢、病室(病棟)等が含まれる。検査で行われる各撮影に関する情報には、例えば、撮影ID、静止画撮影又は動態撮影の区別を示す撮影種類、動態解析装置20で実施する解析処理の種別、依頼科、救急であるか否かの種別等が含まれる。
【0021】
PACS40は、移動型放射線撮影装置10等のモダリティーにより生成された静止画像及び動態画像を含む医用画像や動態解析装置20による解析結果を患者情報及び検査情報に対応付けて記憶して管理する。検査情報には、例えば、検査ID、検査日時、撮影部位、撮影条件等が含まれる。
【0022】
[移動型放射線撮影装置10のブロック図]
図2は、移動型放射線撮影装置10の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、移動型放射線撮影装置10は、本体1と、FPD2と、放射線源3と、曝射スイッチ4とを備える。FPD2及び放射線源3等は、撮影装置として機能する。
【0023】
本体1は、制御部101と、記憶部102と、操作部103と、表示部104と、通信部105と、インターフェース106と、駆動部108と、バッテリー109と、電源分配部110とを備える。
【0024】
制御部101は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーと、RAM(Random Access Memory)等のメモリーとを有する。制御部101のCPUは記憶部102に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行する。本実施の形態では、CPUは、散乱線補正処理に関するプログラムを実行し、医用画像に含まれる散乱線を除去する散乱線除去補正を実施する。なお、散乱線補正処理とは、医用画像に含まれる散乱線成分を画像解析等に影響しないレベルまで取り除く処理をいう。散乱線補正処理には、医用画像から散乱線成分を完全に除去する処理だけでなく、医用画像に含まれる散乱線成分を低減させる処理も含まれる。
【0025】
本実施の形態において、制御部101は、プログラムの実行により以下の機能を実現する。本実施の形態において、制御部101は、放射線撮影により得られた静止画像及び動態画像に散乱線補正処理を実施する画像処理部及び画像処理工程として機能する。制御部101は、散乱線補正処理に関するパラメーターの設定を受け付ける設定部及び設定工程として機能する。設定部は、静止画像の場合と動態画像の場合とで、設定可能な設定条件を変更する機能を有する。設定条件には、例えば、第2の補正処理に関する散乱線補正パラメーターの設定の受け付け可否、体厚推定補正処理に関する散乱線補正パラメーターの曝射線量の選択肢の下限値及び刻み等が含まれる。
【0026】
記憶部102は、半導体メモリー、HDD(Hard Disk Drive)及び光ディスク記憶装置等の少なくとも一つを有する。記憶部102は、各種処理プログラム、当該プログラムの実行に必要なパラメーターやファイル等を記憶する。記憶部102には、動態解析装置20等の外部装置への送信待ちの情報、例えば、オリジナルの動態画像や散乱線補正処理の処理済み画像等を一時的に記憶する一時記憶領域が設けられている。記憶部102は、RIS30から送信されるオーダー(検査オーダー)の内容と各オーダーに対応する撮影条件とを対応付けて記憶する撮影条件テーブル102aを有する。
【0027】
図3は、本実施の形態に係る撮影条件テーブル102aの構成の一例を示している。
図3に示すように、撮影条件テーブル102aには、オーダーNo.と、オーダーNo.に対応する撮影条件とが対応付けて記憶されている。撮影条件には、例えば、管電圧[kV]、管電流[mA]、照射時間[ms]、曝射線量[mAs]、撮影距離(SID)[cm]及び付加フィルターの有無やフィルターの種類が含まれる。その他に、撮影時のグリッド情報(グリッドの有無)、フレームレート、放射線検出器の種類(例えばFPD2)等が含まれていてもよい。RIS30から送信されるオーダー情報には、検査に含まれる各撮影のオーダーの内容を識別するためのオーダーNo.が含まれている。制御部101は、撮影条件テーブル102aを参照することにより、受信したオーダーNo.からオーダーの内容及びこれに対応する撮影条件を取得する。なお、以下では、曝射線量をmAs値と呼び、撮影距離をSIDと呼ぶ場合がある。
【0028】
図2に戻り、操作部103は、表示部104の表面を覆うように透明電極を格子状に配置したタッチパネル等を有する。操作部103は、ユーザーによる指やタッチペン等で押下された位置等を検出し、その位置情報を操作情報として制御部101に出力する。操作部103は、キーボードやマウス等のポインティングデバイス等を有してもよい。操作部103は、例えば、撮影条件を受け付けたり、散乱線補正処理に用いられる散乱線補正パラメーターを受け付けたりする。
【0029】
