IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大阪クリップの特許一覧

<>
  • 特開-筆箱 図1
  • 特開-筆箱 図2
  • 特開-筆箱 図3
  • 特開-筆箱 図4
  • 特開-筆箱 図5
  • 特開-筆箱 図6
  • 特開-筆箱 図7
  • 特開-筆箱 図8
  • 特開-筆箱 図9
  • 特開-筆箱 図10
  • 特開-筆箱 図11
  • 特開-筆箱 図12
  • 特開-筆箱 図13
  • 特開-筆箱 図14
  • 特開-筆箱 図15
  • 特開-筆箱 図16
  • 特開-筆箱 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013561
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】筆箱
(51)【国際特許分類】
   A45C 11/34 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
A45C11/34 101A
A45C11/34 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115735
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000149099
【氏名又は名称】株式会社大阪クリップ
(74)【代理人】
【識別番号】100152700
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 透
(72)【発明者】
【氏名】樋口 寛征
(72)【発明者】
【氏名】糸井 和生
【テーマコード(参考)】
3B045
【Fターム(参考)】
3B045BA18
3B045CB01
3B045DA42
3B045EA02
3B045EB05
3B045FC04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】蓋を閉じた状態でも外部からペンホルダーに保持されている鉛筆を芯の状態も含めて容易に視認可能とし、激しい衝撃や振動を受けても鉛筆が不用意に抜け出さない保持力を備えたペンホルダーを備え、従来の合皮張り仕上げの上蓋によるデザイン性を維持可能な、低コストで製造できる筆入れを提供する。
【解決手段】少なくとも上面向きの収納部を有する枠体とそれを開閉する蓋体を備えた筆箱であって、
収納部は、少なくとも筆箱の右側上面から右側面にかけての外殻をなし、上面から右側面にかけてを曲面に構成してなる透明性を有する硬質樹脂製のペンホルダーを有し、該ペンホルダーは、枠体の右端に設けた支点に支持されるヒンジにより転回して起立又は転倒して収納部に収納可能であって、複数の鉛筆を挿入可能な鉛筆挿入孔を有する弾性素材からなる別体の鉛筆保持部材を収容し、保持した鉛筆の芯先を除く先端部を係止可能なテーパー部を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも上面向きの収納部を有する枠体と、前記枠体を開閉する蓋体を備えた筆箱であって、
前記収納部は、少なくとも前記筆箱の右側上面から右側面にかけての外殻をなす透明性を有する硬質樹脂製のペンホルダーを有し、
前記蓋体は前記収納部の前記ペンホルダーの上面を除く残余の部分を覆って開閉可能としたことを特徴とする、筆箱。
【請求項2】
前記ペンホルダーは、前記枠体の右端に設けた支点に支持されるヒンジにより転回して起立又は転倒して前記収納部に収納可能としてなることを特徴とする、請求項1に記載の筆箱。
【請求項3】
前記ペンホルダーは、上面から右側面にかけての面を曲面としてなることを特徴とする、請求項2に記載の筆箱。
