(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135571
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】分草装置及び収穫機械
(51)【国際特許分類】
A01D 63/00 20060101AFI20240927BHJP
A01D 57/22 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A01D63/00
A01D57/22 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046330
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】田邊 和滉
(72)【発明者】
【氏名】今田 光一
(72)【発明者】
【氏名】平田 哲
【テーマコード(参考)】
2B081
【Fターム(参考)】
2B081AA01
2B081BB05
2B081BB17
2B081BB18
2B081CC01
2B081DA11
2B081DD47
2B081EA04
(57)【要約】
【課題】作物の詰まり及び脱穀精度の低下等の不具合が生じにくい分草装置及び収穫機械を提供する。
【解決手段】分草装置1は、作物を刈り取って収穫する収穫機械4の引起装置2の前方に配置され、作物をかき分ける装置であって、分草部材12を備える。分草部材12は、引起装置2が作用する一つの作用領域R1である第1作用領域R11に隣接して配置される。分草部材12は、正面視において、引起装置2の作動方向の始端位置Ps1側から終端位置Pe1側に向かうにつれて第1作用領域R11から離れる形状である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物を刈り取って収穫する収穫機械の引起装置の前方に配置され、前記作物をかき分ける分草装置であって、
前記引起装置が作用する一つの作用領域である第1作用領域に隣接して配置され、正面視において、前記引起装置の作動方向の始端位置側から終端位置側に向かうにつれて前記第1作用領域から離れる形状の分草部材を備える、
分草装置。
【請求項2】
前記分草部材は、正面視において、前記第1作用領域と、前記第1作用領域とは別の第2作用領域との間に配置され、前記作動方向の始端位置側から終端位置側に向かうにつれて前記第1作用領域と前記第2作用領域との中間位置に近づく形状を有する、
請求項1に記載の分草装置。
【請求項3】
前記分草部材は、正面視において、前記作動方向の終端位置で、前記第1作用領域と前記第2作用領域との中間位置に位置する、
請求項2に記載の分草装置。
【請求項4】
前記第1作用領域は1条分の前記作物に対応する幅を有し、前記第2作用領域は2条分の前記作物に対応する幅を有する、
請求項2に記載の分草装置。
【請求項5】
前記分草部材は、前記作動方向における中心よりも終端位置側において、前記引起装置のケースの前面に固定される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の分草装置。
【請求項6】
前記分草部材は、正面視において、前記作動方向に対して傾斜する傾斜部を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の分草装置。
【請求項7】
前記分草部材は、側面視において、前記作動方向の終端位置に屈曲点を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の分草装置。
【請求項8】
前記分草部材のうち前記作物に作用する部分は、正面視において、前記作動方向の始端位置側の端部から終端位置にかけて直線状に形成されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の分草装置。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項に記載の分草装置と、
前記分草装置が取り付けられる機体と、を備える、
収穫機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作物を刈り取って収穫する収穫機械に用いられる分草装置及び収穫機械に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術として、走行装置、脱穀装置及び刈取装置等を備える収穫機械(コンバイン)が知られている(例えば、特許文献1参照)。関連技術に係る収穫機械では、分草体が取付けられている刈取フレームにブラケットを立設し、このブラケットに下端部を螺着した分草部材(中分草杆)が、引起装置(穀稈引起体)が作用する作用領域(穀稈引起経路)に隣接して上方へ延出している。
【0003】
関連技術に係る収穫機械は、分草体及び分草部材にて作物(穀稈)をそれぞれ左右にかき分け、正面視で右側の分草体と中間の分草体との間の作用領域に入った作物を引起装置により引き起こし、作物の株元部を刈刃により刈り取る。これにより、収穫機械は、刈取対象の作物が例えば倒伏穀稈又は長稈等であっても、稈姿勢を整えて刈り取りやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記関連技術の構成では、1条用及び2条用の2つの作用領域の間の分草部材は、正面視において、1条用の作用領域側に偏って配置されているので、作物の状況(倒伏具合等)によっては、2つの作用領域に対して作物をうまくさばけない場合がある。これにより、例えば、2つの作用領域間でのブリッジ又は稈姿勢の悪化等が生じ、結果的に、引起装置における作物の詰まり及び脱穀精度の低下等の不具合につながる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、作物の詰まり及び脱穀精度の低下等の不具合が生じにくい分草装置及び収穫機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る分草装置は、作物を刈り取って収穫する収穫機械の引起装置の前方に配置され、前記作物をかき分ける分草装置であって、分草部材を備える。前記分草部材は、前記引起装置が作用する一つの作用領域である第1作用領域に隣接して配置される。前記分草部材は、正面視において、前記引起装置の作動方向の始端位置側から終端位置側に向かうにつれて前記第1作用領域から離れる形状である。
