(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135569
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/537 20060101AFI20240927BHJP
A61F 13/512 20060101ALI20240927BHJP
A61F 13/495 20060101ALI20240927BHJP
A61F 13/534 20060101ALI20240927BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61F13/537
A61F13/512
A61F13/495
A61F13/534 100
A61F13/535 100
A61F13/535 200
A61F13/537 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046327
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 彩
(72)【発明者】
【氏名】高橋 彩
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA01
3B200BB17
3B200CA03
3B200DA14
3B200DB05
3B200DB12
3B200DB23
3B200DC04
3B200DC07
(57)【要約】
【課題】軟便を効率的に吸収することができる吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収性物品は、厚さ方向において、着用者の肌に近い側から順に、トップシート10、ろ過シート20、第1吸収体30A、吸水シート(SAPシート)50、第2吸収体30Bが積層され、トップシート10は、多数の開孔11が形成され、ろ過シート20は、トップシート10に対向する面から反対の面に向けて積層方向に凹んだ凹部15が前後方向及び幅方向に沿って間隔を隔てて形成されるとともに、凹部15に隣接する部分は非凹部16とされ、SAPシート50は、高吸収性樹脂(SAP)を液透過性シートで厚さ方向に挟んで形成され、かつ、平面視で凹部15に重なる領域に比べて非凹部16に、高吸収性樹脂が相対的に多く配置されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向において、着用者の肌に近い側から順に、トップシート、ろ過シート、第1吸収体、吸水シート、第2吸収体が積層され、
前記トップシートは、多数の開孔が形成され、
前記ろ過シートは、前記トップシートに対向する面から反対の面に向けて積層方向に凹んだ凹部が前後方向及び幅方向に沿って間隔を隔てて形成されるとともに、前記凹部に隣接する部分は非凹部とされ、
前記吸水シートは、高吸収性樹脂を液透過性シートで厚さ方向に挟んで形成され、かつ、平面視で前記凹部に重なる領域に比べて前記非凹部に重なる領域に、前記高吸収性樹脂が相対的に多く配置されている吸収性物品。
【請求項2】
前記第1吸収体は、凹部と非凹部とが形成され、
前記ろ過シートの凹部は前記第1吸収体の凹部に倣うことで形成され、
前記ろ過シートの非凹部は前記第1吸収体の非凹部に倣うことで形成されている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記凹部と、前記吸水シートのうち前記高吸収性樹脂が相対的に多く配置されている部分は、平面視で格子状に交互に配置されている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記第1吸収体は、平面視で前記ろ過シートの前記非凹部に重なる部分に、前記トップシート側に突出する突出部が形成されている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記凹部は、中央部分が前記積層方向において前記トップシート側に凸となる底面を有している、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸水シートは、前記高吸収性樹脂が相対的に多く配置されている領域と前記高吸収性樹脂が相対的に少なく配置されている領域が前後方向において交互に配置されている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸水シートは、前記積層方向に2枚以上重ねて配置され、かつ、それぞれの前記吸水シートは、平面視で前記凹部に重なる領域に比べて前記非凹部に重なる領域に、前記高吸収性樹脂が相対的に多く配置されている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記第2吸収体は、平面視で前記凹部に重なる領域に比べて前記非凹部に重なる領域に、前記高吸収性樹脂が相対的に多く配置されている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつの内側に重ねて使用される補助的な吸収性物品であるインナーパッドとして、主に軟便の吸収を目的とした軟便パッドが知られている。