【請求項4】
前記ペンホルダーは、転倒時において前記蓋体の下に延伸する係止部を有し、前記蓋体を開いた状態においてのみ起立可能とし、起立後に前記蓋体を閉じてから転倒させた場合に、前記係止部が前記蓋体の上面右端に抵触することにより、傾斜した状態で保持されることを特徴とする、請求項3に記載の筆箱。
【請求項5】
前記ペンホルダーは、複数の鉛筆を挿入可能な鉛筆挿入孔を有する弾性素材からなる別体の鉛筆保持部材を収容し、保持した鉛筆の芯先を除く先端部を係止可能なテーパー部を備えていることを特徴とする、請求項4に記載の筆箱。
【請求項6】
前記鉛筆保持部材は、前記鉛筆挿入孔の内周面に同軸の環状の畝部を設けてなることを特徴とする、請求項5に記載の筆箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に小学生の児童が鉛筆などの筆記用具等を収納して携行するための箱型の筆箱に関する。
【背景技術】
【0002】
筆記用具を携行するための筆箱は児童にとっての必需品であり、教科書等の教材とともにランドセルに入れて毎日学校に持参される。わが国の小学校で箱型の筆箱が普及しているのは、基本的な筆記具として鉛筆が採用されていることによる。鉛筆は、児童が低学年で学習する漢字やひらがなの筆記における「ハネ・トメ・ハライ」などの習熟に適しており、シャープペンシルのように分解できないシンプルな構造のため、低学年児童用の筆記具として好適とされているからである。また、低学年のうちは特に、登校前には筆箱の中に必要十分な本数のきちんと削られた鉛筆が揃っていることを確認し、教科書等と共に忘れずにランドセルに収納することを通じて、学習の準備や持ち物の管理を学び、整理整頓の習慣を身に着ける。その点、特に低学年児童にとって筆箱は単なる文具品に留まらず、教育上の効果も期待されるものである。
【0003】
一般的な箱型の筆箱には鉛筆等の筆記具や消しゴム、定規などを収納するスペースが設けられており、児童が文房具の準備・確認を行い易くしている。また、頑丈な枠体にマグネットによる係止具付きの蓋を設けた構造とすることで、動きの活発な児童による乱雑な取扱いにも耐え、内部の文房具を保護できるようにしている。さらに、蓋をクッション内蔵の合皮張りとして、ランドセルなど同時期に購入される学用品とイメージを合わせるというデザイン性が重視されているものも多い。
【0004】
近年の箱型の筆箱は、たとえば特許文献1に開示された筆箱のように、収納部内に5~7連のペンホルダーが回転起倒可能に固定され、ペンホルダーに鉛筆の先端を挿入して保持するものが普及している。一般的なペンホルダーはPP(ポリプロピレン)又はPE(ポリエチレン)等の樹脂による一体成形品からなり、樹脂の弾性により鉛筆を保持する。さらに、各鉛筆の保持部にスリットを設けて、鉛筆の挿入により変形したスリットの弾性復元力により保持力を高めたものも商品化されている。
【0005】
しかし、PPやPEはその材質上滑り特性が高く、保持した鉛筆が抜け易いため、活動の活発な児童が通学時に走ったり飛び跳ねたりする振動によってペンホルダーから鉛筆が抜け出し、筆箱内で先端をぶつけて芯が折れてしまうことが多かった。特に、児童が鉛筆の先端が上を向く方向に筆箱をランドセルに立てて収納した場合、重力が働いて鉛筆がペンホルダーから抜け出す恐れが高まる。すなわち、質量6~10gの鉛筆を激しい振動や衝撃に抗して保持し続けるには、従来の材質・構造の一体成形品からなるペンホルダーに鉛筆を軽く挿し込むだけでは不十分であるという問題があった。
【特許文献1】特許第6897978号公報
【0006】
また、入学当初の児童は毎日家庭で鉛筆を削って芯を整え、必要本数を筆箱に収納するよう指導されるものの、完全に習慣化できるまでの間の1、2年間にはこれを忘れてしまう場合が多い。合皮張りのカバーは不透明であり、筆箱の蓋を開けないと中身は見えないため、一瞥しただけでは鉛筆の状態を把握できず、保護者のチェックも行き届きにくいという問題もあった。
