(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135605
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】結合金具の結合解除装置
(51)【国際特許分類】
B25B 27/14 20060101AFI20240927BHJP
F16L 37/244 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B25B27/14 Z
F16L37/244
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046384
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】谷口 泉
(72)【発明者】
【氏名】根立 敏
【テーマコード(参考)】
3C031
3J106
【Fターム(参考)】
3C031EE59
3J106AA01
3J106AA05
3J106AB01
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106CA02
3J106EA03
3J106EB12
3J106EC02
3J106EC07
3J106ED32
3J106ED41
3J106EE01
3J106EE04
(57)【要約】
【課題】各結合金具の構成点数を増加させることなく、結合解除をしやすくした、結合金具の結合解除装置を提供する。
【解決手段】結合金具2への装着状態で、周方向に不動な固定側係合部14であり、結合金具2が備える複数の被係合部23~23において、一組のうち一方の結合金具2に属する前記被係合部23に係合する固定側係合部14と、前記固定側係合部14に対して周方向で接近・離反するように移動可能な移動側係合部15であり、前記複数の被係合部23~23において、前記一組のうち他方の結合金具2に属する前記被係合部23に係合する移動側係合部15と、前記移動側係合部15を、前記固定側係合部14から離反するように移動させる操作を行う操作部16と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体配管の端部に設けられ、一組が軸方向で対向した状態で、周方向の一方向に回転させることで、付勢された状態で係止鉤部同士が引っ掛かることにより結合がなされ、周方向の他方向に回転させることで前記係止鉤部同士の引っ掛かりが解除されることにより結合解除される結合金具に用いられる、該結合金具に対して着脱可能な結合解除装置であり、
前記結合金具は、外部からの係合により前記周方向の他方向への移動が可能となる複数の被係合部を備えたものであって、
前記結合解除装置の前記結合金具への装着状態で、周方向に不動な固定側係合部であり、前記複数の被係合部において、前記一組のうち一方の結合金具に属する前記被係合部に係合する固定側係合部と、
前記固定側係合部に対して周方向で接近・離反するように移動可能な移動側係合部であり、前記複数の被係合部において、前記一組のうち他方の結合金具に属する前記被係合部に係合する移動側係合部と、
前記移動側係合部を、前記固定側係合部から離反するように移動させる操作を行う操作部と、
を備えた結合金具の結合解除装置。
【請求項2】
前記結合金具が備えた前記被係合部が、前記結合金具における外周面から径内方向に延びる孔部であり、
前記固定側係合部及び前記移動側係合部が、前記孔部に対して少なくとも先端部が嵌まり込む軸部である、請求項1に記載の結合金具の結合解除装置。
【請求項3】
前記固定側係合部及び前記移動側係合部である前記軸部の先端が先細り形状とされている、請求項2に記載の結合金具の結合解除装置。
【請求項4】
前記結合金具に沿うように配置される基部と、前記基部に対して周方向に移動する移動部と、を備え、
前記移動側係合部は前記移動部に固定されており、
前記操作部は、入力された操作力を増大させて前記移動部を周方向へ移動させる力として出力する力変換部を備える、請求項1に記載の結合金具の結合解除装置。
【請求項5】
前記力変換部は、大径部と小径部とを有する偏心カムであり、回転に伴い前記大径部が前記移動部を周方向に押す偏心カムと、前記偏心カムの回転軸心を基準に径方向に延び、前記大径部の径方向寸法よりも長い操作ハンドルと、を有する、請求項4に記載の結合金具の結合解除装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホース等の流体配管に用いる結合金具を操作する際に用いる結合解除装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
