(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135578
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】照射制御システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240927BHJP
B60Q 1/04 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G08G1/16 A
B60Q1/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046345
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】弁理士法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高島 亨
(72)【発明者】
【氏名】岡野 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】溝尾 駿
(72)【発明者】
【氏名】野澤 優介
(72)【発明者】
【氏名】長川 研太
(72)【発明者】
【氏名】平中 貴士
(72)【発明者】
【氏名】小西 翔太
【テーマコード(参考)】
3K339
5H181
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA07
3K339BA21
3K339BA30
3K339CA01
3K339FA04
3K339GB01
3K339HA13
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3K339KA06
3K339KA27
3K339LA02
3K339LA06
3K339MA01
3K339MB05
3K339MC03
3K339MC41
3K339MC43
3K339MC78
3K339MC81
5H181AA02
5H181AA03
5H181AA07
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】複数の移動体の速度低下を抑制することである。
【解決手段】本照明制御システムにおいて、第1移動体と第2移動体との相対位置関係に基づいて、第1移動体と第2移動体との少なくとも一方の照明装置が制御される。例えば、相対位置関係が、2台の移動体の一方が、他方の照明装置の光の影響を近い将来受ける可能性があると推定される関係にある場合に、他方の移動体の照明装置が、能力が低下するように制御されるようにすることができる。それにより、一方の移動体において、他方の移動体の照明装置の光の影響を受け難くすることができ、他方の移動体の照明装置の光の影響に起因する速度低下を抑制することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動体のうちの1台である第1移動体と、前記第1移動体とは別の移動体である第2移動体との相対位置関係に基づいて、前記第1移動体と前記第2移動体との少なくとも一方の照明装置を制御する照明制御部を含む照明制御システム。
【請求項2】
前記照明制御部が、前記第1移動体の照明装置と前記第2移動体の照明装置とのうち光の到達距離であるヘッドライト到達距離が長い方を、前記ヘッドライト到達距離が短くなるように制御する請求項1に記載の照明制御システム。
【請求項3】
前記照明制御部が、前記第1移動体と前記第2移動体との相対位置関係が、前記第1移動体と前記第2移動体との間の距離である移動体間距離から、前記第1移動体と前記第2移動体とのうち前記照明装置の光の到達距離であるヘッドライト到達距離が長い方を引いた値である余裕値が0より大きく、かつ、0より大きい設定値より小さい場合に、前記ヘッドライト到達距離が長い方の照明装置を、前記ヘッドライト到達距離が短くなるように制御する請求項1または2に記載の照明制御システム。
【請求項4】
前記照明制御部が、前記第1移動体と前記第2移動体との相対位置関係が、前記第1移動体の照明装置の光の照射領域であるヘッドライト照射領域と、前記第2移動体の照明装置のヘッドライト照射領域との少なくとも一部同士が重なる関係にある場合に、前記第1移動体と前記第2移動体との少なくとも一方の照明装置を、前記ヘッドライト照射領域が狭くなるように制御することにより、前記少なくとも一部同士が重なる部分である重なり部を狭くし、かつ、前記第1移動体の照明装置のヘッドライト照射領域と前記第2移動体の照明装置のヘッドライト照射領域との間の隙間を設定隙間より小さくする請求項1または2に記載の照明制御システム。
【請求項5】
前記照明制御部が、前記第1移動体と前記第2移動体との相対位置関係が、前記第1移動体の照明装置の光の照射領域であるヘッドライト照射領域と、前記第2移動体の照明装置のヘッドライト照射領域との少なくとも一部同士が重なる関係にある場合に、前記第1移動体の照明装置と前記第2移動体の照明装置とのうちの前記ヘッドライト照射領域を狭くした場合のエネルギ低減量が大きい方を、前記ヘッドライト照射領域が狭くなるように制御する請求項1に記載の照明制御システム。
【請求項6】
前記照明制御部が、前記第1移動体と前記第2移動体との相対位置関係が、前記第1移動体の照明装置の光の照射領域であるヘッドライト照射領域と、前記第2移動体の照明装置のヘッドライト照射領域との少なくとも一部同士が重なる関係にある場合に、前記第1移動体の照明装置と前記第2移動体の照明装置とのうち、前記照明装置の光源に電力を供給する電源であるバッテリの残容量が少ない方を、前記ヘッドライト照射領域が狭くなるように制御する請求項1に記載の照明制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照射装置を制御する照射制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、例えば、交差点において、車両である自車両が右折する場合において、自車両の照明装置による光の照射により、交差点を対向して直進する別の車両である他車両の運転者が眩惑状態にあると推定される場合にはそうでない場合より、車間距離がより広い状態で自車両の右折の支援が行われることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、複数の移動体の速度低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段、作用および効果】
