(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135556
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】通信端末、プログラム及び無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 52/24 20090101AFI20240927BHJP
H04W 74/08 20240101ALI20240927BHJP
【FI】
H04W52/24
H04W74/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046308
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】菅野 一生
(72)【発明者】
【氏名】大澤 昇
(72)【発明者】
【氏名】大関 武雄
(72)【発明者】
【氏名】天野 良晃
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067EE02
5K067EE10
(57)【要約】
【課題】通信端末が、通信するべき複数のアクセスポイントと適切に通信できるようにする。
【解決手段】通信端末3は、複数のアクセスポイント2それぞれから電力測定用信号を受信する端末受信部31と、複数のアクセスポイント2から受信した複数の電力測定用信号の受信電力に基づいて、複数のアクセスポイント2に対応する複数の伝送路損失量を特定する端末制御部34と、複数の伝送路損失量のうち最小の伝送路損失量に対応するアクセスポイントの所要受信電力に対応する第1送信電力に基づいて所定の条件を満たすように決定された、第1送信電力よりも大きい第2送信電力でプリアンブル信号を送信する端末送信部32と、を有する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアクセスポイントそれぞれから電力測定用信号を受信する受信部と、
前記複数のアクセスポイントから受信した複数の前記電力測定用信号の受信電力に基づいて、前記複数のアクセスポイントに対応する複数の伝送路損失量を特定する制御部と、
前記複数の伝送路損失量のうち最小の伝送路損失量に対応する前記アクセスポイントの所要受信電力に対応する第1送信電力に基づいて所定の条件を満たすように決定された、前記第1送信電力よりも大きい第2送信電力でプリアンブル信号を送信する送信部と、
を有する通信端末。
【請求項2】
前記制御部は、前記所要受信電力に前記最小の伝送路損失量を加算することにより前記第1送信電力をさらに決定する、
請求項1に記載の通信端末。
【請求項3】
前記所定の条件は、前記第1送信電力と前記第2送信電力との差の最小値である電力差閾値であり、
前記送信部は、前記第1送信電力よりも前記電力差閾値以上大きい前記第2送信電力で前記プリアンブル信号を送信する、
請求項1に記載の通信端末。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1送信電力に前記電力差閾値を加算することにより前記第2送信電力を決定する、
請求項3に記載の通信端末。
【請求項5】
前記所定の条件は、前記通信端末が通信する対象として設定される前記アクセスポイントの設定数であり、
前記送信部は、前記複数の伝送路損失量のうち小さい方から前記設定数に対応する順位の伝送路損失量に対応する前記第2送信電力で前記プリアンブル信号を送信する、
請求項1に記載の通信端末。
【請求項6】
前記制御部は、前記複数の伝送路損失量のうち小さい方から前記設定数に対応する順位の伝送路損失量に対応する他のアクセスポイントを特定し、前記他のアクセスポイントの所要受信電力に、前記他のアクセスポイントに対応する伝送路損失量を加算することにより、前記第2送信電力を決定する、
請求項5に記載の通信端末。
【請求項7】
前記制御部は、前記所定の条件を満たすように前記第2送信電力を決定することができない場合、前記所定の条件を満たすことができないことを示す情報を前記送信部に送信させる、
請求項1に記載の通信端末。
【請求項8】
前記受信部は、前記複数のアクセスポイントから、それぞれの前記アクセスポイントに割り当てられたプリアンブルデータを特定するための情報を受信し、
前記送信部は、前記最小の伝送路損失量に対応する前記アクセスポイントが送信した前記プリアンブルデータを含む前記プリアンブル信号を前記第2送信電力で送信する、
請求項1に記載の通信端末。
【請求項9】
前記受信部は、前記送信部が前記プリアンブル信号を送信する前に前記所定の条件を示す条件情報を、前記複数のアクセスポイントを介して、前記複数のアクセスポイントと通信可能な通信制御装置から受信する、
請求項1に記載の通信端末。
【請求項10】
前記受信部は、前記電力測定用信号として使用される同期信号ブロック(SSB:Synchronization Signal Block)を用いて前記条件情報を受信する、
請求項9に記載の通信端末。
【請求項11】
プロセッサを、
複数のアクセスポイントそれぞれから電力測定用信号を受信する受信部と、
前記複数のアクセスポイントから受信した複数の前記電力測定用信号の受信電力に基づいて、前記複数のアクセスポイントに対応する複数の伝送路損失量を特定する制御部と、
前記複数の伝送路損失量のうち最小の伝送路損失量に対応する前記アクセスポイントの所要受信電力に対応する第1送信電力に基づいて所定の条件を満たすように決定された、前記第1送信電力よりも大きい第2送信電力でプリアンブル信号を送信する送信部と、
として機能させるためのプログラム。
【請求項12】
複数のアクセスポイントと、前記複数のアクセスポイントと通信する通信端末と、を備え、
前記複数のアクセスポイントのそれぞれは、
電力測定用信号を送信する端末側送信部と、
前記通信端末からデータを受信する端末側受信部と、
を有し、
前記通信端末は、
複数のアクセスポイントそれぞれから電力測定用信号を受信する受信部と、
前記複数のアクセスポイントから受信した複数の前記電力測定用信号の受信電力に基づいて、前記複数のアクセスポイントに対応する複数の伝送路損失量を特定する制御部と、