結合金具として、特許文献1に記載のホース結合金具が知られている。これは、流体配管としてのホース(例えば消防用ホース)の端部に設けられていて、結合金具本体の周方向に沿って、軸方向に嵌合突部と嵌合凹部を交互に形成して構成されている。また、各嵌合突部の側面に互いに周方向に係合する係止鉤部が形成されている。一組(同一形状の二つ)のホース結合金具を軸方向に対向させ、各嵌合突部と各嵌合凹部とを軸方向に嵌合した後に周方向に付勢することで係止鉤部を係合する。係止鉤部が係合状態になると、二つのホース結合金具同士が結合された状態になり、結合部分をまたいでホース同士で液体(例えば水や消火液)を通すことができる。
【0003】
このホース結合金具が結合された状態を解除するには、従来、結合金具本体を作業者が手で握った上で周方向に捻ることで、係止鉤部の係合を外すことにより行っていた。しかし、ホース結合金具内部に液体が存在している状態では、液圧がホース結合金具にかかっているため、内部が空の状態に比べて大きな捻り力が必要であった。さらに、例えば石油化学コンビナートで用いられる消火ホースは、通す消火液の量が多いため、一般的な消火ホースに比べて大径(例えば400A)のものが用いられていて、作業者が握ることのできる大きさではなく、また重量も非常に重くなることから、人の手だけで解除作業を行うのは非常に困難であった。
【0004】
一方、特許文献2に記載のように、ハンドルを備えたホース結合金具が存在する。このハンドルは、結合金具本体に周方向に沿って設けられていて、使用時に結合金具本体から引き起こされる。このホース結合金具では、引き起こされたハンドルを操作することによって、結合金具本体を周方向に移動させ、結合された状態を解除できる。
【0005】
しかし特許文献2に記載の構成では、ホース結合金具ごとにハンドルを備えるため、各ホース結合金具の構成点数が多くなってしまう。また、結合解除を行う場面以外では、ハンドルは使用するシーンが無く、コスト的にどうしても割高になる側面がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3107507号公報
【特許文献2】特開2006-329393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、各結合金具の構成点数を増加させることなく、結合解除をしやすくした、結合金具の結合解除装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、流体配管の端部に設けられ、一組が軸方向で対向した状態で、周方向の一方向に回転させることで、付勢された状態で係止鉤部同士が引っ掛かることにより結合がなされ、周方向の他方向に回転させることで前記係止鉤部同士の引っ掛かりが解除されることにより結合解除される結合金具に用いられる、該結合金具に対して着脱可能な結合解除装置であり、前記結合金具は、外部からの係合により前記周方向の他方向への移動が可能となる複数の被係合部を備えたものであって、前記結合解除装置の前記結合金具への装着状態で、周方向に不動な固定側係合部であり、前記複数の被係合部において、前記一組のうち一方の結合金具に属する前記被係合部に係合する固定側係合部と、前記固定側係合部に対して周方向で接近・離反するように移動可能な移動側係合部であり、前記複数の被係合部において、前記一組のうち他方の結合金具に属する前記被係合部に係合する移動側係合部と、前記移動側係合部を、前記固定側係合部から離反するように移動させる操作を行う操作部と、を備えた結合金具の結合解除装置である。
【0009】
この構成によれば、固定側係合部と移動側係合部とを各々、結合金具の被係合部に係合させた状態で操作部を操作することで、移動側係合部を固定側係合部から離反するように移動させられる。これに伴い、結合金具を周方向の他方向に回転させることで結合解除させられる。
【0010】
また、前記結合金具が備えた前記被係合部が、前記結合金具における外周面から径内方向に延びる孔部であり、前記固定側係合部及び前記移動側係合部が、前記孔部に対して少なくとも先端部が嵌まり込む軸部であるものとできる。
【0011】
この構成によれば、多くの結合金具が備えている孔部を、結合解除のために利用できる。
【0012】
また、前記固定側係合部及び前記移動側係合部である前記軸部の先端が先細り形状とされているものとできる。
