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特開2024-135577熱分解型処理システムおよび熱分解型処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135577
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】熱分解型処理システムおよび熱分解型処理方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/00 20060101AFI20240927BHJP
   C10J 3/54 20060101ALI20240927BHJP
   C10J 3/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C10G1/00 C
C10J3/54 J
C10J3/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046342
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】308024395
【氏名又は名称】荏原環境プラント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】井原 貴行
(72)【発明者】
【氏名】向井 健
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和之
(72)【発明者】
【氏名】渡部 寿基
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA01
4H129BA03
4H129BA08
4H129BB03
4H129BB05
4H129BC11
4H129BC15
4H129BC33
4H129BC35
4H129BC36
4H129NA01
4H129NA04
4H129NA20
4H129NA21
4H129NA43
(57)【要約】
【課題】バイオマスなどの酸素を含む処理対象物から高品質の油を回収することができる熱分解型処理システムを提供する。
【解決手段】熱分解型処理システムは、処理対象物を熱分解することにより熱分解ガスを生成する熱分解炉1と、熱分解ガスに対して水素化処理を行う水素化改質装置5と、水素化処理された熱分解ガス中の油成分と水分を凝縮させて、油と軽質ガスを別々に回収する凝縮装置7を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を含む処理対象物を処理する熱分解型処理システムであって、
前記処理対象物を熱分解することにより熱分解ガスを生成する熱分解炉と、
前記熱分解ガスに対して水素化処理を行う水素化改質装置と、
前記水素化処理された前記熱分解ガス中の油成分と水分を凝縮させて、油と軽質ガスを別々に回収する凝縮装置を備えている、熱分解型処理システム。
【請求項2】
前記軽質ガスから還元性ガスを回収するガス分離装置と、
前記還元性ガスを、前記熱分解炉および前記水素化改質装置の少なくとも一方に移送する還元性ガス移送ラインをさらに備えている、請求項1に記載の熱分解型処理システム。
【請求項3】
前記熱分解炉は、流動床炉の熱分解炉であり、
前記流動床炉は、流動媒体が循環する前記熱分解炉と媒体再生炉を有し、
前記熱分解型処理システムは、前記ガス分離装置によって前記還元性ガスが除去された前記軽質ガスを、前記媒体再生炉に供給する燃料ラインをさらに備えている、請求項2に記載の熱分解型処理システム。
【請求項4】
前記熱分解炉と前記水素化改質装置との間に配置され、前記熱分解炉から排出された前記熱分解ガスから粒子を分離させる固気分離装置をさらに備えている、請求項3に記載の熱分解型処理システム。
【請求項5】
前記熱分解炉に熱を供給する熱回収装置と、
前記ガス分離装置によって前記還元性ガスが除去された前記軽質ガスを、前記熱回収装置に供給する燃料ラインをさらに備えている、請求項2に記載の熱分解型処理システム。
【請求項6】
前記凝縮装置は、油スクラバと水スクラバを含む、請求項1に記載の熱分解型処理システム。
【請求項7】
前記水スクラバから排出された油水混合物を油と水に分ける油水分離器をさらに備えている、請求項6に記載の熱分解型処理システム。
【請求項8】
酸素を含む処理対象物を処理する熱分解型処理方法であって、
