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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135572
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両のシール構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/10 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B62D25/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046332
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 篤
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 涼一
【テーマコード(参考)】
3D004
【Fターム(参考)】
3D004AA09
3D004BA02
3D004DA08
(57)【要約】
【課題】シール部材とフードヒンジとが車幅方向内外に並ぶエンジンルーム内において、シール部材の車幅方向外側に生じる空気流れを極力抑制することにある。
【解決手段】エンジンルームER内で車幅方向に延びるシール部材30と、エンジンルームER内の車幅方向の端部に位置する側壁部(エプロンパネル5)との間に、エンジンフード4に固定されたフードヒンジ10が配置されていると共に、エンジンフード4でエンジンルームERを閉じた状態において、エンジンルームER内の空気流れを遮断する遮断部材40が、フードヒンジ10を跨ぎつつ、シール部材30と側壁部(エプロンパネル5)とに渡される方向に延設されている。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンルームを覆うエンジンフードと、エンジンルーム内の車体部との間の間隙をシールする車両のシール構造において、
前記エンジンルーム内で車幅方向に延びるシール部材と、前記エンジンルーム内の車幅方向の端部に位置する側壁部との間に、前記エンジンフードに固定されたフードヒンジが配置されていると共に、
前記エンジンフードで前記エンジンルームを閉じた状態において、前記エンジンルーム内の空気流れを遮断する遮断部材が、前記フードヒンジを跨ぎつつ、前記シール部材と前記側壁部とに渡される方向に延設されている車両のシール構造。
【請求項2】
前記車体部として、車両のフロントガラスの下端部に接続されたカウルルーバが設けられていると共に、前記カウルルーバには、前記シール部材を支持する支持部が車幅方向に延びるように設けられている請求項1に記載の車両のシール構造。
【請求項3】
前記遮断部材には、前記フードヒンジを跨ぐ跨ぎ部と、前記跨ぎ部の車幅方向内側に形成されて前記シール部材に近づく方向に延びる外縁部とが設けられている請求項1又は2に記載の車両のシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルームを覆うエンジンフードと、エンジンルーム内の車体部との間の間隙をシールする車両のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両では、そのエンジンルームがエンジンフードによって開閉可能に構成されている。またエンジンフードの後部は、フードヒンジを介して上下回動可能に支持されており、このフードヒンジがエンジンルームの後部側に配置されている。また、エンジンルーム内には、車両のフロントガラスの下端部に接続されたカウルルーバ(車体部に相当)が車幅方向に延びるように配設されている。そしてカウルルーバには、閉じ状態のエンジンフードとの間隙をシールするシール部材が支持されている。上記した構成では、カウルルーバに支持されたシール部材が、エンジンルームを車幅方向に横断するように通されることで、エンジンフードとカウルルーバ間の間隙をシールできるようになる。
【0003】