曝射スイッチ4は、ユーザーが放射線Xの照射を指示するための操作部である。曝射スイッチ4は、本体1に有線で接続しているが、無線通信により本体1に接続してもよい。これにより、ユーザーは、本体1から離れた場所から放射線の曝射を制御できる。
【0030】
表示部104は、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(ElectroLuminescence)又はCRT(Cathode Ray Tube)等のディスプレイを有する。表示部104は、制御部101の表示制御に基づいて、撮影された医用画像を含む検査画面200(図7参照)や散乱線補正処理時に使用される散乱線補正パラメーターを設定するダイアログ300(図8参照)等の各種画面を表示する。表示部104は、上述したように、操作部103であるタッチパネルを組み合わせたものであってもよい。
【0031】
通信部105は、無線アクセスポイント6と無線接続し、無線アクセスポイント6を介して通信ネットワークNに接続されたRIS30等の外部装置とデータ送受信を行うためのインターフェースである。通信部105は、有線LAN等の有線通信により通信ネットワークNに接続可能な有線インターフェースであってもよい。通信部105は、無線通信及び有線通信の両方を有していてもよい。
【0032】
インターフェース106は、FPD2とデータ送受信を行うためのインターフェースである。インターフェース106は、無線通信によりFPD2との間でデータを送受信するインターフェースでもよいし、通信ケーブルを用いた有線通信によりFPD2との間でデータを送受信するコネクタ等のインターフェースでもよい。インターフェース106は、無線通信及び有線通信の両方の方式に対応するものでもよい。
【0033】
駆動部108は、放射線源3の管球駆動を行う回路である。駆動部108と放射線源3とはケーブル等を介して接続されている。駆動部108は、制御部101から供給される制御信号に基づいて、所定の電圧を放射線源3に印加するように管球を駆動させる。
【0034】
電源分配部110は、先端にプラグの設けられた電源ケーブル111を有する。電源分配部110は、プラグを近くのAC電源のコンセントに差し込むことで外部から電力の供給を受ける。電源分配部110は、バッテリー109又は外部から供給された電力を移動型放射線撮影装置10の制御部101等の各部へ供給する。バッテリー109は、自身が蓄えている電力を電源分配部110へ供給する。バッテリー109は、電源分配部110から供給される電力を蓄える。
【0035】
FPD2は、放射線照射装置である放射線源3から照射されて被写体Sを透過した放射線Xに基づく動態画像を生成する放射線撮影装置である。FPD2は、基板、読み出し回路、制御部、通信部及びコネクタ等を備えたカセッテ状の放射線検出器である。具体的には、基板は、放射線Xを受けることで線量に応じた電荷を発生させる放射線検出素子や、電荷の蓄積・放出を行うスイッチ素子を備えた画素が二次元状(マトリクス状)に配列されたものである。読み出し回路は、各画素から放出された電荷の量を信号値として読み出す。制御部は、読み出し回路が読み出した複数の信号値から画像データを生成する。通信部は、画像データや各種信号を、有線又は無線で本体1へ送信する。コネクタは、本体1と接続するケーブルを差し込むためのインターフェースである。
【0036】
なお、FPD2は、シンチレーター等を内蔵し、照射された放射線Xをシンチレーターで可視光等の他の波長の光に変換し、変換した光に応じた電荷を発生させるもの(いわゆる間接型)であってもよい。FPD2は、シンチレーター等を介さずに放射線Xから直接電荷を発生させるもの(いわゆる直接型)であってもよい。
【0037】
放射線源3は、例えば、図示しない回転陽極やフィラメント等を有する。放射線源3は、駆動部108から所定の電圧が印加されると、フィラメントが電圧に応じた電子ビームを回転陽極に向けて照射し、回転陽極が電子ビームの強度に応じた線量の放射線Xを発生させる。
【0038】
[散乱線補正処理について]
散乱線補正処理では、被写体Sの体厚に応じて発生する散乱線の量が異なるので、被写体Sの体厚を取得する必要がある。被写体Sの体厚の取得方法としては、管電圧、mAs値、SIDの撮影条件から被写体Sの体厚を計測する第1の方法と、管電圧や医用画像のヒストグラム解析を用いて体厚を推定する第2の方法とがある。本実施の形態では、第1の方法を含む散乱線補正処理を第1の補正処理と呼び、第2の方法を含む散乱線補正処理を第2の補正処理と呼ぶ。
【0039】
(第1の補正処理)
まず、第1の補正処理について説明する。図4A及び図4Bは、第1の補正処理を説明するための図である。
制御部101は、図4Aに示すように、管電圧、mAs値、SID等の実際の撮影時の撮影条件を用いて放射線源3からFPD2に被写体Sを介さずに放射線Xを照射させる。制御部101は、FPD2で検出された医用画像の画素の信号値、すなわち体厚0cm地点における画素の信号値(以下、推定値と呼ぶ)を取得する。被写体Sの体厚が厚いほど医用画像の画素の信号値は小さくなる。