前記処理対象物を熱分解炉内で熱分解することにより熱分解ガスを生成し、
水素化改質装置により前記熱分解ガスに対して水素化処理を行い、
前記水素化処理された前記熱分解ガス中の油成分と水分を凝集装置により凝縮させて、油と軽質ガスを別々に回収する、熱分解型処理方法。
【請求項9】
ガス分離装置により前記軽質ガスから還元性ガスを回収し、
前記還元性ガスを、前記熱分解炉および前記水素化改質装置の少なくとも一方に移送することをさらに含む、請求項8に記載の熱分解型処理方法。
【請求項10】
前記熱分解炉は、流動床炉の熱分解炉であり、
前記流動床炉は、流動媒体が循環する前記熱分解炉と媒体再生炉を有し、
前記ガス分離装置によって前記還元性ガスが除去された前記軽質ガスを、前記媒体再生炉に供給することをさらに含む、請求項9に記載の熱分解型処理方法。
【請求項11】
前記熱分解炉と前記水素化改質装置との間に配置された固気分離装置により、前記熱分解炉から排出された前記熱分解ガスから粒子を分離させることをさらに含む、請求項10に記載の熱分解型処理方法。
【請求項12】
前記ガス分離装置によって前記還元性ガスが除去された前記軽質ガスを、熱回収装置に供給して燃焼させ、前記軽質ガスの燃焼により生じた熱を前記熱分解炉に供給することをさらに含む、請求項9に記載の熱分解型処理方法。
【請求項13】
前記凝縮装置は、油スクラバと水スクラバを含む、請求項8に記載の熱分解型処理方法。
【請求項14】
前記水スクラバから排出された油水混合物を油と水に分けることをさらに含む、請求項13に記載の熱分解型処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス、都市ごみなどの酸素を含む処理対象物を熱分解し、発生した熱分解ガスから油を回収する熱分解型処理システムおよび熱分解型処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマス、都市ごみなどの酸素を含む処理対象物を処理して再利用するマテリアルリサイクルおよびケミカルリサイクルの開発が進められている。特に、熱分解炉を使用して、バイオマスから油を回収するケミカルリサイクルへの注目が高まっている。
【0003】
ケミカルリサイクルに使用される流動床炉は、炉の内部が仕切壁で熱分解炉と媒体再生炉に分けられた構造を有している。流動媒体は熱分解炉と媒体再生炉との間を循環しながら、バイオマスなどの処理対象物は熱分解炉に投入される。処理対象物は熱分解炉内で流動媒体により加熱され、熱分解されることで大部分はガス化される。処理対象物の残渣は、流動媒体によって媒体再生炉に運ばれる。処理対象物の残渣は媒体再生炉内で燃焼して、流動媒体を加熱する。加熱された流動媒体は、熱分解炉内に移動し、熱分解炉内で熱源として機能する。このように流動媒体が炉内で循環する流動床炉は、内部循環流動床ガス化システムと呼ばれる。
【0004】
処理対象物は熱分解により熱分解ガスを発生する。この熱分解ガス中に含まれるガス状の炭化水素を凝縮させることで、分解油を回収する。上述した内部循環流動床ガス化システムは、処理対象物を熱分解し、処理対象物から分解油および分解ガスを熱分解生成物として回収することができる技術として期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6933577号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、処理対象物の熱分解により回収された分解油は、多くの酸素を含んでいるため、化学原料や燃料としての質が低く、化学基礎製品としての使用や、エンジンや高効率発電設備への使用が困難である。特に、バイオマスを熱分解することによって得られたバイオ油は、酸素含有率が高く、発熱量が石油系燃料油の半分以下である。さらに、水、および酸の副生成物により装置が腐食し、コーク生成量の増加に起因する装置および触媒のファウリングを引き起こすことがある。
【0007】
そこで、本発明は、バイオマスなどの酸素を含む処理対象物から高品質の油を回収することができる熱分解型処理システムおよび熱分解型処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、酸素を含む処理対象物を処理する熱分解型処理システムであって、前記処理対象物を熱分解することにより熱分解ガスを生成する熱分解炉と、前記熱分解ガスに対して水素化処理を行う水素化改質装置と、前記水素化処理された前記熱分解ガス中の油成分と水分を凝縮させて、油と軽質ガスを別々に回収する凝縮装置を備えている、熱分解型処理システムが提供される。