一般的なインナーパッドは、水分である尿を主に吸収することを目的として構成されている。一方、軟便は固形分を含むため、一般的なインナーパッドでは、固形分がトップシート上に残留し易い。そして、固形分がトップシート上に残留すると、固形分と肌との接触が長く継続し、肌のトラブルが発生するおそれがある。
【0003】
そこで、軟便に適したインナーパッド(以下、軟便パッドという。)は、着用者の肌に直接触れるトップシートに、軟便の固形分を下層に移行させるための大きな孔が複数形成された開孔シートが使用されている。開孔シートを備えた軟便パッドは、軟便の固形分を、開孔シートの開孔を通して下層のろ過シートに移行させることができる。この結果、軟便パッドは、肌に接触するシート上に固形分が留まるのを抑制して、肌のトラブルが発生するのを防止又は抑制することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1で開示された軟便パッドは、さらに、ろ過シートに、部分的に凹ませた凹部を形成し、軟便を凹部に収容することで、軟便を拡散して吸収する速度を高めるとともに、軟便の保持性を高めることができる。
【0005】
また、トップシートの下層に吸収体を配置し、吸収体の下層に拡散層を配置したおむつにおいて、トップシートと吸収体に、軟便等の粘性の高い排泄物を通過させる貫通孔を形成し、その貫通孔を通過して拡散層に到達した排泄物を、拡散層で拡散させることで、吸収体の背面側(被肌面側)から吸収体に吸収させる技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-153897号公報
【特許文献2】特開2016-112232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先行技術文献1の軟便パッドは、排泄量が多い場合や、繰り返しの排泄があると、凹部において軟便を充分に吸収することができないおそれがある。この問題は、先行技術文献2のおむつにおいても同様に起こり得る。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、軟便を効率的に吸収することができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、厚さ方向において、着用者の肌に近い側から順に、トップシート、ろ過シート、第1吸収体、吸水シート、第2吸収体が積層され、前記トップシートは、多数の開孔が形成され、前記ろ過シートは、前記トップシートに対向する面から反対の面に向けて積層方向に凹んだ凹部が前後方向及び幅方向に沿って間隔を隔てて形成されるとともに、前記凹部に隣接する部分は非凹部とされ、前記吸水シートは、高吸収性樹脂を液透過性シートで厚さ方向に挟んで形成され、かつ、平面視で前記凹部に重なる領域に比べて前記非凹部に重なる領域に、前記高吸収性樹脂が相対的に多く配置されている吸収性物品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る吸収性物品によれば、軟便を効率的に吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】軟便パッドの内面側の平面視を示す平面図である。
【
図2】
図1に示した軟便パッドのA-A線に沿った面による厚さ方向Dの断面を示す断面図である。
【
図3】
図1に示した軟便パッドのB-B線に沿った面による厚さ方向Dの断面を示す断面図である。
【
図4】軟便パッドの凹部の詳細を示す、
図3相当の断面図である。
【
図5】吸水シートのSAP部の配置パターンを示す模式的な平面図である。
【
図6】軟便パッドの作用を説明する
図4相当の模式図であり、SAP部の膨潤前の状態を示す。
【
図7】軟便パッドの作用を説明する
図4相当の模式図であり、SAP部の膨潤後の状態を示す。
【
図8】SAP部の膨潤後の肛門対向領域の平面図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態(実施形態2)の軟便パッドの
図6相当の断面図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態(実施形態3)の軟便パッドの平面視を示す、
図1相当の平面図である。
【
