(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135579
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】金型用保持部材、金型及びプレス加工装置
(51)【国際特許分類】
B21D 43/22 20060101AFI20240927BHJP
B21D 28/02 20060101ALI20240927BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B21D43/22 D
B21D28/02 D
B21D28/02 C
H02K15/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046347
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】本田 武
(72)【発明者】
【氏名】永野 義人
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615PP01
5H615PP06
5H615SS03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】打ち抜き片の形状が変化しても、挿入孔内に挿入可能で且つ挿入孔内で複数の打ち抜き片を積層した状態で保持可能な金型用保持部材を提供する。
【解決手段】金型用保持部材は、貫通孔を有するダイと貫通孔内を軸線方向に移動するパンチとによって打ち抜かれた複数の打抜き片を、積層した状態で保持する金型用保持部材である。金型用保持部材は、ダイに対して、パンチの移動方向の前方に位置する本体部と、軸線方向から見て、本体部におけるダイの貫通孔と重なる位置で、ダイに向かって開口して、ダイの貫通孔内におけるパンチの移動によって貫通孔内から押し出された打抜き片が挿入される挿入孔と、を有する。本体部は、挿入孔の内面の一部を構成し、挿入孔内に挿入された打抜き片の外周面の少なくとも一部と接触する接触部と、軸線方向から見て、接触部に対して挿入孔とは反対側に位置し、接触部の変形を許容する変形許容部45と、を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有するダイと前記貫通孔内を軸線方向に移動するパンチとによって打ち抜かれた複数の打ち抜き片を、積層した状態で保持する金型用保持部材であって、
前記ダイに対して、前記パンチの移動方向の前方に位置する本体部と、
前記軸線方向から見て、前記本体部における前記ダイの前記貫通孔と重なる位置で、前記ダイに向かって開口して、前記ダイの前記貫通孔内における前記パンチの移動によって前記貫通孔内から押し出された打ち抜き片が挿入される挿入孔と、
を有し、
前記本体部は、
前記挿入孔の内面の一部を構成し、前記挿入孔内に挿入された前記打ち抜き片の外周面の少なくとも一部と接触する接触部と、
前記軸線方向から見て、前記接触部に対して前記挿入孔とは反対側に位置し、前記接触部の変形を許容する変形許容部と、
を有する、
金型用保持部材。
【請求項2】
請求項1に記載の金型用保持部材において、
前記挿入孔は、前記本体部を前記軸線方向に貫通する貫通孔であり、
前記接触部は、前記軸線方向に延び、
前記変形許容部は、前記接触部に対して前記挿入孔とは反対側の位置で、前記本体部の前記軸線方向に延びる、
金型用保持部材。
【請求項3】
請求項2に記載の金型用保持部材において、
前記接触部は、
前記軸線方向から見て、前記挿入孔の内面に沿う方向に長い形状を有し、
前記軸線方向から見て、前記接触部の長手方向の一側の端部と他側の端部とを結ぶ直線が延びる方向を第1方向とした場合、
前記変形許容部の前記第1方向の長さは、前記接触部の前記第1方向の長さよりも長い、
金型用保持部材。
【請求項4】
請求項3に記載の金型用保持部材において、
前記軸線方向から見て、前記変形許容部における前記第1方向の一側の端部は、前記接触部における前記第1方向の前記一側の端部よりも、前記第1方向の外方に位置し、前記変形許容部における前記第1方向の他側の端部は、前記接触部における前記第1方向の前記他側の端部よりも前記第1方向の外方に位置している、
金型用保持部材。
【請求項5】
請求項4に記載の金型用保持部材において、
前記変形許容部の前記第1方向の一側の端部及び前記第1方向の他側の端部は、
前記軸線方向から見て、前記接触部における前記第1方向の中心を通って前記第1方向と直交する方向に延びる前記接触部の中心線に対して、対称に位置する、
金型用保持部材。
【請求項6】
請求項5に記載の金型用保持部材において、
前記変形許容部は、
前記軸線方向から見て、前記第1方向に長い形状を有し、
前記変形許容部の長手方向の一側の端部は、外方に突出する湾曲面を有し、前記変形許容部の長手方向の他側の端部は、外方に突出する湾曲面を有する、
金型用保持部材。
【請求項7】
請求項6に記載の金型用保持部材において、
前記変形許容部は、
長手方向の中央部分に、前記長手方向の一側の端部における前記湾曲面及び前記長手方向の他側の端部における前記湾曲面の短手方向の長さよりも短い部分を有する、
金型用保持部材。
【請求項8】
請求項1に記載の金型用保持部材において、
前記変形許容部は、
前記本体部を前記軸線方向に貫通する貫通孔である、
金型用保持部材。
【請求項9】
請求項1に記載の金型用保持部材において、
前記本体部は、
前記軸線方向から見て、前記挿入孔の内面において向かい合う部分の一方及び他方に位置する一対の接触部を少なくとも1つ含む複数の前記接触部と、
前記軸線方向から見て、前記複数の接触部のそれぞれに対して前記挿入孔とは反対側に位置する複数の前記変形許容部と、
を有する、
金型用保持部材。
【請求項10】
請求項9に記載の金型用保持部材において、
前記複数の打ち抜き片は、
積層方向に隣り合う打ち抜き片同士を厚み方向にかしめるためのかしめ部を有し、
前記一対の接触部は、
前記軸線方向から見て、前記打ち抜き片が前記挿入孔内に挿入された状態で、前記かしめ部に対して両側に位置する、
金型用保持部材。
【請求項11】
請求項1に記載の金型用保持部材において、
前記変形許容部は、
前記軸線方向から見て本体部の外周面において、前記接触部に対して前記挿入孔とは反対の方向に開口し、且つ、前記本体部の軸線方向に延びる溝である、
金型用保持部材。
【請求項12】
貫通孔を有するダイと、
前記貫通孔内を軸線方向に移動するパンチと、
を有し、前記ダイ及び前記パンチによって、板状の分割コア片を打ち抜く金型であって、
前記ダイ及び前記パンチによって打ち抜かれた複数の分割コア片を、積層した状態で保持する請求項1から請求項11のいずれか一つに記載の金型用保持部材を有する、金型。
【請求項13】
板状の分割コア片が積層された分割コア積層体を製造するプレス加工装置であって、
請求項12に記載の金型を有し、
前記ダイ及び前記パンチによって、前記分割コア片を打ち抜き、
前記金型用保持部材によって、複数の前記分割コア片を積層した状態で保持する、
