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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135626
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】靴の中敷き
(51)【国際特許分類】
   A43B 17/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A43B17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046410
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】508200090
【氏名又は名称】株式会社マテラ
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 照旺
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050BA02
4F050EA01
4F050HA20
4F050HA26
4F050HA40
4F050HA80
4F050HA87
(57)【要約】
【課題】優れた発熱効果、保温効果、吸湿効果、消臭効果を効率的に発揮する。
【解決手段】靴の中敷き100は、可撓性のベースシート1と、ベースシート1の面方向に拡散して配置されてなる無機粉末10とを有し、ベースシート1は、水分を吸着して発熱する発熱繊維3を含む繊維を立体的に方向性なく集合してなる可撓性の不織布2で、無機粉末10は親水性のある粉末で、ベースシート1は、発熱繊維3の繊維径よりも小さい無機粉末10を発熱繊維3内に埋設してなる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のベースシートと、
前記ベースシートの面方向に拡散して配置されてなる無機粉末とを有し、
前記ベースシートは、水分を吸着して発熱する発熱繊維を含む繊維を立体的に方向性なく集合してなる可撓性の不織布で、
前記無機粉末は親水性のある粉末で、
前記ベースシートは、前記発熱繊維の繊維径よりも小さい前記無機粉末を前記発熱繊維内に埋設してなる靴の中敷き。
【請求項2】
請求項1に記載の靴の中敷きであって、
前記発熱繊維がレーヨン繊維を含むことを特徴とする靴の中敷き。
【請求項3】
請求項1に記載の靴の中敷きであって、
前記無機粉末が親水性のある天然石の粉末であることを特徴とする靴の中敷き。
【請求項4】
請求項1に記載の靴の中敷きであって、
前記無機粉末が、
流紋岩が焼かれた親水性のある粉末状であることを特徴とする靴の中敷き。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の靴の中敷きであって、
前記発熱繊維が、
その表面に、局所的に露出されてなる前記無機粉末を有することを特徴とする靴の中敷き。
【請求項6】
請求項5に記載の靴の中敷きであって、
前記ベースシートの前記不織布が、0.3デシテックス以上の前記発熱繊維であって、
前記発熱繊維に埋設してなる前記無機粉末が、
体積平均径を1μm以下とする粉末であることを特徴とする靴の中敷き。
【請求項7】
請求項5に記載の靴の中敷きであって、
前記発熱繊維が、
0.1重量%以上の前記無機粉末を含むことを特徴とする靴の中敷き。
【請求項8】
請求項5に記載の靴の中敷きであって、
前記不織布がノーバインダー不織布であることを特徴とする靴の中敷き。
【請求項9】
請求項5に記載の靴の中敷きであって、
2以上の前記ベースシートが積層されてなることを特徴とする靴の中敷き。
【請求項10】
請求項5に記載の靴の中敷きであって、
前記ベースシートが折り曲げられてなる折曲部を有することを特徴とする靴の中敷き。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴内に収容される靴の中敷きに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より種々の機能を有する靴の中敷き(インソール)が開発されている。例えば、特許文献1の靴の中敷きは、上層、中層、底層の3つの層を備え、上層は内部にトルマリン鉱石の微粒子を封入した合成高分子繊維の不織布で形成され、中層は内部にトルマリン鉱石の微粒子と活性炭の微粒子と通電性素材とを封入した天然高分子繊維の不織布で形成され、底層はクッション材で形成される。他にも鉄、アルミニウム、ゼオライト鉱石などの遠赤外線照射物質や発熱剤を備える靴の中敷きも存在する。しかし、これら靴の中敷きは、十分な発熱効果、保温効果が得られず、しかも構造が複雑で、材料に起因して高価となる問題がある。また、中敷きに厚みがあり装着した際のサイズアップが大きく使用用途が限定され、他方で薄くするとさらに効果が低下するという問題もある。また、単位体積または単位質量当たりの発熱、保温、吸収、消臭効率が低いという問題もある。またさらに、靴の中敷きには発汗などによる蒸れ対策も必要とされるが、保温性と通気性(吸湿性)は相反するもので両方の効果を十分に満たすことは容易でない問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3069827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上の欠点の少なくともいずれかを解消することを目的に開発されたもので、本発明の目的の一は、優れた発熱効果、保温効果、吸湿効果、消臭効果を効率的に発揮する靴の中敷きを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0005】
本発明のある態様の中敷きは、可撓性のベースシートと、ベースシートの面方向に拡散して配置されてなる無機粉末とを有し、ベースシートは、水分で発熱する発熱繊維を立体的に方向性なく集合してなる可撓性の不織布で、無機粉末は親水性のある粉末で、ベースシートは、発熱繊維の繊維径よりも小さい無機粉末を発熱繊維内に埋設してなる。
【0006】
以上の靴の中敷きは、優れた発熱効果、保温効果、吸湿効果、消臭効果を効率的に発揮する靴の中敷きを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態1に係る靴の中敷きを示す概略斜視図である。
図2】発熱繊維を示す電子顕微鏡写真の線図である。
図3】発熱繊維横断面の一部を示す電子顕微鏡写真の線図である。
図4】焼かれた流紋岩多孔質粉末1μmの粒度分布図である。
図5】紡糸孔の形状例を示す模式図である。
図6】本発明の実施形態2に係る靴の中敷きを示す概略断面図である。
図7】本発明の実施形態3に係る靴の中敷きを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態の靴の中敷きは、可撓性のベースシートと、ベースシートの面方向に拡散して配置されてなる無機粉末とを有し、ベースシートは、水分を吸着して発熱する発熱繊維を含む繊維を立体的に方向性なく集合してなる可撓性の不織布で、無機粉末は親水性のある粉末で、ベースシートは、発熱繊維の繊維径よりも小さい無機粉末を発熱繊維内に埋設してなる。
【0009】
以上の靴の中敷きは、優れた発熱効果、保温効果、吸湿効果を効率的に発揮できる特長がある。第1に、それは靴の中敷きが、不織布の繊維に無機粉末を埋設しているので、遠赤外線を効果的に照射して、足裏から浸透させて足を暖める(温める)ことができるからである。繊維に埋設している無機粉末は、足裏からの放射エネルギーに励起されて遠赤外線を照射するので、足裏からのエネルギーを吸収して遠赤外線を照射できる。また靴の中敷きは、足裏の曲面、凹凸に沿う形状に変形して、広い面積で、足裏に接触または接近して配置されることで、効果的に遠赤外線を照射できる。発熱繊維に埋設される繊維径よりも小さい微細な無機粉末は、単位質量当たりの表面積を大きくして遠赤外線を効率的に照射できる。