【0009】
一態様では、前記熱分解型処理システムは、前記軽質ガスから還元性ガスを回収するガス分離装置と、前記還元性ガスを、前記熱分解炉および前記水素化改質装置の少なくとも一方に移送する還元性ガス移送ラインをさらに備えている。
一態様では、前記熱分解炉は、流動床炉の熱分解炉であり、前記流動床炉は、流動媒体が循環する前記熱分解炉と媒体再生炉を有し、前記熱分解型処理システムは、前記ガス分離装置によって前記還元性ガスが除去された前記軽質ガスを、前記媒体再生炉に供給する燃料ラインをさらに備えている。
【0010】
一態様では、前記熱分解型処理システムは、前記熱分解炉と前記水素化改質装置との間に配置され、前記熱分解炉から排出された前記熱分解ガスから粒子を分離させる固気分離装置をさらに備えている。
一態様では、前記熱分解型処理システムは、前記熱分解炉に熱を供給する熱回収装置と、前記ガス分離装置によって前記還元性ガスが除去された前記軽質ガスを、前記熱回収装置に供給する燃料ラインをさらに備えている。
一態様では、前記凝縮装置は、油スクラバと水スクラバを含む。
一態様では、前記熱分解型処理システムは、前記水スクラバから排出された油水混合物を油と水に分ける油水分離器をさらに備えている。
【0011】
一態様では、酸素を含む処理対象物を処理する熱分解型処理方法であって、前記処理対象物を熱分解炉内で熱分解することにより熱分解ガスを生成し、水素化改質装置により前記熱分解ガスに対して水素化処理を行い、前記水素化処理された前記熱分解ガス中の油成分と水分を凝集装置により凝縮させて、油と軽質ガスを別々に回収する、熱分解型処理方法が提供される。
【0012】
一態様では、前記熱分解型処理方法は、ガス分離装置により前記軽質ガスから還元性ガスを回収し、前記還元性ガスを、前記熱分解炉および前記水素化改質装置の少なくとも一方に移送することをさらに含む。
一態様では、前記熱分解炉は、流動床炉の熱分解炉であり、前記流動床炉は、流動媒体が循環する前記熱分解炉と媒体再生炉を有し、前記熱分解型処理方法は、前記ガス分離装置によって前記還元性ガスが除去された前記軽質ガスを、前記媒体再生炉に供給することをさらに含む。
【0013】
一態様では、前記熱分解型処理方法は、前記熱分解炉と前記水素化改質装置との間に配置された固気分離装置により、前記熱分解炉から排出された前記熱分解ガスから粒子を分離させることをさらに含む。
一態様では、前記熱分解型処理方法は、前記ガス分離装置によって前記還元性ガスが除去された前記軽質ガスを、熱回収装置に供給して燃焼させ、前記軽質ガスの燃焼により生じた熱を前記熱分解炉に供給することをさらに含む。
一態様では、前記凝縮装置は、油スクラバと水スクラバを含む。
一態様では、前記熱分解型処理方法は、前記水スクラバから排出された油水混合物を油と水に分けることをさらに含む。
【発明の効果】
【0014】
水素化処理装置は、熱分解ガスに水素ガスを付加し、熱分解ガスに含まれる酸素と水素を反応させる。水素化処理によって生じた水分は、凝縮装置で凝縮される。液状の油と水は分離されるので、油を回収することができる。特に、水素化処理は、水分と油成分の凝縮の前に行われるので、熱分解炉から出た熱分解ガスの高い熱をそのまま利用して、水素化処理を熱分解ガスに対して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】熱分解型処理システムの一実施形態を示すブロック図である。
図2】熱分解型処理システムの他の実施形態を示すブロック図である。
図3】熱分解型処理システムのさらに他の実施形態を示すブロック図である。
図4】熱分解型処理システムのさらに他の実施形態を示すブロック図である。
図5】熱分解型処理システムのさらに他の実施形態を示すブロック図である。
図6】熱分解型処理システムのさらに他の実施形態を示すブロック図である。
図7】熱分解型処理システムのさらに他の実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、酸素を含む処理対象物を処理する熱分解型処理システムの一実施形態を示すブロック図である。熱分解型処理システムによって処理される処理対象物は、バイオマス、都市ごみなどの酸素を含む物質である。以下に説明する実施形態では、処理対象物の一例であるバイオマスが熱分解型処理システムによって処理される。