プレス加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型用保持部材、金型及びプレス加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
貫通孔を有するダイと、前記貫通孔内を軸線方向に移動するパンチとを有する金型において、前記ダイに対して、前記パンチの移動方向の前方に金型用保持部材が位置する金型が知られている。前記金型用保持部材は、前記ダイと前記パンチとによって打ち抜かれた打ち抜き片が挿入される挿入孔を有し、前記挿入孔内で、複数の前記打ち抜き片を積層した状態で保持する。
【0003】
例えば、特許文献1には、鉄心薄板の外形を打ち抜いてダイ内に抜き込み、当該ダイに続いて配置されるスクイズリング内で抜き込まれた鉄心薄板に側圧を加えることによって積層方向に押圧力を付与する金型装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ダイとパンチとによって外形打ち抜き加工する金型では、ダイまたはパンチの摩耗等によって、打ち抜かれた打ち抜き片の形状が変化する場合がある。例えば、ダイまたはパンチの摩耗等によって、前記打ち抜き片の外形が、前記金型用保持部材の前記挿入孔よりも大きくなる場合がある。この場合、前記打ち抜き片を前記挿入孔内に挿入できない可能性がある。
【0006】
よって、ダイまたはパンチの摩耗等によって前記打ち抜き片の形状が変化しても、前記挿入孔内に挿入可能で且つ前記挿入孔内で複数の前記打ち抜き片を積層した状態で保持可能な金型用保持部材の構成が求められている。
【0007】
本発明の目的は、ダイまたはパンチの摩耗等によって打ち抜き片の形状が変化しても、挿入孔内で複数の前記打ち抜き片を積層した状態で保持可能な金型用保持部材の構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の例示的な一実施形態に係る金型用保持部材は、貫通孔を有するダイと前記貫通孔内を軸線方向に移動するパンチとによって打ち抜かれた複数の打ち抜き片を、積層した状態で保持する金型用保持部材である。前記金型用保持部材は、前記ダイに対して、前記パンチの移動方向の前方に位置する本体部と、前記軸線方向から見て、前記本体部における前記ダイの前記貫通孔と重なる位置で、前記ダイに向かって開口して、前記ダイの前記貫通孔内における前記パンチの移動によって前記貫通孔内から押し出された打ち抜き片が挿入される挿入孔と、を有する。前記本体部は、前記挿入孔の内面の一部を構成し、前記挿入孔内に挿入された前記打ち抜き片の外周面の少なくとも一部と接触する接触部と、前記軸線方向から見て、前記接触部に対して前記挿入孔とは反対側に位置し、前記接触部の変形を許容する変形許容部と、を有する。
【0009】
本発明の例示的な一実施形態に係る金型は、貫通孔を有するダイと、前記貫通孔内を軸線方向に移動するパンチと、を有し、前記ダイ及び前記パンチによって、板状の分割コア片を打ち抜く金型である。前記金型は、前記ダイ及び前記パンチによって打ち抜かれた複数の分割コア片を、積層した状態で保持する前記金型用保持部材を有する。
【0010】
本発明の例示的な一実施形態に係るプレス加工装置は、板状の分割コア片が積層された分割コア積層体を製造するプレス加工装置である。前記プレス加工装置は、前記金型を有し、前記ダイ及び前記パンチによって、前記分割コア片を打ち抜き、前記金型用保持部材によって、複数の前記分割コア片を積層した状態で保持する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ダイまたはパンチの摩耗等によって打ち抜き片の形状が変化しても、挿入孔内で複数の前記打ち抜き片を積層した状態で保持可能な金型用保持部材の構成を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るプレス加工装置によって製造される一例としての分割コア積層体を有する積層コアの斜視図である。
【
図2】
図2は、分割コア積層体を軸線方向から見た図である。
【
図4】
図4は、プレス加工装置の構成を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、プレス加工装置の動作を説明する図である。
【
図6】
図6は、ダイ及び金型用保持部材の関係を説明する図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係る金型用保持部材を軸線方向から見た図である。
【
図8】
図8は、実施形態1に係る金型用保持部材の接触部及び変形許容部の拡大図である。
【
図9】
図9は、実施形態1の変形例に係る金型用保持部材を軸線方向から見た図である。
【
図10】
図10は、実施形態2に係る金型用保持部材を軸線方向から見た図である。
【
図11】
図11は、実施形態2に係る金型用保持部材の変形許容部の拡大図である。
【
図12】
図12は、実施形態3に係る金型用保持部材を軸線方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の例示的な実施の形態を詳しく説明する。なお、図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表しているわけではない。
【0014】
以下の説明において、プレス加工装置100の上下方向を、単に、上下方向という。また、プレス加工装置100において金型2のパンチ24が移動する方向のうち、パンチ24がダイ22から離れる方向を、パンチ24の移動方向の後方と称し、その逆方向を移動方向の前方と称する。
【0015】
また、以下の説明において、“固定”、“接続”及び“取り付ける”等の表現は、部材同士が直接、固定等されている場合だけでなく、他の部材を介して固定等されている場合も含む。すなわち、以下の説明において、固定等の表現には、部材同士の直接的及び間接的な固定等の意味が含まれる。
【0016】
(実施形態1)
(積層コアの構成)
図1から
図3を参照して、本発明の例示的な実施形態1に係るプレス加工装置100によって製造される一例としての分割コア積層体81について、説明する。
【0017】
分割コア積層体81は、積層コア80の一部を構成する。
図1は、複数の分割コア積層体81によって構成される一例としての積層コア80の斜視図である。
図1に示すように、積層コア80は、中心軸Pに沿って延びる円筒状である。積層コア80は、所定の形状に形成され且つ厚み方向に積層された複数枚の電磁鋼板を有する。
【0018】
図1に示すように、積層コア80は、筒状のヨーク80aと、筒状のヨーク80aから径方向内方に延びる複数のティース80bとを有する。積層コア80は、中心軸Pを中心に環状に配置された複数の分割コア積層体81を有する。
【0019】
図1及び
図2に示すように、各分割コア積層体81は、分割ヨーク部81aと、一つのティース80bとを有する。分割ヨーク部81aは、筒状のヨーク80aの一部を構成する。積層コア80を構成する分割コア積層体81の数は、ティース80bの数に応じて適宜決められる。