【0040】
次に、制御部101は、推定値から実測値を減算して差分値を取得する。次に、制御部101は、体厚変換テーブルを用いて、差分値から被写体の体厚を推定する。図5は、体厚変換テーブルを作成するための体厚変換グラフの一例を示している。体厚変換グラフは、例えば縦軸が体厚であり、横軸が画素の信号値である。体厚変換テーブルは、体厚変換グラフに基づいて作成される。本実施の形態において体厚変換テーブルは、付加フィルターの種類ごとに設けられている。制御部101は、後述するダイアログ300等で入力された付加フィルターの種類に応じて体厚変換テーブルを切り替えて、切り替え後の体厚変換テーブルを参照して差分値から体厚を取得する。
【0041】
次に、制御部101は、推定した被写体Sの体厚から元の医用画像中の散乱X線含有率を推定する。散乱X線含有率を推定には、例えば、散乱X線変換テーブルを用いてもよい。散乱X線変換テーブルは、例えば部位、管電圧ごとに設けてもよい。次に、制御部101は、散乱X線変換テーブルを用いて医用画像中の散乱X線含有率を取得し、散乱X線含有率に応じた散乱X線画像を作成する。最後に、制御部101は、元の医用画像から作成した散乱X線画像、つまり散乱X線相当の信号量を取り除くことで、コントラストが改善された医用画像を取得する。
【0042】
(第2の補正処理)
続けて、第2の補正処理について説明する。
制御部101は、放射線撮影により得られた医用画像上に解析領域を設定し、設定した解析領域内の画素を用いて画像ヒストグラムを作成する。図6は、第2の補正処理を説明するための図であり、画像ヒストグラムの一例を示している。縦軸が画素の頻度であり、横軸が医用画像の画素の信号値である。画像ヒストグラムの形状は、被写体Sの体厚により異なる。具体的には、図6に示すように、ピーク値P1の信号値(実測値)は、線量推定値と同一となり、被写体なしの体厚0cmを示す。ピーク値P2の信号値は、線量推定値の方が大きくなり、被写体の体厚が厚いことを示す。ピーク値P3の信号値は、線量推定値の方がさらに大きくなり、被写体の体厚が非常に厚いことを示す。
【0043】
次に、制御部101は、画像ヒストグラムの画素ごとに被写体Sの体厚を推定する。被写体Sの体厚の推定には、例えば、図5に示した付加フィルターの種類ごとに設けた体厚変換テーブルを用いてもよい。制御部101は、後述するダイアログ300等で入力された付加フィルターの種類に応じて体厚変換テーブルを切り替えて、切り替え後の体厚変換テーブルを参照して画素の信号値から体厚を取得する。
【0044】
次に、制御部101は、推定した被写体Sの体厚から元の医用画像中の散乱X線含有率を推定する。散乱X線含有率を推定には、例えば、散乱X線変換テーブルを用いてもよい。散乱X線変換テーブルは、例えば部位、管電圧ごとに設けてもよい。次に、制御部101は、散乱X線変換テーブルを用いて医用画像中の散乱X線含有率を取得し、散乱X線含有率に応じた散乱X線画像を作成する。最後に、制御部101は、元の医用画像から作成した散乱X線画像、つまり散乱X線相当の信号量を取り除くことで、コントラストが改善された医用画像を取得する。
なお、散乱線除去処理の基本処理の手法としては、上述した第1の補正処理及び第2の補正処理以外にも公知の手法を採用できる。例えば、特開2016-202219、特開2019-126524、特開2019-129988等に開示される公知の手法を用いてもよい。
【0045】
[検査画面200の構成例]
次に、移動型放射線撮影装置10の表示部104に表示される検査画面200について説明する。図7は、表示部104に表示される検査画面200の構成の一例を示している。
図7に示すように、検査画面200には、画像表示領域210、患者情報表示領域220、撮影条件ボタン230、画像調整メニュー領域240及び撮影終了ボタン260等が設けられている。
【0046】
画像表示領域210は、放射線撮影により取得された患者の医用画像を表示する領域である。患者情報表示領域220は、検査対象の患者(被検者)の患者情報を表示する領域である。撮影条件ボタン230は、オーダー情報に含まれる各撮影のオーダーの内容を表す撮影条件を放射線源3やFPD2に設定するためのボタンである。撮影条件ボタン230の隣接した表示領域には、撮影条件ボタン230の押下に応じて撮影された放射線画像のサムネイル画像が表示される。
【0047】
画像調整メニュー領域240には、コントラストを調整するボタン、濃度を補正するためのボタン、医用画像を拡大、縮小するボタン等に加えて、散乱線補正処理を設定するためのIG(Intelligent Grid)ボタン250が設けられている。IGボタン250は、画像表示領域210に表示される医用画像に対して散乱線を除去する散乱線補正処理を実施するためのボタンである。
