(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135585
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子、および、スチレン系樹脂発泡成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 9/224 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
C08J9/224 CET
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046353
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】大倉 康裕
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA32
4F074BA37
4F074BA38
4F074CA34
4F074CC28X
4F074CC29X
4F074CE16
4F074CE33
4F074CE43
4F074CE98
4F074DA24
4F074DA32
4F074DA33
4F074DA34
4F074DA59
(57)【要約】
【課題】それから得られるスチレン系樹脂発泡成形体に高い白度と美麗な外観を付与でき、且つ、スチレン系樹脂発泡成形体への成形性の低下を抑制できる、発泡性スチレン系樹脂粒子を提供する。また、そのような発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂粒子、そのような発泡性スチレン系樹脂粒子や予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、表面に添着物を有する発泡性スチレン系樹脂粒子であって、該発泡性スチレン系樹脂粒子100質量部に対する該添着物の量が0.003質量部~0.080質量部である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に添着物を有する発泡性スチレン系樹脂粒子であって、
該発泡性スチレン系樹脂粒子100質量部に対する該添着物の量が0.003質量部~0.080質量部である、
発泡性スチレン系樹脂粒子。
なお、上記添着物の量は、以下のようにして測定した。
オーバーフローした液を採取できる排出部を備えた2Lポリビーカーに上記発泡性スチレン系樹脂粒子500gを入れ、水10Lにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.005質量%の濃度となるように混合して得られた水溶液を、分速0.2Lで上記ポリビーカーに加えながら、撹拌装置によって270rpmで撹拌し、該撹拌によって液面が中心から外周に向かって盛り上がることで排出部の下端からオーバーフローした液を、目開き0.3mmの金網に通過させ、通過液を6L採取した。採取した通過液をアドバンテック東洋株式会社製のGLASS FIBER FILTER(商品名「ガラス濾紙GA-200」、サイズ:125mm)を用いて吸引濾過し、該濾紙上に残った物質を添着物とした。この添着物を、60℃恒温環境下で24時間乾燥させ、質量を測定した。
【請求項2】
前記添着物が、樹脂粉末、分散剤、表面添加剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
前記発泡性スチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂に発泡剤を含浸させて得られる発泡性粒子を水で洗浄して得られる、請求項1に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂粒子であって、
該予備発泡の嵩発泡倍率が2倍~150倍である、
予備発泡スチレン系樹脂粒子。
【請求項5】
請求項1から3までのいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子から成形される、スチレン系樹脂発泡成形体。
【請求項6】
請求項4に記載の予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形される、スチレン系樹脂発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子、および、スチレン系樹脂発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂発泡成形体は、軽量かつ断熱性および機械的強度に優れることから、住宅および自動車等に用いられる断熱材、建築資材等に用いられる保温材、発泡スチロール土木工法に用いられる盛土材料、魚箱および食品容器等の輸送用梱包材、緩衝材、クッションの充填剤等に幅広く使用されている。中でも、スチレン系樹脂発泡成形体としては、発泡性粒子(代表的には、発泡性スチレン系樹脂粒子あるいはそれを予備発泡させた予備発泡スチレン系樹脂粒子)を原料として製造される型内発泡成形体が、所望の形状を得やすい等の利点から多く使用されている。このようなスチレン系樹脂発泡成形体は、互いに融着した複数の発泡性粒子により構成されている。
【0003】
スチレン系樹脂発泡成形体は、その使用目的等から、高い白度や美麗な外観が要求されることが多い。
【0004】
スチレン系樹脂発泡成形体は、一般に、その融着促進のために、原料である発泡性スチレン系樹脂粒子の表面に表面添加剤を添着させている(特許文献1、2)。しかし、表面添加剤は、発泡、成形時の熱で表面を過度に可塑化してしまうことが多い。このため、原料である発泡性スチレン系樹脂粒子の表面に表面添加剤を添着させると、スチレン系樹脂発泡成形体の白度が低下するという問題が生じたり、スチレン系樹脂発泡成形体の外観が劣ってしまうという問題が生じたりする。
【0005】
一方、上記のスチレン系樹脂発泡成形体の白度の低下や外観の劣化の問題を解決しようとして、原料である発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面への表面添加剤の添加を低減させると、スチレン系樹脂発泡成形体における融着がし難くなるという問題や、機械的強度や成形性が低下してしまうという問題が生じたりする。
【0006】
また、スチレン系樹脂発泡成形体の原料である発泡性スチレン系樹脂粒子を製造する際には、一般に、分散安定剤が用いられる。このため、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面に分散安定剤が残存して添着することがあり、このように添着した分散安定剤も、スチレン系樹脂発泡成形体の白度の低下や外観の劣化の要因となり得る。