図1に示す例では、積層コア80は、12個の分割コア積層体81を有する。積層コア80が有する分割コアの数は、12個以外でもよい。
【0020】
分割コア積層体81は、複数枚積層された板状の分割コア片82を有する。
図1に示す例では、分割コア積層体81を構成する複数の分割コア片82は、厚み方向に見て同じ形状を有する。
【0021】
分割コア片82は、分割ヨーク片82aと、ティース片82bとを有する。分割ヨーク片82aは、円弧状である。ティース片82bは、分割ヨーク片82aから該分割ヨーク片82aの径方向内方に延びている。分割ヨーク片82aは、分割ヨーク部81aの一部を構成する。ティース片82bは、ティース80bの一部を構成する。
【0022】
分割コア積層体81において厚み方向に積層された複数の分割コア片82は、かしめ部83によって、積層方向に連結されている。詳しくは、
図3に示すように、積層方向に隣り合う分割コア片82のうち一方の分割コア片82の一方の面に形成された窪み83a内に、積層方向に隣り合う分割コア片82のうち他方の分割コア片82の他方の面に形成された突起83bが嵌まっている。これにより、複数の分割コア片82は、積層方向に連結されている。
【0023】
本実施形態では、分割コア片82は、分割ヨーク片82aに位置する2つのかしめ部83と、ティース片82bに位置する1つのかしめ部83とを有する。
【0024】
図1に示すように、分割ヨーク部81aの周方向の端部と、該分割ヨーク部81aと周方向に隣り合う分割ヨーク部81aの周方向の端部とは、接触する。複数の分割コア積層体81における分割ヨーク部81aによって、積層コア80の筒状のヨーク80aが構成される。複数の分割コア積層体81における各ティース80bによって、積層コア80の複数のティース80bが構成される。
【0025】
(プレス加工装置の構成)
次に、
図4から
図6を参照して、本実施形態に係る例示的なプレス加工装置100について説明する。
図4に示すように、プレス加工装置100は、装置本体部1と、金型2と、プレス機3とを有する。装置本体部1は、金型2と、プレス機3とを支持する。
【0026】
金型2は、ダイ支持部21と、ダイ22と、パンチ保持部23と、パンチ24と、ストリッパ25と、金型用保持部材4とを有する。金型2は、ダイ22とパンチ24とによって、鋼板Wを外形打ち抜き加工することにより、分割コア片82を形成する。本実施形態では、ダイ22を支持するダイ支持部21は、プレス加工装置100の下部で、装置本体部1によって支持されている。パンチ24を保持するパンチ保持部23は、プレス加工装置100の上部で、装置本体部1によって支持されている。金型用保持部材4は、ダイ22の下方に位置して、装置本体部1によって支持されている。パンチ保持部23は、上下方向に移動する。
【0027】
図4に示すように、ダイ22は、ダイ支持部21に支持されている。ダイ22は、貫通孔22aを有する。貫通孔22aは、ダイ22を上下方向に貫通している。貫通孔22aは、プレス加工装置100を上下方向から見て、分割コア片82と同様の形状を有する。本実施形態では、
図6に示すように、貫通孔22aの内面は、下方に向かうにつれて緩やかに拡がっている。
【0028】
金型2によって打ち抜かれる鋼板Wは、ダイ22上に置かれる。本実施形態では、鋼板Wには、かしめ部83が予め形成されている。
【0029】
図4に示すように、パンチ保持部23は、ダイ22の上方に位置する。パンチ保持部23は、パンチ24を保持している。パンチ保持部23は、ダイ22に近づく方向とダイ22から離れる方向に移動する。本実施形態では、パンチ保持部23は、上下方向に移動する。
【0030】
パンチ24は、パンチ保持部23の下方に突出している。本実施形態では、パンチ24の軸線方向は、プレス加工装置100の上下方向である。パンチ24は、プレス加工装置100を上下方向から見て、ダイ22の貫通孔22aと重なる位置で、上下方向に延びている。パンチ24は、プレス加工装置100を上下方向から見て、分割コア片82と同様の形状を有する。
【0031】
パンチ24は、パンチ保持部23の移動に伴って軸線方向に移動する。本実施形態では、パンチ24は、プレス加工装置100の上下方向に移動する。パンチ24の下端部は、ダイ22の上面よりも上方の位置と、ダイ22の貫通孔22a内の所定位置との間を移動する。
図5に示すように、パンチ24の下端部は、パンチ保持部23が最も下方に位置した状態で、ダイ22の貫通孔22a内に収容される。すなわち、パンチ24の下端部は、貫通孔22a内を軸線方向に移動する。
【0032】
ストリッパ25は、ダイ22とパンチ保持部23との間に位置する。ストリッパ25は、パンチ保持部23に保持されている。ストリッパ25は、パンチ24が下方に移動する際に、パンチ24とともに下方に移動して、鋼板Wを押さえる。
【0033】
以上の構成を有する金型2では、パンチ24が下方に移動することにより、ダイ22及びパンチ24によって鋼板Wを打ち抜く。これにより、打ち抜き片である分割コア片82が形成される。
【0034】
図6に示すように、打ち抜かれた分割コア片82は、貫通孔22a内に排出される。本実施形態では、貫通孔22a内に排出された分割コア片82は、貫通孔22aの内面によって保持される。本実施形態では、パンチ24の下端部は、貫通孔22a内を軸線方向に移動する。よって、貫通孔22a内に排出された分割コア片82は、貫通孔22a内で、パンチ24によって下方に押される。
【0035】
パンチ24によって下方に押された分割コア片82は、貫通孔22a内で、先に排出された分割コア片82を下方に押す。このように、貫通孔22a内に、次々と分割コア片82を排出することにより、貫通孔22a内で複数の分割コア片82が積層される。
【0036】
なお、金型は、貫通孔内に排出された分割コア片が自重で下方に移動する構成を有してもよい。
【0037】
図4に示すように、金型用保持部材4は、ダイ22の下方に位置する。金型用保持部材4は、ダイ22とパンチ24とによって打ち抜かれた複数の分割コア片82を積層した状態で保持する挿入孔42を有する。挿入孔42は、上下方向から見て、ダイ22の貫通孔22aと重なる位置で、ダイ22に向かって開口している。
【0038】
挿入孔42内には、ダイ22の貫通孔22a内におけるパンチ24の移動によって貫通孔22a内から押し出された分割コア片82が挿入される。すなわち、ダイ22及びパンチ24によって、次々と分割コア片82を形成することにより、分割コア片82は、金型用保持部材4の挿入孔42内に移動する。このようにして、貫通孔22a内だけでなく、挿入孔42内でも、複数の分割コア片82が積層される。
【0039】
(金型用保持部材の構成)
次に、
図6及び
図7を用いて、本実施形態に係る例示的な金型用保持部材4について、詳細に説明する。本実施形態では、金型用保持部材4は、本体部41と、挿入孔42とを有する。本体部41は、ダイ22に対して、パンチ24の移動方向の前方に位置する。本体部41は、筒部43と、接触部44と、変形許容部45とを有する。
