(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135555
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】部品内蔵型回路基板
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20240927BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240927BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20240927BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L23/12 N
H01L25/04 C
H01L23/12 Q
H05K3/46 Q
H05K1/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046307
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】小泉 雄大
(72)【発明者】
【氏名】稲田 太朗
(72)【発明者】
【氏名】山本 真義
(72)【発明者】
【氏名】永井 友崇
【テーマコード(参考)】
5E316
5E338
【Fターム(参考)】
5E316AA32
5E316AA35
5E316BB03
5E316BB11
5E316CC02
5E316CC32
5E316DD02
5E316DD12
5E316HH04
5E316JJ12
5E338AA03
5E338BB75
5E338CC04
5E338CD23
5E338EE13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】スイッチング動作を伴う電子部品が搭載された部品内蔵型回路基板のノイズを低減する。
【解決手段】部品内蔵型回路基板1は、高電位側電力供給端子が設けられる第1導電層11と、低電位側電力供給端子が設けられる第2導電層12と、第1導電層11と第2導電層12との間に形成された絶縁層20と、絶縁層20に内蔵されるとともに絶縁層20から露出した高電位側接続端子と低電位側接続端子とを有する第1半導体素子41及び第2半導体素子42と、第1半導体素子41の低電位側接続端子41Lと、第2半導体素子の高電位側接続端子42Hと、を接続する中間導電体30と、を備える。絶縁層20の面内方向において離れて配置された第1半導体素子41及び第2半導体素子42と、中間導電体30と、が第1導電層11と第2導電層12との間に設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電位側電力供給端子が設けられる第1導電層と、
低電位側電力供給端子が設けられる第2導電層と、
前記第1導電層と前記第2導電層との間に形成された絶縁層と、
前記絶縁層に内蔵されるとともに、前記絶縁層から露出した高電位側接続端子と低電位側接続端子とを有する第1半導体素子及び第2半導体素子と、
前記第1半導体素子の低電位側接続端子と、前記第2半導体素子の高電位側接続端子と、を接続する中間導電体と、
を備え、
前記絶縁層の面内方向において離れて配置された前記第1半導体素子及び前記第2半導体素子と、前記中間導電体と、が前記第1導電層と前記第2導電層との間に設けられ、
前記高電位側電力供給端子と、前記絶縁層から露出した前記第1半導体素子の高電位側前記接続端子と、が前記第1導電層により接続され、
前記低電位側電力供給端子と、前記絶縁層から露出した前記第2半導体素子の低電位側前記接続端子と、が前記第2導電層により接続され、
前記第1導電層及び前記第2導電層の少なくとも一方が、前記第1導電層及び前記第2導電層の積層方向から見たときに、前記中間導電体と重なる部分を有するように構成される部品内蔵型回路基板。
【請求項2】
前記第1半導体素子及び前記第2半導体素子は、前記第1導電層と前記第2導電層の間の前記絶縁層に内蔵され、
前記中間導電体は、
前記絶縁層に内蔵されるとともに、前記絶縁層から露出した高電位側接続端子と低電位側接続端子とを有する導電部品と、
前記第1半導体素子の低電位側接続端子と、前記導電部品の高電位側接続端子と、を接続する第3導電層と、
前記導電部品の低電位側接続端子と、前記第2半導体素子の高電位側接続端子と、を接続する第4導電層と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の部品内蔵型回路基板。
