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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135616
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G03G15/20 525
G03G15/20 535
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046397
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤島 正之
(72)【発明者】
【氏名】三宅 尚史
(72)【発明者】
【氏名】村田 貴彦
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA08
2H033AA25
2H033BA10
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA16
2H033BA19
2H033BA20
2H033BA25
2H033BA31
2H033BA48
2H033BB17
2H033BB33
2H033BB37
2H033BB39
2H033CA05
2H033CA07
2H033CA08
2H033CA19
2H033CA22
2H033CA40
(57)【要約】
【課題】シートに接触する回転体に付着したトナーを容易に除去する。
【解決手段】定着装置は、正方向に回転することにより、定着ニップに進入したシートにトナーを定着させる一対の回転体と、一対の回転体を回転させる駆動部と、一方の回転体を加熱する加熱部と、一方の回転体の温度を検知する温度検知部と、一方の回転体の外周面に対し、定着ニップよりも正方向における下流側の位置である分離位置で接触する分離爪と、制御部と、を備え、回転体温度が所定温度よりも低いとき、制御部は、一方の回転体を逆方向に回転させることにより、一方の回転体のうち逆方向の回転開始時点において分離位置に位置していた対象部分を分離位置と定着ニップとの間に移動させた後、対象部分が定着ニップに到達する前に逆方向の回転を停止する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に支持され、互いに圧接して定着ニップを形成し、正方向に回転することにより、前記定着ニップに進入したシートを搬送しつつ前記シートにトナーを定着させる一対の回転体と、
前記一対の回転体を回転させる駆動部と、
前記一対の回転体のうち一方の回転体を加熱する加熱部と、
前記一方の回転体の温度を検知する温度検知部と、
前記一方の回転体の外周面に対し、前記定着ニップよりも前記正方向における下流側の位置である分離位置で接触することにより、前記一方の回転体の外周面から前記シートを分離させる分離爪と、
前記一方の回転体の温度である回転体温度を前記温度検知部の出力値に基づき検知するとともに、前記駆動部を制御して前記一対の回転体を回転させる制御部と、を備え、
前記回転体温度が所定温度よりも低いとき、前記制御部は、前記一方の回転体を清掃する清掃処理として、前記一方の回転体を前記正方向とは反対の逆方向に回転させることにより、前記一方の回転体のうち前記逆方向の回転開始時点において前記分離位置に位置していた対象部分を前記分離位置と前記定着ニップとの間に移動させた後、前記対象部分が前記定着ニップに到達する前に前記一方の回転体の前記逆方向の回転を停止する処理を行う、定着装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記清掃処理として、前記対象部分を前記分離位置と前記定着ニップとの間に移動させた後、前記対象部分が前記分離位置を通過するまで、前記一方の回転体を前記正方向に回転させる処理をさらに行う、請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記加熱部による加熱を停止した状態で、前記清掃処理を行う、請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記定着ニップを通過した前記シートの通過枚数を認識し、前記清掃処理を前回行ってからの前記通過枚数が予め定められた閾値枚数に達するまで、次の前記清掃処理を行わない、請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
前記所定温度は、前記トナーのガラス転移温度よりも低い温度である、請求項1に記載の定着装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の定着装置を備える、画像形成装置。
