(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135562
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】検出器
(51)【国際特許分類】
G01P 3/44 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G01P3/44 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046316
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】山田 計
(72)【発明者】
【氏名】大島 良太
(72)【発明者】
【氏名】長塩 拓馬
(57)【要約】
【課題】基準座標系に固定する必要のない検出器を提供する。
【解決手段】回転中心からの径方向の距離R1の位置に回転方向の角度差が180度となるように配置した加速度センサA1、B1と、回転中心からの径方向の距離R2の位置に回転方向の角度差が180度となるように配置した加速度センサA2、B2とで、回転軸100の周方向の加速度を検出する。加速度センサA1、B1の検出値の加算値の1/2として求まる周方向加速度pf1をR1で除して求まる距離R1の位置の角加速度と、加速度センサA2、B2の検出値の加算値の1/2として求まる距離R2の位置の周方向加速度をR2で除して求まる角加速度が等しいことを表す方程式に、既知のR1とR2の差ΔRを用いてR1を表すR1=R2+ΔRを代入して距離R2を求め、求めた距離R2と距離R2の位置の周方向加速度より角加速度を算定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に固定して使用される検出器であって、
前記回転軸に当該回転軸と共に回転するように固定されるベースと、
前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記回転軸の回転中心軸から見た回転軸の回転方向の角度差が180度となり、回転軸の回転中心軸からの回転軸の径方向の距離が等しくなるように前記ベースに固定された第1の加速度センサと第2の加速度センサと、
前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記回転中心軸から見た前記回転方向の角度差が180度となり、前記回転中心軸からの回転軸の径方向の距離が等しくなるように前記ベースに固定された第3の加速度センサと第4の加速度センサと、
回転検出手段を有し、
前記ベースが前記回転軸に固定された状態における、前記第1の加速度センサ及び前記第2の加速度センサまでの前記回転中心軸からの回転軸の径方向の距離を第1の距離とし、前記第3の加速度センサ及び前記第4の加速度センサまでの前記回転中心軸からの回転軸の径方向の距離を第2の距離として、前記第1の距離と前記第2の距離の差である距離差が所定の大きさとなるように、前記第1の加速度センサと前記第2の加速度センサと前記第3の加速度センサと前記第4の加速度センサは前記ベースに固定されており、
前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記第1の加速度センサと前記第2の加速度センサは、前記回転中心軸を中心とする円の周方向の、同じ周方向に対する正負が同じ加速度を検出し、前記第3の加速度センサと前記第4の加速度センサは、前記回転中心軸を中心とする円の周方向の、同じ周方向に対する正負が同じ加速度を検出し、
前記回転検出手段は、
前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、
前記第1の加速度センサが検出した加速度を表す信号と第2の加速度センサが検出した加速度を表す信号とを加算した信号より、前記回転中心軸から前記径方向に前記第1の距離離れた位置の周方向加速度を第1の周方向加速度として算出し、
前記第3の加速度センサが検出した加速度を表す信号と第4の加速度センサが検出した加速度を表す信号とを加算した信号より、前記回転中心軸から前記径方向に前記第2の距離離れた位置の周方向加速度を第2の周方向加速度として算出し、
前記第1の周方向加速度と前記第2の周方向加速度の比が前記距離差によって生じているものとして、前記第1の距離と前記第2の距離の少なくとも一方を算定することを特徴とする検出器。
【請求項2】