【0005】
本発明に係る照明制御システムにおいて、複数の移動体の相対位置関係に基づいて、複数の移動体のうちの少なくとも1台の照明装置が制御される。
例えば、複数の移動体のうちの1台の第1移動体と、第1移動体とは別の移動体である第2移動体との相対位置関係が、近い将来、第1移動体が第2移動体の照明装置の光の影響を受けると推定される関係である場合には、第2移動体の照明装置の制御を行うことにより、ヘッドライト到達距離を短くすることができる。それにより、第1移動体において、第2移動体の照明装置の光の影響を受け難くすることができ、第2移動体の照明装置の光の影響に起因する速度低下を抑制することができる。
【0006】
また、第1移動体の照明装置のヘッドライト照射領域と第2移動体の照明装置のヘッドライト照射領域との少なくとも一部同士が重なる場合に、第1移動体と第2移動体との少なくとも一方の照明装置の制御を行うことにより、ヘッドライト照射領域を狭くして、重なり部を小さく、かつ、隙間を小さくすることができる。それにより、第1移動体と第2移動体との間に、物体を認識し難くなる領域が生じ難くすることができ、第1移動体と第2移動体とのうちの少なくとも一方において、物体の認識が困難であることに起因する速度低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る照明制御システムにおける移動体、管制装置を概念的に示す図である。
【
図2】上記照明制御システム全体を概念的に示す図である。
【
図3】上記照明制御システムにおける移動体の照明装置の制御の一例を概念的に示す図である。
【
図4】上記照明制御システムにおける移動体の照明装置の制御の別の一例を概念的に示す図である。
【
図5】上記照明制御システムの管制装置の管制ECUにおいて実行される眩惑防止照明制御プログラムの一例を概念的に表すフローチャートである。
【
図6】上記管制ECUにおいて実行される省エネ対応照明制御プログラムの一例を概念的に表すフローチャートである。
【
図7】上記移動体の移動体ECUにおいて実行される移動体照明制御プログラムの一例を概念的に表すフローチャートである。
【
図8】前記管制ECUにおいて実行される照明制御プログラムの一例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態に係る照明制御システムを図面に基づいて説明する。本照明制御システムは管理システムでもある。
【実施例0009】
本実施例に係る照明制御システムは、
図1,2に示すように、例えば、鉱山等で作業を行う複数の移動体Vと通信可能な管理装置としての管制装置C、1つ以上のアンテナA等を含む。これら複数の移動体Vと管制装置Cとは、直接またはアンテナAを介して無線の通信を行う。
【0010】
複数の移動体Vは、少なくとも1台以上の大型移動体HVと、1台以上の小型移動体LVとを含む。本実施例において、これら大型移動体HV、小型移動体LV等を総称して、または、個別に単に移動体Vと称する場合がある。
【0011】
1台以上の大型移動体HVの各々は、重機としたり、大型ダンプとしたりすること等ができる。大型移動体HVは、本実施例においては、鉱山で作業を行う移動体である。また、大型移動体HVは、管制装置Cからの指令に基づいて自動で作動(移動を含む)させられる自動走行移動体である。
1台以上の小型移動体LVの各々は、大型移動体HVより大きさが小さい移動体である。小型移動体LVは、作業員を乗せたり、作業に要する荷物を載せたりして、走行することが多い。小型移動体LVは、運転者による運転操作が行われなくても走行可能な自動運転移動体(自動走行移動体)であっても、運転者による運転操作により走行可能なマニュアル運転移動体であってもよい。
【0012】
複数の移動体Vは、
図1に示すように、移動体Vを駆動する駆動装置D、移動体Vを制動する制動装置B、移動体Vの操舵輪を転舵する転舵装置T、GPS(Global Positioning System)受信機10、周辺情報取得装置12、移動体通信装置14、照明装置16、移動体ECU20等を含む。
大型移動体HVと小型移動体LVとにおいて、照明装置16H,16Lを除く他の構成要素(駆動装置D,GPS受信機10等)についてはこれらを区別することなく説明する。また、大型移動体HVの照明装置16H,小型移動体LVの照明装置16Lを、区別しないで説明する場合、これらを総称する場合等には、単に、照明装置16と称する。
【0013】
駆動装置D,制動装置B,転舵装置Tは、本発明とは関係がないため説明を省略する。
GPS受信機10は、GNSS(Global Navigation Satellite System)の一例であるGPSからの信号(例えば、GPS信号)を受信するものであり、GPS信号に基づいて、移動体V自身である自移動体Vの位置が取得される。GPS信号に基づいて、自移動体Vの緯度、経度、高度の3次元の位置が取得されるようにしても、緯度、経度の2次元の位置が取得されるようにしてもよい。
【0014】
周辺情報取得装置12は、複数のカメラ、ライダ等を含み、当該周辺情報取得装置12が搭載された移動体Vである自移動体Vの周辺の物体を認識するとともに、その物体と自移動体Vとの相対位置関係等を取得する。
【0015】