例えば特許文献1の車両では、車幅方向に延びるカウルボックス(カウルルーバに相当)がエンジンルーム内に配設されている。またカウルボックスには、その車幅方向外側の部分に、車両前後方向に延びるフードヒンジが挿通されている。このフードヒンジは、その前部がエンジンフードに固定された状態で車両前後方向に延びている。またフードヒンジの後部は、略横L字形に形成されることで、その後端部が車両上側に略直角に曲げられている。そして上記した構成では、カウルボックスの前面から上面にかけての部分にフードヒンジの後部が挿通されており、更にカウルボックスの上面側に、フードヒンジの後端部が上下回動可能に軸支されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06-255539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで車両の分野では、エンジンルームの前後のスペースの関係等から、上記したシール部材を、エンジンルームの端部まで通せないことがある。例えばスペースの関係からフロントガラスとエンジンフード間の距離が短い場合、エンジンフードに固定されたフードヒンジ部分が、カウルルーバの車幅方向外側で交差するように(前後に横断するように)配置されることがある。この場合には、シール部材とフードヒンジとが車幅方向内外に並ぶようになり、このフードヒンジが邪魔となって、エンジンルームの端部までシール部材を通せなくなる。そして上記した構成では、シール部材の車幅方向外側に、フードヒンジの配置される空間が車両前後方向に延びるように形成される。そしてこの空間内で車両前後方向の空気流れが生じるなどして、エンジンルーム内の空気が過度に車外に流出するおそれがあった。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、シール部材とフードヒンジとが車幅方向内外に並ぶエンジンルーム内において、シール部材の車幅方向外側に生じる空気流れを極力抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両のシール構造は、車両のエンジンルームを覆うエンジンフードと、エンジンルーム内の車体部との間の間隙をシールするための構造である。そして車両のシール構造では、エンジンルーム内で車幅方向に延びるシール部材と、エンジンルーム内の車幅方向の端部に位置する側壁部との間に、エンジンフードに固定されたフードヒンジが配置されている。この種の構成、即ち、エンジンルーム内においてシール部材とフードヒンジとが車幅方向内外に並ぶ構成では、シール部材の車幅方向外側に生じる空気流れを極力抑制できることが望ましい。そこで本発明では、エンジンフードでエンジンルームを閉じた状態において、エンジンルーム内の空気流れを遮断する遮断部材が、フードヒンジを跨ぎつつ、シール部材と側壁部とに渡される方向に延設されている。本発明では、空気流れを遮る遮断部材が、シール部材の車幅方向外側の位置に設けられて、フードヒンジを跨ぎつつ側壁部に向けて延設されている。これにより、シール部材とフードヒンジとが車幅方向内外に並んでいた場合にも、シール部材の車幅方向外側に生じる空気流れを遮断部材の働きで極力抑制することが可能になる。
【0007】
第2発明の車両のシール構造は、第1発明の車両のシール構造において、車体部として、車両のフロントガラスの下端部に接続されたカウルルーバが設けられていると共に、カウルルーバには、前記シール部材を支持する支持部が車幅方向に延びるように設けられている。本発明では、車幅方向に延びる支持部にシール部材を支持させて、シール部材の支持性を確保することにより、遮断部材との位置関係をより適切に維持できるようになる。
【0008】