【0013】
この構成によれば、結合金具の孔部に軸部を嵌め込むことが容易にできる。
【0014】
また、前記結合金具に沿うように配置される基部と、前記基部に対して周方向に移動する移動部と、を備え、前記移動側係合部は前記移動部に固定されており、前記操作部は、入力された操作力を増大させて前記移動部を周方向へ移動させる力として出力する力変換部を備えるものとできる。
【0015】
この構成によれば、力変換部により、作業者が加えた操作力を増大させて移動側係合部を移動させられるため、作業者の労力を軽減できる。
【0016】
また、前記力変換部は、大径部と小径部とを有する偏心カムであり、回転に伴い前記大径部が前記移動部を周方向に押す偏心カムと、前記偏心カムの回転軸心を基準に径方向に延び、前記大径部の径方向寸法よりも長い操作ハンドルと、を有するものとできる。
【0017】
この構成によれば、一般的な部材を用いて単純な構成の力変換部を構成できるため経済的である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、固定側係合部と移動側係合部とを各々、結合金具の被係合部に係合させた状態で操作部を操作することで、移動側係合部を固定側係合部から離反するように移動させて、結合金具を結合解除させられる。よって、各結合金具の構成点数を増加させることなく、結合解除をしやすくした、結合金具の結合解除装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るホース結合金具の結合解除装置を示す正面図である。
【
図2】前記ホース結合金具の結合解除装置(持ち手部を設けない状態で図示)を示す平面図である。
【
図3】前記ホース結合金具の結合解除装置(持ち手部を設けない状態で図示)をホース結合金具との関係で示す正面図である。
【
図5】前記ホース結合金具の結合解除装置を示す底面図である。
【
図6】前記ホース結合金具の結合解除装置を示し、操作ハンドルを上面に置いた状態とした背面図である。
【
図7】前記ホース結合金具の結合解除装置を示し、操作ハンドルを上面に置いた状態とした左側面図である。
【
図8】前記ホース結合金具の操作対象であるホース結合金具の一例につき、一組の結合金具の組み合わせを径外方向から見た場合であり、軸方向を上下として展開図的に示したものであって、(a)は結合状態、(b)は結合解除状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明に係る結合金具であるホース結合金具の結合解除装置(以下「解除装置」)1につき、一実施形態を取り上げて説明を行う。なお、以下の説明における方向を含む表現、具体的に「軸方向」、「周方向」、「径方向」、「外」、「内」は、位置の基準を明記して説明したものを除き、ホース結合金具2における方向を指す表現である。前記「軸方向」は、ホースの中心に沿う方向のことである。また、「一方」、「他方」は、対になっているもののうちどちらであるかを示すために用いられる相対的表現であって、絶対的表現ではない。
【0021】
まず、本実施形態に係る解除装置1の装着対象であるホース結合金具(以下「結合金具」)2について説明する。なお、結合金具2の構成自体は公知である。結合金具2は、一般的には金属製で、流体配管、具体的には図示しない消防ホース等のホースの端部(通常は両端部)に設けられる。ホースと結合金具2とは液密に結合されていて、ホース及び結合金具2の内部を軸方向に流される液体(例えば水や泡消火用の消火液)が、外部に漏れ出ないようにされている。
図8(a)(b)に一組の結合金具2,2の組み合わせであって、結合に関係する要部形状を概略的に示す。
図8(a)には結合状態が示され、
図8(b)には結合解除状態が示されている。なお、説明の便宜上、各図は展開図的に示されていて、実際に結合金具2を見た形状とは異なっている。各図上の左右方向が周方向に対応し、各図上の上下方向が軸方向に対応する。
【0022】
各結合金具2は、周方向に凹部21と凸部22が交互に形成されている。なお、図示していないが、凹部21及び凸部22が形成された側と軸方向で反対側(各図における上端面よりも上方、下端面よりも下方)にホースが接続されている。凹部21と凸部22は略同一形状であるが、周方向寸法について凸部22よりも凹部21が大きく形成されている。一組を構成する2個の結合金具2を軸方向に対向させた場合、一方側結合金具2aの凹部21に他方側結合金具2bの凸部22が入り込むと共に、一方側結合金具2aの凸部22が他方側結合金具2bの凹部21が入り込むようにされている。そして、凹部21の形成範囲内で凸部22が周方向に移動可能とされている。
