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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135592
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】衝撃吸収部材
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/04 20060101AFI20240927BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B60R21/04 330
B60J5/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046366
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 将之
(72)【発明者】
【氏名】竹内 優弥
(72)【発明者】
【氏名】川口 学
(72)【発明者】
【氏名】村田 剛士
(72)【発明者】
【氏名】尾関 悠我
(57)【要約】
【課題】側突初期段階における乗員の押し出しを適切に行いつつ、腰部付近に作用する荷重が必要以上に大きくならない衝撃吸収部材を提供する。
【解決手段】ドアパネル10を乗物室内側から覆うドアトリム20に取り付けられ、ドアパネル10とドアトリム20の間に配される衝撃吸収部材30であって、ドアトリム20において、乗物のシート13の側方であって相対的に乗物前方に位置し、ドアパネル10と対向配置される第1対向面42Aを有する第1衝撃吸収部41と、ドアトリム20において、乗物のシート13の側方であって第1衝撃吸収部41よりも相対的に乗物後方に位置し、ドアパネル10と対向配置される第2対向面62Aを有する第2衝撃吸収部61と、を備え、 第1対向面42Aは、第2対向面62Aよりもドアパネル10に近い側に配される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用パネルを乗物室内側から覆う乗物用ドアトリムに取り付けられ、前記乗物用パネルと前記乗物用ドアトリムの間に配される衝撃吸収部材であって、
前記乗物用ドアトリムにおいて、乗物のシートの側方であって相対的に乗物前方に位置し、前記乗物用パネルと対向配置される第1対向面を有する第1衝撃吸収部と、
前記乗物用ドアトリムにおいて、乗物のシートの側方であって前記第1衝撃吸収部よりも相対的に乗物後方に位置し、前記乗物用パネルと対向配置される第2対向面を有する第2衝撃吸収部と、を備え、
前記第1対向面は、前記第2対向面よりも前記乗物用パネルに近い側に配される、衝撃吸収部材。
【請求項2】
前記乗物用ドアトリムは、乗物室外側に膨出する膨出部を有しており、
前記第1衝撃吸収部は、前記膨出部に対して乗物後側に隣接する形で配され、
前記第2衝撃吸収部は、前記乗物用ドアトリムに取り付けられる取付部を備えると共に、前記第1衝撃吸収部に対して乗物後側に隣接する形で配され、
前記第1衝撃吸収部における前記膨出部と反対側の面は、乗物室内側に向かうにつれて前記膨出部から遠ざかる形で傾斜する傾斜面である、請求項1に記載の衝撃吸収部材。
【請求項3】
前記傾斜面と前記第2対向面とを接続する接続部を備える、請求項2に記載の衝撃吸収部材。
【請求項4】
前記第1衝撃吸収部と前記第2衝撃吸収部との境界部が、凹R状をなす、請求項2又は請求項3に記載の衝撃吸収部材。
【請求項5】
前記第1衝撃吸収部における前記膨出部との対向面には、前記膨出部側に突出する突出部が形成され、
前記突出部と前記膨出部の間に介在された緩衝材を備える、請求項2又は請求項3に記載の衝撃吸収部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される技術は、衝撃吸収部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物用ドアトリムに取り付けられた衝撃吸収部材として、下記特許文献1に記載のものが知られている。この特許文献1に記載された衝撃吸収部材は、乗物用ドアトリムにおいて乗員の腰部に対応した箇所に配され、乗物の側突時に潰れることで衝撃を吸収することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-55549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、衝撃吸収部材には、側突時に潰れることで衝撃を吸収する機能の他、側突の初期段階において、乗員をより速やかに乗物室内側に押し出して保護する機能が求められる。上記構成のように、衝撃吸収部材が乗員の腰部に対応した箇所に配されている場合、側突時には、衝撃吸収部材が潰れつつ乗員の腰部を押圧することになり、必要以上に腰部に荷重が作用する場合がある。近年、側突時の安全基準については、より高いものが要求されており、腰部に作用する荷重を低減させることが求められている。
