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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135627
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】GC用ガス監視装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/86 20060101AFI20240927BHJP
   G01N 30/54 20060101ALI20240927BHJP
   G01N 25/18 20060101ALI20240927BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20240927BHJP
   G01N 1/22 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01N30/86 V
G01N30/54 H
G01N25/18 K
G01N1/00 101R
G01N1/22 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046412
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小森 優輝
(72)【発明者】
【氏名】木下 勝吏
(72)【発明者】
【氏名】本郷 那美
【テーマコード(参考)】
2G040
2G052
【Fターム(参考)】
2G040AA03
2G040AB08
2G040BA02
2G040BA23
2G040CA02
2G040DA02
2G040DA12
2G040DA15
2G040DA22
2G040EA02
2G040EA11
2G040EC07
2G040GA05
2G040HA05
2G040ZA03
2G052AA03
2G052AB03
2G052AC19
2G052AD02
2G052AD42
2G052CA04
2G052CA12
2G052HA15
2G052HA17
2G052HC08
2G052HC28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】カラムオーブン内のガス漏れを検知するGC用ガス監視装置を提供する。
【解決手段】GC用ガス監視装置1は、GCカラムオーブン100内の空間からガスを取り出すためのポンプ2を備え、取り出されたガスが流れる測定流路4と、測定流路4を流れるガス中の特定成分を検出するためのガスセンサ6を備える。測定流路4内には、自己加熱素子20が配置され、自己加熱素子20に掛かる電圧を制御して測定流路4を流れるガスの流量に応じた信号を取得する流量検出部8を備え、ポンプ2の動作の正常性を判定するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスをGCのカラムオーブン内の空間から取り出すためのポンプと、
前記ポンプにより前記カラムオーブン内の空間から取り出されたガスが流れる測定流路と、
センシング部が前記測定流路内に露出し、前記測定流路を流れるガス中の特定成分を検出するためのガスセンサと、
前記測定流路内に配置された自己加熱素子を含み、前記自己加熱素子の温度を基準温度にするように前記自己加熱素子に掛かる電圧を制御することによって前記測定流路を流れるガスの流量に応じた信号を取得する流量検出部と、
前記測定流路に流入するガスの温度情報を取得する温度取得部と、
前記ポンプ及び前記流量検出部の動作を制御するための制御部と、を備え、
前記制御部は、前記温度取得部が取得した前記温度情報に基づいて前記流量検出部の前記自己加熱素子の前記基準温度を前記測定流路に流入するガスの温度に応じたものにし、かつ、前記流量検出部が取得した前記信号に基づいて前記ポンプの動作の正常性を判定するように構成されている、GC用ガス監視装置。
【請求項2】
前記測定流路に流入するガスの温度と前記自己加熱素子の前記基準温度として設定すべき温度との相関関係を示す相関データを保持する相関データ保持部を備え、
前記温度取得部により取得された前記温度情報と前記相関データ保持部に保持されている前記相関データを使用して前記基準温度を決定するように構成されている、請求項1に記載のGC用ガス監視装置。
【請求項3】
前記相関データ保持部は、前記自己加熱素子の前記基準温度と前記測定流路に流入するガスの温度との組合せからなる複数の温度条件での前記測定流路を流れるガスの流量と前記信号との相関データを保持しており、
前記制御部は、前記相関データ保持部に保持されている前記相関データを使用して、前記流量検出部により取得された前記信号から前記測定流路を流れるガスの流量を求め、前記測定流路を流れるガスの流量が所定流量以下であるか否かによって前記ポンプの動作の正常性を判定するように構成されている、請求項2に記載のGC用ガス監視装置。
【請求項4】
前記温度取得部は前記流量検出部の前記自己加熱素子とは別に前記測定流路内に配置された温度センサを含む、請求項1に記載のGC用ガス監視装置。
【請求項5】