【0008】
本発明の一の局面に係る収穫機械は、前記分草装置と、前記分草装置が取り付けられる機体と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作物の詰まり及び脱穀精度の低下等の不具合が生じにくい分草装置及び収穫機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る収穫機械の概略左側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る収穫機械のフロントセクションを示す概略斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る収穫機械のフロントセクションを示す概略正面図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る収穫機械のフロントセクションを示す概略左側面図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る収穫機械のフロントセクションを示す概略平面図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る収穫機械のフロントセクションの要部を示す概略正面図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係る収穫機械のフロントセクションの要部を示す概略左側面図である。
【
図8】
図8は、実施形態1に係る収穫機械のフロントセクションの要部を示す概略平面図である。
【
図9】
図9は、実施形態1に係る収穫機械のフロントセクションの要部を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。
【0012】
(実施形態1)
[1]全体構成
まず、本実施形態に係る収穫機械4の全体構成について、
図1及び
図2を参照して説明する。収穫機械4は、走行装置41、刈取装置42、脱穀装置43、選別装置44、貯留装置45、動力装置46及び運転部47等を備える。本実施形態では、収穫機械4は、分草装置1、発光装置3、制御装置、通信端末、燃料タンク及びバッテリ等を更に備える。
【0013】
本開示でいう「収穫機械」は、圃場F1にて作物100の収穫作業を行う機械であって、一例として、収穫作業に加えて脱穀及び選別を行うコンバイン(コンバインハーベスタ)等を含む。収穫機械4としてのコンバインは、主として穀物の収穫作業に用いられ、圃場F1内を移動(走行)しながら、作物100の刈り取りを行い、刈り取った作物100を収穫する。特に、コンバインには、刈り取った作物100全体を脱穀機(脱穀装置43)に送り込む普通型(汎用)コンバインと、刈り取った作物100の穂先のみを脱穀機に送り込む自脱型コンバインとがあるところ、本実施形態では、自脱型コンバインを収穫機械4の例として説明する。また、本実施形態では一例として、収穫機械4は、人(オペレータ)の操作(遠隔操作を含む)により動作することとするが、これに限らず、収穫機械4は、自動運転により動作する無人機であってもよい。
【0014】
本開示でいう「圃場」は、収穫機械4が収穫作業を行う領域であって、例えば、稲、麦、大豆又はそば等の収穫対象となる作物100(農産物)を生育する田んぼ、畑、果樹園及び牧草地等を含む。本実施形態では一例として、収穫機械4による収穫対象が「稲」であって、圃場F1が稲を生育する屋外の田んぼである場合を例に挙げて説明する。
【0015】
また、本実施形態では、説明の便宜上、収穫機械4が使用可能な状態での鉛直方向を上下方向D1と定義する。さらに、収穫機械4(の運転部47)に乗っている人(オペレータ)から見た方向を基準として、前後方向D2及び左右方向D3を定義する。つまり、収穫機械4の前進時における収穫機械4の進行方向が前方となる。ただし、これらの方向は、収穫機械4の使用方向(使用時の方向)を限定する趣旨ではない。
【0016】
走行装置41は、クローラ部を含み、収穫機械4を前後方向D2及び左右方向D3に移動させることができる。例えば、収穫機械4は、圃場F1内を移動しながら収穫作業を実施する。一例として、収穫機械4は、圃場F1内を外側から内側に向かって左に旋回しながら移動してもよく、この場合、収穫機械4の移動軌跡は平面視において反時計回りの渦巻き状の経路となる。
【0017】
刈取装置42は、圃場F1の作物100(本実施形態では一例として稲)を刈り取る。刈取装置42は、収穫機械4の機体40(
図1参照)の前方に配置され、機体40に結合されている。刈取装置42は、機体40と共に、収穫機械4を構成する。言い換えれば、本実施形態に係る収穫機械4は、刈取装置42と、機体40と、を備えている。機体40は、少なくとも走行装置41を含む。刈取装置42が機体40に備わった状態では、刈取装置42は収穫機械4の構成要素の一部を成す。
【0018】
刈取装置42は、カバー421と、刈取フレーム422と、刈刃(カッター)と、引起装置2と、を有している。本実施形態一例として、刈取装置42は、7条分の穀稈を同時に刈り取ることが可能な「7条刈」の刈取装置である。刈取装置42は、その外郭を構成するカバー421の内側に、刈取フレーム422及び刈刃を有している。
【0019】
引起装置2は、1つの刈取装置42に対して、刈取装置42で同時に刈取可能な条数(本実施形態では7条)に対応して複数(本実施形態では7つ)設けられている。複数(ここでは7つ)の引起装置2は、刈取装置42の前面側において、左右方向D3に並べて配置されている。本実施形態では、これら複数の引起装置2は刈取装置42の構成要素の一部として刈取装置42に含まれることとするが、複数の引起装置2は刈取装置42の構成要素に含まれなくてもよい。
【0020】
各引起装置2は、倒伏した作物100を拾い上げたり、作物100の先端(穂先)を一定の幅に収束させたりする「引起し作業」を行う。各引起装置2は、作物100を整流するための複数の引起タイン21(
図2参照)と、ケース22(
図2参照)と、駆動部と、を有している。
【0021】