【0005】
本明細書で開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、側突初期段階における乗員の押し出しを適切に行いつつ、腰部付近に作用する荷重が必要以上に大きくならない衝撃吸収部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、本明細書で開示される衝撃吸収部材は、乗物用パネルを乗物室内側から覆う乗物用ドアトリムに取り付けられ、前記乗物用パネルと前記乗物用ドアトリムの間に配される衝撃吸収部材であって、前記乗物用ドアトリムにおいて、乗物のシートの側方であって相対的に乗物前方に位置し、前記乗物用パネルと対向配置される第1対向面を有する第1衝撃吸収部と、前記乗物用ドアトリムにおいて、乗物のシートの側方であって前記第1衝撃吸収部よりも相対的に乗物後方に位置し、前記乗物用パネルと対向配置される第2対向面を有する第2衝撃吸収部と、を備え、前記第1対向面は、前記第2対向面よりも前記乗物用パネルに近い側に配されることを特徴とする。
【0007】
乗物のシートに乗員が着座した場合、相対的に後方には腰部が、相対的に前方には大腿部が位置することになる。つまり、上記構成において、第1衝撃吸収部が大腿部に相対的に近い位置に、第2衝撃吸収部が腰部に相対的に近い位置に対向することとなる。一方、上記構成において、乗物の側突時には、乗物用パネルが乗物室内側に変位する。側突の初期段階では、第2対向面に比べて乗物用パネルに近い第1対向面が乗物用パネルに押圧されることで、第1衝撃吸収部を介して乗員の大腿部近辺が相対的に押圧され、乗員が乗物室内側に押し出されると共に第1衝撃吸収部が潰れることで衝撃を吸収する。さらに、側突が進行して第1衝撃吸収部がある程度潰れると、第2対向面が乗物用パネルに押圧され、第2衝撃吸収部を介して乗員の腰部近辺が相対的に押圧される。これ以降、第1衝撃吸収部及び第2衝撃吸収部の双方が潰れることで衝撃を吸収する。第2衝撃吸収部による腰部近辺の押圧が開始する時点では、既に第1衝撃吸収部が潰れることである程度衝撃が吸収されており、第1衝撃吸収部を介して乗員が乗物室内側に押し出されている。このため、側突の初期段階において乗員の腰部近辺を押圧する構成と比べて、乗員の腰部近辺に作用する荷重を低減させることができる。以上のように、上記構成においては、側突の初期段階では、腰部近辺よりも荷重に対する耐性が高い大腿部近辺で荷重を受けることで、乗員の室内側への押し出しを適切に行うと共に、側突が進行した時点で第2衝撃吸収部を介して腰部近辺を押圧させることで、腰部付近に作用する荷重が必要以上に大きくならないようにすることができる。また、第2対向面が乗物用パネルに押圧された後では、第1衝撃吸収部及び第2衝撃吸収部の双方が潰れることでより高い衝撃吸収性能を発揮することができる。
【0008】
また、前記乗物用ドアトリムは、乗物室外側に膨出する膨出部を有しており、前記第1衝撃吸収部は、前記膨出部に対して乗物後側に隣接する形で配され、前記第2衝撃吸収部は、前記乗物用ドアトリムに取り付けられる取付部を備えると共に、前記第1衝撃吸収部に対して乗物後側に隣接する形で配され、前記第1衝撃吸収部における前記膨出部と反対側の面は、乗物室内側に向かうにつれて前記膨出部から遠ざかる形で傾斜する傾斜面であるものとすることができる。
【0009】
第1衝撃吸収部が潰れる過程において、傾斜面が乗物用パネルに押圧されることで、第1衝撃吸収部には、膨出部側に向かう荷重が作用する。これにより、第1衝撃吸収部は、第2衝撃吸収部との境界部分を起点として膨出部側に折れる。その後、折れた第1衝撃吸収部が膨出部を押圧することで膨出部が潰れ、衝撃を吸収する。このように上記構成では、側突時の衝撃を乗物用ドアトリムの膨出部を用いて吸収することでき、衝撃吸収性能をより高くすることができる。
【0010】
また、前記傾斜面と前記第2対向面とを接続する接続部を備えるものとすることができる。側突時において、第1衝撃吸収部が膨出部側に折れるタイミングが早過ぎると、第1衝撃吸収部を介して、乗員の大腿部近辺が十分に押圧されず、乗員を乗物室内側に押し出し難くなる可能性がある。上記構成では、傾斜面と第2対向面とを接続する接続部を備えることで、第1衝撃吸収部が膨出部側に折れるためにより高い荷重が必要となり、第1衝撃吸収部が膨出部側に折れるタイミングを遅くすることができる。この結果、第1衝撃吸収部を介して、乗員の大腿部近辺が十分に押圧された後、第1衝撃吸収部が膨出部側に折れるようにすることができる。