【0023】
凹部21及び凸部22において、周方向の一方側の側面は、図示のように、周方向に対する垂直面とされており、他方側の側面は傾斜面とされている。なお、各側面の形状は他の形状であってもよい。垂直面における、軸方向の略中央には、周方向に凹む形状の孔部23が設けられている。つまり垂直面には孔部23が露出している。そしてこの孔部23は、結合金具2における外周面から径内方向に延びている。本来、この孔部23は、後述する係止鉤部24,24同士の噛み合いを阻害しないように空間を確保することや、各係止鉤部24が有する角部における応力集中を防ぐ等のために設けられている。後述のように、この孔部23に対して解除装置1の軸部(固定側係合部14、移動側係合部15)の先端が嵌まり込む。この孔部23は、外部(本実施形態では解除装置1)からの係合により周方向(具体的には結合解除がされる方向であって、
図8(a)(b)における左方向)への移動が可能となる被係合部として機能する。孔部23は各凸部22当たりで1個設けられている。結合解除のためには、少なくとも周方向に離れた2個の孔部23が用いられる(
図8(a)(b)参照)。このため、各結合金具2に孔部23は複数設けられている。
【0024】
前記垂直面には、軸方向中間に周方向にずれる段差が介在している。凹部21においては、孔部23を基準とした先端側(結合先のホース側)の方が、基端側(自らのホース側)よりも、凹部21における周方向中央寄りに面が位置するような段差である。これと対応し、凸部22においては、孔部23を基準とした先端側(結合先のホース側)の方が、基端側(自らのホース側)よりも、凸部22における周方向中央寄りに面が位置するような段差である。このように形成された段差において、凸部22における周方向中央寄りに面が位置する部分が係止鉤部24である。この係止鉤部24は孔部23に隣接した凸部22の先端側に形成されていて、係止鉤部24において孔部23に位置する面は、図示のように周方向に対して傾斜した傾斜面となっている。この傾斜面を含む部分が「鉤爪」として機能し、軸方向で対向する相手方の結合金具2に対して、軸方向に分離することを阻害するように引っ掛かる。一組を構成する2個の結合金具2を軸方向に対向させた場合、
図8(a)に示すように、一方側の結合金具2における係止鉤部24と他方側の結合金具2における係止鉤部24とが噛み合うことになる。このような状態が結合状態である。結合状態において、一方側結合金具2aが有する孔部23と、他方側結合金具2bが有する孔部23とは軸方向にずれた位置に存在する。
【0025】
なお、具体的形状を図示していないが、各凸部22における傾斜面には、各凸部22自身を周方向に付勢するばねと鋼球との組み合わせ等で構成された付勢手段が設けられている(
図8(a)において丸印で示す部分Sに位置)。この付勢手段が発する付勢力は、周方向で隣り合う一方側結合金具2aの凸部22と他方側結合金具2bの凸部22が各々有する傾斜面同士の間隔を開かせ、かつ、隣り合う凸部22の垂直面同士を当接させるように働く(
図8(a)参照)。これにより、付勢力と反対の方向に凸部22が移動させられない限り、係止鉤部24,24同士の噛み合いが保たれるため、結合状態が保たれる。
【0026】
一方のホースに他方のホースを接続する際は、一方のホースの端部に設けられた結合金具2(一方側結合金具2a)と、他方のホースの端部に設けられた結合金具2(他方側結合金具2b)とを一組とし、この一組が軸方向で対向した状態で、凹部21に対して対向側の凸部22を入れ込む。前述のように凸部22には周方向の付勢力が働くから、凸部22が軸方向に移動するに伴い、両結合金具2,2の係止鉤部24,24同士が軸方向で乗り越えることになる。そうなると、前記付勢手段の付勢力によって、一方側結合金具2aと他方側結合金具2bとが相対的に、周方向の一方向(他方側結合金具2bに着目すると、
図8(a)(b)における右方向)に回転させられる。この回転に伴い、付勢された状態で鉤部同士が引っ掛かることにより結合がなされる(
図8(a)の状態)。これとは逆に、一方側結合金具2aと他方側結合金具2bとが相対的に、周方向の他方向に回転させられると、これに伴い、鉤部同士の引っ掛かりが解除されることにより結合解除される(
図8(b)の状態)。この結合解除の状態では、凹部21から凸部22を軸方向に引き抜くことができる。
【0027】
