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特開2024-135603ヒータ制御システム、ヒータ制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135603
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ヒータ制御システム、ヒータ制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240927BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/00 P
H02J7/00 302D
B60H1/22 611B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046382
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】七條 裕衣
(72)【発明者】
【氏名】福井 穣
【テーマコード(参考)】
3L211
5G503
【Fターム(参考)】
3L211BA32
3L211DA50
3L211DA53
3L211EA21
3L211EA86
3L211FA04
3L211GA49
3L211GA53
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA11
5G503DA04
5G503FA06
(57)【要約】
【課題】エンジンを始動する前にヒータを動作させても、エンジンを始動させるのに十分な電力をバッテリが供給できるようにすること。
【解決手段】ヒータ制御システム(制御回路)1は、取得部11と、制御部12と、を備える。取得部11は、移動体に搭載されたヒータ2の温度を示す温度情報を取得する。制御部12は、移動体の開錠をトリガとして、取得部11で取得した温度情報に基づいてヒータ2を制御する。制御部12は、上記温度が閾値以下である場合、移動体に搭載されたバッテリ3から独立した独立電池4からヒータ2へ電力供給させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されたヒータの温度を示す温度情報を取得する取得部と、
前記移動体の開錠をトリガとして、前記取得部で取得した前記温度情報に基づいて前記ヒータを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記温度が閾値以下である場合、前記移動体に搭載されたバッテリから独立した独立電池から前記ヒータへ電力供給させる、
ヒータ制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記バッテリの出力電圧よりも高い電圧を前記独立電池から前記ヒータへ印加させる、
請求項1に記載のヒータ制御システム。
【請求項3】
前記独立電池は、複数の電池を有しており、
前記制御部は、
前記温度が閾値以下である場合、前記複数の電池を直列に接続させ、
前記温度が閾値を上回る場合、前記複数の電池を並列に接続させる、
請求項2に記載のヒータ制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記独立電池から前記ヒータへの電力供給が停止している場合、前記バッテリから前記独立電池へ電力供給させることで、前記独立電池を充電させる、
請求項1~3のいずれか1項に記載のヒータ制御システム。
【請求項5】
前記バッテリと前記独立電池との間に設けられる双方向コンバータを更に備えており、
前記制御部は、前記双方向コンバータを制御することにより、前記独立電池からの入力電圧を昇圧した電圧を前記ヒータへ印加させ、前記独立電池から前記ヒータへの電力供給が停止している場合、前記バッテリからの電圧を降圧した電圧を前記独立電池へ印加させる、
請求項2に記載のヒータ制御システム。
【請求項6】
前記制御部は、イグニッション電源がオンされると、前記独立電池から前記ヒータへの電力供給を停止させ、前記バッテリから前記ヒータへ電力供給させる、
請求項1~3のいずれか1項に記載のヒータ制御システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記温度が閾値を上回る場合、前記独立電池からスタータモータへ電力供給させる、
請求項1~3のいずれか1項に記載のヒータ制御システム。
【請求項8】
前記独立電池は、可搬型のバッテリである、
請求項1~3のいずれか1項に記載のヒータ制御システム。
【請求項9】
前記ヒータと、
前記独立電池と、を更に備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載のヒータ制御システム。
【請求項10】
移動体に搭載されたヒータの温度を示す温度情報を取得し、
前記移動体の開錠をトリガとして、取得した前記温度情報に基づいて前記ヒータを制御し、
前記ヒータの制御では、前記温度が閾値以下である場合、前記移動体に搭載されたバッテリから独立した独立電池から前記ヒータへ電力供給させる、
ヒータ制御方法。
【請求項11】
1以上のプロセッサに、
請求項10に記載の前記ヒータ制御方法を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば車両等に装備されている座席等を温めるヒータを制御するヒータ制御システム、ヒータ制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用の半導体ヒータ及びブロワモータを備えた装置が開示されている。この装置は、ドア開錠感知スイッチの動作を受けて半導体ヒータ及びブロワモータに通電し、乗車したときのみ通電状態を保持する制御回路を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59-16212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の装置では、エンジンを始動する前に半導体ヒータ及びブロワモータに電力を供給することで、車両に搭載されたバッテリの電力が消費されてしまう。このため、特許文献1に開示の装置では、エンジンを始動させるのに十分な電力をバッテリが供給できない可能性がある、という問題がある。
【0005】
そこで、本開示は、エンジンを始動する前にヒータを動作させても、エンジンを始動させるのに十分な電力をバッテリが供給することができるヒータ制御システム等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るヒータ制御システムは、取得部と、制御部と、を備える。前記取得部は、移動体に搭載されたヒータの温度を示す温度情報を取得する。前記制御部は、前記移動体の開錠をトリガとして、前記取得部で取得した前記温度情報に基づいて前記ヒータを制御する。前記制御部は、前記温度が閾値以下である場合、前記移動体に搭載されたバッテリから独立した独立電池から前記ヒータへ電力供給させる。