【0011】
また、前記第1衝撃吸収部と前記第2衝撃吸収部との境界部が、凹R状をなすものとすることができる。第1衝撃吸収部と第2衝撃吸収部との境界部が凹R状をなすことで、境界部に応力が集中して破断する事態を抑制することができる。この結果、境界部を起点として第1衝撃吸収部を膨出部側に確実に折ることができ、所望の衝撃吸収性能を発揮させることができる。
【0012】
また、前記第1衝撃吸収部における前記膨出部との対向面には、前記膨出部側に突出する突出部が形成され、前記突出部と前記膨出部の間に介在された緩衝材を備えるものとすることができる。突出部を膨出部に対して緩衝材を介して当接させることで、第1衝撃吸収部が膨出部側に折れた際に、膨出部をより早く潰すことができ、衝撃吸収性能をより高くすることができる。また、突出部と膨出部の間に緩衝材が介在されているため、乗物走行時の振動等によって、突出部が膨出部に直接当接し、異音が発生する事態を抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、側突初期段階における乗員の押し出しを適切に行いつつ、腰部付近に作用する荷重が必要以上に大きくならない衝撃吸収部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る衝撃吸収部材が取り付けられたドアトリムについて、シートに着座した乗員との関係で示す正面図
図2】ドアトリムの車室外側の面のうち、衝撃吸収部材が配された近傍を示す図
図3】衝撃吸収部材を車室外側から視た斜視図
図4】衝撃吸収部材を車室内側から視た斜視図
図5】衝撃吸収部材の一部を切断して視た断面図(図2のV-V線で切断した図に対応)
図6】衝撃吸収部材の一部を切断して視た断面図(図2のVI-VI線で切断した図に対応)
図7】衝撃吸収部材を車両前側から視た斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態を図1から図7によって説明する。本実施形態では、車両用のドアトリムに取り付けられる衝撃吸収部材を例示する。ドアトリム20(乗物用ドアトリム)は、車両のドアパネル10(乗物用パネル、図5参照)を車室内側(乗物室内側)から覆う構成とされる。ドアトリム20は、図1に示すように、ドアパネル10(より詳しくはインナパネル)と対向配置されるアッパーボード21及びロアボード22と、車室内側に膨出した形状をなし、乗員が腕を載置するためのアームレスト23と、ドアポケット24を構成するボード部材25と、を備える。アッパーボード21、ロアボード22及びボード部材25は、例えばポリプロピレン等の合成樹脂材料によって構成されている。なお、アッパーボード21、ロアボード22及びボード部材25の材質は合成樹脂材料に限定されず、例えば、木質系材料と合成樹脂材料を混合したものを用いてもよい。
【0016】
ロアボード22における車両前後方向(図1の左右方向)の中央部分は、車室内側に開口する凹部26となっている。言い換えると、ロアボード22における凹部26の形成箇所は、車室外側(乗物室外側)に膨出する膨出部27(図5参照)となっている。ボード部材25は凹部26の開口の下部を車室内側から覆う形でロアボード22に取り付けられている。これにより、ロアボード22及びボード部材25によってドアポケット24が構成されている。ドアポケット24は、乗員が車室内側且つ上方から荷物を出し入れすることが可能な構成となっている。
【0017】
ロアボード22の車室外側の面には、衝撃吸収部材30が取り付けられている。衝撃吸収部材30は合成樹脂(例えばポリプロピレン等)製とされるが、その材質は適宜変更可能である。衝撃吸収部材30は、アームレスト23の下方であって、ドアポケット24の車両後方となる箇所に配されている。衝撃吸収部材30は、図5に示すように、ドアパネル10とドアトリム20(より詳しくはロアボード22)の間に配されている。
【0018】