【0048】
例えば、撮影された医用画像がFPD2から本体1に送信される前にIGボタン250が押下された場合、画像表示領域210には散乱線補正処理が実施された医用画像が表示される。FPD2から送信された医用画像が画像表示領域210に表示された後にIGボタン250が押下された場合、画像表示領域210には散乱線補正処理が実施された医用画像が再表示される。
【0049】
[検査画面200に表示されるダイアログ300の構成例]
図8は、検査画面200に表示される散乱線補正パラメーターを調整するためのダイアログ300の構成の一例を示している。
図8に示すように、検査画面200において、例えばIGボタン250がユーザーにより長押し操作された場合、画像調整メニュー領域240に重畳してダイアログ300が表示される。なお、ダイアログ300の表示方法は、IGボタン250の長押し操作以外であってもよいし、IGボタン250以外のボタンを別途設けてもよい。
【0050】
ダイアログ300には、例えば、補正の強さ、グリッド比、管電圧、mAs値、SID値及び付加フィルターの各設定項目に応じた散乱線補正パラメーターが設けられている。補正の強さの設定項目には、散乱線補正の強さを入力するための補正の強さ調整部310が設けられている。グリッド比の設定項目には、グリッド比を入力するためのグリッド比調整部320が設けられている。管電圧の設定項目には、管電圧を入力するための管電圧調整部330が設けられている。mAs値の設定項目には、mAs値を入力するためのmAs値調整部340が設けられている。SID値の設定項目には、SID値を入力するためのSID値調整部350が設けられている。付加フィルターの設定項目には、付加フィルターの種類及び付加フィルターの有無を選択するための付加フィルター調整部360が設けられている。
【0051】
ダイアログ300には、設定項目の散乱線補正パラメーターを調整するボタンの他に、照射実績ボタン370、適用ボタン380及びキャンセルボタン390が設けられている。照射実績ボタン370は、例えば放射線源3と本体1との連携機能により放射線源3から撮影条件を受信した場合、受信した撮影条件をダイアログ300の散乱線補正パラメーターの対応する各設定項目に反映させるためのボタンである。この場合の撮影条件は、実際の撮影に用いられた実測値となる。適用ボタン380は、ユーザーによりダイアログ300で設定された散乱線補正パラメーターの各設定項目を反映させて散乱線補正処理を実施するためのボタンである。キャンセルボタン390は、ダイアログ300を閉じる、つまり検査画面200からダイアログ300を非表示とするためのボタンである。
【0052】
次に、mAs値調整部340及びSID値調整部350について詳しく説明する。
mAs値調整部340は、図8に示すように、スピンボタン342と、自動ボタン344と、設定値表示部346とを有する。スピンボタン342は、設定するmAs値を増加及び減少させるためのボタンである。自動ボタン344は、散乱線補正処理のうち第2の補正処理を実施する場合に選択するためのボタンである。設定値表示部346は、現在設定されているmAs値を表示するための領域である。
【0053】
SID値調整部350は、図8に示すように、スピンボタン352と、自動ボタン354と、設定値表示部356とを有する。スピンボタン352は、設定するSID値を増加及び減少させるためのボタンである。自動ボタン354は、散乱線補正処理のうち第2の補正処理を実施する場合に選択するためのボタンである。設定値表示部356は、現在設定されているSID値を表示するための領域である。
【0054】
本実施の形態では、医用画像の種別に応じて、mAs値の自動ボタン344及びSID値の自動ボタン354が選択できない、つまり散乱線補正処理のうち第2の補正処理が選択できないように構成される。例えば、医用画像の種別が動態画像の場合、mAs値の自動ボタン344及びSID値の自動ボタン354は、グレーアウト表示され、非活性化される。この場合、ユーザーは、第2の補正処理を選択できず、第1の補正処理のみの選択が可能となる。ユーザーは、第1の補正処理を実施する場合、ダイアログ300において、第1の補正処理に必要とされるmAs値、SID値、管電圧等の散乱線補正パラメーターをそれぞれ入力する。
【0055】
一方、医用画像の種別が静止画像の場合、ユーザーは第1の補正処理及び第2の補正処理の両方の選択が可能である。第1の補正処理を実施する場合には、ユーザーは、ダイアログ300において、第1の補正処理に必要とされるmAs値、SID値、管電圧等の散乱線補正パラメーターをそれぞれ入力する。
【0056】