請求項1記載の検出器であって、
前記第1の距離をR1、前記第2の距離をR2、前記距離差をΔRとして、R1=R2+ΔRであり、
前記回転検出手段は、
前記第1の周方向加速度をpf1、前記第2の周方向加速度をpf2として、
R1=[ΔR/{(pf1/pf2)-1}]+ΔR
による前記第1の距離R1の算定と、
R2=ΔR/{(pf1/pf2)-1}
による前記第2の距離R2の算定とのうちの少なくとも一方の算定を行うことを特徴とする検出器。
【請求項3】
請求項1または2記載の検出器であって、
前記回転検出手段は、前記第1の距離を算定し、算定した第1の距離と前記第1の周方向加速度から前記回転軸の角加速度を算定することを特徴とする検出器。
【請求項4】
請求項1または2記載の検出器であって、
前記回転検出手段は、前記第2の距離を算定し、算定した第2の距離と前記第2の周方向加速度から前記回転軸の角加速度を算定することを特徴とする検出器。
【請求項5】
回転軸に固定して使用される検出器であって、
前記回転軸に当該回転軸と共に回転するように固定されるベースと、
前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記回転軸の回転中心軸から見た回転軸の回転方向の角度差が180度となり、回転軸の回転中心軸からの回転軸の径方向の距離が等しくなるように前記ベースに固定された第1の加速度センサと第2の加速度センサと、
前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記回転中心軸から見た前記回転方向の角度差が180度となり、前記回転中心軸からの回転軸の径方向の距離が等しくなるように前記ベースに固定された第3の加速度センサと第4の加速度センサと、
回転検出手段を有し、
前記ベースが前記回転軸に固定された状態における、前記第1の加速度センサ及び前記第2の加速度センサまでの前記回転中心軸からの回転軸の径方向の距離を第1の距離とし、前記第3の加速度センサ及び前記第4の加速度センサまでの前記回転中心軸からの回転軸の径方向の距離を第2の距離として、前記第1の距離と前記第2の距離の差である距離差が所定の大きさとなるように、前記第1の加速度センサと前記第2の加速度センサと前記第3の加速度センサと前記第4の加速度センサは前記ベースに固定されており、
前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記第1の加速度センサと前記第2の加速度センサは、前記回転中心軸を中心とする円の径方向の、当該円の中心に向かう方向の正負が同じ加速度を検出し、前記第3の加速度センサと前記第4の加速度センサは、前記回転中心軸を中心とする円の径方向の、当該円の中心に向かう方向の正負が同じ加速度を検出し、
前記回転検出手段は、
前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、
前記第1の加速度センサが検出した加速度を表す信号と第2の加速度センサが検出した加速度を表す信号とを加算した信号より、前記回転中心軸から前記径方向に前記第1の距離離れた位置の遠心加速度を第1の遠心加速度として算出し、
前記第3の加速度センサが検出した加速度を表す信号と第4の加速度センサが検出した加速度を表す信号とを加算した信号より、前記回転中心軸から前記径方向に前記第2の距離離れた位置の遠心加速度を第2の遠心加速度として算出し、
前記第1の遠心加速度と前記第2の遠心加速度の比が前記距離差によって生じているものとして、前記第1の距離と前記第2の距離の少なくとも一方を算定することを特徴とする検出器。
【請求項6】
請求項5記載の検出器であって、
前記第1の距離をR1、前記第2の距離をR2、前記距離差をΔRとして、R1=R2+ΔRであり、
前記回転検出手段は、
前記第1の遠心加速度をcf1、前記第2の遠心加速度をcf2として、
R1=[ΔR/{(cf1/cf2)-1}]+ΔR
による前記第1の距離R1の算定と、
R2=ΔR/{(cf1/cf2)-1}
による前記第2の距離R2の算定とのうちの少なくとも一方の算定を行うことを特徴とする検出器。
【請求項7】
請求項5または6記載の検出器であって、
前記回転検出手段は、前記第1の距離を算定し、算定した第1の距離と前記第1の遠心加速度から前記回転軸の角速度を算定することを特徴とする検出器。
【請求項8】
請求項5または6記載の検出器であって、