【0010】
第2に、靴の中敷きのベースシートの発熱繊維が靴内の水分(湿気)を吸着して繊維自体が発熱(吸湿発熱)することで、靴の中敷きの発熱、保温効果をさらに向上でき、また吸湿、吸水効果も向上できるからである。靴内の空気中及び体表面、靴下内も含め水分(湿気)が存在し、また足からの発汗により、また自覚なしに身体から蒸散される不感蒸散を含め水分が生じ、これらの水分を吸着した発熱繊維自体が発熱して足を暖めることができる。第3に、さらに、発熱繊維と無機粉末が相まって相乗効果で足を暖めることができるからである。発熱繊維の吸湿発熱による発熱が、発熱繊維に埋設される無機粉末を暖め、無機粉末が発熱繊維からの放射エネルギーに励起されて遠赤外線を照射するので、遠赤外線の照射強度を強くして、足裏から浸透させて足を暖めることができるからである。しかも、親水性のある無機粉末は吸湿調整して発熱繊維の吸湿発熱を助長できる。以上のように、足の熱に発熱繊維の吸湿発熱が加わり、発熱繊維と無機粉末が相まって、足と発熱繊維と無機粉末が接触または接近して配置されて無機粉末が遠赤外線をより効率的に照射して、足を暖めることができる。しかもこの靴の中敷きは、靴を履いた足が即時的または短時間でこの発熱、保温効果を認識できる程度に実現できる特長がある。通常の靴内において足の発汗で水分が生じ、また靴内のほぼ密閉された空間内の湿気で蒸れやすく、また靴内で生じた湿気が冷えて水分となることで、保温効果を低下させ、また不快感を生じさせる原因となる。発熱繊維はこれらの水分を吸着することで保温性の低下を防止できる。しかも、ベースシートの発熱繊維は繊維自体が発熱して足を暖め、かつ発熱繊維による発熱が無機粉末をも暖めて遠赤外線の照射強度を向上させて足を暖めることで、中敷きの発熱効果と保温効果を向上できる。発熱繊維は靴内の水分を吸着して発熱し、さらに無機粉末に親水性があり、これらが相まって、本来相反する靴の中敷きの保温性と通気性、吸湿性の効果を同時に実現できる。またさらに、可撓性のあるベースシートは、足裏の曲面、凹凸に沿う形状に変形して、広い面積で、足裏に接触または接近して配置されることで、吸湿発熱した熱を足裏に伝えることができる。また、ベースシートはこの発熱繊維を立体的に方向性なく集合してなる可撓性の不織布であり、靴底内面と足裏との間に不織布が空気層(エアポケット)を形成し、保温効果をより向上、持続できる。無機粉末の遠赤外線照射と、発熱繊維の吸湿発熱と、不織布の空気層の断熱効果が相まって優れた発熱、保温効果を効率的に発揮できる。不織布の空気層は、通気性、調湿性に寄与し、また靴の履き心地を良くできる。また、例えば歩行や起立など靴の中敷き上の足の動きにより、靴の中敷きは足裏でその都度押圧され、または非押圧状態とされ、また押圧の程度が調整、変化されて、また部分的に異なる加圧が加わることで、空気層のエアポケットの形状が変形し、強制的に換気されて、不織布の吸湿、吸水、調湿、通気効果を向上できる。またこのことは、発熱繊維の吸湿発熱を助長できる。
【0011】
以上の靴の中敷きは、消臭、抗菌効果を効率的に発揮できる特長がある。無機粉末は種類に応じて消臭、抗菌性能などを有し、無機粉末を粉末とし、表面積を大きくして無機粉末の消臭、抗菌性能を効率的に発揮できるからである。また、無機粉末は親水性を有する微細な粉末であり、ベースシートの発熱繊維の吸湿発熱も水分、湿気を吸水することで消臭、抗菌効果の向上に寄与できる。
【0012】
以上の靴の中敷きは、遠赤外線照射、消臭、殺菌効果を効率的に発揮できる特長がある。不織布は薄い中敷きの形成を可能とし、単位体積当たりの遠赤外線照射、消臭、殺菌効果を向上できるからである。また以上の靴の中敷きは、軽量な不織布に微細な無機粉末を埋設することで軽量性を維持でき、足への重量増加による負担増を防止でき、取り扱いが容易である。軽量の靴の中敷きは、単位質量当たりの遠赤外線照射、消臭効果を向上できる。また、靴の中敷きの厚み、形状、サイズを容易に調整できることは、足と靴内面との隙間調整、靴の底または靴内側面の足との当たり具合や靴擦れ調整、靴の履き心地や靴のサイズ調整のために便利に使用できる。
【0013】
その他にも、以上の靴の中敷きは、無機粉末を含有するにもかかわらず、繊維の強度低下を抑制しながら、不織布の形状を維持し、かつ、足裏にフィットする柔軟性、クッション性を保持できる特長がある。ベースシートに、繊維径よりも小さい無機粉末を繊維内に埋設し、この繊維を立体的に方向性なく集合して不織布することで、無機粉末を内部に含有するにもかかわらず、繊維の強度低下を抑制でき、不織布が可撓性を失うことがないからである。中敷きの上面は足裏の曲面、凹凸に沿う形状に変形でき、また中敷きの下面は、靴底の内面形状、例えば平面、曲面、凹凸などに沿う形状を形成できる。靴の中敷きは、クッション性を保持して地面から受ける足裏への衝撃、振動を吸収できる。不織布は発熱繊維の種類または複数の組み合わせにより、可撓性、クッション性、強度などの調整が可能である。以上の靴の中敷きは、便利に、綺麗に、簡単に使用して足裏に遠赤外線を照射できる特長がある。繊維径よりも小さい無機粉末を発熱繊維内に埋設するため、繊維内に絡み易く、無機粉末が脱落することを防止または減少でき、使用後に無機粉末が足裏や靴下、靴の内面など中敷きに接触する面に付着して残ることないからである。以上の靴の中敷きは、低コストに、能率よく多量生産できる特長がある。不織布は安価に、多量生産が可能であり、低コスト化に資するからである。また、無機粉末を微細な粉末にすることで、効率よく機能性を発揮するとともに、能率よく安定的に多量生産できるからである。以上の靴の中敷きは、ユーザー、用途、靴の種類を問わず、一般屋外用から室内履き、競技用、子供、高齢者、障害者用など広い範囲で有効に使用できる。
【0014】
本発明の他の実施形態の靴の中敷きは、発熱繊維がレーヨン繊維を含むことができる。
【0015】
以上の靴の中敷きは、優れた発熱効果、保温効果を効率的に発揮できる特長がある。レーヨン繊維の断面形状は、不規則なギザギザの鋸歯状の凹凸があり、その繊維の側面にはこの凹凸が繊維軸に沿って細い線条が多く形成される。ナイロンなど断面がほぼ円形で側面が平滑な略円筒状に比べ、レーヨン繊維の表面積が大きく、しかも延伸により埋設された無機粉末が表面に露出され易いことから、無機粉末の露出面積を拡大して遠赤外線照射をより多く、また効率化できる。また、吸湿性、吸水性が高い繊維の方が吸湿発熱の効果が大きく、レーヨン繊維は、優れた吸湿性、吸水性を有し(公定水分率11%)、繊維の吸湿が飽和状態になるまで継続される吸湿発熱の効果を十分に活用できる。また、レーヨン繊維は略円筒状に比べ表面積が大きく、吸湿発熱を効率よく行うことができる。さらに、繊維径を小さくして繊維の表面積を大きくすることで吸湿発熱の効率をより向上できる。またレーヨン繊維の不織布は、レーヨン繊維の吸水性と吸湿性によって、靴の中敷きを足裏に付着でき、レーヨン繊維の柔らかな風合いによって、靴の中敷きを足裏や靴底内面の凹凸に沿って自由に変形させて、足裏に接触または近接して無機粉末とレーヨン繊維を配置することにより無機粉末の遠赤外線照射とレーヨン繊維の吸湿発熱の効果効率を向上できる。レーヨン繊維とレーヨン以外の繊維を組み合わせることで、両者の特徴を活かすことができる。
【0016】
また以上の靴の中敷きは、レーヨン繊維の吸水性と吸湿性、柔らかな風合いにより、快適な接触感触で足裏に広い面積で付着でき、靴の履き心地を向上できる特長がある。またレーヨン繊維の不織布は、靴の中敷きを低コスト化でき、生産性を向上できる特長もある。さらに、レーヨン繊維は生分解性があるので、廃棄も簡単にできる特長がある。
【0017】
本発明の他の実施形態の靴の中敷きは、無機粉末を親水性のある天然石の粉末にできる。
【0018】