また、周辺情報取得装置12に含まれるカメラは、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)カメラとすることができ、複数の画素を含むものとすることができる。画素の各々は、入射光の光量に応じた電圧(電気信号)を出力するものであり、入射光の光量が飽和露光量に達すると、電圧は飽和出力電圧となり、それ以上高くならない。なお、光量は、光束の時間積分値であり、露光量は、撮像時に画素に入射された光量である。
したがって、画素の出力電圧が飽和出力電圧に達すれば、画素に飽和露光量以上の光量の光が入射したことが分かる。また、出力電圧が飽和出力電圧に達した画素の数が多い場合は少ない場合より、CCDカメラが受けた光の影響が大きいことが分かる。
【0016】
本実施例においては、例えば、周辺情報取得装置12において、入射光の光量が飽和露出光量に達した画素の数が設定数以上である(設定比率以上である)場合には、CCDカメラにより、自移動体Vの周辺の物体を精度よく認識することが困難になると考えられる。そのため、設定数以上(設定比率以上)の画素において入射光の光量が飽和露光量に達した場合には、CCDカメラが眩惑状態になった、CCDカメラが他移動体Vの照明装置16の光の影響を受けたと考えることができる。このように、周辺情報取得装置12(CCDカメラ)は、光検出装置としての機能を有すると考えることができる。
【0017】
本実施例においては、周辺情報取得装置12において、設定数以上の画素において飽和露光量以上の光量の光が入射した状態を、移動体Vが光の影響を受けた状態、移動体Vの眩惑状態と称する場合がある。
【0018】
大型移動体HVの照明装置16Hも、小型移動体LVの照明装置16Lも、ヘッドランプと、ヘッドランプの光軸を駆動する光軸用モータ36とを含む。光軸用モータ36は、ヘッドランプの光軸を、光軸がほぼ水平に延びた第1角度から光軸が水平線に対して設定角度(例えば、ほぼ45°)傾斜した第2角度まで、複数段でまたは連続して調節するものである。それに対して、照明装置16Hは、ヘッドランプ(前照灯)としてハイ(Hi)ビームランプ30、ミドル(Mi)ビームランプ32、ロー(Lo)ビームランプ34を含むが、照明装置16Lは、ヘッドランプとしてHiビームランプ30、Loビームランプ34を含み、Miビームランプ32を含まないものである。
【0019】
照明装置16において、Loビームランプ34、Miビームランプ32、Hiビームランプ30の順に、光源の光が強くなり、光がより遠くまで到達する。また、光軸の角度が第1角度に近い場合には第2角度に近い場合より、光がより遠くまで到達する。移動体Vにおいて、通常、光軸の角度が第1角度に設定された状態で、Hiビームランプ30が点灯される。それにより、夜間等での安全性が高まる。
【0020】
例えば、照明装置16Hの一例においては、光軸の角度が第1角度であり、ヘッドランプが点灯している状態で、Hiビームランプ30の光(Hiビームランプ30によって照射された光)が到達する距離を200m(
図3では2.0と記載した)とし、Miビームランプ32の光が到達する距離を120m(
図3では1.2と記載した)、Loビームランプ34の光が到達する距離を80m(0.8と記載した)とすることができる。
【0021】
また、照明装置16Lの一例においては、光軸の角度が第1角度であり、ヘッドランプが点灯している状態で、Hiビームランプ30の光が到達する距離を80m(
図3では0.8と記載した)とし、Loビームランプ34が点灯している状態において、Loビームランプ34の光が到達する距離を40m(0.4と記載した)とすることができる。
【0022】
本実施例において、「ヘッドランプによって照射された光が到達する距離」とは、ヘッドランプから、ヘッドランプの光がCCDカメラにおいて設定数以上の画素が飽和露光量に達するような明るさを保持可能な距離をいう。また、上述の距離は、ヘッドランプから、ヘッドランプの光が、移動体Vが眩惑状態となる明るさを保持可能な距離であると考えたり、物体を認識可能な程度の明るさを保持可能な距離であると考えたりすること等ができる。
以下、本明細書において、ヘッドランプの光(ヘッドライト)が到達する距離をヘッドライト到達距離と称する。また、ヘッドライトの光が届く領域、換言すると、上述の明るさを保持可能な領域をヘッドライト照射領域と称する。なお、ヘッドライト照射領域のヘッドランプの光軸方向の長さがヘッドライト到達距離に対応する。
【0023】
そして、ヘッドライト到達距離は、大型移動体HVの照明装置16Hの方が小型移動体LVの照明装置16Lより長い。また、ヘッドラント到達距離は、Loビームランプ34、Miビームランプ32、Hiビームランプ30の順に長くなり、光軸の角度が第1角度である場合には第2角度である場合より長くなる。
以上のことから、大型移動体HVの照明装置16の方が小型移動体LVの照明装置16より能力が高いと考えることができる。また、Hiビームランプ30の方がLoビームランプ34より能力が高く、光軸の角度が第1角度にある場合は第2角度にある場合より能力が高いと考えることができる。
【0024】
一方、光源から、光源によって照射された光が0.25ルクス(lx)となる点までの距離を光の到達距離(照射距離)という。光の到達距離を求める条件等は、ANSI(Approved American National Standard:米国国家規格協会)/NEMA(National Electrical Manufacturers Association:米国電気工業会) FL 1-2009に定められている。
それに対して、上述のヘッドライト到達距離はANSI/NEMA FL 1-2009で規格化された光の到達距離(以下、ANSI到達距離と称する場合がある)とは異なるが、ヘッドライト到達距離が長い場合はANSI到達距離も長くなる。
【0025】
移動体通信装置14は、移動体ECU20において作成された移動体情報を無線で送信したり、管制装置Cから無線で送信された情報である管制情報を受信したりするものである。
【0026】
移動体ECU20は、コンピュータを主体とするものである。移動体ECU20には、これら駆動装置Dの駆動回路、制動装置Bの押付力制御アクチュエータ、転舵装置Tの転舵アクチュエータ、GPS受信機10、周辺情報取得装置12、移動体通信装置14、照明装置16等が接続される。また、移動体ECU20は、識別情報等記憶部22、移動体情報作成部24、移動体照明制御部26等を含む。