第3発明の車両のシール構造は、第1発明又は第2発明の車両のシール構造において、遮断部材には、フードヒンジを跨ぐ跨ぎ部と、跨ぎ部の車幅方向内側に形成されてシール部材に近づく方向に延びる外縁部とが設けられている。本発明では、跨ぎ部によってフードヒンジと遮断部材との干渉をより確実に回避することができる。また外縁部によって、遮断部材とシール部材とを極力近接させられるようになり、シール部材の車幅方向外側に生じる空気流れをより確実に抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る第1発明によれば、シール部材とフードヒンジとが車幅方向内外に並ぶエンジンルーム内において、シール部材の車幅方向外側に生じる空気流れを極力抑制することができる。また第2発明によれば、シール部材の車幅方向外側に生じる空気流れをより確実に抑制することができる。そして第3発明によれば、シール部材の車幅方向外側に生じる空気流れを更に確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】エンジンフードを閉じた状態の車両の前部右側の一部透視斜視図である。
図2】エンジンフードを開いた状態の車両の前部右側の斜視図である。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4】遮断部材を省略した状態の図1のIV-IV線断面図である。
図5図1のV-V線断面図である。
図6】遮断部材の正面図である。
図7】遮断部材の上面図である。
図8】遮断部材の右側面図である。
図9】遮断部材とその周辺部材の関係を示す正面図である。
図10】エンジンフードを閉じた状態の車両の前部右側の拡大透視斜視図である。
図11図10のXI-XI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図1図11を参照して説明する。各図には、車両の前後方向と左右方向(車幅方向)と上下方向(車両の高さ方向)を示す矢線を適宜図示する。また図1及び図2では、便宜上、車両の右側部分のみを図示すると共に、右側部分の部材を基準として車幅方向内側(左側)と外側(右側)を規定する。そして各図では、便宜上、車両のシール構造の主な構成を実線で図示し、その他の構成を破線で図示又は省略している。
【0012】
[車両の前部の概要]
先ず、図1に示す車両2の前部の概要について説明する。車両2の前部には、その車室Rの車両前側にエンジンルームERが設けられている。このエンジンルームERの車幅方向(左右)両側は、外装材であるフェンダパネル3で覆われている。また左右のフェンダパネル3間には、エンジンルームERを開閉可能に構成されたエンジンフード4が設けられている。そしてエンジンフード4は、その後部側がフードヒンジ10に上下回動可能に支持されている。このフードヒンジ10は、エンジンルームERの後部且つ車幅方向外側(右側)に配設された状態で、車両前後方向に延びるように配設されている。
【0013】
また図2に示すエンジンルームER内には、車幅方向両端の側壁部を構成するエプロンパネル5が設けられている。このエプロンパネル5は、その車幅方向外側(右側)が、上記したフェンダパネル3にて覆われている。また左右のエプロンパネル5間には、フロントガラス6の下端部に接続されたカウルルーバ20が車幅方向に延びるように設けられている。このカウルルーバ20には、その車幅方向に延びる本体部分20Bに、同じく車幅方向に延びるシール部材30が支持されている。そして上記した構成では、エンジンルームERのスペース上、フロントガラス6とエンジンフード4間の距離が短くされている。これにより、エンジンフード4を閉じた際に、上記したフードヒンジ10が、シール部材30とエプロンパネル5間に配置されるようになる(図2中、エンジンフードを閉じた時のフードヒンジの配置位置(10)を二点破線で図示する)。
【0014】
[車両のシール構造]
車両2のシール構造は、図1及び図2を参照して、閉じ状態のエンジンフード4と、エンジンルームER内の車体部との間の間隙をシールする構造である。そして同シール構造では、車体部に相当するカウルルーバ20の本体部分20Bに、車幅方向に延びるシール部材30が支持されている。これにより、閉じ状態のエンジンフード4とカウルルーバ20との間の間隙が、シール部材30によってシールされるようになる(図3参照)。
【0015】