次に、解除装置1について説明する。本実施形態の解除装置1は、結合金具2に対して着脱可能とされている。このため、必要な際にのみ結合金具2に装着できるので、従来のハンドル付きの結合金具(ハンドルが分離不能に取り付けられている)のように、結合金具ごとに結合解除のための構成を設ける必要がないため、結合金具2の構成を簡略化や小型化できる。また、解除装置1が1台あれば複数の結合金具2~2を操作できるため経済的である。本実施形態の解除装置1は鋼材から形成されている。解除装置1の機能の観点における主要部分は、基部11、移動部12、カバー部13、固定側係合部14、移動側係合部15、操作部16である。以下、各主要部分及び関連部分について説明する。
【0028】
基部11は、解除装置1を装着する際に結合金具2に対して、軸方向に直交し、かつ、周方向に一致して沿うように配置される。本実施形態の基部11は、解除装置1の装着時において、結合金具2の外周面の径外位置に配置される湾曲板部111と、湾曲板部111の長辺側での両側方に一組設けられた側板部112とを備える。
【0029】
湾曲板部111は、平面視形状が長方形であって、装着対象である結合金具2の外周面の曲率に対応して、一定曲率で湾曲した板状の部分である。湾曲板部111から径内側に、軸部である固定側係合部14と移動側係合部15とが突出している。各係合部14,15が係合する結合金具2の孔部23,23の軸方向における位置関係に対応し、湾曲板部111での幅方向(短辺に沿う方向)において、
図5に示すように、固定側係合部14と移動側係合部15の突出位置は異なっている。移動側係合部15は、後述する移動部12に固定されていて、湾曲板部111に形成された周方向に延びる長孔1111を貫通している。本実施形態の固定側係合部14及び移動側係合部15は、結合金具2における孔部23に対して少なくとも先端部が嵌まり込むように構成されている。このため、多くのホース結合金具2が結合解除とは別の目的で備えている孔部23を、結合解除のために利用(活用)できる。固定側係合部14が嵌まり込む孔部23と、移動側係合部15が嵌まり込む孔部23とは、別の結合金具2に属している。固定側係合部14及び移動側係合部15の周方向の間隔は、結合状態の結合金具2にて、固定側係合部14が嵌まり込む予定の孔部23と、移動側係合部15が嵌まり込む予定の孔部23との間隔に合わせて設定されている。
【0030】
側板部112は平板状であって、湾曲板部111での幅方向の端縁に直交するように設けられている。側板部112は、結合状態の結合金具2における、軸方向での結合反対側(ホースの接続された側)の端面間寸法に一致する内寸で対向するように一組設けられている。この側板部112を結合金具2に沿わせることにより、解除装置1が結合金具2に装着された際に結合金具2からずれにくくできる。従って、結合解除を行う際の安定した操作が可能である。なお、側板部112の対向内寸は、例えばシムの挿入により調整を行うことを前提とする場合は、広目に設定しておくこともできる。シムを用いる場合、シムとしてマグネットテープ等の側板部112に接着可能な材料を用いることで、シムの取り付けを容易にできる。また、シムを用いる場合、側板部112に対してスライド移動させることによりシムを着脱するようにしてもよい。
【0031】
ここで、本実施形態では、側板部112から径外方向に延びるように持ち手部17が形成されている。持ち手部17は正面視が三角形枠状であって、両側板部112,112から一組が平行に延びており、径外側の先端部及び中間部で棒状部171により連結されている。作業者は、例えば先端側の棒状部171を掴むことにより、解除装置1を容易に持ち運ぶことができる。本実施形態の持ち手部17は基部11等に固定的に設けられている。しかし、基部11等に対して着脱可能に設けることもできる。また、持ち手部17の形態は特に限定されるものではなく、さらに、解除装置1に持ち手部17を設けることも必須ではない。
【0032】
移動部12は、基部11に対して周方向に移動する部分である。移動部12は、基部11の径外側に設けられている。移動部12は、湾曲板部111よりも狭幅の板状体である。移動部12は、カバー部13(外板部131、側板部132)と湾曲板部111によって囲まれ、移動可能に挟持されている。移動部12は、周方向への移動に伴い、基部11及び後述するカバー部13に対して出没可能とされている。両部11,13に対して没した状態が結合金具2の結合状態に対応しており、一部が飛び出た状態が結合解除状態に対応している。移動部12の径内側の面には、移動側係合部15が固定されている。この移動側係合部15は、湾曲板部111に形成されている長孔1111を貫通して突出している。なお、本実施形態の移動部12は周方向において特に付勢はされていないが、例えばばね等を組み込んでおき、操作部16の操作力が及ばない状態で、結合金具2に装着する際の初期位置に移動部12が保たれるように付勢されていてもよい。