前記複数の伝送路損失量のうち最小の伝送路損失量に対応する前記アクセスポイントの所要受信電力に対応する第1送信電力に基づいて所定の条件を満たすように決定された、前記第1送信電力よりも大きい第2送信電力でプリアンブル信号を送信する送信部と、
を有する、無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末、プログラム及び無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信端末(UE)が複数のアクセスポイント(AP)とデータ通信をする技術が知られている。特許文献1には、通信端末が2台のアクセスポイントと通信可能な通信システムが開示されている。非特許文献1には、複数のアクセスポイントが動的なクラスタを形成し、クラスタ内のアクセスポイントが通信端末と通信するCell-Free Massive MIMOの技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公開2018/0235013号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】E. Bjornson and L. Sanguinetti, "Scalable Cell-Free Massive MIMO Systems," in IEEE Transactions on Communications, vol. 68, no. 7, pp. 4247-4261,2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に開示された無線通信システムにおいては、通信端末に対応するクラスタ内の複数のアクセスポイントから同期信号を受信した通信端末が、受信レベルが最大の同期信号を送信したアクセスポイントを選択し、選択したアクセスポイントとの通信を開始する。この場合、選択されたアクセスポイント以外のアクセスポイントが、通信端末が送信したプリアンブル信号を正常に受信できない場合が生じ得るという問題があった。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、通信端末が、通信するべき複数のアクセスポイントに対して適切な電力でプリアンブル信号を送信することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様の通信端末は、複数のアクセスポイントそれぞれから電力測定用信号を受信する受信部と、前記複数のアクセスポイントから受信した複数の前記電力測定用信号の受信電力に基づいて、前記複数のアクセスポイントに対応する複数の伝送路損失量を特定する制御部と、前記複数の伝送路損失量のうち最小の伝送路損失量に対応する前記アクセスポイントの所要受信電力に対応する第1送信電力に基づいて所定の条件を満たすように決定された、前記第1送信電力よりも大きい第2送信電力でプリアンブル信号を送信する送信部と、を有する。
【0008】
前記制御部は、前記所要受信電力に前記最小の伝送路損失量を加算することにより前記第1送信電力をさらに決定してもよい。
【0009】
前記所定の条件は、前記第1送信電力と前記第2送信電力との差の最小値である電力差閾値であり、前記送信部は、前記第1送信電力よりも前記電力差閾値以上大きい前記第2送信電力で前記プリアンブル信号を送信してもよい。
【0010】
前記制御部は、前記第1送信電力に前記電力差閾値を加算することにより前記第2送信電力を決定してもよい。
【0011】
前記所定の条件は、前記通信端末が通信する対象として設定される前記アクセスポイントの設定数であり、前記送信部は、前記複数の伝送路損失量のうち小さい方から前記設定数に対応する順位の伝送路損失量に対応する前記第2送信電力で前記プリアンブル信号を送信してもよい。
【0012】
前記制御部は、前記複数の伝送路損失量のうち小さい方から前記設定数に対応する順位の伝送路損失量に対応する他のアクセスポイントを特定し、前記他のアクセスポイントの所要受信電力に、前記他のアクセスポイントに対応する伝送路損失量を加算することにより、前記第2送信電力を決定してもよい。
【0013】
前記制御部は、前記所定の条件を満たすように前記第2送信電力を決定することができない場合、前記所定の条件を満たすことができないことを示す情報を前記送信部に送信させてもよい。
【0014】
前記受信部は、前記複数のアクセスポイントから、それぞれの前記アクセスポイントに割り当てられたプリアンブルデータを特定するための情報を受信し、前記送信部は、前記最小の伝送路損失量に対応する前記アクセスポイントが送信した前記プリアンブルデータを含む前記プリアンブル信号を前記第2送信電力で送信してもよい。
【0015】
前記受信部は、前記送信部が前記プリアンブル信号を送信する前に前記所定の条件を示す条件情報を、前記複数のアクセスポイントを介して、前記複数のアクセスポイントと通信可能な通信制御装置から受信してもよい。
【0016】
前記受信部は、前記電力測定用信号として使用される同期信号ブロック(SSB:Synchronization Signal Block)を用いて前記条件情報を受信してもよい。
【0017】
本発明の第2の態様のプログラムは、プロセッサを、複数のアクセスポイントそれぞれから電力測定用信号を受信する受信部と、前記複数のアクセスポイントから受信した複数の前記電力測定用信号の受信電力に基づいて、前記複数のアクセスポイントに対応する複数の伝送路損失量を特定する制御部と、前記複数の伝送路損失量のうち最小の伝送路損失量に対応する前記アクセスポイントの所要受信電力に対応する第1送信電力に基づいて所定の条件を満たすように決定された、前記第1送信電力よりも大きい第2送信電力でプリアンブル信号を送信する送信部と、として機能させる。
【0018】