ところでエンジンフード4を閉じた際の車両2では、図1及び図2を参照して、フードヒンジ10が、シール部材30とエプロンパネル5間、即ち、シール部材30の車幅方向外側(右側)に交差するように配置される。こうして車両2では、シール部材30とフードヒンジ10とが車幅方向内外に並ぶことで、シール部材30をエプロンパネル5側まで通せないようになる。そして車両2では、シール部材30の車幅方向外側に、フードヒンジ10が配置された空間部7が形成される。このフードヒンジ10の配置された空間部7は、図4に示すように車両前後方向に延びるように形成されて、車外に連通している(図4では、便宜上、遮断部材の図示を省略する)。
【0016】
上記した車両2では、その走行時等において、図2及び図4に示す空間部7に車両前後方向に流れる空気流れが生じ易くなる。そしてこの種の構成では、空間部7の空気流れを抑制するなどして、エンジンルームER内の空気が過度に外部に流出しないように配慮することが望ましい。そこで本実施例の車両2のシール構造では、後述する遮断部材40によって、シール部材30の車幅方向外側(右側)に生じる空気流れを極力抑制することとした。以下、車両2のシール構造を、その右側の部材を一例として、カウルルーバ20、シール部材30、エプロンパネル5、フードヒンジ10、遮断部材40の順に詳述する。
【0017】
[カウルルーバ]
カウルルーバ20は、図1及び図2を参照して、フロントガラス6から流下した水を車両2の車幅方向両端まで導くと共に、外気導入機能を持った車体外装部品である。このカウルルーバ20の本体部分20Bは、上記したように車幅方向に延びるように形成されており、その右寄り位置に、ワイパー100の回転軸が通される孔部Hが形成されている。また図3に示す本体部分20Bは、その後端部21がフロントガラス6に沿うように緩やかに傾斜することで、フロントガラス6の下端部に接続されている。また本体部分20Bには、その後端部21の車両前側に、雨水等を車幅方向両側に導く谷部22が車幅方向に延びるように設けられている。この谷部22は、底板部221と、前板部222と、後板部223とから断面略U字形に形成されている。そして本体部分20Bは、その谷部22の底板部221がカウルパネル23に支持されている。なおカウルパネル23は、ダッシュパネルと共にエンジンルームERと車室Rとを仕切るパネルである。
【0018】
[シール部材]
また図3に示す谷部22には、その前板部222の上端位置に、車両前側に張り出す棚状の支持部24が車幅方向に延びるように設けられている。この支持部24の上面に、車幅方向に延びるシール部材30が支持されている。そしてシール部材30は、カウルルーバ20の支持部24に支持されることで、エンジンフード4の後部側に当てられるように配置されている。上記した構成では、車幅方向に延びる支持部24にシール部材30を支持させて、このシール部材30の支持性を確保することにより、後述する遮断部材40との位置関係をより適切に維持できるようになる(図10参照)。
【0019】
また図2に示すカウルルーバ20には、その支持部24の車幅方向外側(右側)に、車幅方向外側且つ下側に曲げられた延長部25が形成されている。この延長部25は、図2及び図5を参照して、フードヒンジ10を避けるように車両下側に曲げられたのち、エプロンパネル5に向けて延びるように車幅方向外側に延設されている。また延長部25の車幅方向外側の端部には、車両下側に曲げられたフランジ部26が車両前側に張り出すように形成されている。そしてフランジ部26が他の車体部に固定されることで、このフランジ部26の設けられた延長部25が、後述するエプロンパネル5に近接又は隣接配置されている。なお延長部25とエプロンパネル5間に隙が設けられる場合、この隙を埋める隙詰め部材27を、延長部25の車両後側等に設けることができる。
【0020】
[エプロンパネル]
次に、図2に示すエプロンパネル5は、エンジンルームERの側壁部を構成する縦壁状に設けられている。このエプロンパネル5は、図5に示すように、その上部側が車幅方向外側(右側)に緩やかに曲げられることで、外装材であるフェンダパネル3に連続している。そしてエプロンパネル5の上端部510には、エンジンフード4との間隙をシールするシール材520が車両前後方向に延びるように設けられている。なおエプロンパネル5の車幅方向外側には、エンジンルームER内の上部骨格を構成するアッパメンバ8が車両前後方向に延びるように設けられている。
【0021】