【0033】
カバー部13は、湾曲板部111の径外側に、湾曲板部111の一部と移動部12とを覆うように設けられる。カバー部13は、湾曲板部111の径外側に位置する外板部131と、湾曲板部111の幅方向両外側に位置する2枚の側板部132から構成されている。移動部12は、湾曲板部111とカバー部13との間で周方向の一定範囲で移動可能とされている。カバー部13(外板部131、側板部132)は、湾曲板部111に対してねじ止めで固定されている。なお、固定方法は特に限定されるものではない。また図示していないが、湾曲板部111における径外側の面には、移動部12を周方向にスムーズに移動させるために溝(浅い溝)が形成されている。
【0034】
固定側係合部14は、解除装置1の結合金具2への装着状態で、周方向に不動とされている。径方向に延びる軸部として形成された固定側係合部14は、結合金具2における複数の孔部23~23において、一組のうち一方側結合金具2aに属する孔部23(23A)に嵌まり込むことで係合する。なお、本実施形態の固定側係合部14は操作部16のうち中心部(偏心カム162を操作部16における軸心側で支持する部品)と一体に形成されている。
【0035】
移動側係合部15は移動部12に固定されている。このため、移動側係合部15は固定側係合部14に対して周方向で接近・離反するように移動可能である。径方向に延びる軸部として形成された移動側係合部15は、結合金具2における複数の孔部23~23において、一組のうち他方側結合金具2bに属する孔部23(23B)に嵌まり込むことで係合する。
【0036】
ここで本実施形態では、固定側係合部14及び移動側係合部15である軸部の先端141,151が、
図3、
図4等に示すように先細り形状とされている。このため、結合金具2の孔部23に各係合部14,15を嵌め込む際、孔部23と解除装置1との間に多少の位置ずれがあった場合でも、軸部先端が細くなっている分、嵌め込みを容易にできる。
【0037】
操作部16は、移動部12に対して移動のための力を伝達可能な位置に設けられている。本実施形態では、移動部12の周方向における一端側、具体的には移動側係合部15が設けられている側とは周方向で反対側の端面に隣接して設けられている。操作部16は、一組の結合金具2,2における係止鉤部24,24同士の引っ掛かりを解除すべく、移動側係合部15を、固定側係合部14から離反するように(距離が大きくなるように)移動させる操作を行う部分である。操作部16は径方向に延びる回転軸心を中心に、基部11に対して回転R(
図1参照)するように構成されている。
【0038】
操作部16は、入力された操作力を増大させて移動部12を周方向へ移動させる力として出力する力変換部161を備える。この力変換部161により、作業者が加えた操作力を増大させて移動側係合部15を移動させられるため、作業者の労力を軽減できる。本実施形態の力変換部161は、大径部1621と小径部1622とを有する円盤状の偏心カム162を有する。偏心カム162は、回転軸心まわりの回転に伴い大径部1621が移動部12を周方向に押すように構成されている。偏心カム162は、操作部16における軸心側に固定的に設けられた部品の径外側で当該部品に対して回転する。また操作部16は、偏心カム162の回転軸心を基準に径方向に延びる操作ハンドル163を有する。なお、
図1~
図5では操作ハンドル163を図示しておらず、
図6、
図7では操作ハンドル163を取り外した状態を図示している。操作ハンドル163の先端に設けられた係合部1631(
図6参照)は、操作部16の端部に設けられているハンドル被係合部164に係合する。本実施形態のハンドル被係合部164は、六角ボルトの頭部や六角ナットと同様の外周形状を有している。ハンドル被係合部164は偏心カム162と連動して回転する。偏心カム162は、移動部12が基部11及び後述するカバー部13に対して没した状態では移動部12の端面に小径部1622が当接し、飛び出た状態では移動部12の端面に大径部1621が当接するように設定されている。操作ハンドル163の長さは、大径部1621の径方向寸法よりも長く設定されている。
【0039】