本発明の第3の態様の無線通信システムは、複数のアクセスポイントと、前記複数のアクセスポイントと通信する通信端末と、を備え、前記複数のアクセスポイントのそれぞれは、電力測定用信号を送信する端末側送信部と、前記通信端末からデータを受信する端末側受信部と、を有し、前記通信端末は、複数のアクセスポイントそれぞれから電力測定用信号を受信する受信部と、前記複数のアクセスポイントから受信した複数の前記電力測定用信号の受信電力に基づいて、前記複数のアクセスポイントに対応する複数の伝送路損失量を特定する制御部と、前記複数の伝送路損失量のうち最小の伝送路損失量に対応する前記アクセスポイントの所要受信電力に対応する第1送信電力に基づいて所定の条件を満たすように決定された、前記第1送信電力よりも大きい第2送信電力でプリアンブル信号を送信する送信部と、を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、通信端末が、通信するべき複数のアクセスポイントに対してプリアンブル信号を適切な電力で送信できるようになるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】無線通信システムSの概要を説明するための図である。
【
図2】無線通信システムSの概要を説明するための図である。
【
図3】無線通信システムSの概要を説明するための図である。
【
図4】無線通信システムSの概要を説明するための図である。
【
図5】通信端末3の送信電力の制御について説明するための図である。
【
図6】通信端末3の送信電力の制御について説明するための図である。
【
図10】通信端末3における処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】無線通信システムSにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[無線通信システムSの概要]
図1から
図4は、無線通信システムSの概要を説明するための図である。無線通信システムSは、通信制御装置1と、複数のアクセスポイント2と、複数の通信端末3と、を有する。無線通信システムSは、通信端末3がネットワークを介して他の通信端末3と通信することを可能にする移動体通信システムである。無線通信システムSは、通信端末3が複数のアクセスポイント2とデータを送受信し、複数のアクセスポイント2が通信制御装置1とデータを送受信することにより、固定されたセルを構成することなく通信端末3のデータ通信を可能にするシステムである。
【0022】
通信制御装置1は、移動体通信システムを運営する事業者が管理するコンピュータである。通信制御装置1は、複数のアクセスポイント2との間でデータ送受信をするとともに、ネットワークを介して他の装置とも通信する。
【0023】
通信端末3は、移動可能な情報端末であり、例えばスマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ、IoT(Internet of Things)デバイスである。通信端末3は、複数のアクセスポイント2のアンテナをアンテナポートとして利用することにより、複数のアクセスポイント2を介して通信制御装置1との間でデータを送受信する。通信端末3が、複数のアクセスポイント2との無線通信リンクを確立することにより、当該複数のアクセスポイント2が含まれるクラスタが形成される。
【0024】
複数のアクセスポイント2は、通信制御装置1及び通信端末3と通信可能に構成されている。複数のアクセスポイント2は、例えば通信制御装置1と有線接続されているが、通信制御装置1と無線接続されていてもよい。
【0025】
アクセスポイント2は、通信端末3が通信制御装置1と通信する際のアンテナポートとして機能する。通信端末3が、形成されたクラスタに含まれる複数のアクセスポイント2を複数のアンテナポートとして使用することにより、分散型のアンテナシステムが構築される。
【0026】
複数のアクセスポイント2のそれぞれは、自身に設定された主プリアンブルデータ(Primary Preamble Data)を記憶しており、通信端末3との無線通信リンクを確立する際に、主プリアンブル系列情報を送信する。主プリアンブル系列情報は、主プリアンブルデータを通信端末3が特定するための情報であり、主プリアンブルデータ自体であってもよく、主プリアンブルデータを一意に特定するための情報であってもよい。アクセスポイント2は、例えば報知信号の一例であるSS/PBCH(Synchronization Signal / Physical Broadcast Channel)を用いて主プリアンブル系列情報を送信する。
【0027】
アクセスポイント2は、近傍の他のアクセスポイント2の主プリアンブルデータを、自身の副プリアンブルデータ(Secondary Preamble Data)として記憶している。アクセスポイント2は、例えば通信制御装置1から通知された他のアクセスポイント2の主プリアンブルデータを副プリアンブルデータとして記憶している。
【0028】
アクセスポイント2は、通信端末3が送信した端末プリアンブルデータが主プリアンブルデータ又は副プリアンブルデータのいずれかに対応しているか否かを判定し、端末プリアンブルデータが主プリアンブルデータに対応しているか副プリアンブルデータに対応しているかによって、その後の処理を切り替える。
【0029】
以下、
図1から
図4を参照しながら無線通信システムSの概要を説明する。
図1から
図4においては、4台のアクセスポイント2と1台の通信端末3が示されているが、アクセスポイント2及び通信端末3の台数は任意である。
【0030】
図1において、アクセスポイント2-1の下に表示されている「P:1」は、アクセスポイント2-1が主プリアンブルデータとして、プリアンブルデータ1(以下、「PR1」と表すことがある)を記憶していることを示している。「S:2,3,4」は、アクセスポイント2-1が副プリアンブルデータとして、近傍のアクセスポイント2-2,2-3,2-4の主プリアンブルデータであるプリアンブルデータ2,3,4(以下、それぞれ「PR2」、「PR3」、「PR4」と表すことがある)を記憶していることを示している。
【0031】
アクセスポイント2-2の下に表示されている「P:2」は、アクセスポイント2-2が主プリアンブル系として、PR2を記憶していることを示している。「S:1,3,4」は、アクセスポイント2-2が副プリアンブルデータとして、アクセスポイント2-2の近傍のアクセスポイント2-1,2-3,2-4の主プリアンブルデータであるPR1,PR3,PR4を記憶していることを示している。
【0032】
図1に示すように、まず、複数のアクセスポイント2は、クラスタが形成されていない状態において、記憶している主プリアンブル系列情報を含む報知信号を送信する。具体的には、アクセスポイント2-1~2-4は、それぞれPR1~PR4を含む報知信号を送信する。通信端末3は、これらの報知信号を受信する。