【0027】
識別情報等記憶部22は、複数の移動体Vの各々に対して個別に設定された識別情報、移動体Vの各々について予め設定された作業計画に関する情報等を記憶するものである。
移動体照明制御部26は、管制情報に含まれる照明制御指令に応じて、自移動体Vの照明装置16を制御するものである。
移動体情報作成部24は、移動体位置情報、影響検出情報、識別情報等を含む移動体情報を作成するものである。移動体位置情報は、GPS信号に基づいて取得された自移動体Vの位置を表す情報である。影響検出情報は、自移動体Vが他移動体Vの照明装置16の影響を受けたことを表す情報である。作成された移動体情報は、移動体通信装置14に出力され、移動体通信装置14が送信する。
【0028】
管制装置Cは、コンピュータを主体とする管制ECU40と管制ECU40に接続された管制通信装置42とを含む。管制ECU40は、照明制御部50、管制情報作成部52等を含む。
【0029】
管制通信装置42は、管制情報作成部52によって作成された管制情報を無線で送信したり、移動体Vから無線で送信された移動体情報を受信したりするものである。
【0030】
管制情報作成部52は、照明制御部50において作成された照明装置16の制御指令である照明制御指令、その照明装置16の制御対象の移動体である制御対象移動体Vを表す識別情報等を含む管制情報を作成するものである。
【0031】
照明制御部50は、複数の移動体Vの各々の照明装置16を、複数の移動体Vの相対位置関係に基づいて制御するものである。
【0032】
照明制御部50において、複数の移動体のうちの1台である第1移動体V1が、近い将来、第1移動体V1とは別の移動体である第2移動体V2の照明装置16の光の影響を受けると推定された場合に、制御対象である第2移動体V2の照明装置16に対する照明制御指令としての能力ダウン指令が作成される。
【0033】
図2に示す場合において、第1移動体V1の照明装置16Lについてのヘッドライト到達距離がD1,ヘッドライト照射領域がR1であり、第2移動体V2の照明装置16Hについてのヘッドライト到達距離がD2、ヘッドライト照射領域がR2であり、第1移動体V1と第2移動体V2との間の距離である移動体間距離がDVである場合を想定する。
【0034】
例えば、移動体間距離DVが、ヘッドライト到達距離D1,D2の長い方(例えば、D2>D1とする)より長い場合には、第1移動体V1と第2移動体V2との相対位置関係が、第1移動体V1が、第2移動体V2の照明装置16Hの光の影響を受け難い関係にある。
DV>D2
しかし、移動体間距離DVが第2移動体V2のヘッドライト到達距離D2より短い場合には、第1移動体V1と第2移動体V2との相対位置関係が、第1移動体V1が、第2移動体V2の照明装置16Hの光の影響を受け得る関係にある。
DV<D2
【0035】
それに対して、移動体間距離DVからヘッドライト到達距離の長い方MAX(D1,D2)を引いた値である余裕値Dxが0より大きく、設定値ΔDthより短い場合には、第1移動体V1と第2移動体V2との相対位置関係が、近い将来、第1移動体V1が第2移動体V2の照明装置16Hの光の影響を受けると推定される関係にある。
Dx=DV-MAX(D1,D2)
0<Dx<ΔDth
【0036】
そして、第1移動体V1と第2移動体V2との相対位置関係が、余裕値Dxが設定値ΔDthより短い関係になった場合に、第2移動体V2の照明装置16Hの能力をダウンする指令である能力ダウン指令(照明制御指令の一例である)が作成される。
なお、
図2から、余裕値Dxが長い場合は短い場合より、第1移動体V1が眩惑状態になるまでの余裕があることが分かる。
【0037】
設定値ΔDthは、第1移動体LVが、近い将来、第2移動体V2の照明装置16Hの光の影響を受けると推定される距離である。換言すると、設定値Dthは、第2移動体V2の照明装置16Hの制御によりヘッドライト到達距離が短くされることにより、第1移動体V1が第2移動体V2の照明装置16Hの光の影響を受けないようにできると考え得る距離とすることができる。設定値ΔDthが短すぎると、直ちに、第1移動体V1が第2移動体V2の照明装置16Hの光の影響を受ける可能性があり、設定値ΔDthが長すぎると、第2移動体V2の走行安全性が低下するおそれがある。以上のことを考慮して設定値ΔDthが設定される。なお、第1移動体V1,第2移動体V2の相対位置関係は、それぞれの移動体情報に含まれる位置情報から取得することができる。
【0038】
また、余裕値Dxが0より大きいことを条件としたのは、第1移動体V1が第2移動体V2の照明装置16Hの光の影響を受ける前に第2移動体V2の照明装置16Hの制御を行い、事前に(未然に)、第1移動体V1が第2移動体V2の照明装置16Hの光の影響を受けるのを防止するためである。そのため、余裕値Dxが0より大きい場合に能力ダウン指令が作成されるようにすることは不可欠の条件ではない。
【0039】
また、照明制御部50において、第1移動体V1の照明装置16Lのヘッドライト照射領域R1と第2移動体V2の照明装置16Hのヘッドライト照射領域R2との少なくとも一部同士が重なる場合に、照明装置16L,16Hの少なくとも一方がヘッドライト照射領域が狭くなるように制御されて、重なり部Ryが狭くされる。
【0040】
例えば、第1移動体V1と第2移動体V2との各々の照明装置16L,16Hのヘッドライト到達距離D1,D2の和から第1移動体V1と第2移動体V2との移動体間距離DVを引いた値は、照明装置16Lのヘッドライト照射領域R1と照明装置16Hのヘッドライト照射領域R2との一部同士の重なり部Ryの長さ(第1移動体V1,第2移動体V2の間の移動体間距離と平行な方向の長さ)Dyに対応する。本実施例においては、重なり部Ryの長さDyが設定長さDythより大きい場合に、第1移動体V1と第2移動体V2との少なくとも一方の照明装置16を、ヘッドライト照射領域が狭くなるように制御する照明制御指令としての能力ダウン指令が作成される。