なお、本実施形態の操作ハンドル163は、操作部16において着脱できるように設けられている。外した操作ハンドル163は、解除装置1の一部に沿うようにできる。例えば
図6及び
図7に示すように、外した操作ハンドル163をカバー部13と持ち手部17との間に納めることができる。このようにすることで、操作ハンドル163が邪魔になりにくく、保管時に解除装置1をコンパクトにでき、さらに、保管中に操作ハンドル163を紛失してしまう可能性を低くできる。
【0040】
また、操作ハンドル163は、解除装置1における専用品であってもよいし、市販のレンチ等の汎用品であってもよい。汎用品を用いる場合、力変換部161において力を入力する部分は、例えばJIS規格で定められた六角ボルト頭等と同じ形状とすることが望ましい。このように汎用品を用いた力変換部161は、一般的な部材を用いて単純な構成の力変換部を構成できるため経済的である。
【0041】
本実施形態では、作業者が操作ハンドル163を握って操作部16を回転させることで、偏心カム162も回転する。この回転に伴い、移動部12の端面に偏心カム162の小径部1622が当接していた状態から、大径部1621が当接する状態に変化する。
【0042】
本実施形態の解除装置1を用いて、結合金具2の結合解除を行うには、まず、固定側係合部14を、結合金具2(一方側結合金具2a)の孔部23(
図8(a)に示すように孔部23,23が並んでいる状態における図示右側にある第1孔部23A)に係合させ、移動側係合部15を、結合金具2(他方側結合金具2b)の孔部23(
図8(a)に示すように孔部23,23が並んでいる状態における図示左側にある第2孔部23B)に係合させた状態とする(
図3、
図4も参照)。この状態で操作部16を操作する(操作ハンドル163を操作部16の回転軸心まわりに回転させる)ことで、移動側係合部15を固定側係合部14から離反するように移動させられる。この移動により、各係合部14,15が係合した孔部23,23間の当初距離L1が、操作後距離L2に拡大される。これに伴い、結合金具2を周方向の他方向(
図8(a)(b)における左方向)に回転させることで結合解除させられる。よって、各結合金具2の構成点数を増加させることなく、結合解除をしやすくできるとのメリットを享受できる。
【0043】
そして、本実施形態の解除装置1は、クランプ等の固定具により結合金具2に固着するようには構成されておらず、結合金具2に外周面に対して沿わせて、各係合部14,15を結合金具2の孔部23に嵌めるだけで、結合解除のための操作が可能である。よって、装着が容易である。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0045】
例えば、結合金具2が設けられる対象は前記実施形態で説明したホース(消防ホース等)に限定されず、種々の流体配管(特に液体配管)を対象とできる。
【0046】
また、結合金具2が有する被係合部は、前記実施形態の孔部23に限定されず、種々の凹凸形状の部分として形成することができる。また、被係合部が形成される位置も、前記実施形態の外周部に限定されず、種々の位置とすることができる。解除装置1が有する係合部は、前記被係合部の構成と位置に合わせて構成できる。
【0047】
また、前記実施形態の操作ハンドル163は、操作部16において着脱できるように設けられていた。しかしこれに限定されず、操作部16において固定的(着脱不能)に設けられていてもよい。また、前記実施形態の操作ハンドル163は棒状であったが、円盤形状のダイヤル状であってもよい。
【0048】
また、前記実施形態の力変換部161は偏心カム162を有するものであったが、これに限定されず、歯車機構等により入力された操作力を増大させるよう構成されていてもよい。また、操作部16から移動部12への操作力の伝達は、前記実施形態では偏心カム162が移動部12の端面を当接して押すことによりなされていた。しかしこれに限定されず、歯車機構等により伝達されるよう構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 結合解除装置
11 基部
111 湾曲板部
1111 長孔
112 側板部
12 移動部
13 カバー部
131 外板部
132 側板部
14 固定側係合部
15 移動側係合部
16 操作部
161 力変換部
162 偏心カム
1621 大径部
1622 小径部
163 操作ハンドル
17 持ち手部
171 棒状部
2 結合金具(ホース結合金具)
2a 一方側結合金具
2b 他方側結合金具
21 凹部
22 凸部
23 被係合部、孔部
24 係止鉤部