【0033】
通信端末3は、受信した報知信号のうち、所定の初期設定条件を満たす報知信号を送信したアクセスポイント2を選択する。初期設定条件は、例えば最も受信信号レベルが高いことであるが、初期設定条件はこれに限らず、複数の条件の組み合わせであってもよい。本例では、PR2が含まれる報知信号の受信信号レベルが最も高く、通信端末3がアクセスポイント2-2を選択したものとする。
【0034】
この場合、
図2に示すように、通信端末3は、アクセスポイント2-2との間で無線通信リンクの確立処理を行うために、端末プリアンブルデータとしてPR2を含む信号を送信する。端末プリアンブルデータは、通信端末3が送信するデータに含まれるプリアンブルデータである。無線通信リンクの確立処理は、例えば4 step RACH(Random Access Channel)処理であり、通信端末3は、4 step RACH処理におけるMsg 1として、PR2を含むMsg 1信号を送信する。Msg 1信号には、通信端末3を識別するための端末識別情報であるUE-IDが含まれている。
【0035】
複数のアクセスポイント2は、PR2を含む信号を受信し、自身が記憶している主プリアンブルデータ及び副プリアンブルデータと比較する。アクセスポイント2は、受信したPR2が、自身が記憶している主プリアンブルデータ又は副プリアンブルデータのいずれかに対応する場合、受信したMsg 1信号に含まれていたUE-IDと、Msg 1信号を受信したタイミングを示す受信タイミングデータと、を通信制御装置1に送信する。
【0036】
受信したPR2が、自身が記憶している主プリアンブルデータ又は副プリアンブルデータのいずれかに対応する場合とは、受信したPR2が、自身が記憶している主プリアンブルデータ又は副プリアンブルデータのいずれかに基づいて作成されたということを特定できる場合であり、例えば、受信したPR2が、主プリアンブルデータ又は副プリアンブルデータのいずれかと一致する場合である。アクセスポイント2は、受信したPR2が、自身が記憶している主プリアンブルデータ又は副プリアンブルデータのいずれにも対応しない場合、UE-ID及び受信タイミングデータを通信制御装置1に送信せずに処理を終了する。
【0037】
図3に示す例においては、Msg 1信号に含まれているPR2が自身の主プリアンブルデータに対応するアクセスポイント2-2と、Msg 1信号に含まれているPR2が自身の副プリアンブルデータに対応するアクセスポイント2-1、2-3、2-4とが、通信制御装置1にUE-IDを送信している。複数のアクセスポイント2は、通信端末3から端末プリアンブルデータを受信してから、アクセスポイント2-2と通信端末3との間での4 step RACH処理が完了するまでの間にUE-IDを送信する。
【0038】
複数のアクセスポイント2は、例えば、通信端末3が選択したアクセスポイント2-2が4 step RACH処理を完了すると予想されるタイミングでUE-IDを送信する。複数のアクセスポイント2は、アクセスポイント2-2が4 step RACH処理を実行している間にUE-IDを送信してもよく、4 step RACH処理で送受信されているデータを監視し、4 step RACH処理が完了したタイミングでUE-IDを送信してもよい。
【0039】
通信端末3から自身の主プリアンブルデータであるPR2を受信したアクセスポイント2-2が、4 step RACH処理のMsg 2以降のやり取りをすることにより、アクセスポイント2-2と通信端末3との間での無線通信リンクが確立する。4 step RACH処理が完了すると、アクセスポイント2-2は、無線通信リンクが確立したことを通信制御装置1に通知する。アクセスポイント2-1、2-3、2-4は、アクセスポイント2-2と通信端末3との間で行われる4 step RACH処理を観測することにより、アクセスポイント2-2と通信端末3との間の無線通信リンクが確立したことを認識する。
【0040】
続いて、
図4に示すように、通信制御装置1は、アクセスポイント2-2、並びにアクセスポイント2-2とほぼ同じタイミングで通信端末3からUE-IDを受信したアクセスポイント2-1及びアクセスポイント2-3の3台のアクセスポイント2が通信端末3とデータを送受信するために各アクセスポイント2に通知するスケジューリング情報を作成する。スケジューリング情報には、各アクセスポイント2に割り当てる周波数及び時刻(スロット)等が含まれている。またダウンロードリンクで使用するプリコーディングの係数等が含まれていてもよい。通信制御装置1は、アクセスポイント2-1、2-2、2-3、2-4に対して、スケジューリング情報を通知する。アクセスポイント2-2は、通知されたスケジューリング情報を通信端末3に送信する。これにより、アクセスポイント2-1、2-2、2-3、2-4により構成されるクラスタが形成される。
【0041】
これ以降、複数のアクセスポイント2と通信端末3は、スケジューリング情報に基づいてデータ通信を開始する。具体的には、通信端末3は、アクセスポイント2-1、2-2、2-3、2-4がデータを受信できる周波数及び時刻においてデータを送信し、アクセスポイント2-1、2-2、2-3、2-4がデータを送信する周波数及び時刻においてデータを受信する。
【0042】
ところで、通信端末3の消費電力を抑制するためには、通信端末3が選択したアクセスポイント2-2と通信するために必要な最小レベルの送信電力でデータを送信することが望ましい。しかしながら、アクセスポイント2-2以外のアクセスポイント2と通信端末3との間の伝送路における損失が、アクセスポイント2-2と通信端末3との間の伝送路における損失よりも大きい場合、アクセスポイント2-2以外のアクセスポイント2は、通信端末3が送信する信号を正常に受信することができない。その結果、通信端末3が通信可能な複数のアクセスポイント2によりクラスタが形成されていたとしても、通信端末3は複数のアクセスポイント2を有効活用することができない。
【0043】
そこで、本実施形態における通信端末3は、アクセスポイント2-2と通信するために必要な送信電力よりも大きな送信電力であり、かつ所定の条件を満たすために必要な最小の送信電力で信号を送信する。所定の条件は、例えば、通信端末3に最も近いアクセスポイント2-2と通信するために必要な送信電力の最小値よりも閾値以上の送信電力であること、又は通信端末3が通信するべき台数のアクセスポイント2と通信することができることである。