【0017】
図1に示すように、熱分解型処理システムは、バイオマスを熱分解することにより熱分解ガスを生成する熱分解炉1と、熱分解ガスに対して水素化処理を行う水素化改質装置5と、水素化処理された前記熱分解ガス中の油成分と水分を凝縮させて、油と軽質ガスを別々に回収する凝縮装置7を備えている。熱分解炉1は、バイオマスを加熱し、バイオマスを熱分解することにより熱分解ガスを生成するように構成されている。熱分解を促進させるために、分解触媒を熱分解炉1に投入してもよい。本実施形態の熱分解炉1のタイプは特に限定されず、例えば後述する流動床式熱分解炉であってもよいし、あるいはキルン式熱分解炉であってもよい。
【0018】
水素化改質装置5は、熱分解炉1の下流に配置されており、熱分解炉1によって発生した熱分解ガスは水素化改質装置5に送られる。水素化改質装置5は、高温下で熱分解ガスに水素ガスを付加し、熱分解ガスに含まれる酸素と水素を反応させる。水素化改質装置5に送られる熱分解ガスは、熱分解炉1から排出された高温のガス(例えば、400~600℃)であるので、水素化改質装置5は、熱分解ガスの高い熱をそのまま利用して、水素化処理を熱分解ガスに対して行うことができる。
【0019】
熱分解型処理システムは、水素化改質装置5に水素ガスを供給する水素ガス供給源10を備えている。水素ガス供給源10は、水素化改質装置5に接続されている。水素ガス供給源10の例としては、水素ガスボンベが挙げられる。
【0020】
凝縮装置7は、水素化改質装置5の下流に配置されている。凝縮装置7は、熱分解ガスを冷却し、熱分解ガス中の油成分と水分を凝縮させるように構成されている。凝縮装置7の具体例としては、熱交換器(具体例として多管式、スパイラル式、プレート式など)、油スクラバ、水スクラバ、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0021】
一例では、熱分解ガスは、凝縮装置7によって40℃にまで冷却される。したがって、凝縮装置7では、沸点が40℃以上の油成分および水分が凝縮され、油水混合物として排出される。凝縮装置7からは、油水混合物と軽質ガスが別々に排出される。油水混合物は、油貯留槽12に送られる。油水混合物は、油貯留槽12内で油と水に分離される。油は分解油または改質油として回収され、水は油貯留槽12の底から排出される。
【0022】
凝縮装置7から排出される軽質ガスは、例えば、水素(H)、メタン(CH)、エタン(C)、液化石油ガス(LPG)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)を含む。軽質ガスは、燃焼処理装置(図示せず)に送られ、燃焼処理される。
【0023】
水素化改質装置5は、凝縮装置7の上流に配置され、凝縮装置7で熱分解ガスが冷却される前に(すなわち、熱分解ガス中の水分と油成分の凝縮の前に)、水素化処理を熱分解ガスに対して行う。したがって、水素化改質装置5は、熱分解炉1から排出された熱分解ガスの高い熱をそのまま水素化処理に利用することができ、熱分解ガスを加熱するための加熱装置およびエネルギーが不要である。
【0024】
図2は、熱分解型処理システムの一実施形態を示すブロック図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図1を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図2に示す実施形態の熱分解型処理システムは、凝縮装置7から排出された軽質ガスから還元性ガスを回収するガス分離装置15と、水素ガスを含む還元性ガスを熱分解炉1および水素化改質装置5に移送する還元性ガス移送ライン17をさらに備えている。
【0025】
ガス分離装置15は、凝縮装置7の下流に配置されており、凝縮装置7から排出された軽質ガスは、ガス分離装置15に送られる。ガス分離装置15の具体的構成は特に限定されないが、例えば圧力スイング吸着装置(PSA)やガス分離膜をガス分離装置15に使用することができる。ガス分離装置15で回収された還元性ガスは、還元性ガス移送ライン17を通って熱分解炉1および必要に応じて水素化改質装置5に移送される。
【0026】