具体的には、引起装置2は、複数の引起タイン21が設けられたチェーンを駆動部にて回転させることにより、複数の引起タイン21を駆動して引起し作業を実施する。ここで、引起装置2は、ケース22の左右方向D3の側方に設定される作用領域R1に複数の引起タイン21を作用させる。作用領域R1は上下方向D1に長さを有する縦長の領域である。複数の引起タイン21の各々は、作用領域R1の下端から上端に向けて駆動されることにより、作用領域R1内で作物100を引き起こす引起し作業を実施する。
【0022】
本実施形態では、刈取装置42は「7条刈」であるので、7条分の作用領域R1が形成される。ただし、左右方向D3において隣接する一対の引起装置2が1つの作用領域R1に対して、左右方向D3の両側から引起タイン21を作用させることにより、当該1つの作用領域R1は2条分の作物100に対応することになる。1条分の作物100に対応する1条用の作用領域R1は1条分の作物100に対応する幅(左右方向D3の幅)を有するのに対し、2条分の作物100に対応する2条用の作用領域R1は2条分の作物100に対応する幅(左右方向D3の幅)を有する。
【0023】
以下では、1条用の作用領域R1と2条用の作用領域R1とを区別する場合には、前者(1条用)を「第1作用領域R11」とし後者(2条用の)を「第2作用領域R12」とする。本実施形態では、
図2に示すように、1条分の作物100に対応する第1作用領域R11が1つ、2条分の作物100に対応する第2作用領域R12が3つ(6条分)で、合計4つの作用領域R1が設定されている。
【0024】
分草装置1は、引起装置2の前方に配置され、作物100をかき分ける分草作業を実施する。例えば、作物100が密集又は倒伏しているような場合、収穫機械4が前進する際に、分草装置1が左右方向D3に作物100をかき分けることにより、作物100を引起装置2の作用領域R1に案内しやすくなる。言い換えれば、分草装置1は、作物100を刈り取るべき幅を規定し、左右方向D3に分けられた作物100を、引起装置2へ案内する機能を有する。本実施形態では、分草装置1は刈取装置42の構成要素には含まれないこととするが、分草装置1は刈取装置42の構成要素の一部として刈取装置42に含まれてもよい。
【0025】
本実施形態に係る収穫機械4は、このような分草装置1を備えることにより、作物100の収穫効率を向上させる。すなわち、収穫機械4は、分草装置1と、分草装置1が取り付けられる機体40と、を備える。
【0026】
分草装置1は、分草板11(分草体)と、分草部材12と、を備えている。分草板11は、刈取装置42で同時に刈取可能な条数(本実施形態では7条)に対応して複数(本実施形態では8つ)設けられている。つまり、隣接する一対の分草板11の間をそれぞれ1条分の作物100が通過するため、本実施形態では7条分の間隔が形成されるように8つの分草板11が設けられている。一方、分草部材12は、隣接する一対の作用領域R1に対して作物100を分けるための部材であって、作用領域R1の数(本実施形態では4つ)に対応して複数(本実施形態では3つ)設けられている。つまり、隣接する一対の作用領域R1の間にそれぞれ分草部材12が配置されるため、本実施形態では4つの作用領域R1に対して3つの分草部材12が設けられている。
【0027】
複数(ここでは8つ)の分草板11は、刈取装置42の前面側の下端部に、左右方向D3に並べて配置されている。複数の分草板11は、刈取装置42(引起装置2)の前面から前方に突出しており、収穫機械4の前進時に、作物100(穀稈)と作物100(穀稈)との間に差し込まれることにより、作物100を刈り取るべき幅を規定する。さらに、分草板11は、分草板11により分けられた作物100を、引起装置2の作用領域R1へ案内する。
【0028】
複数(ここでは3つ)の分草部材12は、左右方向D3に並べて配置されている。複数の分草部材12は、それぞれ上下方向D1に長さを有する棒状の部材であって、刈取装置42(引起装置2)の前面から前方に突出する。さらに、分草部材12は、その下端部が分草板11に連結されており、収穫機械4の前進時に、分草板11から連続して、作物100(穀稈)と作物100(穀稈)との間に差し込まれることにより、作物100を左右方向D3にかき分ける。さらに、分草部材12は、分草板11により分けられた作物100を、引起装置2の作用領域R1へ案内する。
【0029】
このような分草装置1により左右方向D3において分かれた作物100は、それぞれ引起装置2により引き起こされ、刈取装置42の刈刃によって根本部付近が切断されて刈り取られる。これにより、作物100は穀稈の途中で切断されることになり、少なくとも穂先を含む穀稈が収穫機械4によって刈り取られることになる。刈取装置42で刈り取られた作物100の穀稈は、脱穀装置43に搬送される。分草装置1について詳しくは「[2]分草装置の構成」の欄で説明する。
【0030】
脱穀装置43は、刈取装置42により刈り取られた作物100(穀稈)に対する脱穀処理を実行する。脱穀処理では、穀稈から穀粒を含む脱穀物を分離する。脱穀物は脱穀装置43から下方の選別装置44へ落下する。
【0031】
選別装置44は、脱穀装置43から落下する脱穀物から、穀粒を選別する選別処理を実行する。選別装置44は、例えば、脱穀物に対して斜め下方から風を当てつつ脱穀物をふるいにかけることにより、脱穀物から穀粒を選別する。
【0032】
貯留装置45は、グレンタンク451及び排出オーガ452等を有する。グレンタンク451は、搬送コンベアにより選別装置44から搬送される穀粒を貯留する。つまり、選別装置44で選別された穀粒は、搬送コンベアにてグレンタンク451まで搬送され、グレンタンク451に貯留される。排出オーガ452は、グレンタンク451内の穀粒を収穫機械4の周囲の任意の場所へ排出する。
【0033】
動力装置46は、走行装置41、刈取装置42、脱穀装置43、選別装置44及び貯留装置45等の駆動源である。動力装置46は、動力源として、例えばディーゼルエンジン等のエンジンを有する。また、動力装置46は、動力源としてモータ(電動機)を有していてもよいし、エンジンとモータとを含むハイブリッド式の動力源を有していてもよい。
【0034】
運転部47には、ユーザ(オペレータ)が着席する運転座席、並びに、ユーザにより操作されるハンドル、各種の操作レバー及び各種の操作スイッチ等の操作装置が設けられている。本実施形態では一例として、運転部47は、キャビン471を備えるキャビンタイプであって、キャビン471の内部のキャビン空間にユーザが搭乗する。