【0040】
筒部43は、軸線方向に延びる筒状である。すなわち、軸線方向から見て、筒部43の中央部分は、軸線方向に貫通している。本実施形態では、筒部43の軸線方向は、プレス加工装置100の上下方向である。筒部43において、前記軸線方向に貫通する部分は、上述した挿入孔42を構成する。
【0041】
挿入孔42は、前記軸線方向から見て、分割コア片82と同様の形状を有する。
図7に、挿入孔42内に挿入される分割コア片82の位置を破線で示す。なお、挿入孔は、ダイに向かって開口し、ダイ側とは反対側に底面を有する穴であってもよい。
【0042】
筒部43は、径方向内側の面に挿入孔42内に向かって開口する溝43aを有する。溝43a内には、後述する接触部44が位置している。本実施形態では、溝43aは、筒部43の軸線方向に延びている。
【0043】
図6に示すように、本実施形態では、接触部44は、挿入孔42の内面に沿って筒部43の軸線方向に延びる角柱状である。
図7に示すように、接触部44は、前記軸線方向から見て、挿入孔42の内面に沿う方向に長い形状を有する。接触部44は、筒部43の溝43a内に位置している。接触部44は、筒部43よりも硬い材料によって構成されている。
【0044】
接触部44の外側面のうち一つの面は、挿入孔42内に露出している。すなわち、接触部44の前記一つの面は、挿入孔42の内面の一部を構成している。このように、本実施形態では、挿入孔42の内面は、筒部43の径方向内側の面と、接触部44の前記一つの面とによって構成されている。接触部44の前記一つの面は、挿入孔42内に挿入された分割コア片82の外周面と接触する。
【0045】
本実施形態では、金型用保持部材4は、一対の接触部44を有する。一対の接触部44は、前記軸線方向から見て、挿入孔42の内面のうち向かい合う部分に位置している。詳しくは、本実施形態では、一対の接触部44は、前記軸線方向から見て、挿入孔42内に挿入される分割コア片82におけるティース片82bの根元部分よりも先端に近い部分に向かい合って位置している。
【0046】
より詳しくは、一対の接触部44は、前記軸線方向から見て、挿入孔42内に挿入された分割コア片82におけるティース片82bのかしめ部83に対して両側に位置する。
【0047】
よって、挿入孔42内に挿入された分割コア片82は、前記軸線方向から見て、ティース片82bのかしめ部83を挟んで両側に位置する外周面が、一対の接触部44と接触する。すなわち、一対の接触部44は、挿入孔42内で、挿入孔42内に挿入された分割コア片82のかしめ部83に対して両側の外周面を保持する。
【0048】
上述したように、挿入孔42内に先に挿入された先の分割コア片82は、挿入孔42内に次に挿入された次の分割コア片82によって下方に押される。このとき、先の分割コア片82は、一対の接触部44によって保持されている。したがって、次の分割コア片82が先の分割コア片82を下方に押した際に、先の分割コア片82のかしめ部83の窪み83a内に、次の分割コア片82のかしめ部83の突起83bが挿入される。これにより、挿入孔42内で、複数の分割コア片82が連結される。
【0049】
本実施形態では、筒部43と接触部44とは、別体である。接触部44は、筒部43よりも硬い材料によって構成されている。しかしながら、筒部と接触部とは一体であってもよい。この場合、例えば、接触部は、筒部を構成する部分よりも硬い材料によって構成されていてもよい。例えば、接触部によって構成される挿入孔の内面が、筒部によって構成される挿入孔の内面よりも、挿入孔の内部に向かって突出するように構成されていてもよい。
【0050】
図6及び
図7に示すように、変形許容部45は、軸線方向から見て、接触部44に対して挿入孔42とは反対側に位置している。本実施形態では、変形許容部45は、筒部43を軸線方向に貫通する貫通孔である。本実施形態では、金型用保持部材4は、軸線方向から見て、一対の接触部44のそれぞれに対して挿入孔42とは反対側に位置する一対の変形許容部45を有する。
【0051】
軸線方向から見た一対の接触部44の間の距離よりも、分割コア片82のティース片82bの幅が大きい場合、一対の接触部44の間に挿入される分割コア片82によって、接触部44は、変形許容部45側に押される。変形許容部45は、接触部44が変形許容部45側に移動することを許容する。よって、本実施形態では、前記幅が大きい分割コア片82を、挿入孔42内に挿入可能である。変形許容部45の詳細な構成は、後述する。
【0052】
金型用保持部材が変形許容部を有さない構成では、分割コア片の外形が挿入孔の内形よりも大きい場合、パンチが移動方向の前方に移動した際に、前記分割コア片を前記挿入孔内に押し出すことができなくなる可能性がある。
【0053】
これに対して、本発明の金型用保持部材4は、接触部44の変形許容部45側への移動を許容する変形許容部45を有する。したがって、分割コア片82の外形が、挿入孔42よりも大きい場合でも、挿入孔42内に、貫通孔22aから押し出された分割コア片82を挿入することができる。しがたって、分割コア片82の形状が変化しても、挿入孔42内で複数の分割コア片82を積層した状態で保持可能な金型用保持部材4の構成を実現することができる。
【0054】
本実施形態では、変形許容部45は、本体部41を前記軸線方向に貫通する貫通孔である。このように変形許容部45が貫通孔であるので、金型用保持部材4では、接触部44を容易に変形許容部45側に移動させることができる。よって、複数の分割コア片82を、挿入孔42内でより確実に保持可能な構成を実現することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、変形許容部45内には、他の部材は挿入されていない。しかしながら、変形許容部内には、弾性変形する部材が挿入されていてもよい。また、変形許容部は、貫通孔でなくてもよい。例えば、変形許容部は、筒部よりも柔らかい材料によって構成された本体部の一部であってもよい。
【0056】
(変形許容部の構成)
次に、
図7及び
図8を参照して、本実施形態に係る変形許容部45の構成について、詳細に説明する。
【0057】
上述したように、接触部44は、前記軸線方向から見て、挿入孔42の内面に沿う方向に長い形状を有する。
図8に示すように、前記軸線方向から見て、接触部44の長手方向の一側の端部44aと他側の端部44bとを結ぶ直線が延びる方向を第1方向Aとした場合、変形許容部45の第1方向Aの長さL2は、接触部44の第1方向Aの長さL1よりも長い。
【0058】
これにより、接触部44の長手方向の一側の端部44aから他側の端部44bまでの全体を、変形許容部45側に移動させることができる。よって、分割コア片82の形状が変化した場合でも、挿入孔42内に、貫通孔22aから押し出された分割コア片82を挿入することができる構成を実現できる。
【0059】