【0007】
かかる問題に対して、たとえば特許文献2に開示される如く外殻の一部に透明性を有する窓を設けた筆箱や、非特許文献1として示す蓋体や外殻の全部を透明素材で構成した筆箱が商品化されている。
【特許文献2】特開昭55-146105号公開公報
【非特許文献1】クツワ株式会社「タフクリア」URL https://www.kutsuwa.co.jp/items/ch204/
【0008】
しかし、特許文献2に係る透明窓付筆箱は、上蓋の一部に窓を設けた上で別部品の透明樹脂板を接着して組み立てる必要があり、接着組み立て工程がコスト増となるだけでなく、板体の上蓋に捩じり力が加わった場合には破損し易い。特に、収納した鉛筆の先端まで窓を通して視認可能とするために窓の縁を上蓋の端部近くまで寄せるように設計した場合、上蓋自体の強度が低くなるという問題があった。
【0009】
また、非特許文献1に係る蓋体を透明部材で構成した筆箱の場合、蓋体にスポンジ等の汎用緩衝部材を仕込みにくく緩衝性や耐衝撃性が低下せざるを得ない。また、全面を透明としたことで収納部の内部が丸見えとなり、収納物品や内部の鉛筆特有の芯(黒鉛)による汚れの露呈といった美感上の問題やプライバシー上の問題を生じるだけでなく、従来から重視されているランドセル等とのコーディネートといったデザイン性に十分に対応できないという問題があった。また、鉛筆の全体が見えることで特に大切な鉛筆の芯先への注意が行き届かなくなりがちという構成上の問題点もあった。
【0010】
さらに、たとえ外殻全体を透明部材で構成したとしても、箱体の外殻の角部が存在する限り、角部では透明樹脂の肉厚により透過性が低下し、屈折率も変わる。そのため、机上に筆箱を置いた状態で斜め上方から見た際には、ペンホルダー内の鉛筆先端の芯の状態が確認しずらい場合が生じるという問題もあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、以上のような先行技術の問題を解決するべく発明されたものであり、蓋を閉じた状態でも外部からペンホルダーに保持されている鉛筆を芯の状態も含めて容易に視認可能とし、激しい衝撃や振動を受けても鉛筆が不用意に抜け出さない保持力を備えたペンホルダーを備え、さらに、従来の合皮張り仕上げの上蓋によるデザイン性を維持可能な、低コストで製造できる筆入れを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題を解決するために、請求項1に記載した筆箱は、少なくとも上面向きの収納部を有する枠体と、前記枠体を開閉する蓋体を備えた筆箱であって、前記収納部は、少なくとも前記筆箱の右側上面から右側面にかけての外殻をなす透明性を有する硬質樹脂製のペンホルダーを有し、前記蓋体は前記収納部の前記ペンホルダーの上面を除く残余の部分を覆って開閉可能としたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した筆箱であって、前記ペンホルダーが、前記枠体の右端に設けた支点に支持されるヒンジにより転回して起立又は転倒して前記収納部に収納可能としてなることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した筆箱であって、前記ペンホルダーは、上面から右側面にかけての面を曲面としてなることを特徴とする。
【0015】
前記ペンホルダーの上面から右側面にかけての面を、角部や強度確保のためのリブ構造等を有さない曲面、いわゆるR面状に構成したことで、透明樹脂の肉厚による透過性の低下が抑えられ、角部の存在による屈折率の変化も生じない。そのため、机上に筆箱を置いた状態で斜め上方から見た際にも、ペンホルダー内の鉛筆先端の芯の状態が歪みなくクリアに確認可能となる。