【0007】
本開示の一態様に係るヒータ制御方法では、移動体に搭載されたヒータの温度を示す温度情報を取得し、前記移動体の開錠をトリガとして、取得した前記温度情報に基づいて前記ヒータを制御する。前記ヒータの制御では、前記温度が閾値以下である場合、前記移動体に搭載されたバッテリから独立した独立電池から前記ヒータへ電力供給させる。
【0008】
本開示の一態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、前記ヒータ制御方法を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示のヒータ制御システム等では、エンジンを始動する前にヒータを動作させても、エンジンを始動させるのに十分な電力を供給することができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態1におけるヒータ制御システムの概要を示す図である。
図2図2は、実施の形態1におけるヒータ制御システムの動作例を示すフローチャートである。
図3図3は、実施の形態2におけるヒータ制御システムの概要を示す図である。
図4図4は、実施の形態2におけるヒータ制御システムの双方向コンバータの一例を示す回路図である。
図5図5は、実施の形態2におけるヒータ制御システムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の一態様に係るヒータ制御システムは、取得部と、制御部と、を備える。前記取得部は、移動体に搭載されたヒータの温度を示す温度情報を取得する。前記制御部は、前記移動体の開錠をトリガとして、前記取得部で取得した前記温度情報に基づいて前記ヒータを制御する。前記制御部は、前記温度が閾値以下である場合、前記移動体に搭載されたバッテリから独立した独立電池から前記ヒータへ電力供給させる。
【0012】
これによれば、バッテリから独立した独立電池からの電力供給によりヒータを動作させるので、エンジンを始動する前において、ヒータの動作に伴ってバッテリが電力を消費することがない。このため、エンジンを始動する前にヒータを動作させても、エンジンを始動させるのに十分な電力をバッテリが供給することができる、という利点がある。
【0013】
本開示の他の態様に係るヒータ制御システムでは、前記制御部は、前記バッテリの出力電圧よりも高い電圧を前記独立電池から前記ヒータへ印加させる。
【0014】
これによれば、独立電池を用いてヒータを動作させる場合に、バッテリの出力電圧よりも高い電圧を独立電池からヒータへ印加させているので、バッテリを用いてヒータを動作させる場合と比較してヒータの発熱量が大きくなり、温める対象となる部材を迅速に温めやすい、という利点がある。
【0015】
本開示の他の態様に係るヒータ制御システムでは、前記独立電池は、複数の電池を有している。前記制御部は、前記温度が閾値以下である場合、前記複数の電池を直列に接続させ、前記温度が閾値を上回る場合、前記複数の電池を並列に接続させる。
【0016】
これによれば、独立電池が複数の電池を有しており、複数の電池を直列に接続させることでヒータに印加する電圧を高めているので、昇圧回路が不要であり、回路の構成の簡易化を図りやすい、という利点がある。
【0017】
本開示の他の態様に係るヒータ制御システムでは、前記制御部は、前記独立電池から前記ヒータへの電力供給が停止している場合、前記バッテリから前記独立電池へ電力供給させることで、前記独立電池を充電させる。
【0018】
これによれば、独立電池を用いてヒータを動作させていない間に独立電池を充電させるので、次回の移動体の利用時においても、独立電池を用いてヒータを動作させるのに十分な独立電池の残量を確保しやすい、という利点がある。
【0019】
本開示の他の態様に係るヒータ制御システムは、前記バッテリと前記独立電池との間に設けられる双方向コンバータを更に備えている。前記制御部は、前記双方向コンバータを制御することにより、前記独立電池からの入力電圧を昇圧した電圧を前記ヒータへ印加させ、前記独立電池から前記ヒータへの電力供給が停止している場合、前記バッテリからの電圧を降圧した電圧を前記独立電池へ印加させる。
【0020】
これによれば、双方向コンバータにより独立電池からの入力電圧を昇圧した電圧をヒータへ印加させるので、バッテリを用いてヒータを動作させる場合と比較してヒータの発熱量が大きくなり、温める対象となる部材を迅速に温めやすい、という利点がある。また、バッテリの出力電圧を降圧した電圧を独立電池へ印加させることができるので、独立電池を充電するために、別途、充電回路を設ける必要が無い、という利点がある。
【0021】
本開示の他の態様に係るヒータ制御システムでは、前記制御部は、イグニッション電源がオンされると、前記独立電池から前記ヒータへの電力供給を停止させ、前記バッテリから前記ヒータへ電力供給させる。
【0022】
これによれば、例えばエンジンが始動して移動体に搭載されたオルタネータによりバッテリが充電される状況においては、バッテリは必要な残量を確保できているので、独立電池からヒータへの電力供給を停止させることで、独立電池の電力が無駄に消費されなくて済む、という利点がある。
【0023】
本開示の他の態様に係るヒータ制御システムでは、前記制御部は、前記温度が閾値を上回る場合、前記独立電池からスタータモータへ電力供給させる。
【0024】
これによれば、バッテリのみならず独立電池からもスタータモータへ電力を供給することができるので、バッテリのみを用いてスタータモータを始動させる場合と比較して、バッテリの長寿命化を図りやすい、という利点がある。
【0025】
本開示の他の態様に係るヒータ制御システムでは、前記独立電池は、可搬型のバッテリである。
【0026】
これによれば、例えばユーザが通常用いている可搬型のバッテリを独立電池として使用できる等、独立電池として使用する電池の選択の自由度が向上しやすい、という利点がある。
【0027】
本開示の他の態様に係るヒータ制御システムは、前記ヒータと、前記独立電池と、を更に備える。
【0028】
これによれば、バッテリから独立した独立電池からの電力供給によりヒータを動作させるので、エンジンを始動する前において、ヒータの動作に伴ってバッテリが電力を消費することがない。このため、エンジンを始動する前にヒータを動作させても、エンジンを始動させるのに十分な電力をバッテリが供給することができる、という利点がある。
【0029】