【請求項3】
前記第1導電層及び前記第2導電層は、
前記電力供給端子が設けられる平面部と、
前記平面部から延び、前記第1半導体素子又は前記第2半導体素子と接続される接続端子を有するアーム部と、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の部品内蔵型回路基板。
【請求項4】
第3半導体素子と前記第3半導体素子と接続される第4半導体素子と、第5半導体素子と、前記第5半導体素子と接続される第6半導体素子と、を備え、
前記アーム部は、
前記平面部から延び、前記第1半導体素子又は前記第2半導体素子と接続される接続端子を有する第1アーム部と、
前記平面部から延び、前記第3半導体素子又は前記第4半導体素子と接続される接続端子を有する第2アーム部と、
前記平面部から延び、前記第5半導体素子又は前記第6半導体素子と接続される接続端子を有する第3アーム部と、
を有することを特徴とする請求項3に記載の部品内蔵型回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品内蔵型回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子機器では、電子部品をプリント基板の表面に実装する技術が一般に用いられてきた。これに対し、電子部品をプリント基板の内部に実装する部品内蔵型回路基板を採用すれば、電子回路をさらに高密度化できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
部品内蔵型回路基板を用いた電子機器において、入力配線(例えば、P電位電極及びN電位電極からスイッチング用FETへの銅箔パターン)に電流が流れると、銅箔パターンを周回する方向の磁束が発生する(右ねじの法則)。導体の周囲に磁束が発生すると、その導体は、インダクタンス成分を持つ。一般にスイッチング用FETでは、ON/OFF動作の過渡時(スイッチングの切り替わりタイミング)に電流の断続が発生する。配線内にインダクタンスが存在すると、こうした電流の断続とインダクタンスとにより、電圧が生じる。これはノイズの原因となる。特にパワーエレクトロニクスの分野ではスイッチング動作が必須であることから、ノイズの低減が強く望まれる。
【0005】
特許文献1には、部品内蔵型回路基板のシールド性を向上させ、ノイズに対する信頼性を改善する技術が開示されている。しかしこの技術は、スイッチング動作を伴う電子部品動作に起因するノイズには対応できない。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、スイッチング動作を伴う電子部品が搭載された部品内蔵型回路基板のノイズを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の部品内蔵型回路基板は、高電位側電力供給端子が設けられる第1導電層と、低電位側電力供給端子が設けられる第2導電層と、第1導電層と第2導電層との間に形成された絶縁層と、絶縁層に内蔵されるとともに絶縁層から露出した高電位側接続端子と低電位側接続端子とを有する第1半導体素子及び第2半導体素子と、第1半導体素子の低電位側接続端子と、第2半導体素子の高電位側接続端子と、を接続する中間導電体と、を備える。前記絶縁層の面内方向において離れて配置された第1半導体素子及び第2半導体素子と、中間導電体と、が第1導電層と第2導電層との間に設けられる。高電位側電力供給端子と、絶縁層から露出した第1半導体素子の高電位側接続端子と、が第1導電層により接続される。低電位側電力供給端子と、絶縁層から露出した第2半導体素子の低電位側接続端子と、が第2導電層により接続される。第1導電層及び第2導電層の少なくとも一方が、第1導電層及び第2導電層の積層方向から見たときに、中間導電体と重なる部分を有するように構成される。
【0008】
この態様によると、第1導電層及び第2導電層の少なくとも一方の平面上に流れる電流の少なくとも一部が、中間導電体に流れる電流の一部と重なり且つ逆向きになる。各導電体に発生する磁束は、このように重なり合って逆向きの電流が流れる導電体間で打ち消し合う。この磁束の打消しに伴って各導電体に発生するインダクタンスが低減されるので、スイッチングノイズを低減できる。
【0009】
本発明の別の実施の形態では、第1半導体素子及び第2半導体素子は、第1導電層と第2導電層の間の絶縁層に内蔵されてもよい。このとき中間導電体は、絶縁層に内蔵されるとともに絶縁層から露出した高電位側接続端子と低電位側接続端子とを有する導電部品と、第1半導体素子の低電位側接続端子と、導電部品の高電位側接続端子と、を接続する第3導電層と、導電部品の低電位側接続端子と、第2半導体素子の高電位側接続端子と、を接続する第4導電層と、を含む。
