(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135565
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ノイズ処理装置、ノイズ処理方法、および非一過性記録媒体
(51)【国際特許分類】
G10K 11/178 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G10K11/178 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046322
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大内 弘世
(72)【発明者】
【氏名】廣田 駿介
(72)【発明者】
【氏名】土岐 将吾
(72)【発明者】
【氏名】木下 聡
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061FF02
(57)【要約】
【課題】ノイズ音を効果的に低減することができるノイズ処理装置を得る。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るノイズ処理装置は、第1の信号を音に変換するスピーカと、音を第2の信号に変換するマイクロフォンと、第1の信号に基づいて第3の信号を生成する第1の処理部と、第2の信号から第3の信号を減算する減算部と、減算部の出力信号を遅延させる第1の遅延部および第2の遅延部と、第1のフィルタ係数を用いて処理を行う第1のフィルタと、第2のフィルタ係数を用いて処理を行う第2のフィルタと、第1の信号を生成する加算部と、減算部の出力信号に対して処理を行う第2の処理部と、第2の処理部の出力信号を遅延させる第3の遅延部および第4の遅延部と、第3の遅延部の出力信号および第2の信号に基づいて第1のフィルタ係数を生成し、第4の遅延部の出力信号および第2の信号に基づいて第2のフィルタ係数を生成する演算部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号である第1の信号を音に変換可能なスピーカと、
外音および前記スピーカから発せられた音を、電気信号である第2の信号に変換可能なマイクロフォンと、
前記第1の信号に対して所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことにより第3の信号を生成可能な第1の処理部と、
前記第2の信号から前記第3の信号を減算可能な減算部と、
前記減算部の出力信号を第1の遅延量だけ遅延させることが可能な第1の遅延部と、
前記第1の遅延部の出力信号に基づいて、第1のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことが可能な第1のフィルタと、
前記減算部の出力信号を第2の遅延量だけ遅延させることが可能な第2の遅延部と、
前記第2の遅延部の出力信号に基づいて、第2のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことが可能な第2のフィルタと、
前記第1のフィルタの出力信号および前記第2のフィルタの出力信号を加算することにより前記第1の信号を生成可能な加算部と、
前記減算部の出力信号に対して前記所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことが可能な第2の処理部と、
前記第2の処理部の出力信号を前記第1の遅延量だけ遅延させることが可能な第3の遅延部と、
前記第2の処理部の出力信号を前記第2の遅延量だけ遅延させることが可能な第4の遅延部と、
前記第3の遅延部の出力信号および前記第2の信号に基づいて前記第1のフィルタ係数を生成可能であり、前記第4の遅延部の出力信号および前記第2の信号に基づいて前記第2のフィルタ係数を生成可能な演算部と
を備えたノイズ処理装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記第2の信号に含まれる、前記外音に応じた信号成分が小さくなるように負帰還動作を行うことにより、前記第1のフィルタ係数および前記第2のフィルタ係数を生成可能である
請求項1に記載のノイズ処理装置。
【請求項3】
ユーザ操作を受け付けるユーザインタフェースと、
前記ユーザインタフェースからの指示に基づいて、前記第1の遅延量および前記第2の遅延量のうちの1以上の遅延量を設定可能な遅延設定部と
をさらに備えた
請求項1に記載のノイズ処理装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記遅延設定部が前記1以上の遅延量を設定した場合に、前記第1のフィルタ係数および前記第2のフィルタ係数のうちの1以上をリセット可能である
請求項3に記載のノイズ処理装置。
【請求項5】
前記第2の信号に含まれる、前記外音に応じた信号成分を検出可能な検出部をさらに備え、
前記演算部は、前記検出部の検出結果に基づいて、前記信号成分の周期が所定量以上変化した場合に、前記第1のフィルタ係数および前記第2のフィルタ係数のうちの1以上をリセット可能である
請求項1に記載のノイズ処理装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記検出部の検出結果に基づいて、前記信号成分が所定量以上である場合に、前記第1のフィルタ係数および前記第2のフィルタ係数のうちの1以上を繰り返しリセット可能である
請求項5に記載のノイズ処理装置。
【請求項7】
前記演算部は、前記検出部の検出結果に基づいて、前記第1のフィルタ係数をリセット可能であり、その後に前記検出部の検出結果に基づいて、前記第2のフィルタ係数をリセット可能である
請求項5に記載のノイズ処理装置。
【請求項8】
前記第2の信号に含まれる、前記外音に応じた信号成分を検出可能な検出部をさらに備え、
前記演算部は、前記信号成分が小さくなるように負帰還動作を行うことにより、前記第1のフィルタ係数および前記第2のフィルタ係数を生成可能であり、前記検出部の検出結果に基づいて、前記信号成分の周期が所定量以上変化した場合に、前記第1のフィルタ係数を生成する前記負帰還動作における第1の制御パラメータ、および前記第2のフィルタ係数を生成する前記負帰還動作における第2の制御パラメータのうちの1以上を変更可能である
請求項1に記載のノイズ処理装置。
【請求項9】
前記演算部は、前記第1の制御パラメータおよび前記第2の制御パラメータのうちの1以上を変更する際、前記第1のフィルタ係数および前記第2のフィルタ係数のうちの1以上をリセット可能である
請求項8に記載のノイズ処理装置。
【請求項10】
前記演算部は、前記第2の信号に含まれる、前記信号成分の周期が変化し続ける場合、または前記信号成分が所定量以上である場合に、前記第1の制御パラメータおよび前記第2の制御パラメータのうちの1以上を繰り返し変更するとともに、前記第1のフィルタ係数および前記第2のフィルタ係数のうちの1以上を繰り返しリセット可能である
請求項9に記載のノイズ処理装置。
【請求項11】
前記減算部の出力信号を第3の遅延量だけ遅延させることが可能な第5の遅延部と、
前記第5の遅延部の出力信号に基づいて、第3のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことが可能な第3のフィルタと、
前記第2の処理部の出力信号を前記第3の遅延量だけ遅延させることが可能な第6の遅延部と
をさらに備え、
前記加算部は、前記第1のフィルタの出力信号、前記第2のフィルタの出力信号、および前記第3のフィルタの出力信号を加算可能であり、
前記演算部は、さらに、前記第6の遅延部の出力信号および前記第2の信号に基づいて前記第3のフィルタ係数を生成可能である
請求項1に記載のノイズ処理装置。
【請求項12】
前記演算部は、前記第1のフィルタ係数、前記第2のフィルタ係数、および前記第3のフィルタ係数に基づいて、前記第1のフィルタ、前記第2のフィルタ、および前記第3のフィルタのうちのいずれか1つをオフ状態にすることが可能である
請求項11に記載のノイズ処理装置。
【請求項13】
前記第2の信号に含まれる、前記外音に応じた信号成分を検出可能な検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記第1の遅延量および前記第2の遅延量のうちの1以上の遅延量を設定可能な遅延設定部と
をさらに備えた
請求項1に記載のノイズ処理装置。
【請求項14】
スピーカが、電気信号である第1の信号を音に変換することと、
マイクロフォンが、外音および前記スピーカから発せられた音を電気信号である第2の信号に変換することと、
第1の処理部が、前記第1の信号に対して所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことにより第3の信号を生成することと、
減算部が、前記第2の信号から前記第3の信号を減算することと、
第1の遅延部が、前記減算部の出力信号を第1の遅延量だけ遅延させることと、
第1のフィルタが、前記第1の遅延部の出力信号に基づいて、第1のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことと、
第2の遅延部が、前記減算部の出力信号を第2の遅延量だけ遅延させることと、
第2のフィルタが、前記第2の遅延部の出力信号に基づいて、第2のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことと、
加算部が、前記第1のフィルタの出力信号および前記第2のフィルタの出力信号を加算することにより前記第1の信号を生成することと、
第2の処理部が、前記減算部の出力信号に対して前記所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことと、
第3の遅延部が、前記第2の処理部の出力信号を前記第1の遅延量だけ遅延させることと、
第4の遅延部が、前記第2の処理部の出力信号を前記第2の遅延量だけ遅延させることと、
演算部が、前記第3の遅延部の出力信号および前記第2の信号に基づいて前記第1のフィルタ係数を生成するとともに、前記第4の遅延部の出力信号および前記第2の信号に基づいて前記第2のフィルタ係数を設定することと
を含むノイズ処理方法。
【請求項15】
スピーカが、電気信号である第1の信号を音に変換することと、
マイクロフォンが、外音および前記スピーカから発せられた音を電気信号である第2の信号に変換することと、
第1の処理部が、前記第1の信号に対して所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことにより第3の信号を生成することと、
減算部が、前記第2の信号から前記第3の信号を減算することと、
第1の遅延部が、前記減算部の出力信号を第1の遅延量だけ遅延させることと、
第1のフィルタが、前記第1の遅延部の出力信号に基づいて、第1のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことと、
第2の遅延部が、前記減算部の出力信号を第2の遅延量だけ遅延させることと、
第2のフィルタが、前記第2の遅延部の出力信号に基づいて、第2のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことと、
加算部が、前記第1のフィルタの出力信号および前記第2のフィルタの出力信号を加算することにより前記第1の信号を生成することと、
第2の処理部が、前記減算部の出力信号に対して前記所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことと、
第3の遅延部が、前記第2の処理部の出力信号を前記第1の遅延量だけ遅延させることと、
第4の遅延部が、前記第2の処理部の出力信号を前記第2の遅延量だけ遅延させることと、
演算部が、前記第3の遅延部の出力信号および前記第2の信号に基づいて前記第1のフィルタ係数を生成するとともに、前記第4の遅延部の出力信号および前記第2の信号に基づいて前記第2のフィルタ係数を設定することと
をプロセッサに行わせるソフトウェアを含む
非一過性記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズ音を低減するようにノイズ処理を行うノイズ処理装置、このようなノイズ処理を行うノイズ処理方法、およびこのようなノイズ処理を行うソフトウェアを含む非一過性記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ノイズ処理装置では、しばしば能動ノイズ制御(ANC:Active Noise Control)が用いられる。この能動ノイズ制御では、ノイズ源から発せられたノイズ音の反位相の音を発生させることにより、ノイズ音を低減する。例えば、特許文献1には、このような能動ノイズ制御を行う装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ノイズ音には、短周期のノイズや、長周期のノイズが含まれ得る。また、このようなノイズ音は、時間の経過に応じて変化し得る。このように、ノイズ処理装置では、このようなノイズ音を効果的に低減することができることが望まれる。
【0005】