本開示の一態様に係るヒータ制御方法では、移動体に搭載されたヒータの温度を示す温度情報を取得し、前記移動体の開錠をトリガとして、取得した前記温度情報に基づいて前記ヒータを制御し、前記ヒータの制御では、前記温度が閾値以下である場合、前記移動体に搭載されたバッテリから独立した独立電池から前記ヒータへ電力供給させる。
【0030】
これによれば、バッテリから独立した独立電池からの電力供給によりヒータを動作させるので、エンジンを始動する前において、ヒータの動作に伴ってバッテリが電力を消費することがない。このため、エンジンを始動する前にヒータを動作させても、エンジンを始動させるのに十分な電力をバッテリが供給することができる、という利点がある。
【0031】
本開示の一態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、前記ヒータ制御方法を実行させる。
【0032】
これによれば、バッテリから独立した独立電池からの電力供給によりヒータを動作させるので、エンジンを始動する前において、ヒータの動作に伴ってバッテリが電力を消費することがない。このため、エンジンを始動する前にヒータを動作させても、エンジンを始動させるのに十分な電力をバッテリが供給することができる、という利点がある。
【0033】
以下、実施の形態1について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0034】
なお、以下で説明する実施の形態1,2は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態1,2で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の設置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態1,2における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0035】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
【0036】
(実施の形態1)
<構成>
図1は、実施の形態1におけるヒータ制御システム1の概要を示す図である。ヒータ制御システム1は、例えば移動体の座席に装備され、ユーザが座席に着座した際に、座席(ステアリングを含む)のいずれかに設置されたヒータ2の発熱により、ユーザの身体の少なくとも一部を温めるためのシステムである。
【0037】
実施の形態1では、移動体は、自動車である。なお、移動体は、自動車に限られず、飛行機又は船舶等の他の移動体であってもよい。また、実施の形態1では、座席は、運転席である。なお、座席は、運転席に限られず、例えば助手席又は後部座席等の他の座席であってもよい。
【0038】
ヒータ2は、温める対象となる部材に設置されるヒータである。例えば、ヒータ2は、温める対象となる部材において、クッション材に相当するパッドと、当該パッドを覆うカバーとの間に設置されている。ヒータ2は、バッテリ3(後述する)又は独立電池4(後述する)から電力が供給されることで発熱し、上記部材を介してユーザを温める。なお、ヒータ2は、温める対象となる部材としての、移動体の座席の一部を温めるシートヒータ、又は温める対象となる部材としての、移動体のステアリングの一部を温めるステアリングヒータである。実施の形態1では、ヒータ2がシートヒータであることとして説明する。
【0039】
ヒータ2は、基材と、ヒータ線21と、縫製糸と、を有する。基材は、弾性、柔軟性、及び延性を有する材質によってシート状に形成されている。実施の形態1では、基材は、不織布によって形成されている。なお、基材は、例えばポリエステルのメッシュによって形成されていてもよいし、ウレタン等の発泡性樹脂によって形成されていてもよい。
【0040】
ヒータ線21は、バッテリ3又は独立電池4と電気的に接続され、バッテリ3又は独立電池4から電流が流されることによって、発熱することが可能な導電線である。ヒータ線21は、ヒータ線21に電力を供給するためのハーネスから基材の各部分を通ってそのハーネスに戻るように基材の一面に縫い付けられている。ヒータ線21は、銅等の金属線であって、例えばポリエステル繊維の糸を縫製糸として用いて、基材の一面に縫い付けられている。縫製糸は、ヒータ線21を基材に固定するために、ヒータ線21の延在方向に沿ってヒータ線21を基材に縫い付ける糸である。なお、ヒータ線21は、縫製糸以外の手段として、接着等の手段で基材に固定されていてもよい。
【0041】
バッテリ3は、ヒータ制御システム1又はヒータ2等の移動体に搭載された複数の電気機器に電力を供給する。実施の形態1では、バッテリ3の定格電圧は、例えば十数Vである。
【0042】
独立電池4は、移動体に搭載された電池であって、バッテリ3とは独立した電池である。言い換えれば、独立電池4は、バッテリ3のように移動体に搭載された複数の電気機器に電力を供給するのではなく、基本的にヒータ2に電力を供給するために設けられた電池である。実施の形態1では、独立電池4は、複数(ここでは、2つ)の電池を有している。以下では、2つの電池のうちの一方の電池を「第1電池41」、他方の電池を「第2電池42」ともいう。
【0043】
第1電池41は、その正極が第1スイッチ51(後述する)を介して制御回路1(後述する)の高圧側端子13に電気的に接続され、負極が制御回路1の低圧側端子14に電気的に接続されている。第2電池42は、その正極が制御回路1の高圧側端子13に電気的に接続され、負極が第2スイッチ52(後述する)を介して制御回路1の低圧側端子14に電気的に接続されている。第1電池41及び第2電池42は、いずれも定格電圧は例えば十数Vである。
【0044】
ヒータ制御システム1は、制御回路により構成されている。以下では、「ヒータ制御システム」を「制御回路」ともいう。なお、実施の形態1では、ヒータ制御システム1は、制御回路1であって、ヒータ2及び独立電池4はヒータ制御システム1の構成要素に含まれていないが、いずれもヒータ制御システム1の構成要素に含まれていてもよい。
【0045】
制御回路1は、ヒータ2を制御する機能を有し、例えばECU(Electronic Control Unit)である。制御回路1は、バッテリ3と電気的に接続されている。また、制御回路1は、第1スイッチ51及び第2スイッチ52を介して独立電池4に電気的に接続されている。
【0046】
第1スイッチ51及び第2スイッチ52は、いずれもc接点型のスイッチである。
【0047】
第1スイッチ51は、制御回路1からの切替信号Sig3により、第1電池41の正極が制御回路1に電気的に接続される状態と、第1電池41の正極が第2スイッチ52に電気的に接続される状態と、第1電池41の正極が制御回路1及び第2スイッチ52のいずれにも電気的に接続されない状態と、のいずれかの状態に切り替わる。