本実施形態では、前記軸線方向から見て、変形許容部45における第1方向Aの一側の端部45aは、接触部44における第1方向Aの一側の端部44aよりも、第1方向Aの外方に位置している。変形許容部45における第1方向Aの他側の端部45bは、接触部44における第1方向Aの他側の端部44bよりも第1方向Aの外方に位置している。
【0060】
詳しくは、変形許容部45の第1方向Aの一側の端部45a及び第1方向Aの他側の端部45bは、前記軸線方向から見て、接触部44における第1方向Aの中心を通って第1方向Aと直交する方向に延びる接触部44の中心線Bに対して、対称に位置する。
【0061】
これにより、接触部44全体を、変形許容部45側に、より容易で、且つ、真っすぐに移動させることができる。よって、分割コア片82の形状が変化した場合でも、挿入孔42内に、貫通孔22aから押し出された分割コア片82をより容易に挿入することができる金型用保持部材4の構成を実現できる。
【0062】
本実施形態では、変形許容部45は、前記軸線方向から見て、第1方向Aに長い形状を有する。変形許容部45の長手方向の一側の端部45aは、外方に突出する湾曲面を有する。変形許容部45の長手方向の他側の端部45bは、外方に突出する湾曲面を有する。
【0063】
接触部44が、変形許容部45側に移動した場合、変形許容部45は、接触部44の移動方向、すなわち、第1方向Aに対して交差する方向に変形する。よって、前記軸線方向から見て、変形許容部が、1方向に長い形状を有し、且つ、長手方向の端部に角を有する場合、変形の応力が集中する前記角に亀裂が入る可能性がある。
【0064】
これに対して、上述の構成では、軸線方向から見て、変形許容部45の長手方向の端部45a,45bは、曲面である。したがって、金型用保持部材4の変形許容部45の端部45a,45bでは応力が分散される。これにより、変形許容部45の耐久性を向上することができる。
【0065】
すなわち、本実施形態に係る例示的な金型用保持部材4は、貫通孔22aを有するダイ22と貫通孔22a内を軸線方向に移動するパンチ24とによって打ち抜かれた複数の分割コア片82を、積層した状態で保持する金型用保持部材4である。金型用保持部材4は、本体部41と、挿入孔42と、を有する。本体部41は、ダイ22に対して、パンチ24の移動方向の前方に位置する。挿入孔42は、前記軸線方向から見て、本体部41におけるダイ22の貫通孔22aと重なる位置で、ダイ22に向かって開口して、ダイ22の貫通孔22a内におけるパンチ24の移動によって貫通孔22a内から押し出された分割コア片82が挿入される。本体部41は、挿入孔42の内面の一部を構成し、挿入孔42内に挿入された分割コア片82の外周面の少なくとも一部と接触する接触部44と、前記軸線方向から見て、接触部44に対して挿入孔42とは反対側に位置し、接触部44の変形を許容する変形許容部45と、を有する。
【0066】
また、本実施形態に係る例示的な金型2は、貫通孔22aを有するダイ22と、貫通孔22a内を軸線方向に移動するパンチ24と、を有し、ダイ22及びパンチ24によって、板状の分割コア片82を打ち抜く金型2である。金型2は、ダイ22及びパンチ24によって打ち抜かれた複数の分割コア片82を、積層した状態で保持する。
【0067】
上述の構成では、金型用保持部材4の挿入孔42内に挿入された分割コア片82は、接触部44と接触して、挿入孔42内で保持される。本体部41は、軸線方向から見て、接触部44に対して挿入孔42とは反対側に、変形許容部45を有する。変形許容部45は、接触部44の変形許容部45側への移動を許容する。接触部44が変形許容部45側に移動することによって、挿入孔42の内形は変化する。したがって、分割コア片82の外形が、挿入孔42の内形よりも大きい場合でも、挿入孔42には、貫通孔22aから押し出された分割コア片82を挿入することができる。これにより、分割コア片82の形状が変化しても、挿入孔42内で複数の分割コア片82を積層した状態で保持可能な金型用保持部材4の構成を実現することができる。
【0068】
本実施形態では、挿入孔42は、本体部41を前記軸線方向に貫通する貫通孔である。接触部44は、前記軸線方向に延びている。変形許容部45は、接触部44に対して挿入孔42とは反対側の位置で、本体部41の前記軸線方向に延びている。
【0069】
これにより、挿入孔42内に挿入される複数の分割コア片82を、順次、パンチ24の移動方向の前方にスムーズに送ることができる。よって、分割コア片82の形状が変化しても、挿入孔42内で複数の分割コア片82を積層することができる。
【0070】
また、本体部41は、前記軸線方向から見て、挿入孔42の内面において向かい合う部分の一方及び他方に位置する一対の接触部44と、前記軸線方向から見て、一対の接触部44のそれぞれに対して挿入孔42とは反対側に位置する一対の変形許容部45と、を有する。
【0071】
軸線方向から見て、一対の接触部44は、分割コア片82に対して両側を保持する。一対の接触部44のそれぞれに対して挿入孔42とは反対側に位置する変形許容部45は、一対の接触部44を、それぞれ変形許容部45が位置する方向に移動させることができる。したがって、分割コア片82を保持する力が低下することを抑制することができる。
【0072】
本実施形態では、一対の接触部44は、前記軸線方向から見て、挿入孔42内に挿入される分割コア片82におけるティース片82bの根元部分よりも先端に近い部分に向かい合って位置している。
【0073】
前記軸線方向から見て、挿入孔内に挿入される打ち抜き片が一方向に延びる部分を有する場合、複数の前記打ち抜き片を積層した際に、前記一方向に延びる部分の先端側が積層方向に拡がる可能性がある。
【0074】
これに対して、本実施形態では、一対の接触部44は、ティース片82bの先端側を保持する。よって、挿入孔42内で複数の分割コア片82を積層した際に、複数のティース片82bの先端側が積層方向に拡がることを抑制できる。
【0075】
本実施形態では、複数の分割コア片82は、積層方向に隣り合う分割コア片82同士を厚み方向にかしめるためのかしめ部83を有する。一対の接触部44は、前記軸線方向から見て、分割コア片82が挿入孔42内に挿入された状態で、かしめ部83に対して両側に位置する。
【0076】
分割コア片82は、分割コア片82同士をかしめる際に変形する場合がある。すなわち、分割コア片82は、かしめ部83の近くが変形する場合がある。上述の構成では、分割コア片82におけるかしめ部83の両側に一対の接触部44を有する。金型用保持部材4は、接触部44の変形を許容する変形許容部45を有する。したがって、分割コア片82を保持する力が低下することを抑制しつつ、分割コア片82同士を、より確実にかしめることができる金型用保持部材4の構成を実現できる。
【0077】
金型用保持部材4の挿入孔42内に積層された複数の分割コア片82は、かしめ部83によって連結される。
【0078】
すなわち、本実施形態に係る例示的なプレス加工装置100は、金型2を有し、ダイ22及びパンチ24によって、分割コア片82を打ち抜き、金型用保持部材4によって、複数の分割コア片82を積層した状態で保持する。このように、プレス加工装置100は、板状の分割コア片82が積層された分割コア積層体81を製造する。