[カウルルーバとエプロンパネル間の空間部]
ここで図2及び図5を参照して、エンジンルームERには、エプロンパネル5とシール部材30の間、即ち、シール部材30の車幅方向外側(右側)に空間部7が形成されている。この空間部7は、図5に示すシール部材30の位置において、閉じ状態のフードヒンジ10と、カウルルーバ20の延長部25と、エプロンパネル5とに囲まれることで、正面視で略三角形状に形成されている。また空間部7は、図4に示すように、後述するフードヒンジ10が配設されることで、車両前後方向に延びるように形成されている。そして空間部7は、エンジンフード4の後端部側に設けられた間隙70に連続することで、フロントガラス6の手前の位置で車外に連通している。
【0022】
[フードヒンジ]
次に、図1及び図2に示すフードヒンジ10は、エンジンフード4を上下回動(開閉)可能に支持する部材である。このフードヒンジ10は、図4に示すように、閉じ状態のエンジンルームER内で車両前後方向に延びる第一ヒンジ部11を有している。この第一ヒンジ部11は、図5に示す断面視で略横L字形に形成されており、エンジンフード4の下面に沿う横壁部12と、この横壁部12から車両下側に曲げられた縦壁部13とから構成されている。そして第一ヒンジ部11は、その横壁部12がエンジンフード4に締結等されることで、このエンジンフード4の下面に沿うように固定されている(図10参照)。また第一ヒンジ部11は、図4に示すように、その後部14が側面視で略U字をなすように車両下側に曲げられている。そして第一ヒンジ部11の後部14は、図示しないフードヒンジ10の第二ヒンジ部に対して上下回動可能に軸支されている。なお第二ヒンジ部は、エンジンフード4内の車体部に固定でき、例えばアッパメンバに固定することができる。こうしてフードヒンジ10は、その第一ヒンジ部11がエンジンフード4に固定されることで、上記した空間部7の上部側で車両前後方向に延びるように配置されている。
【0023】
[遮断部材]
そして図2に示す遮断部材40は、エンジンルームER内の空気流れを遮る部材である。この遮断部材40は、上記したシール部材30に隣接する空間部7部分の正面形状に倣って、正面視で略三角形状をなす板状に形成されている。また図5及び図6を参照して、遮断部材40は、その底辺に相当する上縁部41が、エンジンフード4の下面に沿うように車幅方向に延びている。この遮断部材40の上縁部41には、エンジンフード4に対する固定用の左右一対の固定部42,43が設けられている。そして遮断部材40の上縁部41側には、一対の固定部42,43の間に、第一ヒンジ部11を通すための跨ぎ部44が形成されている。この跨ぎ部44は、上記した第一ヒンジ部11の断面形状に倣った略横L字形に形成されて、遮断部材40を厚み方向に貫通している。
【0024】
また図5及び図6を参照して、遮断部材40は、その上縁部41を除く外周縁部分が、空間部7を囲むカウルルーバ20とエプロンパネル5に沿うように形成されている。即ち、遮断部材40は、その下端を頂点とする三角形状に形成されることで、車幅方向内側(左側)で傾斜状に延びる内側の外縁部45と、車幅方向外側(右側)で傾斜状に延びる外側の外縁部46とを有している。そして内側の外縁部45は、本発明の外縁部に相当し、跨ぎ部44の車幅方向内側に形成されて、シール部材30に近づく方向(左側)に延びている。更に内側の外縁部45は、車両上側に向かうにつれて次第に車幅方向内側に張り出すことで、カウルルーバ20の延長部25に沿うように配置できる。また外側の外縁部46は、車両上側に向かうにつれて次第に車幅方向外側に張り出すことで、エプロンパネル5の下端側から上端部510にかけての部分に沿うように配置できる。
【0025】
そして図6図8を参照して、遮断部材40には、その下側の外縁側に、外端に向かうにつれて次第に車両後側に傾く傾斜部位47が形成されている。この傾斜部位47は、内側の外縁部45と外側の外縁部46とに連続して形成されている。更に内側の外縁部45には、その車幅方向内側(左側)に、内側の傾斜部位47Bが車両後側に傾くように設けられている。ところで図9を参照して、自由状態の遮断部材40は、その外形寸法(車両上下方向及び車幅方向の寸法)が空間部7よりも若干大きく形成されている。このため図9に示すように遮断部材40を空間部7に当てはめた場合、その外縁側の傾斜部位47が、空間部7を囲むエプロンパネル5と延長部25から車両下側等にはみ出すようになる。更に内側の外縁部45では、その内側の傾斜部位47Bが、シール部材30の右端31Eよりも車幅方向内側にはみ出すようになる。