【0048】
第2スイッチ52は、制御回路1からの切替信号Sig3により、第2電池42の負極が制御回路1に電気的に接続される状態と、第2電池42の負極が第1スイッチ51に電気的に接続される状態と、第2電池42の負極が制御回路1及び第1スイッチ51のいずれにも電気的に接続されない状態と、のいずれかの状態に切り替わる。
【0049】
制御回路1は、取得部11と、制御部12と、を有している。実施の形態1では、制御回路1は、例えば内蔵メモリに予め記憶されているプログラムを実行することにより、取得部11としての機能と、制御部12としての機能と、を発揮する。
【0050】
取得部11は、移動体に搭載されたヒータ2の温度を示す温度情報を取得する。実施の形態1では、取得部11は、サーミスタ6からの温度信号Sig1を受信することにより、温度情報を取得する。サーミスタ6は、ヒータ2に設置されて、設置箇所の温度、つまりヒータ2の温度を検知する。
【0051】
また、取得部11は、例えばスマートエントリー機能、又はキーレスエントリー機能を有する鍵装置から送信される開錠信号Sig2を受信する。なお、取得部11は、移動体のドアが開錠されたことを示す情報を取得できればよく、例えば制御回路1以外のECUから開錠信号Sig2を受信したことを示す情報を取得できるのであれば、開錠信号Sig2を直接的に受信しなくてもよい。
【0052】
制御部12は、移動体の開錠をトリガとして、取得部11で取得した温度情報に基づいてヒータ2を制御する。実施の形態1では、制御部12は、取得部11が開錠信号Sig2を受信したことをトリガとして、取得部11が取得した温度信号Sig1に含まれる温度情報に基づいてヒータ2を制御する。なお、ここでいう「ヒータ2を制御する」には、ヒータ2に対して電力を供給させることでヒータ2を動作させることと、ヒータ2に対する電力の供給を停止させることでヒータ2の動作を停止させることと、が含まれる。
【0053】
実施の形態1では、制御部12は、温度情報に基づいて、第1スイッチ51及び第2スイッチ52の各々に切替信号Sig3を送信することで、第1スイッチ51及び第2スイッチ52の各々のオン/オフを切り替える。これにより、制御部12は、独立電池4からヒータ2へ電力を供給させたり、ヒータ2への電力の供給を停止させたりする。制御部12の具体的な動作については、後述する<動作>にて詳細に説明する。
【0054】
また、図示していないが、制御回路1は、独立電池4を充電するための充電回路を更に有している。充電回路は、例えば移動体の走行中であって、独立電池4からヒータ2への電力供給を行っていない場合に動作する。充電回路は、バッテリ3から独立電池4へ電力を供給させることにより、独立電池4を充電する。したがって、独立電池4は、基本的には次回の移動体の使用時においては満充電の状態となっている。
【0055】
<動作>
以下、実施の形態1におけるヒータ制御システム(制御回路)1の動作について図2を参照して説明する。図2は、実施の形態1におけるヒータ制御システム(制御回路)1の動作例を示すフローチャートである。なお、以下では、後述するステップS111に至るまでは、制御部12は、バッテリ3からヒータ2への電力供給を停止させるように制御していることとして説明する。
【0056】
図2に示すように、制御回路1は、取得部11が開錠信号Sig2を受信するまで(ステップS101)、待機する。そして、制御回路1は、取得部11が開錠信号Sig2を受信すると(ステップS101:Yes)、温度情報を取得する(ステップS102)。ステップS102においては、取得部11は、サーミスタ6からの温度信号Sig1を受信することにより、温度情報を取得する。
【0057】
次に、制御部12は、取得部11が取得した温度情報が示すヒータ2の温度と閾値とを比較する(ステップS103)。ヒータ2の温度が閾値以下である場合(ステップS103:Yes)、制御部12は、第1スイッチ51及び第2スイッチ52に切替信号Sig3を送信して第1スイッチ51及び第2スイッチ52の各々の状態を切り替えることにより、2つの電池(第1電池41及び第2電池42)を直列に接続させる(ステップS104)。これにより、独立電池4からヒータ2へ電力が供給され(ステップS105)、ヒータ2の動作が開始する。
【0058】
このように、制御部12は、ヒータ2の温度が閾値以下である場合、複数の電池(ここでは、第1電池41及び第2電池42)を直列に接続させる。これにより、ヒータ2に印加される独立電池4の出力電圧は、概ね第1電池41の出力電圧と、第2電池42の出力電圧との和電圧となり、バッテリ3の出力電圧よりも高くなる。つまり、制御部12は、バッテリ3の出力電圧(ここでは、十数V)よりも高い電圧(ここでは、二十数V)を独立電池4からヒータ2へ印加させる。
【0059】
一方、ヒータ2の温度が閾値を上回る場合(ステップS103:No)、制御部12は、第1スイッチ51及び第2スイッチ52に切替信号Sig3を送信して第1スイッチ51及び第2スイッチ52の各々の状態を切り替えることにより、2つの電池(第1電池41及び第2電池42)をヒータ2から電気的に切り離す。(ステップS106)。この場合、独立電池4からヒータ2へは電力が供給されない。
【0060】
次に、独立電池4からヒータ2へ電力が供給されている間において、取得部11は、定期的に温度情報を取得する(ステップS107)。ステップS107においては、取得部11は、サーミスタ6からの温度信号Sig1を定期的に受信することにより、温度情報を定期的に取得する。そして、制御部12は、取得部11が取得した温度情報が示すヒータ2の温度と設定温度とを比較する(ステップS108)。設定温度は、制御回路1に予め記憶されている初期温度であってもよいし、ユーザにより適宜設定された温度であってもよい。
【0061】
ヒータ2の温度が設定温度に達するまでは(ステップS108:No)、制御部12は、取得部11が温度情報を取得するごとに、ヒータ2の温度と設定温度との比較を繰り返す。そして、ヒータ2の温度が設定温度に達した場合(ステップS108:Yes)、制御部12は、第1スイッチ51及び第2スイッチ52に切替信号Sig3を送信して第1スイッチ51及び第2スイッチ52の各々の状態を切り替えることにより、2つの電池(第1電池41及び第2電池42)を並列に接続させる(ステップS109)。この時点では、独立電池4からヒータ2への電力供給は継続している。
【0062】