【0079】
これにより、分割コア片82の形状が変化しても、分割コア積層体81を製造可能なプレス加工装置100を提供できる。
【0080】
(実施形態1の変形例)
次に、
図9を参照して、実施形態1の変形例に係る金型用保持部材104について、説明する。本変形例では、金型用保持部材104は、実施形態1の金型用保持部材4が有する一対の接触部44に加えて、さらに2つの接触部144を有する。金型用保持部材104は、実施形態1の金型用保持部材4が有する一対の変形許容部45に加えて、さらに2つの変形許容部145を有する。以下では、実施形態1と同じ構成については説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
【0081】
図9に示すように、本変形例では、金型用保持部材104は、本体部141と、挿入孔142とを有する。本体部141は、筒部143と、複数の接触部44,144と、複数の変形許容部45,145とを有する。筒部143は、実施形態1の筒部43と同様の構成を有する。したがって、筒部143の説明は、省略する。
【0082】
本実施形態では、挿入孔142の内面は、筒部143の径方向内側の面と、複数の接触部44,144のそれぞれの外側面のうち一つの面とによって構成されている。複数の接触部44,144の前記一つの面は、それぞれ、挿入孔142内に挿入された分割コア片82の外周面と接触する。
【0083】
図9に示すように、2つの接触部144のうち一つは、挿入孔142内に挿入された分割コア片82の分割ヨーク片82aの径方向外側の面に接触する。2つの接触部144のうち他の一つは、挿入孔142内に挿入された分割コア片82のティース片82bの先端に接触する。
【0084】
本実施形態では、2つの接触部144は、前記軸線方向から見て、挿入孔142内に挿入される分割コア片82におけるティース片82bの幅方向の中心を通る中心線と重なっている。2つの接触部144は、前記中心線に対して、一方及び他方に延びている。
【0085】
前記軸線方向から見て、挿入孔内に挿入される打ち抜き片が一方向に長い部分を有する場合、複数の前記打ち抜き片を積層した際に、前記一方向に長い部分の中央部分が積層方向に拡がる可能性がある。すなわち、本実施形態では、挿入孔142内に挿入された分割コア片82における分割ヨーク片82aの径方向外側の中央部分が積層方法に拡がる可能性がある。
【0086】
これに対して、本実施形態では、2つの接触部144のうち一つは、分割ヨーク片82aの径方向外側の面を保持する。これにより、分割ヨーク片82aの径方向外側の中央部分が積層方向に拡がることを抑制できる。
【0087】
図9に示すように、複数の変形許容部45,145は、それぞれ、筒部143を軸線方向から見て、複数の接触部44,144のそれぞれに対して挿入孔142とは反対側に位置している。
【0088】
このように、本変形例では、金型用保持部材104の本体部141は、複数の接触部44,144と、複数の変形許容部45,145と、を有する。複数の接触部44,144は、前記軸線方向から見て、挿入孔142の内面において向かい合う部分の一方及び他方に位置する一対の接触部44を少なくとも1つ含む。複数の変形許容部45,145は、前記軸線方向から見て、複数の接触部44,144のそれぞれに対して挿入孔142とは反対側に位置する。
【0089】
このように、金型用保持部材104の本体部141が複数の接触部44,144を有することにより、分割コア片82をより確実に保持することができる。また、複数の接触部44,144のそれぞれに対して挿入孔142とは反対側に位置する変形許容部45,145は、複数の接触部44,144を、それぞれ変形許容部45,145が位置する方向に移動させることができる。したがって、分割コア片82の形状が変化した場合でも、挿入孔142内に分割コア片82を挿入可能であり、且つ、分割コア片82を保持する力が低下することを抑制された金型用保持部材104の構成を実現することができる。
【0090】
図9に示すように、本変形例では、接触部144は、前記軸線方向から見て、挿入孔142の内面に沿う方向に長い形状を有する。前記軸線方向から見て、接触部144の長手方向の一側の端部と他側の端部とを結ぶ直線が延びる方向を第1方向Aとした場合、変形許容部145の第1方向Aの長さL2は、接触部144の第1方向Aの長さL1よりも長い。
【0091】
これにより、接触部144の長手方向の一側の端部から他側の端部までの全体を、変形許容部145側に移動させることができる。よって、分割コア片82の形状が変化した場合でも、挿入孔142内に、貫通孔22aから押し出された分割コア片82をより容易に挿入することができる金型用保持部材104の構成を実現できる。
【0092】
(実施形態2)
次に、
図10及び
図11を参照して、実施形態2に係る例示的な金型用保持部材204について、説明する。本実施形態では、軸線方向から見た変形許容部245の形状が、実施形態1の変形許容部45の形状と異なる。以下では、実施形態1と同じ構成については説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
【0093】
図10に示すように、本実施形態では、金型用保持部材204は、本体部241と、挿入孔242とを有する。本体部241は、筒部243と、複数の接触部244と、複数の変形許容部245とを有する。筒部243は、実施形態1の筒部43と同様の構成を有する。したがって、筒部243の説明は、省略する。
【0094】
本実施形態では、挿入孔242の内面は、筒部243の径方向内側の面と、複数の接触部244のそれぞれの外側面のうち一つの面によって構成されている。複数の接触部244の前記一つの面は、それぞれ、挿入孔242内に挿入された分割コア片82の外周面と接触する。
【0095】
図10に示すように、本実施形態では、金型用保持部材204は、3組の接触部244を有する。3組の接触部244は、それぞれ、筒部243を軸線方向から見て、挿入孔242の内面のうち向かい合う部分に位置している。
【0096】
詳しくは、本実施形態では、3組の接触部244のうち1組は、前記軸線方向から見て、挿入孔242内に挿入される分割コア片82におけるティース片82bに対して両側に位置している。3組の接触部244のうち他の2組は、前記軸線方向から見て、該分割コア片82における分割ヨーク片82aにおいて、周方向に互いに離れた位置に位置している。
【0097】
より詳しくは、3組の接触部244のうち1組は、前記軸線方向から見て、挿入孔242内に挿入された分割コア片82のティース片82bに位置するかしめ部83に対して両側に位置している。3組の接触部244のうち他の2組は、前記軸線方向から見て、挿入孔242内に挿入された分割コア片82の分割ヨーク片82aに位置する2つのかしめ部83に対してそれぞれ両側に位置している。
【0098】
すなわち、本実施形態では、3組の接触部244は、挿入孔242内で、挿入孔242内に挿入された分割コア片82の3つのかしめ部83のそれぞれに対して両側の外周面を保持する。