第2の補正処理を実施する場合、ユーザーは、ダイアログ300において、mAs値の自動ボタン344及びSID値の自動ボタン354を押下する。これにより、mAs値のスピンボタン342及びSID値のスピンボタン352がグレーアウト表示され、非活性化される。この場合、mAs値、SID値の散乱線補正パラメーターの入力が不可能となり、第2の補正処理に必要とされる管電圧の散乱線補正パラメーターの入力のみが可能となる。ユーザーは、ダイアログ300において、管電圧等の散乱線補正パラメーターを入力すればよい。
【0057】
[医用画像処理システム100の動作例]
まず、患者の医用画像を撮影するまでの流れについて説明する。
RIS30は、ユーザーによりオーダー情報の内容が入力(指定)されると、オーダー情報を発行して移動型放射線撮影装置10に送信する。移動型放射線撮影装置10の制御部101は、受信したオーダー情報を記憶部102に記憶させるとともに、表示部104の検査画面200に表示させる。制御部101は、検査画面200に表示されているいずれかの撮影条件ボタン230(図7参照)が選択されると、選択されたオーダー情報に応じた撮影条件を記憶部102のテーブル等から読み出して表示部104に表示させる。撮影条件は、ユーザーにより操作部103や放射線源3で変更される場合がある。
【0058】
制御部101は、最新の撮影条件を取得し、撮影条件のうち、例えば、管電圧、管電流、照射時間、mAs値、SID、付加フィルター情報、グリッド情報、フレームレート等の撮影条件を駆動部108に設定する。制御部101は、撮影条件のうち、例えば、フレームレート、画素サイズ等の画像読取条件を、インターフェース106を介してFPD2に送信する。曝射スイッチ4がオンされると、患者に対して放射線Xが照射される。FPD2は、患者を透過した放射線Xを検出することで患者の医用画像を撮影する。
【0059】
続けて、撮影した医用画像の散乱線を除去する散乱補正処理を実施する場合の流れについて説明する。図9は、本実施の形態に係る散乱性補正処理を実施する場合におけるシステムの動作の一例を示すフローチャートである。
【0060】
図9に示すように、制御部101は、FPD2により撮影された医用画像を取得する(ステップS100)。
【0061】
制御部101は、取得した医用画像に対して散乱線補正パラメーターを用いて散乱線補正処理を実施する(ステップS110)。制御部101は、ユーザーによりIGボタン250が押下されたか否かに基づいて散乱線補正処理の設定の有無を判断する。散乱線補正処理の設定は、FPD2から医用画像を取得する前であってもよいし、FPD2から医用画像を取得した後であってもよい。制御部101は、医用画像の種類に応じて、散乱線補正処理のうち第1の補正処理及び第2の補正処理のいずれかを実施してもよい。また、ユーザーが、医用画像の種類に応じて、散乱線補正処理のうち第1の補正処理及び第2の補正処理のいずれかを選択してもよい。
【0062】
ここで、放射線源3と本体1とが連携機能により接続されている場合における散乱線補正処理時に用いられる撮影条件について説明する。この場合において、散乱線補正処理の実施前に撮影条件が放射線源3から本体1に送信される場合、制御部101は、実際の撮影で用いられた撮影条件(実測値)を散乱線補正パラメーターとして用いて散乱線補正処理を実施してもよい。散乱線補正処理の実施後に撮影条件が放射線源3から本体1に送信される場合、制御部101は、例えばオーダー情報に応じて予め設定されている撮影条件(プリセット値)を散乱線補正パラメーターとして用いて散乱線補正処理を実施してもよい。
【0063】
続けて、放射線源3と本体1とが連携機能により接続されていない場合における散乱線補正処理時に用いられる撮影条件について説明する。放射線源3と本体1とが連携機能により接続されていない場合、最終的に撮影に用いられた撮影条件(実測値)は本体1に送信されない。この場合において、制御部101は、例えばオーダー情報に応じて予め設定されている撮影条件(プリセット値)を散乱線補正パラメーターとして用いて散乱線補正処理を実施してもよい。ユーザーにより実際の撮影に用いられた撮影条件が操作部103等から手動により直接入力された場合、制御部101は、入力された撮影条件を散乱線補正パラメーターとして用いて散乱線補正処理を実施してもよい。
【0064】
制御部101は、散乱線補正処理の実施により得られた医用画像を、検査画面200の画像表示領域210に表示させる(ステップS120)。これにより、散乱線が除去又は削減された医用画像が画像表示領域210に表示される。ここで、ユーザーが散乱線補正処理後の医用画像を視認し、散乱線の除去が適切に実施されていないと判断した場合には、再度散乱線補正処理が実施される。例えば、連携機能がある場合で散乱線補正処理の実施前に撮影条件を受信できず、実際の撮影で使用した撮影条件とは異なる散乱線補正パラメーターを使用して散乱線補正処理を実施した場合等が挙げられる。
【0065】