【請求項7】
画像形成装置の機内の温度および湿度の少なくとも一方を検知する検知部を備え、
前記検知部により検知される前記温度が予め定められた閾値温度未満または前記湿度が予め定められた閾値湿度以上であり、かつ、前記回転体温度が前記所定温度よりも低いとき、前記制御部は、前記清掃処理を行う、請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
画像形成装置での印刷ジョブの実行中にジャムが発生したことによって前記印刷ジョブが中断された後、中断した前記印刷ジョブが再開されるとき、前記制御部は、前記清掃処理を行う、請求項6に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定着装置は、定着ローラーおよび加圧ローラーを備える。定着ローラーおよび加圧ローラーは、互いに圧接して定着ニップを形成する。トナー像が転写されたシートが定着ニップを通過するとき、そのシートに対する加熱および加圧が行われ、シートにトナー像が定着される。このような定着装置は、たとえば、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の定着装置は、分離爪を備える。分離爪は、定着ニップよりもシート搬送方向下流側に配置され、定着ローラーの外周面に接触する。分離爪は、定着ローラーの外周面からシートを分離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-159407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
定着ローラーの外周面に分離爪を接触させる構成では、定着ローラーの外周面と分離爪との間にトナーが滞留する。そのトナーが定着ローラーの外周面に付着すると、定着ローラーの外周面にはシートが接触するので、シートが汚れるなどの不都合が生じる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、シートに接触する回転体に付着したトナーを容易に除去することが可能な定着装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の局面による定着装置は、回転可能に支持され、互いに圧接して定着ニップを形成し、正方向に回転することにより、定着ニップに進入したシートを搬送しつつシートにトナーを定着させる一対の回転体と、一対の回転体を回転させる駆動部と、一対の回転体のうち一方の回転体を加熱する加熱部と、一方の回転体の温度を検知する温度検知部と、一方の回転体の外周面に対し、定着ニップよりも正方向における下流側の位置である分離位置で接触することにより、一方の回転体の外周面からシートを分離させる分離爪と、一方の回転体の温度である回転体温度を温度検知部の出力値に基づき検知するとともに、駆動部を制御して一対の回転体を回転させる制御部と、を備える。回転体温度が所定温度よりも低いとき、制御部は、一方の回転体を清掃する清掃処理として、一方の回転体を正方向とは反対の逆方向に回転させることにより、一方の回転体のうち逆方向の回転開始時点において分離位置に位置していた対象部分を分離位置と定着ニップとの間に移動させた後、対象部分が定着ニップに到達する前に一方の回転体の逆方向の回転を停止する処理を行う。
【0008】
本発明の第2の局面による画像形成装置は、上記定着装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、シートに接触する回転体に付着したトナーを容易に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態による画像形成装置の概略図である。
図2】実施形態による画像形成部の概略図である。
図3】実施形態による画像形成装置のブロック図である。
図4】実施形態による定着装置の概略図である。
図5】実施形態による制御部が行う処理の流れを示すフローチャートである。
図6】実施形態による定着ローラーの清掃処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態による画像形成装置について、タンデム方式のカラーレーザープリンターを例にとって説明する。ただし、本発明に適用可能な画像形成装置はプリンターに限らない。コピー機能などを有する複合機にも本発明は適用可能である。なお、以下の説明では、画像形成装置が設置される床面に垂直な方向を上下方向と定義する。
【0012】
<画像形成装置の全体構成>