図11】本発明の第4の実施形態(実施形態4)の軟便パッドを示す断面の模式図であり、SAP部の膨潤前の状態を示す。
【
図12】本発明の第4の実施形態の軟便パッドを示す断面の模式図であり、SAP部の膨潤後の状態を示す。
【
図13】本発明の第5の実施形態(実施形態5)の軟便パッドを示す断面の模式図であり、SAP部及び高目付部の膨潤前の状態を示す。
【
図14】本発明の実施形態5の軟便パッドを示す断面の模式図であり、SAP部及び高目付部の膨潤後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る吸収性物品の実施形態は、以下において、図面を参照して説明される。
【0013】
<実施形態1>
[構成]
図1は軟便パッド100の内面側の平面視を示す平面図、
図2は
図1に示した軟便パッド100のA-A線に沿った面による厚さ方向Dの断面を示す断面図、
図3は
図1に示した軟便パッド100のB-B線に沿った面による厚さ方向Dの断面を示す断面図、
図4は軟便パッド100の凹部15の詳細を示す、
図3相当の断面図、
図5は吸水シート50の高吸収樹脂(SAP)が重点的に配置されたSAP部51の配置パターンを示す模式的な平面図である。
【0014】
図示の軟便パッド100は、本発明に係る吸収性物品の一実施形態である。軟便パッド100は、使い捨ておむつ(以下、おむつという。)に重ねて使用され、おむつが着用者に着用された状態において、おむつの、着用者の肌面に近い側である内面側に、重ねて使用される。軟便パッド100は、特に、着用者の軟便を吸収するのに適したインナーパッドである。なお、軟便パッド100は、使い捨ておむつに重ねて使用されるものに限定されず、使い捨てではないおむつ、例えば布タイプのおむつ、に重ねて使用されてもよい。
【0015】
軟便パッド100は、
図1に示すように、腹側部110と股下部120と背側部130とが長さ方向Lに連なって形成されている。軟便パッド100は、
図1に示した平面図において、長さ方向(前後方向)Lに直交する方向を幅方向Wとする。腹側部110は、おむつの着用者の前面である腹側の主に下腹部を覆う部分に相当し、股下部120は着用者の主に股間部を覆う部分に相当し、背側部130は着用者の主に臀部を覆う部分に相当する。
【0016】
なお、軟便パッド100は、背側部130と股下部120との間や、腹側部110と股下部120との間に、境界や構造的な差異があるわけではなく、軟便パッド100の領域を特定して説明する便宜上、おおまかな3つの部分として、背側部130、股下部120及び腹側部110に分けているに過ぎない。
【0017】
軟便パッド100は、
図2に示すように、着用者の肛門に対向する部分を含む周辺領域(肛門対向領域)を除いて、厚さ方向Dにおいて、トップシート10、ろ過シート20、吸収体30及びバックシート40が、この順序で積層して形成されている。また、吸収体30は、ろ過シート20側に位置する第1吸収体層30Aと、バックシート40側に位置する第2吸収体層30Bにより構成された2層構造である。なお、肛門対向領域以外の部分では、吸収体30は、単層構造であってもよい。トップシート10は厚さ方向Dにおいて着用者の肌面に最も近い側(以下、内側又は肌面側ということもある。)に配置され、バックシート40は厚さ方向Dにおいて着用者の肌面から最も遠い側(以下、外側又は非肌面側ということもある。)に配置されている。
【0018】
また、軟便パッド100は、
図3に示すように、肛門対向領域において、厚さ方向Dにおいて、トップシート10、ろ過シート20、第1吸収体層30A、吸水シート50(以下、SAPシート50という)、第2吸収体層30B及びバックシート40が、この順序で積層して形成されている。つまり、軟便パッド100は、肛門対向領域では、それ以外の領域には設けられていないSAPシート50が、第1吸収体層30Aと第2吸収体層30Bとの間に設けられている。
【0019】
軟便パッド100は、幅方向Wの両側部において、トップシート10の幅方向Wの両側部を、トップシート10の
図2の上方(内面側)から覆う立体ギャザー60がそれぞれ設けられている。立体ギャザー60は幅方向Wの外側端部がバックシート40に接合され、幅方向Wの内側端部に糸ゴム61が固定されていて、糸ゴム61の弾性力によって、幅方向Wの内側、厚さ方向Dの内面側に立ち上がるように形成されている。立体ギャザー60は液不透過性である。
【0020】
(トップシート)
トップシート10は、液不透過性のシートであり、
図1に示すように、厚さ方向Dに貫通した多数の開孔11が形成されている。開孔11は、トップシート10上に排出された軟便のうち固定状の成分(固形分)を、厚さ方向Dにおいてトップシート10の下層に通過させる。開孔11は、例えば、幅方向Wの寸法に比べて長さ方向Lの寸法が長い長円状に形成されている。開孔11の長円は、一例として、幅方向Wの寸法が3[mm]、長さ方向Lの寸法が4[mm]である。開孔11の具体的な寸法は、この例に限定するものではなく、軟便の固形分を、ある程度、通過し得る程度の寸法であれば、他の寸法で形成されてもよい。なお、トップシート10は、液透過性のシートであってもよい。
