(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135621
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】エアノズル
(51)【国際特許分類】
B08B 5/02 20060101AFI20240927BHJP
B05B 3/06 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B08B5/02 Z
B05B3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046404
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000107767
【氏名又は名称】スプレーイングシステムスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100211052
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】須之内 邦明
【テーマコード(参考)】
3B116
4F033
【Fターム(参考)】
3B116AA46
3B116BB32
3B116BB88
3B116CC03
4F033PA16
4F033PB02
4F033PC05
4F033PD06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象物から付着物を効率的に除去する。
【解決手段】一態様では、第1方向に延在する第1噴射孔31と第2方向に延在する第2噴射孔32とを有し、第1噴射孔及び第2噴射孔から噴射された空気流を推力として回転軸線Z周りに回転する回転体3であり、第1方向及び第2方向は回転軸線Zの軸線方向に対して傾斜する、該回転体3と、回転体3を収容する筐体2と、を備え、第1噴射孔の断面積は、第2噴射孔の断面積よりも大きく、軸線方向に対する第2方向の傾斜角は、軸線方向に対する第1方向の傾斜角よりも大きい。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延在する第1噴射孔と第2方向に延在する第2噴射孔とを有し、前記第1噴射孔及び前記第2噴射孔から噴射された空気流を推力として回転軸線周りに回転する回転体であり、前記第1方向及び前記第2方向は前記回転軸線の軸線方向に対して傾斜する、該回転体と、
前記回転体を収容する筐体と、
を備え、
前記第1噴射孔の断面積は、前記第2噴射孔の断面積よりも大きく、
前記軸線方向に対する前記第2方向の傾斜角は、前記軸線方向に対する前記第1方向の傾斜角よりも大きい、エアノズル。
【請求項2】
前記回転体は、第1面と、前記第1面に平行な第2面と、前記第1面及び前記第2面に接続する外周面とを有する中実の円柱ブロック体であり、
前記第1噴射孔及び前記第2噴射孔は、前記第1面と前記第2面との間で前記回転体を貫通する貫通孔である、請求項1に記載のエアノズル。
【請求項3】
前記第1噴射孔及び前記第2噴射孔は、前記第1面と前記第2面との間で互いに交差せずに直線状に延在する、請求項2に記載のエアノズル。
【請求項4】
前記筐体と前記回転体の前記外周面との間に配置された一対の軸受を更に備え、
前記回転体は、前記外周面から前記回転体の径方向に突出する拡径部を有し、
前記一対の軸受は、前記拡径部を隔てて配置されている、請求項2又は3に記載のエアノズル。
【請求項5】
前記軸線方向に対する前記第1方向の傾斜角は、5°以上20°以下であり、
前記軸線方向に対する前記第2方向の傾斜角は、20°以上40°以下である、請求項1又は2に記載のエアノズル。
【請求項6】
前記第1噴射孔から噴射された空気流によって発生する前記回転軸線周りのモーメントの向きは、前記第2噴射孔から噴射された空気流によって発生する前記回転軸線周りのモーメントの向きに一致している、請求項1又は2に記載のエアノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成型品又は機械加工品等の製造工程には、製造時に発生した粉塵等を除去するために対象物を洗浄液により洗浄する工程が含まれることがある。対象物に付着した洗浄液を効率的に除去するために、対象物に空気を噴射するエアノズルが広く利用されている。なお、エアノズルは、対象物に付着した粉塵、油等の清掃にも利用される。