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、メイン搬送路MPを備える。また、画像形成装置100は、シートカセットCAを備える。シートカセットCAは、画像形成装置100の本体に対して着脱可能である。シートカセットCAには、印刷ジョブで用いるシートSが収容される。メイン搬送路MPは、シートカセットCAからのシートSの供給位置P0から、転写位置P1および定着位置P2を経由し、排出トレイETに至る。
【0013】
印刷ジョブでは、シートカセットCAのシートSが供給位置P0からメイン搬送路MPに供給される。画像形成装置100は、メイン搬送路MPに沿ってシートSを搬送する。そして、画像形成装置100は、搬送中のシートSに画像を印刷する。言い換えると、画像形成装置100は、搬送中のシートSにトナー像を転写する。転写位置P1において、搬送中のシートSに対するトナー像の転写が行われる。
【0014】
なお、シートカセットCAは、画像形成装置100の本体下方に装着される。転写位置P1は、シートカセットCAからメイン搬送路MPへのシートSの供給位置P0よりも上方である。このため、メイン搬送路MPへのシートSの供給後、シートSは下方から上方に向けて搬送される。
【0015】
画像形成装置100は、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの4色分の画像形成部1を備える。各画像形成部1は、対応する色のトナー像を形成する。以下、或る1つの画像形成部1に着目してその構成を説明する。各画像形成部1の基本的な構成は互いに同じである。したがって、他の画像形成部1の構成の説明については、以下の説明を援用するものとして省略する。
【0016】
画像形成部1は、図2に示すように、感光体ドラム11と、帯電装置12と、露光装置13と、現像装置14と、清掃装置15と、を備える。画像形成部1による画像形成時、感光体ドラム11が回転する。また、帯電装置12は、感光体ドラム11の外周面を帯電させる。露光装置13は、感光体ドラム11の外周面を露光し、感光体ドラム11の外周面上に静電潜像を形成する。現像装置14は、感光体ドラム11の外周面にトナーを供給し、静電潜像をトナー像に現像する。なお、感光体ドラム11の外周面上のトナー像は、後述する中間転写ベルト20に1次転写される。清掃装置15は、中間転写ベルト20に転写されずに感光体ドラム11の外周面上に残留したトナーを除去する。
【0017】
また、図1に示すように、画像形成装置100は、転写部2を備える。転写部2は、中間転写ベルト20を備える。中間転写ベルト20は、無端状のベルトである。
【0018】
中間転写ベルト20は、複数のローラー200により、張架され、回転可能に支持される。中間転写ベルト20は、感光体ドラム11の外周面に接触し、その状態で回転(周回)する。複数のローラー200は、駆動ローラーを含む。複数のローラー200のうち1つが駆動ローラーである。駆動ローラーは、ベルトモーター(図示せず)から駆動力が伝達されて回転する。中間転写ベルト20は、駆動ローラーが回転することにより、従動して回転する。他のローラー200は、中間転写ベルト20に従動して回転する。
【0019】
転写部2は、1次転写ローラー21を備える。1次転写ローラー21は、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの各色に1つずつ割り当てられる。すなわち、1次転写ローラー21の設置数は複数(4つ)である。各1次転写ローラー21は、中間転写ベルト20の内周側の領域に配置される。各1次転写ローラー21は、中間転写ベルト20を挟んで、対応する色の感光体ドラム11と対向して配置される。
【0020】
転写部2は、2次転写ローラー22を備える。2次転写ローラー22は、中間転写ベルト20の外周面に対して転写位置P1で圧接し、中間転写ベルト20との間に転写ニップを形成する。転写位置P1において転写ニップが形成される。メイン搬送路MPは、転写ニップを経由する。
【0021】
印刷ジョブでは、転写位置P1(すなわち、転写ニップ)に向けてシートSが搬送される。搬送中のシートSは転写ニップを通過する。すなわち、中間転写ベルト20は、各感光体ドラム11との接触位置よりも中間転写ベルト20の回転方向における下流側において、搬送中のシートSに接触する。
【0022】
各画像形成部1は、対応する色のトナー像を形成する。各1次転写ローラー21は、中間転写ベルト20の外周面にトナー像を1次転写する。中間転写ベルト20は、各感光体ドラム11から1次転写されたトナー像を外周面に担持して回転する。シートSが転写ニップを通過中、中間転写ベルト20の外周面にシートSが接触する。2次転写ローラー22は、中間転写ベルト20との間に転写電界を形成することにより、転写ニップを通過中のシートSにトナー像を2次転写する。