【0016】
前記ペンホルダーの素材は内部を透視でき、筆箱の外殻の一部を構成可能な耐久性(耐衝撃性、対摩耗性)を有する樹脂であれば特に限定されないが、ガラスと同程度の透明性を有し耐衝撃性・耐摩耗性が高いPC(ポリカーボネート)が好適である。、少なくとも筆箱の右側上面から右側面にかけての外殻をなす形状に構成したことで、ペンホルダーを枠体に収納させた状態で上蓋を閉鎖すれば、筆入れの上面は概ね上蓋とペンホルダーとが大きな段差のない一体的外観を呈し、上蓋を閉鎖した状態でもペンホルダーを透して収納されている鉛筆の芯の状態が外部から容易に視認可能となる。
【0017】
次に、請求項4に係る発明は、請求項3に記載した筆箱であって、前記ペンホルダーは、転倒時において前記蓋体の下に延伸する係止部を有し、前記蓋体を開いた状態においてのみ起立可能とし、起立後に前記蓋体を閉じてから転倒させた場合に、前記係止部が前記蓋体の上面右端に抵触することにより、傾斜した状態で保持されることを特徴とする。
【0018】
ペンホルダーの左端に、転倒時において前記上蓋の下に延伸する係止部を設けたことにより、蓋体を閉じた状態では係止部が蓋体により固定され、蓋体が開かない限りたとえ衝撃や振動を受けてもペンホルダーが不用意に起立することはない。また、蓋体を閉じてペンホルダーを傾斜させて保持できることで、鉛筆を次々に取り替えて使用する場合にも、いちいち蓋体を開いてペンホルダーに触れずとも鉛筆を直ちに抜き挿し可能となる。
【0019】
次に、請求項5に係る発明は、請求項4に記載した筆箱であって、前記ペンホルダーは、複数の鉛筆を挿入可能な鉛筆挿入孔を有する弾性素材からなる別体の鉛筆保持部材を収容し、保持した鉛筆の芯先を除く先端部を係止可能なテーパー部を備えていることを特徴とする。
【0020】
鉛筆保持部材の素材は弾性を有するものであれば特に限定されないが、摩擦係数が高く滑り特性の低いシリコンゴムが好適である。従来技術ではPP又はPE製のペンホルダー自体の弾性により鉛筆を保持するが、滑り特性が高く弾性効果も限定的なこれら素材では鉛筆の保持力が不十分であった。また、鉛筆保持部材を独立した弾性素材とすることで、ペンホルダーの素材の制約がなくなり、PCのような透明度が高いが硬質な樹脂を採用できるため、ペンホルダー内部の視認性と鉛筆の保持力の両立が可能としている。さらに、シリコンゴムの柔軟性により、市販の多様な形状の鉛筆(断面が六角・三角・円など)や、鉛筆の直径の多少の差異、表面処理の違いも許容する、冗長性を備えたペンホルダーを実現可能としている。
【0021】
一方、ペンホルダーに鉛筆を深く挿入し過ぎることによって、芯先がペンホルダー右端内壁に接触して折損しないように挿入深さを制限する必要がある。従来技術のペンホルダーは、鉛筆の保持と挿入深さ制限の双方を弾性を有する同一素材で一体成形していたため、保持力を高めるための素材の弾性が逆に挿入深さの制限力を損なうおそれがあった。これに対し、本願発明のペンホルダーは、弾性を有する別体の鉛筆保持部材で保持力を、硬質素材のペンホルダーのテーパー部で挿入深さ制限の規制力をそれぞれ分担させることで、かかる相反の問題を解決している。
【0022】
また、鉛筆保持部材を独立した部材とすることで、たとえば6穴の鉛筆挿入孔を一体的に形成し、その塑性によってペンホルダーに一括組み込み可能となるため、組み込み工程は容易である。さらに、弾性を有する鉛筆保持部材が硬質のペンホルダーによって保護される形となり、鉛筆の挿入・抜去の際の変形破損や摩耗、経年劣化による変質も抑制され、耐久性も高まる。
【0023】
最後に、請求項6に係る発明は、請求項5に記載した筆箱であって、前記鉛筆保持部材は、前記鉛筆挿入孔の内周面に同軸の環状の畝部を設けてなることを特徴とする。