【0035】
キャビン471の前面の上端部には、収穫機械4の前方及び刈取装置42の作業領域(分草板11の先端近傍の領域)を照明するための複数の作業灯が配置されている。複数の作業灯は、全体で、刈取装置42の前端部(分草板11付近)から収穫機械4の前方にかけての広い範囲を照明できるように配置されている。つまり、複数の作業灯の照明領域には、刈取装置42の前端部が含まれる。
【0036】
発光装置3は、刈取装置42に取り付けられている。発光装置3は、第1発光部31と、第2発光部32とを有する。本実施形態では一例として、第1発光部31は前照灯を含み、第2発光部32は方向指示器と車幅灯との少なくとも一方を含む。具体的に、発光装置3は、カバー421の左右方向D3の両側に配置されている。第1発光部31及び第2発光部32は、第2発光部32が上方となるように、上下方向D1に並べて配置されている。
【0037】
制御装置は、操作装置が受け付ける操作に応じて、走行装置41、刈取装置42(引起装置2を含む)、脱穀装置43、選別装置44、貯留装置45、動力装置46、複数の作業灯及び発光装置3等を制御する。
【0038】
通信端末は、収穫機械4の外部のサーバ等と通信を行う。ここでは、通信端末は、収穫機械4の稼働状況、収穫機械4の現在位置、作物100の収穫量(収量)、作物100の食味(タンパク質含有量又は水分含有量等を含む)、作業時間又は作業効率等に関する情報を、サーバ等に適宜送信する。本実施形態では、通信端末は、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)等の衛星測位システムを用いて、収穫機械4の現在位置を検出可能に構成されている。また、通信端末は、収穫機械4の運転支援又は自動運転等に係る制御情報をサーバ等から受信してもよい。一例として、収穫量に関する情報(収量データ)は、収穫機械4に備わっているセンサー(穀粒センサー)により、収穫された穀粒量を検出することで取得可能である。この種のセンサーは、一例として、グレンタンク451の上面に取り付けられる歪みゲージ又は圧電素子等の衝撃検出部を含み、グレンタンク451へ向けて搬送された穀粒が、衝撃検出部に衝突した際の衝撃力を検出する。もちろん、収穫機械4の収穫量の取得手法は、これに限定されない。
【0039】
上記のように構成される収穫機械4は、圃場F1内を走行しながら刈取作業を行うことで、圃場F1に生育されている作物100を刈り取り、脱穀して穀粒を取り出すことができる。
【0040】
[2]分草装置の構成
次に、本実施形態に係る収穫機械4の分草装置1の構成について、
図2~
図9を参照して詳しく説明する。
図2~
図9では、収穫機械4のうち分草装置1が設けられている刈取装置42の周辺部位、つまり収穫機械4のフロントセクションのみを図示し、それ以外の図示を省略する。さらに、
図2~
図9では、刈刃等を含む刈取装置42の内部部品について、適宜図示を省略する。
【0041】
例えば、
図2は収穫機械4のフロントセクションを斜め前方から見た状態を示す概略図であって、
図3は収穫機械4のフロントセクションを正面から見た状態を示す概略図である。本実施形態では、収穫機械4に乗っている人から見た方向を基準として左右方向D3を定義しているため、収穫機械4を斜め前方又は正面から見た
図2及び
図3においては、左右方向D3の「右」が紙面の「左」に、左右方向D3の「左」が紙面の「右」に相当する。
【0042】
本実施形態に係る分草装置1は、上述したように、刈取装置42(引起装置2)の前方に配置されており、収穫機械4の前進時に、作物100をかき分ける分草作業を実施する。そこで、ここではまず、刈取装置42の構成について詳しく説明する。
【0043】
本実施形態では、刈取装置42の外郭を構成するカバー421は、左右方向D3の一方から見て三角形状を有している。そして、カバー421は、正面視において矩形状であって、その前面が斜め上方を向くように上下方向D1に対して傾斜している。これにより、カバー421は、その全体で、略三角柱状を成す。
【0044】
カバー421の前面には、
図2及び
図3に示すように、複数(ここでは7つ)の引起装置2が、左右方向D3に並べて配置されている。各引起装置2のケース22は、上下方向D1に長さを有している。ケース22は、その前面が斜め上方を向くように上下方向D1に対して傾斜している。そして、各引起装置2は、ケース22の左右方向D3のいずれか一方に設定される作用領域R1に向けてケース22から突出する複数の引起タイン21を、駆動部にて駆動する。複数の引起タイン21は、作用領域R1の下端から上端に向けて駆動されることにより、作用領域R1内で作物100を引き起こす引起し作業を実施する。
【0045】
そのため、本実施形態では、引起装置2の作動方向は、引起タイン21の作動(移動)方向となる上下方向D1である。そして、引起タイン21は、作用領域R1内を下端から上端に向けて移動するので、作用領域R1の「下端」が作動方向の始端位置Ps1(
図6参照)となり、作用領域R1の「上端」が作動方向の終端位置Pe1(
図6参照)となる。具体的には、チェーンと共に回転する引起タイン21がケース22から左方に向けて突出した状態で作動方向(上下方向D1)に移動する範囲(軌跡)が、作用領域R1となる。そのため、上方に移動する引起タイン21が折り畳まれる位置が、作動方向の終端位置Pe1となる。ただし、厳密には、ケース22の前面が斜め上方を向くように上下方向D1に対して傾斜しているため、引起タイン21は、作動方向の始端位置Ps1(下端位置)から終端位置Pe1(上端位置)に向かって、鉛直方向ではなく斜め後方に移動する。
【0046】
ここにおいて、7つの引起装置2のうち左から2番目の引起装置2と3番目の引起装置2とは、左右方向D3において殆ど隙間を空けずに並べて配置されている。同様に、7つの引起装置2のうち左側から4番目の引起装置2と5番目の引起装置2とは、左右方向D3において殆ど隙間を空けずに並べて配置されている。
【0047】
そして、7つの引起装置2のうち左から1番目の引起装置2と2番目の引起装置2との間には、2条用の作用領域R1(第2作用領域R12)が形成されている。つまり、左端の第2作用領域R12に対しては、その左側に位置する(左から1番目の)引起装置2から右方に突出する引起タイン21と、その右側に位置する(左から2番目の)引起装置2から左方に突出する引起タイン21とが、左右方向D3の両側から作用する。したがって、当該第2作用領域R12に対しては、これら2つ(左から1番目及び2番目)の引起装置2の引起タイン21が作用し、2条分の作物100の引起し作業が可能となる。