制御部101は、散乱線補正処理に関する各設定項目のパラメーターを調整する調整指示が受け付けられたか否かを判断する(ステップS130)。例えば、制御部101は、ユーザーによるIGボタン250の長押し操作されたか否かにより判断する。制御部101は、調整指示が受け付けられたと判断した場合(ステップS130:YES)に進む。
【0066】
一方、制御部101は、調整指示が受け付けられていないと判断した場合(ステップS130:NO)、一連の散乱線補正処理を終了する。例えば、2度目以降の散乱線補正処理が実施されない場合である。散乱線補正処理が終了すると、次の処理に移行する。散乱線補正処理が実施された医用画像は、例えば動態解析装置20に送信される。動態解析装置20は、受信した医用画像に対して所定の動態解析を実施する。
【0067】
制御部101は、医用画像の種類が動態画像であるか否かを判断する(ステップS140)。制御部101は、医用画像の種類が動態画像であると判断した場合(ステップS140:YES)、ステップS150に進む。例えば、制御部101は、RIS30から送信されるオーダー情報に含まれる撮影に関する情報等により医用画像の種類を判断する。
【0068】
制御部101は、散乱線補正処理に関する散乱線補正パラメーターを調整するためのダイアログ300を検査画面200に表示させる(ステップS150)。本実施の形態では、制御部101は、動態画像の場合、第2の補正処理の選択を不可とする制御、散乱線補正パラメーターのmAs値の選択肢の下限側を拡大する制御及び散乱線補正パラメーターのmAs値の選択肢の刻みを増やす制御を実行する。以下に、順番に説明する。
【0069】
制御部101は、動態画像の場合、第2の補正処理の選択を不可とする。具体的には、制御部101は、mAs値の自動ボタン344及びSIDの自動ボタン354を、他の設定項目の調整部とは異なる色で表示させる。図10は、動態画像における散乱線補正パラメーターを調整する場合のダイアログ300の表示の一例を示している。図10に示すように、制御部101は、動態画像である場合、mAs値の自動ボタン344及びSIDの自動ボタン354を例えばグレーアウトで表示させる。制御部101は、ユーザーによりmAs値の自動ボタン344及びSIDの自動ボタン354が選択されて場合でも、この選択に応じた指示を受け付けないように操作部103を制御する。つまり、制御部101は、mAs値の自動ボタン344及びSIDの自動ボタン354を非活性化する。この理由は、動態画像である場合に第2の補正処理を実施すると、1フレーム画像数ごとに画像ヒストグラム解析を行う必要があるため、処理時間が長くなり、表示遅延が生じるからである。
【0070】
制御部101は、動態画像の場合、散乱線補正パラメーターのmAs値の選択肢の下限側を拡大する。図11は、静止画像のmAs値の下限値と動態画像のmAs値の下限値との比較図である。図11に示すように、動態画像の場合、mAs値の下限値は0.01mAsである。静止画像の場合、mAs値の下限値は0.1mAsである。動態画像と静止画像とを比べると、動態画像の方がmAs値の下限値が低くなっている。この理由は、動態画像では、1フレームあたりの撮影線量を低くするため、動態撮影時における撮影条件のmAs値が静止画像の場合よりも低く設定される場合がある。そのため、散乱線補正処理時においても、撮影条件に合わせて、散乱線補正パラメーターのmAs値を変更する必要があるからである。なお、図11に示した散乱線補正パラメーターのmAs値の下限値は一例であり、本実施の形態で示した数値に限定されるものではない。
【0071】
制御部101は、動態撮影の場合、散乱線補正パラメーターのmAs値の選択肢の刻みを増やす。図12は、静止画像のmAs値の選択肢の刻みと動態画像のmAs値の選択肢の刻みとの比較図である。図12に示すように、静止画像のmAs値の選択肢の刻みは0.1単位であるのに対し、動態画像のmAs値の選択肢の刻みは0.01単位である。動態画像と静止画像とを比べると、動態画像の方がmAs値の選択肢の刻み間隔が狭く、刻み数が多くなっている。この理由は、動態画像では、1フレームあたりの撮影線量を低くするため、動態撮影時における撮影条件のmAs値が細かく設定される場合がある。そのため、散乱線補正処理時においても、撮影条件に応じて、散乱線補正パラメーターのmAs値を細かく変更する必要があるからである。
なお、図12に示した散乱線補正パラメーターのmAs値の選択肢の刻みは一例であり、本実施の形態で示した数値に限定されるものではない。
【0072】
ステップS140において、制御部101は、医用画像の種類が動態画像でないと判断した場合(ステップS140:NO)、つまり、静止画像であると判断した場合、ステップS160に進む。
【0073】