【0044】
図5及び
図6は、通信端末3の送信電力の制御について説明するための図である。
図5(a)は、複数のアクセスポイント2と通信端末3との位置関係を示している。
図5(b)は、複数のアクセスポイント2それぞれが送信したプリアンブル系列情報を含む報知信号の通信端末3における受信電力強度を示している。アクセスポイント2-2が通信端末3に最も近いため、受信電力強度が最大になっている。
【0045】
図6(a)は、通信端末3が、アクセスポイント2-2から受信した報知信号の受信電力強度に基づいて特定した伝送路損失と、アクセスポイント2-2の所要受信電力と、に基づいて決定した第1送信電力で通信端末3が信号を送信した場合に信号が到達する範囲R1を示している。伝送路損失は、プリアンブルデータPR2の送信電力と通信端末3が受信したPR2の受信電力との差により特定される。
【0046】
所要受信電力は、アクセスポイント2が受信する信号に求められる受信電力の最小値であり、例えば同期信号ブロック(SSB:Synchronization Signal Block)により通知される値である。所要受信電力は、他の手段により予め通信端末3に通知され、通信端末3がアクセスポイント2に関連付けて記憶していてもよい。第1送信電力は、所要受信電力に伝送路損失を加算することにより算出される。
【0047】
図6(a)に示すように通信端末3が第1送信電力で信号を送信すると、アクセスポイント2-2以外のアクセスポイント2は、通信端末3が送信した信号を受信することができない。そこで、通信端末3は、第1送信電力よりも大きな第2送信電力で信号を送信する。
【0048】
図6(b)は、通信端末3が第2送信電力で信号を送信した場合に信号が到達する範囲R2を示している。
図6(b)に示す例では、通信端末3が送信した信号を3台のアクセスポイント2が受信できるように第2送信電力が設定されており、アクセスポイント2-1、2-2及びアクセスポイント2-3が信号を受信できる。これにより、通信端末3は、3台のアクセスポイント2をアンテナポートとして用いて通信制御装置1との間でデータを送受信することができる。以下、通信制御装置1、アクセスポイント2及び通信端末3の構成及び動作を詳細に説明する。
【0049】
[通信制御装置1の構成]
図7は、通信制御装置1の構成を示す図である。通信制御装置1は、情報受信部11と、情報送信部12と、記憶部13と、装置制御部14と、を有する。
【0050】
情報受信部11は、複数のアクセスポイント2から各種の情報を受信する。情報受信部11は、例えば、複数のアクセスポイント2の通信対象となる通信端末3から受信したUE-IDを受信する。
【0051】
情報送信部12は、複数のアクセスポイント2に対して各種の情報を送信する。情報送信部12は、例えば、装置制御部14が作成したスケジューリング情報を複数のアクセスポイント2に送信する。
【0052】
記憶部13は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部13は、装置制御部14が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部13は、複数のアクセスポイント2のそれぞれに対応するスケジューリング情報を記憶する。
【0053】
装置制御部14は、例えばCPU(Central Processing Unit)を有しており、記憶部13に記憶されたプログラムを実行することにより、通信制御装置1が実行する各種の機能を実現する。装置制御部14は、例えば、複数のアクセスポイント2それぞれから情報受信部11がUE-IDを受信したことに応じてスケジューリング情報を作成する情報作成部として機能する。
【0054】
[アクセスポイント2の構成]
図8は、アクセスポイント2の構成を示す図である。アクセスポイント2は、端末側通信部21と、ネットワーク側通信部22(以下、「NW側通信部22」という)と、記憶部23と、制御部24と、を有する。
【0055】
端末側通信部21は、通信端末3とデータを送受信するための通信処理を実行するデバイスを含んでおり、端末側送信部211及び端末側受信部212を有する。端末側送信部211及び端末側受信部212は、制御部24の制御に基づいて動作する。
【0056】
端末側送信部211は、通信端末3との間で無線通信リンクが確立していない状態において、記憶部23に記憶された主プリアンブルデータに対応する主プリアンブル系列情報を含む報知信号であるSS/PBCH信号を送信する。当該報知信号には、通信端末3が送信電力を決定するために使用される所定の条件を示す条件情報も含まれている。
【0057】
条件情報は、例えば、通信端末3との間の伝送路の損失が最小のアクセスポイント2に通信端末3が信号を送信するために必要な最小電力と、通信端末3が信号を送信する際に必要な送信電力との差である電力差閾値を示す情報である。条件情報は、通信端末3が通信するべきアクセスポイント2の数(すなわちクラスタを形成するアクセスポイント2の数)を示す情報であってもよい。
【0058】
端末側受信部212は、通信端末3から各種のデータを受信する。端末側受信部212は、例えば、通信端末3から端末プリアンブルデータ及び通信端末3のUE-IDを受信する。アクセスポイント2が通信端末3との間で4 step RACH処理を行う場合、端末側受信部212は、通信端末3が送信するMsg 1信号を受信する。端末側受信部212は、通信端末3との間での無線通信リンクが確立した後に、通信端末3が通信制御装置1に宛てて送信したデータを受信し、受信したデータを制御部24に通知する。
【0059】
NW側通信部22は、通信制御装置1とデータを送受信するための通信処理を実行するデバイスを含んでおり、ネットワーク側送信部221(以下、「NW側送信部221」という)及びネットワーク側受信部222(以下、「NW側受信部222」という)を有する。NW側送信部221及びNW側受信部222は、制御部24の制御に基づいて動作する。
【0060】