【0024】
鉛筆はその外側面と鉛筆挿入孔の内側面との間の摩擦力により保持されるが、摩擦力を生じさせるためには鉛筆挿入孔の内径を標準的な鉛筆の直径(8mm程度)よりも小さく設定する必要がある。しかし、内径が小さ過ぎると鉛筆に対する保持力が過剰となり、挿入・抜去の際の抵抗が大きくなり過ぎて使いずらいものとなる。また、市販の鉛筆は断面形状や直径にバラツキがあるため、外側面と鉛筆挿入孔の内側面との接触の仕方は多様となる。
【0025】
そこで、鉛筆挿入孔の内径は標準的な鉛筆の直径よりごく僅かに小さく設定し、さらにその内側面に畝部を設けることにより、畝部の弾性変形の反作用である締め付け効果と鉛筆挿入孔の内面との間の摩擦力で、多様な鉛筆の外側面に対して十分な保持力を確保できる。しかも、鉛筆の挿入・抜去の際に大きな摩擦を生じるのは畝部のみなので、不必要に大きな抵抗は生じず、快適な使用感が確保される。
【発明の効果】
【0026】
以上までで説明した構成により、本発明に係る筆箱は以下のような従来技術にはない優れた効果を奏する。
(1)上蓋の大部分を従前の筆箱と同様の素材としながらも、外殻と一体化した透明なペンホルダーを透して収納された鉛筆の本数や種類、芯先の状態を児童や保護者が容易に目視確認できるため、鉛筆の不足や削り忘れを防止でき、ランドセル等と統一感のあるデザインも実現できる。
(2)ペンホルダーに別体の鉛筆の保持力の高い弾性素材の鉛筆保持部材を内装したことにより、強い衝撃や振動を受けても筆箱内で鉛筆がペンホルダーから抜け出て芯が折れることが防がれる。また、鉛筆保持部材の鉛筆挿入孔の内面に環状の畝部を設けたことで、断面形状や直径にバラツキのある多様な鉛筆を快適に収納・保持し、取り出すことができる許容性・冗長性・操作性を実現できる。
(3)鉛筆保持部材を別体としたことにより部品点数は増加するものの、硬質のペンホルダーのテーパー部により鉛筆の挿入深さ制限の規制力を、軟質の鉛筆保持部材により鉛筆の保持力をそれぞれ分担するため、弾性樹脂部材を一体成形した従来技術のペンホルダーに比べていずれも高い水準で両立可能とできる。
(4)ペンホルダーを起立させて上蓋を閉じてその上に斜めに保持できるため、鉛筆を筆箱上に随時取り出し収納できる状態に露出させることができる。そのため、試験中など静粛が要請される場面でも、いちいち筆箱を開け閉めして雑音を立てることなく鉛筆を交換できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】筆箱の斜視図(上蓋を閉じた状態)
図2】筆箱の斜視図(上蓋を開きペンホルダーを起立させた状態)
図3】筆箱の正面図
図4】筆箱の背面図
図5】筆箱の平面図
図6】筆箱の右側面図
図7】筆箱の平面図(上蓋を開いた状態)
図8】筆箱の底面図(底蓋を開いた状態)
図9】ペンホルダーから鉛筆保持部材を分離した状態の斜視図
図10】ペンホルダーの拡大斜視図
図11】ペンホルダーの正面図
図12】ペンホルダーの左側面図
図13】鉛筆保持部材の斜視図
図14】鉛筆保持部材の断面を表す斜視図
図15】筆箱の試作品の写真(鉛筆収納前)
図16】筆箱の試作品の写真(鉛筆収納時)
図17】従来技術の筆箱との比較写真(ペンホルダー部分)
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態について図を用いて説明する。実施形態に係る筆箱は、枠体の上面に第1の収納部と上蓋を有するほか、下面にも第2の収納部と底蓋を有する、いわゆる両開きの筆箱である。
【0029】