図2に示す実施形態では、ガス分離装置15は、分子量が小さい水素ガス、メタン、エタンおよび一酸化炭素ガスを軽質ガスから回収するように構成されている。ガス分離装置15によって回収された水素ガスおよび一酸化炭素ガス等は、還元性ガスとして還元性ガス移送ライン17を通って熱分解炉1および必要に応じて水素化改質装置5に移送される。少なくとも水素ガスを含む還元性ガスは、熱分解炉1に送られるので、バイオマスの熱分解時のコークの生成を抑制することができる。
【0027】
上述した水素ガス供給源10は、還元性ガス移送ライン17に連結されている。本実施形態では、還元性ガス移送ライン17は、ガス分離装置15から熱分解炉1および水素化改質装置5の両方に延びている。熱分解炉1に送られた水素ガスは、熱分解炉1内でパージガスとしても機能する。パージガスは、熱分解炉1内に滞留している熱分解ガスを下流へ排出するためのガスであり、熱分解ガスの滞留時間調整に用いてもよい。熱分解炉1および水素化改質装置5での還元性ガス必要量がパージガス量を上回る場合、必要な還元性ガスは水素化改質装置5に直接供給される。
【0028】
一実施形態では、還元性ガス移送ライン17は、ガス分離装置15から熱分解炉1または水素化改質装置5のいずれかに延びてもよい。この構成の場合は、ガス分離装置15で回収された還元性ガスは、熱分解炉1を経由して、または熱分解炉1を経由せずに、水素化改質装置5に送られる。
【0029】
凝縮装置7から排出された軽質ガスに含まれる水素ガスは、ガス分離装置15によって回収され、再び水素化改質装置5での水素化処理に使用される。すなわち、水素ガスは、水素化改質装置5とガス分離装置15との間を循環しながら水素化に必要な水素ガスが消費される。本実施形態によれば、水素ガスの消費量を削減することができる。水素化改質装置5での水素化処理に必要な水素ガスの量に応じて、水素ガスは水素ガス供給源10から還元性ガス移送ライン17を通って水素化改質装置5に供給される。
【0030】
熱分解型処理システムは、熱分解炉1に熱を供給する熱回収装置20と、ガス分離装置15によって還元性ガスが除去された軽質ガスを熱回収装置20に供給する燃料ライン21をさらに備えている。還元性ガスが除去された軽質ガスは、例えば、分子量がより大きいプロパン、ブタンなどの液化石油ガス(LPG)および二酸化炭素(CO)を含み、燃料として熱回収装置20内で燃焼されて、熱を発生する。熱回収装置20内で生じた熱は、熱分解炉1(例えばキルン式熱分解炉)の熱源として消費される。
【0031】
図3は、熱分解型処理システムの一実施形態を示すブロック図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図2を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図3に示す実施形態の熱分解型処理システムは、油貯留槽12に接続された水素化分解装置25と、水素化分解装置25に接続された蒸留塔28をさらに備えている。
【0032】
油貯留槽12内の油の一部または全部は、ポンプ30により水素化分解装置25に移送される。水素化分解装置25は、油貯留槽12内に回収された油に対して、高温下(例えば、400~600℃)および加圧下(例えば、1MPa以上)で水素化処理をさらに実行するように構成されている。水素化分解装置25での水素化処理に使用される水素ガスは、水素ガス供給源10から供給される。水素化分解装置25での水素化処理により、油に含まれる微量の酸素、硫黄、窒素などが除去される。
【0033】
水素化分解装置25により水素化処理された油は、蒸留塔28に送られ、ここで軽質油と重質油に分けられる。蒸留塔28から排出された水素、硫化水素、アンモニアは、ガス分離装置15に送られる。蒸留塔28で凝縮分離された水は、蒸留塔28の付帯設備から排出される。
【0034】
図3に示す水素化分解装置25と蒸留塔28は、油貯留槽12において回収された油に要求される品質に基づいて適宜設けられる。
【0035】
図4は、流動床炉を利用した熱分解型処理システムの一実施形態を示すブロック図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図3を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0036】
図4に示す実施形態の熱分解型処理システムは、酸素を含む処理対象物の一例であるバイオマスを熱分解し、さらに燃焼させる流動床炉40を備えている。流動床炉40は、バイオマスを熱分解し、熱分解ガスを生成する熱分解炉1と、熱分解されたバイオマスの残渣を燃焼する媒体再生炉44を備えている。図3に示す熱回収装置20は、図4の実施形態では設けられていない。