【0010】
この実施の形態によると、第1半導体素子と第2半導体素子とが同一の層で(同一平面上で)逆向きの電流を発生させるため、磁束の打ち消し合いの効果がさらに向上し、スイッチングノイズをより効果的に低減できる。
【0011】
本発明のさらに別の実施の形態では、第1導電層及び第2導電層は、電力供給端子が設けられる平面部と、平面部から延び、前記第1半導体素子又は第2半導体素子と接続される接続端子を有するアーム部と、を有してもよい。
【0012】
この実施の形態によると、電力供給端子が設けられる平面部と、半導体素子に接続されるアーム部とを独立させることができるので、それぞれの設計の自由度を上げることができる。
【0013】
本発明のさらに別の実施の形態では、部品内蔵型回路基板は、第3半導体素子と第3半導体素子と接続される第4半導体素子と、第5半導体素子と、第5半導体素子と接続される第6半導体素子と、を備えてもよい。このときアーム部は、平面部から延び、第1半導体素子又は第2半導体素子と接続される接続端子を有する第1アーム部と、平面部から延び、第3半導体素子又は第4半導体素子と接続される接続端子を有する第2アーム部と、平面部から延び、第5半導体素子又は第6半導体素子と接続される接続端子を有する第3アーム部と、を有する。
【0014】
この実施の形態によると、3つのハーフブリッジをまとめることができるので、スイッチングノイズの少ない3相インバータを実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スイッチング動作を伴う電子部品が搭載された部品内蔵型回路基板のノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施の形態に係る部品内蔵型回路基板を縦方向の側面から見た断面図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る部品内蔵型回路基板の上面断面図及び横方向の側面から見た断面図である。
【
図4】比較例に係る部品内蔵型回路基板を縦方向の側面から見た断面図である。
【
図5】比較例に係る部品内蔵型回路基板の上面断面図及び横方向の側面から見た断面図である。
【
図6】第2の実施の形態に係る部品内蔵型回路基板を縦方向の側面から見た断面図である。
【
図7】変形例に係る部品内蔵型回路基板を縦方向の側面から見た断面図である。
【
図8】変形例に係る部品内蔵型回路基板を縦方向の側面から見た断面図である。
【
図9】第3の実施の形態に係る部品内蔵型回路基板の上面図である。
【
図10】第4の実施の形態に係る部品内蔵型回路基板の上面図である。
【
図11】変形例に係る部品内蔵型回路基板の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示である。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書又は請求項の中で「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するだけのためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0018】
[第1の実施の形態]
図1及び
図2参照して、第1の実施の形態に係る部品内蔵型回路基板1の構成を説明する。
図1は、部品内蔵型回路基板1を水平面上に置き、縦方向の側面から見た断面図である。
図2上段は、実施の形態に係る部品内蔵型回路基板1を水平面上に置き、上面から見た断面図である。
図2下段は、実施の形態に係る部品内蔵型回路基板1を水平面上に置き、横方向の側面から見た断面図である。以下、本明細書では、回路基板を水平面上に置いたとき、当該回路基板の縦方向をx軸、横方向をy軸、鉛直上向き方向をz軸に取ることとする。
【0019】