【0003】
例えば特許文献1には、空気を噴射するエアノズルが記載されている。特許文献1に記載のエアノズルは、固定ベース部と、固定ベース部に対して回転自在な円筒形状の回転ベース部と、複数の噴射孔を含み、回転ベース部と共に回転する噴射管部とを備えている。このエアノズルは、複数の噴出口から空気を噴射して、回転本体を回転させながら対象物の水切りを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
空気を噴射する対象物が凹凸形状等の複雑な形状を有する場合、エアノズルから噴射された空気が部分的に行き届かず、対象物の表面に付着した付着物(水、加工油、粉塵等)を完全に除去できないことがある。また、付着物に空気を吹き付けても、対象物の表面から飛散して舞い上がった付着物が落下して対象物に再び付着することがある。
【0006】
したがって、対象物から付着物を効率的に除去することができるエアノズルが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、第1方向に延在する第1噴射孔と第2方向に延在する第2噴射孔とを有し、第1噴射孔及び第2噴射孔から噴射された空気流を推力として回転軸線周りに回転する回転体であり、第1方向及び第2方向は回転軸線の軸線方向に対して傾斜する、該回転体と、回転体を収容する筐体と、を備え、第1噴射孔の断面積は、第2噴射孔の断面積よりも大きく、軸線方向に対する第2方向の傾斜角は、軸線方向に対する第1方向の傾斜角よりも大きい。
【0008】
本態様では、第1方向の傾斜角が相対的に小さいので、対象物の表面に凹凸が形成されている場合であっても、対象物の凹部内に空気を吹き付けることができる。また、第1噴射孔の断面積が第2噴射孔の断面積よりも大きくなっているので、相対的に大きな流量の空気が第1噴射孔から対象物に噴射される。したがって、対象物の付着物を効率的に飛散させることができる。一方、回転軸線の軸線方向に対する第2方向の傾斜角が相対的に大きいので、第1噴射孔から噴射された空気によって飛散した付着物は、第2噴射孔から噴射された空気によって遠方に吹き飛ばされる。したがって、飛散した付着物が対象物に再び付着することが防止され、対象物から付着物が効率的に除去される。
【0009】
一態様では、回転体は、第1面と、第1面に平行な第2面と、第1面及び第2面に接続する外周面を有する中実の円柱ブロック体であり、第1噴射孔及び第2噴射孔は、第1面と第2面との間で回転体を貫通する貫通孔であってもよい。第1噴射孔及び第2噴射孔を貫通孔とすることにより、第1噴射孔及び第2噴射孔の断面積を大きくすることができるので、第1噴射孔及び第2噴射孔を通る空気の圧力損失を抑制することができる。したがって、対象物から付着物をより効率的に除去することができる。
【0010】
一態様では、第1噴射孔及び第2噴射孔は、第1面と第2面との間で互いに交差せずに直線状に延在していてもよい。本態様では、第1噴射孔と第2噴射孔とが互いに交差せずに直線状に延在しているので、第1噴射孔及び第2噴射孔を通る空気の圧力損失を抑制することができる。
【0011】
一態様に係るエアノズルは、筐体と回転体の外周面との間に配置された一対の軸受を更に備え、回転体は、外周面から回転体の径方向に突出する拡径部を有し、一対の軸受は、拡径部を隔てて配置されていてもよい。一対の軸受が拡径部を隔てて配置されることにより、回転軸の軸線方向への移動が規制され、回転体が筐体から抜け出ることが防止される。
【0012】
一態様では、軸線方向に対する第1方向の傾斜角は、5°以上20°以下であり、軸線方向に対する第2方向の傾斜角は、20°以上40°以下であってもよい。第1噴射孔及び第2噴射孔の傾斜角を上述した範囲にすることにより、対象物から効率的に付着物を除去することができる。
【0013】
一態様では、第1噴射孔から噴射された空気流によって発生する回転軸線周りのモーメントの向きは、第2噴射孔から噴射された空気流によって発生する回転軸線周りのモーメントの向きに一致していてもよい。本態様では、回転体に効率的に回転力を付与することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、対象物から付着物を効率的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係るエアノズルの下面図である。