【0021】
また、開孔11は、長さ方向Lに長い長円状に限定するものでもなく、幅方向Wに長い長円であってもよいし、長さ方向Lと幅方向Wとの寸法が等しい真円であってもよいし、また、円に限定されず、ひし形や矩形やその他の多角形であってもよい。
【0022】
トップシート10は、開孔11が、長さ方向Lと幅方向Wとに対してそれぞれ傾いた斜め方向に並んで形成されている。つまり、多数の開孔11は、
図1に示すように、千鳥状に配列されている。なお、トップシート10は、開孔11が千鳥状に配列されたものに限定されず、長さ方向Lと幅方向Wとに並ぶ格子状に配列されたものであってもよい。
【0023】
なお、開孔11が千鳥状に配列されたトップシート10は、開孔11が格子状に配列されたトップシートに比べて、開孔11を形成する密度を高めることができ、軟便を開孔11に導き易くすることができる。
【0024】
(ろ過シート)
ろ過シート20は、トップシート10の直下に配置されている。ろ過シート20は、液透過性である。ろ過シート20は、トップシート10の開孔11を通過した軟便から固形分を絡めとることで濾し取り、固形分が濾し取られた後に残った液状成分を下層に通過させる、ろ過作用を有する。ろ過シート20は、厚さ方向Dの寸法であるかさ高が、例えば5~20[mm]程度に形成されている。
【0025】
ろ過シート20は、一定の厚みを有するシート状の部材であり、第1吸収体層30Aの凹凸形状に倣って断面視で凹凸状をなしている。具体的には、
図1に示すように、ろ過シート20は股下部120から背側部130に跨る部分に、第1吸収体層30Aの凹部に倣うことで形成される凹部15と、第1吸収体層30Aの非凹部に倣うことで形成される非凹部16とを有している。この凹部15及び非凹部16が形成されている部分は、着用者がおむつを着用した際の肛門対向領域であるとともに、SAPシート50と重なる領域である。凹部15はそれぞれ、
図3,4の断面図に示すように、トップシート10に対向する表面(着用者の肌に接する肌面側(内側面))から、第1吸収体層30Aに対向する、反対の裏面(着用者の肌から遠い非肌面側(外面側))に向けて、積層方向である厚さ方向Dに凹んで形成されている。
【0026】
非凹部16は、凹部15に隣接して形成される部分であり、凹部15よりも相対的に厚さ方向Dにおいて高くなっている部分である。非凹部16は、ろ過シート20のうち凹部15以外の部分である。
【0027】
ろ過シート20には、凹部15が、長さ方向L(前後方向)及び幅方向Wに沿って、互いに間隔を隔てて形成されている。具体的には、複数の凹部15は、行方向(幅方向W)において互いに前後に重ならないように、また列方向(長さ方向L)において互いに左右に重ならないように、平面視で千鳥状に配置されている。このように、連続する行及び列において凹部15を前後あるいは左右にずらして配置することにより、隣接する凹部15同士を一定の間隔に保ち、SAP部51が配置されるスペースを確保することができる。なお、形成されている凹部15の大きさ、凹部15同士の間隔及び凹部15の個数は、特に限定されるものではない。
【0028】
なお、トップシート10は、ろ過シート20の表面に沿っているため、凹部15及び非凹部16の凹凸形状に沿ってトップシート10も断面視で凹凸形状を呈している。凹部15は、トップシート10に形成された開孔11に比べて十分大きい寸法であるため、1つの凹部15の表面には、多数の開孔11が面した状態である。
【0029】
(吸収体)
図2に示すように、吸収体30は第1吸収体層30Aと、第1吸収体層30Aの下に配置される第2吸収体層30Bとを有している。第1吸収体層30Aは、吸収部材31Aと包装体32Aとを備えている。また、第2吸収体層30Bは、吸収部材31Bと包装体32Bとを備えている。各吸収部材31A、31Bは、繊維質のパルプに、粒状のSAPを絡めて配置したものであり、SAPが、接した水分を吸収して膨潤することで、水分を保持する。包装体32Aは吸収部材31Aを包み、包装体32Bは吸収部材31Bを包む。各包装体32A、32Bは、例えばクレープ紙等の液透過性の材料で形成されている。なお、第1吸収体層30Aは、吸収部材31Aのみで形成され、包装体32Aで包まれていなくてもよい。また、第2吸収体層30Bは、吸収部材31Bのみで形成され、包装体32Bで包まれていなくてもよい。なお、各吸収部材31A、31Bは、繊維質のパルプのみで形成され、SAPを含んでいなくてもよい。
【0030】