前記回転検出手段は、前記第2の距離を算定し、算定した第2の距離と前記第2の遠心加速度から前記回転軸の角速度を算定することを特徴とする検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、回転軸の回転を検出する検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転軸の回転を検出する技術として、磁石を含む回転系とホール素子を含む固定系とを備え、回転軸に回転系を固定し基準座標系に固定系を固定した状態において、回転系の磁石の磁力を、固定系のホール素子で検出することにより、回転軸の基準座標系に対する回転を検出する検出器が知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した検出器を検出対象の回転軸が特定されない汎用の検出器として適用する場合、回転の検出を行う回転軸を変更する度に、検出器の回転系を回転軸に固定すると共に、検出器の固定系を基準座標系に固定する煩雑な作業が必要となる。また、周辺に検出器の固定系の基準座標系への固定に適した構造体が存在しない回転軸については、基準座標系に対する回転の検出に大きな困難を伴う。
【0005】
よって、固定系を基準座標系に固定することなく、回転系を回転軸に固定するだけで回転軸の基準座標系に対する回転を検出できれば、検出器の利便性は大きく向上する。
そこで、本発明は、基準座標系に固定することなく、基準座標系に対する回転を検出できる検出器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題達成のために、本発明は、回転軸に固定して使用される検出器に、前記回転軸に当該回転軸と共に回転するように固定されるベースと、前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記回転軸の回転中心軸から見た回転軸の回転方向の角度差が180度となり、回転軸の回転中心軸からの回転軸の径方向の距離が等しくなるように前記ベースに固定された第1の加速度センサと第2の加速度センサと、前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記回転中心軸から見た前記回転方向の角度差が180度となり、前記回転中心軸からの回転軸の径方向の距離が等しくなるように前記ベースに固定された第3の加速度センサと第4の加速度センサと、回転検出手段を備えたものである。
【0007】
ここで、前記ベースが前記回転軸に固定された状態における、前記第1の加速度センサ及び前記第2の加速度センサまでの前記回転中心軸からの回転軸の径方向の距離を第1の距離とし、前記第3の加速度センサ及び前記第4加速度センサまでの前記回転中心軸からの回転軸の径方向の距離を第2の距離として、前記第1の距離と前記第2の距離の差である距離差が所定の大きさとなるように、前記第1の加速度センサと前記第2の加速度センサと前記第3の加速度センサと前記第4の加速度センサは前記ベースに固定されている。また、前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記第1の加速度センサと前記第2の加速度センサは、前記回転中心軸を中心とする円の周方向の、同じ周方向に対する正負が同じ加速度を検出し、前記第3の加速度センサと前記第4の加速度センサは、前記回転中心軸を中心とする円の周方向の、同じ周方向に対する正負が同じ加速度を検出する。
【0008】
そして、前記回転検出手段は、前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記第1の加速度センサが検出した加速度を表す信号と第2の加速度センサが検出した加速度を表す信号とを加算した信号より、前記回転中心軸から前記径方向に前記第1の距離離れた位置の周方向加速度を第1の周方向加速度として算出し、前記第3の加速度センサが検出した加速度を表す信号と第4の加速度センサが検出した加速度を表す信号とを加算した信号より、前記回転中心軸から前記径方向に前記第2の距離離れた位置の周方向加速度を第2の周方向加速度として算出し、前記第1の周方向加速度と前記第2の周方向加速度の比が前記距離差によって生じているものとして、前記第1の距離と前記第2の距離の少なくとも一方を算定する。
【0009】