衝撃吸収部材30は、図1に示すように、ロアボード22において車両(乗物)のシート13の側方であって相対的に車両前方(乗物前方)に位置する第1衝撃吸収部41と、ロアボード22においてシート13の側方であって第1衝撃吸収部41よりも相対的に車両後方(乗物後方)に位置する第2衝撃吸収部61とを備えている。衝撃吸収部材30は、第1衝撃吸収部41がシート13に着座した乗員の大腿部11と対向する箇所に位置し、第2衝撃吸収部61がシート13に着座した乗員の腰部12と対向する箇所に位置するよう、ロアボード22に取り付けられている。より詳しくは、第1衝撃吸収部41は、ロアボード22を挟んで大腿部11と対向配置されており、第2衝撃吸収部61は、ロアボード22を挟んで腰部12と対向配置されている。なお、図2に示すように、第1衝撃吸収部41は、ロアボード22の膨出部27に対して車両後側(図2の左側)に隣接する形で配され、第2衝撃吸収部61は、第1衝撃吸収部41に対して車両後側に隣接する形で配されている。
【0019】
第1衝撃吸収部41は、図3及び図4に示すように、車室内側に開口した箱状をなしており、ドアパネル10と対向配置される第1対向面42Aを有する対向壁部42と、対向壁部42の外周端部から車室内側に延びる4つの側壁部43,44,45,46と、を備える。側壁部43は、図5に示すように、膨出部27を構成する側壁部28と対向配置されている。側壁部43における側壁部28との対向面43Aには、図7に示すように、側壁部28側に突出する突出部47が形成されている。突出部47は、リブ状をなしており、この突出部47を覆う形で緩衝材48が設けられている。緩衝材48は、図5に示すように、突出部47と側壁部28(膨出部27の一部)との間に介在されている。なお、緩衝材48としては、例えば、不織布などを例示することができるが、これに限定されない。
【0020】
また、図4に示すように、第1衝撃吸収部41は、対向壁部42と側壁部43とを接続する3つのリブ49を備える。リブ49を備えることで側壁部43が対向壁部42に対して折れる事態を抑制でき、車両側突時において、側壁部43をより確実に座屈させることができる。側壁部43と対向配置される側壁部44は、図5に示すように、車室内側(図5の上側)に向かうにつれて膨出部27から遠ざかる形で傾斜する傾斜面44Aを有している。なお、傾斜面44Aは、第1衝撃吸収部41における膨出部27とは反対側の面である。
【0021】
第2衝撃吸収部61は、図3及び図4に示すように、車室内側に開口した浅い箱状をなしており、ドアパネル10と対向配置される第2対向面62Aを有する対向壁部62と、対向壁部62の外周端部から車室内側に延びる3つの側壁部63,64,69と、ロアボード22に取り付けられる3つの取付部65,66,67と、を備える。第1衝撃吸収部41の第1対向面42Aは、図5に示すように、第2対向面62Aよりもドアパネル10に近い側に配されている。
【0022】
また、側壁部63と側壁部64との接続箇所における車室内側の端部には、対向壁部62とは反対側に向かって張り出したフランジ部81が設けられている。側壁部63と側壁部69との接続箇所における車室内側の端部には、対向壁部62とは反対側に向かって張り出したフランジ部82が設けられている。側突時においては、フランジ部81,82がロアボード22に当接することで、ロアボード22に対して側壁部63,64,69が倒れてしまう事態を抑制できる。この結果、側壁部63,64,69をより確実に座屈させることができ、衝撃吸収性能をより高くすることができる。また、フランジ部81,82を設けることでロアボード22に対する接触面積を広くすることができ、側突時にロアボード22に衝撃吸収部材30が当接した際、ロアボード22への局所的な応力集中を緩和することができ、ロアボード22の破損を抑制できる。
【0023】
取付部65,66,67は、図3に示すように、略三角形状をなす対向壁部62における3つの角部付近にそれぞれ配されている。取付部65,66,67のうち、最も車両後側に配される取付部65は、車室外側の面が第2対向面62Aに対して低くなるように段差状に形成されている。取付部65,66,67のうち、最も車両前側に配される取付部67は、車室外側の面が第2対向面62Aに対して低くなるように段差状に形成されており、車室外側から視た場合において円形状をなしている。また、取付部66は、車室外側の面が第2対向面62Aと面一をなすものとされる。図4に示すように、取付部65,66,67は、それぞれ対向壁部62からロアボード22側に突出する円柱状をなしている。
【0024】
取付部65,66,67は、ロアボード22における車室外側の面に設けられた取付ボス29(図2参照)の各々が挿通されるボス挿通孔65A,66A,67Aを有している。ボス挿通孔65A,66A,67Aの各々に対応する取付ボス29を挿通させた後、各取付ボス29の先端部に対してUSカシメを行うことで、取付ボス29に対して、取付部65,66,67が取り付けられる。これにより、第2衝撃吸収部61は、ロアボード22に取り付けられている。なお、図2においては、USカシメを行う前の状態の取付ボス29を図示している。また、第1衝撃吸収部41は、ロアボード22に対して取り付けられていない。このため、第1衝撃吸収部41は、第2衝撃吸収部61から車室外側に延びる片持ち状をなしており、その延設端部である対向壁部42は自由端となっている。