【0007】
さらに、スチレン系樹脂発泡成形体の原料である発泡性スチレン系樹脂粒子を製造する際に用いるスチレン系樹脂などの各種樹脂由来の樹脂粉末が、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面に残存して添着することがあり、このように添着した樹脂粉末も、スチレン系樹脂発泡成形体の白度の低下や外観の劣化の要因となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6223097号公報
【特許文献2】特開2014-70150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、それから得られるスチレン系樹脂発泡成形体に高い白度と美麗な外観を付与でき、且つ、スチレン系樹脂発泡成形体への成形性の低下を抑制できる、発泡性スチレン系樹脂粒子を提供することにある。また、そのような発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂粒子、そのような発泡性スチレン系樹脂粒子や予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、表面に添着物を有する発泡性スチレン系樹脂粒子であって、該発泡性スチレン系樹脂粒子100質量部に対する該添着物の量が0.003質量部~0.080質量部である。なお、上記添着物の量は、以下のようにして測定した。オーバーフローした液を採取できる排出部を備えた2Lポリビーカーに上記発泡性スチレン系樹脂粒子500gを入れ、水10Lにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.005質量%の濃度となるように混合して得られた水溶液を、分速0.2Lで上記ポリビーカーに加えながら、撹拌装置によって270rpmで撹拌し、該撹拌によって液面が中心から外周に向かって盛り上がることで排出部の下端からオーバーフローした液を、目開き0.3mmの金網に通過させ、通過液を6L採取した。採取した通過液をアドバンテック東洋株式会社製のGLASS FIBER FILTER(商品名「ガラス濾紙GA-200」、サイズ:125mm)を用いて吸引濾過し、該濾紙上に残った物質を添着物とした。この添着物を、60℃恒温環境下で24時間乾燥させ、質量を測定した。
[2]上記[1]に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子において、上記添着物が、樹脂粉末、分散剤、表面添加剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものであってもよい。
[3]上記[1]または[2]に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子において、上記発泡性スチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂に発泡剤を含浸させて得られる発泡性粒子を水で洗浄して得られるものであってもよい。
[4]本発明の実施形態による予備発泡スチレン系樹脂粒子は、上記[1]から[3]までのいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂粒子であって、該予備発泡の嵩発泡倍率が2倍~150倍である。
[5]本発明の一つの実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、上記[1]から[3]までのいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子から成形される。
[6]本発明の一つの実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、上記[4]に記載の予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、それから得られるスチレン系樹脂発泡成形体に高い白度と美麗な外観を付与でき、且つ、スチレン系樹脂発泡成形体への成形性の低下を抑制できる、発泡性スチレン系樹脂粒子を提供することができる。また、そのような発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂粒子、そのような発泡性スチレン系樹脂粒子や予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】添着物の量の測定方法を説明する概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0014】
本明細書において「(メタ)アクリル」とある場合は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とある場合は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。本明細書における「質量」は、SI単位系における「質量」と同義であり、「質量」と読み替えてもよい。
【0015】
≪≪A.発泡性スチレン系樹脂粒子≫≫
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、表面に添着物を有する発泡性スチレン系樹脂粒子である。
【0016】
本発明にいう「添着物」とは、本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子の表面に添着している物質であり、より具体的には、後述する添着物の量の測定方法によって濾紙上に残る物質である。したがって、本明細書においては、後述する添着物の量の測定方法によって濾紙上に残る物質を、本発明にいう「添着物」とする。
【0017】
本発明にいう「添着物」は、好ましくは、樹脂粉末、分散剤、表面添加剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。樹脂粉末は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。分散剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。表面添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0018】
添着物となり得る樹脂粉末としては、例えば、後述するような、発泡性スチレン系樹脂粒子を製造する際に用いる各種樹脂由来の樹脂粉末が挙げられ、代表的には、後述するようなスチレン系樹脂の粉末が挙げられる。