【
図2】
図1のA-A線に沿ったエアノズルの断面図である。
【
図4】
図3のB-B線に沿った回転体の断面図である。
【
図5】
図3のC-C線に沿った回転体の断面図である。
【
図7】エアノズルから噴射される空気流の方向を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において同一要素には同一符号が付され、重複する説明は省略される。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率及び角度等は図面に記載のものに限定されない。
【0017】
図1は、一実施形態に係るエアノズル1の概略的な下面図である。
図2は、
図1のA-A線に沿ったエアノズル1の断面図である。エアノズル1は、対象物を乾燥、清掃又は冷却するために対象物に空気を噴射する。対象物は、例えば樹脂成形品又は金属加工品である。
【0018】
樹脂成形品としては、樹脂製の容器、ボトル、自動車部品、包装材料、その他の樹脂部品が例示される。金属加工品としては、金属製の自動車部品、航空機部品、半導体部品、電子部品、その他の金属部品が例示される。これらの対象物は、加工時に発生する粉塵等を除去するために洗浄液で洗浄される。エアノズル1は、対象物に高速の空気を吹き付けて、対象物から洗浄液を除去する。なお、エアノズル1は、粉塵、加工油等、他の付着物を対象物から除去するために利用することも可能である。
【0019】
図1及び
図2に示すように、エアノズル1は、筐体2、回転体3及び一対の軸受4を備えている。筐体2は、本体部5及びキャップ6を含み、回転体3の少なくとも一部を収容する。本体部5は、中空の略円筒形状を有し、ステンレス等の金属によって構成されている。本体部5の中心軸線は、後述する回転体3の回転軸線Zに一致している。本体部5は、圧縮空気の供給口8を有している。供給口8は、本体部5の内部空間Sに連通している。
【0020】
本体部5は、基端部11、先端部12及びテーパ部13を含んでいる。基端部11は、回転軸線Zに沿った方向(以下、「軸線方向」という。)に延在する略円筒形状を呈し、圧縮空気の供給口8を提供する。先端部12は、軸線方向に延在する略円筒形状を呈し、基端部11の内径よりも大きな内径を有している。テーパ部13は、基端部11と先端部12との間に設けられている。テーパ部13の内径は、基端部11から先端部12に向かうにつれて大きくなっている。
【0021】
基端部11及び先端部12の外周面には、ネジ山が形成されている。基端部11には、不図示の供給管が接続される。当該供給管は、基端部11のネジ山に螺合して、基端部11に連結される。当該供給管は、コンプレッサ等の圧縮空気供給装置に接続され、本体部5の内部空間Sに圧縮空気30を供給する。
【0022】
キャップ6は、ステンレス等の金属によって構成されている。キャップ6は、環状部15及び筒状部16を含んでいる。環状部15は、回転軸線Zを中心とする略円環形状を有している。環状部15の中央には、円形の開口15aが形成されている。筒状部16は、中空の略円筒形状を有し、環状部15の外縁から軸線方向に立設されている。筒状部16の内周面には、ネジ溝が形成されている。筒状部16のネジ溝が先端部12のネジ山に螺合されることにより、キャップ6が本体部5に締結される。
【0023】
回転体3は、筐体2内で回転軸線Z周りに回転する回転チップである。一実施形態では、回転体3は、中実のブロック体であり、フッ素樹脂等の樹脂によって構成されている。回転体3は、第1面21、第2面22及び外周面23を有する略円柱形状を有している。第1面21と第2面22は、互いに平行な円形の面である。外周面23は、第1面21と第2面22とを接続している。回転体3の外周面23の外径は、環状部15の開口15aの直径よりも僅かに小さくなっている。
【0024】
回転体3の一部は、開口15aを介して筐体2の外側に突出している。したがって、回転体3の第1面21は筐体2の内部空間Sに配置され、回転体3の第2面22は筐体2の外部に露出している。回転体3は、外周面23から回転体3の径方向に突出する拡径部24を更に有している。拡径部24は、外周面23の外径よりも大きな外径を有している。すなわち、回転体3のうち拡径部24が設けられた部分の径は、局所的に拡大されている。
【0025】