図1は筆箱1の上蓋12を閉じた状態を表す斜視図、図2は上蓋12を開いた状態を表す斜視図である。図3は正面図、図4は背面図、図5は平面図、図6は右側面図であり、いずれも上蓋12、底蓋14を閉じた状態を示す。図7は上蓋12を開いた状態の平面図、図8は底蓋14を開いた状態の底面図である。図9はペンホルダーから鉛筆保持部材を分離した状態の斜視図、図10はペンホルダーの拡大斜視図であり、図11はペンホルダーの正面図である。図12はペンホルダーの左側面図(第一の収納部側から見た図)、図13は鉛筆保持部材30の斜視図、図14は鉛筆保持部材30の断面構造を表す斜視図である。さらに、図15図16は筆箱1の試作品の写真であり、図15は鉛筆を収納する前の状態、図16は鉛筆を収納した状態である。また、図17は、本願発明に係る筆箱と非特許文献1に示した従来技術に係る筆箱とのペンホルダー部分の比較写真である。
【0030】
筆箱1は枠体10の上面側に第一の収納部11を、底面側に第二の収納部13を設け、第一の収納部11を開閉する上蓋12と第二の収納部13を開閉する底蓋14を、いずれも筆箱1の正面側から開くように設けている。上蓋12は第一の収納部11の左側の概ね4分の3を覆い、右側の概ね4分の1にはペンホルダー20と鉛筆削り収納部40が設けられている。
【0031】
ペンホルダー20は透明なPC(ポリカーボネート)製の一体成形された部材である。その上面と右側面は曲面で連続し、筆箱1の右側上面から右側面にかけての外殻をなしている。また、ペンホルダー20の右側面の下端に設けた一対のヒンジ21が、枠体10の右側面下部に設けた一対の支点16に回転可能に嵌合し、ペンホルダー20を起立又は転倒収納可能としている。
【0032】
ペンホルダー20の左端には、転倒収容時に上蓋12の右端の下に延伸する係止部22を設けている。転倒収納時には係止部22が上蓋12の右端下面に干渉するため、上蓋12を開かない限りペンホルダー20を起立させることはできず、衝撃や振動によって不用意に起立し、鉛筆Pが脱落することが防がれる。一方、起立させた状態のペンホルダー20を上蓋12を閉じてから転倒させた場合、係止部22が上蓋12の右端上面に当接してペンホルダー20を斜めに保持させることができる。これにより、机上でいちいち上蓋12の開閉やペンホルダー20を起立・転倒させずに鉛筆Pを交換できるため、試験等の静粛を要請される場面では特に便利である。
【0033】
次に、ペンホルダー20を透明なPC製としたことにより、ペンホルダー20を転倒収容して上蓋12を閉じた状態でも、収納された鉛筆の本数や種類を容易に目視可能としている。図17の写真は、左側が実施形態に係る筆箱、右側が従来技術に係る上蓋全体が透明な筆箱のペンホルダー部分の拡大写真であるが、従来技術に係る右側の筆箱は、右端(写真上方)に角部があるため、鉛筆の先端部分が見づらいことが分かる。これに対し、実施形態に係る左側の筆箱はペンホルダー20の上面と右側面を曲面で連続させたことで写真上方の右端に角部がないため、筆箱1を斜め上方から見た際にペンホルダーやそこに挿入された鉛筆が目視できるだけでなく、鉛筆の芯の状態が角部に遮られることなく確認し易いという効果が確認できる。
【0034】
ペンホルダー20内の左端寄りには、内部に略直方体のシリコンゴム製の鉛筆保持部材30を挿入嵌合して内装可能な鉛筆保持部材収容部23を、また、該鉛筆保持部材収容部23の右端には削られた鉛筆Pの先端部を保持規制するテーパー部24を、それぞれ一体成形により設けている。さらに、鉛筆保持部材収容部23の下面には連続する6つの貫通孔25を設けている。
【0035】
鉛筆保持部材30は、内径が8mm弱で軸線が水平方向の連続する貫通孔である6つの鉛筆挿入孔31を有し、該鉛筆挿入孔31の内側面の左端寄りには環状の畝部32を設けている。また、鉛筆保持部材30の下面には前記貫通孔25に対応する6つの突起部33を設けており、ペンホルダー20の鉛筆保持部収容部23に挿入鉛筆保持部材30は、貫通孔25に突起部33が嵌合することにより固定される。