図4に示すように、第1吸収体層30AはSAPシート50上に配置され、平面視で非凹部16及びSAP部51と重なる位置にトップシート10側に突出する突出部30Cを有している。即ち、第1吸収体層30Aは、厚さ方向Dにおいて非凹部16とSAP部51との間に突出部30Cを有し、幅方向Wにおける突出部30C間の領域が凹部として形成されている。第2吸収体層30BはSAPシート50の下方側に配置され、上面はほぼ平坦な状態に形成されている。
【0031】
(吸水(SAP)シート)
図5は、凹部15及び非凹部16とSAP部51との位置関係を示す模式図である。SAPシート50は、粒状の高吸収性樹脂(SAP;SUPERABSORBENT POLYMERS)を、厚さ方向Dの内面側及び外面側からそれぞれ、液透過性の不織布で形成された液透過性シートで挟んで、シート状に形成したものである。このSAPシート50は、SAPが重点的に配置されたSAP部51を有している。つまり、SAPシート50は、単位面積当たりのSAPの量が相対的に多く配置されたSAP部51と、SAP部51に比べて単位面積当たりのSAPの量が少ないか又はSAPが全く配置されていない非SAP部52とが、平面視において分布して形成されている。なお、SAPは、接した水分を吸収して膨潤することで、水分を保持する。
【0032】
図5に示すように、凹部15とSAP部51は、ろ過シート20の前後方向(長手方向)及び幅方向において交互に配置されている。これは、複数の凹部15が千鳥状に配置され、ろ過シート20のうち凹部15と隣接した非凹部16にSAP部51を配置したためである。このように、SAP部51は非凹部16と重なる位置にのみ配置され、肛門対向領域において凹部15とSAP部51が交互に配置され、全体として平面視で格子状の配置パターンを形成している。
【0033】
図5には、3行5列の仮想的な格子点の位置に凹部15あるいはSAP部51のいずれかが交互に配置されている例を示すが、凹部15とSAP部51の配置はこの例に限られない。例えば、凹部15及びSAP部51が、3行5列以外の行列パターンにより配置されてもよい。但し、軟便及び水分の吸収効率を考慮すれば、前後方向及び幅方向のいずれの方向にも、凹部15とSAP部51が隣接した状態で1ヶ所以上ずつ配置されていることが望ましい。
【0034】
なお、このようなSAP部51と非SAP部52との領域の仕切りは、内面側の液透過性シートと外面側の液透過性シートとを厚さ方向Dに接合することによって、容易に形成することができる。SAPシート50が、非SAP部52を、SAPが全く配置されていない領域として形成されている場合、非SAP部52は、内面側の液透過性シートと外面側の液透過性シートとが重ね合わされただけの領域となる。
【0035】
軟便パッド100に用いられているSAPシート50は、
図4の断面図及び
図5の平面図に示すように、平面視で非凹部16に重なる領域にSAP部51が配置され、凹部15に重なる領域には、SAP部51が配置されずに、非SAP部52が配置されている。即ち、厚さ方向Dにおいて凹部15に重なる領域に比べて非凹部16に重なる領域に高吸収性樹脂が相対的に多く配置されている。
【0036】
なお、本実施形態の軟便パッド100におけるSAP部51は、平面視の外形輪郭が
図5に示すように楕円形であるが、本発明に係る吸収性物品におけるSAPシート50のSAP部の外形輪郭は、楕円形に限定されず、円形でもよいし、矩形でもよいし、多角形でもよいし、その他の形状であってもよい。
【0037】
ただし、後述するように、本発明に係る吸収性物品は、SAP部を膨潤させて、厚さ方向Dのかさ高を高くすることが好ましい。従って、本発明に係る吸収性物品は、個々の非凹部16に、平面視で複数個の小さいSAP部を配置したものよりも、膨潤した状態での厚さ方向Dのかさ高を高くすることができる単一のSAP部を配置したものであることが好ましい。
【0038】
(バックシート)
バックシート40は液不透過性であり、軟便パッド100の内面側に排出された尿や、軟便の液状成分が、厚さ方向Dにおいてバックシート40よりも外面側に浸透して漏れるのを防止する。
【0039】
[作用]
図6,7は軟便パッド100の作用を説明する
図4相当の模式図であり、
図6はSAP部51の膨潤前の状態を示し、
図7はSAP部51の膨潤後の状態を示す。
【0040】
軟便パッド100は、使い捨ておむつの内側に、トップシート10を着用者の肌に向けた状態(バックシート40を使い捨ておむつの内面に向けた状態)で装着される。これにより、軟便パッド100は、着用者に装着された状態で、トップシート10が着用者の肌に接した状態で使用される。
【0041】
着用者が排泄した軟便Xは、最初、軟便パッド100のトップシート10が受け止めるが、