ノイズ音を効果的に低減することができるノイズ処理装置、ノイズ処理方法、および非一過性記録媒体を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施の形態に係るノイズ処理装置は、スピーカと、マイクロフォンと、第1の処理部と、減算部と、第1の遅延部と、第1のフィルタと、第2の遅延部と、第2のフィルタと、加算部と、第2の処理部と、第3の遅延部と、第4の遅延部と、演算部とを備えている。スピーカは、電気信号である第1の信号を音に変換可能なものである。マイクロフォンは、外音およびスピーカから発せられた音を、電気信号である第2の信号に変換可能なものである。第1の処理部は、第1の信号に対して所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことにより第3の信号を生成可能なものである。減算部は、第2の信号から第3の信号を減算可能なものである。第1の遅延部は、減算部の出力信号を第1の遅延量だけ遅延させることが可能なものである。第1のフィルタは、第1の遅延部の出力信号に基づいて、第1のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことが可能なものである。第2の遅延部は、減算部の出力信号を第2の遅延量だけ遅延させることが可能なものである。第2のフィルタは、第2の遅延部の出力信号に基づいて、第2のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことが可能なものである。加算部は、第1のフィルタの出力信号および第2のフィルタの出力信号を加算することにより第1の信号を生成可能なものである。第2の処理部は、減算部の出力信号に対して所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことが可能なものである。第3の遅延部は、第2の処理部の出力信号を第1の遅延量だけ遅延させることが可能なものである。第4の遅延部は、第2の処理部の出力信号を第2の遅延量だけ遅延させることが可能なものである。演算部は、第3の遅延部の出力信号および第2の信号に基づいて第1のフィルタ係数を生成可能であり、第4の遅延部の出力信号および第2の信号に基づいて第2のフィルタ係数を生成可能なものである。
【0007】
本発明の一実施の形態に係るノイズ処理方法は、スピーカが、電気信号である第1の信号を音に変換することと、マイクロフォンが、外音およびスピーカから発せられた音を電気信号である第2の信号に変換することと、第1の処理部が、第1の信号に対して所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことにより第3の信号を生成することと、減算部が、第2の信号から第3の信号を減算することと、第1の遅延部が、減算部の出力信号を第1の遅延量だけ遅延させることと、第1のフィルタが、第1の遅延部の出力信号に基づいて、第1のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことと、第2の遅延部が、減算部の出力信号を第2の遅延量だけ遅延させることと、第2のフィルタが、第2の遅延部の出力信号に基づいて、第2のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことと、加算部が、第1のフィルタの出力信号および第2のフィルタの出力信号を加算することにより第1の信号を生成することと、第2の処理部が、減算部の出力信号に対して所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことと、第3の遅延部が、第2の処理部の出力信号を第1の遅延量だけ遅延させることと、第4の遅延部が、第2の処理部の出力信号を第2の遅延量だけ遅延させることと、演算部が、第3の遅延部の出力信号および第2の信号に基づいて第1のフィルタ係数を生成するとともに、第4の遅延部の出力信号および第2の信号に基づいて第2のフィルタ係数を設定することとを含むものである。
【0008】
本発明の一実施の形態に係る非一過性記録媒体は、スピーカが、電気信号である第1の信号を音に変換することと、マイクロフォンが、外音およびスピーカから発せられた音を電気信号である第2の信号に変換することと、第1の処理部が、第1の信号に対して所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことにより第3の信号を生成することと、減算部が、第2の信号から第3の信号を減算することと、第1の遅延部が、減算部の出力信号を第1の遅延量だけ遅延させることと、第1のフィルタが、第1の遅延部の出力信号に基づいて、第1のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことと、第2の遅延部が、減算部の出力信号を第2の遅延量だけ遅延させることと、第2のフィルタが、第2の遅延部の出力信号に基づいて、第2のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことと、加算部が、第1のフィルタの出力信号および第2のフィルタの出力信号を加算することにより第1の信号を生成することと、第2の処理部が、減算部の出力信号に対して所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことと、第3の遅延部が、第2の処理部の出力信号を第1の遅延量だけ遅延させることと、第4の遅延部が、第2の処理部の出力信号を第2の遅延量だけ遅延させることと、演算部が、第3の遅延部の出力信号および第2の信号に基づいて第1のフィルタ係数を生成するとともに、第4の遅延部の出力信号および第2の信号に基づいて第2のフィルタ係数を設定することとをプロセッサに行わせるソフトウェアを含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施の形態に係るノイズ処理装置、ノイズ処理方法、および非一過性記録媒体によれば、ノイズ音を効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係るノイズ処理装置の一構成例を表すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したノイズ処理装置の一動作例を表す説明図である。
【
図3】
図3は、
図1に示したノイズ処理装置の一動作例を表す他の説明図である。
【
図4】
図4は、
図1に示したノイズ処理装置の一動作例を表す他の説明図である。
【
図5】
図5は、
図1に示したノイズ処理装置の一動作例を表す他の説明図である。
【
図6】
図6は、
図1に示したノイズ処理装置の一動作例を表す他の説明図である。
【
図7】
図7は、変形例に係るノイズ処理装置の一構成例を表すブロック図である。
【
図8】
図8は、
図7に示したノイズ処理装置の一動作例を表す説明図である。
【
図9】
図9は、他の変形例に係るノイズ処理装置の一構成例を表すブロック図である。
【
図10】
図10は、他の変形例に係るノイズ処理装置の一構成例を表すブロック図である。
【
図11】
図11は、他の変形例に係るノイズ処理装置の一構成例を表すブロック図である。
【
図12】
図12は、他の変形例に係るノイズ処理装置の一構成例を表すブロック図である。
【
図13】
図13は、他の変形例に係るノイズ処理装置の一構成例を表すブロック図である。
【
図14】
図14は、他の変形例に係るノイズ処理装置の一構成例を表すブロック図である。
【
図16】
図16は、他の変形例に係るノイズ処理装置の一構成例を表すブロック図である。
【
図17】
図17は、他の変形例に係るノイズ処理装置の一構成例を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
<実施の形態>
[構成例]
図1は、本発明の一実施の形態に係るノイズ処理装置(ノイズ処理装置1)の一構成例を表すものである。
図2,3は、ノイズ処理装置1の一動作例を表すものである。ノイズ処理装置1は、例えば、工事現場などで生じる騒音を低減したい場所に配置される。
【0013】
ノイズ処理装置1は、
図2,3に示したように、能動ノイズ制御を行うことにより、ノイズ音W1の反位相の音である生成音W2を用いて、ノイズ低減ポイントPPの周囲におけるノイズ音を低減するように構成される。このノイズ処理においては、ノイズ源9からのノイズ音が伝わる空間に、マイクロフォン13およびスピーカ12が配置される。ノイズ音W1は、ノイズ源9から発せられ、空間内の1次経路P1を介してマイクロフォン13に到達する。生成音W2は、スピーカ12から発せられ、空間内の2次経路P2を介してマイクロフォン13に到達する。マイクロフォン13は、これらの音を電気信号に変換する。この電気信号の波形は、ノイズ音W1の波形および生成音W2の波形が互いに加算された波形である。ノイズ処理装置1は、この電気信号におけるノイズ音W1に係る信号成分が小さくなるように、生成音W2を生成する。言い換えれば、ノイズ処理装置1は、生成音W2が、ノイズ音W1の反位相の音になるように、生成音W2を生成する。これにより、
図3に示したように、ノイズ音W1(
図3(A))および生成音W2(
図3(B))の合成音(
図3(C))は十分に小さくなる。このようにして、ノイズ処理装置1では、ノイズ低減ポイントPPであるマイクロフォン13の周囲の空間において、ノイズ音が低減されるようになっている。
【0014】
この例では、ノイズ音W1は、例えば、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2A,N2Bを含み得る。ここで、長周期ノイズN2A,N2Bの周期は、短周期ノイズN1の周期より長く、長周期ノイズN2Aの周期および長周期ノイズN2Bの周期は互いに異なる。ノイズ音W1は、時間の経過に応じて変化し得る。例えば、ある期間には、ノイズ音W1は、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Aを含み、他のある期間には、ノイズ音W1は、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Bを含む。ノイズ処理装置1は、このように、ノイズ音W1が時間に応じて変化する場合でも、ノイズ音を効果的に低減することができるようになっている。
【0015】
図1に示したように、ノイズ処理装置1は、DA(Digital to Analog)変換部11と、スピーカ12と、マイクロフォン13と、AD(Analog to Digital)変換部14と、フィルタ15と、減算部16と、遅延部17A,17Bと、適応フィルタ18A,18Bと、加算部19と、フィルタ21と、遅延部22A,22Bと、適応アルゴリズム演算部23とを備えている。フィルタ15、減算部16、遅延部17A,17B、適応フィルタ18A,18B、加算部19、フィルタ21、遅延部22A,22B、および適応アルゴリズム演算部23は、例えばプロセッサを用いて構成され、プログラムを実行することにより処理を行うようになっている。
【0016】
DA変換部11は、加算部19から供給された信号S19に基づいて、DA変換を行うことによりアナログ信号である信号S11を生成するように構成される。DA変換部11は、ノイズ処理装置1が扱う信号の周波数範囲よりも十分に高い所定の処理周波数fsで、DA変換を行う。DA変換部11には、加算部19から、信号S19に含まれるデータが順次供給される。DA変換部11は、この信号S19に含まれるデータに基づいて、DA変換を行うことによりアナログ信号である信号S11を生成するようになっている。
【0017】
スピーカ12は、DA変換部11から供給されたアナログ信号である信号S11を音に変換するように構成される。スピーカ12から発せられた音は、空間内の2次経路P2を介してマイクロフォン13に到達するようになっている。
【0018】
マイクロフォン13は、ノイズ源9から発せられ、空間内の1次経路P1を介して伝播したノイズ音W1、およびスピーカ12から発せられ、空間内の2次経路P2を介して伝播した生成音W2を、電気信号(誤差信号S13)に変換するように構成される。誤差信号S13の波形は、ノイズ音W1の波形および生成音W2の波形が互いに加算された波形である。
【0019】
AD変換部14は、マイクロフォン13から供給された誤差信号S13に基づいて、AD変換を行うことにより誤差信号S14を生成するように構成される。AD変換部14は、ノイズ処理装置1が扱う信号の周波数範囲よりも十分に高い所定の処理周波数fsで、AD変換を行うことにより、データを順次生成し、これらのデータを誤差信号S14として出力するようになっている。後述するように、ノイズ処理装置1では、負帰還動作が行われることにより、この誤差信号S13,S14におけるノイズ音W1に係る信号成分が小さくなるように動作する。
【0020】
フィルタ15は、FIR(Finite Impulse Response)フィルタであり、加算部19から供給された信号S19に基づいて、所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことにより信号S15を生成するように構成される。フィルタ係数は、複数のタップ係数を含む。このフィルタ係数は、2次経路P2における伝達特性に応じた係数に設定される。この伝達特性は、ノイズを低減したい空間に、このノイズ処理装置1を配置したあと、所定のキャリブレーション処理により測定される。そして、その測定結果に基づいて、フィルタ15にフィルタ係数が設定されるようになっている。フィルタ15には、加算部19から、信号S19に含まれるデータが順次供給される。フィルタ15は、信号S19に含まれるデータに対して畳み込み演算を行うことにより、データを順次生成し、これらのデータを信号S15として出力するようになっている。