以上の靴の中敷きは、繊維に無機粉末を埋設している不織布を能率よく生産して、遠赤外線を照射する特性を実現できる。以上の靴の中敷きは、不織布の繊維に埋設する無機粉末を親水性のある天然石の粉末とするが、例えば天然石は焼くと硬度が高くなって、割れやすくなるので、破砕して小さい粒径の粉末に加工しやすい。不織布の発熱繊維に埋設する無機粉末は、繊維径よりも小さくする必要がある。繊維径よりも大きい無機粉末を埋設する発熱繊維は繊維の強度が低下し、使用状態で脱落したり、微細な繊維が切れて足などに付着するからである。焼いて高硬度となった天然石は、微細な粒子に破断しやすく、粉砕して微細な粉末に加工し、発熱繊維のたとえばレーヨン、アクリレート、アクリル、ポリエステルなど樹脂原料に添加して、これを繊維状に加工することで、無機粉末を埋設して破断されない強度の発熱繊維を能率よく製造でき、この発熱繊維を立体的に方向性なく集合して天然石の無機粉末を繊維に埋設している不織布を製造できるからである。天然石は種類により照射量、強度の異なる遠赤外線を照射し、親水性のある天然石は吸湿性、吸水性の向上に寄与できる。
【0019】
本発明の他の実施形態の靴の中敷きは、無機粉末を流紋岩が焼かれた親水性のある粉末状にできる。
【0020】
以上の靴の中敷きは、優れた発熱効果、保温効果、消臭効果、吸水・調湿効果、抗菌・防腐・防カビ効果を効率的に発揮できる特長がある。それは、この靴の中敷きの不織布に埋設される流紋岩が、遠赤外線照射、吸水、消臭、抗菌、防腐、防カビなどの性質、特性、効果を有し、微細な粉末、さらに焼かれた粉末として埋設することで、これらの効果を効率的に発揮できるからである。流紋岩は、焼いて収縮、緻密化させて硬くできる。さらに流紋岩は、例えば、融点の低い酸化カリウムを数%含有し低融点の酸化カリウム等を溶融して硬くでき、さらに高温で焼き固まって焼結に至ることでより硬くできる。溶融した低融点の酸化カリウム等が融剤となり、また流紋岩を焼結して硬くする。又、流紋岩は、焼く工程で、焼失成分が失われて微細な空隙が発生して多孔質が形成される。多孔質の流紋岩は、内部の微細な空隙が互いに連続する状態となって焼く前に比べ吸水性が向上する。焼いた流紋岩は、表面に水を付着すると表面に水滴となることなく速やかに内部に浸透して吸収される。吸水特性に優れた焼いた多孔質の流紋岩を無機粉末として埋設する繊維は、例えば吸水性のあるレーヨンやアクリル等の化学繊維に埋設して、繊維全体の吸湿、吸水性、すなわち不織布の吸湿、吸水性を向上して、中敷きの吸湿、吸水性、調湿性を向上できる。また、焼いた多孔質の流紋岩は、発熱繊維の吸湿発熱を助長できる。
【0021】
また以上の靴の中敷きは、生産性を向上できる特長がある。多孔質で高硬度に焼かれた流紋岩は、より能率よく微細な粉末に破砕して、不織布の繊維に埋設できる。したがって、この靴の中敷きは、流紋岩を焼き、破砕して得られる粉末を繊維に埋設してより能率よく安定的に多量生産できるからである。
【0022】
本発明の他の実施形態の靴の中敷きは、発熱繊維の表面に、局所的に露出される無機粉末を有することができる。
【0023】
以上の靴の中敷きは、優れた発熱効果、保温効果、吸湿効果、消臭効果、抗菌効果、防カビ効果を効率的に発揮できる特長がある。それは、ベースシートの不織布の繊維表面に局所的に露出する無機粉末を有するからである。靴を履いた足裏(もしくは靴下を履いた足)の直下にベースシートが配置され、発熱繊維内に埋設される無機粉末だけでなく、発熱繊維の表面に局所的に露出する無機粉末が、足裏に接触または接近して配置される無機粉末を増量させて、多数の無機粉末がベースシートの面方向に拡散して配置されて、遠赤外線をより効率的に照射できるからである。また、無機粉末、とくに親水性のある多孔質粉末に独特の作用効果、空気から水分を吸収して保水し、また保水した水分を排出して調湿するので、繊維表面に局所的に露出する無機粉末が足裏に接触またはより接近して配置されることで、吸水、調湿効果を効率よく発揮できる。また、無機粉末、とくに焼いた流紋岩の多孔質粉末が吸水した水分は、焼いた流紋岩に特有の殺菌、抗菌効果によって、保水する水分によるカビの発生を防止するので、繊維表面に局所的に露出する無機粉末が足裏に接触またはより接近して配置されることで、抗菌、防カビ性を向上できる。さらに、繊維表面に局所的に露出する無機粉末が足裏に接触またはより接近して配置されることで、消臭性も向上できる。これら消臭、抗菌、防カビ性の向上は、靴の中敷きを衛生的に使用できる特長も実現する。
【0024】
本発明の他の実施態様の靴の中敷きは、ベースシートの不織布が、0.3デシテックス以上の発熱繊維であって、発熱繊維に埋設してなる無機粉末が、体積平均径を1μm以下とする粉末にできる。以上の靴の中敷きは、繊維に無機粉末を含有しながら、繊維の強度低下を抑制減少できる特長がある。また柔らかい感触、不織布の可撓性を維持できる特長がある。
【0025】
本発明の他の実施態様の靴の中敷きは、0.1重量%以上の無機粉末を含む発熱繊維の不織布を使用することができる。以上の靴の中敷きは、無機粉末の埋設量を多くして、遠赤外線の照射強度を強くでき、発熱、保温、吸水、消臭、抗菌、防カビなど無機粉末の効果をより発揮できる特長がある。
【0026】
本発明の他の実施態様の靴の中敷きは、不織布をノーバインダー不織布とすることができる。以上の靴の中敷きは、繊維の交点をバインダーで結合していないノーバインダー不織布により、柔軟に変形して足裏の曲面、凹凸により広い面積で密着できる。
【0027】
本発明の他の実施態様の靴の中敷きは、2以上のベースシートを積層できる。以上の靴の中敷きは、ベースシートを全体的または部分的に重ねて積層することで、中敷きの厚みの調整でき、また積層部分の空気層を厚くして、発熱性、保温性、吸収性、クッション性、衝撃吸収性、消臭性、抗菌性、防腐・防カビ性、履き心地を向上できる。
【0028】
本発明の他の実施態様の靴の中敷きは、ベースシートが折り曲げられてなる折曲部を有することができる。以上の靴の中敷きは、空気層を形成でき、発熱性、保温性、吸収性、クッション性、衝撃吸収性、消臭性、抗菌性、防カビ性、履き心地を向上できる。例えばベースシートが折り返されるとベースシートが積層され、さらに折り曲げられる部分において、ベースシートが反転し、ベースシートがくるりと回って曲率半径が大きくなることで、空気層を形成できるからである。
【0029】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
(実施の形態1)
【0030】
図1に靴の中敷き100の概略図を示す。さらに、図2は発熱繊維3の断面形状の一例を示す線図、図3は無機粉末10が局所的に発熱繊維3の表面に露出する一例を示す線図、図4は流紋岩多孔質粉末1μmの粒度分布図、図5は紡糸孔の形状例を示す模式図、をそれぞれ示す。
(靴の中敷き100)
【0031】
図1の靴の中敷き100は、可撓性のあるベースシート1を不織布2とし、この不織布2の繊維を発熱繊維3として、発熱繊維3に無機粉末10を埋設している。ベースシート1は、発熱繊維3を立体的に方向性なく集合している可撓性の不織布2で、図3の拡大断面図に示すように、無機粉末10を埋設し、局所的に発熱繊維3の表面に無機粉末10が露出される。本明細書において、靴は、一定範囲で足を覆い、足を靴内に入れることができる履物を示す。靴の中敷き100は、靴内に挿入されて、足裏と靴底内面との間に配置される。
(無機粉末10)
【0032】
無機粉末10は、親水性を有し、温度に励起されて遠赤外線を放射する全ての無機質の微粉末が使用できるが、好ましくは、以下に詳述する天然石を焼いて粉砕した天然石の粉末が適している。ただ、本発明は無機粉末10を天然石の焼いた粉末に限定するものでなく、例えばシリカ粉末やアルミナ粉末など、親水性を有し、遠赤外線を放射する全ての無機粉末を使用できる。
【0033】
無機粉末の天然石は、好ましくは愛媛県東温市で採取される流紋岩を使用する。例えば、ある焼いた流紋岩は、蛍光X線分析・EZスキャンにおいて、以下の成分を含有する。
二酸化珪素(SiO)…………・70.9%
酸化アルミニウム(Al)…16.6%