【0099】
これにより、挿入孔242内で複数の分割コア片82を積層した際に、複数のティース片82bの先端側、及び、複数の分割ヨーク片82aの周方向の端部側が積層方向に拡がることを抑制できる。また、分割コア片82を保持する力が低下することを抑制しつつ、分割コア片82同士を、より確実にかしめることができる金型用保持部材204の構成を実現できる。
【0100】
図10に示すように、複数の変形許容部245は、それぞれ、前記軸線方向から見て、複数の接触部244のそれぞれに対して挿入孔242とは反対側に位置している。
【0101】
図11に示すように、本実施形態では、変形許容部245は、前記軸線方向から見て、1方向に長い形状を有する。変形許容部245の長手方向の一側の端部245aは、外方に突出する湾曲面を有する。変形許容部245の長手方向の他側の端部245bは、外方に突出する湾曲面を有する。
【0102】
本実施形態では、変形許容部245は、長手方向の中央部分に、長手方向の一側の端部245aにおける前記湾曲面及び前記長手方向の他側の端部245bにおける前記湾曲面の短手方向の長さよりも短い部分を有する。
【0103】
これにより、接触部244を変形許容部245が位置する方向に移動させることができるとともに、接触部244の移動距離が大きくなり過ぎることを抑制することができる。よって、分割コア片82を保持する力が低下することを抑制しつつ、分割コア片82の形状が変化しても、挿入孔242内で複数の分割コア片82を積層した状態で保持可能な金型用保持部材204の構成を実現することができる。
【0104】
また、前記軸線方向から見て、変形許容部245の長手方向の端部245a,245bは、曲面である。したがって、金型用保持部材204の変形許容部245の端部245a,245bでは応力が分散される。これにより、変形許容部245の耐久性を向上することができる。
【0105】
(実施形態3)
次に、
図12を参照して、実施形態3に係る例示的な金型用保持部材304について、説明する。本実施形態では、本体部341は、実施形態1の変形許容部45とは異なる構成の変形許容部を有する。以下では、実施形態1と同じ構成については説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
【0106】
図12に示すように、本実施形態では、金型用保持部材304は、本体部341と、挿入孔342とを有する。本体部341は、筒部343と、複数の接触部344と、複数の変形許容部345とを有する。
【0107】
筒部343は、軸線方向に延びる筒状である。筒部343の内周側は、挿入孔342を構成する。筒部343は、径方向内側の面に挿入孔342内に向かって開口する溝を有する。前記溝内には、接触部344が位置している。
【0108】
本実施形態では、軸線方向から見て、筒部343は、径方向外側の面に外方に向かって開口する溝346を有する。溝346は、筒部343の軸線方向に延びている。
【0109】
本実施形態では、挿入孔342の内面は、筒部343の径方向内側の面と、複数の接触部344のそれぞれの外側面のうち一つの面によって構成されている。複数の接触部344の前記一つの面は、それぞれ、挿入孔342内に挿入された分割コア片82の外周面と接触する。
【0110】
複数の接触部344の構成は、実施形態1の変形例の接触部44,144の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0111】
変形許容部345の構成は、実施形態1の変形許容部45の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0112】
溝346は、前記軸線方向から見て本体部341の外周面において、接触部344に対して挿入孔342とは反対の方向に開口している。すなわち、溝346は、前記軸線方向から見て、接触部344に対して挿入孔342とは反対側に位置している。よって、溝346は、接触部344の溝346側への移動を許容する。したがって、溝346は、本発明の変形許容部に相当する。
【0113】
すなわち、本実施形態に係る金型用保持部材304において、一部の変形許容部は、前記軸線方向から見て本体部341の外周面において、接触部344に対して挿入孔342とは反対の方向に開口し、且つ、本体部341の軸線方向に延びる溝346である。
【0114】
すなわち、溝346である変形許容部によっても、接触部344を挿入孔342とは反対の方向に移動させることができる。よって、この構成によっても、分割コア片82の形状が変化しても、挿入孔342内で複数の分割コア片82を積層した状態で保持可能な金型用保持部材304の構成を実現することができる。
【0115】
なお、
図12では、軸線方向から見て、挿入孔342内に挿入される分割コア片82の径方向外方及び径方向内方に、変形許容部としての溝が位置する。しかしながら、軸線方向から見て、挿入孔内に挿入される分割コア片におけるティース片の幅方向の一方及び他方に、変形許容部としての溝が位置してもよい。
【0116】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0117】
前記実施形態1では、ダイ22の貫通孔22aの内面は、下方に向かうにつれて緩やかに拡がっている。しかしながら、ダイの貫通孔の内面は、下方に向かうにつれて拡がっていなくてもよい。
【0118】
前記各実施形態では、金型用保持部材4,104,204,304は、複数の接触部44,144,244,344を有する。しかしながら、金型用保持部材は、少なくとも1つの接触部を有していてもよい。
【0119】
前記各実施形態では、金型用保持部材4,104,204,304は、向かい合って位置する少なくとも一対の接触部44,244,344を有する。しかしながら、金型用保持部材は、向かい合って位置する接触部を有さなくてもよい。
【0120】
前記実施形態1では、接触部44の軸線方向の長さは、筒部43の軸線方向の長さと同様である。しかしながら、接触部の軸線方向の長さは、筒部の軸線方向の長さよりも短くてもよい。
【0121】
前記各実施形態では、接触部44,244,344は、かしめ部83に対して両側に位置する。しかしながら、接触部は、かしめ部に対して両側に位置していなくてもよい。接触部は、かしめ部に対して両側以外の位置に、位置していてもよい。
【0122】
前記実施形態1では、変形許容部45の軸線方向の長さは、筒部43の軸線方向の長さと同様である。しかしながら、変形許容部の軸線方向の長さは、筒部の軸線方向の長さよりも短くてもよい。
【0123】
前記実施形態1では、変形許容部45の第1方向Aの一側の端部45a及び第1方向Aの他側の端部45bは、前記軸線方向から見て、接触部44における第1方向Aの中心を通って第1方向Aと直交する方向に延びる接触部44の中心線Bに対して、対称に位置する。しかしながら、変形許容部の前記一側の端部及び前記他側の端部は、前記中心線Bに対して、対称に位置していなくてもよい。