【0021】
減算部16は、AD変換部14から供給された誤差信号S14から、フィルタ15から供給された信号S15を減算することにより信号S16を生成するように構成される。減算部16には、AD変換部14から、誤差信号S14に含まれるデータが順次供給されるとともに、フィルタ15から、信号S15に含まれるデータが順次供給される。減算部16は、誤差信号S14に含まれるデータから、信号S15に含まれるデータを減算することにより、データを順次生成し、これらのデータを信号S16として出力するようになっている。
【0022】
この信号S16は、ノイズ音W1に対応している。すなわち、フィルタ15におけるフィルタ係数は、2次経路P2における伝達特性に応じた係数であるので、信号S15は、生成音W2に対応している。マイクロフォン13は、ノイズ音W1および生成音W2を加算することにより誤差信号S13を生成する。減算部16は、この誤差信号S13に対応する誤差信号S14から、生成音W2に対応する信号S15を減算することにより信号S16を生成する。よって、この信号S16は、ノイズ音W1に対応している。
【0023】
遅延部17Aは、減算部16から供給された信号S16を遅延量tdAだけ遅延させることにより信号S17Aを生成するように構成される。この遅延量tdAは、長周期ノイズN2Aの周期に対応し、あらかじめ設定される。すなわち、ノイズ処理装置1では、どのようなノイズ音が低減すべきかがあらかじめ設定されており、遅延量tdAは、低減すべき長周期ノイズN2Aの周期に設定される。遅延部17Aには、減算部16から、信号S16に含まれるデータが順次供給される。遅延部17Aは、信号S16の位相を、処理周期Ts(=1/fs)を単位としてずらすことにより、信号S16を遅延量tdAだけ遅延させるようになっている。
【0024】
遅延部17Bは、減算部16から供給された信号S16を遅延量tdBだけ遅延させることにより信号S17Bを生成するように構成される。この遅延量tdBは、長周期ノイズN2Bの周期に対応し、あらかじめ設定される。遅延部17Bにおける遅延量tdBは、遅延部17Aにおける遅延量tdAと異なる。遅延部17Bには、減算部16から、信号S16に含まれるデータが順次供給される。遅延部17Bは、信号S16の位相を、処理周期Ts(=1/fs)を単位としてずらすことにより、信号S16を遅延量tdBだけ遅延させるようになっている。
【0025】
適応フィルタ18Aは、FIRフィルタであり、遅延部17Aから供給された信号S17Aに基づいて、適応アルゴリズム演算部23から供給されたフィルタ係数KAを用いてフィルタ処理を行うことにより信号S18Aを生成するように構成される。フィルタ係数KAは、複数のタップ係数を含む。適応フィルタ18Aには、遅延部17Aから、信号S17Aに含まれるデータが順次供給されるとともに、適応アルゴリズム演算部23から、フィルタ係数KAが供給される。適応フィルタ18Aは、このフィルタ係数KAを用いて、信号S17Aに含まれるデータに対して畳み込み演算を行うことにより、データを順次生成し、これらのデータを信号S18Aとして出力するようになっている。
【0026】
適応フィルタ18Bは、FIRフィルタであり、遅延部17Bから供給された信号S17Bに基づいて、適応アルゴリズム演算部23から供給されたフィルタ係数KBを用いてフィルタ処理を行うことにより信号S18Bを生成するように構成される。フィルタ係数KBは、複数のタップ係数を含む。適応フィルタ18Bには、遅延部17Bから、信号S17Bに含まれるデータが順次供給されるとともに、適応アルゴリズム演算部23から、フィルタ係数KBが供給される。適応フィルタ18Bは、このフィルタ係数KBを用いて、信号S17Bに含まれるデータに対して畳み込み演算を行うことにより、データを順次生成し、これらのデータを信号S18Bとして出力するようになっている。
【0027】
加算部19は、適応フィルタ18Aから供給された信号S18Aおよび適応フィルタ18Bから供給された信号S18Bを加算することにより信号S19を生成するように構成される。加算部19には、適応フィルタ18Aから、信号S18Aに含まれるデータが順次供給されるとともに、適応フィルタ18Bから、信号S18Bに含まれるデータが順次供給される。加算部19は、信号S18Aに含まれるデータおよび信号S18Bに含まれるデータを互いに加算することにより、データを順次生成し、これらのデータを信号S19として出力するようになっている。
【0028】
フィルタ21は、FIRフィルタであり、減算部16から供給された信号S16に基づいて、所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことにより信号S21を生成するように構成される。フィルタ21のフィルタ係数は、2次経路P2における伝達特性に応じた係数に設定される。すなわち、このフィルタ係数は、フィルタ15のフィルタ係数と同じである。フィルタ21には、減算部16から、信号S16に含まれるデータが順次供給される。フィルタ21は、信号S16に含まれるデータに対して畳み込み演算を行うことにより、データを順次生成し、これらのデータを信号S21として出力するようになっている。
【0029】
遅延部22Aは、フィルタ21から供給された信号S21を遅延量tdAだけ遅延させることにより信号S22Aを生成するように構成される。この遅延量tdAは、長周期ノイズN2Aの周期に対応し、遅延部17Aにおける遅延量と同じである。遅延部22Aには、フィルタ21から、信号S21に含まれるデータが順次供給される。遅延部22Aは、信号S21の位相を、処理周期Ts(=1/fs)を単位としてずらすことにより、信号S21を遅延量tdAだけ遅延させるようになっている。
【0030】
遅延部22Bは、フィルタ21から供給された信号S21を遅延量tdBだけ遅延させることにより信号S22Bを生成するように構成される。この遅延量tdBは、長周期ノイズN2Bの周期に対応し、遅延部17Bにおける遅延量と同じである。遅延部22Bには、フィルタ21から、信号S21に含まれるデータが順次供給される。遅延部22Bは、信号S21の位相を、処理周期Ts(=1/fs)を単位としてずらすことにより、信号S21を遅延量tdBだけ遅延させるようになっている。
【0031】
適応アルゴリズム演算部23は、遅延部22Aから供給された信号S22A、遅延部22Bから供給された信号S22B、およびAD変換部14から供給された誤差信号S14に基づいて、負帰還動作を行うことにより、フィルタ係数KA,KBを生成するように構成される。適応アルゴリズム演算部23には、遅延部22Aから、信号S22Aに含まれるデータが順次供給され、遅延部22Bから、信号S22Bに含まれるデータが順次供給され、AD変換部14から、誤差信号S14に含まれるデータが順次供給される。適応アルゴリズム演算部23は、信号S22Aに含まれるデータ、および誤差信号S14に含まれるデータに基づいて、誤差信号S14に含まれる、ノイズ音W1に係る信号成分が小さくなるように負帰還動作を行うことにより、フィルタ係数KAを生成する。また、適応アルゴリズム演算部23は、信号S22Bに含まれるデータ、および誤差信号S14に含まれるデータに基づいて、誤差信号S14に含まれる、ノイズ音W1に係る信号成分が小さくなるように負帰還動作を行うことにより、フィルタ係数KBを生成するようになっている。
【0032】
ここで、スピーカ12は、本開示の一実施の形態における「スピーカ」の一具体例に対応する。ノイズ音W1は、本開示の一実施の形態における「外音」の一具体例に対応する。マイクロフォン13は、本開示の一実施の形態における「マイクロフォン」の一具体例に対応する。フィルタ15は、本開示の一実施の形態における「第1の処理部」の一具体例に対応する。減算部16は、本開示の一実施の形態における「減算部」の一具体例に対応する。遅延部17Aは、本開示の一実施の形態における「第1の遅延部」の一具体例に対応する。適応フィルタ18Aは、本開示の一実施の形態における「第1のフィルタ」の一具体例に対応する。遅延部17Bは、本開示の一実施の形態における「第2の遅延部」の一具体例に対応する。適応フィルタ18Bは、本開示の一実施の形態における「第2のフィルタ」の一具体例に対応する。加算部18は、本開示の一実施の形態における「加算部」の一具体例に対応する。フィルタ21は、本開示の一実施の形態における「第2の処理部」の一具体例に対応する。遅延部22Aは、本開示の一実施の形態における「第3の遅延部」の一具体例に対応する。遅延部22Bは、本開示の一実施の形態における「第4の遅延部」の一具体例に対応する。適応アルゴリズム演算部23は、本開示の一実施の形態における「演算部」の一具体例に対応する。信号S19,S11は、本開示の一実施の形態における「第1の信号」の一具体例に対応する。誤差信号S13,S14は、本開示の一実施の形態における「第2の信号」の一具体例に対応する。信号S15は、本開示の一実施の形態における「第3の信号」の一具体例に対応する。遅延量tdAは、本開示の一実施の形態における「第1の遅延量」の一具体例に対応する。遅延量tdBは、本開示の一実施の形態における「第2の遅延量」の一具体例に対応する。フィルタ係数KAは、本開示の一実施の形態における「第1のフィルタ係数」の一具体例に対応する。フィルタ係数KBは、本開示の一実施の形態における「第2のフィルタ係数」の一具体例に対応する。
【0033】
[動作および作用]
続いて、本実施の形態のノイズ処理装置1の動作および作用について説明する。
【0034】
(全体動作概要)
まず、
図1を参照して、ノイズ処理装置1の全体動作概要を説明する。DA変換部11は、加算部19から供給された信号S19に基づいて、DA変換を行うことによりアナログ信号である信号S11を生成する。スピーカ12は、DA変換部11から供給されたアナログ信号である信号S11を音に変換する。マイクロフォン13は、ノイズ源9から発せられ、空間内の1次経路P1を介して伝播したノイズ音W1、およびスピーカ12から発せられ、空間内の2次経路P2を介して伝播した生成音W2を、電気信号(誤差信号S13)に変換する。AD変換部14は、マイクロフォン13から供給された誤差信号S13に基づいて、AD変換を行うことにより誤差信号S14を生成する。フィルタ15は、加算部19から供給された信号S19に基づいて、所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことにより信号S15を生成する。減算部16は、AD変換部14から供給された誤差信号S14から、フィルタ15から供給された信号S15を減算することにより信号S16を生成する。遅延部17Aは、減算部16から供給された信号S16を遅延量tdAだけ遅延させることにより信号S17Aを生成する。遅延部17Bは、減算部16から供給された信号S16を遅延量tdBだけ遅延させることにより信号S17Bを生成する。適応フィルタ18Aは、遅延部17Aから供給された信号S17Aに基づいて、適応アルゴリズム演算部23から供給されたフィルタ係数KAを用いてフィルタ処理を行うことにより信号S18Aを生成する。適応フィルタ18Bは、遅延部17Bから供給された信号S17Bに基づいて、適応アルゴリズム演算部23から供給されたフィルタ係数KBを用いてフィルタ処理を行うことにより信号S18Bを生成する。加算部19は、適応フィルタ18Aから供給された信号S18Aおよび適応フィルタ18Bから供給された信号S18Bを加算することにより信号S19を生成する。フィルタ21は、減算部16から供給された信号S16に基づいて、所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことにより信号S21を生成する。遅延部22Aは、フィルタ21から供給された信号S21を遅延量tdAだけ遅延させることにより信号S22Aを生成する。遅延部22Bは、フィルタ21から供給された信号S21を遅延量tdBだけ遅延させることにより信号S22Bを生成する。適応アルゴリズム演算部23は、遅延部22Aから供給された信号S22A、遅延部22Bから供給された信号S22B、およびAD変換部14から供給された誤差信号S14に基づいて、負帰還動作を行うことにより、フィルタ係数KA,KBを生成する。
【0035】
(詳細動作)
次に、ノイズ処理装置1の詳細動作について説明する。
【0036】
適応フィルタ18Aは、遅延部17Aから供給された信号S17Aに基づいて、適応アルゴリズム演算部23から供給されたフィルタ係数KAを用いてフィルタ処理を行う。遅延部17Aの遅延量tdAは、長周期ノイズN2Aの周期に対応する。例えば、ノイズ音W1が長周期ノイズN2Aを含む場合には、ノイズ処理装置1は、負帰還動作により、適応フィルタ18Aのフィルタ係数KAを調節することにより、マイクロフォン13の周囲におけるノイズ音を低減する。
【0037】
適応フィルタ18Bは、遅延部17Bから供給された信号S17Bに基づいて、適応アルゴリズム演算部23から供給されたフィルタ係数KBを用いてフィルタ処理を行う。遅延部17Bの遅延量tdBは、長周期ノイズN2Bの周期に対応する。よって、ノイズ音W1が長周期ノイズN2Bを含む場合には、ノイズ処理装置1は、負帰還動作により、適応フィルタ18Bのフィルタ係数KBを調節することにより、マイクロフォン13の周囲におけるノイズ音を低減する。