酸化ナトリウム(NaO)………・3.7%
酸化カリウム(KO)……………・2.8%
三酸化第二鉄(Fe)…………2.2%
酸化カルシウム(CaO)…………3.0%
酸化マグネシウム(MgO)………0.2%
二酸化チタン(TiO)…………・0.2%
【0034】
焼いた流紋岩粉末は、選別された流紋岩を酸化雰囲気で焼いた後、粉砕して粉末状としたものである。流紋岩を焼いて粉砕する方法は、好ましくは流紋岩を砂利程度の粒径に破砕して、酸化雰囲気で焼いた後、粉砕する。砂利状の流紋岩は、内部まで加熱されて焼くことができる。焼いた流紋岩は、例えば収縮、緻密化させて硬くでき、また炭酸ガスを放出して硬く、脆くなるので、能率よく粉砕できる。流紋岩は、融点の低い酸化カリウム等を含有するので、焼く工程で低融点の酸化カリウム等が溶融され、さらに高温に加熱されて流紋岩に含まれる焼失成分が失われて微細な空隙が発生して多孔質となる。流紋岩は、焼かれる工程で、収縮、緻密化されて硬くなり、また溶融した低融点の酸化カリウム等が融剤となって硬くなり、多孔質が形成される。焼いて多孔質で高硬度になる流紋岩は、焼いてない流紋岩に比較して粉砕しやすく、微細な粉末に能率よく加工できる。焼かれて多孔質となった流紋岩は、内部の微細な空隙が互いに連続する状態となって吸水特性も向上する。焼いた流紋岩は、表面に水を付着すると速やかに内部に浸透して吸収され、焼かれてない流紋岩よりも吸水性が向上される。
【0035】
流紋岩を焼く温度は、流紋岩を硬くできる温度、または多孔質を形成できる温度、あるいはまた微粉末に粉砕し易くできる温度とする。焼く温度が低すぎると、内部まで均一に熱を伝えることができず、十分な硬度が得られず、または多孔質が形成されず、あるいは粉砕し易くできない。反対に焼く温度が高すぎると加熱コストが高くなり、また溶融して多孔質な空隙が減少する。流紋岩を焼く温度は、たとえば300℃以上であって900℃以下とする。流紋岩を焼く工程は、例えば、破砕した流紋岩を下り勾配に配置した回転するトロンメルに供給し、トロンメルで撹拌しながら移送して能率よく均一に加熱できる。流紋岩は700℃~900℃で溶融するが、流紋岩には融点の低い物質(例えば酸化カリウム等)が含まれる。低融点の物質が溶融されて消失し、発生する炭酸ガスで微細な空隙が発生して多孔質が形成される。また、焼かれて収縮、緻密化して硬くでき、溶融した低融点の物質が融剤となって硬度を向上でき、また高温で焼き固まって焼結される。
【0036】
流紋岩を焼くことで硬くでき、または多孔質にでき、あるいは微粉末に粉砕し易くできる。例えば、流紋岩を焼くことで、融点の低い酸化カリウム等が溶融して消失し、炭酸ガスが放出されて微細な空隙が発生して、親水性と吸水性のある多孔質が形成される。多孔質の流紋岩は、空気中の水分を吸収して保水し、また乾燥空気に触れると保水した水分を放出して湿度調整する。さらに焼かれて収縮、緻密化して硬くでき、溶融した低融点の物質の一部は融剤となり、さらに焼き固まって硬くなるので、衝撃で効率よく破砕し易くできる。焼いた後の流紋岩を粉末状に粉砕して、親水性と吸水性のある流紋岩多孔質粉末11が得られる。以上の工程で得られた流紋岩多孔質粉末11は、さらにルツボに充填して、酸化雰囲気で焼くことで、全ての多孔質粉末を完全に内部まで熱を伝えて親水性と吸水性に優れた多孔質粉末とすることができる。
【0037】
流紋岩の焼いた粉末は、例えば、焼いて粉砕した後、特定の粒径よりも小さいものを選別して調整することができる。流紋岩多孔質粉末11は、たとえば、焼いて粉砕した粉末から、1μm以下の微粉末を選別して調整できる。上記の方法で焼かれた流紋岩多孔質粉末11は、株式会社マテラ(愛媛、日本)から購入することもできる。
【0038】
流紋岩多孔質粉末11は、発熱繊維3内に埋設され、また局所的に繊維の表面から露出して、空気中の水分を吸水して保水し、また乾燥空気に放出して湿度調整する。無機粉末10は、天然石を焼いた後、不織布2の発熱繊維径よりも小さい粒径に粉砕して繊維に埋設される。流紋岩多孔質粉末11は、粒径が大きすぎると繊維の強度を低下させるため、流紋岩多孔質粉末11の平均粒径は、1μm以下であることが好ましく、0.4μm以下であることがより好ましい。以上の流紋岩多孔質粉末11は、繊維に埋設して発熱繊維3の強度を維持できる。発熱繊維3は、例えば繊維径(正量繊度)を1.4デシテックスとする発熱繊維3に、体積平均径を0.3μmとする無機粉末10を、2重量%埋設して、後述する効果を発揮しながら十分な強度と、柔軟性を実現できる。なお、粉末の平均粒径は、体積平均径(MV;Mean Volume Diameter)を示す。体積平均径は、体積基準の粒度分布における算術平均径であり、例えば、粒度分布を粒子径分布測定装置(例えば、日機装株式会社製、マイクロトラックMT3300)にて解析して算出することができる。
【0039】
図4に流紋岩多孔質粉末11の1μm以下の粒度分布を示す。この粒度分布図における流紋岩多孔質粉末11の1μm以下の測定算出結果は、体積平均径が0.296μm、ピーク粒径が0.257μm、10%径が0.138μm、50%径が0.257μm、90%径(d90)が0.494μmであった。流紋岩多孔質粉末11は、流紋岩を焼いて硬化させた状態で粉砕して製作するので、この図に示すように綺麗な二項分布に近似する綺麗なカーブとなって、発熱繊維3に理想的な状態で埋設できる。
【0040】
無機粉末10は、ベースシート1の発熱繊維3内に埋設される。埋設された無機粉末10は、ベースシート1の面方向及び厚み方向に拡散して配置される。ベースシート1に万遍なく配置される無機粉末10が、遠赤外線を照射して足裏を暖められるからである。無機粉末10は、発熱繊維の表面に局所的に露出されることが好ましい。足裏に接触または近接して遠赤外線を照射して効率よく足裏を暖められるからである。
(ベースシート1、不織布2)
【0041】
不織布2は、繊維を立体的に方向性なく集合してシートにする。不織布2の繊維は、水分を吸着、吸湿して発熱する発熱繊維3を含むものとする。発熱繊維3は、靴内の水分を吸着、吸湿して発熱する繊維をいう。不織布2の繊維は、好ましくは全ての繊維を発熱繊維3とするが、発熱繊維以外の繊維を含むこともできる。発熱繊維3は、好ましくはレーヨン繊維4を使用する。ただし、本発明は不織布の発熱繊維をレーヨン繊維に特定するものではない。不織布2の繊維は、水分を吸着して発熱する発熱繊維3を含む全ての繊維を使用できる。不織布の繊維に発熱繊維以外の繊維を含めてもよい。不織布2の繊維は、例えば、ポリエステル(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ビニロン、アクリル繊維、ポリ乳酸繊維、アクリレート系樹脂などの化学繊維、天然繊維も使用でき、また複数の種類の繊維を組み合わせることもできる。繊維は各々の特性を有する。例えば、ポリプロピレンは、比重が軽く、加工性が高く成型品に適し、強度が高く、なめらかな風合いを有し、疎水性が高く、乾燥が速いなどの特性を有する。アクリル繊維は、吸水性があってふんわりと柔らかいので、足裏に接触付着する感触もよくできる。ポリ乳酸繊維は、生分解性があるので廃棄を簡単にできる。発熱繊維3は、例えば図5に示すように、溶融樹脂などの紡糸孔から押し出し、延伸して、長手方向に伸びる複数列の溝3aを表面に設けてなる外周形状の繊維にできる。発熱繊維3の長手方向に伸びる複数列の溝3aは、発熱繊維3の表面積を大きくして、保温、吸水、消臭、抗菌効果などの効率向上に寄与する。
【0042】