Dy=(D1+D2)-DV
Dy>Dyth
【0041】
上述のように、ヘッドライト照射領域R1,R2の内部において、物体を認識可能な充分な明るさとなる。そのため、ヘッドライト照射領域R1,R2の少なくとも一部同士の重なり部Ryは、過剰に照らされている領域であり、重なり部Ryが広い場合には、複数の移動体において、エネルギが無駄に消費されていると考えることができる。そのため、重なり部Ryは狭くすることが望ましい。
【0042】
しかし、仮に、
図2に示す状態において、第2移動体V2の照明装置16Hの能力を1段階低くした(例えば、Hiビームランプ30からMiビームランプ32に切り換えた)場合には、重なり部Ryは狭くなるが、第2移動体V2のヘッドライト照射領域R2´と第1移動体V1のヘッドライト照射領域R1との間に隙間Rzができる。隙間Rzとは、第1移動体V1,第2移動体V2のヘッドライト照射領域R1,R2の両方から外れた部分(領域)である。そのため、隙間Rzの内部においては、物体を認識することが困難な明るさとなる。このように、第1移動体V1と第2移動体V2との間に、物体の認識が困難な明るさの領域Rzが生じた場合には、移動体Vは減速等し、作業効率が低下する等の問題が生じるおそれがある。
【0043】
そこで、本実施例においては、制御対象の照明装置が、例えば、(i)-(v)のうちの1つ以上に基づいて決定される。
(i)重なり部Ryの長さDyと、第1移動体V1の照明装置16L,第2移動体V2の照明装置16Hの各々において能力を1段階低くした場合のヘッドライト到達距離の短縮距離ΔD1,ΔD2との比較。
例えば、短縮距離ΔD1,ΔD2の両方が重なり部Ryの長さDyより長い場合には、第1移動体V1,第2移動体V2のいずれの照明装置16H,16Lの能力を下げても、隙間Rzは設定隙間ΔRz以上になる。
Dy<ΔD1,Dy<ΔD2
また、短縮距離ΔD1,ΔD2の一方であるΔD2が重なり部Ryの長さDy以上であるが、ΔD1が重なり部Ryの長さDyより短い場合には、第1移動体V1の照明装置16Lの能力を1段階下げた場合の隙間Rzは設定隙間ΔRzより小さくなるが、第2移動体V2の照明装置16Hの能力を1段階下げると隙間Rzが設定隙間ΔRz以上になる。
ΔD2≧Dy、Dy>ΔD1
短縮距離ΔD2,ΔD1の両方が重なり部Ryの長さDy以下である場合には、第1移動体V1,第2移動体V2のいずれの照明装置16の能力を下げても、隙間Rzは設定隙間ΔRzより小さくなる。
Dy≧ΔD1、Dy≧ΔD2
【0044】
(ii)ヘッドライト到達距離の長さ。
例えば、ヘッドライト到達距離が長い方の移動体の照明装置16を制御して、ヘッドライト到達距離を短くした場合には、ヘッドライト到達距離が短い方の移動体が、今後、眩惑状態になり難くすることができる。
【0045】
(iii)照明装置16において、能力を下げた場合のエネルギ低減量。
照明装置16の能力を下げた場合に、エネルギ低減量が大きくなる方の照明装置16を制御対象とすることが望ましい。それにより、複数の移動体において、効果的に、消費エネルギの低減効果を得ることができる。
【0046】
(iv)能力を下げた後のエネルギ消費量。
照明装置16の能力を下げた後のエネルギ消費量が小さい方の照明装置16を制御対象とすることが望ましい。それにより、照明制御後の、複数の移動体における消費エネルギの低減を図ることができる。
【0047】
(v)ヘッドランプに電力を供給する電源であるバッテリの残容量。
ヘッドランプに電力(電気エネルギ)を供給する電源であるバッテリの残容量が少ない方の照明装置16(移動体V)を制御対象とすることが望ましい。それにより、バッテリ容量の減少を抑制し、充電回数の増加を抑制することができる。
【0048】
上述の(i)-(v)のうちの1つ以上に基づいて決定された制御対象の照明装置16が、ヘッドライト到達距離が短くなる(ヘッドライト照射領域が狭くなる)ように制御されることにより、重なり部Ryが小さくされるとともに、これらヘッドライト照射領域R1,R2の間の隙間Rzが設定隙間ΔRzより小さくなる。なお、隙間Rzはできないことが望ましいのであり、設定隙間ΔRzは小さい大きさである。
【0049】
以上のように構成された照明制御システムにおいて、管制装置Cの照明制御部50において、
図5のフローチャートで表される眩惑防止照明制御プログラムが設定時間毎に実行される。例えば、互いに対向する2台の移動体V1,V2の各々の照明装置16において、光軸が第1角度であり、Hiビームランプ30が点灯している状態において、眩惑防止照明制御プログラムが実行されるようにすることができる。
【0050】
ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、移動体情報の位置情報に基づき、互いに対向する2台の移動体V1,V2の間の距離である移動体間距離DVが取得される。S2において、2台の移動体V1,V2の各々の照明装置16のヘッドライト到達距離D1,D2が取得される。これら情報は、移動体情報として予め管制装置Cに入力されて記憶される。S3において、ヘッドライト到達距離D1,D2の長い方が取得され、S4において、ヘッドライト到達距離D1,D2の長い方を移動体間距離DVから引くことにより余裕値Dxが取得される。そして、S5において、余裕値Dxが正の値である設定値ΔDthより短いか否かが判定される。判定がYESである場合には、近い将来、ヘッドライト到達距離が短い方の移動体V1が眩惑状態になると推定される。そのため、S6において、ヘッドライト到達距離が長い方の照明装置16Hを備えた移動体V2が制御対象移動体として決定され、S7において、制御対象移動体の照明装置16Hの能力をダウンする指令である能力ダウン指令を含む管制情報が作成される。管制情報は管制通信装置42に出力されて、送信される。S5の判定がNOである場合には、S6,7が実行されることはない。いずれの移動体についても、照明装置16の能力が下げられることはない。