【0036】
鉛筆保持部材30を滑り特性が低いシリコンゴム製とし、内径を一般的な鉛筆の直径よりも僅かに小さい8mm弱としているため、挿入された鉛筆Pは鉛筆挿入孔31の内側面との摩擦により保持される。また、鉛筆Pの外側面が環状の畝部32を押圧することで、その弾性変形の反作用で締め付けられる。そのため、激しい衝撃や振動を受けても鉛筆Pが鉛筆保持部材30から脱落することはない。
【0037】
また、鉛筆挿入孔31に挿入されたこれを貫通した鉛筆Pの先端は更に進んだところでテーパー部24に当接する。テーパー部24はPC製のペンホルダー20内に一体成形されているため、鉛筆Pを強く押し込んだとしても弾性変形せずに侵入を完全に規制し、鉛筆Pの芯がペンホルダー20の内壁に接触して折れることはない。
【0038】
なお、シリコンゴム製の鉛筆保持部材30はその弾力性により容易に変形させることができるため、PC製のペンホルダー20の鉛筆保持部収容部23への組付けや取外しは極めて容易である。しかし、シリコンゴムはPCに対して大きな摩擦力を有するため、鉛筆Pの出し入れや外部からの衝撃・振動を受けても鉛筆保持部材収納部23から容易に脱落することはない。さらに、前述のとおり鉛筆保持部材30に設けた突起部33をペンホルダー20に設けた貫通孔25に嵌合させているため、鉛筆挿入時には突起部33が貫通孔25内に押し付けられる形となってその固定はさらに確実となる。これにより、鉛筆を引き抜こうとする際に鉛筆保持部材30が鉛筆に引きずられて鉛筆保持部材収納部23から脱落したりすることが防がれる。
【0039】
以上のとおり、筆箱1のペンホルダー20は、鉛筆Pの保持力をシリコンゴム製の鉛筆保持部材30で、鉛筆Pの挿入深さ制限の規制力をPC製のテーパー部24でそれぞれ分担する構成とすることで、弾性樹脂の一体成形部材のみからなる従来技術の筆箱のペンホルダーにおける保持力と規制力の相反の問題を解決している。
【0040】
筆箱1では、さらにペンホルダー20の隣にやはり筆箱1の外殻の一部をなす形状の透明部材の鉛筆削り器収納部40を設けている。実施形態では、鉛筆削り器収納部40は下方を第二の収納部13側に開口させており、底蓋14を開くことで収納した鉛筆削り器(図示せず)を着脱可能としている。収納する鉛筆削り器自体も、透明なケース兼削りカス溜めに組み込む形とすることで、児童が鉛筆の本数や芯の状態を確認する都度、鉛筆を削り削りカスを捨てることを習慣化し易くなる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明したが、本発明は、必ずしも上述した構成にのみ限定されるものではなく、本発明の目的を達成し、効果を有する範囲内において、適宜変更実施することが可能なものであり、本発明の技術的思想の範囲内に属する限り、それらは本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る筆箱は文具品として児童から大人まで幅広く利用できるが、特に小学校の新入生がランドセルや教科書ととともに自分自身の学習用具として使用し、鉛筆の本数や種類、芯の状態の確認等を通じて初めて持ち物管理やメンテナンスを実践することで、授業の準備や心構えを学ぶための教材としての効果も期待できる。
【符号の説明】
【0043】
1 筆箱
10 枠体
11 第一の収納部
12 上蓋
13 第二の収納部
14 底蓋
15 マグネット
16 支点
17 マグネット受け
20 ペンホルダー
21 ヒンジ
22 係止部
23 鉛筆保持部材収納部
24 テーパー部
25 貫通孔
30 鉛筆保持部材
31 鉛筆挿入孔
32 畝部
33 突起部
40 鉛筆削り器収納部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17