このような検出器は、前記第1の距離をR1、前記第2の距離をR2、前記距離差をΔRとして、R1=R2+ΔRとし、前記回転検出手段において、前記第1の周方向加速度をpf1、前記第2の周方向加速度をpf2として、R1=[ΔR/{(pf1/pf2)-1}]+ΔRによる前記第1の距離R1の算定と、R2=ΔR/{(pf1/pf2)-1}による前記第2の距離R2の算定とのうちの少なくとも一方の算定を行うよう構成してよい。
【0010】
また、検出器は、前記回転検出手段において、前記第1の距離を算定し、算定した第1の距離と前記第1の周方向加速度から前記回転軸の角加速度を算定するように構成してもよいし、前記第2の距離を算定し、算定した第2の距離と前記第2の周方向加速度から前記回転軸の角加速度を算定するように構成してもよい。
【0011】
また、前記課題達成のために、本発明は、回転軸に当該回転軸と共に回転するように固定されるベースと回転検出手段を備えた検出器のベースに、第1の加速度センサと第2の加速度センサと第3の加速度センサと第4の加速度センサとを上述のように配置し、前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記第1の加速度センサと前記第2の加速度センサにおいて、前記回転中心軸を中心とする円の径方向の、当該円の中心に向かう方向の正負が同じ加速度を検出し、前記第3の加速度センサと前記第4の加速度センサにおいて、前記回転中心軸を中心とする円の径方向の、当該円の中心に向かう方向の正負が同じ加速度を検出する検出器を提供する。
【0012】
この検出器において、前記回転検出手段は、前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記第1の加速度センサが検出した加速度を表す信号と第2の加速度センサが検出した加速度を表す信号とを加算した信号より、前記回転中心軸から前記径方向に前記第1の距離離れた位置の遠心加速度を第1の遠心加速度として算出し、前記第3の加速度センサが検出した加速度を表す信号と第4の加速度センサが検出した加速度を表す信号とを加算した信号より、前記回転中心軸から前記径方向に前記第2の距離離れた位置の遠心加速度を第2の遠心加速度として算出し、前記第1の遠心加速度と前記第2の遠心加速度の比が前記距離差によって生じているものとして、前記第1の距離と前記第2の距離の少なくとも一方を算定する。
【0013】
ここで、この検出器は、前記第1の距離をR1、前記第2の距離をR2、前記距離差をΔRとして、R1=R2+ΔRとし、前記回転検出手段において、前記第1の遠心加速度をcf1、前記第2の遠心加速度をcf2として、R1=[ΔR/{(cf1/cf2)-1}]+ΔRによる前記第1の距離R1の算定と、R2=ΔR/{(cf1/cf2)-1}による前記第2の距離R2の算定とのうちの少なくとも一方の算定を行うよう構成してよい。
【0014】
また、検出器は、前記回転検出手段において、前記第1の距離を算定し、算定した第1の距離と前記第1の遠心加速度から前記回転軸の角速度を算定するよう構成してもよいし、前記第2の距離を算定し、算定した第2の距離と前記第2の遠心加速度から前記回転軸の角速度を算定するよう構成してもよい。
【0015】
以上のような検出器によれば、検出器を回転軸に固定するだけで、各加速度センサの出力から、各加速度センサの回転中心軸からの径方向の距離を算定することができ、この結果、検出器を回転軸に固定するだけで、各加速度センサの出力から回転軸の角加速度や角速度を算定できるようになる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、基準座標系に固定することなく、基準座標系に対する回転を検出できる検出器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る検出器の構成を示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る加速度センサの配置を示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る加速度センサで検出される加速度を示す図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る加速度センサの配置を示す図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る加速度センサで検出される加速度を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る検出器の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