【0037】
熱分解炉1および媒体再生炉44は、1つの流動床炉40内に形成されている。すなわち、流動床炉40の内部は、仕切壁45によって熱分解炉1と媒体再生炉44に仕切られている。原料であるバイオマスは、図示しない原料供給装置によって熱分解炉1内に供給される。流動床炉40の全体の形状は特に限定されないが、例えば円筒形または矩形を有している。
【0038】
熱分解炉1および媒体再生炉44内には、流動媒体(例えば珪砂)が収容されている。流動媒体を流動させるために、熱分解炉1および媒体再生炉44には流動化ガスが供給される。熱分解炉1への流動化ガスは、ガス分離装置15で回収された水素ガスを含む還元性ガスと水素ガス供給源10から供給されるフレッシュな水素ガスから構成されている。すなわち、ガス分離装置15で回収された水素ガスを含む還元性ガスはフレッシュな水素ガスと共に、還元性ガス移送ライン17を通って熱分解炉1に導かれ、流動化ガスとして流動媒体を流動化させる。媒体再生炉44には、流動化ガスとして圧縮空気が供給される。
【0039】
流動媒体は熱分解炉1と媒体再生炉44との間を循環しながら、バイオマスは熱分解炉1に投入される。バイオマスは熱分解炉1内で流動媒体により加熱され、熱分解されることで、熱分解ガスが生成される。バイオマスの残渣は、流動媒体によって媒体再生炉44に運ばれる。バイオマスは媒体再生炉44内で燃焼して、流動媒体を加熱する。加熱された流動媒体は、熱分解炉1内に移動し、熱分解炉1内で熱源として機能する。このように流動媒体が炉内で循環する流動床炉40は、内部循環流動床ガス化システムである。
【0040】
熱分解型処理システムは、熱分解炉1から排出された熱分解ガスから粒子を分離させる固気分離装置50をさらに備えている。固気分離装置50で除去される粒子の具体例としては、バイオマスの熱分解時に生成される高分子重合物およびコーク残渣、流動媒体(例えば珪砂微粉)、および触媒微粉などが挙げられる。固気分離装置50の例としては、遠心力により粒子を熱分解ガスから分離させるサイクロン型固気分離装置が挙げられる。
【0041】
固気分離装置50は、熱分解炉1と水素化改質装置5との間に配置されており、熱分解炉1から排出された熱分解ガスは、固気分離装置50に導かれる。固気分離装置50により除去された粒子は、媒体再生炉44に戻される。一実施形態では、固気分離装置50により除去された粒子は、熱分解炉1に戻されてもよい。熱分解ガス中の粒子は、固気分離装置50によって除去され、結果として、後段の油貯留槽12で回収される油の品質を向上させることができる。
【0042】
図5は、流動床炉40を利用した熱分解型処理システムの一実施形態を示すブロック図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図4を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0043】
図5に示す実施形態の熱分解型処理システムは、凝縮装置7と油貯留槽12との間に配置された油水分離器53をさらに備えている。凝縮装置7により生成された油水混合物は、油水分離器53に送られ、油水分離器53は、油を水から分離するように構成されている。油水分離器53の具体的構成は特に限定されないが、例えばコアレッサーや沈降分離槽を油水分離器53に使用することができる。油水分離器53により分離された油は油貯留槽12に送られ、油貯留槽12内に溜められる。油水分離器53により油から分離された水は、油水分離器53から排出される。
【0044】
図6は、流動床炉40を利用した熱分解型処理システムの他の実施形態を示すブロック図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図5を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0045】
図6に示す実施形態の熱分解型処理システムは、凝縮装置7とガス分離装置15との間に配置された洗浄装置55をさらに備えている。洗浄装置55は、その内部を通過する軽質ガスに洗浄液を接触させることで、軽質ガスを洗浄液で洗浄するように構成されている。洗浄液としては水などの液体を使用することができる。使用される洗浄装置55の具体的構成は特に限定されず、公知のスクラバなどの洗浄装置を使用することができる。例えば、気体の通路が内部に形成された塔と、通路を流れる気体に水を噴霧するスプレーノズルを備えた洗浄塔を洗浄装置55として用いることができる。