部品内蔵型回路基板1は、第1導電層11と、第2導電層12と、絶縁層20と、第1半導体素子41と、第2半導体素子42と、中間導電体30と、を備える。第1導電層11には、高電位側電力供給端子100Hが設けられる。第2導電層12には、低電位側電力供給端子100Lが設けられる。絶縁層20は、第1導電層11と第2導電層12との間に形成される。第1半導体素子41は、絶縁層20に内蔵されるとともに、絶縁層20から露出した高電位側接続端子41Hと低電位側接続端子41Lとを有する。第2半導体素子42は、絶縁層20に内蔵されるとともに、絶縁層20から露出した高電位側接続端子42Hと低電位側接続端子42Lとを有する。中間導電体30は、第1半導体素子41の低電位側接続端子41Lと、第2半導体素子42の高電位側接続端子42Hと、を接続する。第1導電層11又は第2導電層12の面内方向に離れて配置された第1半導体素子41及び第2半導体素子42と、中間導電体30と、が第1導電層11と第2導電層12との間に設けられる。高電位側電力供給端子100Hと、絶縁層20から露出した第1半導体素子41の高電位側接続端子41Hと、が第1導電層11により接続される。低電位側電力供給端子100Lと、絶縁層20から露出した第2半導体素子42の低電位側接続端子42Lと、が第2導電層12により接続される。第1導電層11及び第2導電層12の少なくとも一方は、第1導電層11及び第2導電層12の積層方向から見たときに、中間導電体30と重なる部分を有するように構成される。
【0020】
この例では、第1半導体素子41及び第2半導体素子42はスイッチとして機能する。このとき第1半導体素子41はハイサイド側に配置され、第2半導体素子42はローサイド側に配置される。この場合、高電位側電力供給端子100HはP電位となり、低電位側電力供給端子100LはN電位となる。
【0021】
この例では、第1導電層11及び第2導電層12は、銅箔で形成される。絶縁層32は、コア層及びプリプレグ材を含んでもよい。
【0022】
図1に示されるように、部品内蔵型回路基板1は、必須ではないが、第1導電層11の下面に絶縁シート60と、放熱板70と、を備えてもよい。この場合、電子部品が発生する熱を効果的に逃がすことができるので、部品の内部実装に伴う発熱の問題を解決することができる。
【0023】
一例として、第1半導体素子41及び第2半導体素子42は、FET(電界効果トランジスタ)である。この場合、高電位側接続端子41H及び42Hはドレイン電極端子であり、低電位側接続端子41L及び42Lはソース電極端子である。
【0024】
図3は、第1半導体素子41(FET)の側面模式図である。第1半導体素子41は、下側に高電位側接続端子41H(ドレイン電極端子)と、上側に低電位側接続端子41L(ソース電極端子)と、ソース電極面の一部に形成されたゲート電極端子41Gと、を有する。以下の説明では、ゲート電極端子は省略することもある。第2半導体素子42も同様である。
【0025】
[比較例]
実施の形態に係る部品内蔵型回路基板1の動作を説明する前に、本発明に至る過程で案出された比較例に係る部品内蔵型回路基板9の動作を説明する。
図4及び
図5は、比較例に係る部品内蔵型回路基板9を示し、それぞれ
図1及び
図2に対応する。
【0026】
部品内蔵型回路基板9は、第1の導電配線層1010と、第1の導電配線層1010の上に積層された第2の導電配線層1020と、第1の導電配線層1010と第2の導電配線層1020との間に形成された絶縁層1030と、絶縁層1030に内蔵された第1電極端子と第2電極端子とを含む少なくとも1対の半導体素子と、を備える。半導体素子の対の一方である第1の半導体素子1040の第1電極端子1041は、第1の導電配線層1010に接続される。半導体素子の対の他方である第2の半導体素子1050の第2電極端子1052は、第2の導電配線層1020に接続される。第1の導電配線層1010及び第2の導電配線層1020は、第1の導電配線層1010に流れる電流及び第2の導電配線層1020に流れる電流が第1の導電配線層1010及び第2の導電配線層1020を貫通する方向から見て対称かつ逆向きとなるように形成される。
【0027】
図5上段に、上記の構成を取ったときに、第1の導電配線層1010及び第2の導電配線層1020を流れる電流を模式的に示す。このような構成を取ることにより、点線で囲まれた領域1300において、第1の導電配線層1010を流れる電流により生じる磁束と、第2の導電配線層1020を流れる電流により生じる磁束と、が互いに打ち消されていることが分かる。これによりにより、スイッチング動作に伴うノイズを低減することができる。
【0028】
しかしながら、
図4に示されるように、
図5上段の点線で囲まれた領域1400(半導体素子1100及び半導体素子1200が搭載された部分)では、このような磁束の打ち消しは実現できていない。この領域での磁束により発生するインダクタンスは比較的大きい。従ってこの点が、比較例の持つ技術課題となる。
【0029】
[第1の実施の形態(再)]
図1及び