まず、第1の実施形態について説明する。
図1a1-a4に検出器の構成を示す。
便宜上、図中に示すように検出器の前後上下左右を定めるものとして、
図1aにおいて、
図1a1は検出器の上面を、
図1a2は検出器の左側面を、
図1a3は検出器の前面を、
図1a4は検出器を斜視したようすを表す。
なお、検出器の下面は上面と同様に表れ、検出器の右面は左面と同様に表れ、検出器の後面は前面と同様に表れる。
図示するように、検出器は、上下左右方向中央に前後方向に貫通する中空を有する前後方向を高さ方向とする円柱を上下に半分に分割した上側部分の形状と下側部分の形状を、それぞれ概ね有する上部ベース1と下部ベース2とを、ボルト3で上下に連結した構造を有する。
【0019】
また、上部ベース1には加速度センサA1、A2が固定されており、下部ベース2には加速度センサB1、B2が固定されている。
ここで、図示は省略したが、検出器には、加速度センサの出力信号を処理する信号処理回路や、信号処理回路で処理した値を外部の計測装置に無線送信する無線通信部や、これらに電力を供給するバッテリなども内蔵されている。
検出器は、
図1b1に示すように、分離した上部ベース1と下部ベース2を測定対象の回転軸100が間に位置するように配置した上で、
図1b2-b4に示すように、上部ベース1と下部ベース2をボルト3で締結して回転軸100を挟み込むことにより、回転軸100と共に回転するように回転軸100に固定して使用する。
【0020】
ここで、
図2aに示すように、検出器を回転軸100に固定した状態において、加速度センサA1と加速度センサB1は、回転軸100の回転中心軸に対して対称となるように配置されている。また、加速度センサA2と加速度センサB2も、回転軸100の回転中心軸に対して対称となるように配置されている。
【0021】
したがって、回転軸100に固定した状態において、加速度センサA1と加速度センサB1、及び、加速度センサA2と加速度センサB2の、回転軸100の回転中心軸から見た回転軸100の回転方向の角度差は180度となる。
また、回転軸100の回転中心軸から加速度センサA1までの距離と、回転軸100の回転中心軸から加速度センサB1までの距離は等しくなり、以下、この距離をR1で表す。また、回転軸100の回転中心軸から加速度センサA2までの距離と、回転軸100の回転中心軸から加速度センサB2までの距離は等しくなり、以下、この距離をR2で表す。
【0022】
そして、距離R1が距離R2よりも、ΔR大きくなるように各加速度センサは、上部ベース1と下部ベース2に固定されている。
したがって、検出器を回転軸100に固定した状態において、距離R1は、R1=R2+ΔRで表すことができる。一方、距離R2は、検出器を固定する回転軸100によって異なる不知の値となる。
次に、
図2bに示すように各加速度センサは、回転軸100の回転中心軸を、中心を通る法線とする円の周方向(回転軸100の周方向)の加速度を検出する。また、各加速度センサは、図中に+Xで正の加速度として検出する方向を示したように、同じ周回りの方向を正の加速度として検出し、正の加速度として検出する周回りの方向と逆回り方向の加速度を負の加速度として検出する。
【0023】
加速度センサA1と加速度センサB1、及び、加速度センサA2と加速度センサB2の、回転軸100の回転中心軸から見た回転軸100の回転方向の角度差は180度であるので、非回転系から見た場合、加速度センサA1と加速度センサB1は、相互に反対方向を正とする加速度を検出し、加速度センサA2と加速度センサB2は、相互に反対方向を正とする加速度を検出する。
【0024】
各加速度センサには、
図3a-hに示す回転軸100の角加速度による周方向加速度pfと重力加速度gfと、図示を省略した遠心加速度cfが加わる。
このうち、遠心加速度cfは、各加速度センサの検出する加速度の方向と直交する方向の加速度となるため、遠心加速度cfの成分は各加速度センサで検出されない。なお、各加速度センサとしては、回転軸100の周方向の加速度のみを検出する1軸の加速度センサを用いる。ただし、各加速度センサを、回転軸100の周方向を含む2軸または3軸の加速度を検出する加速度センサとし、回転軸100の周方向の加速度のみを用いるようにしてもよい。
【0025】
図3a-hに示したように、