【0038】
以下に、ノイズ処理装置1の動作について、具体例を挙げて詳細に説明する。
【0039】
図4は、ノイズ音W1が、短周期ノイズN1のみを含む場合における、ノイズ処理装置1の一動作例を表すものである。ノイズ処理装置1は、負帰還動作により、誤差信号S14に含まれる、短周期ノイズN1に係る信号成分が小さくなるように、フィルタ係数KA,KBを調節する。遅延部17Aの遅延量tdAおよび遅延部17Bの遅延量tdBは、短周期ノイズN1の周期TN1よりも十分に長い。ノイズ処理装置1は、この場合でも、誤差信号S14に含まれる、短周期ノイズN1に係る信号成分が小さくなるように、フィルタ係数KA,KBを調節することができる。すなわち、2つのフィルタ係数KA,KBは、短周期ノイズN1に応じて調節される。これにより、生成音W2が、ノイズ音W1の反位相の音になり、マイクロフォン13の周囲におけるノイズ音が低減される。
【0040】
図5は、ノイズ音W1が、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Aを含む場合における、ノイズ処理装置1の一動作例を表すものである。
図5では、
図4に比べて、横軸の時間スケールを大きくして描いており、ノイズ音W1の波形を、エンベロープを用いて示している。長周期ノイズN2Aは、
図5に示したように、エンベロープにより観察されることができる。長周期ノイズN2Aの周期TN2Aは、短周期ノイズN1の周期TN1よりも十分に長い(TN2A>TN1)。
【0041】
ノイズ処理装置1は、負帰還動作により、誤差信号S14に含まれる、短周期ノイズN1に係る信号成分および長周期ノイズN2Aに係る信号成分が小さくなるように、フィルタ係数KA,KBを調節する。遅延部17Aの遅延量tdAは、長周期ノイズN2Aの周期TN2Aに対応する。よって、ノイズ処理装置1は、フィルタ係数KAを調節することにより、誤差信号S14に含まれる、長周期ノイズN2Aに係る信号成分を低減することができる。一方、遅延部17Bの遅延量tdBは、長周期ノイズN2Aの周期TN2Aとは異なる。よって、ノイズ処理装置1は、フィルタ係数KBを調節しても、誤差信号S14に含まれる、長周期ノイズN2Aに係る信号成分を低減することは難しい。この場合、ノイズ処理装置1は、フィルタ係数KBを調節することにより、誤差信号S14に含まれる、短周期ノイズN1に係る信号成分を低減することができる。
【0042】
このようにして、フィルタ係数KAは、長周期ノイズN2Aに応じて調節され、フィルタ係数KBは、短周期ノイズN1に応じて調節される。その結果、生成音W2が、ノイズ音W1の反位相の音になり、マイクロフォン13の周囲におけるノイズ音が低減される。
【0043】
図6は、時間の経過に応じてノイズ音W1が変化する場合における、ノイズ処理装置1の一動作例を表すものである。この例では、タイミングt1より前の期間では、ノイズ音W1は、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Aを含み、タイミングt1より後の期間では、ノイズ音W1は、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Bを含む。長周期ノイズN2A,N2Bは、
図6に示したように、エンベロープにおいて観察されることができる。長周期ノイズN2Bの周期TN2Bは、短周期ノイズN1の周期TN1よりも十分に長い(TN2B>TN1)。
【0044】
タイミングt1より前の期間では、ノイズ音W1は、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Aを含む。よって、ノイズ処理装置1は、この期間において、負帰還動作により、誤差信号S14に含まれる、短周期ノイズN1に係る信号成分および長周期ノイズN2Aに係る信号成分が小さくなるように、フィルタ係数KA,KBを調節する。具体的には、
図5の例と同様に、ノイズ処理装置1は、フィルタ係数KAを調節することにより、誤差信号S14に含まれる、長周期ノイズN2Aに係る信号成分を低減することができる。また、ノイズ処理装置1は、フィルタ係数KBを調節することにより、誤差信号S14に含まれる、短周期ノイズN1に係る信号成分を低減することができる。このようにして、タイミングt1より前の期間では、フィルタ係数KAは、長周期ノイズN2Aに応じて調節され、フィルタ係数KBは、短周期ノイズN1に応じて調節される。その結果、生成音W2が、ノイズ音W1の反位相の音になり、マイクロフォン13の周囲におけるノイズ音が低減される。
【0045】
タイミングt1より後の期間では、ノイズ音W1は、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Bを含む。よって、ノイズ処理装置1は、この期間において、負帰還動作により、誤差信号S14に含まれる、短周期ノイズN1に係る信号成分および長周期ノイズN2Bに係る信号成分が小さくなるように、フィルタ係数KA,KBを調節する。遅延部17Bの遅延量tdBは、長周期ノイズN2Bの周期TN2Bに対応する。よって、ノイズ処理装置1は、フィルタ係数KBを調節することにより、誤差信号S14に含まれる、長周期ノイズN2Bに係る信号成分を低減する。一方、遅延部17Aの遅延量tdAは、長周期ノイズN2Aの周期TN2Bとは異なる。よって、ノイズ処理装置1は、フィルタ係数KAを調節しても、誤差信号S14に含まれる長周期ノイズN2Bに係る信号成分を低減することは難しい。この場合、ノイズ処理装置1は、フィルタ係数KAを調節することにより、誤差信号S14に含まれる、短周期ノイズN1に係る信号成分を低減することができる。
【0046】
このようにして、タイミングt1より後の期間では、フィルタ係数KAは、短周期ノイズN1に応じて調節され、フィルタ係数KBは、長周期ノイズN2Bに応じて調節される。その結果、生成音W2が、ノイズ音W1の反位相の音になり、マイクロフォン13の周囲におけるノイズ音が低減される。
【0047】
この例では、ノイズ音W1に含まれる長周期ノイズが、長周期ノイズN2Aから長周期ノイズN2Bに変化したが、例えば、長周期ノイズN2Bから長周期ノイズN2Aに変化する場合も同様である。すなわち、ノイズ音W1が、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Aを含む場合には、フィルタ係数KAは、長周期ノイズN2Aに応じて調節され、フィルタ係数KBは、短周期ノイズN1に応じて調節される。また、ノイズ音W1が、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Bを含む場合には、フィルタ係数KAは、短周期ノイズN1に応じて調節され、フィルタ係数KBは、長周期ノイズN2Bに応じて調節される。このようにして、ノイズ処理装置1では、例えば、ノイズ音W1が長周期ノイズN2Aを含む場合と、ノイズ音W1が長周期ノイズN2Bを含む場合とで、適応フィルタ18A,18Bの役割が互いに入れ替わる。
【0048】
このように、ノイズ処理装置1では、電気信号である第1の信号(信号S19,S11)を音に変換可能なスピーカ12と、ノイズ音W1およびスピーカ12から発せられた音を、電気信号である第2の信号(誤差信号S13,S14)に変換可能なマイクロフォン13と、第1の信号(信号S19)に対して所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことにより第3の信号(信号S15)を生成可能な第1の処理部(フィルタ15)と、第2の信号(誤差信号S14)から第3の信号(信号S15)を減算可能な減算部16と、減算部16の出力信号を第1の遅延量(遅延量tdA)だけ遅延させることが可能な第1の遅延部(遅延部17A)と、第1の遅延部(遅延部17A)の出力信号に基づいて、第1のフィルタ係数(フィルタ係数KA)を用いてフィルタ処理を行うことが可能な第1のフィルタ(適応フィルタ18A)と、減算部16の出力信号を第2の遅延量(遅延量tdB)だけ遅延させることが可能な第2の遅延部(遅延部17B)と、第2の遅延部(遅延部17B)の出力信号に基づいて、第2のフィルタ係数(フィルタ係数KB)を用いてフィルタ処理を行うことが可能な第2のフィルタ(適応フィルタ18B)と、第1のフィルタ(適応フィルタ18A)の出力信号および第2のフィルタ(適応フィルタ18B)の出力信号を加算することにより第1の信号(信号S19)を生成可能な加算部(加算部19)と、減算部16の出力信号に対して所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことが可能な第2の処理部(フィルタ21)と、第2の処理部(フィルタ21)の出力信号を第1の遅延量(遅延量tdA)だけ遅延させることが可能な第3の遅延部(遅延部22A)と、第2の処理部(フィルタ21)の出力信号を第2の遅延量(遅延量tdB)だけ遅延させることが可能な第4の遅延部(遅延部22B)と、第3の遅延部(遅延部22A)の出力信号および第2の信号(誤差信号S14)に基づいて第1のフィルタ係数(フィルタ係数KA)を生成可能であり、第4の遅延部(遅延部22B)の出力信号および第2の信号(誤差信号S14)に基づいて第2のフィルタ係数(フィルタ係数KB)を生成可能な適応アルゴリズム演算部23とを設けるようにした。これにより、ノイズ処理装置1では、マイクロフォン13の周囲におけるノイズ音を効果的に低減することができる。
【0049】
すなわち、例えば、
図5,6に示したように、ノイズ音W1が、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Aを含む場合には、フィルタ係数KAは、長周期ノイズN2Aに応じて調節され、フィルタ係数KBは、短周期ノイズN1に応じて調節される。また、ノイズ音W1が、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Bを含む場合には、フィルタ係数KAは、短周期ノイズN1に応じて調節され、フィルタ係数KBは、長周期ノイズN2Bに応じて調節される。特に、
図6に示したように、時間の経過に応じてノイズ音W1が変化する場合でも、フィルタ係数KA,KBは、そのノイズ音W1に応じて調節される。これにより、ノイズ処理装置1では、マイクロフォン13の周囲におけるノイズ音を効果的に低減することができる。
【0050】
また、ノイズ処理装置1では、適応アルゴリズム演算部23は、第2の信号(誤差信号S14)に含まれる、外音に応じた信号成分が小さくなるように負帰還動作を行うことにより、第1のフィルタ係数(フィルタ係数KA)および第2のフィルタ係数(フィルタ係数KB)を生成可能なようにした。これにより、例えば、ノイズ音W1が、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Aを含む場合には、ノイズ処理装置1は、誤差信号S14に含まれる、長周期ノイズN2Aに係る信号成分が小さくなるように負帰還動作を行うことによりフィルタ係数KAを生成するとともに、誤差信号S14に含まれる、短周期ノイズN1に係る信号成分が小さくなるように負帰還動作を行うことによりフィルタ係数KBを生成する。また、例えば、ノイズ音W1が、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Bを含む場合には、ノイズ処理装置1は、誤差信号S14に含まれる、短周期ノイズN1に係る信号成分が小さくなるように負帰還動作を行うことによりフィルタ係数KAを生成するとともに、誤差信号S14に含まれる、長周期ノイズN2Bに係る信号成分が小さくなるように負帰還動作を行うことによりフィルタ係数KBを生成する。これにより、ノイズ処理装置1では、マイクロフォン13の周囲におけるノイズ音を効果的に低減することができる。
【0051】
[効果]
以上のように本実施の形態では、電気信号である第1の信号を音に変換可能なスピーカと、ノイズ音およびスピーカから発せられた音を、電気信号である第2の信号に変換可能なマイクロフォンと、第1の信号に対して所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことにより第3の信号を生成可能な第1の処理部と、第2の信号から第3の信号を減算可能な減算部と、減算部の出力信号を第1の遅延量だけ遅延させることが可能な第1の遅延部と、第1の遅延部の出力信号に基づいて、第1のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことが可能な第1のフィルタと、減算部の出力信号を第2の遅延量だけ遅延させることが可能な第2の遅延部と、第2の遅延部の出力信号に基づいて、第2のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことが可能な第2のフィルタと、第1のフィルタの出力信号および第2のフィルタの出力信号を加算することにより第1の信号を生成可能な加算部と、減算部の出力信号に対して所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことが可能な第2の処理部と、第2の処理部の出力信号を第1の遅延量だけ遅延させることが可能な第3の遅延部と、第2の処理部の出力信号を第2の遅延量だけ遅延させることが可能な第4の遅延部と、第3の遅延部の出力信号および第2の信号に基づいて第1のフィルタ係数を生成可能であり、第4の遅延部の出力信号および第2の信号に基づいて第2のフィルタ係数を生成可能な適応アルゴリズム演算部とを設けるようにした。これにより、ノイズ音を効果的に低減することができる。