次に、ユーザがイグニッションスイッチを操作する等してイグニッション電源がオンされるまでは(ステップS110:No)、制御部12は、ステップS109の制御を維持する。そして、イグニッション電源がオンされると(ステップS110:Yes)、制御部12は、第1スイッチ51及び第2スイッチ52に切替信号Sig3を送信して第1スイッチ51及び第2スイッチ52の各々の状態を切り替えることにより、2つの電池(第1電池41及び第2電池42)をヒータ2から電気的に切り離す。これにより、制御部12は、独立電池4からヒータ2への電力供給を停止させる(ステップS111)。また、制御部12は、バッテリ3からヒータ2へ電力供給させる(ステップS112)。
【0063】
このように、制御部12は、イグニッション電源がオンされると、独立電池4からヒータ2への電力供給を停止させ、バッテリ3からヒータ2へ電力供給させる。したがって、イグニッション電源がオンされた以降では、ヒータ2は、バッテリ3からの電力供給を受けて動作する。なお、ヒータ2の温度が設定温度に達するまで(ステップS108:No)の間にイグニッション電源がオンされた場合は、制御部12は、直ちにステップS111の制御を行うようにしてもよい。
【0064】
その後、制御部12は、第1スイッチ51及び第2スイッチ52に切替信号Sig3を送信して第1スイッチ51及び第2スイッチ52の各々の状態を切り替えることにより、2つの電池(第1電池41及び第2電池42)を並列に接続させる(ステップS113)。そして、制御部12は、充電回路を制御することにより、バッテリ3から独立電池4へ電力を供給させることで、独立電池4を充電させる(ステップS114)。このように、制御部12は、独立電池4からヒータ2への電力供給が停止している場合、バッテリ3から独立電池4へ電力供給させることで、独立電池4を充電させる。
【0065】
独立電池4が満充電となるまでは(ステップS115:No)、制御部12は、独立電池4の充電制御を維持する。そして、独立電池4が満充電となると(ステップS115:Yes)、制御部12は、独立電池4の充電制御を終了する。ここで、「満充電」とは、独立電池4の残量が所定割合(例えば、定格容量の90%)以上に達することをいう。実施の形態1では、独立電池4は、複数の電池(ここでは、第1電池41及び第2電池42)を有しているので、満充電は、各電池の残量が所定割合以上に達することに相当する。
【0066】
<利点>
以下、実施の形態1におけるヒータ制御システム(制御回路)1の利点について説明する。上述のように、実施の形態1における制御回路1では、移動体の開錠をトリガとして、ヒータ2の温度が閾値以下である場合、独立電池4からヒータ2へ電力供給させている。このため、実施の形態1における制御回路1では、移動体のエンジンを始動する前にヒータ2を動作させることができ、温める対象となる部材を迅速に温めやすい。そして、実施の形態1における制御回路1では、バッテリ3から独立した独立電池4からの電力供給によりヒータ2を動作させるので、エンジンを始動する前において、ヒータ2の動作に伴ってバッテリ3が電力を消費することがない。このため、実施の形態1における制御回路1では、エンジンを始動する前にヒータ2を動作させても、エンジンを始動させるのに十分な電力をバッテリ3が供給することができる、という利点がある。特に、ヒータ2を動作させる状況では、バッテリ3の温度が比較的低いためにバッテリ3の能力が低下しているので、このような状況でバッテリ3の電力を無駄に消費しなくて済む、という利点がある。
【0067】
また、実施の形態1における制御回路1では、独立電池4を用いてヒータ2を動作させる場合に、バッテリ3の出力電圧よりも高い電圧を独立電池4からヒータ2へ印加させているので、バッテリ3を用いてヒータ2を動作させる場合と比較してヒータ2の発熱量が大きくなり、温める対象となる部材を迅速に温めやすい、という利点がある。
【0068】
また、実施の形態1における制御回路1では、独立電池4が複数の電池を有しており、複数の電池を直列に接続させることでヒータ2に印加する電圧を高めているので、昇圧回路が不要であり、回路の構成の簡易化を図りやすい、という利点がある。
【0069】
また、実施の形態1における制御回路1では、独立電池4を用いてヒータ2を動作させていない間に独立電池4を充電させるので、次回の移動体の利用時においても、独立電池4を用いてヒータ2を動作させるのに十分な独立電池4の残量を確保しやすい、という利点がある。
【0070】
また、実施の形態1における制御回路1では、イグニッション電源がオンされると、独立電池4からヒータ2への電力供給を停止させ、バッテリ3からヒータ2へ電力供給させる。このため、例えばエンジンが始動して移動体に搭載されたオルタネータによりバッテリ3が充電される状況においては、バッテリ3は必要な残量を確保できているので、独立電池4からヒータ2への電力供給を停止させることで、独立電池4の電力が無駄に消費されなくて済む、という利点がある。
【0071】
(実施の形態2)
<構成>
図3は、実施の形態2におけるヒータ制御システム(制御回路)1Aの概要を示す図である。実施の形態2におけるヒータ制御システム1Aでは、独立電池4が複数の電池を有しておらず、1つの電池で構成されている点で、実施の形態1におけるヒータ制御システム1と相違する。また、実施の形態2におけるヒータ制御システム1Aでは、双方向コンバータ7を更に備えている点で、実施の形態1におけるヒータ制御システム1と相違する。さらに、実施の形態2におけるヒータ制御システム1Aでは、充電回路を備えていない点で、実施の形態2におけるヒータ制御システム1と相違する。以下、実施の形態1と共通する点については、説明を適宜省略する。
【0072】
双方向コンバータ7は、バッテリ3と独立電池4との間に設けられている。実施の形態2では、制御部12は、双方向コンバータ7に制御信号Sig4を送信することにより、双方向コンバータ7を制御する。具体的には、制御部12は、双方向コンバータ7に制御信号Sig4を送信することにより、昇圧制御、等倍制御、及び降圧制御のいずれかを双方向コンバータ7に実行させる。昇圧制御は、独立電池4の出力電圧を昇圧してヒータ2へ印加させる制御である。等倍制御は、独立電池4の出力電圧をヒータ2へ印加させる制御である。降圧制御は、バッテリ3の出力電圧を降圧して独立電池4へ印加させる制御である。
【0073】
図4は、実施の形態2におけるヒータ制御システム(制御回路)1Aの双方向コンバータ7の一例を示す回路図である。図4に示すように、双方向コンバータ7は、インダクタンス素子L1と、第1スイッチング素子SW1と、第2スイッチング素子SW2と、第1容量素子C1と、第2容量素子C2と、駆動部71と、を備えている。
【0074】
インダクタンス素子L1は、一端が第2高圧側端子P21に電気的に接続され、他端が第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2に電気的に接続されている。第2高圧側端子P21は、独立電池4の正極に電気的に接続されている。