前記温度取得部の前記温度センサは前記流量検出部の前記自己加熱素子よりも下流の位置に配置されている、請求項4に記載のGC用ガス監視装置。
【請求項6】
前記温度取得部は、前記カラムオーブンの設定温度を、前記測定流路に流入するガスの温度に関する情報として取得するように構成されている、請求項1に記載のGC用ガス監視装置。
【請求項7】
前記測定流路へガスを流入させるための入口流路を備え、前記入口流路は、前記測定流路の流路方向に対して垂直な方向から前記測定流路へガスを流入させるように設けられており、
前記自己加熱素子は長手方向を有し、前記自己加熱素子は、前記長手方向が前記流路方向と平行な平面内にあり、かつ前記測定流路に流入するガスが前記長手方向に垂直な方向から前記自己加熱素子へ吹き付けられるように、前記入口流路から前記測定流路へガスが流入する位置に配置されている、請求項1に記載のGC用ガス監視装置。
【請求項8】
前記入口流路の流路断面の断面積はその前後の流路の流路断面の断面積よりも小さくなっている、請求項7に記載のGC用ガス監視装置。
【請求項9】
前記測定流路はブロック内に形成されており、
前記ブロックは、前記測定流路内へ通じる貫通孔を有し、
前記流量検出部の前記自己加熱素子は、前記ブロックの外面のうち前記貫通孔が設けられている外面に固定された保持基板に保持されており、前記自己加熱素子が前記保持基板と所定間隔を保った状態で前記貫通孔を介して前記測定流路内へ挿入されている、請求項1に記載のGC用ガス監視装置。
【請求項10】
前記流量検出部の前記自己加熱素子と前記保持基板との間に絶縁性及び弾性を有するセプタムが介在しており、
前記流量検出部の前記自己加熱素子から引き出されたリード線が前記セプタムによって覆われているとともに、前記ブロックの前記貫通孔に前記セプタムが嵌め込まれることによって前記貫通孔が封止されている、請求項9に記載のGC用ガス監視装置。
【請求項11】
前記特定成分は水素である、請求項1に記載のGC用ガス監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスクロマトグラフ(GC)におけるガス漏れを監視するためのガス監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
GCではガスがカラムなどの管内を流れるが、カラムが破損していたり配管の接続部分のシールが不十分であったりするとガス漏れが発生し、種々の問題が発生する。特に、GCにおいてキャリアガスとして水素ガスなどの可燃性ガスを使用する場合、カラムオーブン内に可燃性ガスが漏れた状態でカラムオーブンを使用すると爆発等の危険性がある。
【0003】
そこで、水素等のガスを検出するガス検出器を使用してカラムオーブン内における可燃性ガスの漏れを監視することが提案されている(特許文献1参照)。ガス検出器は、カラムオーブン内の空気をポンプで取り込み、取り込んだ空気中の可燃性ガスの濃度を検出する。このようなガス検出器を使用すれば、吸引した空気中の可燃性ガスの濃度が所定濃度以上になったときに、ディスプレイなどにエラーメッセージを表示したり、カラムオーブンの加熱及びキャリアガスの供給を停止したりして事故の発生を防止することができる。
【0004】
ところで、ガス検出器のポンプが故障してカラムオーブン内のガスを正常に取り込むことができなかったときに、可燃性ガスがカラムオーブン内に漏れているにも関わらずガス検出器が可燃性ガスを検出しないという事態が発生する。そのため、ガス検出器へ取り込まれているガスの流量を検出するようにしてポンプが正常に動作しているか否かを監視することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-129013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガス検出器へ取り込まれるガスの流量を検出するための機構として自己加熱素子を用いたものが挙げられる。自己加熱素子を用いたガス流量の検出は、自己加熱素子がガスから奪われる熱量に応じた信号を取得することによって行われる。しかし、GCでは、カラムオーブン内の温度を広い範囲で変化させながら分析する場合があり、そのような場合に分析中の自己加熱素子の温度を常に一定に維持していると、ガス流量を正確に検出することができない可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、カラムオーブン内の温度が大きく変化する環境下においてもカラムオーブンから取り込まれるガスの流量を正確に検出してポンプの動作の正常性を正確に判定できるGC用ガス監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るGC用ガス監視装置は、ガスをGCのカラムオーブン内の空間から取り出すためのポンプと、前記ポンプにより前記カラムオーブン内の空間から取り出されたガスが流れる測定流路と、センシング部が前記測定流路内に露出し、前記測定流路を流れるガス中の特定成分を検出するためのガスセンサと、前記測定流路内に配置された自己加熱素子を含み、前記自己加熱素子の温度を基準温度で一定に維持するように前記自己加熱素子に掛かる電圧を制御することによって前記測定流