【0052】
本実施の形態では、適応アルゴリズム演算部は、第2の信号に含まれる、外音に応じた信号成分が小さくなるように負帰還動作を行うことにより、第1のフィルタ係数および第2のフィルタ係数を生成可能なようにしたので、ノイズ音を効果的に低減することができる。
【0053】
[変形例1]
上記実施の形態では、2つの遅延部17A,17Bおよび2つの適応フィルタ18A,18Bを設けるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、3つ以上の遅延部および3つ位置の適応フィルタを設けてもよい。以下に、3つの遅延部および3つの適応フィルタを設ける場合を例に挙げて、詳細に説明する。
【0054】
図7は、本変形例に係るノイズ処理装置1Aの一構成例を表すものである。ノイズ処理装置1Aは、遅延部17Cと、適応フィルタ18Cと、加算部39と、遅延部22Cと、適応アルゴリズム演算部33とを備えている。
【0055】
この例では、ノイズ音W1は、例えば、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2A,N2B,N3Bを含み得る。長周期ノイズN2Aの周期、長周期ノイズN2Bの周期、および長周期ノイズN2Cの周期は互いに異なる。
【0056】
遅延部17Cは、遅延部17A,17Bと同様に、減算部16から供給された信号S16を遅延量tdCだけ遅延させることにより信号S17Cを生成するように構成される。この遅延量tdCは、長周期ノイズN2Cの周期に対応し、あらかじめ設定される。遅延部17Cにおける遅延量tdCは、遅延部17Aにおける遅延量tdAと異なり、遅延部17Bにおける遅延量tdBと異なる。
【0057】
適応フィルタ18Cは、適応フィルタ18A,18Bと同様に、FIRフィルタであり、遅延部17Cから供給された信号S17Cに基づいて、適応アルゴリズム演算部33から供給されたフィルタ係数KCを用いてフィルタ処理を行うことにより信号S18Cを生成するように構成される。
【0058】
加算部39は、適応フィルタ18Aから供給された信号S18A、適応フィルタ18Bから供給された信号S18B、および適応フィルタ18Cから供給された信号S18Cを加算することにより信号S19を生成するように構成される。
【0059】
遅延部22Cは、遅延部22A,22Bと同様に、フィルタ21から供給された信号S21を遅延量tdCだけ遅延させることにより信号S22Cを生成するように構成される。この遅延量tdCは、長周期ノイズN2Bの周期に対応し、遅延部17Cにおける遅延量と同じである。
【0060】
適応アルゴリズム演算部33は、遅延部22Aから供給された信号S22A、遅延部22Bから供給された信号S22B、遅延部22Cから供給された信号S22C、およびAD変換部14から供給された誤差信号S14に基づいて、負帰還動作を行うことにより、フィルタ係数KA,KB,KCを生成するように構成される。適応アルゴリズム演算部33は、信号S22Cに含まれるデータ、および誤差信号S14に含まれるデータに基づいて、誤差信号S14に含まれる、ノイズ音W1に係る信号成分が小さくなるように負帰還動作を行うことにより、フィルタ係数KCを生成するようになっている。
【0061】
ここで、遅延部17Cは、本開示の一実施の形態における「第5の遅延部」の一具体例に対応する。適応フィルタ18Cは、本開示の一実施の形態における「第3のフィルタ」の一具体例に対応する。遅延部22Cは、本開示の一実施の形態における「第6の遅延部」の一具体例に対応する。適応アルゴリズム演算部33は、本開示の一実施の形態における「演算部」の一具体例に対応する。遅延量tdCは、本開示の一実施の形態における「第3の遅延量」の一具体例に対応する。フィルタ係数KCは、本開示の一実施の形態における「第3のフィルタ係数」の一具体例に対応する
【0062】
図8は、時間の経過に応じてノイズ音W1が変化する場合における、ノイズ処理装置1Aの一動作例を表すものである。この例では、タイミングt2より前の期間では、ノイズ音W1は、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Aを含み、タイミングt2~t3の期間では、ノイズ音W1は、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Bを含み、タイミングt3より後の期間では、ノイズ音W1は、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Cを含む。
【0063】
タイミングt2より前の期間では、ノイズ音W1は、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Aを含む。ノイズ処理装置1Aは、負帰還動作により、誤差信号S14に含まれる、短周期ノイズN1に係る信号成分および長周期ノイズN2Aに係る信号成分が小さくなるように、フィルタ係数KA~KCを調節する。遅延部17Aの遅延量tdAは、長周期ノイズN2Aの周期TN2Aに対応する。よって、ノイズ処理装置1Aは、フィルタ係数KAを調節することにより、誤差信号S14に含まれる、長周期ノイズN2Aに係る信号成分を低減することができる。一方、遅延部17Bの遅延量tdBおよび遅延部17Cの遅延量tdCは、長周期ノイズN2Aの周期TN2Aとは異なる。よって、ノイズ処理装置1Aは、フィルタ係数KB,KCを調節しても、誤差信号S14に含まれる、長周期ノイズN2Aに係る信号成分を低減することは難しい。この場合、ノイズ処理装置1Aは、フィルタ係数KB,KCを調節することにより、誤差信号S14に含まれる、短周期ノイズN1に係る信号成分を低減することができる。
【0064】
このようにして、フィルタ係数KAは、長周期ノイズN2Aに応じて調節され、フィルタ係数KB,KCは、短周期ノイズN1に応じて調節される。その結果、生成音W2が、ノイズ音W1の反位相の音になり、マイクロフォン13の周囲におけるノイズ音が低減される。
【0065】
タイミングt2~t3の期間では、ノイズ音W1は、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Bを含む。ノイズ処理装置1Aは、負帰還動作により、誤差信号S14に含まれる、短周期ノイズN1に係る信号成分および長周期ノイズN2Bに係る信号成分が小さくなるように、フィルタ係数KA~KCを調節する。遅延部17Bの遅延量tdBは、長周期ノイズN2Bの周期TN2Bに対応する。よって、ノイズ処理装置1Aは、フィルタ係数KBを調節することにより、誤差信号S14に含まれる、長周期ノイズN2Bに係る信号成分を低減することができる。一方、遅延部17Aの遅延量tdAおよび遅延部17Cの遅延量tdCは、長周期ノイズN2Bの周期TN2Bとは異なる。よって、ノイズ処理装置1Aは、フィルタ係数KA,KCを調節しても、誤差信号S14に含まれる、長周期ノイズN2Bに係る信号成分を低減することは難しい。この場合、ノイズ処理装置1Aは、フィルタ係数KA,KCを調節することにより、誤差信号S14に含まれる、短周期ノイズN1に係る信号成分を低減することができる。
【0066】
このようにして、フィルタ係数KBは、長周期ノイズN2Bに応じて調節され、フィルタ係数KA,KCは、短周期ノイズN1に応じて調節される。その結果、生成音W2が、ノイズ音W1の反位相の音になり、マイクロフォン13の周囲におけるノイズ音が低減される。
【0067】
タイミングt3より後の期間では、ノイズ音W1は、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Cを含む。ノイズ処理装置1Aは、負帰還動作により、誤差信号S14に含まれる、短周期ノイズN1に係る信号成分および長周期ノイズN2Cに係る信号成分が小さくなるように、フィルタ係数KA~KCを調節する。遅延部17Cの遅延量tdCは、長周期ノイズN2Cの周期TN2Cに対応する。よって、ノイズ処理装置1Aは、フィルタ係数KCを調節することにより、誤差信号S14に含まれる、長周期ノイズN2Cに係る信号成分を低減することができる。一方、遅延部17Aの遅延量tdAおよび遅延部17Bの遅延量tdBは、長周期ノイズN2Cの周期TN2Cとは異なる。よって、ノイズ処理装置1Aは、フィルタ係数KA,KBを調節しても、誤差信号S14に含まれる、長周期ノイズN2Cに係る信号成分を低減することは難しい。この場合、ノイズ処理装置1Aは、フィルタ係数KA,KBを調節することにより、誤差信号S14に含まれる、短周期ノイズN1に係る信号成分を低減することができる。
【0068】
このようにして、フィルタ係数KCは、長周期ノイズN2Cに応じて調節され、フィルタ係数KA,KBは、短周期ノイズN1に応じて調節される。その結果、生成音W2が、ノイズ音W1の反位相の音になり、マイクロフォン13の周囲におけるノイズ音が低減される。
【0069】
このように、ノイズ処理装置1Aでは、より多くの長周期ノイズに対して負帰還動作を行うことができるので、マイクロフォン13の周囲におけるノイズ音を効果的に低減することができる。
【0070】
[変形例2]
上記実施の形態では、遅延部17A,22Aの遅延量tdA、および遅延部17B,22Bの遅延量tdBは、あらかじめ設定されるようにしたが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、
図9に示すノイズ処理装置1Bのように、遅延量tdA,tdBは、ノイズ処理装置1Bが動作を行っているときに、ユーザからの指示に基づいて変更できるようにしてもよい。このノイズ処理装置1Bは、ユーザインタフェース41と、遅延設定部42と、適応アルゴリズム演算部43とを備えている。
【0071】
ユーザインタフェース41は、例えば、液晶パネルなどの表示装置、タッチパネルや各種ボタンなどの入力装置を含み、ユーザ操作を受け付けるように構成される。ユーザインタフェース41は、この例では、ユーザによる、遅延量tdA,tdBの入力操作を受け付けるようになっている。
【0072】
遅延設定部42は、ユーザインタフェース41からの指示に基づいて、遅延部17A,22Aの遅延量tdA、および遅延部17B,22Bの遅延量tdBを設定するように構成される。また、遅延設定部42は、遅延量tdA,tdBを変更した場合に、適応アルゴリズム演算部43にフラグ信号を供給するようになっている。
【0073】
適応アルゴリズム演算部43は、上記実施の形態に係る適応アルゴリズム演算部23と同様に、遅延部22Aから供給された信号S22A、遅延部22Bから供給された信号S22B、およびAD変換部14から供給された誤差信号S14に基づいて、負帰還動作を行うことにより、フィルタ係数KA,KBを生成するように構成される。適応アルゴリズム演算部43は、リセット処理部44を有している。リセット処理部44は、例えば、遅延設定部42から供給されたフラグ信号に基づいて、フィルタ係数KA,KBを所定の係数に設定することにより、フィルタ係数KA,KBをリセットするように構成される。フィルタ係数KAがリセットされたときの所定の係数は、フィルタ係数KBがリセットされたときの所定の係数と同じでもよいし、異なっていてもよい。リセット処理部44がこのようにフィルタ係数KA,KBをリセットすることにより、適応アルゴリズム演算部43は、負帰還動作を最初からやり直すことができるようになっている。
【0074】
ここで、ユーザインタフェース14は、本開示の一実施の形態における「ユーザインタフェース」の一具体例に対応する。遅延設定部42は、本開示の一実施の形態における「遅延設定部」の一具体例に対応する。適応アルゴリズム演算部43は、本開示の一実施の形態における「演算部」の一具体例に対応する。
【0075】
例えば、ノイズ処理装置1Bが負帰還動作を行っている場合において、遅延量tdAのみが変更された場合、リセット処理部44は、フィルタ係数KAのみをリセットするとともにフィルタ係数KBをリセットしなくてもよいし、フィルタ係数KA,KBの両方をリセットしてもよい。同様に、例えば、ノイズ処理装置1Bが負帰還動作を行っている場合において、遅延量tdBのみが変更された場合に、リセット処理部44は、フィルタ係数KBのみをリセットするとともにフィルタ係数KAをリセットしなくてもよいし、フィルタ係数KA,KBの両方をリセットしてもよい。
【0076】
これにより、ノイズ処理装置1Bでは、例えば、動作中にノイズ音W1に含まれる長周期ノイズの周期が変化した場合に、マイクロフォン13の周囲におけるノイズ音を低減することができる。すなわち、長周期ノイズの周期が、あらかじめ設定された遅延量tdAまたは遅延量tdBと大きく異なる場合には、ノイズ処理装置1Bは、フィルタ係数KA,KBを調節しても、誤差信号S14に含まれる、その長周期ノイズに係る信号成分を低減することが難しい場合があり得る。この場合には、ノイズ処理装置1Bは、ユーザ操作に基づいて、例えば遅延部17Aの遅延量tdAを、その長周期ノイズの周期に対応する遅延量に変更することができる。ノイズ処理装置1Bは、誤差信号S14に含まれる、その長周期ノイズに係る信号成分を低減することができるので、マイクロフォン13の周囲におけるノイズ音を効果的に低減することができる。
【0077】
[変形例3]
上記実施の形態では、負帰還動作により、フィルタ係数KA,KBを調節するようにした。例えば、