発熱繊維3は、靴内の水分(湿気)を吸着して繊維自体が発熱(吸湿発熱)する。靴内において、靴内の空気中及び体表面、靴下内も含め水分、湿気が存在し、また靴を履いた足からの発汗が生じ、また自覚なしに身体から蒸散される不感蒸散により水分が生じる。これらの靴内の水分、湿気を吸着した発熱繊維3自体が発熱して足を暖めることができる。したがって、靴の中敷き100は、まず、無機粉末10は単独で足裏からの放射エネルギーに励起され、足の放射エネルギーを吸収して、遠赤外線を足裏に照射、浸透させて暖める。次に、吸湿発熱により発熱繊維3自体が発熱して、ベースシート2が足裏を暖める。さらに、図3に示すように、無機粉末10と発熱繊維3が相まって足を暖めることができる。すなわち、靴内の湿気、水蒸気を発熱繊維3が吸収し(太い実線の矢印)、吸湿発熱により発熱繊維3自体が発熱し、発熱繊維3の繊維表面及び内部に埋設された無機粉末10を暖める(細い実線の矢印)。無機粉末10が発熱繊維3からの放射エネルギーに励起され、放射エネルギーを吸収して、よりも強い遠赤外線を照射(鎖線の矢印)して、足裏を暖めることができる。また、遠赤外線を照射で暖められたベースシート1を介して足裏を暖め、発熱、保温効果を向上できる。足裏からの熱エネルギーに、発熱繊維3の吸湿発熱による熱エネルギーが加算され、無機粉末10と発熱繊維3が相まって足を暖めることができ、靴の中敷き100の発熱効果、保温効果を向上できる。
【0043】
通常の靴内において足の発汗で水分が生じ、また靴内のほぼ密閉された空間内の湿気で蒸れやすく、また靴内で生じた湿気が冷えて水滴、水分となることで、保温効果を低下させ、また不快感を生じさせる原因となる。発熱繊維3はこれらの水分を吸着することで保温性の低下を防止できる。しかも、ベースシート1の発熱繊維3は、吸湿発熱により繊維自体が発熱して足を暖め、かつ発熱繊維3による発熱が無機粉末10をも暖めて、遠赤外線の照射強度を向上させて足を暖めることで、靴の中敷き100の発熱効果と保温効果を向上できる。発熱繊維3は靴内の水分を吸着して発熱することで、さらに無機粉末10に親水性があり、これらが相まって、本来相反する靴の中敷きの保温性と通気性、吸湿性の効果を同時に実現できる。吸水性に優れた発熱繊維3は、繊維の吸湿が飽和状態になるまで吸湿発熱が継続され発熱を継続でき、また親水性のある無機粉末10は吸湿調整して発熱繊維3の吸湿発熱を助長できるからである。したがって、足の熱に、発熱繊維3の吸湿発熱が加わり、発熱繊維3と埋設された無機粉末10が相まって、遠赤外線の照射強度を強めることができる。
【0044】
さらに、可撓性のあるベースシート1は、足裏の曲面、凹凸に沿う形状に変形して、広い面積で足裏に接触または接近して配置され、また無機粉末10が発熱繊維3に埋設されて、足と発熱繊維3と無機粉末10が接触または接近して配置できる。粉状の無機粉末10の表面積を大きくし、無機粉末10がベースシート1の面方向に拡散して配置され、しかも繊維表面に局所的に露出される無機粉末10が存在し、また発熱繊維3が無機粉末10を繊維表面に露出し易く、露出面積を大きくして、無機粉末10の遠赤外線をより効率的に照射でき、発熱繊維3の吸湿発熱を伝達して、足裏を暖めることができる。
【0045】
またさらに、ベースシート1はこの発熱繊維3を立体的に方向性なく集合してなる可撓性の不織布2であり、靴の中敷き100が靴底内面と足裏との間に介在することで、ベースシート1の不織布2が空隙(エアポケット)を有する空気層を形成し、保温効果をより向上、持続できる。不織布2の空気層は、通気性、調湿性の向上、吸湿発熱に寄与でき、また靴の履き心地を良くできる。さらにまた、例えば歩行や起立など靴の中敷き100上の足の動きにより、ベースシート1の不織布2は足裏でその都度押圧され、または非押圧状態とされ、また押圧の程度が調整、変化されて、また部分的に異なる加圧が加わることで、空気層のエアポケットの形状が変形し、空気層内の空気が出入りし強制的に換気されて、不織布2の吸湿、吸水、調湿、通気効果を向上でき、発熱繊維3の吸湿発熱を助長して、吸湿発熱の向上、持続に寄与できる。無機粉末10の遠赤外線照射と、発熱繊維3の吸湿発熱と、不織布2の空気層の断熱効果が相まって、さらに以上の構成と作用のいずれかまたは組み合わせにより、優れた発熱、保温効果を効率的に発揮できる。靴の中敷き100の発熱、保温効果は、靴を履いた足が履いた直後から柔らかな温かみが感じられるなど、即時的または短時間で認識できる程度にまで実現できることが、モニター調査において確認された。
【0046】
レーヨン繊維4は、無機粉末10の遠赤外線照射と吸湿発熱に寄与し双方が相まって、中敷きの発熱効果、保温効果を向上できる。図2に示すように、レーヨン繊維4の断面形状は、不規則なギザギザの鋸歯状の凹凸があり、その繊維の側面は、この凹凸が繊維軸に沿って細い溝(線条)4aが複数形成される。ナイロンなど断面がほぼ円形で側面が平滑な略円筒状に比べ、レーヨン繊維4は表面積が大きく、しかも埋設された無機粉末10が繊維表面に露出され易いことから、無機粉末10の遠赤外線照射を強く多く、また効率化できる。また、押し出された繊維を延伸する過程で、繊維の外表面付近に埋設された無機粉末10を表面に露出し易くして、埋設している無機粉末10の露出面積を拡大できる。吸湿発熱は、繊維の吸湿が飽和状態になるまで継続されることから、優れた吸湿性と吸水性のレーヨン繊維4は吸湿発熱効果を有効に活用して、レーヨン繊維4自体を発熱できる。また、レーヨン繊維4は、略円筒状に比べ表面積が大きく、吸湿発熱を効率よく行うことができる。さらに、繊維径を小さくして繊維の表面積を大きくすることで、吸湿発熱の効率をより向上できる。またレーヨン繊維4の不織布2は、レーヨン繊維4の吸水性と吸湿性によって、靴の中敷き100を足裏に付着でき、レーヨン繊維4の柔らかな風合いによって、靴の中敷き100を足裏や靴底内面の凹凸に沿って自由に変形させて、足裏に接触または近接して無機粉末10とレーヨン繊維4を配置することにより無機粉末10の遠赤外線照射とレーヨン繊維4の吸湿発熱の効果効率を向上できる。レーヨン繊維の不織布2の空気層(エアポケット)も保温効果向上を助長する。
【0047】
また、レーヨン繊維4は、優れた吸湿性と吸水性を有し(公定水分率11%)、発汗で蒸れやすい靴内で足裏に接触または接近する靴の中敷き100に適している。レーヨン繊維4は、繊維の風合いが柔らかなので、足裏の凹凸に沿って自由に変形して、足裏に接触して快適な感触、履き心地を実現できる。さらにレーヨン繊維4は生分解性もあるので簡単に廃棄できる。レーヨン繊維4の断面形状、繊維径に対し大きな表面積、局所的に表面に露出する無機粉末10、不織布2の空気層の通気性などは消臭性、抗菌性などを助長する。さらに、レーヨン繊維4の断面構造は、密度の高く組織が密な外側(スキン層)と、密度が低く粗い内側(コア層)を有する。局所的に繊維の表面に露出する無機粉末10は、レーヨン繊維4の組織が密なスキン層に埋設され、無機粉末10の脱落を防止または減少できる。レーヨン繊維4は、他の繊維との相性もよく、他の繊維と組み合わせる混紡が容易であり、また染色液との相性もよく染色も容易な繊維である。
【0048】
発熱繊維3は、例えば、繊維径(正量繊度)を0.3デシテックス(dtex)以上であって5デシテックス以下、好ましくは0.5デシテックス以上であって3デシテックス以下として、立体的に方向性なく集合されて不織布2に加工される。繊維径を0.3デシテックス以下とする不織布2は、無機粉末を埋設して十分な強度を実現することが難しく、また、繊維径を5デシテックス以上とする繊維は、不織布2としてふんわりと柔らかい感触が低下して、素肌に快適に付着することが難しくなる。不織布2は、繊維径を最適には、約1.4デシテックスとして、十分な強度で無機粉末を繊維に埋設でき、また柔らかい感触にできるので、靴の中敷き100として最適な不織布2は、繊維径を1~4デシテックスとする。
【0049】
不織布2は、無機粉末10をベースシートの面方向に拡散して配置し、無機粉末10の一部を局所的に繊維の表面に露出するように埋設する。不織布2は繊維に埋設する無機粉末を多くして放射する遠赤外線強度を強くできるので、好ましくは繊維に0.1重量%以上の無機粉末を埋設する。ただ、繊維は埋設する無機粉末を多すぎると強度が低下して、靴の中敷きとして使用で繊維が破断する弊害が発生するので、好ましくは無機粉末の埋設量を10重量%以下とする。さらに不織布の繊維は、無機粉末10の添加量を0.5重量%以上であって5重量%以下として、十分な強度を保持しながら足裏に有効に遠赤外線を放射できるので、無機粉末10の添加量は好ましくはこの範囲とする。