NW側送信部221は、通信端末3から受信した端末プリアンブルデータが、記憶部23に記憶された主プリアンブルデータ又は副プリアンブルデータのいずれかに対応する場合に、通信端末3のUE-IDと、端末プリアンブルデータを受信した時刻を示す時刻データと、を通信制御装置1に送信する。
【0061】
NW側送信部221は、通信端末3から受信した端末プリアンブルデータが主プリアンブルデータに対応する場合に、主プリアンブルデータに対応する端末プリアンブルデータを受信したことを示す通知データを通信制御装置1に送信してもよい。NW側送信部221は、通信端末3から受信した端末プリアンブルデータが副プリアンブルデータに対応する場合に、副プリアンブルデータに対応する端末プリアンブルデータを受信したことを示す通知データを通信制御装置1に送信してもよい。アクセスポイント2と通信端末3との間の無線通信リンクが確立した後、NW側送信部221は、通信制御装置1に送信するべきデータを送信する。
【0062】
NW側受信部222は通信制御装置1から送信されたデータを受信する。NW側受信部222は、例えば、通信制御装置1から、通信端末3にデータを送信するタイミングと周波数とを規定するスケジューリング情報を受信する。NW側受信部222は、受信したスケジューリング情報を制御部24に通知する。NW側受信部222は、受信したスケジューリング情報を記憶部23に記憶させてもよい。
【0063】
記憶部23は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部23は、制御部24が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部23は、アクセスポイント2に割り当てられた主プリアンブルデータと、他のアクセスポイント2に割り当てられた副プリアンブルデータと、を記憶する。さらに、記憶部23は、アクセスポイント2が通信制御装置1と通信端末3との間で送受信されるデータを中継するために使用される各種のデータを記憶する。
【0064】
制御部24は、例えばCPU(Central Processing Unit)を有する。制御部24は、記憶部23に記憶されたプログラムを実行することにより、通信端末3との間で無線通信リンクを確立し、通信制御装置1と通信端末3との間で送受信されるデータを中継するための各種の処理を実行する。
【0065】
制御部24は、端末側送信部211、端末側受信部212、NW側送信部221及びNW側受信部222の動作を制御する。制御部24は、例えば、記憶部23に記憶された主プリアンブルデータを端末側送信部211に通知し、主プリアンブルデータを含む報知信号を送信するように端末側送信部211を制御する。また、制御部24は、通信端末3から受信した端末プリアンブルデータが、記憶部23に記憶された主プリアンブルデータ又は副プリアンブルデータのいずれかに対応する場合に、UE-IDを通信制御装置1に送信するようにNW側送信部221を制御する。
【0066】
制御部24は、通信端末3から受信した端末プリアンブルデータが、記憶部23に記憶された主プリアンブルデータ又は副プリアンブルデータに対応する場合に、通信端末3を識別するための端末識別情報であるUE-IDを記憶部23に記憶させる。
【0067】
制御部24は、通信端末3から受信した端末プリアンブルデータが、記憶部23に記憶された主プリアンブルデータに対応する場合に、通信端末3と無線通信リンクを確立する処理を実行するように端末側送信部211を制御する。制御部24は、通信端末3から受信した端末プリアンブルデータが、記憶部23に記憶された副プリアンブルデータに対応する場合に、他のアクセスポイント2が通信端末3と無線通信リンクを確立する処理を実行する間に送受信されるデータを受信するように端末側受信部212を制御する。
【0068】
制御部24は、NW側受信部222が通信制御装置1から受信したスケジューリング情報に基づいて通信端末3にデータを送信するよう端末側送信部211を制御する。制御部24は、当該スケジューリング情報に基づいて通信端末3からデータを受信するよう端末側受信部212を制御する。制御部24は、例えば、スケジューリング情報に含まれているUE-IDが、記憶部23に記憶されたUE-IDに対応する場合に、スケジューリング情報に含まれている周波数及び時刻に基づいて通信端末3との間でデータを送受信するように端末側送信部211及び端末側受信部212を制御する。
【0069】
[通信端末3の構成]
図9は、通信端末3の構成を示す図である。通信端末3は、端末受信部31と、端末送信部32と、記憶部33と、端末制御部34と、を有する。
【0070】
端末受信部31は、複数のアクセスポイント2から各種の情報を受信する。端末受信部31は、複数のアクセスポイント2それぞれから電力測定用信号を受信する。端末受信部31は、例えば、複数のアクセスポイント2が送信する主プリアンブル系列情報を含むSS/PBCH信号を電力測定用信号として受信する。端末受信部31は、複数のアクセスポイント2から、それぞれのアクセスポイント2に割り当てられた主プリアンブル系列情報を受信する。
【0071】
また、端末受信部31は、アクセスポイント2が主プリアンブルデータを受信したことに応じて端末送信部32がプリアンブルを含む信号(以下、「プリアンブル信号」という場合がある)を送信する前に、プリアンブル信号を送信する際の送信電力を決定するために使用される所定の条件を示す条件情報を、複数のアクセスポイント2を介して通信制御装置1から受信する。端末受信部31は、例えば、電力測定用信号として使用される同期信号ブロック(SSB)を用いて条件情報を受信する。所定の条件の詳細については後述する。
【0072】
端末送信部32は、複数のアクセスポイント2に対して各種の情報を送信する。端末送信部32は、例えば、端末受信部31が受信した複数の主プリアンブルデータのうち、いずれかに対応する端末プリアンブルデータを含むプリアンブル信号をRACH(Random Access Channel)により送信する。具体的には、端末送信部32は、例えば、端末制御部34が複数のアクセスポイント2から選択したアクセスポイント2から受信した主プリアンブルデータに対応する端末プリアンブルデータを送信する。端末プリアンブルデータは、主プリアンブル系列情報に対応して生成される信号系列データであり、所定の変換ルールに基づいて主プリアンブルデータを変換することにより作成されたデータであってもよい。
【0073】