【0023】
また、画像形成装置100は、清掃部3を備える。清掃部3は、中間転写ベルト20の外周面と対向して配置される。清掃部3は、転写位置P1よりも中間転写ベルト20の回転方向における下流側に配置される。清掃部3は、中間転写ベルト20の外周面を清掃する。具体的には、清掃部3は、中間転写ベルト20の外周面に接触するブレード(図示せず)を有する。ブレードは、シートSに転写されずに中間転写ベルト20の外周面上に残留したトナーを除去する。
【0024】
ここで、画像形成装置100は、定着装置4を備える。定着装置4は、定着位置P2に配置される。印刷ジョブでは、トナー像の転写処理を受けたシートSが定着位置P2を通過する。このとき、定着装置4は、シートSにトナー像を定着させる。定着処理後、シートSは、排出トレイETに排出される。定着装置4の構成については、後に詳細に説明する。
【0025】
画像形成装置100は、符号は省略するが、搬送部を備える。搬送部は、複数の搬送ローラー対を含む。搬送ローラー対は、一対のローラーを含む。一対のローラーは、ローラー間に搬送ニップを有する。搬送ローラー対は、回転することにより、搬送ニップに進入したシートSを搬送する。搬送部は、メイン搬送路MPに沿ってシートSを搬送する。また、搬送部は、後述する両面印刷搬送路DPに沿ってシートSを搬送する。
【0026】
画像形成装置100は、印刷ジョブとして、シートSの片面にのみトナー像を印刷する片面印刷ジョブに加え、シートSの両面にトナー像を印刷する両面印刷ジョブの実行が可能である。両面印刷ジョブを実行するため、画像形成装置100は、両面印刷搬送路DPを備える。
【0027】
両面印刷搬送路DPは、メイン搬送路MPのうち定着位置P2よりもシート搬送方向下流側の分岐位置P3でメイン搬送路MPから分岐する。そして、両面印刷搬送路DPは、メイン搬送路MPのうち転写位置P1よりもシート搬送方向上流側の合流位置P4でメイン搬送路MPに合流する。
【0028】
実行ジョブが片面印刷ジョブである場合、シートSは転写ニップを1回だけ通過し、転写ニップを通過中のシートSに対して転写処理が1回行われる。そして、1回目の転写処理後、シートSがそのまま排出トレイETに排出される。
【0029】
実行ジョブが両面印刷ジョブである場合、シートSの表裏面に対してそれぞれ1回ずつ転写処理を行うため、シートSは転写ニップを2回通過する。具体的には、シートSが転写ニップを1回目に通過するとき、シートSの一方面に対して転写処理が行われる。1回目の転写処理後、シートSの後端が分岐位置P3を通過した後であってシートSが排出トレイETに完全に排出される前、シートSがスイッチバックされる。これにより、シートSがその後端から両面印刷搬送路DPに引き込まれる。
【0030】
その後、両面印刷搬送路DPに沿ってシートSが搬送される。そして、両面印刷搬送路DPのシートSが合流位置P4からメイン搬送路MPに戻される。メイン搬送路MPに戻されたシートSは、メイン搬送路MPに沿って搬送され、転写ニップを再度通過する。このとき、シートSの表裏面の向きが転写ニップを前回通過したときに対して逆向きに反転されている。これにより、シートSが転写ニップを2回目に通過するとき、シートSの一方面とは逆の他方面に対して転写処理が行われる。
【0031】
また、図3に示すように、画像形成装置100は、制御部5を備える。制御部5は、CPUおよびASICなどの処理回路を含む。また、制御部5は、ROMおよびRAMなどの記憶デバイスを含む。制御部5は、画像形成装置100で実行される印刷ジョブを制御する。
【0032】
制御部5は、定着装置4を制御する。この構成では、制御部5は、定着装置4の一構成要素である。言い換えると、定着装置4は、制御部5を備える。なお、定着装置4を制御する専用の定着制御部を定着装置4に設置してもよい。
【0033】
画像形成装置100は、通信部501を備える。通信部501は、通信回路、通信用メモリーおよび通信用コネクターなどを含む。通信部501は、LANなどのネットワークを介して、外部機器に通信可能に接続される。外部機器としては、ユーザー端末がある。パーソナルコンピューター(PC)、スマートフォンおよびタブレットコンピューターなどがユーザー端末になり得る。
【0034】
制御部5は、通信部501を用いて、外部機器と通信する。たとえば、外部機器(ユーザー端末)から画像形成装置100に対して、印刷ジョブの印刷データが送信される。印刷データは、印刷ジョブで印刷すべき画像データなどを含む。制御部5は、印刷データに基づき、印刷ジョブを制御する。
【0035】