制御部101は、散乱線補正処理に関する散乱線補正パラメーターを調整するためのダイアログ300を検査画面200に表示させる(ステップS160)。このとき、制御部101は、動態画像の場合とは異なり、ダイアログ300の全ての散乱線補正パラメーターの調整部を同一の標準色で表示させる。制御部101は、全ての散乱線補正パラメーターの調整部に対するユーザーの選択操作に応じた指示を受け付けるよう操作部103を制御する。つまり、制御部101は、mAs値の自動ボタン344及びSIDの自動ボタン354を含む全ての散乱線補正パラメーターの調整部を活性化する。
【0074】
制御部101は、散乱線補正処理に関する散乱線補正パラメーターの調整が終了したか否かを判断する(ステップS170)。例えば、制御部101は、ユーザーによる適用ボタン380の押下操作に応じた指示が受け付けられたか否かにより判断する。制御部101は、ダイアログ300の各設定項目の散乱線補正パラメーターの調整が終了していないと判断した場合、ステップS170に戻る。一方、制御部101は、各設定項目の散乱線補正パラメーターの調整が終了したと判断した場合、ステップS180に進む。
【0075】
制御部101は、ユーザーによりダイアログ300で設定された撮影条件に応じた散乱線補正パラメーターを用いて散乱線補正処理を実施する。(ステップS180)。例えば、再度の散乱線補正処理は、以下のように実施できる。
【0076】
放射線源3と本体1との間に連携機能があり、撮影条件が放射線源3から本体1に送信される前に再散乱線補正処理を実施する場合、制御部101は、最新の撮影条件を受信していないので、散乱線補正処理自体を選択できないように構成してもよい。制御部101は、例えばオーダー情報に応じて予め設定されている撮影条件(プリセット値)や、ユーザーが手動で入力した情報を散乱線補正パラメーターとして用いて再散乱線補正処理を実施してもよい。
【0077】
また、放射線源3と本体1との間に連携機能があり、撮影条件が放射線源3から本体1に送信された後に散乱線補正処理を実施する場合、制御部101は、実際の撮影で用いられた撮影条件(実測値)を散乱線補正パラメーターとして用いて散乱線補正処理を実施してもよい。例えば、制御部101は、ユーザーによる照射実績ボタン370の押下に応じた指示を受け付けると、各散乱線補正パラメーターに実測値を反映させる。制御部101は、ユーザーによる適用ボタン380の押下に応じた指示を受け付けると、実績値を用いて散乱線補正処理を実施する。制御部101は、例えばオーダー情報に応じて予め設定されている撮影条件(プリセット値)や、ユーザーが手動で入力した情報を散乱線補正パラメーターとして用いて再散乱線補正処理を実施してもよい。
【0078】
制御部101は、散乱線補正処理を実施した補正後の医用画像を検査画面200の画像表示領域210に表示する(ステップS190)。これにより、被写体の体厚に応じた散乱線が除去され、よりコントラストが改善された高画質な医用画像が画像表示領域210に表示される。なお、散乱線補正処理後の医用画像は、上述したように、例えば動態解析装置20等の外部装置に送信してもよい。
【0079】
なお、上述した実施の形態では、動態画像の場合、ダイアログ300のmAs値の自動ボタン344及びSIDの自動ボタン354をグレーアウト表示したが、これに限定されることはない。例えば、mAs値の自動ボタン344及びSIDの自動ボタン354を非表示としてもよい。この場合、mAs値の自動ボタン344及びSIDの自動ボタン354を非表示とした分、スペースが空くので、mAs値の数値、SIDの数値等の数値情報を大きく表示してもよい。これにより、動態画像の場合にユーザーが第2の補正処理を選択することを確実に防止できるとともに、数値の視認性を向上させることができる。
【0080】
また、図8で示したダイアログ300では、mAs値の自動ボタン344及びSIDの自動ボタン354の表記を「自動」としたが、これに限定されることはない。例えば、第1の補正処理及び第2の補正処理の各アルゴリズムを考慮して、mAs値の自動ボタン344等の表記を変更してもよい。第1の補正処理の場合、撮影条件から体厚を計測するので、mAs値の自動ボタン344等の表記を「計測」としてもよい。第2の補正処理の場合、アルゴリズム解析から体厚を推定するので、mAs値の自動ボタン344等の表記を「解析」としてもよい。例えば、画像の種別が静止画像の場合には、第1の補正処理及び第2の補正処理の両方を選択できるので、mAs値の自動ボタン344等の表記を「計測」と「解析」とで切り替えてもよい。動態画像の場合には、第2の補正処理は選択不可なので、mAs値の自動ボタン344等の表記を「計測」で固定してもよい。
【0081】
上述した実施の形態では、動態画像である場合にダイアログ300において第2の補正処理の選択を不可等とする制限を実施したが、この制限はダイアログ300上に限定されることはない。例えば、医用画像の種類で操作性を切り替えるようにしてもよい。オーダー情報に撮影条件を対応付ける事前設定(初期設定)において、医用画像の種類が動態画像の場合に散乱線補正処理の第2の補正処理を設定不可としてもよい。
【0082】