【0050】
不織布は、バインダーで繊維の交点を接合して製作できるが、好ましくは繊維の結合にバインダーを使用しないノーバインダー不織布が適している。ノーバインダー不織布は、風合いが柔らかくて変形しやすいので、顔面の凹凸に沿って変形して素肌に広い面積で密着して効果的に遠赤外線を照射しながらより快適に使用できる特長がある。ノーバインダー不織布は、無機粉末10を埋設している繊維を立体的に集合し、スパンレース、ニードルパンチなどの方法で繊維を絡ませて製造できる。
【0051】
この靴の中敷き100は、不織布の繊維に天然石の焼いた粉末等の無機粉末10を繊維に埋設しているので、足裏に接触または接近付着して遠赤外線を素肌に放射できる。焼いた流紋岩の多孔質粉末は、足に加温されて遠赤外線を効果的に足裏に放射できる。繊維に埋設している流紋岩の粉末等の無機粉末10は、足からの放射エネルギーに励起されて遠赤外線を照射するので、足に接触または接近して付着されることで、足からのエネルギーを吸収して足裏に遠赤外線を効果的に照射する。無機粉末を繊維径よりも小さい微細な粉末状とすることで、単位面積当たりの表面積を増大して遠赤外線を効率良く照射できる。さらに、無機粉末を局所的に発熱繊維3の表面に露出させて埋設することで、足裏に接触または近接して遠赤外線照射の効果を増大できる。靴の中敷き100は、遠赤外線の照射により足裏から温め、保温できる。
【0052】
また、以上の靴の中敷き100は、ベースシート1である不織布の発熱繊維3に無機粉末10を埋設しているので、靴の中敷きの表面に付着、塗布、吹き付けられた無機粉末のように、無機粉末10が脱落、汗などと共に流れ落ちることがなく、靴の中敷き100は、便利に、綺麗に、簡単に使用して足裏に遠赤外線を照射できる。また接着剤、塗布液などを使用することなく無機粉末10を繊維に埋設、表面露出させることで、接着剤、塗布液などで遠赤外線照射、消臭などの効果・効率低下を防止できる。
【0053】
不織布2に含まれる焼いた流紋岩の多孔質粉末(流紋岩多孔質粉末11)は、優れた保水性を実現して、空気の湿度調整能力を高くでき、さらに吸入した水分によるカビ、細菌の発生を効果的に防止できる特長がある。焼いた無機粉末は多孔質となり、その特性は長期にわたり持続されるため、中敷きを長時間または繰り返し使用することも可能である。また、靴の中敷き100は、焼いた天然石粉末等の無機粉末10を埋設する発熱繊維3を原料とする不織布をベースシート1として使用して能率よく低コストで多量生産できる。靴の中敷き100を、使い捨てとして交換しながら清潔に使用することもできる。
【0054】
靴の中敷きは、含有される物質を特定するものではなく、無機粉末に加えて他の物質を埋設でき、また他の物質を含有するシートを積層することもできる。
【0055】
ベースシート1は、発熱繊維3を立体的に方向性なく集合してなる可撓性の不織布で、発熱繊維3内に無機粉末が埋設されてなる。ベースシート1は、靴の中敷きとして靴内で足裏に直接接触または近接する部分であり、不織布の柔軟性、弾力性、ソフトな接触感は、クッション性を向上させて、また足の形に馴染みやすく、靴内の隙間を埋め、靴内面の足への当たり具合を調整し、靴擦れを緩和し、靴のフィット感、快適感を高めることができる。また、靴のフィット感を高めることで、心理的及び物理的に振動や衝撃の吸収、抑制効果もより向上できる。
【0056】
不織布製のベースシート1は、発熱繊維3が方向性なく集合して網目状(メッシュ)となり、編物に比べて微細な空隙が立体的に存在して、空気層を形成する。靴底内面と足裏との間に、不織布のベースシート1が介在して空気層が形成される。空気層は、一方で通気性や放熱性がよくなるため、靴の中の蒸れや温度、湿度調整に効果的である。また空気層は、他方で断熱性を向上させ、発熱繊維3内に埋設される無機粉末が照射する遠赤外線と共に、発熱、保温効果を向上させる。特に足元が冷えやすい冷え性の人は有用で、寒い季節により顕著になる。また保冷性にも寄与できる。また空気層の通気性のよさが、局所的に発熱繊維3の表面に露出する無機粉末の焼いた粉末の優れた特性である脱臭、消臭効果と抗菌、殺菌作用を活かし、足の発汗で生じる蒸れや臭いを減少抑制でき、抗菌、殺菌作用を発揮できる。空気層は、材料の節約、軽量化にも資する。
【0057】
また、発熱繊維3の不織布は、従来の織る布に比べ製造工程も簡単で、生産性が高く、コスト面で優れ、消費者の経済的負担を小さくでき、使い捨ての素材としても適している。使い捨ての靴の中敷きは、頻繁に交換でき、例えば毎日交換して、衛生的に使用できる。
【0058】
またさらに、図示しないが、不織布は、様々な原材料の組み合わせが可能であり、また製造方法と加工方法によっても不織布に様々な機能を持たせることができる。不織布の繊維の質、材料、目地、組み合わせ、割合などを部分的に他の部分と異なるものにできる。ベースシート1は、単層の不織布2または複数の不織布2を積層でき、また不織布2と異なるシートを追加でき、発熱繊維以外の繊維を組み合わせることもできる。
【0059】
ベースシート1は、発熱繊維3に無機顔料となる焼かれた無機粉末を埋設してなる着色された繊維を立体的に集合している肌色の不織布2で、表面を肌色に着色している。この肌色は優しい風合いで汚れが目立ちにくい着色である。ただし、図示しないが、ベースシート1を肌色以外の色に着色することもできる。着色された繊維は、図3の発熱繊維3の断面線図に示すように、発熱繊維3に、焼かれた流紋岩の多孔質粉末、すなわち流紋岩多孔質粉末11の無機顔料を埋設している。着色された繊維が、表面に長手方向に伸びる複数列の溝を有する延伸された透明の発熱繊維3に埋設されてなる流紋岩多孔質粉末11は、繊維の表面に局所的に露出して、発熱繊維3を着色して着色繊維とし、この着色繊維を集合して肌色の不織布2としている。ここで、透明とは半透明も含むものとする。ベースシート1は、流紋岩多孔質粉末11で肌色に着色され、さらに繊維に埋設している流紋岩多孔質粉末11でもって、遠赤外線を照射し、調湿性を実現すると共に、吸着した水分よるカビの発生をも防止している。図2及び図3は電子顕微鏡で観察した状態を示す線図である。着色繊維の表面及び断面は、例えば、日本電子株式会社製の走査電子顕微鏡JSM-IT700HRで観察できる。
【0060】
肌色の不織布2は、流紋岩多孔質粉末11で肌色に着色された不織布である。不織布2は、発熱繊維3を立体的に方向性なく集合して、繊維の交点をバインダーで接合し、あるいはバインダーを使用することなく、繊維を絡ませてノーバインダーの不織布として製作できる。ノーバインダーの不織布は、バインダーによる柔軟性の低下がなく、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、アセトアルデヒドなど有害な揮発性有機化合物(有害化学物質)を含有することなく、安全に使用できる柔軟な不織布となる。
【0061】
靴の中敷き100は、以上のベースシート1を靴内に装着できる形状に裁断される。図示しないが、各ユーザーがカットして最終のサイズ調整可能なように、ベースシートを所定のサイズ、形状よりも一回り大きいサイズとして裁断できる。不織布2はカットしてサイズ調整が容易である。図1の靴の中敷き100のサイズ、形状は、足裏全面をカバーするフルサイズとする。足裏全面をカバーする靴の中敷き100は、全面の不織布でクッション性を有し、足裏全面に分布された無機粉末10で遠赤外線を照射でき、発熱、保温、吸湿、吸水、消臭、抗菌、殺菌、防カビ効果などを発揮できる。ただし、図示しないが、靴の中敷きは、例えば、つま先、かかとなどをカバーするハーフサイズ、靴擦れ防止用など足裏を部分的にカバーするサイズ及びそれに応じた形状にできる。足裏を部分的にカバーする中敷きは、装着時の靴内のサイズアップを小さく留め、また部分的に留めることができる。さらに例えば、つま先をカバーする中敷きは、冷えやすい足先に遠赤外線を照射して場所的に発熱、保温効果を高めることができる。例えば、かかとをカバーする中敷きは、踵への衝撃吸収性を向上することができる。