画像形成装置100は、操作パネル502を備える。操作パネル502は、タッチスクリーンを含む。操作パネル502は、設定および指示などをユーザーから受け付ける。操作パネル502は、制御部5に接続される。制御部5は、操作パネル502がユーザーから受け付けた設定および指示などを検知する。
【0036】
<定着装置の構成>
図4に示すように、定着装置4は、一対の回転体40を備える。一対の回転体40は、それぞれ、回転可能に支持される。一対の回転体40は、互いに圧接して定着ニップNを形成する。一対の回転体40は、それぞれ、シート搬送方向と直交する幅方向に延びる軸線回りに回転可能である。すなわち、一対の回転体40の各軸方向は幅方向である。定着装置4の前後方向(すなわち、画像形成装置100の前後方向)が幅方向に相当する。図4は、定着装置4を幅方向から見た場合の模式図であり、図4の紙面に対して垂直な方向が幅方向に相当する。
【0037】
一対の回転体40のうち、一方は定着ローラー41である。定着ローラー41は、ヒーター410を内蔵する。すなわち、定着装置4は、ヒーター410を備える。たとえば、ヒーター410は、ハロゲンヒーターである。ヒーター410は、定着ローラー41を加熱する。この構成では、定着ローラー41が「一方の回転体」に相当する。ヒーター410は「加熱部」に相当する。なお、定着ローラー41の加熱方式は特に限定されず、他の方式で定着ローラー41を加熱してもよい。
【0038】
制御部5は、ヒーター410への通電のオンオフを制御する。すなわち、制御部5は、定着ローラー41に対する加熱と加熱停止とを切り替える。印刷ジョブを実行するとき、制御部5は、ヒーター410への通電をオンする(すなわち、定着ローラー41の加熱を開始する)。これにより、制御部5は、定着ローラー41の温度を予め定められた定着制御温度に昇温させる。そして、印刷ジョブの実行中、制御部5は、定着ローラー41の温度を定着制御温度に維持する処理を行う。
【0039】
定着ローラー41の温度は、サーミスター51(図3参照)によって検知される。すなわち、定着装置4は、サーミスター51を備える。サーミスター51は「温度検知部」に相当する。サーミスター51は、定着ローラー41の外周面の温度を検知する。制御部5は、サーミスター51の出力に基づき、定着ローラー41の外周面の温度を検知する。定着ローラー41の外周面の温度は「回転体温度」に相当し、以下の説明では単に定着ローラー41の温度と称する。
【0040】
一対の回転体40のうち、他方は加圧ローラー42である。加圧ローラー42は、定着ローラー41に圧接する。これにより、定着ローラー41と加圧ローラー42とによって定着ニップNが形成される。
【0041】
また、加圧ローラー42は、図示しない伝達機構を介して、定着モーター52(図3参照)に連結される。すなわち、定着装置4は、定着モーター52を備える。定着モーター52は「駆動部」に相当する。加圧ローラー42は、定着モーター52から動力が伝達されて回転する。加圧ローラー42が回転することにより、定着ローラー41が従動して回転する。制御部5は、定着モーター52を制御し、一対の回転体40(すなわち、定着ローラー41と加圧ローラー42)を適切に回転させる。
【0042】
印刷ジョブの開始から終了まで(すなわち、印刷ジョブの実行中)、制御部5は、一対の回転体40を正方向に回転させる。一対の回転体40は、正方向に回転することにより、定着ニップNに進入したシートSを搬送しつつ、シートSにトナーを定着させる、図4では、定着ローラー41の回転方向における正方向(すなわち、印刷ジョブの実行中における回転方向)を矢印R1で示し、加圧ローラー42の回転方向における正方向(すなわち、印刷ジョブの実行中における回転方向)を矢印R2で示す。
【0043】
印刷ジョブでは、トナー像の転写を受けたシートSが定着ニップNに向けて搬送され、そのシートSが定着ニップNに進入する。図4では、図面の下から上に向かう方向がシート搬送方向に相当する。
【0044】
また、定着装置4は、分離爪43を備える。分離爪43を構成する材料は特に限定されない。分離爪43は、トナーが付着し難い材料で構成される。たとえば、分離爪43は、PEKなどの樹脂で成型され、PFAなどのフッ素系樹脂でコーティングされる。
【0045】
分離爪43は、定着ニップNよりもシート搬送方向の下流側に配置される。分離爪43は、定着ローラー41の外周面に対し、定着ニップNよりも定着ローラー41が正方向に回転する場合のその回転方向における下流側の位置SPで接触する。位置SPは「分離位置」に相当する。以下の説明では、位置SPを分離位置SPと称する。
【0046】