路を流れるガスの流量に応じた信号を取得する流量検出部と、前記測定流路に流入するガスの温度情報を取得する温度取得部と、前記ポンプ及び前記流量検出部の動作を制御するための制御部と、を備え、前記制御部は、前記温度取得部が取得した前記温度情報に基づいて前記流量検出部の前記自己加熱素子の前記基準温度を前記測定流路に流入するガスの温度に応じたものにし、かつ、前記流量検出部が取得した前記信号に基づいて前記ポンプの動作の正常性を判定するように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るGC用ガス監視装置によれば、測定流路に流入するガスの温度情報を取得する温度取得部を備え、温度取得部が取得した温度情報に基づいて流量検出部の自己加熱素子の基準温度を測定流路に流入するガスの温度に応じたものにするように前記自己加熱素子に掛かる電圧を制御するので、前記測定流路を流れるガスの流量を正確に検出することができる。これにより、ポンプの動作の正常性を正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】GC用ガス監視装置の一実施例を示す概略構成図である。
図2】風量検出部の検出回路の一例を示す回路図である。
図3】同実施例におけるポンプ判定動作の一例を示すフローチャートである。
図4】測定流路に流入するガスの温度がT1のときの各基準温度での流量と信号値との相関関係を示すグラフである。
図5】測定流路に流入するガスの温度がT2(>T1)のときの各基準温度での流量と信号値との相関関係を示すグラフである。
図6】同実施例の測定流路部分の構造の一例を示す部分断面図である。
図7】同実施例のブロックからサーミスタユニットを取り外した状態を示す図である。
図8】同実施例における測定流路へのガスの流入方向と風量検出部のサーミスタの長手方向との関係性を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明に係るGC用ガス監視装置の一実施例について説明する。
【0012】
図1に示されているように、GC用ガス監視装置1は、ポンプ2、測定流路4、ガスセンサ6、流量検出部8、温度取得部10、制御部12、及び相関データ保持部14を備えている。ポンプ2は測定流路4の一端に流体接続されている。測定流路4の他端は配管200を介してGCのカラムオーブン100内の空間と流体連通しており、ポンプ2が駆動されることによってガスがカラムオーブン100内から取り出されて測定流路4内を流れる。
【0013】
ガスセンサ6は、測定流路4を流れるガス中の特定成分を検出するためのセンサである。ガスセンサ6は、センシング部16及び検出回路18を有し、センシング部16が測定流路4内に露出している。この実施例において、ガスセンサ6は、測定流路4を流れるガス中の水素ガス濃度を検出する水素センサである。
【0014】
流量検出部8は、測定流路4を流れるガスの流量を検出するためのセンサであって、サーミスタ20(自己加熱素子)及び検出回路22を備えている。サーミスタ20は流量検出部8のセンシング部であり、測定流路4内においてガスセンサ6のセンシング部16よりも上流の位置に配置されている。検出回路22は、一例として図2に示されているように、サーミスタ20の温度を基準温度にするようにサーミスタ20に掛かる電圧を制御しすることによって測定流路4内を流れるガスの流量に応じた信号を取得するための回路である。測定流路4内をガスが流れていない状態でサーミスタ20の温度を基準温度にするためにサーミスタ20に掛けるべき電圧は予めわかっており、測定流路4内をガスが流れているときのサーミスタ20に掛かる電圧を取得して測定流路4内をガスが流れていないときのサーミスタ20に掛かる電圧との差分をとることで、測定流路4内を流れるガスの流量に応じた信号が取得できる。サーミスタ20の基準温度は測定流路4を流れるガスの温度に応じて設定される。測定流路4を流れるガスの温度に関する情報は後述する温度取得部10によって取得される。
【0015】
温度取得部10は、測定流路4を流れる(測定流路に流入する)ガスの温度を検出するためのものであって、サーミスタ24(温度センサ)及び検出回路26を備えている。サーミスタ24は温度取得部10のセンシング部であり、測定流路4内においてガスセンサ6のセンシング部16よりも下流の位置に配置されている。検出回路26は、サーミスタ24を通じて測定流路4内を流れるガスの温度に応じた信号を取得するための回路である。
【0016】
なお、この実施例において、温度取得部10は、測定流路4を流れるガスの温度の実測値を取得する構成を備えているが、本発明はこれに限定されない。測定流路4に流入するガスの温度はカラムオーブン100内のガスの温度から求めることができるので、温度取得部10はカラムオーブン100のコントローラからカラムオーブン100の設定温度に関する情報を取得する機能によって実現されてもよい。
【0017】