図10に示すノイズ処理装置1Cのように、長周期ノイズの周期が大きく変化した場合に、フィルタ係数KA,KBをリセットしてもよい。このノイズ処理装置1Cは、周期変化検出部52と、適応アルゴリズム演算部53とを備えている。
【0078】
周期変化検出部52は、誤差信号S14に基づいて、誤差信号S14に含まれる長周期ノイズの信号成分の周期を検出するように構成される。そして、周期変化検出部52は、誤差信号S14に含まれる長周期ノイズの信号成分の周期が所定量以上変化した場合に、適応アルゴリズム演算部53にフラグ信号を供給するようになっている。
【0079】
適応アルゴリズム演算部53は、上記実施の形態に係る適応アルゴリズム演算部23と同様に、遅延部22Aから供給された信号S22A、遅延部22Bから供給された信号S22B、およびAD変換部14から供給された誤差信号S14に基づいて、負帰還動作を行うことにより、フィルタ係数KA,KBを生成するように構成される。適応アルゴリズム演算部53は、リセット処理部54を有している。リセット処理部54は、例えば、周期変化検出部52から供給されたフラグ信号に基づいて、フィルタ係数KA,KBを所定の係数に設定することにより、フィルタ係数KA,KBをリセットするように構成される。フィルタ係数KAがリセットされたときの所定の係数は、フィルタ係数KBがリセットされたときの所定の係数と同じでもよいし、異なっていてもよい。これにより、適応アルゴリズム演算部43は、負帰還動作を最初からやり直すことができるようになっている。
【0080】
ここで、周期変化検出部52は、本開示の一実施の形態における「検出部」の一具体例に対応する。適応アルゴリズム演算部53は、本開示の一実施の形態における「演算部」の一具体例に対応する。
【0081】
例えば、周期ノイズの周期が大きく変化した場合、リセット処理部54は、フィルタ係数KA,KBの両方をリセットしてもよいし、フィルタ係数KA,KBのうちの1つをリセットしてもよい。
【0082】
例えば、
図6に示したように、ノイズ音W1に含まれる長周期ノイズが、長周期ノイズN2Aから長周期ノイズN2Bに変化した場合には、ノイズ処理装置1Cは、例えば、フィルタ係数KA,KBの両方をリセットする。これにより、ノイズ処理装置1Cでは、負帰還動作を最初からやり直すことができるので、例えば、より短い時間で負帰還動作を収束させることができる。その結果、マイクロフォン13の周囲におけるノイズ音を効果的に低減することができる。
【0083】
リセット処理部54は、例えば、フィルタ係数KA,KBを、1つずつ順次リセットしてもよい。具体的には、リセット処理部54は、まずフィルタ係数KAをリセットし、その後に、ノイズ処理装置1Cが負帰還動作を行った後に、フィルタ係数KBをリセットしてもよい。
【0084】
また、この周期変化検出部52は、さらに、誤差信号S14に基づいて、誤差信号S14に含まれる長周期ノイズの信号成分が所定量以下であるかどうかを検出してもよい。そして、周期変化検出部52は、例えば、誤差信号S14に含まれる長周期ノイズの信号成分が所定量以下ではない場合に、適応アルゴリズム演算部53にフラグ信号を供給してもよい。この場合、このノイズ処理装置1Cは、例えば、長周期ノイズが充分に低減されない場合に、フィルタ係数KA,KBをリセットする。ノイズ処理装置1Cでは、誤差信号S14に含まれる長周期ノイズの信号成分が所定量以下になるまで、この動作が繰り返されるので、負帰還動作を効果的に収束させることができる。
【0085】
[変形例4]
上記実施の形態では、負帰還動作により、フィルタ係数KA,KBを調節するようにした。例えば、
図11に示すノイズ処理装置1Dのように、長周期ノイズの周期が大きく変化した場合に、負帰還動作の制御パラメータを変更してもよい。このノイズ処理装置1Dは、周期変化検出部62と、適応アルゴリズム演算部63とを備えている。
【0086】
周期変化検出部62は、誤差信号S14に基づいて、誤差信号S14に含まれる長周期ノイズの信号成分の周期を検出するように構成される。そして、周期変化検出部62は、誤差信号S14に含まれる長周期ノイズの信号成分の周期が所定量以上変化した場合に、適応アルゴリズム演算部63にフラグ信号を供給するようになっている。
【0087】
適応アルゴリズム演算部63は、上記実施の形態に係る適応アルゴリズム演算部23と同様に、遅延部22Aから供給された信号S22A、遅延部22Bから供給された信号S22B、およびAD変換部14から供給された誤差信号S14に基づいて、負帰還動作を行うことにより、フィルタ係数KA,KBを生成するように構成される。適応アルゴリズム演算部63は、パラメータ設定部64を有している。パラメータ設定部64は、例えば、周期変化検出部62から供給されたフラグ信号に基づいて、負帰還動作の制御パラメータを設定するように構成される。具体的には、パラメータ設定部64は、長周期ノイズの周期が大きく変化した場合には、例えば、フィルタ係数KA,KBの更新頻度を高くする。これにより、適応アルゴリズム演算部63は、より短い時間で負帰還動作を収束させることができる。また、パラメータ設定部64は、長周期ノイズの周期が大きく変化した後、長周期ノイズの周期が安定し、誤差信号S14に含まれる、長周期ノイズに係る信号成分が小さくなった場合には、例えば、フィルタ係数KA,KBの更新頻度を低くする。これにより、適応アルゴリズム演算部63は、負帰還動作の安定性を高めることができる。
【0088】
ここで、周期変化検出部62は、本開示の一実施の形態における「検出部」の一具体例に対応する。適応アルゴリズム演算部63は、本開示の一実施の形態における「演算部」の一具体例に対応する。
【0089】
なお、これに限定されるものではなく、パラメータ設定部64は、長周期ノイズの周期が大きく変化した場合には、例えば、フィルタ係数KA,KBを変更するときの変化量を大きくしてもよい。そして、パラメータ設定部64は、長周期ノイズの周期が大きく変化した後、長周期ノイズの周期が安定し、誤差信号S14に含まれる、長周期ノイズに係る信号成分が小さくなった場合には、例えば、フィルタ係数KA,KBを変更するときの変化量を小さくしてもよい。
【0090】
また、
図12に示すノイズ処理装置1Eのように、本変形例の技術と、上記変形例3の技術とを組合せてもよい。このノイズ処理装置1Eは、適応アルゴリズム演算部65を備えている。適応アルゴリズム演算部65は、パラメータ設定部64と、リセット処理部54とを有している。例えば、周期変化検出部62から供給されたフラグ信号に基づいて、リセット処理部54が、フィルタ係数KA,KBをリセットし、パラメータ設定部64が、より短い時間で負帰還動作を収束させるように、負帰還動作の制御パラメータを設定することができる。
【0091】
[変形例5]
上記実施の形態では、負帰還動作により、フィルタ係数KA,KBを調節するようにした。例えば、
図13に示すノイズ処理装置1Fのように、長周期ノイズの周期が変化し続ける場合や、長周期ノイズが充分に低減されない場合に、フィルタ係数KA,KBをリセットするとともに、負帰還動作の制御パラメータを変更してもよい。このノイズ処理装置1Fは、長周期ノイズ検出部72と、適応アルゴリズム演算部73とを備えている。
【0092】
長周期ノイズ検出部72は、誤差信号S14に基づいて、誤差信号S14に含まれる長周期ノイズの信号成分を検出するように構成される。そして、長周期ノイズ検出部72は、例えば、誤差信号S14に含まれる長周期ノイズの信号成分の周期が変化し続ける場合や、誤差信号S14に含まれる長周期ノイズの信号成分が所定量以上である場合に、適応アルゴリズム演算部73にフラグ信号を供給するようになっている。
【0093】
適応アルゴリズム演算部73は、上記実施の形態に係る適応アルゴリズム演算部23と同様に、遅延部22Aから供給された信号S22A、遅延部22Bから供給された信号S22B、およびAD変換部14から供給された誤差信号S14に基づいて、負帰還動作を行うことにより、フィルタ係数KA,KBを生成するように構成される。適応アルゴリズム演算部73は、パラメータ設定部74と、リセット処理部75とを有している。
【0094】
パラメータ設定部74は、例えば、長周期ノイズ検出部72から供給されたフラグ信号に基づいて、負帰還動作の制御パラメータを設定するように構成される。具体的には、パラメータ設定部74は、長周期ノイズの周期が大きく変化した場合には、例えば、フィルタ係数KA,KBの更新頻度を高くし、フィルタ係数KA,KBを変更するときの変化量を大きくする。これにより、適応アルゴリズム演算部73は、より短い時間で負帰還動作を収束させることができる。
【0095】
リセット処理部75は、例えば、長周期ノイズ検出部72から供給されたフラグ信号に基づいて、フィルタ係数KA,KBを所定の係数に設定することにより、フィルタ係数KA,KBをリセットするように構成される。
【0096】
ここで、長周期ノイズ検出部72は、本開示の一実施の形態における「検出部」の一具体例に対応する。適応アルゴリズム演算部73は、本開示の一実施の形態における「演算部」の一具体例に対応する。
【0097】
この構成により、ノイズ処理装置1Fは、例えば、誤差信号S14に含まれる長周期ノイズの信号成分の周期が変化し続ける場合に、フィルタ係数KA,KBをリセットするとともに、負帰還動作の制御パラメータを変更することができる。これにより、ノイズ処理装置1Fでは、長周期ノイズの周期が変化する度に、より短い時間で負帰還動作を収束させることができる。そして、ノイズ処理装置1Fでは、長周期ノイズの周期が変化し続ける限り、この動作が繰り返されるので、負帰還動作を効果的に収束させることができる。
【0098】
また、ノイズ処理装置1Fは、例えば、誤差信号S14に含まれる長周期ノイズの信号成分が所定量以上である場合に、フィルタ係数KA,KBをリセットするとともに、負帰還動作の制御パラメータを変更することができる。これにより、ノイズ処理装置1Fでは、長周期ノイズが充分に低減できるまで、この動作が繰り返されるので、負帰還動作を効果的に収束させることができる。
【0099】
[変形例6]
例えば、
図7,8に示したように、3つの適応フィルタを設けた場合には、このうちの2つの適応フィルタのフィルタ係数は、誤差信号S14に含まれる、短周期ノイズN1に係る信号成分を低減するように調節される。よって、この2つの適応フィルタのうちの1つをオフ状態にしてもよい。以下に、本変形例に係るノイズ処理装置1Gについて、詳細に説明する。
【0100】
図14は、本変形例に係るノイズ処理装置1Gの一構成例を表すものである。ノイズ処理装置1Gは、周期変化検出部82と、適応アルゴリズム演算部83とを備えている。
【0101】
周期変化検出部82は、誤差信号S14に基づいて、誤差信号S14に含まれる長周期ノイズの信号成分の周期を検出するように構成される。そして、周期変化検出部82は、誤差信号S14に含まれる長周期ノイズの信号成分の周期が所定量以上変化した場合に、適応アルゴリズム演算部83にフラグ信号を供給するようになっている。
【0102】
適応アルゴリズム演算部83は、上記実施の形態に係る適応アルゴリズム演算部23と同様に、遅延部22Aから供給された信号S22A、遅延部22Bから供給された信号S22B、遅延部22Cから供給された信号S22C、およびAD変換部14から供給された誤差信号S14に基づいて、負帰還動作を行うことにより、フィルタ係数KA~KCを生成するように構成される。適応アルゴリズム演算部83は、適応フィルタ制御部84を有している。適応フィルタ制御部84は、適応フィルタ18A~18Cのうちの短周期ノイズN1に係る適応フィルタをオフ状態することができるように構成される。具体的には、適応フィルタ制御部84は、例えば、フィルタ係数KA~KCに基づいて、3つの適応フィルタ18A~18Cのうちの、短周期ノイズN1に係る2つの適応フィルタを特定する。そして、適応フィルタ制御部84は、その2つの適応フィルタのうちの一方の動作をオフにする。具体的には、適応フィルタ制御部84は、フィルタ係数に含まれる複数のタップ係数の全てをゼロに固定することにより、その適応フィルタをオフ状態にする。これにより、その適応フィルタが出力するデータの値はゼロに固定される。そして、適応フィルタ制御部84は、周期変化検出部82から供給されたフラグ信号に基づいて、オフ状態に設定された適応フィルタをオン状態にするようになっている。
【0103】
図15は、ノイズ処理装置1Gの一動作例を表すものである。この例では、タイミングt4より前の期間では、ノイズ音W1は、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Aを含み、タイミングt4~t5の期間では、ノイズ音W1は、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Bを含み、タイミングt5より後の期間では、ノイズ音W1は、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Cを含む。
【0104】