【0025】
第2衝撃吸収部61の外周端部のうち、車両後側の端部を構成する側壁部63には、車室内側に開口する開口部63Aが形成されている。開口部63Aを有することで、第2衝撃吸収部61において、腰部12により近い箇所である車両後端部を潰れ易くすることができ、腰部12をより確実に保護することができる。
【0026】
図3に示すように、第2衝撃吸収部61の対向壁部62の車両前端部は、第1衝撃吸収部41の側壁部44における車室内側の端部と接続されている。図6に示すように、側壁部44と対向壁部62との境界部70(第1衝撃吸収部41と第2衝撃吸収部61との境界部)は、凹R状をなしている。また、図3に示すように、衝撃吸収部材30は、傾斜面44Aと第2対向面62Aとを接続する接続部71,72を備える。接続部71,72の各々は、境界部70の延設方向と直交する形で延びている。
【0027】
接続部71,72のうち、下方に配される接続部71は、図2及び図3に示すように、三角形状をなす一対の側壁部71A,71Aと、対向配置された一対の側壁部71A,71Aの車室外側の端部同士を接続する接続壁部71Bと、を備える。接続部72は、切欠き部72Aを有する略三角形状をなすリブによって構成されている。
【0028】
次に本実施形態の効果について説明する。本実施形態において、車両のシート13に乗員が着座した場合、相対的に後方には腰部12が、相対的に前方には大腿部11が位置することになる。つまり、上記構成において、第1衝撃吸収部41が大腿部11に相対的に近い位置に、第2衝撃吸収部61が腰部12に相対的に近い位置に対向することとなる。一方、上記構成において、車両の側突時には、ドアパネル10が車室内側に変位する。側突の初期段階では、第2対向面62Aに比べてドアパネル10に近い第1対向面42Aがドアパネル10に押圧されることで、第1衝撃吸収部41を介して乗員の大腿部11近辺が押圧され、乗員が車室内側に押し出されると共に第1衝撃吸収部41が潰れることで衝撃を吸収する。
【0029】
さらに、側突が進行して第1衝撃吸収部41がある程度潰れると、第2対向面62Aがドアパネル10に押圧され、第2衝撃吸収部61を介して乗員の腰部12近辺が押圧される。これ以降、第1衝撃吸収部41及び第2衝撃吸収部61の双方が潰れることで衝撃を吸収する。第2衝撃吸収部61による腰部12の押圧が開始する時点では、既に第1衝撃吸収部41が潰れることである程度衝撃が吸収されており、第1衝撃吸収部41を介して乗員が車室内側に押し出されている。このため、側突の初期段階において乗員の腰部12近辺を押圧する構成と比べて、乗員の腰部12近辺に作用する荷重を低減させることができる。
【0030】
以上のように、上記構成においては、側突の初期段階では、腰部12よりも荷重に対する耐性が高い大腿部11近辺で荷重を受けることで、乗員の車室内側への押し出しを適切に行うと共に、側突が進行した時点で第2衝撃吸収部61を介して腰部12近辺を押圧させることで、腰部12付近に作用する荷重が必要以上に大きくならないようにすることができる。また、第2対向面62Aがドアパネル10に押圧された後では、第1衝撃吸収部41及び第2衝撃吸収部61の双方が潰れることでより高い衝撃吸収性能を発揮することができる。
【0031】
また、ドアトリム20は、車室外側に膨出する膨出部27を有しており、第1衝撃吸収部41は、前記膨出部27に対して車両後側に隣接する形で配され、第2衝撃吸収部61は、ドアトリム20に取り付けられる取付部65,66,67を備えると共に、第1衝撃吸収部41に対して車両後側に隣接する形で配され、第1衝撃吸収部41における膨出部27と反対側の面は、車室内側に向かうにつれて膨出部27から遠ざかる形で傾斜する傾斜面44Aである。
【0032】
第1衝撃吸収部41が潰れる過程において、傾斜面44Aがドアパネル10に押圧されることで、第1衝撃吸収部41には、膨出部27側に向かう荷重が作用する。これにより、第1衝撃吸収部41は、第2衝撃吸収部61との境界部70を起点として膨出部27側に折れる。なお、図5において、第1衝撃吸収部41の折れる方向を矢線A1で示す。その後、折れた第1衝撃吸収部41が膨出部27を押圧することで膨出部27が潰れ、衝撃を吸収する。このように上記構成では、側突時の衝撃をドアトリム20の膨出部27を用いて吸収することでき、衝撃吸収性能をより高くすることができる。
【0033】