図6の矢印で示すように、股下部120と背側部130とに跨って形成された凹部15に移行する。そして、軟便Xのうち固形分は、凹部15の底面や周面に配置されているトップシート10の開孔11を通って、下層であるろ過シート20に移行する。軟便Xの液状成分は、固形分とともに開孔11を通ってろ過シート20に移行する他、トップシート10の開孔11以外の部分も通ってろ過シート20に移行する。
【0042】
ろ過シート20は、そのろ過作用によって、軟便Xの固形分を濾し取ることで固形分を保持し、軟便Xの液状成分を拡散して通過させる。ろ過シート20を通過した軟便Xの液状成分は、ろ過シート20の下層のSAPシート50に到達する。
【0043】
SAPシート50に到達した軟便Xの液状成分のうち、平面視で非凹部16と重なる位置に配置されたSAP部51に到達した液状成分は、SAP部51のSAPに吸収されて保持される。このとき、SAP部51のSAPは、
図7に示すように、液状成分の吸収によって膨潤する。液状成分は、このSAPによって保持される。
【0044】
そして、SAP部51は、膨潤による体積の増大によって、第1吸収体層30Aの突出部30C及びろ過シート20の非凹部16の底の部分を、厚さ方向Dの内面側に押し上げる。突出部30C及び非凹部16の底の部分が厚さ方向Dの内面側に押し上げられる過程において、凹部15の底面積はほぼ一定であり、凹部15の底の部分と非凹部16の先端の部分との高低差が
図6のH1から
図7のH2へと増加する。即ち、凹部15の底面積は不変であるとともに凹部15の高さのみが増加するため、凹部15の体積はH1とH2との差分だけ増加する。従って、凹部15が収容し得る軟便Xの収容量が増加するため、凹部15に軟便Xが連続的に供給された場合でも、軟便Xを効率的に吸収することができる。
【0045】
このように、本実施形態の軟便パッド100は、軟便Xを凹部15で収容することで、着用者の肌面との接触機会を減らすことができる。そして、軟便パッド100は、凹部15に収容された軟便Xの固形分を、開孔11を通じてろ過シート20に移行させることができる。さらに、軟便パッド100は、ろ過シート20を通過した液状成分によって凹部15に隣接する非凹部16に配置されたSAP部51のSAPを膨潤させることで、非凹部16の高さを増加させて凹部15の体積を増加させることができる。
【0046】
この結果、本実施形態の軟便パッド100は、同じ部位に軟便Xが繰り返して排出されたり、量の多い軟便Xが排出されたりした場合も、凹部15の収容量を増加させることができるため、軟便Xを効率的に吸収することができる。また、非凹部16の高さが増加することにより、肌と軟便Xとの接触の機会を減らすことができる。
【0047】
なお、SAP部51の膨潤に伴い、突出部30C及び非凹部16も山型に膨潤する。即ち、非凹部16のうち、SAP部51の中央部分に対応する部分が最も増加量が大きく、中央部分から離れるに従い、非凹部16の高さは減少する。これにより、平面視でSAP部51と重なる位置の非凹部16間に、新たに上側に窪んだ細溝状の部分が生じることになる。その結果、
図8に示すように、凹部15同士を連結する新たな通路として機能する追加凹部18が形成される。なお、排出される軟便Xの量が多ければ多いほどSAP部51もその分膨潤するため、追加凹部18の容量も増加する。追加凹部18は、一番近い位置のSAP部51同士を最短距離で結ぶ位置に直線上の溝として形成される。
【0048】
このように、SAP部51の膨潤に伴い、既に存在していた凹部15の収容量が増大するだけでなく、凹部15間に新たに追加凹部18が形成される。従って、軟便Xを収容できる空間をそれだけ増加させることができる。
<実施形態2>
【0049】
図9は、本発明の第2の実施形態(実施形態2)の軟便パッド200の断面図である。実施形態2では、凹部15は中央部分が積層方向においてトップシート10側に凸となる底面15aを有している。具体的には、
図9に示すように、断面視においてSAP部51間に位置する凹部15のうち左右方向における中央部分が上側に凸となる山型の形状となっている。
【0050】
底面15aにおける中央部分が周辺部分よりも相対的に高いことにより、排出された軟便Xが凹部15に収容された場合、凹部15の中央部以外の周辺部分に軟便Xに含まれる水分が優先的に供給される。即ち、凹部15の前後あるいは左右に隣接するSAP部51側に優先的に水分が供給される。従って、底面15aが平坦に形成されている場合と比較して、より早くSAP部51を膨潤させて凹部15の体積を増加させることにより、吸収効率を向上させることができる。
<実施形態3>
【0051】
図10は、本発明の第3の実施形態(実施形態3)の軟便パッド300の平面視を示す、
図1相当の平面図である。
【0052】