一対の軸受4は、開口15aの直径よりも大きな外径を有し、筐体2の本体部5と回転体3の外周面23との間に設けられている。一対の軸受4は、回転体3を回転軸線Z周りに回転可能に支持する。また、一対の軸受4は、軸線方向において拡径部24を隔てて配置されている。一対の軸受4が拡径部24を隔てて配置されることにより、回転体3の軸線方向の移動が規制され、回転体3が環状部15の開口15aから抜け出ることが防止される。
【0026】
図2に示すように、本体部5の先端部12と拡径部24との間には、封止部材7が設けられている。封止部材7は、略円環形状を呈し、一対の軸受4の間に配置されている。封止部材7は、一対の軸受4の隙間を封止して、供給口8から供給された圧縮空気30が一対の軸受4の間から漏れ出すことを防止する。封止部材7は、例えばフッ素樹脂等の樹脂によって構成されたパッキンである。
【0027】
以下、回転体3についてより詳細に説明する。
図3は、回転体3の上面図である。
図4は、
図3のB-B線に沿った回転体3の断面図である。
図5は、
図3のC-C線に沿った回転体3の断面図である。
図3に示すように、回転体3は、空気を噴射する第1噴射孔31及び第2噴射孔32を有している。後述するように、回転体3は、第1噴射孔31及び第2噴射孔32から噴射された空気流を推力として回転軸線Z周りに回転する。
【0028】
図4に示すように、第1噴射孔31は、軸線方向に対して傾斜する第1方向D1に延在する軸線AX1に沿って延在している。一実施形態では、回転軸線Zに対する軸線AX1の傾斜角θ1(軸線方向に対する第1方向D1の傾斜角)は、例えば5°以上20°以下である。
【0029】
第1噴射孔31は、回転体3の第1面21に開口する第1導入口31aと、回転体3の第2面22に開口する第1噴出口31bとを有している。
図3に示すように、第1導入口31a及び第1噴出口31bは、回転体3の外周面23の接線方向にずれた位置に形成されている。第1噴射孔31は、これら第1導入口31aと第1噴出口31bとの間で軸線AX1に沿って直線状に延在している。すなわち、第1噴射孔31は、第1面21と第2面22との間で回転体3を貫通する貫通孔である。
【0030】
第1噴射孔31は、円形の断面形状を有し、軸線AX1に沿った方向において略一定の直径r1を有している。例えば、第1噴射孔31の直径r1は、例えば4mm以上6mm以下である。なお、第1噴射孔31の断面形状は円形に限定されず、楕円形又は多角形の断面形状を有していてもよい。
【0031】
第1噴射孔31は、第1導入口31aを介して筐体2の内部空間Sに連通している。したがって、供給口8から筐体2内に供給された圧縮空気30は、第1導入口31aから第1噴射孔31内に導入される。第1噴射孔31内に導入された空気は、第1噴射孔31内を流れるときに、第1方向D1に整流される。上述したように、第1方向D1は、軸線方向に対してθ1だけ傾斜した方向である。第1噴射孔31内を流れた空気は、第1噴出口31bから第1方向D1に噴射される。
【0032】
図5に示すように、第2噴射孔32は、軸線方向に対して傾斜する第2方向D2に延在する軸線AX2に沿って延在している。回転軸線Zに対する軸線AX2の傾斜角θ2(軸線方向に対する第2方向D2の傾斜角)は、回転軸線Zに対する軸線AX1の傾斜角θ1よりも大きい。傾斜角θ2は、例えば20°以上40°以下である。
【0033】
第2噴射孔32は、回転体3の第1面21に開口する第2導入口32aと、回転体3の第2面22に開口する第2噴出口32bとを有している。
図3に示すように、第2導入口32a及び第2噴出口32bは、回転体3の外周面23の接線方向にずれた位置に形成されている。第2噴射孔32は、これら第2導入口32aと第2噴出口32bとの間で軸線AX2に沿って直線状に延在している。すなわち、第2噴射孔32は、第1面21と第2面22との間で回転体3を貫通する貫通孔である。第1噴射孔31及び第2噴射孔32は、第1面21と第2面22との間で互いに交差せずに延在している。
【0034】
第2噴射孔32は、円形の断面形状を有し、軸線AX2に沿った方向において略一定の直径r2を有している。例えば、第2噴射孔32の直径r2は、例えば2mm以上4mm以下である。したがって、軸線AX1に垂直な平面に沿った第1噴射孔31の断面積は、軸線AX2に垂直な平面に沿った第2噴射孔32の断面積よりも大きい。なお、第2噴射孔32の断面形状は円形に限定されず、楕円形又は多角形の断面形状を有していてもよい。
【0035】