【0026】
[遮断部材の配設作業]
図2及び図5を参照して、遮断部材40は、その厚み方向を車両前後方向に向けた状態で、エンジンフード4の適宜の位置に固定しておくことができる。即ち、エンジンフード4に左右一対の固定部42,43をクリップ止め等で固定することで、この各固定部42,43の設けられた遮断部材40をエンジンフード4に固定することができる。そして遮断部材40では、その跨ぎ部44に第一ヒンジ部11が車両前後方向から挿通される。これにより、遮断部材40は、その跨ぎ部44によってフードヒンジ10を車両上下方向から跨いだ状態でエンジンフード4に固定される。このとき跨ぎ部44を予め所定形状に形成しておくことで、フードヒンジ10との干渉をより確実に回避できるようになる。そして遮断部材40は、図5及び図10を参照して、後述するようにエンジンフード4を閉じ状態とすることで、シール部材30に隣接する空間部7部分に嵌められるようになる。
【0027】
[遮断部材の素材]
ここで遮断部材40の素材は、空気流れの遮断性を確保できる限り特に限定されず、樹脂やエラストマやゴムや金属等の各種素材を適宜選択できる。例えば図6に示す遮断部材40は、左右一対の剛性部位50,51と、この剛性部位50,51の回りに形成された軟性部位52とを有している(図6では、便宜上、各剛性部位にハッチをつけて図示し、ハッチの付けられていない軟性部位と区別する)。左右一対の剛性部位50,51は、樹脂等の剛性に優れる素材で形成されており、遮断部材40の上部側で左右に分かれて設けられている。そして各剛性部位50,51によって左右の固定部42,43が形成されることにより、エンジンフード4に対する遮断部材40の取付性をより確実に確保できるようになる。また軟性部位52は、ゴムやエラストマ等のゴム弾性を備えた素材で形成されており、適度な可撓性を有している。この軟性部位52は、各剛性部位50,51の周りに形成されることで、遮断部材40の外縁側、即ち、傾斜部位47(47B)を構成している。そして、後述するように空間部7に遮断部材40を嵌めた際に、その傾斜部位47(47B)が適度に撓みながら、カウルルーバ20とエプロンパネル5とに当てられるようになり、密閉性の確保に資する構成となる(図5図11参照)。
【0028】
[車両のシール構造によるシール態様]
図2及び図3に示す車両2のシール構造では、エンジンフード4を閉じた場合、シール部材30によって、エンジンフード4とカウルルーバ20(車体部)との間の間隙をシールする。しかし車両2では、図2に示すフードヒンジ10が邪魔となって、エンジンルームERの端部までシール部材30を通せない構成となっている。このため上記した構成では、シール部材30の車幅方向外側(右側)に空間部7が形成され、この空間部7で車両前後方向に流れる空気流れが生じ易くなる(図4参照)。そしてエンジンルームER内の空気が空間部7を通じて車外に過度に流出した場合、この流出した空気が原因となってフロントガラス6付近に乱流が生じ、風切音などの異音が生じるおそれがある。またエンジンルームER内の空気と外気とに温度差がある場合、この温度差のあるエンジンルームER内の空気が意図せず流出するおそれもある。
【0029】
そこで車両2のシール構造では、図5及び図10に示すように、エンジンルームERが閉じられた状態において、エンジンルームER内の空気流れを遮る遮断部材40が、フードヒンジ10を跨ぎつつ、シール部材30とエプロンパネル5(側壁部)とに渡される方向に延設されている。上記した構成では、シール部材30の車幅方向外側(右側)に生じる空気流れを、遮断部材40の働きで極力抑制できるようになる。そこで以下に、遮断部材40の働きをより具体的に説明する。
【0030】
[遮断部材の働き]