図2に戻って、部品内蔵型回路基板1上での電流の流れを説明する。高電位側電力供給端子100Hから流出した電流は、第1導電層11を通って、第1半導体素子41の高電位側接続端子41Hに流入する。第1半導体素子41に流入した電流は低電位側接続端子41Lから流出し、中間導電体30を通って、第2半導体素子42の高電位側接続端子42Hに流入する。第2半導体素子42に流入した電流は低電位側接続端子42Lから流出し、第2導電層12を通って、低電位側電力供給端子100Lに流入する。
図1及び
図2に、この電流を実線矢印で模式的に示す。
【0030】
図1に示されるように、第1半導体素子41及び第2半導体素子42が搭載された領域130において、第1導電層11を紙面上右から左に向かって流れる電流が、中間導電体30及び第2導電層12を紙面左から右に向かって流れる電流と、平行且つ逆向きになっている。同様に領域130において、第1導電層11から第1半導体素子41を通って中間導電体30に流れる電流及び中間導電体30から第2半導体素子42を通って第2導電層12に流れる電流(紙面下から上に向かって流れる電流)が、中間導電体30を通って紙面上から下に向かって流れる電流と、平行且つ逆向きになっている。こうした平行且つ逆向きに流れる電流によって、領域130内における磁束が互いに打ち消されている。
【0031】
一方、領域120においても、第1導電層11上を高電位側電力供給端子100Hから第1半導体素子41に向かう電流と、第2導電層12上を第2半導体素子42から低電位側電力供給端子100Lに向かう電流は、やはりほぼ平行且つ逆向きになっている。なお、模式的な
図2ではこれらの電流が平行でないようにも見えるが、実際には
図9に示されるように領域120は領域130に比べて遥かに大きいため、領域120でも電流の流れはほぼ平行である。従って、領域120内でも、磁束は互いに打ち消されている。
【0032】
以上説明したように、この実施の形態によれば、部品内蔵型回路基板1のほぼ全領域にわたって、電流によって生じる磁束を互いに打ち消し合うことができる。従って、従来のようなスナバ回路等の追加素子を必要とすることなく、スイッチング動作に伴うノイズを低減することができる。
【0033】
[第2の実施の形態]
図6は、第2の実施の形態に係る部品内蔵型回路基板2を水平面上に置き、縦方向の側面から見た断面図である。
【0034】
部品内蔵型回路基板2では、第1半導体素子41及び第2半導体素子42は、第1導電層11と第2導電層12の間の絶縁層20に内蔵されている。中間導電体30は、導電部品50と、第3導電層と、第4導電層と、を含む。導電部品50は、絶縁層20に内蔵されるとともに、絶縁層20から露出した高電位側接続端子50Hと低電位側接続端子50Lとを有する。第3導電層13は、第1半導体素子41の低電位側接続端子41Lと、導電部品50の高電位側接続端子50Hと、を接続する。第4導電層14は、導電部品50の低電位側接続端子50Lと、第2半導体素子42の高電位側接続端子42Hと、を接続する。
【0035】
この例では、導電部品50は銅ブロックによって形成される。
【0036】
図6の実線矢印で示されるように、部品内蔵型回路基板2でも領域130における電流は平行且つ逆向きなので、部品内蔵型回路基板1と同等の効果を発揮する。さらに部品内蔵型回路基板2では、第1半導体素子41と第2半導体素子42とが同一の層で(同一平面上で)逆向きの電流を発生させるため、磁束の打ち消し合いの効果がさらに向上し、スイッチングノイズをより効果的に低減できる。
【0037】
この実施の形態に係る部品内蔵型回路基板には、部品内蔵型回路基板2の他にも様々な変形例が考えられる。
図7及び
図8にこうした変形例を示す。
【0038】
図7は、
図4の部品内蔵型回路基板2の変形例に係る部品内蔵型回路基板3を示す。部品内蔵型回路基板2では、第1導電層11が第2半導体素子42の下側を横断して配置されていた。部品内蔵型回路基板3では、第1導電層11は第2半導体素子42の下側を横断しておらず、代わりに第2導電層12が第1半導体素子41の上側を横断している。この構成でも領域130での電流は平行且つ逆向きになっており、部品内蔵型回路基板2と同様に磁束の打ち消し効果が発揮され、スイッチングノイズを低減できる。
【0039】
図8は、
図1の部品内蔵型回路基板1の変形例に係る部品内蔵型回路基板4を示す。部品内蔵型回路基板4では、部品内蔵型回路基板1と異なり、第1半導体素子41と第2半導体素子42とは、同じ層にない(同一平面上にない)。すなわち、第2半導体素子42は、第1半導体素子41が内蔵された絶縁層20の上の中間導電体30の上に配置される。この場合、