【0019】
添着物となり得る分散剤としては、例えば、後述するような、発泡性スチレン系樹脂粒子を製造する際に用いる分散剤が挙げられる。
【0020】
添着物となり得る表面添加剤としては、例えば、後述するような、発泡性スチレン系樹脂粒子を製造する際に行ってもよい表面改質の際に用いる表面添加剤が挙げられる。
【0021】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、発泡性スチレン系樹脂粒子100質量部に対する添着物の量が0.003質量部~0.080質量部であり、好ましくは0.003質量部~0.060質量部であり、さらに好ましくは0.003質量部~0.040質量部であり、特に好ましくは0.003質量部~0.030質量部であり、最も好ましくは0.003質量部~0.023質量部である。
【0022】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、発泡性スチレン系樹脂粒子に対する添着物の量を上記の特定の狭い範囲内に厳密に調整することによって、それから得られるスチレン系樹脂発泡成形体に高い白度と美麗な外観を付与でき、且つ、スチレン系樹脂発泡成形体への成形性の低下を抑制できる。すなわち、背景技術として言及した通り、従来、スチレン系樹脂発泡成形体において高い白度と美麗な外観と優れた成形性の両立が困難であったところ、本発明において、発泡性スチレン系樹脂粒子に対する添着物の量を特定の狭い範囲内に厳密に調整するという技術的手段によって、スチレン系樹脂発泡成形体において高い白度と美麗な外観と優れた成形性の両立が可能となった。また、発泡性スチレン系樹脂粒子に対する添着物の量は、後述するような極めて簡便な方法によって測定することができるので、上記の添着物の量の調整は容易に行うことができる。
【0023】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、全体として粒子の形状を有する。本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子の具体的な形状としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な形状を採用することができる。このような形状としては、例えば、球状、略球状、楕円球状(卵状)、円柱状、略円柱状などが挙げられる。
【0024】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、平均粒子径が、好ましくは0.3mm~3.0mmであり、より好ましくは0.3mm~1.7mmである。
【0025】
≪≪B.発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法≫≫
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法によって製造し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、このような製造方法としては、好ましくは、スチレン系樹脂に発泡剤を含浸させて得られる発泡性粒子を水で洗浄する方法が挙げられる。すなわち、本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、好ましくは、スチレン系樹脂に発泡剤を含浸させて得られる発泡性粒子を水で洗浄して得られる。
【0026】
≪B-1.発泡性粒子≫
発泡性粒子は、スチレン系樹脂に発泡剤を含浸させて得られる。
【0027】
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を含む単量体成分を重合させて得られる。
【0028】
スチレン系単量体は、スチレンまたはスチレン誘導体を含む。スチレン誘導体としては、例えば、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i-プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレンが挙げられる。スチレン系単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。スチレン系単量体は、好ましくは、少なくともスチレンを含有する。スチレン系単量体の全量に対するスチレンの含有割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上である。
【0029】
単量体成分は、主成分としてスチレン系単量体を含んでいれば、他の単量体を含んでいてもよい。本明細書において「主成分」とは、全成分中の該成分の含有割合が、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上である。
【0030】
他の単量体としては、代表的には、ビニル単量体が挙げられる。
【0031】
ビニル単量体としては、例えば、多官能単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、マレイン酸エステル単量体、フマル酸エステル単量体が挙げられる。ビニル単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0032】
多官能単量体の具体例としては、例えば、o-ジビニルベンゼン、m-ジビニルベンゼン、p-ジビニルベンゼン等のジビニルベンゼン;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;が挙げられる。多官能単量体を用いることにより、スチレン系樹脂に分岐構造を付与することができる。スチレン系樹脂を構成する単量体成分中の多官能単量体の含有量は、好ましくは0質量%~0.1質量%であり、より好ましくは0.005質量%~0.05質量%である。
【0033】
(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘキシルが挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステル単量体の中でも、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸エチルが好ましく、アクリル酸ブチルがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いることにより、スチレン系樹脂のガラス転移温度(Tg)を低くすることができる。スチレン系樹脂を構成する単量体成分中のアクリル酸エステル単量体の含有量は、好ましくは0質量%~4.0質量%であり、より好ましくは0.1質量%~3.0質量%である。