分離爪43は、定着ローラー41が正方向に回転する場合では定着ローラー41の外周面に対してカウンター方向に接触する。また、分離爪43は、幅方向から見て、分離位置SPから、定着ローラー41の外周面から離れる方向に向かって、末広がりの三角形状に形成された部分を有する。この構成では、定着ローラー41の外周面にシートSが巻き付いても、分離位置SPにおいて、定着ローラー41の外周面からシートSを分離させることができる。
【0047】
分離爪43は、圧縮バネなどの付勢部材430により、定着ローラー41の外周面に向けて付勢される。すなわち、定着装置4は、付勢部材430を備える。分離爪43が付勢部材430によって付勢されることにより、定着ローラー41の外周面に対する分離爪43の接触が維持される。
【0048】
<定着ローラーの清掃処理>
分離位置SPでは、定着ローラー41の外周面と分離爪43との間にトナーが滞留し易い。分離位置SPでのトナーの滞留時間が長くなると、定着ローラー41の外周面にトナーが融着する場合がある。この場合、定着ローラー41の外周面にはシートSが接触するので、シートSが汚れるという不都合が生じ得る。したがって、定着ローラー41の外周面と分離爪43との間にトナーが残存する場合には、そのトナーを除去する必要がある。
【0049】
そこで、制御部5は、定着ローラー41の外周面を清掃する清掃処理を行う。定着ローラー41の清掃処理が行われることにより、定着ローラー41の外周面と分離爪43との間に残存するトナーが除去される。制御部5は、ヒーター410による加熱を停止した状態で、定着ローラー41の清掃処理を行う。
【0050】
以下、図5を参照し、定着ローラー41の清掃処理について説明する。制御部5は、図5に示すフローに沿って定着ローラー41の清掃処理を行う。たとえば、図5に示すフローは、画像形成装置100で印刷ジョブが開始されるときにスタートする。なお、定着ローラー41の清掃処理の実行タイミングについては、後に詳細に説明する。
【0051】
ステップS1において、制御部5は、定着ローラー41の温度(図5では、「ローラー温度」と表記)が所定温度よりも低いか否かを判断する。ここで、所定温度は、印刷ジョブで使用されるトナーのガラス転移温度以下の温度である。たとえば、所定温度は、約60℃である。
【0052】
ステップS1において、定着ローラー41の温度が所定温度よりも低いと制御部5が判断した場合、ステップS2に移行する。ステップS2に移行すると、制御部5は、定着ローラー41の清掃処理を行う。一方で、定着ローラー41の温度が所定温度以上であると制御部5が判断した場合、制御部5は、定着ローラー41の清掃処理を行わない。
【0053】
ここで、定着ローラー41の清掃処理では、定着ローラー41を回転させる。定着ローラー41の温度が所定温度以上のときに定着ローラー41を回転させると、定着ローラー41の外周面と分離爪43との間に残存するトナーがゴム状となっているため、定着ローラー41の外周面と分離爪43との間にトナーの一部が残存したまま、定着ローラー41の回転方向にトナーが延びた状態になり得る。言い換えると、定着ローラー41の外周面に対するトナーの付着領域が増大し得る。このため、定着ローラー41の清掃処理は、定着ローラー41の温度が所定温度よりも低いときに行われる。
【0054】
ステップS2に移行した場合、図6に示すような流れで定着ローラー41の清掃処理が行われる。以下に、図6を参照し、定着ローラー41の清掃処理について具体的に説明する。以下の説明では、定着ローラー41のうち、その清掃処理の開始時点において分離位置SPに位置していた部分に符号TPを付して対象部分TPと称する。また、図6では、定着ローラー41の清掃処理の開始時点において定着ローラー41の外周面と分離爪43との間に残存していたトナーを黒塗りで模式的に示す。
【0055】
定着ローラー41の清掃処理の開始時点では、図6上図に示すように、定着ローラー41の外周面と分離爪43との間(すなわち、対象部分TP)にトナーが存在する。また、定着ローラー41の温度が所定温度よりも低いため、定着ローラー41の外周面と分離爪43との間のトナーは硬化状態となっている。
【0056】
この状態で、制御部5は、定着ローラー41を正方向とは反対の逆方向に回転させる処理を清掃処理の一処理として行う。これにより、制御部5は、定着ローラー41のうち逆方向の回転開始時点において分離位置SPに位置していた対象部分TPを分離位置SPと定着ニップNとの間に移動させる。制御部5は、対象部分TPが分離位置SPと定着ニップNとの間に移動した後、対象部分TPが定着ニップNに到達する前に定着ローラー41の逆方向の回転を停止する。分離位置SPと定着ニップNとの間に対象部分TPが移動した状態を図6中段図に示す。
【0057】