【0124】
前記各実施形態では、変形許容部45,145,245,345の第1方向Aの長さL2は、接触部44,144,244,344の第1方向Aの長さL1よりも長い。しかしながら、変形許容部の第1方向Aの長さL2は、接触部の第1方向Aの長さL1と同じであってもよい。変形許容部の第1方向Aの長さL2は、接触部の第1方向Aの長さL1よりも短くてもよい。
【0125】
前記各実施形態では、前記軸線方向から見て、変形許容部45,145,245,345の長手方向の端部は、外方に突出する湾曲面を有する。しかしながら、前記軸線方向から見て、変形許容部の長手方向の端部は、直線状に延びる平面であってもよい。
【0126】
前記各実施形態では、金型用保持部材4,104,204,304は、金型2の一部である。しかしながら、金型用保持部材は、金型外の部材であって、金型に対して用いられる部材であってもよい。この場合、プレス加工装置は、金型用保持部材を有さない金型と、前記金型に対して取付可能な前記金型用保持部材とを有する構成であってもよい。
【0127】
(構成例)
なお、本技術は以下のような構成をとることも可能である。
【0128】
(1)金型用保持部材は、貫通孔を有するダイと前記貫通孔内を軸線方向に移動するパンチとによって打ち抜かれた複数の打ち抜き片を、積層した状態で保持する金型用保持部材である。前記金型用保持部材は、前記ダイに対して、前記パンチの移動方向の前方に位置する本体部と、前記軸線方向から見て、前記本体部における前記ダイの前記貫通孔と重なる位置で、前記ダイに向かって開口して、前記ダイの前記貫通孔内における前記パンチの移動によって前記貫通孔内から押し出された打ち抜き片が挿入される挿入孔と、を有する。前記本体部は、前記挿入孔の内面の一部を構成し、前記挿入孔内に挿入された前記打ち抜き片の外周面の少なくとも一部と接触する接触部と、前記軸線方向から見て、前記接触部に対して前記挿入孔とは反対側に位置し、前記接触部の変形を許容する変形許容部と、を有する。
【0129】
(2)(1)記載の金型用保持部材において、前記挿入孔は、前記本体部を前記軸線方向に貫通する貫通孔である。前記接触部は、前記軸線方向に延びる。前記変形許容部は、前記接触部に対して前記挿入孔とは反対側の位置で、前記本体部の前記軸線方向に延びる。
【0130】
(3)(2)に記載の金型用保持部材において、前記接触部は、前記軸線方向から見て、前記挿入孔の内面に沿う方向に長い形状を有する。前記軸線方向から見て、前記接触部の長手方向の一側の端部と他側の端部とを結ぶ直線が延びる方向を第1方向とした場合、前記変形許容部の前記第1方向の長さは、前記接触部の前記第1方向の長さよりも長い。
【0131】
(4)(3)に記載の金型用保持部材において、前記軸線方向から見て、前記変形許容部における前記第1方向の一側の端部は、前記接触部における前記第1方向の前記一側の端部よりも、前記第1方向の外方に位置し、前記変形許容部における前記第1方向の他側の端部は、前記接触部における前記第1方向の前記他側の端部よりも前記第1方向の外方に位置している。
【0132】
(5)(4)に記載の金型用保持部材において、前記変形許容部の前記第1方向の一側の端部及び前記第1方向の他側の端部は、前記軸線方向から見て、前記接触部における前記第1方向の中心を通って前記第1方向と直交する方向に延びる前記接触部の中心線に対して、対称に位置する。
【0133】
(6)(5)に記載の金型用保持部材において、前記変形許容部は、前記軸線方向から見て、前記第1方向に長い形状を有する。前記変形許容部の長手方向の一側の端部は、外方に突出する湾曲面を有し、前記変形許容部の長手方向の他側の端部は、外方に突出する湾曲面を有する。
【0134】
(7)(6)に記載の金型用保持部材において、前記変形許容部は、長手方向の中央部分に、前記長手方向の一側の端部における前記湾曲面及び前記長手方向の他側の端部における前記湾曲面の短手方向の長さよりも短い部分を有する。
【0135】
(8)(1)から(7)のいずれか一つに記載の金型用保持部材において、前記変形許容部は、前記本体部を前記軸線方向に貫通する貫通孔である。
【0136】
(9)(1)から(8)のいずれか一つに記載の金型用保持部材において、前記本体部は、前記軸線方向から見て、前記挿入孔の内面において向かい合う部分の一方及び他方に位置する一対の接触部を少なくとも1つ含む複数の前記接触部と、前記軸線方向から見て、前記複数の接触部のそれぞれに対して前記挿入孔とは反対側に位置する複数の前記変形許容部と、を有する。
【0137】
(10)(9)に記載の金型用保持部材において、前記複数の打ち抜き片は、積層方向に隣り合う打ち抜き片同士を厚み方向にかしめるためのかしめ部を有する。前記一対の接触部は、前記軸線方向から見て、前記打ち抜き片が前記挿入孔内に挿入された状態で、前記かしめ部に対して両側に位置する。
【0138】
(11)(1)から(5)のいずれか一つに記載の金型用保持部材において、前記変形許容部は、前記軸線方向から見て本体部の外周面において、前記接触部に対して前記挿入孔とは反対の方向に開口し、且つ、前記本体部の軸線方向に延びる溝である。
【0139】
(12)金型は、貫通孔を有するダイと、前記貫通孔内を軸線方向に移動するパンチと、を有し、前記ダイ及び前記パンチによって、板状の分割コア片を打ち抜く金型である。前記金型は、前記ダイ及び前記パンチによって打ち抜かれた複数の分割コア片を、積層した状態で保持する(1)から(11)のいずれか一つに記載の金型用保持部材を有する。
【0140】
(13)プレス加工装置は、板状の分割コア片が積層された分割コア積層体を製造するプレス加工装置である。プレス加工装置は、(12)に記載の金型を有し、前記ダイ及び前記パンチによって、前記分割コア片を打ち抜き、前記金型用保持部材によって、複数の前記分割コア片を積層した状態で保持する。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は、ダイとパンチとによって加工対象に外形打ち抜き加工をする金型に適用可能である。
【符号の説明】
【0142】
1 装置本体部
2 金型
3 プレス機
4、104、204、304 金型用保持部材
21 ダイ支持部
22 ダイ
22a 貫通孔
23 パンチ保持部
24 パンチ
25 ストリッパ
41、141、241、341 本体部
42、142、242、342 挿入孔
43、143、243、343 筒部
43a 溝
44、144、244、344 接触部
44a、44b 端部
45、145、245、345 変形許容部
45a、45b、245a、245b 端部
80 積層コア
80a ヨーク
80b ティース
81 分割コア積層体
81a 分割ヨーク部
82 分割コア片
82a 分割ヨーク片
82b ティース片
83 かしめ部
83a 窪み
83b 突起
100 プレス加工装置
346 溝(変形許容部)
A 接触部の長手方向の一側の端部と他側の端部とを結ぶ直線が延びる方向
B 接触部の中心線
L1 接触部の第1方向の長さ
L2 変形許容部の第1方向の長さ