先ず、図5及び図10に示す車両2のシール構造では、エンジンフード4が閉じられることで、このエンジンフード4に固定された遮断部材40が、シール部材30よりも若干車両前側の位置で空間部7に嵌められる。ここで図9を参照して、遮断部材40は、その外形寸法が相対的に大きく形成されることで、その下側の傾斜部位47がエプロンパネル5と延長部25から車両下側等にはみ出すようになる。そこで本実施例では、図11に示すように外縁側の傾斜部位47を車両上側に傾かせながら延長部25等に押し当てることで、遮断部材40を、延長部25等に密着させておけるようになる。これにより、図5に示す遮断部材40では、内側の外縁部45を、カウルルーバ20の延長部25に密着させ、外側の外縁部46を、エプロンパネル5に密着させられるようになる。
【0031】
更に図5に示す遮断部材40では、その内側の傾斜部位47Bが、シール部材30の右端31Eよりも車幅方向内側(左側)にはみ出すようになる。そして内側の傾斜部位47Bは、図10に示すように車両後側に傾斜することで、シール部材30に近づくように延びている。これにより、遮断部材40を、シール部材30との間の隙61を極力詰めた状態で、空間部7内に配置しておけるようになる。更に、支持部24によってシール部材30の支持性を確保したことで、このシール部材30と遮断部材40間の隙61の開口寸法を適切に維持できるようになる。なお図5を参照して、遮断部材40では、その外側の外縁部46と、エプロンパネル5側のシール材520との間に隙60を設けておくことができる。こうすることで、遮断部材40の左右の寸法のばらつきを、上記した隙60によって吸収できるようになる。
【0032】
こうして図5及び図10を参照して、エンジンルームER内の空間部7では、遮断部材40が、フードヒンジ10を跨ぎつつ、シール部材30とエプロンパネル5(側壁部)とに渡される方向に延設される。そして空間部7では、遮断部材40の働きにより、シール部材30と延長部25とエプロンパネル5とにかけての部分が連続してシールされた状態となる(図5中、シールされた領域80を太線で示す)。このため上記した構成によれば、車両走行時等において、シール部材30の車幅方向外側(右側)に生じる空気流れを、遮断部材40の働きで極力抑制できるようになる。そして、空間部7内で車両前後方向に流れる空気流れを抑制することにより、エンジンルームER内の空気が過度に車外に流出し難くなり、風切音などの異音の発生を極力抑制できるようになる。またエンジンルームER内の空気と外気とに温度差がある場合にも、この温度差のあるエンジンルームER内の空気の意図しない流出を極力抑制できる。
【0033】
更に上記した構成では、図2に示すようにエンジンフード4を開くことで、このエンジンフード4に固定された遮断部材40が、空間部7から外れて車両上側に上げられる。これにより、エンジンルームERを開いた状態では、遮断部材40を、極力人目につきにくいエンジンフード側に配置しておけるようになる。上記した構成によれば、時間経過によって遮断部材40の見栄えが変化した際にも、この遮断部材40を極力人目につかなくすることで、エンジンルームER内の意匠を極力維持することができる。またエンジンルームER内を点検等する際にも、遮断部材40が極力邪魔にならないようになる。
【0034】
以上説明した通り、本実施例では、空気流れを遮る遮断部材40が、シール部材30の車幅方向外側(右側)の位置に設けられて、フードヒンジ10を跨ぎつつエプロンパネル5(側壁部)に向けて延設されている。これにより、シール部材30とフードヒンジ10とが車幅方向内外に並んでいた場合にも、シール部材30の車幅方向外側に生じる空気流れを遮断部材40の働きで極力抑制することが可能になる。
【0035】
更に本実施例では、車幅方向に延びる支持部24にシール部材30を支持させて、シール部材30の支持性を確保することにより、遮断部材40との位置関係をより適切に維持できるようになる。そして本実施例では、跨ぎ部44によってフードヒンジ10と遮断部材40との干渉をより確実に回避することができる。また内側の外縁部45によって、遮断部材40とシール部材30とを極力近接させられるようになり、シール部材30の車幅方向外側(右側)に生じる空気流れをより確実に抑制することが可能になる。