【0048】
同様に、7つの引起装置2のうち左から3番目の引起装置2と4番目の引起装置2との間、及び左から6番目の引起装置2と7番目の引起装置2との間には、それぞれ2条用の作用領域R1(第2作用領域R12)が形成されている。つまり、左から2番目の第2作用領域R12に対しては、その左側に位置する(左から3番目の)引起装置2から右方に突出する引起タイン21と、その右側に位置する(左から4番目の)引起装置2から左方に突出する引起タイン21とが、左右方向D3の両側から作用する。右端の第2作用領域R12に対しては、その左側に位置する(左から6番目の)引起装置2から右方に突出する引起タイン21と、その右側に位置する(左から7番目の)引起装置2から左方に突出する引起タイン21とが、左右方向D3の両側から作用する。
【0049】
また、7つの引起装置2のうち左から5番目の引起装置2と6番目の引起装置2との間には、1条用の作用領域R1(第1作用領域R11)が形成されている。この第1作用領域R11に対しては、その左側に位置する(左から5番目の)引起装置2から右方に突出する引起タイン21が、左側から作用する。したがって、当該第1作用領域R11に対しては、この(左から5番目の)引起装置2の引起タイン21が作用し、1条分の作物100の引起し作業が可能となる。
【0050】
ここで、左から6番目の引起装置2のケース22には、当該ケース22から左方に突出する側板23が固定されている。側板23は、第1作用領域R11に取り込まれる作物100を左から6番目の引起装置2から隔離し、当該引起装置2に作物100が巻き込まれることを抑制する。このような側板23が設けられることにより、左右方向D3における第1作用領域R11の幅は、1条分の作物100に対応する幅まで狭められることになる。
【0051】
結果的に、刈取装置42の前面には、正面視において、第2作用領域R12、第2作用領域R12、第1作用領域R11、第2作用領域R12が、左からこの順で並ぶようにして、合計4つの作用領域R1が形成される。本実施形態のように、奇数条(例えば7条)刈の刈取装置42においては、2条用の第2作用領域R12だけでは全ての条数分の作物100に対応できないため、少なくとも1つは、1条用の第1作用領域R11が形成されることになる。
【0052】
そして、これら複数の作用領域R1は、それぞれ刈取装置42のカバー421の前面において、上下方向D1に延びるスリット状の開口からなる。各作用領域R1は下方に開放された形状であって、収穫機械4の前進時に、刈取装置42は、各作用領域R1を通して作物100の穀稈を刈取装置42内に取り込む。刈取装置42は、各作用領域R1から取り込まれる作物100を、引起装置2にて引き起しつつ、刈刃によって根本部付近を切断することにより刈り取りを行う。
【0053】
分草装置1は、作物100を刈り取って収穫する収穫機械4の引起装置2の前方に配置され、作物100をかき分けるための装置である。つまり、分草装置1は、
図4及び
図5に示すように、刈取装置42のカバー421の前面から前方に突出する形で設けられている。分草装置1は、上述したように、複数(本実施形態では8つ)の分草板11と、複数(本実施形態では3つ)の分草部材12と、を備えている。
【0054】
具体的に、刈取フレーム422は、それぞれ前後方向D2に長さを有する複数本(本実施形態では8本)の分草フレーム423を含んでいる(
図5参照)。そして、各分草フレーム423のうち、刈取装置42のカバー421から前方に突出する先端部(前端部)には、分草板11が装着されている。ここで、複数本の分草フレーム423は、各引起装置2の左右方向D3の両側に一対の分草フレーム423が位置するように、左右方向D3において所定の間隔を空けて配置されている。これにより、各引起装置2の左右方向D3の両側に、一対の分草板11が位置することになる。
【0055】
分草部材12は、複数本の分草フレーム423のうちの一部の分草フレーム423に対して装着されている。つまり、分草部材12は、隣接する一対の作用領域R1の間にそれぞれ配置されるよう、左から3本目の分草フレーム423、左から5本目の分草フレーム423、及び左から6本目の分草フレーム423に対して装着されている。これにより、
図3及び
図5に示すように、左から1番目の作用領域R1と2番目の作用領域R1との間、左から2番目の作用領域R1と3番目の作用領域R1との間、及び左から3番目の作用領域R1と4番目の作用領域R1との間の計3箇所に、分草部材12が配置される。
【0056】
分草部材12は、その下端部が、分草板11の中央に形成された貫通孔111(
図5参照)を通して、分草フレーム423に固定されている。これにより、分草部材12の下端部は分草板11に連結される。また、分草部材12は、長手方向の中心よりも上端側の部位が、第1ブラケット13を介して引起装置2のケース22の前面に固定されている。つまり、分草部材12は、少なくとも2箇所が分草フレーム423及びケース22に固定されることにより、刈取装置42に対して取り付けられている。
【0057】
ここにおいて、分草部材12は、分草フレーム423及びケース22に対して、例えばボルト及びナット等の締結具を用いて取り外し可能に取り付けられている。したがって、分草部材12は、刈取装置42に対して後付けすることも可能であって、刈取装置42から取り外して交換等のメンテナンスをすることも可能である。
【0058】
また、本実施形態では一例として、分草部材12は金属パイプ(金属管)にて構成された「分草パイプ」である。具体的に、分草部材12は(長手方向に直交する)断面が円環状となる円管部材を、曲げ加工することによって構成されている。分草部材12は、分草作業に十分な強度を有するように、その径、肉厚及び材質等が設定されている。
【0059】
ところで、このように構成される分草部材12には、
図2~