第2噴射孔32は、第2導入口32aを介して筐体2の内部空間Sに連通している。したがって、供給口8から筐体2内に供給された圧縮空気30は、第2導入口32aから第2噴射孔32内に導入される。第2噴射孔32内に導入された空気は、第2噴射孔32内を流れるときに、第2方向D2に整流される。上述したように、第2方向D2は、軸線方向に対してθ2だけ傾斜した方向である。第2噴射孔32内を流れた空気は、第2噴出口32bから第2方向D2に噴射される。
【0036】
上記のように、第1噴射孔31の断面積は、第2噴射孔32の断面積よりも大きいので、第1噴射孔31のコンダクタンス(空気の流れやすさ)は、第2噴射孔32のコンダクタンスよりも大きい。したがって、供給口8から圧縮空気30が供給されたときに、第1噴射孔31を流れる空気の流量は、第2噴射孔32を流れる空気の流量よりも大きくなる。
【0037】
回転体3は、第1噴射孔31及び第2噴射孔32から噴射された空気流を推進力として、回転軸線Z周りに回転する。一実施形態では、
図3に示すように回転体3の平面視したときに、第1導入口31aの中心から第1噴出口31bの中心へ向かう方向は、第2導入口32aの中心から第2噴出口32bの中心へ向かう方向と反対方向である。したがって、第1噴射孔31から噴射された空気流によって回転体3に発生する回転軸線Z周りのモーメントの向きは、第2噴射孔32から噴射された空気流によって回転体3に発生する回転軸線Z周りのモーメントの向きに一致している。すなわち、
図3に示すように、第1噴射孔31及び第2噴射孔32から噴射された空気流は、回転体3を回転方向Rに回転させる回転力を発生する。したがって、回転体3に回転力が効率的に付与される。
【0038】
次に、エアノズル1の動作について説明する。一実施形態では、
図6に示すように、エアノズル1は、ベルトコンベア等の搬送装置40の上方に固定され、搬送装置40上で搬送方向に搬送される対象物100に空気を噴射する。対象物100は、例えば洗浄液Wで洗浄された樹脂成形品である。
図6に示す例では、対象物100の表面には、複数の凹部101が形成され、当該複数の凹部101内には洗浄液Wが残留している。エアノズル1は、対象物100に空気を吹き付けて、複数の凹部101に残留する洗浄液Wを除去する。
【0039】
洗浄液Wを除去する際には、まずエアノズル1の本体部5に接続された供給管50から筐体2内に圧縮空気30が供給される。筐体2内に供給された圧縮空気30は、第1導入口31a及び第2導入口32aから第1噴射孔31及び第2噴射孔32にそれぞれ導入される。第1噴射孔31に導入された空気は、回転軸線Zに傾斜する軸線AX1に沿って流れ、第1噴出口31bから第1方向D1に噴射される。同様に、第2噴射孔32に導入された空気は、回転軸線Zに傾斜する軸線AX2に沿って流れ、第2噴出口32bから第2方向D2に噴射される。
【0040】
第1噴射孔31及び第2噴射孔32から第1方向D1及び第2方向D2に空気がそれぞれ噴射されると、
図7(a)に示すように、回転体3が軸線AX周りの回転方向Rに回転する。
図7(a)に示すように、第1噴射孔31から対象物100の凹部101に空気が吹き付けられると、凹部101内に残留する洗浄液Wは、圧縮空気により破砕され、対象物100の上方に飛散する。ここで、第1噴射孔31は、回転軸線Zに対して相対的に小さく傾斜する第1方向D1に空気を噴射するので、対象物100の凹部101内に空気を吹き込むことができる。また、第1噴射孔31の断面積は相対的に大きいので、第1噴射孔31から相対的に大きな流量の圧縮空気が噴射される。その結果、凹部101内の洗浄液Wを効果的に飛散させることができる。
【0041】
その後、
図7(b)に示すように、回転軸線Z周りの回転方向Rに更に回転すると、第2噴射孔32から対象物100の凹部101付近に空気が吹き付けられる。第2噴射孔32は、回転軸線Zに対して相対的に大きく傾斜する第2方向D2に空気を噴射するので、対象物100の上方に飛散した洗浄液Wは、第2噴射孔32からの空気によって対象物100の遠方に吹き飛ばされる。したがって、飛散した洗浄液Wが落下して対象物100に再び付着することが抑制される。
【0042】
以上説明したように、エアノズル1では、飛散した洗浄液Wが対象物100に再び付着することが防止されるので、対象物100から洗浄液Wを効率的に除去することができる。対象物100から効率的に水を除去することにより、対象物100の製造ラインを高速化することが可能となる。したがって、対象物100の生産効率を高めることができる。