対象部分TPを分離位置SPと定着ニップNとの間に移動させた後、制御部5は、定着ローラー41を正方向に回転させる処理を清掃処理の一処理としてさらに行う。制御部5は、対象部分TPが分離位置SPを通過するまで、定着ローラー41を正方向に回転させる。制御部5は、対象部分TPが分離位置SPを通過した後、定着ローラー41の正方向の回転を停止する。対象部分TPが分離位置SPを通過した状態を図6下図に示す。ここまでの処理が清掃処理である。
【0058】
図5に戻り、定着ローラー41の清掃処理後、ステップS3に移行する。ステップS1において、定着ローラー41の温度が所定温度以上であると制御部5が判断した場合にも、ステップS3に移行する。すなわち、定着ローラー41の温度が所定温度以上である場合には、定着ローラー41の清掃処理は行われない。
【0059】
ステップS3において、制御部5は、ヒーター410への通電をオンする。すなわち、制御部5は、ヒーター410による定着ローラー41の加熱を開始する。このとき、制御部5は、一対の回転体40を正回転させる。
【0060】
その後、制御部5は、印刷ジョブを実行するためのウォーミングアップ処理(言い換えると、印刷ジョブの準備処理)を行う。ウォーミングアップ処理の一処理として、定着ローラー41の温度を定着制御温度に昇温させる処理が行われる。定着ローラー41の温度を定着制御温度に昇温させるとき、定着ローラー41および加圧ローラー42は正方向に回転する。ウォーミングアップ処理が完了すると、制御部5は、1枚目のシートSに対する画像の印刷を開始する。すなわち、制御部5は、1枚目のシートSの搬送を開始する。
【0061】
本実施形態では、定着ローラー41の清掃処理が行われることにより、定着ローラー41の外周面と分離爪43との間に残存するトナー(ここでは、残存トナーと称する)を容易に除去できる。
【0062】
具体的には、定着ローラー41の清掃処理では、定着ローラー41が逆回転したとき、図6中段図に示すように、分離位置SPと定着ニップNとの間に対象部分TP(残存トナーが付着している部分)が移動する。ここで、清掃処理の開始時点では、定着ローラー41の外周面の方が分離爪43よりも、残存トナーとの接触面積が大きい。このため、定着ローラー41が逆回転すると、残存トナーは定着ローラー41と共に移動し易い。
【0063】
その後、定着ローラー41が正回転し、対象部分TPが分離位置SPを通過する。このとき、ヒーター410による加熱は停止されている。このため、残存トナーの状態は硬化状態である。これにより、図6下図に示すように、対象部分TPが分離位置SPを通過するとき、残存トナーが分離爪43によって除去される。言い換えると、分離爪43は、対象部分TPから残存トナーを剥がす。図6下図では、除去前の残存トナーを破線で示す。
【0064】
その結果、容易に、定着ローラー41の外周面に付着したトナーを除去できる。定着ローラー41の外周面へのトナーの付着を抑制できれば、定着ローラー41の外周面に接触するシートSが汚れることを抑制できる。
【0065】
さらに、定着ローラー41の清掃処理では、対象部分TPが定着ニップNに到達する前に定着ローラー41の逆方向の回転が停止される。これにより、硬化状態のトナーが定着ニップNに進入しないので、加圧ローラー42の外周面に傷が付くことを抑制できる。
【0066】
また、本実施形態では、制御部5は、定着ローラー41の温度が所定温度よりも低いときに定着ローラー41の清掃処理を行う。すなわち、対象部分TPに付着した残存トナーが硬化状態のときに清掃処理が行われる。これにより、定着ローラー41を逆方向に回転させたとき、定着ローラー41の周方向に残存トナーが延び、そのまま定着ローラー41の外周面に付着し続けることを抑制できる。
【0067】
また、本実施形態では、制御部5は、ヒーター410による加熱が停止された状態で、定着ローラー41の清掃処理を行う。これにより、清掃処理の実行中、定着ローラー41の温度が上がって残存トナーが軟化することを抑制できる。
【0068】
なお、印刷ジョブを実行するとき、定着ローラー41を正方向に回転させた状態で、定着ローラー41の温度を定着制御温度に昇温する処理が行われる。すなわち、定着ローラー41の温度が低い状態で、定着ローラー41が正方向に回転する。
【0069】
そこで、定着ローラー41の清掃処理として、定着ローラー41を逆方向に回転させる処理だけが行われてもよい。この場合であっても、定着ローラー41を逆方向に回転させた後、定着ローラー41の温度が所定温度に達する前に定着ローラー41が正方向に回転するので、対象部分TPに付着した残存トナーを除去できる。
【0070】
<清掃処理の実行タイミング>