動態画像は、1フレームあたりの線量が低い。そのため、散乱線補正処理を実施する場合、低線量によるノイズの影響を受けやすい。そこで、情報連携により放射線源3から撮影条件(実測値)を受信した場合、実測値が散乱線補正処理に最適なパラメーターの範囲であるかを事前に確認してもよい。具体的には、制御部101は、実測値に含まれる各撮影条件の数値が予め設定された閾値以上であるかを判断する。制御部101は、実測値が閾値未満である場合、線量が低すぎて散乱線の除去を適切に実施できないと判断し、散乱線補正処理自体を実施不可となるように制御してもよい。この場合、制御部101は、ユーザーに散乱線補正処理が実施不可能であることを表示部104等に報知させてもよい。
【0083】
上述した動態画像の場合のmAs値の下限値や刻み幅は、照射装置の種類に応じて変更可能としてもよい。例えば、動態撮影装置と透視装置とでmAs値の下限値や刻み幅を異ならせてもよい。同一の動態撮影装置でも、ベンダーによって精度が異なるため、ベンダーごとの装置によってmAs値の下限値や刻み幅を変更可能としてもよい。
【0084】
動態撮影の場合、複数のフレームを撮影するため、複数のフレームに対して上述したヒストグラム解析を用いた体厚の推定や撮影条件を用いた体厚の計測(以下、体厚の推定等という)を実施すると、散乱線補正処理に要する時間が長くなるという問題がある。そこで、動態撮影の場合、動態画像の最初の数フレームに対して体厚の推定等を行い、その体厚の推定等の結果を他のフレームに適用して散乱線補正処理を実施してもよい。例えば、動態胸部息止め等のように体厚変化がない又は少ない動態撮影の場合、先頭のフレーム又は先頭から数フレーム目までの医用画像に対して体厚の推定等を実施する。次に、前のフレームで推定等した体厚の結果を用いて、残りのフレームに対して散乱線補正処理を実施する。体厚の推定等に複数のフレームを用いる場合には、推定等した体厚の平均値や中央値を用いてもよい。
【0085】
他の方法としては、以下の方法が挙げられる。動態撮影の場合、所定のフレーム間隔で体厚の推定等を実施する。次に、体厚の推定等の結果を、その前後の体厚を推定していない残りのフレームに補完して適用することで散乱線補正処理を実施してもよい。例えば、自然呼吸、深呼吸等の撮影や動きのある関節撮影の場合、体厚の変動に連続性があるため、偶数フレームのみで体厚の推定等を行い、その結果(画素値と対応する体厚の変換テーブル)を体厚の推定等を行っていない他のフレームに補間して散乱線補正処理を実施する。
【0086】
本実施の形態によれば、医用画像の種別が動態画像の場合に、第2の補正処理を選択する場合に押下するmAs値の自動ボタン344を選択不可とする。これにより、ユーザーが動態画像に対して散乱線補正処理を実施する場合に、第2の補正処理を選択してしまうことを防止できる。これにより、動態画像に対する散乱線補正処理の処理時間が長くなることを防止でき、表示遅延等の問題の発生も解消できる。
【0087】
また、本実施の形態によれば、医用画像の種別が動態画像の場合に、静止画撮影の場合よりも散乱線補正パラメーターのmAs値の選択肢の下限値を拡大する。これにより、動態画像において1フレームあたりの撮影線量を低く設定した場合でも、撮影条件に合わせて散乱線補正パラメーターのmAs値を変更できる。その結果、静止画像と動態画像とで撮影方式が異なる場合でも最適な散乱線補正処理を実施することができる。
【0088】
また、本実施の形態によれば、医用画像が動態画像の場合に、静止画撮影の場合よりも散乱線補正パラメーターのmAs値の選択肢の刻みを増やす。これにより、動態画像において1フレームあたりの撮影線量を低くするために撮影条件のmAs値が細かく設定した場合でも、撮影条件に合わせて、散乱線補正パラメーターのmAs値を変更できる。その結果、静止画像と動態画像とで撮影方式が異なる場合でも最適な散乱線補正処理を実施することができる。
【0089】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得るものは、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0090】
具体的には、例えば、本実施の形態では、撮影装置の一例として移動型放射線撮影装置10について説明したが、これに限定されることはない。例えば、据え置きタイプの立位撮影装置及び臥位撮影装置等に対しても本実施の形態に係る散乱線補正処理に関する技術を適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 本体(画像処理装置)
2 FPD(撮影装置)
3 放射線源(撮影装置)
10 移動型放射線撮影装置(画像処理装置)
100 医用画像処理システム(画像処理システム)
101 制御部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12