【0034】
マレイン酸エステル単量体としては、例えば、マレイン酸ジメチルなどが挙げられる。
【0035】
フマル酸エステル単量体としては、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸エチルなどが挙げられる。
【0036】
スチレン系樹脂は、汎用スチレン樹脂(GPPS)、市販されているスチレン系樹脂、懸濁重合法等の方法で新たに調製されたスチレン系樹脂等、リサイクル原料でないスチレン系樹脂であってもよいし、リサイクル原料のスチレン系樹脂であってもよい。リサイクル原料は、代表的には、使用済みのスチレン系樹脂発泡成形体であってもよい。リサイクル原料は、食品包装用トレー、魚箱、家電緩衝材等を回収し、リモネン溶解方式や加熱減容方式によって再生したもの等であってもよい。リサイクル原料は、家電製品(例えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等)や事務用機器(例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等)から分別回収された非発泡のスチレン系樹脂成形体を粉砕し、溶融混練してリペレット化したものであってもよい。
【0037】
スチレン系樹脂は、スチレン系樹脂とオレフィン系樹脂との複合樹脂であってもよい。複合樹脂におけるスチレン系樹脂とオレフィン系樹脂との含有比(スチレン系樹脂/オレフィン系樹脂:質量比)は、好ましくは50/50~90/10であり、より好ましくは60/40~85/15である。スチレン系樹脂の含有量が少なすぎると、発泡性および/または成形加工性が不十分になる場合がある。スチレン系樹脂の含有量が多すぎると、耐衝撃性および/または柔軟性が不十分になる場合がある。
【0038】
オレフィン系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なオレフィン系樹脂を採用することができる。オレフィン系樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。具体例としては、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、これら重合体の架橋体等のポリエチレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテンランダム共重合体等のポリプロピレン系樹脂;が挙げられる。これらのオレフィン系樹脂の中でも、好ましくは、エチレン-酢酸ビニル共重合体、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、および、これらの混合物である。なお、低密度は、好ましくは0.91g/cm3~0.94g/cm3であり、より好ましくは0.91g/cm3~0.93g/cm3である。高密度は、好ましくは0.95g/cm3~0.97g/cm3であり、より好ましくは0.95g/cm3~0.96g/cm3である。中密度は、低密度と高密度との間の密度である。
【0039】
発泡剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0040】
発泡剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な発泡剤を用いることができる。発泡剤は、好ましくは、沸点がスチレン系樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状または液状の有機化合物である。具体例としては、例えば、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン(n-ペンタン、イソペンタンまたはネオペンタン)、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロペンタジエン等の脂環式炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン含有炭化水素;が挙げられる。発泡剤として、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガスを用いてもよい。これらの中でも、発泡剤としては、脂肪族炭化水素が好ましい。オゾン層の破壊を防止することができ、かつ、空気と速く置換するのでスチレン系樹脂発泡成形体の経時変化を抑制することができるからである。発泡剤としては、より好ましくは、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、およびこれらの組み合わせである。
【0041】
発泡剤の含有量は、予備発泡スチレン系樹脂粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体を形成するに十分な量である限り、目的に応じて適切に設定され得る。発泡剤の含有量は、スチレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは2質量部~16質量部であり、より好ましくは3質量部~8質量部である。
【0042】
スチレン系樹脂に発泡剤を含浸させる方法としては、
(i)単量体成分を連続的又は断続的に水性媒体中に供給して重合開始剤の存在下で懸濁重合し、重合の途中および/または重合の終了後に発泡剤を添加して含浸させる方法(1段法)、
(ii)発泡剤を添加せずに、単量体成分を重合して得られた粒子をふるい分けして必要な粒径範囲の粒子のみを得て、この粒子と水と分散剤を供給した反応容器を昇温して分散液を調製し、この分散液に発泡剤を添加して、粒子に発泡剤を含浸させる方法(2段法)、
(iii)小粒子のスチレン系樹脂粒子(種粒子)と水と分散剤を供給した反応容器を昇温して分散液を調製し、ここに、重合開始剤を溶解した単量体成分を連続的に供給し、必要に応じて、さらに単量体成分を連続的に供給し、これによって重合を行い、重合の途中および/または重合の終了後に発泡剤を添加して含浸させ、目的とする粒子径まで成長させる方法(シード重合法)、
などが挙げられる。
【0043】
重合開始剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な重合開始剤を用いることができる。このような重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,2-t-ブチルパーオキシブタン、t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサイハイドロテレフタレート等の有機過酸化物;アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物;が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0044】