【0062】
ベースシート1は、不織布製とすることで、例えば、10~150g/平方メートルの目付けにできる。ベースシート1は、例えば、0.1~5mmの厚みにできる。厚みは、例えば、IS規格に基づき厚み測定器で測定できる。薄いベースシート1による中敷きは、柔軟性を有し、装着時の靴内のサイズアップを小さく留め、また違和感を抑制しながら、薄い中敷きの柔軟性、クッション性で靴の履き心地を向上できる。靴の中敷き100は、厚みのあるベースシート1にもできる。厚みのあるベースシート1は、その厚みでクッション性、衝撃吸収性を向上できる。また、厚みのあるベースシート1は、無機粉末10の含有量を多くして、遠赤外線の照射強度、発熱、保温、吸水、消臭、抗菌性などを向上できる。厚みのあるベースシート1は、吸湿発熱の熱量を増加し、また空気層の厚みを大きくして、遠赤外線照射と共に発熱、保温効果を向上できる。また複数のベースシート1を積層して、さらに厚みを増すことができる。ベースシート1を他のシートや部材などに積層でき、また組み合わせて使用でき、他のシートや部材の特徴を活かすこともできる。
【0063】
ベースシート1は、1枚の不織布2で製作し、あるいは複数の不織布2を積層して製作することができる。図1は、1枚の不織布2を例として1層のベースシート1の側面模式図を示すが、後述するように、ベースシート1は2層、3層、4層など複数の不織布2を積層できる。例えば、薄い不織布2を複数積層して使用することで、同じ厚みの1枚の不織布よりも表面に露出する無機粉末10を多くできる。複数の不織布2を積層しているベースシート1は、少なくともいずれか1枚の不織布2に無機粉末10を含有する。焼かれた無機粉末10によって、遠赤外線を照射させ、保水性を向上、靴内の空気の湿度調整能力を高くし、さらに吸入した水分によるカビの発生を効果的に防止でき、消臭、抗菌効果などを発揮させることができるからである。複数の不織布2を積層しているベースシート1は、好ましくは全ての不織布2に無機粉末10を含有する。ただ、複数の不織布2を積層しているベースシート1は、一部の不織布2にのみ無機粉末10を含有できる。例えば、足裏側に接触または近接して配置される最上層の不織布2のみに無機粉末10を含有して、足裏に遠赤外線を照射できる。また、足裏側と靴底内面側に配置される不織布2に無機粉末10を含有することができ、あるいは、足裏側と靴底内面側の間の中間に積層される1または複数の不織布2に無機粉末10を含有させることができる。
【0064】
焼かれた以上の流紋岩(流紋岩多孔質粉末11)は、麦飯石に比較してより優れた遠赤外線放射特性を有する。以上の流紋岩多孔質粉末11を無機粉末10に使用するこの靴の中敷き100は、流紋岩多孔質粉末11が局所的に露出した状態でユーザーの足裏に接触または接近して配置され、主に足裏の体温で加温されて遠赤外線を放射できる。繊維に埋設している天然石の流紋岩の流紋岩多孔質粉末11は、足裏からの放射エネルギーに励起されて遠赤外線を照射するので、足裏に接近して付着、配置されることで、足裏からのエネルギーを効率よく吸収して足裏に遠赤外線を照射することができる。この特性は、例えば冬期の寒いシーズに靴の中敷きが使用されて、足裏をあたたかく加温できる効果がある。様々な年齢の男女のモニター調査において実際に靴の中敷きを使用した結果、履いた直後から柔らかな温かみが感じられる、発熱、保温効果が数日後など長時間継続すること、足先の冷えやすい冷え性に有用であるなどの発熱、保温効果を実感した回答、また靴の嫌な消臭できた、消臭・脱臭シートとしても使用できるとの回答、また履物の履き心地がよくなったなどの回答を得ることができた。
【0065】
さらに、焼かれた以上の流紋岩は、強い抗菌効果が認められる。以上の流紋岩多孔質粉末11を繊維に埋設し、とくに強い抗菌効果のある流紋岩多孔質粉末11を局所的に露出して埋設してなるベースシート1を備える靴の中敷き100は、抗菌効果が認められる。靴の中敷き100はこの抗菌効果により、別途抗菌成分を添加することなく、安全に使用できる特長がある。
【0066】
さらに、流紋岩多孔質粉末11は、優れた消臭効果が認められる。本発明の実施例で製作された靴の中敷き100は、繊維径(正量繊度)を1.4デシテックスとする発熱繊維3に、体積平均径を0.3μmとする無機粉末10を、2重量%埋設している繊維からなり、以下の優れた消臭効果が実現できる。この靴の中敷き100に使用する不織布2を17.5cm×17.5cmのサイズを対象とした、体臭成分のひとつであるアンモニアガスの除去試験においては、30分後の濃度が90%以上と極めて優れた消臭効果を実現する。この消臭効果は、以上の不織布2を、アンモニアガス濃度を80ppm以上とする5リットルの密閉容器に入れて、30分後のアンモニアガス濃度を測定して測定した。さらに以上の靴の中敷き100の不織布2における、体臭成分のひとつである酢酸ガスの消臭効果を、アンモニアガスと同じ試験方法で測定すると、密閉容器の酢酸ガス濃度を30ppmとして、消臭効果は80%以上となった。
【0067】
靴の中敷き100の以上の優れた消臭効果は、消臭効果のある流紋岩多孔質粉末11を局所的に繊維の表面に露出させることに加えて、発熱繊維3の表面には長手方向に伸びる複数列の溝3aを有する形状として表面積を増大し、さらに押し出された発熱繊維3を延伸することで、埋設している流紋岩多孔質粉末11を繊維表面に局所的に露出させて露出面積を大きくする独特の繊維形状で実現できる。以上の消臭効果のある靴の中敷き100は、薬剤の消臭剤を別途添加することなく、ユーザーの使用や発汗による臭気の発生を防止、減少して快適に使用できる特長がある。
【0068】
さらに、以上の靴の中敷き100は、流紋岩多孔質粉末11の消臭効果と同様に、靴の中敷き100の不織布2に、流紋岩多孔質粉末11による防腐、防カビ効果が実現される。それは、防腐、防カビ効果のある流紋岩多孔質粉末11を局所的に繊維の表面に露出することに加えて、発熱繊維3の表面には長手方向に伸びる複数列の溝3aを有する形状として表面積を増大し、さらに押し出された発熱繊維3を延伸することで、埋設している流紋岩多孔質粉末11の露出面積を拡大することで助長される。不織布2が、カビの発生を防止するために、有害な揮発性有機化合物(例えば、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、アセトアルデヒドなど有害化学物質)を使用することなく、安全にカビの発生を防止できる。例えば、遠赤外線照射材の麦飯石は、カビの発生が問題視されるが、流紋岩多孔質粉末11は、焼く工程で高温に加熱されて微細な空隙内まで完全に殺菌され、さらに流紋岩多孔質粉末11自体の有する殺菌効果によって、微細な空隙に吸収した水分によるカビの発生を防止できる。
【0069】
複数の不織布2を積層している靴の中敷き100は、空気の透過抵抗の小さい、すなわち空隙率の高い2枚以上の不織布を積層して、中敷きの空気の透過抵抗を小さくして、通気できる特長を実現しながら、空気層を積層できる特長がある。積層された不織布2は、互いに分離しないように、例えば外周部を熱溶着や接着剤で接合し、あるいは積層している不織布をニードルパンチで繊維を絡ませて接合し、あるいはまたバインダーを介して積層する不織布を局所的に接合することもできる。
【0070】
靴の中敷き100は、靴内に挿入されて、所定の位置に配置される。図示しないが、靴の中敷きは、靴の内面に接合、接着、連結して位置ずれ及び剥がれ防止できる。接合などの方法は限定されず、例えば、両面テープ、マジックテープ(登録商標)などテープ、接着剤、磁石、引っ掛け、ボタン式などが採用できる。靴の中敷きの接合は、靴の中敷きを容易に交換、取り外しでき、かつ、位置ずれ防止できる方法が好ましい。靴の中敷きの接合は靴の中敷きの底面のほか、側面や上面に接合部を設けて行うことができる。図示しないが、靴の中敷きは、足裏側(靴下側)に接合されることもできる。例えば、サンダル、スリッパ、室内履き、かかとを覆う部分がないまたは低い履物、脱ぎ履きが繰り返される履物、簡易に履くことができるタイプの履物の場合などに便利に使用できる。