【0043】
また、エアノズル1では、中実の回転体3に第1噴射孔31及び第2噴射孔32を貫通孔として形成することにより、第1噴射孔31及び第2噴射孔32の断面積を大きくすることができる。その結果、第1噴射孔31及び第2噴射孔32を通る空気の圧力損失を抑制することができ、供給口8から供給すべき圧縮空気30の流量を低減することができる。したがって、供給管50に圧縮空気30を供給するコンプレッサを小型化することが可能となり、水切り処理の省エネルギー化を図ることができる。
【0044】
以上、種々の実施形態に係るエアノズル1について説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形態様を構成可能である。すなわち、上述した実施形態は例示説明を目的とするものであり、本発明の範囲を制限するものではないことに留意すべきである。
【0045】
例えば、上記実施形態では、第1噴射孔31及び第2噴射孔32が中実の回転体3を貫通する貫通孔として形成されているが、第1噴射孔31及び第2噴射孔32は貫通孔でなくてもよい。例えば、回転体3が内部空間を有する中空構造を有し、第1噴射孔31及び第2噴射孔32は当該内部空間から第2面22まで延在する孔であってもよい。この場合であっても、第1噴射孔31が第1方向D1に延在し、第2噴射孔32が第2方向に延在していれば、対象物100から洗浄液Wを効率的に除去することができる。
【0046】
図3に示す実施形態では、回転体3は、一つの第1噴射孔31及び一つの第2噴射孔32を有しているが、一実施形態では、回転体3は、複数の第1噴射孔31及び複数の第2噴射孔32を有していてもよい。この場合、複数の第1噴射孔31及び複数の第2噴射孔32から噴射された空気流は、回転体3の回転軸線Z周りの同じ方向に回転力を付与してもよい。
【0047】
なお、上述した種々の実施形態は、矛盾の生じない範囲で組み合わせることができる。
【0048】
以下に列挙する条項を参照して、本発明を説明する。なお、本発明は、具体的な列挙がなくても、以下の条項を任意の組み合わせで含んでいてもよい。
【0049】
(条項1)
第1方向に延在する第1噴射孔と第2方向に延在する第2噴射孔とを有し、前記第1噴射孔及び前記第2噴射孔から噴射された空気流を推力として回転軸線周りに回転する回転体であり、前記第1方向及び前記第2方向は前記回転軸線の軸線方向に対して傾斜する、該回転体と、
前記回転体を収容する筐体と、
を備え、
前記第1噴射孔の断面積は、前記第2噴射孔の断面積よりも大きく、
前記軸線方向に対する前記第2方向の傾斜角は、前記軸線方向に対する前記第1方向の傾斜角よりも大きい、エアノズル。
【0050】
(条項2)
前記回転体は、第1面と、前記第1面に平行な第2面と、前記第1面及び前記第2面に接続する外周面を有する中実の円柱ブロック体であり、
前記第1噴射孔及び前記第2噴射孔は、前記第1面と前記第2面との間で前記回転体を貫通する貫通孔である、条項1に記載のエアノズル。
【0051】
(条項3)
前記第1噴射孔及び前記第2噴射孔は、前記第1面と前記第2面との間で互いに交差せずに直線状に延在する、条項2に記載のエアノズル。
【0052】
(条項4)
前記筐体と前記回転体の前記外周面との間に配置された一対の軸受を更に備え、
前記回転体は、前記外周面から前記回転体の径方向に突出する拡径部を有し、
前記一対の軸受は、前記拡径部を隔てて配置されている、条項2又は3に記載のエアノズル。
【0053】
(条項5)
前記軸線方向に対する前記第1方向の傾斜角は、5°以上20°以下であり、
前記軸線方向に対する前記第2方向の傾斜角は、20°以上40°以下である、条項1~4の何れか一項に記載のエアノズル。
【0054】
(条項6)
前記第1噴射孔から噴射された空気流によって発生する前記回転軸線周りのモーメントの向きは、前記第2噴射孔から噴射された空気流によって発生する前記回転軸線周りのモーメントの向きに一致している、条項1~5の何れか一項に記載のエアノズル。
【符号の説明】
【0055】
1…エアノズル、2…筐体、3…回転体、4…軸受、21…第1面、22…第2面、23…外周面、24…拡径部、31…第1噴射孔、32…第2噴射孔、D1…第1方向、D2…第2方向、Z…回転軸線、θ1…傾斜角、θ2…傾斜角。