重合開始剤としては、分子量を調整し、残存単量体量を減少させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が50℃~80℃の範囲にある重合開始剤と、10時間の半減期を得るための分解温度が80℃~120℃の範囲にある重合開始剤とを併用してもよい。重合開始剤は、種粒子に均一に吸収させる必要があることから、液状物として添加することが好ましい。重合開始剤を直接に分散液中に添加すると、種粒子に均一に吸収されにくくなるので、重合開始剤は水性媒体に懸濁または乳化させた状態で添加するか、あるいは少量のスチレン系単量体に溶解し、分散剤を加えて、水性懸濁液として添加することが好ましい。
【0045】
重合開始剤の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な使用量を採用しうる。このような使用量としては、単量体成分に対して、好ましくは0.1質量%~1.0質量%であり、より好ましくは0.1質量%~0.8質量%である。
【0046】
重合開始剤は、好ましくは、スチレン系単量体を含む単量体成分または溶剤に溶解して添加する。溶剤としては、例えば、エチルベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;が挙げられる。溶剤を用いる場合は、通常、単量体成分に対して10質量%以下の量で用いる。
【0047】
分散剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な分散剤を採用しうる。このような分散剤としては、例えば、懸濁安定剤、アニオン界面活性剤が挙げられる。これらは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0048】
懸濁安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子;第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化マグネシウムなどの難溶性無機金属塩;が挙げられる。難溶性無機金属塩を用いる場合には、アニオン界面活性剤が通常併用される。
【0049】
アニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩;β-テトラヒドロキシナフタレンスルホン酸塩;が挙げられる。
【0050】
スチレン系単量体を含む反応液(代表的には懸濁液)は、添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、輻射伝熱抑制成分、スチレン系樹脂以外の樹脂、架橋剤、可塑剤、充填剤、着色剤、気泡調整剤、耐候剤、老化防止剤、防曇剤、香料などが挙げられる。添加剤の種類、数、組み合わせ、含有量等は、目的に応じて適切に設定され得る。添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0051】
発泡性粒子を製造する際には、発泡剤とともに発泡助剤を含んでいてもよい。発泡助剤としては、例えば、アジピン酸ジイソブチル、トルエン、シクロヘキサン、エチルベンゼン、流動パラフィン、ヤシ油が挙げられる。発泡助剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0052】
発泡性粒子を製造する際には、発泡剤とともに難燃剤や難燃助剤を含んでもよい。難燃剤としては、例えば、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモシクロヘキサン、トリスジブロモプロピルホスフェート、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ジグリシジルエーテル、2,2-ビス[4’(2’’,3’’-ジブロモアルコキシ)-3’,5’-ジブロモフェニル]-プロパンが挙げられる。難燃助剤としては、例えば、クメンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサンが挙げられる。難燃剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。難燃助剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0053】
発泡性粒子は、溶融押出法により製造してもよい。溶融押出法は、スチレン系樹脂ペレットを樹脂供給装置に供給し、樹脂供給装置内で溶融されたスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤を含有した溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から押し出し、その後冷却して、発泡性スチレン系樹脂粒子を得る方法である。ダイの小孔から冷却用液体中に直接押し出し、押し出した直後に押出物を回転刃で切断し、切断された粒子を冷却用液体中で冷却する方法はホットカット法と呼ばれる。ダイの小孔から一旦空気中にストランド状に押し出し、ストランドが発泡する前に冷却用水槽中に導き、ストランドを冷却用水槽中で冷却した後、切断し円柱状の粒子とする方法はストランドカット法(コールドカット法)と呼ばれる。ホットカット法、ストランドカット法(コールドカット法)のいずれの方法によっても、発泡性スチレン系樹脂粒子を製造することができる。
【0054】
≪B-2.洗浄工程≫
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、好ましくは、スチレン系樹脂に発泡剤を含浸させて得られる発泡性粒子を水で洗浄して得られる。この洗浄を行う工程を「洗浄工程」と称する。
【0055】
洗浄工程においては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、水の温度を特定の温度範囲に調整する。この温度範囲としては、好ましくは1℃~37℃の範囲であり、より好ましくは3℃~35℃の範囲であり、さらに好ましく5℃~33℃の範囲であり、特に好ましくは6℃~31℃の範囲であり、最も好ましくは7℃~30℃の範囲である。このような温度範囲の水を用いて発泡性粒子を洗浄することにより、それから得られるスチレン系樹脂発泡成形体に高い白度と美麗な外観を付与でき、且つ、スチレン系樹脂発泡成形体への成形性の低下を抑制できる、発泡性スチレン系樹脂粒子を提供することができる。