制御部5は、印刷ジョブを実行するとき(具体的には、シートSの搬送前)に定着ローラー41の清掃処理を行う。したがって、定着ローラー41の清掃処理が行われた場合には、印刷が開始されるまでの待ち時間が長くなる。このため、印刷ジョブを実行するときに毎回のように定着ローラー41の清掃処理が行われると、ユーザーにとっては利便性が悪い。
【0071】
そこで、制御部5は、定着ニップNを通過したシートSの通過枚数を認識(カウント)する。そして、制御部5は、定着ローラー41の清掃処理を前回行ってからの前記通過枚数が予め定められた閾値枚数に達するまで、次の清掃処理を行わない。これにより、定着ローラー41の清掃処理が頻繁に行われることを抑制できる。
【0072】
また、定着ローラー41の清掃処理を実行するか否かは、画像形成装置100の機内環境(たとえば、機内温度および機内湿度)に基づき判断されてもよい。この構成では、画像形成装置100の機内温度および機内湿度(当該機内湿度は相対湿度である)の少なくとも一方を検知する環境センサー53(図3参照)が画像形成装置100に設置される。環境センサー53は「検知部」に相当する。たとえば、環境センサー53は、機内温度および機内湿度の両方を検知する。すなわち、環境センサー53は、温度センサーと湿度センサーとを含む。
【0073】
そして、制御部5は、環境センサー53の検知結果(すなわち、機内温度および機内湿度)が所定条件を満たしているか否かを判断する。環境センサー53の検知結果が所定条件を満たし、かつ、定着ローラー41の温度が所定温度よりも低いとき、制御部5は、定着ローラー41の清掃処理を行う。
【0074】
たとえば、印刷ジョブのウォーミングアップ処理として、予め定められた通常処理が行われる。ここで、機内温度が低いときや機内湿度が高いときには、通常処理に加え、別の処理がさらに行われる。このため、ウォーミングアップ時間が長くなる。機内湿度が高いときには、たとえば、機内の結露(たとえば、感光体ドラム11の結露)を除去する結露対策処理が行われる。ウォーミングアップ時間が長くなる場合には、その旨のメッセージが操作パネル502に表示される。
【0075】
そこで、ウォーミングアップ時間が長くなる場合(すなわち、ウォーミングアップ時間が長くなる旨のメッセージが操作パネル502に表示される場合)、定着ローラー41の清掃処理を追加で行ってもよい。たとえば、機内温度が予め定められた閾値温度(たとえば、18℃)未満のとき、制御部5は、所定条件を満たしていると判断する。また、機内湿度が予め定められた閾値湿度(たとえば、70%)以上のとき、制御部5は、所定条件を満たしていると判断する。すなわち、環境センサー53により検知される機内温度が閾値温度未満または環境センサー53により検知される機内湿度が閾値湿度以上であり、かつ、定着ローラー41の温度が所定温度よりも低いとき、制御部5は、定着ローラー41の清掃処理を行う。これにより、ウォーミングアップ時間が長くなるとき、定着ローラー41の清掃処理も行われる。
【0076】
また、画像形成装置100でジャムが発生したとき、ユーザーはジャム処理作業を行って、ジャムしたシートSを除去する。この場合、ジャム処理作業後、再開した印刷ジョブで出力されたシートSが汚れていると、ジャム処理作業に不手際があったとユーザーが勘違いする可能性がある。
【0077】
そこで、画像形成装置100での印刷ジョブの実行中にジャムが発生したことによって印刷ジョブが中断された後、中断した印刷ジョブが再開されるとき、制御部5は、定着ローラー41の清掃処理を行う。これにより、ジャム発生後に再開される印刷ジョブにおいて、印刷出力されるシートSが汚れることを抑制できる。
【0078】
なお、定着ローラー41の清掃処理が定期的に行われてもよい。このように構成する場合、制御部5は、定着ニップNを通過したシートSの通過枚数を認識する。そして、定着ローラー41の清掃処理を前回行ってからの前記通過枚数が所定枚数に達したとき、制御部5は、実行中の印刷ジョブが完了してから、定着ローラー41の清掃処理を行う。これにより、定着ローラー41が定期的に清掃されるので、定着ローラー41が汚れることを抑制できる。
【0079】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0080】
4 定着装置
5 制御部
40 回転体
43 分離爪
51 サーミスター(温度検知部)
52 定着モーター(駆動部)
53 環境センサー(検知部)
100 画像形成装置
410 ヒーター(加熱部)
N 定着ニップ
S シート
SP 分離位置
TP 対象部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6