【0036】
本実施形態の車両のシール構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、遮断部材の構成を例示したが、遮断部材の構成を限定する趣旨ではない。例えば遮断部材は、空間部の適宜の位置に配置することができ、シール部材に対して前後にずらした位置に配置してもよく、シール部材と前後の位置を合わせる(同位置に配置する)こともできる。そして遮断部材では、跨ぎ部に対して内側の外縁部が車両前後方向を向く形状(断面視で凹み形状等)とされていてもよい。また遮断部材全体又は内側の外縁部だけが、シール部材に近づくように車両前後方向に曲げられていても(屈曲又は湾曲していても)よい。また遮断部材とシール部材の位置を合わせる場合、内側の外縁部をシール部材に近づくように車幅方向に直線的に延ばすこともできる。なお遮断部材は、シール部材や、エプロンパネル側のシール材に隣接するように(隙をなくすように)寸法や形状を設定することもできる。また遮断部材の下縁側は、空間部を形成する各種の車体部に当てておくことができ、密閉性を確保できるならば傾斜部位を省略することも可能である。また遮断部材は、空間部の風流れを抑制できるならば、この空間部を断続的に密閉する(例えばエンジンフードとエプロンパネルと延長部とに部分的に当てられる)構成としてもよい。そして遮断部材は、エンジンルーム内に固定しておくこともでき、この場合には着脱自在にしておくことができる。なお遮断部材は、エンジンフードと別体でもよく、エンジンフードの一部で形成することもできる。
【0037】
また遮断部材には、車両上下方向又は車両前後方向にフードヒンジを跨ぐ跨ぎ部を形成することができる。例えば遮断部材の下側の外縁側に跨ぎ部を設けることで、フードヒンジの後部側を配置しておけるようになる。また遮断部材に、その一部が車両前後方向に曲げられた(例えば上面視で略U字形に曲げられた)跨ぎ部を形成することで、この跨ぎ部がフードヒンジを車両前後方向から跨ぐようになる。また軟性部位に設けられたスリットで跨ぎ部を形成することも可能であり、この場合にはフードヒンジがスリットを押し広げながら挿通される。
【0038】
また本実施形態では、シール部材の構成を例示したが、シール部材の構成を限定する趣旨ではない。例えばシール部材は、カウルルーバのほか、各種の車体部に支持されていてもよく、複数の車体部に架設されるように配置されていてもよい。またフードヒンジの構成も適宜変更可能であり、必ずしも車両前後方向に直線的に延びている必要はなく、若干車幅方向に傾いた状態で配置されていてもよい。またエンジンルーム内の側壁部は、エプロンパネルのほかアッパメンバ等の適宜の部材で形成することができ、シール部材の配置位置等を考慮して、選択された部材を側壁部とすることができる。またカウルルーバの構成も車種に応じて適宜変更できる。そして本実施例の構成は、シール部材とフードヒンジとが車幅方向内外に並ぶ場合に採用でき、この両部材が並ぶ構成は、エンジンルームのスペース上の制約以外にも各種想定し得る。
【符号の説明】
【0039】
2 車両
R 車室
ER エンジンルーム
3 フェンダパネル
4 エンジンフード
5 エプロンパネル(本発明の側壁部)
510 (エプロンパネルの)上端部
520 シール材
6 フロントガラス
7 空間部
8 アッパメンバ
10 フードヒンジ
11 第一ヒンジ部
12 横壁部
13 縦壁部
14 (フードヒンジの)後部
20 カウルルーバ
20B (カウルルーバの)本体部分
21 (カウルルーバの)後端部
22 谷部
221 底板部
222 前板部
223 後板部
23 カウルパネル
24 支持部
25 延長部
26 フランジ部
27 隙詰め部材
30 シール部材
31E (シール部材の)右端
40 遮断部材
41 (遮断部材の)上縁部
42,43 固定部
44 跨ぎ部
45 内側の外縁部(本発明の外縁部)
46 外側の外縁部
47 傾斜部位
47B 内側の傾斜部位
50,51 剛性部位
52 軟性部位
100 ワイパー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11