図5に示すように、第1分草部材12Aと第2分草部材12Bとの2種類の分草部材12が存在する。第1分草部材12Aは、1条用の第1作用領域R11に臨む位置に配置される。本実施形態では、3つの分草部材12のうち、左から3番目の作用領域R1(第1作用領域R11)と4番目の作用領域R1(第2作用領域R12)との間に位置する分草部材12のみが第1分草部材12Aであって、残り2つの分草部材12はいずれも第2分草部材12Bである。言い換えれば、第1分草部材12Aは、引起装置2が作用する一つの作用領域R1である第1作用領域R11に隣接して配置されている。
【0060】
ここで、第1分草部材12A及び第2分草部材12Bは、側面視における形状は共通であるが、正面視における形状が互いに異なっている。本実施形態に係る分草装置1においては、特に第1分草部材12の構成が特徴的である。そこで、以下では特に断りが無い限り第1分草部材12Aを例にして、
図6~
図9を参照しつつ、分草部材12のより詳細な構成について説明する。また、
図6~
図8においては、分草部材12の形状を説明するために、比較例としての分草部材12X(第1分草部材)を想像線(二点鎖線)で示している。
【0061】
本実施形態に係る分草部材12(第1分草部材12A)は、
図6に示すように、正面視における形状が、比較例に係る分草部材12Xと大きく異なる。すなわち、本実施形態に係る分草部材12は、正面視において、その下端部から分草部材12Xのように真っ直ぐ上方に延びるのではなく、右斜め上方に延びている。言い換えれば、分草部材12は、正面視において、引起装置2の作動方向(本実施形態では上下方向D1)の始端位置Ps1(下端)側から終端位置Pe1(上端)側に向かうにつれて、隣接する作用領域R1(第1作用領域R11)から離れるように、鉛直方向に対して斜めに配置されている。
【0062】
このように、本実施形態に係る分草装置1は、引起装置2が作用する一つの作用領域R1である第1作用領域R11に隣接して配置される分草部材12(第1分草部材12A)を備えている。この分草部材12は、正面視において、引起装置2の作動方向の始端位置Ps1側から終端位置Pe1側に向かうにつれて第1作用領域R11から離れる形状を有している。
【0063】
要するに、1条用の第1作用領域R11と2条用の第2作用領域R12との間の分草部材12(第1分草部材12A)は、正面視において、分草板11に連結される下端部が、1条用の作用領域R11側(つまり左側)に偏って配置される。つまり、当該分草板11に着目すると、左右方向D3において、第1作用領域R11に臨む位置に配置されているのに対して、第2作用領域R12との間には引起装置2のケース22が配置されている。そのため、当該分草板11に連結される分草部材12の下端部は、左右方向D3において、第1作用領域R11と第2作用領域R12とから均等な距離に位置するのではなく、作用領域R11側(つまり左側)に偏ることになる。
【0064】
このような分草部材12が、引起装置2の作動方向(上下方向D1)の始端位置Ps1(下端)側から終端位置Pe1(上端)側に向かうにつれて第1作用領域R11から離れる形状をとることで、分草部材12を第2作用領域R12側(つまり右側)に寄せ、作用領域R11側への偏りを抑制することができる。これにより、本実施形態の分草部材12では、正面視において、下端部から真っ直ぐ上方に延びる比較例に係る分草部材12Xに比べて、作物100の状況(倒伏具合等)によらず、2つの作用領域R1に対して作物100をうまくさばきやすくなる。その結果、本実施形態に係る分草装置1によれば、例えば、2つの作用領域R1間でのブリッジ又は稈姿勢の悪化等が抑制され、引起装置2における作物100の詰まり及び脱穀精度の低下等の不具合が生じにくくなる、という利点がある。
【0065】
より詳細には、
図6及び
図7に示すように、分草部材12は、第1屈曲点121と、第2屈曲点122と、傾斜部123と、第1固定部124と、第2固定部125(
図9参照)と、を有している。分草部材12は、1本の金属パイプに曲げ加工を施すことで、これら第1屈曲点121、第2屈曲点122、傾斜部123、第1固定部124及び第2固定部125が、継ぎ目なく一体的に形成されている。本実施形態に係る分草装置1では、分草部材12の径(直径)を比較例の分草部材12Xよりも大きく(つまり太く)することで、分草部材12の強度の向上を図っている。
【0066】
第1屈曲点121は、分草部材12を前後方向D2に屈曲(湾曲を含む)させる部位である。第1屈曲点121は、分草部材12の長手方向の中心と上端との間に設けられている。傾斜部123は、第1屈曲点121から下方に延出される部位であって、第1固定部124は、第1屈曲点121から上方に延出される部位である。言い換えれば、第1屈曲点121は、傾斜部123と第1固定部124との境界に位置しており、傾斜部123に対して第1固定部124を前後方向D2に屈曲させる。
【0067】
第2屈曲点122は、分草部材12を左右方向D3に屈曲(湾曲を含む)させる部位である。第2屈曲点122は、分草部材12の長手方向の中心と下端との間に設けられている。傾斜部123は、第2屈曲点122から上方に延出される部位であって、第2固定部125は、第2屈曲点122から下方に延出される部位である。言い換えれば、第2屈曲点122は、傾斜部123と第2固定部125との境界に位置し、第2固定部125に対して傾斜部123を左右方向D3に屈曲させる。
【0068】
ここで、分草部材12の下端部となる第2固定部125は、上下方向D1(鉛直方向)に対して略平行である。第2屈曲点122は、
図6に示すように、正面視において、傾斜部123が第2屈曲点122から右上方に延びるように、第2固定部125に対して傾斜部123を右方に屈曲させる。さらに、第2屈曲点122は、分草部材12を前後方向D2にも屈曲(湾曲を含む)させる。具体的に、第2屈曲点122は、
図7に示すように、側面視において、傾斜部123が第2屈曲点122から後上方に延びるように、第2固定部125に対して傾斜部123を後方に屈曲させる。
【0069】
このように、本実施形態では、分草部材12は、正面視において、作動方向(上下方向D1)に対して傾斜する傾斜部123を含む。具体的に、傾斜部123は、正面視において、分草部材12の下端部である第2固定部125から右上方に延びる直線状に形成されている。これにより、分草部材12は、正面視において、引起装置2の作動方向の始端位置Ps1側から終端位置Pe1側に向かうにつれて第1作用領域R11から離れる形状でありながらも、途中で段差が生じる場合に比較して、作物100の引っ掛かりを抑制できる。結果的に、分草部材12は、傾斜部123にてスムーズに作物100を作用領域R1に案内(誘導)できる。