【0071】
図示しないが、靴の中敷きは、形状保持力のある芯材を設けることができる。芯材は、中敷き、ベースシートの補強、形状を維持できる強度と弾力性を有する材質、例えば、樹脂、紙、金属などをベースシートの接合できる。芯材は、中敷き、ベースシートの補強、形状を維持できる適切な形状、サイズのものを所定の位置に配置する。芯材は、例えば中央部、周辺部、前方部、後方部、側部などに、線状または面状の樹脂プレートなどの補強材を設けることができ、中敷きの強度や形状維持性を向上できる。
(実施の形態2)
【0072】
実施の形態2に係る靴の中敷き200は、複数のシートを積層してなる。例えば、図6の靴の中敷き200は、上層21、中間層22、底層23の3層のシートを備え、上層21及び底層23を無機粉末10が埋設されたベースシート1とする。靴の中敷き200は、各々上層21、中間層22、底層23を、同じまたは異なる構成、内容、厚み、サイズ、形状、弾力性などのベースシートにできる。
【0073】
複数のベースシート1が積層される場合、好ましくは、少なくとも最上層を、無機粉末10を埋設するベースシート1とする。最上層21を無機粉末10を埋設するベースシート1とすることで、足裏に接触または近接して無機粉末10を配置して遠赤外線を効率よく照射でき、消臭、抗菌など無機粉末10の機能効果を効率的に発揮できるからである。図の靴の中敷き200は、上層21及び底層23の両方を無機粉末10を埋設するベースシート1とする。この中敷き200は、上層21及び底層23の両方に埋設された無機粉末10が遠赤外線を照射でき、また消臭、抗菌などの効果を発揮できる。また、上下不問のリバーシブルとして使用することもできる。図示しないが、上層と低層を同一または異なるベースシートにできる。
【0074】
中間層22は、材質、厚み、形状、サイズ、強度、弾力性などが限定されず、さらに無機粉末10の埋設の有無も問わない。上層21と底層23で挟まれる中間層22に、例えば、芯材、クッション材、吸収体、足裏刺激材などを設けることで、靴の中敷き全体の強度、形状維持性を向上できるほか、クッション性、衝撃吸収性、弾力性、非弾力性、吸湿性、履き心地、足の位置または姿勢を保持するホールド性、消臭性、抗菌性、殺菌性、防カビ性など必要に応じた機能を向上または付加できる。また中間層22は、足裏に応じた形状、厚み、材質などにでき、またツボ押し、指圧効果のある凹凸形状や材質などにすることもできる。中間層22は、上層21及び底層23と同様に不織布2にできるほか、不織布以外のシート、例えばプレート状のシート、中間層の一部または全部をコルク、樹脂プレートなど足の姿勢を適正に保持可能な素材などにできる。中間層22は、均一の厚みまたは部分的に異なる厚みにできる。中間層22は、上層21または底層23と同様のサイズ、形状にでき、上層21または底層23と異なるサイズ、形状にできる。中間層22は、上層と底層で挟まれる全域または部分的に設けることができる。図示しないが、例えば、中間層を土踏まず(アーチ)、かかと、つま先などに部分的に設けることができる。また例えば、中間層は、靴とユーザーの足形に合わせたオーダーメイドとして、ユーザーの足により適合する靴の中敷きを提供できる。また、中間層に限らず、足の姿勢を適正に保持可能な素材などを底層とすることができる。足の姿勢を適正に保持可能な素材などは、3層とは別に底層の下に設けることもできる。
(実施の形態3)
【0075】
実施の形態3に係る靴の中敷き300は、ベースシート1が折り曲げられてなる折曲部30を有する。ベースシート1は、図1の靴の中敷き100のように折り返すことなく、不織布2を平面状として構成できるほか、図7の靴の中敷き300のように、ベースシート1が折り曲げられてなる折曲部30を設けることができる。図7の靴の中敷き300は1層のベースシート1に折曲部30を設けるが、複数層のベースシートに折曲部を設けることもできる。
【0076】
図7の靴の中敷き300は、ベースシート1が180度折り曲げられた折曲部30を左右対称に複数設ける例を示す。ベースシート1が180度折り曲げられた折曲部30は、ベースシート1が積層される部分が付随し、積層されるベースシート1による効果機能向上が認められる。例えば、折曲部30は積層される部分と共に、ベースシート1の厚みを調整できる。また、平坦なベースシート1に折曲部30や積層される部分が加わることで、クッション性、柔らかさ、弾力性を調整でき、強弱、変化をつけることができ、足裏や足側部の部分的な曲面、凹凸、柔らかさに応じた接触具合を実現できる。例えば、接触する足の部分に応じ、柔らかく保持する、面的に支持する、包み込むようにホールドする、足の位置ズレをを防止する、痛みの原因となる局所的に集中する圧を分散するなど、平坦なベースシート1に折曲部30と積層される部分の組み合わせることで、個々の足への対応可能な範囲を拡大できる。また、積層される部分において、ベースシート1、すなわち不織布2の空気層の厚みが増し通気性が向上する。またクッション性、履き心地を向上できる。また、不織布2に埋設される無機粉末10が増加して、遠赤外線照射、消臭効果などを向上できる。さらに、折曲部30において、ベースシート1が折り曲げられて曲率半径が大きくなり、空気層、隙間を形成することで、クッション性、衝撃吸収性、消臭、抗菌効果を向上できる。折曲部30の外周側に引張応力が働き、外周表面に局所的に無機粉末10を露出され易くでき、無機粉末10の効果を効率的に発揮できる。例えば、図7に示す折曲部30は、ベースシート1が180度折り曲げられて反転されるが、折曲部30は図示とは異なる曲がり具合にできる。
【0077】
折曲部30を設ける位置、折り曲げ方向、折り曲げ角度、曲率半径、折り曲げ数、重なり幅などは図示するものに限定されず、中敷きとして要求される機能に応じてベースシート1は折曲部30を設けることができる。図7で示す折曲部30は、ベースシート1の長手方向(縦方向)に設けられる。折曲部30をベースシート1の長手方向に設けることで、折り曲げの長さを確保できる。図示しないが、折曲部は、ベースシートの短手方向(横方向)、さらにベースシートの長手方向または短手方向に対して斜め方向に設けることもできる。
【0078】
さらに、折曲部30を設ける靴の中敷き300は、ベースシート1を折り曲げた状態で、例えば、熱や接着剤などで接合、接着、縫製、挟持などすることで、折り曲げ状態を保持できる。例えば、長手方向の両端付近を接合することで、非接合部分の折り返し部30を分離できる状態で重ねることができる。積層するベースシート1は、空気が透過する実質的な面積を広くしながら、空気の透過抵抗を小さく、すなわちスムーズに通気できる構成にできる。また、折曲部30は、折り曲げた状態でプレスして折り目、折れ線を設けることができ、また折れ線を目安に折り曲げることもできる。例えば、図7に示すように、靴の中敷き300は、ベースシート1の長手方向に伸びる平行な複数列の折れ線で折り返す折曲部30を設けることができ、複数の折曲部30と積層する部分を連続的に形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、優れた発熱効果、保温効果、吸湿効果、消臭効果を効率的に発揮する靴の中敷きとして有効に使用できる。
【符号の説明】
【0080】
100、200、300…中敷き
1…ベースシート
2…不織布
3…発熱繊維
3a…溝(線条)
4…レーヨン繊維
4a…溝(線条)
10…無機粉末
11…流紋岩多孔質粉末
21…上層
22…中間層
23…底層
30…折曲部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7