【0075】
第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2は、例えばFET(Field Effect Transistor)等の半導体スイッチング素子であって、それぞれ駆動部71に制御されることによりオン/オフを切り替える。
【0076】
第1スイッチング素子SW1は、一端がインダクタンス素子L1に電気的に接続され、他端が第1高圧側端子P11に電気的に接続されている。第1高圧側端子P11は、制御回路1Aの高圧側端子13に電気的に接続されている。
【0077】
第2スイッチング素子SW2は、一端がインダクタンス素子L1に電気的に接続され、他端が第1低圧側端子P12及び第2低圧側端子P22に電気的に接続されている。第1低圧側端子P12は、制御回路1Aの低圧側端子14に電気的に接続されている。第2低圧側端子P22は、独立電池4の負極に電気的に接続されている。
【0078】
第1容量素子C1は、第1高圧側端子P11と第1低圧側端子P12との間に電気的に接続されている。第2容量素子C2は、第2高圧側端子P21と第2低圧側端子P22との間に電気的に接続されている。
【0079】
駆動部71は、例えばECUである。駆動部71は、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2にそれぞれ駆動信号を与えることにより、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2のオン/オフを制御する。
【0080】
実施の形態2では、駆動部71は、双方向コンバータ7の昇圧制御、等倍制御、降圧制御、及び停止制御の4つの制御を実行可能である。
【0081】
昇圧制御においては、駆動部71は、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2をPWM(Pulse Width Modulation)制御する。これにより、双方向コンバータ7は、昇圧制御を実行している間においては、独立電池4の出力電圧を昇圧した電圧をヒータ2に出力する。昇圧制御における昇圧比は、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2のPWM制御におけるデューティ比に基づいて決定される。
【0082】
等倍制御においては、駆動部71は、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2をPWM制御する。これにより、双方向コンバータ7は、等倍制御を実行している間においては、独立電池4の出力電圧をヒータ2に出力する。
【0083】
降圧制御においては、駆動部71は、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2をPWM制御する。これにより、双方向コンバータ7は、降圧制御を実行している間においては、バッテリ3の出力電圧を降圧した電圧を独立電池4に出力する。降圧制御における降圧比は、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2のPWM制御におけるデューティ比に基づいて決定される。
【0084】
停止制御においては、駆動部71は、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2の両方をオフに維持するように制御することで、双方向コンバータ7の動作を停止する。
【0085】
駆動部71が双方向コンバータ7の昇圧制御、等倍制御、降圧制御、及び停止制御のいずれの制御を実行するかは、制御部12から送信される制御信号Sig4に基づいて決定される。
【0086】
<動作>
以下、実施の形態2におけるヒータ制御システム(制御回路)1Aの動作について図5を参照して説明する。図5は、実施の形態2におけるヒータ制御システム(制御回路)1Aの動作例を示すフローチャートである。なお、以下では、後述するステップS211に至るまでは、制御部12は、バッテリ3からヒータ2への電力供給を停止させるように制御していることとして説明する。
【0087】
図5に示すように、制御回路1Aは、取得部11が開錠信号Sig2を受信するまで(ステップS201)、待機する。そして、制御回路1Aは、取得部11が開錠信号Sig2を受信すると(ステップS201:Yes)、温度情報を取得する(ステップS202)。ステップS202においては、取得部11は、サーミスタ6からの温度信号Sig1を受信することにより、温度情報を取得する。
【0088】
次に、制御部12は、取得部11が取得した温度情報が示すヒータ2の温度と閾値とを比較する(ステップS203)。ヒータ2の温度が閾値以下である場合(ステップS203:Yes)、制御部12は、昇圧制御を指示する制御信号Sig4を双方向コンバータ7の駆動部71へ送信することにより、双方向コンバータ7に昇圧制御を実行させる(ステップS204)。これにより、独立電池4からヒータ2へ電力が供給され(ステップS205)、ヒータ2の動作が開始する。
【0089】
このとき、独立電池4の出力電圧は、双方向コンバータ7により昇圧され、昇圧された電圧がヒータ2へ印加される。昇圧比は、例えば2倍である。つまり、制御部12は、バッテリ3の出力電圧(ここでは、十数V)よりも高い電圧(ここでは、二十数V)を独立電池4からヒータ2へ印加させる。
【0090】
一方、ヒータ2の温度が閾値を上回る場合(ステップS203:No)、制御部12は、停止制御を指示する制御信号Sig4を双方向コンバータ7の駆動部71へ送信することにより、双方向コンバータ7に停止制御を実行させる(ステップS206)。この場合、独立電池4からヒータ2へは電力が供給されない。
【0091】
次に、独立電池4からヒータ2へ電力が供給されている間において、取得部11は、定期的に温度情報を取得する(ステップS207)。ステップS207においては、取得部11は、サーミスタ6からの温度信号Sig1を定期的に受信することにより、温度情報を定期的に取得する。そして、制御部12は、取得部11が取得した温度情報が示すヒータ2の温度と設定温度とを比較する(ステップS208)。
【0092】
ヒータ2の温度が設定温度に達するまでは(ステップS208:No)、制御部12は、取得部11が温度情報を取得するごとに、ヒータ2の温度と設定温度との比較を繰り返す。そして、ヒータ2の温度が設定温度に達した場合(ステップS208:Yes)、制御部12は、等倍制御を指示する制御信号Sig4を双方向コンバータ7の駆動部71へ送信することにより、双方向コンバータ7に等倍制御を実行させる(ステップS209)。この時点では、独立電池4からヒータ2への電力供給は継続している。