図8の紙面横方向に流れる電流は平行且つ逆向きだが、紙面縦方向に流れる電流は平行且つ同じ向きである。従って部品内蔵型回路基板4では、紙面縦方向に流れる電流が生成する磁束を打ち消すことはできない。しかし、一般にこのような応用で使われる半導体素子は、横方向の幅が3000μm程度であるのに対し、縦方向の厚みは200μm程度である。このように横方向の幅に比べて縦方向の厚みが小さいことから、縦方向に流れる電流による磁束が打ち消せないことに起因する性能低下は、比較的限定的であると考えられる。従って、この構成でも一定程度スイッチングノイズを低減できる。
【0040】
[第3の実施の形態]
図9は、第3の実施の形態に係る部品内蔵型回路基板5の斜視図である。部品内蔵型回路基板5は、
図1の部品内蔵型回路基板1又は
図6の部品内蔵型回路基板2と同様の構成を有する。特に部品内蔵型回路基板5の第1導電層11は、平面部11Pと、アーム部11Aと、を有する。さらに部品内蔵型回路基板5の第2導電層12は、平面部12Pと、アーム部12Aと、を有する。第1導電層11の平面部11Pには、高電位側電力供給端子100Hが設けられる。第1導電層11のアーム部11Aは、平面部11Pから延び、第1半導体素子41と接続される接続端子を有する。第2導電層12の平面部12Pには、低電位側電力供給端子100Lが設けられる。第2導電層12のアーム部12Aは、平面部12Pから延び、第2半導体素子42と接続される接続端子を有する。
【0041】
この実施の形態によれば、電力供給端子が設けられる平面部と、半導体素子に接続されるアーム部とを独立させることができる。従って、前述の実施の形態と同等の効果を発揮しつつ、平面部及びアーム部のそれぞれの設計の自由度を上げることができる。
【0042】
[第4の実施の形態]
図10は、第4の実施の形態に係る部品内蔵型回路基板6を水平面上に置き、上面から見た断面図である。部品内蔵型回路基板6は、
図9の部品内蔵型回路基板5において、平面部とアーム部を3組有するものである。具体的には、部品内蔵型回路基板6は、第1半導体素子41及び第2半導体素子42に加えて、第3半導体素子43と第3半導体素子43と接続される第4半導体素子44と、第5半導体素子45と、第5半導体素子45と接続される第6半導体素子46と、を備える。第1導電層11のアーム部11Aは、第1アーム部11A1と、第2アーム部11A2と、第3アーム部11A3と、を有する。第2導電層12のアーム部12Aは、第1アーム部12A1と、第2アーム部12A2と、第3アーム部12A3と、を有する。第1導電層11の第1アーム部11A1は、平面部11Pから延びて、第1半導体素子41と接続される接続端子を有する。第2導電層12の第1アーム部12A1は、平面部12Pから延びて、第2半導体素子42と接続される接続端子を有する。第1導電層11の第2アーム部11A2は、平面部11Pから延びて、第3半導体素子43と接続される接続端子を有する。第2導電層12の第2アーム部12A2は、平面部12Pから延びて、第4半導体素子44と接続される接続端子を有する。第1導電層11の第3アーム部11A3は、平面部11Pから延びて、第5半導体素子45と接続される接続端子を有する。第2導電層12の第3アーム部12A3は、平面部12Pから延びて、第6半導体素子46と接続される接続端子を有する。
【0043】
この実施の形態によれば、3つのハーフブリッジをまとめることができるので、スイッチングノイズの少ない3相インバータを実現することができる。
【0044】
なお
図10では、第1導電層の平面部11P及び第2導電層の平面部12Pは正三角形の形状をしているが、これに限られず、第1導電層の平面部11P及び第2導電層の平面部12Pは任意の好適な形状であってもよい。
【0045】
[検証]
本発明者らは、本発明の効果を検証するためのシミュレーションを実施した。シミュレーションには電磁界解析ソフト「Q3D」を用い、
図9の形状の部品内蔵型回路基板5と、同じ形状の比較例に係る部品内蔵型回路基板とでループインダクタンスを計算し、両者を比較した。その結果、ループインダクタンスは、実施の形態の部品内蔵型回路基板5で5.898nH、比較例の部品内蔵型回路基板で9.549nHと計算された。このように本発明の技術によれば、ループインダクタンスを従来の6割程度にまで低減できることが分かった。