また、傾斜面44Aと第2対向面62Aとを接続する接続部71,72を備える。側突時において、第1衝撃吸収部41が膨出部27側に折れるタイミングが早過ぎると、第1衝撃吸収部41を介して、乗員の大腿部11近辺が十分に押圧されず、乗員を車室内側に押し出し難くなる可能性がある。上記構成では、傾斜面44Aと第2対向面62Aとを接続する接続部71,72を備えることで、第1衝撃吸収部41が膨出部27側に折れるためにより高い荷重が必要となり、第1衝撃吸収部41が膨出部27側に折れるタイミングを遅くすることができる。この結果、第1衝撃吸収部41を介して、乗員の大腿部11近辺が十分に押圧された後、第1衝撃吸収部41が膨出部27側に折れるようにすることができる。
【0034】
なお、本実施形態では、形状の異なる2種類の接続部71,72を備えている。設計段階においては、相対的に剛性の高い接続部71の形状を決定することで、第1衝撃吸収部41が膨出部27側に折れるタイミングをある程度決定し、接続部72の寸法(例えば板厚)を調整することで、第1衝撃吸収部41が膨出部27側に折れるタイミングを調整することができる。リブ状をなす接続部72は、削るなどの加工を行うことで容易に寸法を調整することができ、好適である。
【0035】
また、第1衝撃吸収部41と第2衝撃吸収部61との境界部70が、凹R状をなしている。第1衝撃吸収部41と第2衝撃吸収部61との境界部70が凹R状をなすことで、例えば、境界部70が角状をなすものと比べて、境界部70に応力が集中して破断する事態を抑制することができる。この結果、境界部70を起点として第1衝撃吸収部41を膨出部27側に確実に折ることができ、所望の衝撃吸収性能を発揮させることができる。
【0036】
また、第1衝撃吸収部41における膨出部27との対向面43Aには、膨出部27側に突出する突出部47が形成され、突出部47と膨出部27の間に介在された緩衝材48を備える。突出部47を膨出部27(より詳しくは側壁部28)に対して緩衝材48を介して当接させることで、第1衝撃吸収部41が膨出部27側に折れた際に、膨出部27をより早く潰すことができ、衝撃吸収性能をより高くすることができる。また、突出部47と膨出部27の間に緩衝材48が介在されているため、車両走行時の振動等によって、突出部47が膨出部27に直接当接し、異音が発生する事態を抑制できる。
【0037】
なお、本実施形態では、突出部47が膨出部27に対して緩衝材48を介して当接する構成を例示したが、突出部47の突出高さは適宜設定可能であり、緩衝材48と膨出部27が離間している構成としてもよい。設計段階において、突出部47の突出高さを調整することで、第1衝撃吸収部41が膨出部27側に折れた際に膨出部27が潰れるタイミングを調整することができる。また、突出部47は、緩衝材48を貼り付ける際の目印としても用いることができる。なお、緩衝材48を備えていない構成であってもよい。
【0038】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0039】
(1)上記実施形態で例示した衝撃吸収部材は、車両用に限定されない。例えば、地上の乗物としての列車や遊戯用車両、飛行用乗物としての飛行機やヘリコプター、海上や海中用乗物としての船舶や潜水艇などの乗物についても上記衝撃吸収部材を適用することができる。
【0040】
(2)第2衝撃吸収部が備える取付部の形成個数及び形成箇所は上述したものに限定されず適宜変更可能である。また、ロアボード22に対する各取付部の取付構造は上述したもの(USカシメを用いた構造)に限定されず適宜変更可能である。
【0041】
(3)上記実施形態では、ロアボード22の一部が膨出部27を構成するものを例示したが、これに限定されない。膨出部は、ロアボード22とは別の部材で構成されていてもよい。
【0042】
(4)衝撃吸収部材30の取付位置は上記実施形態で例示したものに限定されない。例えば、第1衝撃吸収部41が、シート13に着座した乗員の大腿部11のうち、車両前方寄りの部分と対向配置され、第2衝撃吸収部61が、大腿部11のうち、車両後方寄りの部分(腰部寄りの部分)と対向配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…ドアパネル(乗物用パネル)、13…シート、20…ドアトリム(乗物用ドアトリム)、27…膨出部、30…衝撃吸収部材、41…第1衝撃吸収部、42A…第1対向面、43A…対向面、44A…傾斜面、47…突出部、48…緩衝材、61…第2衝撃吸収部、62A…第2対向面、65,66,67…取付部、70…境界部、71,72…接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7