【0051】
また、照明制御部50において、
図6のフローチャートで表される省エネ対応照明制御プログラムが設定時間毎に実行されるようにすることができる。例えば、互いに対向する2台の移動体V1,V2のうちの少なくとも一方の照明装置16において、光軸が第1角度で、かつ、Hiビームランプ30が点灯していない状態(眩惑防止照明制御プログラムにより少なくとも一方の照明装置16においてヘッドライト到達距離が短くされた状態)において、省エネ対応照明制御プログラムが実行されるようにすることができる。
【0052】
S11、S12において、移動体間距離DVが取得され、ヘッドライト到達距離D1,D2が取得される。そして、S13において、ヘッドライト到達距離の和(D1+D2)から移動体間距離DVを引くことにより重なり部Ryの長さDyが取得され、S14において、長さDyが設定長さDythより大きいか否かが判定される。判定がYESである場合には、S15において、制御対象である照明装置16を備えた制御対象移動体が決定され、S16において、能力ダウン指令を含む管制情報が作成されて、送信される。
【0053】
S15において、例えば、短縮距離ΔD1が長さDy以下であり、短縮距離ΔD2が長さDyより大きい場合には、制御対象移動体を第1移動体V1に決定することができる。
また、例えば、短縮距離ΔD1、ΔD2がいずれも長さDy以下である場合において、照明装置16Hについてのヘッドライト到達距離D2が照明装置16Lにおけるヘッドライト到達距離D1より長い場合、照明装置16Hにおけるエネルギ低減量が照明装置16Lにおけるエネルギ低減量より大きい場合、第2移動体V2のバッテリ残容量が第1移動体V1のバッテリ残容量より少ない場合のうちの1つ以上が成立する場合には、制御対象移動体を第2移動体V2に決定することができる。
【0054】
さらに、例えば、短縮距離ΔD1が長さDy以下であり、短縮距離ΔD2が長さDyより大きい場合において、照明装置16Hについてのヘッドライト到達距離D2が照明装置16Lにおけるヘッドライト到達距離D1より長い場合、照明装置16Hにおけるエネルギ低減量が照明装置16Lにおけるエネルギ低減量より大きい場合、第2移動体V2のバッテリ残容量が第1移動体V1のバッテリ残容量より少ない場合のうちの1つ以上が成立する場合には、制御対象移動体を第1移動体にも第2移動体にも決定されないようにすることができる。そして、短縮距離ΔD2が重なり部Ryの長さDy以下になった場合に、制御対象移動体が第2移動体Vに決定されるようにすることができる。
【0055】
移動体Vの移動体ECU20においては、
図7のフローチャートで表される移動体照明制御プログラムが予め定められた設定時間毎に実行される。
S31において、管制情報を受信したか否かが判定される。判定がYESである場合には、S32において、識別情報が一致するか否かが判定される。判定がYESである場合には、S33において、管制情報から照明制御指令が取得され、S34において、照明制御指令に従って照明装置16が制御される。Hiビームランプ30からMiビームランプ32に切り換えられたり、Loビームランプ34に切り換えられたりするのである。
【0056】
以上のような照明装置16の制御の一例を
図3に示す。
図3(a)に示すように、第1移動体としての小型移動体LV,第2移動体としての大型移動体HVが、それぞれ、光軸が第1角度である状態でHiビームランプ30が点灯した状態で走行している場合について説明する。
管制装置Cは、移動体情報を受信すると、移動体Vの位置を取得し、2台の移動体の間の移動体間距離DVを取得する。移動体の各々の照明装置16の点灯状態に基づき、ヘッドライト到達距離D1、D2を取得する。
【0057】
図3(b)に示す状態において、S5の判定がYESになる。そのため、大型移動体HV(ヘッドライト到達距離が長い方)の照明装置16Hの能力をダウンさせる指令である能力ダウン指令が作成されて、送信される。なお、
図3(b)において、δは、小型移動体LVと大型移動体HVとの間の移動体間距離DVがヘッドライト到達距離の長い方よりわずかに長いことを表すものである。
【0058】
図3(c)に示すように、大型移動体HVにおいて、移動体照明制御部26による能力ダウン指令に従った照明装置16Hの制御により、Hiビームランプ30からMiビームランプ32に切り換えられる。それにより、ヘッドライト到達距離が短くされる。
【0059】
図3(d)に示す状態において、S14の判定がYESになり、S15において、制御対象移動体が大型移動体HVに決定される。大型移動体HVの方がヘッドライト到達距離が長く、かつ、エネルギ低減量が多いと考えられる。大型移動体HVに対して、照明装置16Hの能力ダウン指令が作成される。
図3(e)に示すように、大型移動体HVの照明装置16Hにおいて、Miビームランプ32からLoビームランプ34に切り換えられる。それにより、重なり部Ryを小さく、かつ、隙間Rzを設定隙間ΔRzより小さくすることができ、消費エネルギの低減を図ることができる。
【0060】
図3(f)に示す場合において、S14の判定がYESになるが、大型移動体HVの照明装置16Hにおいては能力をこれ以上下げることは困難である。そのため、
図3(g)に示すように、小型移動体LVの照明装置16の能力が1段階低くされ、Hiビームランプ30からLoビームランプ34に切り換えられて、ヘッドランプ到達距離が短くされる。
【0061】
照明装置16の別の制御例を
図4に示す。
図4(d)に示す場合において、S14の判定がYESになり、S15において、制御対象移動体が小型移動体LVに決定される。小型移動体LVの方がバッテリ残容量が少ない場合、照明装置16Lにおいて、Loビームランプ34に切り換えた場合の消費エネルギが、照明装置16Hにおいて、Loビームランプ34に切り換えた場合の消費エネルギより少ない場合等が考えられる。それにより、小型移動体LVに対して、能力ダウン指令が作成されて、送信される。