【0046】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、いろいろな変形及び変更が本発明の特許請求の範囲内で可能なこと、またそうした変形例及び変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述及び図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0047】
実施の形態の半導体素子は、FETであった。しかし半導体素子はこれに限られず、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)などの任意のスイッチング半導体であってもよい。半導体材料も、Si、SiC、GaN、Ga2O3など、任意の好適なものであってもよい。この変形例によれば、構成の自由度を上げることができる。
【0048】
基板の材料(FR4、CEM3等)やプリプレグ等の絶縁層の材料は特に限定されず、任意の好適なものであってもよい。導体層の厚みも特に限定されず、一般的な36μmより厚くても薄くてもよい。本技術は、リジッド基板及びフレキシブル基板のいずれにも適用可能である。この変形例によれば、構成の自由度を上げることができる。
【0049】
実施の形態の導電部品は、銅ブロックによって形成された。銅ブロックをあらかじめ表面めっき処理したものでもよい。導電部品は、銅ブロックに限られず、層間VIAを積み上げたものであってもよい。導電部品の材料は、銅に限られず、任意の半田付け導電材料であってもよい。この変形例によれば、構成の自由度を上げることができる。
【0050】
図2及び
図10に示される例では、高電位側電力供給端子100H及び低電位側電力供給端子100Lの配置方向と、第1半導体素子41及び第2半導体素子42の配置方向とは平行である。しかしこれに限られず、
図11に示される部品内蔵型回路基板7のように、高電位側電力供給端子100H及び低電位側電力供給端子100Lの配置方向と、第1半導体素子41及び第2半導体素子42の配置方向とは垂直であってもよい。
【0051】
上述した各実施の形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる各実施の形態及び変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【0052】
以上、実施の形態及び変形例を説明した。実施の形態及び変形例を抽象化した技術的思想を理解するにあたり、その技術的思想は実施の形態及び変形例の内容に限定的に解釈されるべきではない。前述した実施の形態及び変形例は、いずれも具体例を示したものにすぎず、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施の形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
実施の形態に係る部品内蔵型回路基板は、モーターインバータ、DCDCコンバータ、ACDCコンバータ、DCACインバータなどのパワーエレクトロニクス回路に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
部品内蔵型回路基板・・1、
部品内蔵型回路基板・・2、
部品内蔵型回路基板・・3、
部品内蔵型回路基板・・4、
部品内蔵型回路基板・・5、
部品内蔵型回路基板・・6、
部品内蔵型回路基板・・7、
高電位側電力供給端子・・100H、
低電位側電力供給端子・・100L、
第1導電層・・11、
第2導電層・・12、
第3導電層・・13、
第4導電層・・14、
絶縁層・・20、
中間導電体30、
第1半導体素子・・41、
第2半導体素子・・42、
第3半導体素子・・43、
第4半導体素子・・44、
第5半導体素子・・45、
第6半導体素子・・46、
第1半導体素子の高電位側接続端子・・41H、
第1半導体素子の低電位側接続端子・・41L、
第2半導体素子の高電位側接続端子・・42H、
第2半導体素子の低電位側接続端子・・42L、
第1半導体素子のゲート電極端子・・41G、
領域・・120、
領域・・130、
導電部品・・50、
導電部品の高電位側接続端子・・50H、
導電部品の低電位側接続端子・・50L、
第1導電層の平面部・・11P、
第2導電層の平面部・・12P、
第1導電層のアーム部・・11A、
第2導電層のアーム部・・12A、
第1導電層の第1アーム部・・11A1、
第1導電層の第2アーム部・・11A2、
第1導電層の第3アーム部・・11A3、
第2導電層の第1アーム部・・12A1、
第2導電層の第2アーム部・・12A2、
第2導電層の第3アーム部・・12A3
絶縁シート・・60、
放熱板・・70。