【0056】
洗浄工程においては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、発泡性粒子100質量部に対する水の量を特定の量範囲に調整する。この量範囲としては、好ましくは31質量部~390質量部の範囲であり、より好ましくは40質量部~300質量部の範囲であり、さらに好ましくは50質量部~200質量部の範囲であり、特に好ましくは60質量部~150質量部の範囲であり、最も好ましくは65質量部~120質量部の範囲である。このような量範囲の水を用いて発泡性粒子を洗浄することにより、それから得られるスチレン系樹脂発泡成形体に高い白度と美麗な外観を付与でき、且つ、スチレン系樹脂発泡成形体への成形性の低下を抑制できる、発泡性スチレン系樹脂粒子を提供することができる。
【0057】
洗浄工程における洗浄時間は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な時間を設定しうる。製造コスト等を勘案すると、洗浄時間は、好ましくは90分以下であり、より好ましくは60分以下である。
【0058】
≪B-3.乾燥工程≫
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、好ましくは、上記の洗浄工程を経て得られた粒子を乾燥して得られる。この乾燥を行う工程を「乾燥工程」と称する。乾燥条件としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な乾燥条件を設定しうる。
【0059】
≪B-4.表面改質工程≫
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、その表面が表面添加剤で改質されていてもよい。この改質を行う工程を「表面改質工程」と称する。
【0060】
表面改質工程においては、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面に表面添加剤を添加(代表的には塗布)する。表面添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0061】
表面添加剤が発泡性スチレン系樹脂粒子の表面に塗布されることにより、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面特性を目的に応じて適切に改質し得る。
【0062】
表面添加剤の添加量は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加量を採用しうる。このような添加量としては、代表的には、発泡性スチレン系樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは0.05質量部~3.0質量部であり、より好ましくは0.05質量部~2.0質量部であり、さらに好ましくは0.1質量部~1.6質量部である。
【0063】
表面添加剤としては、例えば、展着剤、帯電防止剤、結合防止剤、融着促進剤、滑剤が挙げられる。
【0064】
表面添加剤として、例えば、ポリエチレングリコール(代表的には、展着剤および帯電防止剤として機能):中鎖脂肪酸トリグリセリド(炭素数が5~12の直鎖状または分岐状の脂肪酸のグリセリド)などの5℃において液体である脂肪族化合物(代表的には、融着促進剤として機能);ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの高級脂肪酸の金属塩(代表的には、結合防止剤として機能);ステアリン酸トリグリセリド(代表的には、融着促進剤として機能)、ステアリン酸モノステアレート(代表的には、帯電防止剤として機能);シリコーンオイル(代表的には、滑剤として機能);が挙げられる。
【0065】
≪≪C.予備発泡スチレン系樹脂粒子≫≫
予備発泡スチレン系樹脂粒子は、発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる。
【0066】
すなわち、本発明の実施形態による予備発泡スチレン系樹脂粒子は、本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる。予備発泡は、発泡性スチレン系樹脂粒子を、水蒸気等を用いて所望の嵩発泡倍率(嵩密度)に発泡させることを含む。予備発泡スチレン系樹脂粒子の嵩発泡倍率は、好ましくは2倍~150倍であり、より好ましくは5倍~100倍である。嵩密度は、嵩発泡倍率の逆数である。嵩発泡倍率および嵩密度は、例えば、以下のようにして求められる。予備発泡スチレン系樹脂粒子の嵩発泡倍率が上記範囲内にあることにより、発泡時や成形時のブロッキングをより防止でき、さらに、発泡時と成形時の帯電性をより抑制しつつより良好な融着性や表面性を発現し、静電気のより少ないスチレン系樹脂発泡成形体を成形することができる、予備発泡スチレン系樹脂粒子を提供し得る。
【0067】
発泡性スチレン系樹脂粒子を測定試料としてW(g)採取する。この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させ、メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積V(cm3)をJIS K 6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。測定資料の質量および体積から、下記式に基づいて嵩発泡倍数および嵩密度を求めることができる。
嵩発泡倍数(倍=cm3/g)=測定試料の体積(V)/測定試料の質量(W)
嵩密度(g/cm3)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
【0068】
1つの代表的な実施形態においては、予備発泡スチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂発泡成形体の成形に用いることができる。別の実施形態においては、予備発泡スチレン系樹脂粒子は、そのままで緩衝剤、断熱材等として用いることができる。予備発泡スチレン系樹脂粒子をそのまま用いる場合、予備発泡スチレン系樹脂粒子は、好ましくは、多数の予備発泡スチレン系樹脂粒子を袋体に充填した充填体として用いられ得る。
【0069】
≪≪D.スチレン系樹脂発泡成形体≫≫