図4(e)に示す場合において、小型移動体LVにおいて照明装置16Lの能力が低くされ、Loビームランプ34に切り換えられる。
【0062】
また、
図4(f)に示す場合において、S14の判定がYESになり、S15において制御対象移動体が大型移動体HVに決定される。小型移動体LVにおいて、ヘッドライト到達距離をこれ以上短くすることは困難であるからである。
図4(g)において、大型移動体HVの照明装置16Hの能力がダウンされ、Loビームランプ34に切り換えられる。
【0063】
以上のように、本実施例においては、管制装置Cにより、複数の移動体Vの相対位置関係が監視され、それに基づいて、複数の移動体の各々の照明装置16の能力が制御される。その結果、移動体Vが眩惑状態になることを事前に防止することが可能となり、眩惑状態に起因する速度低下等が起き難くすることができる。それにより、作業効率の向上を図ることができる。また、余裕値Dxが設定値ΔDthより小さくなった場合に、照明装置16の能力がダウンされるようにしたため、制御対象移動体の走行安全性の低下を良好に抑制することができる。
【0064】
また、ヘッドライト照射領域R1,R2の少なくとも一部同士が重なっている場合には、照明装置16L,16Hの少なくとも一方の能力が低くされ、ヘッドライト照射領域が狭くされる。それにより、重なり部Ryを小さくし、無駄なエネルギ消費量を低減させることができる。また、照明装置16L,16Hの少なくとも一方の能力が、隙間Rzが設定隙間ΔRz以下になるように低くされる。このように、隙間Rzが生じ難くされるため、移動体Vの物体の認識が困難な領域の存在に起因する速度低下を抑制することができ、走行安全性の低下を良好に抑制することができる。
【0065】
さらに、制御対象の照明装置16が、エネルギの低減量が大きい方に決定された場合、能力を下げた後の消費エネルギの小さい方に決定された場合等には、複数の移動体において消費エネルギの低減を図ることが可能となる。また、制御対象の照明装置16が、バッテリの残容量が少ない方の移動体の照明装置16に決定された場合には、バッテリの残容量の減少勾配を抑制することができ、充電回数の増加を抑制することができる。
【0066】
なお、上記実施例においては、管制ECU40の照明制御部50において、眩惑防止照明制御プログラムと、省エネ対応照明制御プログラムとの両方が実行されるようにされていたが、いずれか一方のプログラムが実行され、他方のプログラムは実行されないようにすることができる。
例えば、眩惑防止照明制御プログラムが常時繰り返し実行されることにより、未然に、移動体Vが眩惑状態になり難くすることができ、複数の移動体Vの速度低下を抑制することができる。
【0067】
省エネ対応照明制御プログラムが常時繰り返し実行されることにより、消費エネルギの低減を図ることができる。また、隙間Rzができ難くなるため、複数の移動体Vの速度低下を抑制することができる。さらに、S15において、ヘッドライト到達距離が長い方の照明装置16を備えた移動体が優先的に制御対象に決定されるようにした場合には、複数の移動体Vを眩惑状態になり難くすることも可能である。
【0068】
また、照明制御部50において、眩惑防止照明制御プログラムと省エネ対応照明制御プログラムとを合わせた
図8のフローチャートで表される照明制御プログラムが実行されるようにすることができる。
図8に示す照明制御プログラムにおいて、第1移動体V1と第2移動体V2とが互いに接近しつつある場合には、S1~5、S13~16が繰り返し実行され、第1移動体V1の照明装置16Lと第2移動体V2の照明装置16Hとの少なくとも一方の能力が低くされる。それに対して、第1移動体V1と第2移動体V2とが急激に接近した場合、交差点において進行方向が異なる第1移動体V1と第2移動体V2とが接近した場合,交差点において第1移動体V1と第2移動体V2との少なくとも一方が急激に向きを変えた場合、第1移動体V1と第2移動体V2との少なくとも一方において、照明装置16がOFFからONに切り換えられた場合等に、S5の判定がYESとなり、S6,7が実行されると考えられる。
【0069】
以上のように、本実施例においては、照明制御部50等により照明制御部が構成されると考えたり、照明制御部50、移動体照明制御部26等により照明制御部が構成されると考えたりすること等ができる。
【0070】
なお、大型移動体HVの照明装置16Hにおいて、Hiビームランプ30、Miビームランプ32、Loビームランプ34の切り換えにより、3段階でヘッドライト到達距離が切り換えられるようにされていたが、そのようにすることは不可欠ではない。例えば、ヘッドランプの点滅と光軸の角度の変化との組み合わせにより、ヘッドライト到達距離が3段階、または、2段階、または、4段階以上に切り換えられるようにすることができる。
また、大型移動体HV,小型移動体LVの各々において、照明装置16におけるヘッドライト到達距離の切り換えは、3段階、2段階とすることは不可欠ではなく、切換段数は問わない。
【0071】
さらに、照明制御部50は管制ECU40に設けられたが、移動体Vの移動体ECU20に設け、移動体ECU20において、眩惑防止照明制御プログラム、省エネ対応照明制御プログラムが実行されるようにすることができる。例えば、移動体Vの各々において、自移動体と周辺に位置する自移動体とは別の移動体である他移動体との間の相対位置関係が取得されるとともに、他移動体の照明装置16の能力に関する情報が取得され、照明制御指令、制御対象の照明装置が決定されるようにすることができる。そして、自移動体の照明装置16を照明制御指令に応じて制御したり、移動体間の通信により、他移動体に照明制御指令を送信したりすることができる。
【0072】
その他、本発明は、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
10:GPS受信機 14:移動体通信装置 12:周辺情報取得装置 16:照明装置 20:移動体ECU 24:移動体情報作成部 26:移動体照明制御部 40:管制ECU 42:管制通信装置 50:照明制御部 C:管制装置 V:移動体