端末送信部32は、制御部24から指定された送信電力で、端末プリアンブルデータを含む信号を送信する。以下の説明において、複数のアクセスポイント2に対応する複数の伝送路損失量のうち最小の伝送路損失量に対応するアクセスポイント2(例えば、通信端末3に最も近い位置にあるアクセスポイント2)が受信するプリアンブル信号の受信電力が、アクセスポイント2の所要受信電力になるために必要な最小の電力を第1送信電力という。そして、制御部24から指定された送信電力を第2送信電力という。
図5に示した例の場合、第1送信電力は、アクセスポイント2-2の所要受信電力に伝送路損失量を加算することにより決定された電力である。
【0074】
制御部24から指定された第2送信電力は、第1送信電力に基づいて、複数のアクセスポイント2がプリアンブル信号を受信可能にするための所定の条件を満たすように決定された電力である。所定の条件を満たす第2送信電力は、第1送信電力よりも大きい電力である。端末送信部32は、最小の伝送路損失量に対応するアクセスポイント2が送信したプリアンブルデータを含むプリアンブル信号を第2送信電力で送信する。
【0075】
所定の条件は、例えば通信制御装置1により決定された条件であり、SS/PBCHによりアクセスポイント2から通知される。所定の条件は、例えば、第1送信電力と第2送信電力との差の最小値に相当する電力差閾値である。この場合、端末送信部32は、第1送信電力よりも電力差閾値以上大きい第2送信電力でプリアンブル信号を送信する。制御部24が第2送信電力を決定する処理の詳細は後述する。
【0076】
所定の条件は、通信端末3が通信する対象として設定されるアクセスポイント2の設定数であってもよい。この場合、端末送信部32は、複数の伝送路損失量のうち小さい方から設定数に対応する順位の伝送路損失量に対応する第2送信電力でプリアンブル信号を送信する。
【0077】
記憶部33は、ROM及びRAM等の記憶媒体を有する。記憶部33は、端末制御部34が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部33はUE-IDを記憶する。
【0078】
端末制御部34は、例えばCPUを有しており、記憶部33に記憶されたプログラムを実行することにより、通信端末3が実行する各種の機能を実現する。端末制御部34は、例えば、複数のアクセスポイント2それぞれから端末受信部31が受信した信号のレベルに基づいて、1台のアクセスポイント2を選択する。端末制御部34は、選択したアクセスポイント2から受信した主プリアンブルデータに対応する端末プリアンブルデータを作成し、作成した端末プリアンブルデータを端末送信部32に送信させる。
【0079】
また、端末制御部34は、複数のアクセスポイント2から受信した複数の電力測定用信号の受信電力に基づいて、複数のアクセスポイント2に対応する複数の伝送路損失量を特定する。具体的には、端末制御部34は、アクセスポイント2が電力測定用信号を送信する際の送信電力から受信電力を減算することにより、伝送路損失量を特定する。アクセスポイント2が電力測定用信号を送信する際の送信電力は、予め記憶部33に記憶されていてもよく、SS/PBCHにより通知されてもよい。
【0080】
端末制御部34は、複数の伝送路損失量のうち最小の伝送路損失量に対応するアクセスポイント2の所要受信電力に対応する第1送信電力に基づいて所定の条件を満たすように決定した第2送信電力でプリアンブル信号を送信するよう端末送信部32を制御する。端末制御部34は、最小の伝送路損失量に対応するアクセスポイント2の所要受信電力に最小の伝送路損失量を加算することにより第1送信電力を決定する。
【0081】
所定の条件が、第1送信電力と第2送信電力との差の最小値に相当する電力差閾値である場合、端末制御部34は、第1送信電力に電力差閾値を加算することにより第2送信電力を決定する。一例として、第1送信電力が15dBmであり、電力差閾値が3dBである場合、端末制御部34は第2送信電力を18dBmとする。
【0082】
所定の条件が、通信端末3が通信する対象として設定されるアクセスポイント2の設定数である場合、端末制御部34は、まず、複数の伝送路損失量のうち小さい方から設定数に対応する順位の伝送路損失量に対応する他のアクセスポイント2を特定する。続いて、端末制御部34は、他のアクセスポイント2の所要受信電力に、他のアクセスポイント2に対応する伝送路損失量を加算することにより、第2送信電力を決定する。
【0083】
端末制御部34は、所定の条件を満たすように第2送信電力を決定することができない場合、所定の条件を満たすことができないことを示す情報を端末送信部32に送信させてもよい。一例として、端末制御部34は、所定の条件を満たすべく算出した第2送信電力が、端末送信部32が送信可能な最大電力よりも大きい場合、所定の条件を満たすように第2送信電力を決定できないと判定する。
【0084】
[通信端末3における処理の流れ]
図10は、通信端末3における処理の流れを示すフローチャートである。
図10に示すフローチャートは、端末受信部31が複数のアクセスポイント2から主プリアンブル系列情報を受信した時点から開始している。
【0085】
端末制御部34は、端末受信部31が受信した複数の主プリンブル系列情報を送信した複数のアクセスポイント2それぞれに対応する伝送路損失量を特定する(S1)。端末制御部34は、最小の伝送路損失量に対応するアクセスポイント2を特定し、特定したアクセスポイント2の所要受信電力に最小の伝送路損失量を加算することにより、第1送信電力を決定する(S2)。所定の条件として電力差閾値TH1が指定されている場合(S3においてYES)、端末制御部34は、第1送信電力に電力差閾値TH1を加算することにより第2送信電力を決定する(S4)。
【0086】
一方、所定の条件として電力差閾値TH1が指定されておらず(S3においてNO)、クラスタを形成するアクセスポイント2の数の上限値TH2が指定されている場合(S5においてYES)、端末制御部34は、上限値TH2に対応する順位のアクセスポイント2の所要受信電力を特定する(S6)。端末制御部34は、特定した所要受信電力に、当該アクセスポイント2に対応する伝送路損失量を加算することにより第2送信電力を決定する。
【0087】