本発明の一つの実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体である。本発明の別の一つの実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、本発明の実施形態による予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体である。
【0070】
スチレン系樹脂発泡成形体は、代表的には、予備発泡スチレン系樹脂粒子をさらに発泡させた発泡スチレン系樹脂粒子(以下、単に「発泡粒子」と称する場合がある)を含む。
【0071】
スチレン系樹脂発泡成形体は、代表的には、互いに融着した複数の発泡粒子により構成されている。
【0072】
スチレン系樹脂発泡成形体は、代表的には、目的に応じた所定の形状を有する型内に予備発泡スチレン系樹脂粒子を仕込み、型内発泡成形を行うことにより作製され得る。より詳細には、型内発泡成形は、(i)予備発泡スチレン系樹脂粒子を多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填すること、(ii)熱媒体(例えば、加圧水蒸気等)で予備発泡スチレン系樹脂粒子を加熱発泡させて発泡粒子を得ること、(iii)当該加熱発泡により、発泡粒子間の空隙を埋めると共に、発泡粒子を相互に融着させることにより一体化させること、を含む。スチレン系樹脂発泡成形体の密度は、目的に応じて適切に設定され得る。スチレン系樹脂発泡成形体の密度は、例えば、金型内に充填する予備発泡スチレン系樹脂粒子の嵩発泡倍率を予め調整すること、あるいは、金型内への予備発泡スチレン系樹脂粒子の充填量を調整することにより調整することができる。
【0073】
加熱発泡の温度(実質的には、熱媒体の温度)は、好ましくは90℃~150℃であり、より好ましくは110℃~130℃である。加熱発泡時間は、好ましくは5秒~50秒であり、より好ましくは10秒~50秒である。加熱発泡の成形蒸気圧(熱媒体の吹き込みゲージ圧)は、好ましくは0.04MPa~0.1MPaであり、より好ましくは0.06MPa~0.08MPaである。加熱発泡がこのような条件であれば、発泡粒子を相互に良好に融着させることができる。
【0074】
必要に応じて、スチレン系樹脂発泡成形体の成形前に予備発泡スチレン系樹脂粒子を熟成させてもよい。予備発泡スチレン系樹脂粒子の熟成温度は、好ましくは20℃~60℃である。熟成温度が低すぎると、過度に長い熟成時間が必要とされる場合がある。熟成温度が高すぎると、予備発泡スチレン系樹脂粒子中の発泡剤が散逸して成形性が低下する場合がある。
【0075】
スチレン系樹脂発泡成形体における発泡粒子の嵩発泡倍率は、好ましくは2倍~150倍であり、より好ましくは5倍~100倍である。
【0076】
本発明の実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子から成形されるか、または、本発明の実施形態による予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形されるので、高い白度と美麗な外観を発現でき、また、成形性に優れる。
【0077】
本発明の実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、その白度が、好ましくは90以上であり、より好ましくは93以上であり、さらに好ましくは95以上であり、特に好ましくは97以上であり、最も好ましくは98以上である。白度の測定方法については、後述する。
【0078】
本発明の実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、その融着率が、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは88%以上であり、特に好ましくは90%以上であり、最も好ましくは92%以上である。融着率の測定方法については、後述する。
【実施例0079】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法および評価方法は以下の通りである。
【0080】
<発泡性スチレン系樹脂粒子の表面の添着物の量の測定>
図1に示すように、オーバーフローした液を採取できる排出部(150)を備えた2Lポリビーカー(100)に上記発泡性スチレン系樹脂粒子(10)500gを入れ、水10Lにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.005質量%の濃度となるように混合して得られた水溶液(A)を、分速0.2Lで上記ポリビーカーに加えながら、撹拌装置(200)によって270rpmで撹拌し、該撹拌によって液面(500)が中心から外周に向かって盛り上がることで排出部(150)の下端(a)からオーバーフローした液を、目開き0.3mmの金網(300)に通過させ、通過液(B)を6L採取した。採取した通過液(B)をアドバンテック東洋株式会社製のGLASS FIBER FILTER(商品名「ガラス濾紙GA-200」、サイズ:125mm)を用いて吸引濾過し、該濾紙上に残った物質を添着物とした。この添着物を、60℃恒温環境下で24時間乾燥させ、質量を測定し、発泡性スチレン系樹脂粒子100質量部に対する添着物の量を算出した。
【0081】
<スチレン系樹脂発泡成形体の白度の測定>
JIS Z8729-2004「色の表示方法-L*a*b*表色系」に基づく色差測定により評価した。測定には、色彩色差計(コニカミノルタ社製、型式:CR-400)、および、標準合わせに標準白板校正板(Y:94.3、x:0.3144、y:0.3208)を用いた。校正した色彩色差計を用いて平板形状のスチレン系樹脂発泡成形体の表面の任意の点20箇所で測定し、明度L*値の平均値を白度とした。評価基準は以下の通りとした。
◎:96以上。
〇:93以上96未満。
△:90以上93未満。
×:90未満
【0082】
<スチレン系樹脂発泡成形体の外観の評価>
スチレン系樹脂発泡成形体の外観を目視にて評価した。
〇:スチレン系樹脂発泡成形体の表面の発泡粒子が接合した境界部分が平滑であり、見た目が均一である。
×:スチレン系樹脂発泡成形体の表面の発泡粒子が接合した境界部分に凹凸があって平滑性が劣り、見た目がまだらである。
【0083】
<スチレン系樹脂発泡成形体の融着率の測定>
幅300mm、長さ400mm、厚み30mmの平板形状のスチレン系樹脂発泡成形体の表面に、一対の長辺の中心同士を結ぶ直線に沿ってカッターナイフで深さ約2mmの切り込み線を入れた後、この切り込み線に沿って該スチレン系樹脂発泡成形体を手で二分割し、その破断面における発泡粒子について、100個~150個の任意の範囲について粒子内で破断している粒子の数(a)と粒子同士の界面で破断している粒子の数(b)とを数え、式[(a)/((a)十(b))]×100に代入して得られた値を融着率(%)とした。評価基準は以下の通りとした。