図3aの回転軸100の回転角θを0度/360度、図の時計まわり方向を回転角θの正方向、加速度センサA1と加速度センサB1の周方向加速度pfをpf1とすると、加速度センサA1は、pf1+gf・sinθの加速度を検出し、加速度センサB1はpf1+gf・sin(θ+180度)=pf1+gf・(-sinθ)=pf1-gf・sinθを検出する。
【0026】
また、同様に、加速度センサA2と加速度センサB2の周方向加速度pfをpf2とすると、加速度センサA2は、pf2+gf・sinθの加速度を検出し、加速度センサB2はpf2+gf・sin(θ+180度)=pf2+gf・(-sinθ)=pf2-gf・sinθを検出する。
なお、
図3において、角加速度センサに付随する実線の矢印の和が、その加速度センサで検出される加速度となる。
そこで、これらの各加速度センサの出力から、検出器に備えた信号処理回路、もしくは、信号処理回路から各加速度センサの出力を受信した外部の計測装置、もしくは、信号処理回路と計測装置との協業によって、回転軸100の角加速度と加速度センサA2と加速度センサB2の回転軸100の回転中心からの距離R2を、以下のように算定する。
【0027】
加速度センサA1の出力をD_A1、加速度センサB1の出力をD_B1とすると、D_A1+D_B1=2×pf1となるので、pf1=(D_A1+D_B1)/2により、加速度センサA1、B1の周方向加速度pf1を求める。
また、加速度センサA2の出力をD_A2、加速度センサB2の出力をD_B2とすると、D_A2+D_B2=2×pf2となるので、pf2=(D_A2+D_B2)/2により、加速度センサA2、B2の周方向加速度pf2を求める。
回転軸100の角加速度をdω/dtとすると、
周方向加速度=角加速度×半径より
dω/dt=pf1/R1=pf2/R2
であり、R1=R2+ΔRより、pf1/(R2+ΔR)=pf2/R2となるので、これを既知のΔRを代入してR2について解き、
R2=ΔR/{(pf1/pf2)-1}
を算定する。
【0028】
そして、算定したR2をdω/dt=pf2/R2に代入し、回転軸100の角加速度dω/dtを算定する。
もしくは、
R1=[ΔR/{(pf1/pf2)-1}]+ΔR
を算定し、算定したR1をdω/dt=pf1/R1に代入し、回転軸100の角加速度dω/dtを算定してもよい。
【0029】
また、信号処理回路、もしくは、外部の計測装置、もしくは、信号処理回路と計測装置との協業によって、算定した角加速度dω/dtを用いて角速度の算定などを行う。
以上、本発明の第1の実施形態について説明した。
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。
本第2実施形態は、各加速度センサで検出する加速度の方向と、各加速度センサの出力を用いて行う処理のみが、第1実施形態と異なる。
本第2実施形態において、各加速度センサは、
図4a、bに示すように、回転軸100の回転中心軸を、中心を通る法線とする円の径方向(回転軸100の径方向)の加速度を検出する。各加速度センサは、図中に+Zで正の加速度として検出する方向を示したように、回転軸100の中心から離れる方向を正の加速度として検出し、回転軸100の中心に向かう方向の加速度を負の加速度として検出する。加速度センサA1と加速度センサB1、及び、加速度センサA2と加速度センサB2の、回転軸100の中心から見た回転軸100の回転方向の角度差は180度であるので、非回転系から見た場合、加速度センサA1と加速度センサB1は、相互に反対方向を正とする加速度を検出し、加速度センサA2と加速度センサB2は、相互に反対方向を正とする加速度を検出する。
【0030】
各加速度センサには、
図5a-hに示す遠心加速度cfと重力加速度gfと、図示を省略した周方向加速度pfが加わる。
このうち、周方向加速度pfは、各加速度センサの検出する加速度の方向と直交する方向の加速度となるため、周方向加速度pfの成分は各加速度センサで検出されない。なお、各加速度センサとしては、回転軸100の径方向の加速度のみを検出する1軸の加速度センサを用いる。ただし、各加速度センサを、回転軸100の径方向を含む2軸または3軸の加速度を検出する加速度センサとし、回転軸100の径方向の加速度のみを用いるようにしてもよい。
【0031】
図5a-hに示したように、