図10に示すように、各行(横方向)及び各列(縦方向)において、凹部15が間隔を隔てて形成され、凹部15間の非凹部16と積層方向において重なる位置にSAP部51が配置されている。具体的には、SAPシート50が配置された領域上の5行5列の25個の仮想的な格子点において、凹部15とSAP部51が交互に配置され、全体として格子状の配置パターンを形成している。
【0053】
本実施形態では、肛門対向領域において、SAP部51が配置されている場所に応じて単位面積当たりのSAPの量を変化させる。具体的には、1,3,5行目に配置されているSAP部51のSAPの量は、2,4行目に配置されているSAP部51のSAPの量よりも相対的に多い。このように、前後方向において、高吸収性樹脂が相対的に多く配置されている領域と前記高吸収性樹脂が相対的に少なく配置されている領域を交互に配置する。なお、
図10中、SAPの量の多少は、濃淡(吸収量が多い方が濃い)により示している。
【0054】
軟便Xがろ過シート20に移行した場合、SAPの量が多く配置されている領域はSAPの量が少なく配置されている領域と比較して、SAP部51はより膨潤しやすくなる。SAP部51の膨潤に伴い、肛門対向領域において非凹部16のかさ高が増加することにより、軟便Xの拡散方向を調整することができる。このように、SAP部51の単位面積当たりのSAPの量を増減させることにより、SAP部51の膨潤高さを変化させて軟便Xの移動方向を調整することができる。
【0055】
また、単位面積当たりのSAPの量が相対的に多い領域は、単位面積当たりのSAPの量が相対的に少ない領域よりも相対的に高くなることから、肌と軟便Xとの接触面積を減少させたい領域においてSAP部51のSAPの量を多くすればよい。特に、仙骨に対応する領域において単位面積当たりのSAPの量を増加させることにより、スキントラブルの原因となる肌と軟便Xとの接触の機会を減少させることができる。
【0056】
なお、軟便Xの拡散を防止するために、SAPシート50における周辺部分のSAP部51のSAPの量をそれ以外の部分のSAP部51のSAPの量よりも増加させてもよい。このようにすることで、SAPシート50の周辺部分が防波堤として機能する。なお、各行あるいは列に配置される凹部15あるいはSAP部51の個数は、特に限定されるものではなく、例示した5行あるいは5列以外の配置であってもよい。
<実施形態4>
【0057】
図11,12は本発明の第4の実施形態(実施形態4)の軟便パッド400を示す断面の模式図であり、
図11はSAP部51,71の膨潤前の状態を示し、
図12はSAP部51,71の膨潤後の状態を示す。
【0058】
実施形態4の軟便パッド400は、本発明に係る吸収性物品の一実施形態であり、特に、軟便Xの吸収に適したものである。実施形態1の軟便パッド100は、SAPシート50が1枚であるが、実施形態4の軟便パッド400は、
図11,12に示すように、SAPシート50に、別のSAPシート70を厚さ方向Dに重ねて配置したものである。
【0059】
軟便パッド400は、2枚重ねのSAPシート50,70を備えた点が異なる以外は、1枚のSAPシート50だけを備えた軟便パッド100と同じである。従って、実施形態4の軟便パッド400については、SAPシート50,70を除いた構成、効果の説明を省略する。
【0060】
実施形態4の軟便パッド400は、軟便パッド100におけるSAPシート50と吸収体30との間に、SAPシート50とは別のSAPシート70を積層して備えた構成である。SAPシート70は、SAPシート50と同様に、粒状のSAPを、厚さ方向Dの内面側及び外面側からそれぞれ、液透過性の不織布で形成された液透過性シートで挟んで、シート状に形成したものである。
【0061】
このSAPシート70も、SAPシート50と同様、
図11に示すように、SAPが重点的に配置されたSAP部71を有している。つまり、SAPシート70は、単位面積当たりのSAPの量が相対的に多く配置されたSAP部71と、SAP部71に比べて単位面積当たりのSAPの量が少ないか又はSAPが全く配置されていない非SAP部72とが、平面視において分布して形成されている。そして、SAPシート70のSAP部71は、平面視で突出部30C、非凹部16及びSAPシート50のSAP部51と重なるように分布して形成されている。
【0062】
なお、
図11において、軟便パッド400におけるSAPシート70のSAP部71は、SAPシート50のSAP部51よりも大きく(平面視では広く)形成されているが、SAP部71はSAP部51と同じ大きさであってもよいし、SAP部51よりも小さくてもよい。ただし、軟便パッド400は、SAP部71とSAP部51との少なくとも一部同士が、平面視で重なる配置であることが必要である。
【0063】