【0070】
第1屈曲点121は、
図7に示すように、側面視において、第1固定部124が第1屈曲点121から上下方向D1(鉛直方向)に略平行に上方に延びるように、傾斜部123に対して第1固定部124を前方に屈曲させる。ここで、第1屈曲点121は、分草部材12を左右方向D3には屈曲させておらず、
図6に示すように、正面視において、第1固定部124は傾斜部123の延長線上に延出される。
【0071】
そして、第1屈曲点121は、引起装置2の作動方向(上下方向D1)において、終端位置Pe1付近に配置されている。本実施形態では一例として、終端位置Pe1は、刈取装置42の下面(圃場面に同じ)からの高さが800mmの位置に設定されている。そこで、第1屈曲点121についても、刈取装置42の下面から略800mmの位置に配置されている。
【0072】
このように、本実施形態では、分草部材12は、側面視において、作動方向(上下方向D1)の終端位置Pe1に屈曲点(第1屈曲点121)を有する。比較例に係る分草部材12Xでは、
図7に示すように、側面視における屈曲点は終端位置Pe1よりも低い位置にある。すなわち、本実施形態に係る分草装置1によれば、比較例に比べて第1屈曲点121が上方に位置するため、分草部材12と刈取装置42(の引起装置2)の前面からの分草部材12の突出量を大きくすることができる。結果的に、分草部材12による分草作業の精度向上が期待できる。
【0073】
一方、第2屈曲点122は、引起装置2の作動方向(上下方向D1)において、始端位置Ps1付近に配置されている。本実施形態では一例として、上下方向D1において、分草板11の中央に形成された貫通孔111と略同じ位置に第2屈曲点122が配置されている。そのため、分草部材12は、貫通孔111を貫通する部位において、前後方向D2に屈曲されることになる。したがって、分草部材12のうち、分草板11から露出する部分、つまり作物100に作用して作物100をかき分ける部分については、少なくともその下端から右斜め上方に向けて直線状に延びることになる。
【0074】
よって、たとえ始端位置Ps1が
図6及び
図7の例より多少(数cm~数十cm程度)下方にある場合でも、分草部材12のうち作物100に作用する部分に着目すれば、少なくとも作動方向(上下方向D1)の始端位置Ps1側の端部から終端位置Pe1にかけては、直線状の傾斜部123が占めることになる。すなわち、分草部材12のうち作物100に作用する部分は、正面視において、作動方向の始端位置Ps1側の端部から終端位置Pe1にかけて直線状に形成されている。これにより、分草部材12は、正面視において、引起装置2の作動方向の始端位置Ps1側から終端位置Pe1側に向かうにつれて第1作用領域R11から離れる形状でありながらも、途中で段差が生じる場合に比較して、作物100の引っ掛かりを抑制できる。結果的に、分草部材12は、傾斜部123にてスムーズに作物100を作用領域R1に案内(誘導)できる。
【0075】
また、本実施形態では、
図6に示すように、分草部材12は、正面視において、第1作用領域R11と、第1作用領域R11とは別の第2作用領域R12との間に配置されている。そして、分草部材12は、作動方向の始端位置Ps1側から終端位置Pe1側に向かうにつれて第1作用領域R11と第2作用領域R12との中間位置P1に近づく形状を有する。本開示でいう「中間位置」は、左右方向D3において、第1作用領域R11と第2作用領域R12との中間となる位置、つまり第1作用領域R11と第2作用領域R12とのそれぞれからの距離が略均等になる位置である。ここで、中間位置P1は、第1作用領域R11と第2作用領域R12とのそれぞれからの距離が厳密に均等になる位置だけでなく、およそ均等になる位置を含む。
【0076】
この構成によれば、作動方向の始端位置Ps1側から終端位置Pe1側に向かうにつれて、分草部材12は、作用領域R11側(つまり左側)への偏り(偏位量)が小さくなる。これにより、分草部材12では、作物100の状況(倒伏具合等)によらず、2つの作用領域R1に対して作物100をよりうまくさばきやすくなる。その結果、引起装置2における作物100の詰まり及び脱穀精度の低下等の不具合がより生じにくくなる。
【0077】
本実施形態では特に、分草部材12は、正面視において、作動方向の終端位置Pe1で、第1作用領域R11と第2作用領域R12との中間位置P1に位置する。つまり、
図6及び
図8に示すように、作用領域R1の上端位置(終端位置Pe1)において、分草部材12は、左右方向D3において第1作用領域R11と第2作用領域R12とのそれぞれから、略均等な位置にある。より具体的には、終端位置Pe1よりもやや上方において、分草部材12は第1作用領域R11と第2作用領域R12とのそれぞれまでの距離が均等になる。
【0078】
図8においては、作用領域R1の終端位置Pe1の高さにある仮想水平面において、第1作用領域R11及び第2作用領域R12のそれぞれにおける引起タイン21の中心が作用する作用点Pt1,Pt2と、中間位置P1との位置関係を示している。この
図8において、第1作用領域R11の作用点Pt1から中間位置P1までの距離L1と、第2作用領域R12の作用点Pt2から中間位置P1までの距離L2と、は略等しい(L1≒L2)。これにより、分草部材12は、作用領域R11側(つまり左側)への偏り(偏位量)が小さくなり、作物100の状況(倒伏具合等)によらず、2つの作用領域R1に対して作物100をよりうまくさばきやすくなる。その結果、引起装置2における作物100の詰まり及び脱穀精度の低下等の不具合がより生じにくくなる。
【0079】
また、本実施形態では、第1作用領域R11は1条分の作物100に対応する幅を有し、第2作用領域R12は2条分の作物100に対応する幅を有する。このように、幅の異なる第1作用領域R11と第2作用領域R12との間に位置する分草部材12(第1分草部材12A)は、分草板11の位置によって、必然的に第1作用領域R11側に偏って配置される。本実施形態によれば、このような分草部材12(第1分草部材12A)にあっても、作用領域R11側への偏りを抑制して、2つの作用領域R1(第1作用領域R11及び第2作用領域R12)間でのブリッジ又は稈姿勢の悪化等を抑制できる。
【0080】
ここで、