◎:90%以上
○:85%以上90%未満
△:80%以上85%未満
×:80%未満
【0084】
[実施例1]
<発泡性スチレン系樹脂粒子の製造>
内容量100リットルの攪拌機付き重合容器に、水:40000質量部、懸濁安定剤としてリン酸三カルシウム:100質量部、アニオン界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:3.2質量部を供給し、攪拌しながら、スチレン:40000質量部、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド:102質量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート:24質量部を添加し、90℃に昇温して重合した。この温度で6時間保持し、さらに、125℃に昇温してから2時間後に冷却し、スチレン系樹脂粒子を得た。得られたスチレン系樹脂粒子を篩分けし、種粒子として粒子径0.5mm~0.71mmのスチレン系樹脂粒子を得た。なお、撹拌の回転数については、上記粒子径が得られるように調整した。
次に、内容積25リットルの撹拌機付き重合容器に、種粒子:2150質量部、水:7520質量部、ピロリン酸マグネシウム:30質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:1.0質量部を供給し、撹拌しつつ72℃に加熱して、分散液を作製した。続いて、ベンゾイルパーオキサイド:31質量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート:8質量部、気泡調整剤としてジドデシル3,3’-チオジプロピオネート:0.7質量部をスチレン:786質量部、アクリル酸ブチル:137質量部の単量体混合物に溶解させた溶液を調製し、この全てを上記分散液中に撹拌しつつ供給した。そして、分散液中に上記溶液を供給し終えてから72℃で60分間維持した。
次いで、87℃まで1時間で昇温させながら、スチレン:2346質量部を一定供給し、次いで、87℃で1時間30分保持しながら、スチレン:3744質量部にジビニルベンゼン:2.7質量部を溶解した単量体混合物を一定供給し、さらに30分保持した。
次いで、125℃まで昇温し、30分保持することで、未反応の単量体を反応させた。次いで、100℃まで冷却し、重合容器内に、シクロヘキサン:92質量部、アジピン酸ジイソブチル:82質量部、スチレン:45質量部、混合ブタン:640質量部を圧入し、2時間保持した後、重合容器内を25℃に冷却した。
その後、反応液と発泡性スチレン系樹脂粒子を分離させて反応液だけを除去し、あらかじめ2℃に調温していた洗浄水を発泡性スチレン系樹脂粒子100質量部に対して50質量部投入して10分間洗浄し、脱水した。
脱水後に乾燥させた後、得られた発泡性スチレン系樹脂粒子に、ブロッキング防止剤としてステアリン酸亜鉛:0.1質量部、融着促進剤として12-ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド:0.08質量部を被覆した。
被覆後、発泡性スチレン系樹脂粒子を13℃の恒温室にて5日間放置した。熟成が完了しているのを確認し、発泡性スチレン系樹脂粒子(1)を得た。
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子(1)について、表面の添着物の量の測定を行った。
<予備発泡スチレン系樹脂粒子の作製>
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子(1)を加熱して嵩密度0.0166g/cm3に予備発泡させ、予備発泡スチレン系樹脂粒子(1)を得た。得られた予備発泡スチレン系樹脂粒子(1)は、20℃で24時間熟成させた。
<スチレン系樹脂発泡成形体の作製>
熟成した予備発泡スチレン系樹脂粒子(1)を、室温雰囲気下、24時間放置した後、型内発泡成形し、400mm×300mm×30mmサイズの板状のスチレン系樹脂発泡成形体(1)を得た。型内発泡成形は、積水工機社製のACE-3SP成形機を用いて行った。加熱時間は、一方加熱時間8秒、逆一方加熱時間2秒、両面加熱時間5秒とし、成形圧(水蒸気吹き込みゲージ圧)は0.06MPaとした。
得られたスチレン系樹脂発泡成形体(1)について、白度の測定、外観の評価、融着率の測定を行った。
結果を表1に示した。
【0085】
[実施例2~30]
洗浄水の温度、量を表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様に行い、発泡性スチレン系樹脂粒子(2)~(30)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(2)~(30)、スチレン系樹脂発泡成形体(2)~(30)を得た。
結果を表1に示した。
【0086】
[比較例1]
洗浄水の温度を0.5℃、洗浄水の量を発泡性スチレン系樹脂粒子100質量部に対して30質量部投入した以外は、実施例1と同様に行い、発泡性スチレン系樹脂粒子(C1)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(C1)、スチレン系樹脂発泡成形体(C1)を得た。
結果を表2に示した。
【0087】
[比較例2~24]
洗浄水の温度、量を表2に記載のように変更した以外は、比較例1と同様に行い、発泡性スチレン系樹脂粒子(C2)~(C24)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(C2)~(C24)、スチレン系樹脂発泡成形体(C2)~(C24)を得た。
結果を表2に示した。
【0088】
【0089】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子、および、スチレン系樹脂発泡成形体は、住宅および自動車等に用いる断熱材、建築資材等に用いる保温材、魚箱および食品容器等の輸送用梱包材、緩衝材等に好適に用いられる。本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子、およびスチレン系樹脂発泡成形体は、より具体的には、壁用断熱材、床用断熱材、屋根用断熱材、自動車用断熱材、温水タンク用保温材、配管用保温材、ソーラーシステム用保温材、給湯器用保温材、食品および工業製品等の容器(例えば、魚箱などの食品容器、通い箱)、緩衝材、フロート、ブロック、魚および農産物等の梱包材、盛土材(盛土用成形体や盛土ブロックなど)、畳の芯材、クッションの芯材、コンクリートの骨材等に好適に用いられる。