本実施形態の軟便パッド400は、凹部15に軟便Xを受容する。凹部15に受容された軟便Xは、凹部15におけるトップシート10の開孔11を通じてろ過シート20に移行し、軟便Xの液状成分が、SAPシート50のSAP部51、SAPシート70のSAP部71に到達する。これにより、液状成分が触れたSAP部51及びSAP部71は、液状成分を吸収して、
図12に示すようにそれぞれ膨潤する。
【0064】
この結果、軟便パッド400の、SAP部51とSAP部71とが平面視で重ねて配置された部分は、
図12に示すように、SAPシート70の位置を基準として、厚さ方向Dに高くなる。即ち、SAP部51とSAP部71の膨潤に伴い、突出部30C及び非凹部16も山型に膨潤する。これにより、軟便パッド400は
図12に示すように、凹部15よりも厚さ方向Dに高さH3だけ盛り上がった状態となる。
【0065】
なお、上述したように、軟便パッド400におけるSAPシート70のSAP部71の、SAP部51に対する大きさについて限定は無いが、SAPシート50のSAP部51については、比較的小さく形成することが好ましい。SAP部51を比較的小さく形成した軟便パッド400は、凹部15が塞がれて盛り上がったときの盛り上がりの輪郭の、幅方向Wに対する傾斜角度が、SAP部51を相対的に大きく形成した場合に比べて大きくなり、その盛り上がりに排出された後続の軟便Xを、その盛り上がりから落下させ易くすることができるからである。
【0066】
また、本実施形態の軟便パッド400は、SAPシート50とSAPシート70という2枚のSAPシートを重ねて、SAP部51とSAP部71とを平面視で重なるように配置したものであるが、本発明に係る吸収性物品は、3枚以上のSAPシートを重ねて、これら3枚以上のSAPシートのSAP部同士を平面視で重なるように配置してもよい。
【0067】
<実施形態5>
図13,14は本発明の第5の実施形態(実施形態5)の軟便パッド500を示す断面の模式図であり、
図13はSAP部51及び高目付部37の膨潤前の状態を示し、
図14はSAP部51及び高目付部37の膨潤後の状態を示す。
【0068】
図示の軟便パッド500は、本発明に係る吸収性物品の一実施形態であり、特に、軟便Xの吸収に適したものである。軟便パッド500は、実施形態4の軟便パッド400におけるSAPシート70に代えて、
図13に示すように、第2吸収体層30Bの、平面視で突出部30C、非凹部16及びSAPシート50のSAP部51に重なる部分を、単位面積当たりのSAPの量を相対的に多く含んだ高目付部37としたものである。
【0069】
そして、軟便パッド500は、上述したSAPシート70と第2吸収体層30Bとが異なる以外は、軟便パッド400と同じである。従って、実施形態5の軟便パッド500については、第2吸収体層30Bを除いた構成、効果の説明を省略する。
【0070】
第2吸収体層30Bは、SAPが重点的に配置された高目付部37を有している。つまり、第2吸収体層30Bは、他の領域に比べて単位面積当たりのSAPの量が相対的に多く配置された高目付部37を有している。そして、第2吸収体層30Bの高目付部37は、平面視でSAPシート50のSAP部51と重なるように、換言すれば平面視でろ過シート20の非凹部16と重なるように分布して形成されている。
【0071】
本実施形態の軟便パッド500は、凹部15に軟便Xを受容する。凹部15に受容された軟便Xは、凹部15におけるトップシート10の開孔11を通じてろ過シート20に移行し、軟便Xの液状成分が、SAPシート50のSAP部51、第2吸収体層30Bの高目付部37に到達する。これにより、液状成分が触れたSAP部51及び高目付部37は、液状成分を吸収して、
図14に示すようにそれぞれ膨潤する。
【0072】
これにより、軟便パッド500は、SAP部51の膨潤と高目付部37の膨潤との重なりで、凹部15よりも厚さ方向Dに高さH4だけ盛り上がった状態となる。即ち、SAP部51とSAP部71の膨潤に伴い、突出部30C及び非凹部16も山型に膨潤する。
【0073】
従って、軟便パッド500は、トップシート10の同じ部位に繰り返し排出される軟便Xを、盛り上がった凹部15以外の他の凹部15に、より速く移行させることができ、軟便Xの拡散性をさらに高め、軟便Xを一層効率的に吸収することができる。
【0074】
上述した本発明に係る吸収性物品の各実施形態1~5については、2つ以上の形態を組み合わせて構成してもよく、そのように2つ以上の形態が組み合わされた実施形態も、本発明に係る吸収性物品の実施形態である。
【符号の説明】
【0075】
10 トップシート
11 開孔
15 凹部
16 非凹部
20 ろ過シート
30 吸収体
50 吸水シート(SAPシート)
51 SAP部
100 軟便パッド(吸収性物品)
D 厚さ方向
L 長さ方向
W 幅方向
X 軟便