図9に示すように、分草部材12は、第1固定部124が第1ブラケット13を介して、引起装置2のケース22の前面に固定されている。第1ブラケット13は、例えば溶接等の接合手段により、分草部材12の第1固定部124に一体的に固定されている。第1ブラケット13は、例えばボルト及びナット等の締結具を用いて、ケース22に対して取り外し可能に固定される。
図9は、収穫機械4のフロントセクションの要部を示し、かつ分草部材12の下端部に位置する分草板11を取り外した状態の概略斜視図である。
【0081】
さらに、分草部材12は、第2固定部125が第2ブラケット14を介して、分草フレーム423に固定されている。一例として、分草部材12の第2固定部125は、第2ブラケット14に設けられたボス穴に上方から挿入される態様により、第2ブラケット14に支持される。第2ブラケット14は、例えばボルト及びナット等の締結具を用いて、分草フレーム423に対して取り外し可能に固定される。
【0082】
このように、分草部材12は、作動方向(上下方向D1)における中心よりも終端位置Pe1側において、引起装置2のケース22の前面に固定される。本実施形態では、第1固定部124は、第1屈曲点121よりも上方側の部位であるので、分草部材12は、終端位置Pe1よりも更に上方において、引起装置2のケース22の前面に固定されることになる。これにより、分草部材12は、正面視において、引起装置2の作動方向の始端位置Ps1側から終端位置Pe1側に向かうにつれて第1作用領域R11から離れる形状でありながらも、引起装置2のケース22に対して安定的に取り付けられる。
【0083】
[3]変形例
以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0084】
分草装置1の各部材の寸法、形状及び材質等は、適宜変更可能である。例えば、第1分草部材12A及び第2分草部材12Bは、側面視における形状が異なっていてもよい。また、第1分草部材12A及び/又は第2分草部材12Bの側面視の形状は、比較例に係る分草部材12Xと同一であってもよい。
【0085】
また、第1分草部材12Aは、正面視において、引起装置2の作動方向の始端位置Ps1側から終端位置Pe1側に向かうにつれて、隣接する作用領域R1(第1作用領域R11)から離れる形状であればよく、傾斜部123を有することは必須でない。例えば、第1分草部材12Aは、正面視において、段差を有するクランク状に形成され、引起装置2の作動方向の始端位置Ps1側から終端位置Pe1側に向かうにつれて、隣接する作用領域R1(第1作用領域R11)から離れる形状であってもよい。
【0086】
また、第1作用領域R11が1条分の作物100に対応する幅を有し、第2作用領域R12が2条分の作物100に対応する幅を有することも必須ではない。例えば、第1作用領域R11が2条分の作物100に対応する幅を有してもよいし、第2作用領域R12が1条分の作物100に対応する幅を有してもよい。
【0087】
また、分草部材12が、刈取装置42に対して取り外し可能に取り付けられることは収穫機械4に必須の構成ではなく、例えば、分草部材12は、刈取装置42のカバー421と一体に形成されていてもよい。
【0088】
また、運転部47は、キャビンタイプに限らず、例えば、キャノピータイプ又はフロアタイプ等であってもよい。さらに、運転部47に設けられている複数の作業灯は、運転部47以外の位置に配置されてもよいし、発光装置3に含まれてもよいし、適宜省略されてもよい。
【0089】
また、収穫機械4は、自脱型コンバインに限らず、普通型コンバインであってもよいし、コンバイン以外の収穫機械であってもよい。収穫機械4による収穫対象は、「稲」に限らず、更には穀物にも限らない。
【0090】
また、刈取装置42は、「7条刈」に限らず、例えば、2条刈、3条刈、4条刈、5条刈、6条刈又は8条刈等であってもよい。
【0091】
〔発明の付記〕
以下、上述の実施形態から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0092】
<付記1>
作物を刈り取って収穫する収穫機械の引起装置の前方に配置され、前記作物をかき分ける分草装置であって、
前記引起装置が作用する一つの作用領域である第1作用領域に隣接して配置され、正面視において、前記引起装置の作動方向の始端位置側から終端位置側に向かうにつれて前記第1作用領域から離れる形状の分草部材を備える、
分草装置。
【0093】
<付記2>
前記分草部材は、正面視において、前記第1作用領域と、前記第1作用領域とは別の第2作用領域との間に配置され、前記作動方向の始端位置側から終端位置側に向かうにつれて前記第1作用領域と前記第2作用領域との中間位置に近づく形状を有する、
付記1に記載の分草装置。
【0094】
<付記3>
前記分草部材は、正面視において、前記作動方向の終端位置で、前記第1作用領域と前記第2作用領域との中間位置に位置する、
付記2に記載の分草装置。
【0095】
<付記4>
前記第1作用領域は1条分の作物に対応する幅を有し、前記第2作用領域は2条分の作物に対応する幅を有する、
付記2又は3に記載の分草装置。
【0096】
<付記5>
前記分草部材は、前記作動方向における中心よりも終端位置側において、前記引起装置のケースの前面に固定される、
付記1~4のいずれかに記載の分草装置。
【0097】
<付記6>
前記分草部材は、正面視において、前記作動方向に対して傾斜する傾斜部を含む、
付記1~5のいずれかに記載の分草装置。
【0098】
<付記7>
前記分草部材は、側面視において、前記作動方向の終端位置に屈曲点を有する、
付記1~6のいずれかに記載の分草装置。
【0099】
<付記8>
前記分草部材のうち前記作物に作用する部分は、正面視において、前記作動方向の始端位置側の端部から終端位置にかけて直線状に形成されている、
付記1~7のいずれかに記載の分草装置。
【0100】
<付記9>
付記1~8のいずれかに記載の分草装置と、
前記分草装置が取り付けられる機体と、を備える、
収穫機械。
【符号の説明】
【0101】
1 分草装置
2 引起装置
4 収穫機械
12 分草部材
22 ケース
40 機体
100 作物
121 (第1)屈曲点
123 傾斜部
D1 上下方向(作動方向)
P1 中間位置
Pe1 終端位置
Ps1 始端位置
R1 作用領域
R11 第1作用領域
R12 第2作用領域