図5aの回転軸100の回転角θを0度/360度、図の時計まわり方向を回転角θの正方向、加速度センサA1と加速度センサB1の遠心加速度cfをcf1とすると、加速度センサA1は、cf1+gf・sinθの加速度を検出し、加速度センサB1はcf1+gf・sin(θ+180度)=cf1+gf・(-sinθ)=cf1-gf・sinθを検出する。
【0032】
また、同様に、加速度センサA2と加速度センサB2の遠心加速度cfをcf2とすると、とすると、加速度センサA2は、cf2+gf・sinθの加速度を検出し、加速度センサB2はcf2+gf・sin(θ+180度)=cf2+gf・(-sinθ)=cf2-gf・sinθを検出する。
なお、
図5において、角加速度センサに付随する実線の矢印の和が、その加速度センサで検出される加速度となる。
そこで、これらの各加速度センサの出力から、検出器に備えた信号処理回路、もしくは、信号処理回路から各加速度センサの出力を受信した外部の計測装置、もしくは、信号処理回路と計測装置との協業によって、回転軸100の角速度ωと加速度センサA2と加速度センサB2の回転軸100の回転中心からの距離R2を、以下のように算定する。
【0033】
加速度センサA1の出力をD_A1、加速度センサB1の出力をD_B1とすると、D_A1+D_B1=2×cf1となるので、cf1=(D_A1+D_B1)/2により、加速度センサA1、B1の遠心加速度cf1を求める。
また、加速度センサA2の出力をD_A2、加速度センサB2の出力をD_B2とすると、D_A2+D_B2=2×cf2となるので、cf2=(D_A2+D_B2)/2により、加速度センサA2、B2の遠心加速度cf2を求める。
回転軸100の角速度をωとすると、
遠心加速度=半径×角速度の2乗より
ω=(cf1/R1)1/2=(cf2/R2)1/2
であり、R1=R2+ΔRより、{cf1/(R2+ΔR)}1/2=(cf2/R2)1/2となるので、これを既知のΔRを代入してR2について解き、
R2=ΔR/{(cf1/cf2)-1}
を算定する。
【0034】
そして、算定したR2を、ω=(cf2/R2)1/2に代入し、回転軸100の角速度ωを算定する。
または、
R1=[ΔR/{(cf1/cf2)-1}]+ΔR
を算定し、算定したR1を、ω=(cf1/R1)1/2に代入し、回転軸100の角速度ωを算定してもよい。
【0035】
また、信号処理回路、もしくは、外部の計測装置、もしくは、信号処理回路と計測装置との協業によって、算定したωを用いて角加速度の算定などを行う。
以上、本発明の第2実施形態について説明した。
以上のように本実施形態によれば、検出器を回転軸100に固定するだけで、各加速度センサの出力から、各加速度センサの回転中心軸からの径方向の距離を算定することができ、この結果、検出器を回転軸100に固定するだけで、各加速度センサの出力から回転軸100の角加速度や角速度や回転速度を算定できるようになる。
【0036】
ここで、以上の実施形態では、加速度センサA1と加速度センサA2、加速度センサB1と加速度センサB2を回転軸100の回転中心軸から見た方向が同じとなる位置に配置した場合について示したが、
図6aに示すように加速度センサA1と加速度センサA2、加速度センサB1と加速度センサB2は回転軸100の回転中心軸から見た方向が異なる方向となる位置に配置してもよい。
【0037】
また、以上の各実施形態の検出器には回転軸100のトルクを計測する機能を併せ持たせてもよい。
この場合には、
図6b1の斜視図と
図6b2の断面図に示すように、検出器の上部ベース1と下部ベース2を、前後方向の両端部がそれぞれ回転軸100に固定されるように構成すると共に、両端部の間の中央部を軸方向に両端部を連結する梁形状の起歪部60とする。そして、起歪部60の周方向の側面にひずみゲージ61を固定する。
【0038】
また、検出器に、ひずみゲージ61を用いてひずみを検出する検出回路を内蔵し、検出回路で検出された値を、無線通信装置により計測装置に無線送信する。
そして、計測装置において、上述のように算定される加速度センサA2、B2までの回転軸100の中心からの距離R2と加速度センサA2、B2とひずみゲージ61との配置関係より定まるひずみゲージ61までの回転軸100の中心からの距離と、ひずみゲージ61で検出されたひずみとを用いて回転軸100のトルクや、そのエネルギーを算定する。
【符号の説明】
【0039】
1…上部ベース、2…下部ベース、3…ボルト、60…起歪部、61…ひずみゲージ、100…回転軸、A1、B1、A2、B2…加速度センサ。