【0093】
次に、ユーザがイグニッションスイッチを操作する等してイグニッション電源がオンされるまでは(ステップS210:No)、制御部12は、ステップS209の制御を維持する。そして、イグニッション電源がオンされると(ステップS210:Yes)、制御部12は、停止制御を指示する制御信号Sig4を双方向コンバータ7の駆動部71へ送信することにより、双方向コンバータ7に停止制御を実行させる(ステップS211)。これにより、制御部12は、独立電池4からヒータ2への電力供給を停止させる。また、制御部12は、バッテリ3からヒータ2へ電力供給させる(ステップS212)。
【0094】
このように、制御部12は、イグニッション電源がオンされると、独立電池4からヒータ2への電力供給を停止させ、バッテリ3からヒータ2へ電力供給させる。したがって、イグニッション電源がオンされた以降では、ヒータ2は、バッテリ3からの電力供給を受けて動作する。なお、ヒータ2の温度が設定温度に達するまで(ステップS208:No)の間にイグニッション電源がオンされた場合は、制御部12は、直ちにステップS211の制御を行うようにしてもよい。
【0095】
その後、制御部12は、降圧制御を指示する制御信号Sig4を双方向コンバータ7の駆動部71に送信することにより、双方向コンバータ7に降圧制御を実行させる(ステップS213)。これにより、バッテリ3から独立電池4へ電力が供給され、独立電池4が充電される。このように、制御部12は、独立電池4からヒータ2への電力供給が停止している場合、バッテリ3から独立電池4へ電力供給させることで、独立電池4を充電させる。
【0096】
なお、独立電池4の充電時に双方向コンバータ7に降圧制御を実行させるのは、移動体の始動後においてはオルタネータが発電することにより、バッテリ3の出力電圧が数V程度高くなっているからである。
【0097】
独立電池4が満充電となるまでは(ステップS214:No)、制御部12は、独立電池4の充電制御を維持する。そして、独立電池4が満充電となると(ステップS214:Yes)、制御部12は、独立電池4の充電制御を終了する。
【0098】
<利点>
以下、実施の形態2におけるヒータ制御システム(制御回路)1Aの利点について説明する。上述のように、実施の形態2における制御回路1Aでは、実施の形態1における制御回路1と同様に、エンジンを始動する前にヒータ2を動作させても、エンジンを始動させるのに十分な電力をバッテリ3が供給することができる、という利点がある。また、実施の形態2における制御回路1Aでは、双方向コンバータ7によりバッテリ3の出力電圧を降圧した電圧を独立電池4へ印加させることができるので、独立電池4を充電するための充電回路が不要で済む、という利点がある。
【0099】
(変形例)
以下、実施の形態1,2におけるヒータ制御システム(制御回路)1,1Aの変形例について列挙する。
【0100】
実施の形態1,2において、制御部12は、ヒータ2の温度が閾値を上回る場合、独立電池4からスタータモータへ電力供給させてもよい。具体的には、実施の形態1では、制御部12は、ステップS106の代わりに、第1スイッチ51及び第2スイッチ52に切替信号Sig3を送信して第1スイッチ51及び第2スイッチ52の各々の状態を切り替えることにより、独立電池4をバッテリ3に並列に接続させてもよい。また、実施の形態2では、制御部12は、ステップS206の代わりに、制御信号Sig4により双方向コンバータ7を制御することで、独立電池4をバッテリ3に並列に接続させてもよい。この場合、バッテリ3のみならず独立電池4からもスタータモータへ電力を供給することができるので、バッテリ3のみを用いてスタータモータを始動させる場合と比較して、バッテリ3の長寿命化を図りやすい、という利点がある。
【0101】
実施の形態1では、独立電池4は移動体に搭載されているが、これに限られない。例えば、独立電池4は、可搬型のバッテリであってもよい。一例として、独立電池4は、スマートフォン又はタブレット端末等の電気機器を充電するために用いられるポータブルバッテリであってもよい。この場合、ヒータ制御システム(制御回路)1は、独立電池4を着脱自在とするために、独立電池4を電気的に接続するためのポートを有していればよい。この場合、例えばユーザが通常用いている可搬型のバッテリを独立電池4として使用できる等、独立電池4として使用する電池の選択の自由度が向上しやすい、という利点がある。
【0102】
実施の形態1,2において、ヒータ制御システム(制御回路)1,1Aは、シートヒータである1つのヒータ2に対応して設けられているが、これに限られない。例えば、ヒータ制御システム1,1Aは、シートヒータ及びステアリングヒータを含む複数のヒータ2に対応してそれぞれ設けられていてもよい。この場合、独立電池4は、ヒータ制御システム1,1Aごとに設けられてもよいし、複数のヒータ制御システム1,1Aで共用されてもよい。
【0103】
実施の形態1,2において、ヒータ制御システム(制御回路)1,1Aは、ヒータ2への電力供給源を切り替える制御のみを実行してもよい。例えば、ヒータ2を制御する回路が存在する場合、ヒータ制御システム1,1Aは、当該回路と通信することにより、ヒータ2への電力供給源をバッテリ3又は独立電池4に切り替える制御を実行してもよい。この場合、ヒータ2の制御自体は、当該回路が実行すればよい。
【0104】
なお、上記の実施の形態1,2に対して当業者が思い付く各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態1,2における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【0105】
(まとめ)
以上述べたように、第1の態様に係るヒータ制御システム(制御回路)1,1Aは、取得部11と、制御部12と、を備える。取得部11は、移動体に搭載されたヒータ2の温度を示す温度情報を取得する。制御部12は、移動体の開錠をトリガとして、取得部11で取得した温度情報に基づいてヒータ2を制御する。制御部12は、上記温度が閾値以下である場合、移動体に搭載されたバッテリ3から独立した独立電池4からヒータ2へ電力供給させる。
【0106】
これによれば、バッテリ3から独立した独立電池4からの電力供給によりヒータ2を動作させるので、エンジンを始動する前において、ヒータ2の動作に伴ってバッテリ3が電力を消費することがない。このため、エンジンを始動する前にヒータ2を動作させても、エンジンを始動させるのに十分な電力をバッテリ3が供給することができる、という利点がある。
【0107】
第2の態様に係るヒータ制御システム(制御回路)1,1Aでは、第1の態様において、制御部12は、バッテリ3の出力電圧よりも高い電圧を独立電池4からヒータ2へ印加させる。