タイミングt4より前の期間では、ノイズ音W1は、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Aを含む。遅延部17Aの遅延量tdAは、長周期ノイズN2Aの周期TN2Aに対応する。よって、ノイズ処理装置1Gは、フィルタ係数KAを調節することにより、誤差信号S14に含まれる、長周期ノイズN2Aに係る信号成分を低減することができる。一方、遅延部17Bの遅延量tdBおよび遅延部17Cの遅延量tdCは、長周期ノイズN2Aの周期TN2Aとは異なる。よって、ノイズ処理装置1Gは、フィルタ係数KB,KCを調節することにより、誤差信号S14に含まれる、短周期ノイズN1に係る信号成分を低減することができる。適応フィルタ制御部84は、これらの3つのフィルタ係数KA~KCに基づいて、適応フィルタ18B,18Cが短周期ノイズN1に係る適応フィルタであることを特定する。そして、この例では、適応フィルタ制御部84は、フィルタ係数KCに含まれる複数のタップ係数の全てをゼロに固定することにより、適応フィルタ18Cをオフ状態にする。
【0105】
このようにして、フィルタ係数KAは、長周期ノイズN2Aに応じて調節され、フィルタ係数KBは、短周期ノイズN1に応じて調節される。また、フィルタ係数KCにおける複数のタップ係数はゼロに設定される。その結果、生成音W2が、ノイズ音W1の反位相の音になり、マイクロフォン13の周囲におけるノイズ音が低減される。
【0106】
タイミングt4~t5の期間では、ノイズ音W1は、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Bを含む。遅延部17Bの遅延量tdBは、長周期ノイズN2Bの周期TN2Bに対応する。よって、ノイズ処理装置1Gは、フィルタ係数KBを調節することにより、誤差信号S14に含まれる、長周期ノイズN2Bに係る信号成分を低減することができる。一方、遅延部17Aの遅延量tdAおよび遅延部17Cの遅延量tdCは、長周期ノイズN2Bの周期TN2Bとは異なる。よって、ノイズ処理装置1Gは、フィルタ係数KA,KCを調節することにより、誤差信号S14に含まれる、短周期ノイズN1に係る信号成分を低減することができる。適応フィルタ制御部84は、これらの3つのフィルタ係数KA~KCに基づいて、適応フィルタ18A,18Cが短周期ノイズN1に係る適応フィルタであることを特定する。そして、この例では、適応フィルタ制御部84は、フィルタ係数KAに含まれる複数のタップ係数の全てをゼロに固定することにより、適応フィルタ18Aをオフ状態にする。
【0107】
このようにして、フィルタ係数KBは、長周期ノイズN2Bに応じて調節され、フィルタ係数KCは、短周期ノイズN1に応じて調節される。また、フィルタ係数KAにおける複数のタップ係数はゼロに設定される。その結果、生成音W2が、ノイズ音W1の反位相の音になり、マイクロフォン13の周囲におけるノイズ音が低減される。
【0108】
タイミングt5より後の期間では、ノイズ音W1は、短周期ノイズN1および長周期ノイズN2Cを含む。遅延部17Cの遅延量tdCは、長周期ノイズN2Cの周期TN2Cに対応する。よって、ノイズ処理装置1Gは、フィルタ係数KCを調節することにより、誤差信号S14に含まれる、長周期ノイズN2Cに係る信号成分を低減することができる。一方、遅延部17Aの遅延量tdAおよび遅延部17Bの遅延量tdBは、長周期ノイズN2Cの周期TN2Cとは異なる。よって、ノイズ処理装置1Gは、フィルタ係数KA,KBを調節することにより、誤差信号S14に含まれる、短周期ノイズN1に係る信号成分を低減することができる。適応フィルタ制御部84は、これらの3つのフィルタ係数KA~KCに基づいて、適応フィルタ18A,18Bが短周期ノイズN1に係る適応フィルタであることを特定する。そして、この例では、適応フィルタ制御部84は、フィルタ係数KBに含まれる複数のタップ係数の全てをゼロに固定することにより、適応フィルタ18Aをオフ状態にする。
【0109】
このようにして、フィルタ係数KCは、長周期ノイズN2Cに応じて調節され、フィルタ係数KAは、短周期ノイズN1に応じて調節される。また、フィルタ係数KBにおける複数のタップ係数はゼロに設定される。その結果、生成音W2が、ノイズ音W1の反位相の音になり、マイクロフォン13の周囲におけるノイズ音が低減される。
【0110】
なお、この例では、3つの適応フィルタを設けた場合を例に挙げて、説明したが、4つ以上の適応フィルタを設けた場合についても同様である。すなわち、例えば4つの適応フィルタを設けた場合には、このうちの3つの適応フィルタのフィルタ係数は、誤差信号S14に含まれる、短周期ノイズN1に係る信号成分を低減するように調節される。よって、この3つの適応フィルタのうちの1つまたは2つをオフ状態にすることができる。
【0111】
[変形例7]
上記実施の形態では、遅延部17A,22Aの遅延量tdAおよび遅延部17B,22Bの遅延量tdBを予め設定したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、
図16に示すノイズ処理装置1Hのように、この遅延量tdA,tdBを調節できるようにしてもよい。このノイズ処理装置1Hは、周期検出部91と、遅延設定部92とを備えている。
【0112】
周期検出部91は、誤差信号S14に含まれる長周期ノイズの信号成分の周期を検出するように構成される。遅延設定部92は、周期検出部91により検出された長周期ノイズの信号成分の周期が変化した場合において、この変化量が所定量以下である場合に、検出された周期に基づいて、遅延部17Aの遅延量tdAおよび遅延部17Bの遅延量tdBの遅延量を調節するように構成される。具体的には、誤差信号S14が長周期ノイズN2Aの信号成分を含む場合において、その長周期ノイズN2Aの信号成分の周期がやや変化した場合には、遅延設定部92は、その周期に基づいて、遅延部17A,22Aの遅延量tdAを調節することができる。また、誤差信号S14が長周期ノイズN2Bの信号成分を含む場合において、その長周期ノイズN2Bの信号成分の周期がやや変化した場合には、遅延設定部92は、その周期に基づいて、遅延部17B,22Bの遅延量tdBを調節することができる。
【0113】
ここで、周期検出部91は、本開示の一実施の形態における「検出部」の一具体例に対応する。遅延設定部92は、本開示の一実施の形態における「遅延設定部」の一具体例に対応する。
【0114】
[変形例8]
上記実施の形態では、1つのスピーカ12および1つのマイクロフォン13を設けるようにしたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、複数のスピーカを設けてもよいし、複数のマイクロフォンを設けてもよい。以下に、2つのスピーカおよび2つのマイクロフォンを設ける例について、詳細に説明する。
【0115】
図17は、本変形例に係るノイズ処理装置2の一構成例を表すものである。
図18は、ノイズ処理装置2の一動作例を表すものである。
【0116】
ノイズ処理装置2のノイズ処理においては、ノイズ源9からのノイズ音が伝わる空間に、マイクロフォン113,213およびスピーカ112,212が配置される。ノイズ源9から発せられたノイズ音は、空間内の1次経路P101を介してマイクロフォン113に到達するとともに、空間内の1次経路P102を介してマイクロフォン213に到達する。スピーカ112から発せられた生成音は、空間内の2次経路P211を介してマイクロフォン113に到達するとともに、空間内の2次経路P221を介してマイクロフォン213に到達する。スピーカ212から発せられた生成音は、空間内の2次経路P222を介してマイクロフォン213に到達するとともに、空間内の2次経路P212を介してマイクロフォン113に到達する。この例では、ノイズ処理装置2では、ノイズ低減ポイントPP1であるマイクロフォン113の周囲の空間、およびノイズ低減ポイントPP2であるマイクロフォン213の周囲の空間において、ノイズ音が低減される。ノイズ処理装置2は、例えば、より広い空間においてノイズ音を低減する用途や、例えば、人の左耳付近および右耳付近においてノイズ音を低減する用途に適用することができる。
【0117】
ノイズ処理装置2は、DA変換部111と、スピーカ112と、マイクロフォン113と、AD変換部114と、フィルタ115と、減算部116と、遅延部117A,117Bと、適応フィルタ118A,118Bと、加算部119と、フィルタ121と、遅延部122A,122Bと、適応アルゴリズム演算部123と、フィルタ124と、遅延部125A,125Bと、フィルタ126とを備えている。また、ノイズ処理装置2は、DA変換部211と、スピーカ212と、マイクロフォン213と、AD変換部214と、フィルタ215と、減算部216と、遅延部217A,217Bと、適応フィルタ218A,218Bと、加算部219と、フィルタ221と、遅延部222A,222Bと、適応アルゴリズム演算部223と、フィルタ224と、遅延部225A,225Bと、フィルタ226とを備えている。DA変換部111,211、スピーカ112,212、マイクロフォン113,213、AD変換部114,214、フィルタ115,215、減算部116,216、遅延部117A,217A、遅延部117B,217B、適応フィルタ118A,218A、適応フィルタ118B,218B、加算部119,219、フィルタ121,221、遅延部122A,222A、遅延部122B,222B、適応アルゴリズム演算部123,223は、上記実施の形態におけるDA変換部11、スピーカ12、マイクロフォン13、AD変換部14、フィルタ15、減算部16、遅延部17A、遅延部17B、適応フィルタ18A、適応フィルタ18B、加算部19、フィルタ21、遅延部22、遅延部22B、適応アルゴリズム演算部23にそれぞれ対応する。
【0118】
フィルタ115のフィルタ係数は、2次経路P211における伝達特性に応じた係数に設定される。フィルタ215のフィルタ係数は、2次経路P222における伝達特性に応じた係数に設定される。
【0119】
減算部116は、AD変換部114から供給された誤差信号S114から、フィルタ115から供給された信号S115、およびフィルタ226から供給された信号S226を減算することにより信号S116を生成するように構成される。フィルタ126は、FIRフィルタであり、加算部119から供給された信号に基づいて、所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うように構成される。フィルタ126のフィルタ係数は、2次経路P221における伝達特性に応じた係数に設定される。フィルタ124は、FIRフィルタであり、減算部116から供給された信号S116に基づいて、所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うように構成される。フィルタ124のフィルタ係数は、2次経路P221における伝達特性に応じた係数に設定される。遅延部125Aは、フィルタ124から供給された信号を遅延量tdAだけ遅延させるように構成される。遅延部125Bは、フィルタ124から供給された信号を遅延量tdBだけ遅延させるように構成される。適応アルゴリズム演算部123は、遅延部122A,122B,125A,125Bから供給された信号、およびAD変換部114,214から供給された誤差信号S114,S214に基づいて、負帰還動作を行うことにより、フィルタ係数KA1,KB1を生成するように構成される。具体的には、適応アルゴリズム演算部123は、遅延部122Aから供給された信号に含まれるデータ、遅延部125Aから供給された信号に含まれるデータ、AD変換部114,214から供給された誤差信号S114,S214に含まれるデータに基づいて、これらの誤差信号S114,S214に含まれる、ノイズ音に係る信号成分が小さくなるように負帰還動作を行うことにより、フィルタ係数KA1を生成する。適応フィルタ118Aは、このフィルタ係数KA1を用いてフィルタ処理を行う。また、適応アルゴリズム演算部123は、遅延部122Bから供給された信号に含まれるデータ、遅延部125Bから供給された信号に含まれるデータ、およびAD変換部114,214から供給された誤差信号S114,S214に含まれるデータに基づいて、これらの誤差信号S114,S214に含まれる、ノイズ音に係る信号成分が小さくなるように負帰還動作を行うことにより、フィルタ係数KB1を生成する。適応フィルタ118Bは、このフィルタ係数KB1を用いてフィルタ処理を行う。
【0120】
減算部216は、AD変換部214から供給された誤差信号S214から、フィルタ215から供給された信号S215、およびフィルタ126から供給された信号S126を減算することにより信号S216を生成するように構成される。フィルタ226は、FIRフィルタであり、加算部219から供給された信号に基づいて、所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うように構成される。フィルタ226のフィルタ係数は、2次経路P212における伝達特性に応じた係数に設定される。フィルタ224は、FIRフィルタであり、減算部216から供給された信号S216に基づいて、所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うように構成される。フィルタ224のフィルタ係数は、2次経路P212における伝達特性に応じた係数に設定される。遅延部225Aは、フィルタ224から供給された信号を遅延量tdAだけ遅延させるように構成される。遅延部225Bは、フィルタ224から供給された信号を遅延量tdBだけ遅延させるように構成される。適応アルゴリズム演算部223は、遅延部222A,222B,225A,225Bから供給された信号、およびAD変換部114,214から供給された誤差信号S114,S214に基づいて、負帰還動作を行うことにより、フィルタ係数KA2,KB2を生成するように構成される。具体的には、適応アルゴリズム演算部223は、遅延部222Aから供給された信号に含まれるデータ、遅延部225Aから供給された信号に含まれるデータ、およびAD変換部114,214から供給された誤差信号S114,S214に含まれるデータに基づいて、これらの誤差信号S114,S214に含まれる、ノイズ音に係る信号成分が小さくなるように負帰還動作を行うことにより、フィルタ係数KA2を生成する。適応フィルタ218Aは、このフィルタ係数KA2を用いてフィルタ処理を行う。また、適応アルゴリズム演算部223は、遅延部222Bから供給された信号に含まれるデータ、遅延部225Bから供給された信号に含まれるデータ、およびAD変換部114,214から供給された誤差信号S114,S214に含まれるデータに基づいて、これらの誤差信号S114,S214に含まれる、ノイズ音に係る信号成分が小さくなるように負帰還動作を行うことにより、フィルタ係数KB2を生成する。適応フィルタ218Bは、このフィルタ係数KB2を用いてフィルタ処理を行う。