【0046】
凝縮装置7から排出された軽質ガスは、洗浄装置55に導かれる。蒸留塔28から排出された水素、硫化水素、アンモニアも、洗浄装置55に送られる。洗浄装置55により軽質ガスから微粉、アンモニアなどの水溶性物質が除去される。洗浄装置55を通過した軽質ガスは、ガス分離装置15に送られる。
【0047】
図7は、流動床炉40を利用した熱分解型処理システムのさらに他の実施形態を示すブロック図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図6を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0048】
図7に示す実施形態では、凝縮装置7として、油スクラバ60と水スクラバ56の組み合わせが用いられている。すなわち、凝縮装置7としての油スクラバ60と水スクラバ56は、水素化処理された熱分解ガスを2段階で冷却し、油成分および水分を凝縮させる。油スクラバ60は、水素化改質装置5の下流に配置されている。油スクラバ60は、水素化改質装置5、水スクラバ56、および油貯留槽12に連結されている。水素化改質装置5によって水素化処理された熱分解ガスは、油スクラバ60に導かれる。
【0049】
油スクラバ60では、その底部で回収した重質油を冷却した後、重質油を熱分解ガスに噴霧することで、熱分解ガスを冷却し、熱分解ガス中のガス状の油成分を凝縮させる。一実施形態では、回収された重質油に代えて、外部から供給された油を油スクラバ60内で噴霧してもよい。
【0050】
一例では、熱分解ガスは、油スクラバ60により150℃にまで冷却される。したがって、油スクラバ60では、沸点が150℃以上の油成分が凝縮される。凝縮された油と、噴霧された油は、重質油として油スクラバ60から排出され、油貯留槽12内に溜められる。使用される油スクラバ60の具体的構成は特に限定されず、公知の油スクラバを使用することができる。例えば、気体の通路が内部に形成された塔と、通路を流れる気体に油を噴霧するスプレーノズルを備えた洗浄塔を油スクラバ60として用いることができる。
【0051】
水スクラバ56は、油スクラバ60とガス分離装置15との間に配置されている。水スクラバ56は、さらに油水分離器53に連結されている。水スクラバ56は、油スクラバ60を通過した熱分解ガスに水を接触させ、熱分解ガスをさらに冷却する。本実施形態では、水スクラバ56は、アルカリ水を熱分解ガスに接触させている。熱分解ガスは、水(本実施形態ではアルカリ水)との接触によって冷却される。例えば、熱分解ガスは、水スクラバ56により150℃から40℃にまで冷却される。したがって、水スクラバ56では、概ね沸点が150℃から40℃の範囲内にある油成分および水分が凝縮される。油水混合物は、水スクラバ56から排出され、油水分離器53に送られる。油水分離器53は、油(例えば40℃の軽質油)をアルカリ水から分離するように構成されている。水スクラバ56によって油成分および水分が除去された熱分解ガスは、軽質ガスとしてガス分離装置15に送られる。
【0052】
本実施形態によれば、油スクラバ60および水スクラバ56によって熱分解ガスに含まれる油が回収されるので、熱分解ガス中の微粉や水溶性物質ガスが除去されると共に油の全体の収率が向上する。
【0053】
図3乃至図7に示す水素化分解装置25と蒸留塔28は省略されることもある。図1乃至図7を参照して説明した実施形態は、適宜組み合わせることができる。例えば、図7に示す油スクラバ60と水スクラバ56との組み合わせからなる凝縮装置7は、図1乃至図3を参照して説明した実施形態に適用してもよい。
【0054】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0055】
1 熱分解炉
5 水素化改質装置
7 凝縮装置
10 水素ガス供給源
12 油貯留槽
15 ガス分離装置
17 還元性ガス移送ライン
20 熱回収装置
21 燃料ライン
25 水素化分解装置
28 蒸留塔
40 流動床炉
44 媒体再生炉
45 仕切壁
50 固気分離装置
53 油水分離器
55 洗浄装置
56 水スクラバ
60 油スクラバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7