(1) 複数の移動体のうちの1台である第1移動体と、前記第1移動体とは別の移動体である第2移動体との相対位置関係に基づいて、前記第1移動体と前記第2移動体との少なくとも一方の照明装置を制御する照明制御部を含む照明制御システム。
(2) 前記照明制御部が、前記第1移動体の照明装置と前記第2移動体の照明装置とのうち光の到達距離であるヘッドライト到達距離が長い方を、前記ヘッドライト到達距離が短くなるように制御する(1)項に記載の照明制御システム。
ヘッドライト到達距離が長い方の照明装置を、ヘッドライト到達距離が短くなるように制御することにより、ヘッドライト到達距離が短い方の照明装置を備えた移動体が眩惑状態になり難くすることができる。また、複数の移動体においてエネルギ消費量を良好に低減することができる。
(3) 前記照明制御部が、前記第1移動体と前記第2移動体との相対位置関係が、前記第1移動体が、近い将来、前記第2移動体の照明装置の光の影響を受けると推定される関係にある場合には、前記第2移動体の照明装置を、能力が低くなるように制御する(1)項または(2)項に記載の照明制御システム。
(4) 前記照明制御部が、前記第1移動体と前記第2移動体との相対位置関係が、前記第1移動体と前記第2移動体との間の距離である移動体間距離から、前記第1移動体と前記第2移動体とのうち前記照明装置の光の到達距離であるヘッドライト到達距離が長い方を引いた値である余裕値が0より大きく、かつ、0より大きい設定値より小さい場合に、前記ヘッドライト到達距離が長い方の照明装置を、前記ヘッドライト到達距離が短くなるように制御する(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の照明制御システム。
第1移動体の照明装置のヘッドライト到達距離より第2移動体の照明装置のヘッドライト到達距離の方が長い場合には、第1移動体が先に第2移動体の照明装置の光の影響を受ける。
(5) 前記照明制御部が、前記第1移動体と前記第2移動体との相対位置関係が、前記第1移動体の照明装置の光の照射領域であるヘッドライト照射領域と、前記第2移動体の照明装置のヘッドライト照射領域との少なくとも一部同士が重なる関係にある場合に、前記少なくとも一部同士が重なる部分である重なり部が狭くなるように、前記第1移動体と前記第2移動体との少なくとも一方の照明装置を、前記ヘッドライト照射領域が狭くなるように制御する(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の照明制御システム。
(6) 前記照明制御部が、前記第1移動体と前記第2移動体との相対位置関係が、前記第1移動体の照明装置の光の照射領域であるヘッドライト照射領域と、前記第2移動体の照明装置のヘッドライト照射領域との少なくとも一部同士が重なる関係にある場合に、前記第1移動体と前記第2移動体との少なくとも一方の照明装置を、前記ヘッドライト照射領域が狭くなるように制御することにより、前記少なくとも一部同士が重なる部分である重なり部を狭くし、かつ、前記第1移動体の照明装置のヘッドライト照射領域と前記第2移動体の照明装置のヘッドライト照射領域との間の隙間を設定隙間より小さくする(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の照明制御システム。
照明装置ヘッドライト照射領域を狭くすることにより、重なり部が狭くなる。それにより、複数の移動体における消費エネルギの低減を図ることができる。しかし、ヘッドライト照射領域を狭くすることにより、設定隙間以上の隙間ができる可能性がある。それに対して、本項に記載の照明制御システムにおいては、この隙間が設定隙間より小さくなるように、照明装置の能力が低くされる。
(7) 前記照明制御部が、前記第1移動体と前記第2移動体との相対位置関係が、前記第1移動体の照明装置の光の照射領域であるヘッドライト照射領域と、前記第2移動体の照明装置のヘッドライト照射領域との少なくとも一部同士が重なる関係にある場合に、前記第1移動体の照明装置と前記第2移動体の照明装置とのうちの前記ヘッドライト照射領域を狭くした場合のエネルギ低減量が大きい方を、前記ヘッドライト照射領域が狭くなるように制御する(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の照明制御システム。
(8) 前記照明制御部が、前記第1移動体と前記第2移動体との相対位置関係が、前記第1移動体の照明装置の光の照射領域であるヘッドライト照射領域と、前記第2移動体の照明装置のヘッドライト照射領域との少なくとも一部同士が重なる関係にある場合に、前記第1移動体の照明装置と前記第2移動体の照明装置とのうち、前記照明装置の光源に電力を供給する電源であるバッテリの残容量が少ない方を、前記ヘッドライト照射領域が狭くなるように制御する(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の照明制御システム。
(9) 前記照明制御部が、前記第1移動体と前記第2移動体との相対位置関係が、前記第1移動体の照明装置の光の照射領域であるヘッドライト照射領域と、前記第2移動体の照明装置のヘッドライト照射領域との少なくとも一部同士が重なる関係にある場合に、前記第1移動体の照明装置と前記第2移動体の照明装置とのうち、照明装置の光の到達距離であるヘッドライト到達距離が長い方を、前記ヘッドライト到達距離が短くなるように制御する(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載の照明制御システム。
(10) 前記照明制御部が、前記第1移動体のヘッドライト照射領域と前記第2移動体の照明装置のヘッドライト照射領域との少なくとも一部同士が重なる部分である重なり部の長さと、前記第1移動体の前記照明装置と前記第2移動体の前記照明装置との各々における前記光の到達距離であるヘッドライト到達距離の短縮距離とに基づいて、制御対象の照明装置を決定する(5)項ないし(9)項のいずれか1つに記載の照明制御システム。