【0121】
[その他の変形例]
また、これらの変形例のうちの2以上を組み合わせてもよい
【0122】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0123】
例えば、
図1に示したノイズ処理装置1の構成は、一例であり、例えば、さらに他の回路要素が追加されていてもよい。
【0124】
本明細書中に記載された効果はあくまで例示であり、本開示の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されない。よって、本開示に関して、他の効果が得られてもよい。
【0125】
さらに、本開示は、以下の態様を取り得る。
【0126】
(1)
電気信号である第1の信号を音に変換可能なスピーカと、
外音および前記スピーカから発せられた音を、電気信号である第2の信号に変換可能なマイクロフォンと、
前記第1の信号に対して所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことにより第3の信号を生成可能な第1の処理部と、
前記第2の信号から前記第3の信号を減算可能な減算部と、
前記減算部の出力信号を第1の遅延量だけ遅延させることが可能な第1の遅延部と、
前記第1の遅延部の出力信号に基づいて、第1のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことが可能な第1のフィルタと、
前記減算部の出力信号を第2の遅延量だけ遅延させることが可能な第2の遅延部と、
前記第2の遅延部の出力信号に基づいて、第2のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことが可能な第2のフィルタと、
前記第1のフィルタの出力信号および前記第2のフィルタの出力信号を加算することにより前記第1の信号を生成可能な加算部と、
前記減算部の出力信号に対して前記所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことが可能な第2の処理部と、
前記第2の処理部の出力信号を前記第1の遅延量だけ遅延させることが可能な第3の遅延部と、
前記第2の処理部の出力信号を前記第2の遅延量だけ遅延させることが可能な第4の遅延部と、
前記第3の遅延部の出力信号および前記第2の信号に基づいて前記第1のフィルタ係数を生成可能であり、前記第4の遅延部の出力信号および前記第2の信号に基づいて前記第2のフィルタ係数を生成可能な演算部と
を備えたノイズ処理装置。
(2)
前記演算部は、前記第2の信号に含まれる、前記外音に応じた信号成分が小さくなるように負帰還動作を行うことにより、前記第1のフィルタ係数および前記第2のフィルタ係数を生成可能である
前記(1)に記載のノイズ処理装置。
(3)
ユーザ操作を受け付けるユーザインタフェースと、
前記ユーザインタフェースからの指示に基づいて、前記第1の遅延量および前記第2の遅延量のうちの1以上の遅延量を設定可能な遅延設定部と
をさらに備えた
前記(1)または(2)に記載のノイズ処理装置。
(4)
前記演算部は、前記遅延設定部が前記1以上の遅延量を設定した場合に、前記第1のフィルタ係数および前記第2のフィルタ係数のうちの1以上をリセット可能である
前記(3)に記載のノイズ処理装置。
(5)
前記第2の信号に含まれる、前記外音に応じた信号成分を検出可能な検出部をさらに備え、
前記演算部は、前記検出部の検出結果に基づいて、前記信号成分の周期が所定量以上変化した場合に、前記第1のフィルタ係数および前記第2のフィルタ係数のうちの1以上をリセット可能である
前記(1)から(4)のいずれかに記載のノイズ処理装置。
(6)
前記演算部は、前記検出部の検出結果に基づいて、前記信号成分が所定量以上である場合に、前記第1のフィルタ係数および前記第2のフィルタ係数のうちの1以上を繰り返しリセット可能である
前記(5)に記載のノイズ処理装置。
(7)
前記演算部は、前記検出部の検出結果に基づいて、前記第1のフィルタ係数をリセット可能であり、その後に前記検出部の検出結果に基づいて、前記第2のフィルタ係数をリセット可能である
前記(5)に記載のノイズ処理装置。
(8)
前記第2の信号に含まれる、前記外音に応じた信号成分を検出可能な検出部をさらに備え、
前記演算部は、前記信号成分が小さくなるように負帰還動作を行うことにより、前記第1のフィルタ係数および前記第2のフィルタ係数を生成可能であり、前記検出部の検出結果に基づいて、前記信号成分の周期が所定量以上変化した場合に、前記第1のフィルタ係数を生成する前記負帰還動作における第1の制御パラメータ、および前記第2のフィルタ係数を生成する前記負帰還動作における第2の制御パラメータのうちの1以上を変更可能である
前記(1)から(7)のいずれかに記載のノイズ処理装置。
(9)
前記演算部は、前記第1の制御パラメータおよび前記第2の制御パラメータのうちの1以上を変更する際、前記第1のフィルタ係数および前記第2のフィルタ係数のうちの1以上をリセット可能である
前記(8)に記載のノイズ処理装置。
(10)
前記演算部は、前記第2の信号に含まれる、前記信号成分の周期が変化し続ける場合、または前記信号成分が所定量以上である場合に、前記第1の制御パラメータおよび前記第2の制御パラメータのうちの1以上を繰り返し変更するとともに、前記第1のフィルタ係数および前記第2のフィルタ係数のうちの1以上を繰り返しリセット可能である
前記(9)に記載のノイズ処理装置。
(11)
前記減算部の出力信号を第3の遅延量だけ遅延させることが可能な第5の遅延部と、
前記第5の遅延部の出力信号に基づいて、第3のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことが可能な第3のフィルタと、
前記第2の処理部の出力信号を前記第3の遅延量だけ遅延させることが可能な第6の遅延部と
をさらに備え、
前記加算部は、前記第1のフィルタの出力信号、前記第2のフィルタの出力信号、および前記第3のフィルタの出力信号を加算可能であり、
前記演算部は、さらに、前記第6の遅延部の出力信号および前記第2の信号に基づいて前記第3のフィルタ係数を生成可能である
前記(1)から(1)のいずれかに記載のノイズ処理装置。
(12)
前記演算部は、前記第1のフィルタ係数、前記第2のフィルタ係数、および前記第3のフィルタ係数に基づいて、前記第1のフィルタ、前記第2のフィルタ、および前記第3のフィルタのうちのいずれか1つをオフ状態にすることが可能である
前記(11)に記載のノイズ処理装置。
(13)
前記第2の信号に含まれる、前記外音に応じた信号成分を検出可能な検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記第1の遅延量および前記第2の遅延量のうちの1以上の遅延量を設定可能な遅延設定部と
をさらに備えた
前記(1)から(12)のいずれかに記載のノイズ処理装置。
(14)
スピーカが、電気信号である第1の信号を音に変換することと、
マイクロフォンが、外音および前記スピーカから発せられた音を電気信号である第2の信号に変換することと、
第1の処理部が、前記第1の信号に対して所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことにより第3の信号を生成することと、
減算部が、前記第2の信号から前記第3の信号を減算することと、
第1の遅延部が、前記減算部の出力信号を第1の遅延量だけ遅延させることと、
第1のフィルタが、前記第1の遅延部の出力信号に基づいて、第1のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことと、
第2の遅延部が、前記減算部の出力信号を第2の遅延量だけ遅延させることと、
第2のフィルタが、前記第2の遅延部の出力信号に基づいて、第2のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことと、
加算部が、前記第1のフィルタの出力信号および前記第2のフィルタの出力信号を加算することにより前記第1の信号を生成することと、
第2の処理部が、前記減算部の出力信号に対して前記所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことと、
第3の遅延部が、前記第2の処理部の出力信号を前記第1の遅延量だけ遅延させることと、
第4の遅延部が、前記第2の処理部の出力信号を前記第2の遅延量だけ遅延させることと、
演算部が、前記第3の遅延部の出力信号および前記第2の信号に基づいて前記第1のフィルタ係数を生成するとともに、前記第4の遅延部の出力信号および前記第2の信号に基づいて前記第2のフィルタ係数を設定することと
を含むノイズ処理方法。
(15)
スピーカが、電気信号である第1の信号を音に変換することと、
マイクロフォンが、外音および前記スピーカから発せられた音を電気信号である第2の信号に変換することと、
第1の処理部が、前記第1の信号に対して所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことにより第3の信号を生成することと、
減算部が、前記第2の信号から前記第3の信号を減算することと、
第1の遅延部が、前記減算部の出力信号を第1の遅延量だけ遅延させることと、
第1のフィルタが、前記第1の遅延部の出力信号に基づいて、第1のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことと、
第2の遅延部が、前記減算部の出力信号を第2の遅延量だけ遅延させることと、
第2のフィルタが、前記第2の遅延部の出力信号に基づいて、第2のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことと、
加算部が、前記第1のフィルタの出力信号および前記第2のフィルタの出力信号を加算することにより前記第1の信号を生成することと、
第2の処理部が、前記減算部の出力信号に対して前記所定のフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことと、
第3の遅延部が、前記第2の処理部の出力信号を前記第1の遅延量だけ遅延させることと、
第4の遅延部が、前記第2の処理部の出力信号を前記第2の遅延量だけ遅延させることと、
演算部が、前記第3の遅延部の出力信号および前記第2の信号に基づいて前記第1のフィルタ係数を生成するとともに、前記第4の遅延部の出力信号および前記第2の信号に基づいて前記第2のフィルタ係数を設定することと
をプロセッサに行わせるソフトウェアを含む
非一過性記録媒体。
【符号の説明】
【0127】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H,2…ノイズ処理装置、11,111,211…DA変換部、12,112,212…スピーカ、13,113,213…マイクロフォン、14,114,214…AD変換部、15,115,215…フィルタ、16,116,216…減算部、17A,17B,17C,117A,117B,217A,217B,225A,225B…遅延部、18A,18B,18C,118A,118B,218A,218B…適応フィルタ、19,39,119,219…加算部、21,121,221…フィルタ、22A,22B,22C,122A,122B,222A,222B…遅延部、23,33,43,53,63,65,73,83,123,223…適応アルゴリズム演算部、41…ユーザインタフェース、42,92…遅延設定部、44,54,75…リセット処理部、52,62,82…周期変化検出部、64,74…パラメータ設定部、72…長周期ノイズ検出部、84…適応フィルタ制御部、91…周期検出部、124,224…フィルタ、125A,125B,225A,225B…遅延部、126,226…フィルタ、KA,KA1,KA2,KB,KB1,KB2,KC…フィルタ係数、PP…ノイズ低減ポイント、N1…短周期ノイズ、N2A,N2B,N2C…長周期ノイズ、S11,S15,S16,S17A,S17B,S17C,S18A,S18B,S18C,S19,S21,S22A,S22B、S22C…信号、S13,S14…誤差信号、TN1,TN2A,TN2B,TN2C…周期、tdA,tdB,tdC…遅延量、W1…ノイズ音、W2…生成音、P1,P101,P102…1次経路、P2,P211,P212,P221,P222…2次経路。