【0108】
これによれば、独立電池4を用いてヒータ2を動作させる場合に、バッテリ3の出力電圧よりも高い電圧を独立電池4からヒータ2へ印加させているので、バッテリ3を用いてヒータ2を動作させる場合と比較してヒータ2の発熱量が大きくなり、温める対象となる部材を迅速に温めやすい、という利点がある。
【0109】
第3の態様に係るヒータ制御システム(制御回路)1では、第2の態様において、独立電池4は、複数の電池(第1電池41及び第2電池42)を有している。制御部12は、上記温度が閾値以下である場合、複数の電池を直列に接続させ、上記温度が閾値を上回る場合、複数の電池を並列に接続させる。
【0110】
これによれば、独立電池4が複数の電池を有しており、複数の電池を直列に接続させることでヒータ2に印加する電圧を高めているので、昇圧回路が不要であり、回路の構成の簡易化を図りやすい、という利点がある。
【0111】
第4の態様に係るヒータ制御システム(制御回路)1,1Aでは、第1~第3のいずれか1つの態様において、制御部12は、独立電池4からヒータ2への電力供給が停止している場合、バッテリ3から独立電池4へ電力供給させることで、独立電池4を充電させる。
【0112】
これによれば、独立電池4を用いてヒータ2を動作させていない間に独立電池4を充電させるので、次回の移動体の利用時においても、独立電池4を用いてヒータ2を動作させるのに十分な独立電池4の残量を確保しやすい、という利点がある。
【0113】
第5の態様に係るヒータ制御システム(制御回路)1Aは、第2の態様において、バッテリ3と独立電池4との間に設けられる双方向コンバータ7を更に備えている。制御部12は、双方向コンバータ7を制御することにより、独立電池4からの入力電圧を昇圧した電圧をヒータ2へ印加させ、独立電池4からヒータ2への電力供給が停止している場合、バッテリ3からの電圧を降圧した電圧を独立電池4へ印加させる。
【0114】
これによれば、双方向コンバータ7により独立電池4からの入力電圧を昇圧した電圧をヒータ2へ印加させるので、バッテリ3を用いてヒータ2を動作させる場合と比較してヒータ2の発熱量が大きくなり、温める対象となる部材を迅速に温めやすい、という利点がある。また、バッテリ3の出力電圧を降圧した電圧を独立電池4へ印加させることができるので、独立電池4を充電するために、別途、充電回路を設ける必要が無い、という利点がある。
【0115】
第6の態様に係るヒータ制御システム(制御回路)1,1Aでは、第1~第5のいずれか1つの態様において、制御部12は、イグニッション電源がオンされると、独立電池4からヒータ2への電力供給を停止させ、バッテリ3からヒータ2へ電力供給させる。
【0116】
これによれば、例えばエンジンが始動して移動体に搭載されたオルタネータによりバッテリ3が充電される状況においては、バッテリ3は必要な残量を確保できているので、独立電池4からヒータ2への電力供給を停止させることで、独立電池4の電力が無駄に消費されなくて済む、という利点がある。
【0117】
第7の態様に係るヒータ制御システム(制御回路)1,1Aでは、第1~第6のいずれか1つの態様において、制御部12は、上記温度が閾値を上回る場合、独立電池4からスタータモータへ電力供給させる。
【0118】
これによれば、バッテリ3のみならず独立電池4からもスタータモータへ電力を供給することができるので、バッテリ3のみを用いてスタータモータを始動させる場合と比較して、バッテリ3の長寿命化を図りやすい、という利点がある。
【0119】
第8の態様に係るヒータ制御システム(制御回路)1,1Aでは、第1~第7のいずれか1つの態様において、独立電池4は、可搬型のバッテリである。
【0120】
これによれば、例えばユーザが通常用いている可搬型のバッテリを独立電池4として使用できる等、独立電池4として使用する電池の選択の自由度が向上しやすい、という利点がある。
【0121】
第9の態様に係るヒータ制御システム(制御回路)1,1Aは、第1~第8のいずれか1つの態様において、ヒータ2と、独立電池4と、を更に備える。
【0122】
これによれば、バッテリ3から独立した独立電池4からの電力供給によりヒータ2を動作させるので、エンジンを始動する前において、ヒータ2の動作に伴ってバッテリ3が電力を消費することがない。このため、エンジンを始動する前にヒータ2を動作させても、エンジンを始動させるのに十分な電力をバッテリ3が供給することができる、という利点がある。
【0123】
第10の態様に係るヒータ制御方法では、移動体に搭載されたヒータ2の温度を示す温度情報を取得し、移動体の開錠をトリガとして、取得した温度情報に基づいてヒータ2を制御し、ヒータ2の制御では、上記温度が閾値以下である場合、移動体に搭載されたバッテリ3から独立した独立電池4からヒータ2へ電力供給させる。
【0124】
これによれば、バッテリ3から独立した独立電池4からの電力供給によりヒータ2を動作させるので、エンジンを始動する前において、ヒータ2の動作に伴ってバッテリ3が電力を消費することがない。このため、エンジンを始動する前にヒータ2を動作させても、エンジンを始動させるのに十分な電力をバッテリ3が供給することができる、という利点がある。
【0125】
第11の態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、第10の態様に係るヒータ制御方法を実行させる。
【0126】
これによれば、バッテリ3から独立した独立電池4からの電力供給によりヒータ2を動作させるので、エンジンを始動する前において、ヒータ2の動作に伴ってバッテリ3が電力を消費することがない。このため、エンジンを始動する前にヒータ2を動作させても、エンジンを始動させるのに十分な電力をバッテリ3が供給することができる、という利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本開示は、例えば車両等に装備されている座席等を温めるヒータの制御に利用可能である。
【符号の説明】
【0128】
1,1A 制御回路(ヒータ制御システム)
11 取得部
12 制御部
2 ヒータ
21 ヒータ線
3 バッテリ
4 独立電池
41 第1電池
42 第2電池
51 第1スイッチ
52 第2スイッチ
6 サーミスタ
7 双方向コンバータ
71 駆動部
C1 第1容量素子
C2 第2容量素子
L1 インダクタンス素子
P11 第1高圧側端子
P12 第1低圧側端子
P21 第2高圧側端子
P22 第2低圧側端子
Sig1 温度信号
Sig2 開錠信号
Sig3 切替信号
Sig4 制御信号
SW1 第1スイッチング素子
SW2 第2スイッチング素子
図1
図2
図3
図4
図5