所定の条件が通知されていない場合(S5においてNO)、端末制御部34は、第2送信電力を第1送信電力と同じ値に決定する。これにより、端末制御部34は、通信端末3が複数のアクセスポイント2と通信する必要がない場合に、必要以上に電力を消費することを抑制することができる。
【0088】
端末制御部34は、例えば、所定の時間間隔でS1からS8までの処理を実行する。通信端末3が自身の位置を検出する位置検出部(例えばGPS受信機)を有しており、端末制御部34は、通信端末3の位置が所定の距離だけ変化したことに応じてS1からS8までの処理を実行してもよい。
【0089】
[無線通信システムSにおける処理の流れ]
図11は、無線通信システムSにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
図11において、「CPU」は通信制御装置1、「AP」はアクセスポイント2、「UE」は通信端末3を表している。
図11に示す処理は、通信端末3がアクセスポイント2と接続されていない状態から開始している。
【0090】
複数のアクセスポイント2のそれぞれは、自身の記憶部23に記憶されている主プリンブル系列情報を含む報知信号(SS)を定期的に送信する。また、複数のアクセスポイント2は、通信端末3が送信電力を決定する際に使用する所定の条件を示す条件情報(INFO)も送信する。
【0091】
通信端末3は、複数のアクセスポイント2が送信した主プリアンブル系列情報を受信した場合に1台のアクセスポイント2を選択する。通信端末3は、例えば、報知信号の受信レベルが最大のアクセスポイント2(すなわち伝送路損失量が最小のアクセスポイント2)を選択する。
図11においては、通信端末3がアクセスポイント2-2を選択している。
【0092】
通信端末3は、選択したアクセスポイント2-2に送信するために必要な第1送信電力と、通信制御装置1から通知された所定の条件と、に基づいて、端末プリアンブルデータを送信する際の第2送信電力を決定する。ここでは、所定の条件が、クラスタを形成するアクセスポイント2の設定数が3台とされているものとし、通信端末3から、アクセスポイント2-1、アクセスポイント2-2、アクセスポイント2-3、アクセスポイント2-4の順に通信端末3から離れているとする。この場合、通信端末3は、アクセスポイント2-3の所要受信電力に、アクセスポイント2-3に対応する伝送路損失量を加算することにより第2送信電力を決定する。
【0093】
通信端末3は、決定した第2送信電力で、選択したアクセスポイント2-2が送信した主プリアンブル系列情報に対応するPR2を端末プリアンブルデータとして送信する。アクセスポイント2-1、アクセスポイント2-2及びアクセスポイント2-3は、通信端末3が送信した端末プリアンブルデータPR2を受信することができるが、アクセスポイント2-4には所要受信電力以上の電力で端末プリアンブルデータが届かないので、アクセスポイント2-4は、端末プリアンブルデータPR2を受信することができない。
【0094】
複数のアクセスポイント2のうちアクセスポイント2-2は、端末プリアンブルデータが、記憶部23に記憶されている主プリアンブルデータに対応するので、通信端末3のUE-IDを通信制御装置1に送信する。アクセスポイント2-1及びアクセスポイント2-3は、端末プリアンブルデータが、記憶部23に記憶されている副プリアンブルデータに対応するので、通信端末3のUE-IDを通信制御装置1に送信する。アクセスポイント2-4は、端末プリアンブルデータを受信できないので、通信端末3のUE-IDを通信制御装置1に送信しない。
【0095】
アクセスポイント2-2は、通信端末3との間で無線リンクの確立処理である4 step RACH処理を実行する。アクセスポイント2-2は、4 step RACH処理が完了すると、接続完了通知を通信制御装置1に送信する。その後、通信制御装置1は、スケジューリング情報を作成し、UE-IDを送信したアクセスポイント2-1、アクセスポイント2-2及びアクセスポイント2-3にスケジューリング情報を送信する。これにより、通信端末3は、アクセスポイント2-1、アクセスポイント2-2及びアクセスポイント2-3を介して通信制御装置1との間でデータの送受信が行うことができる。
【0096】
無線通信システムSは、例えば、所定の時間間隔で
図11に示した処理を実行する。通信端末3が自身の位置を検出する位置検出部(例えばGPS受信機)を有している場合、通信端末3は、通信端末3の位置が所定の距離だけ変化したことに応じてアクセスポイント2を選択して第2送信電力を決定する処理を実行してもよい。
【0097】
なお、以上の説明においては、通信端末3が、複数のアクセスポイント2のうちの1台のみと無線通信リンクを確立する処理を実行する場合を例示したが、通信端末3が複数のアクセスポイント2と通信できる状態にする手順は任意である。例えば、通信端末3は、複数のアクセスポイント2のそれぞれと無線通信リンクを確立する処理を実行してもよい。
【0098】
[通信端末3による効果]
以上説明したように、本実施形態に係る通信端末3は、複数のアクセスポイント2から受信した複数の電力測定用信号の受信電力に基づいて、複数のアクセスポイント2に対応する複数の伝送路損失量を特定する端末制御部34と、複数の伝送路損失量のうち最小の伝送路損失量に対応するアクセスポイント2の所要受信電力に対応する第1送信電力に基づいて所定の条件を満たすように端末制御部34が決定した第2送信電力でプリアンブル信号を送信する端末送信部32と、を有する。その結果、通信端末3が通信するべき数のアクセスポイント2と適切に通信できるようになる。
【0099】
なお、本発明により、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献することが可能となる。
【0100】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0101】
1 通信制御装置
2 アクセスポイント
3 通信端末
11 情報受信部
12 情報送信部
13 記憶部
14 装置制御部
21 端末側通信部
22 ネットワーク側通信部
23 記憶部
24 制御部
31 端末受信部
32 端末送信部
33 記憶部
34 端末制御部
211 端末側送信部
212 端末側受信部
221 ネットワーク側送信部
222 ネットワーク側受信部