また、この実施例では、測定流路4を流れるガスの温度の実測値を取得する温度取得部10が流量検出部8とは別の構成として設けられているが、流量検出部8に温度取得部10としての機能を兼備させることも可能である。その場合は、サーミスタ20への電圧印加をオフにしてサーミスタ20を温度検出用のセンシング部として機能させ、その後、サーミスタ20へ電圧を印加してサーミスタ20を流量検出用のセンシング部として機能させる。このように、サーミスタ20を温度検出用のセンシング部と流量検出用のセンシング部として間欠的に機能させることで、温度取得部10を省略することができる。
【0018】
制御部12は、ポンプ2、ガスセンサ6、流量検出部8、及び温度取得部10を制御し、カラムオーブン100内のガス中の水素濃度を監視するとともに、ポンプ2が正常に動作しているか否かを判定する。制御部12は、CPU(中央演算装置)を搭載した電子回路によって実現される機能である。
【0019】
相関データ保持部14は、測定流路4を流れるガスの温度と流量検出部8のサーミスタ20の基準温度として設定すべき温度との相関関係を示す相関データ、及び、測定流路4を流れるガスの温度と流量検出部8のサーミスタ20の基準温度の組合せからなる種々の温度条件での測定流路4を流れるガスの流量と検出回路22により取得される信号との予め取得された相関データを記憶している。相関データ保持部4に保持されている相関データは、制御部12によるポンプ2の動作の正常性の判定に使用される。
【0020】
次に、図1とともに図3を参照してポンプ2の動作の正常性の判定動作の一例について説明する。
【0021】
制御部12は、ポンプ2の駆動を開始した後、所定の判定タイミングになると、温度取得部10から測定流路4を流れるガスの温度を取得し(ステップ101)、取得した温度に応じて流量検出部8のサーミスタ20の基準温度を決定する(ステップ102)。ここで、基準温度は、測定流路4を流れるガスの流量の検出感度が十分に高くなるように、すなわち、検出回路22で得られる信号が十分に大きくなるように、相関データ保持部14に保持されている相関データを使用して決定することができる。
【0022】
ここで、温度取得部10により取得されたガスの温度よりも常に一定温度だけ高い温度を基準温度としても、常に十分な流量の検出感度が得られるとは限られない。図4は、測定流路4を流れるガスの温度が比較的低いT1(例えば4℃)である場合にサーミスタ20の基準温度をT1+α1、T1+α2、T1+α3、T1+α4、T1+α5にそれぞれ設定したときの、測定流路4を流れるガスの流量と検出回路22で得られる信号の大きさとの相関関係を示すグラフである。ここで、α1<α2<α3<α4<α5である。
【0023】
図4のグラフからわかるように、基本的に、サーミスタ20の基準温度を高くするほど流量の検出感度が高くなる。そして、ガスの温度が比較的低い温度T1であれば、ガスの温度T1に比較的低い値α1(例えば、α1=40)を加えて基準温度としてもガスの流量を検出するために十分な感度が得られる。一方で、図5のグラフのように、測定流路4を流れるガスの温度が比較的高いT2(例えば75℃)になると、ガスの温度T2にα5を加えてサーミスタ20の基準温度としてもガスの流量を正確に検出するための十分な感度が得られない恐れがある。したがって、サーミスタ20の基準温度を決定するために測定流路4を流れるガスの温度Tに加算される値α(加算温度と称する)は、測定流路4を流れるガスの温度Tの高さに応じて決定することが好ましい。
【0024】
この実施例では、測定流路4を流れるガスの温度Tと加算温度αとの関係性を示すテーブルが相関データとして相関データ保持部14に記憶されており、温度取得部10が測定流路4を流れるガスの温度の情報を取得した際に、制御部12が、取得したガスの温度に応じた加算温度αを相関データ保持部14に保持されている相関データから取得し、サーミスタ20の基準温度T+αを決定する。
【0025】
図3に戻って説明を続ける。上記のようにして制御部12が基準温度を決定すると(ステップ102)、流量検出部8の検出回路22はサーミスタ20の温度が基準温度になるようにサーミスタ20に掛かる電圧を制御する(ステップ103)。制御部12は、流量検出部8の検出回路22から信号を読み取り(ステップ104)、相関データ保持部14に保持されている相関データを使用して測定流路4を流れるガスの流量を計算する(ステップ105)。制御部12は、計算したガスの流量が所定流量未満であるか否かを判定し(ステップ106)、ガスの流量が所定流量未満である場合はポンプ2の動作が異常であると判定する(ステップ107)。一方で、計算したガスの流量が所定流量以上であるとき、制御部12は、ポンプ2が正常に動作していると判定し、次の判定タイミングで、ステップ101~106を繰り返し実行する。
【0026】
次に、GC用ガス監視装置1の測定流路4の部分の構造について図6及び図7を参照しながら説明する。
【0027】
測定流路4は金属製のブロック28内に形成されている。ブロック28には、GCのカラムオーブン100からガスを取り出すための配管200を接続するための接続部32、及び接続部32に接続された配管200からのガスを測定流路4へ導くための入口流路34が設けられている。
【0028】
流量検出部8のサーミスタ20及び温度取得部10のサーミスタ24はそれぞれ、保持基板36の表面(図において上側の面)にセプタム38及び40を介して保持されており、それによって一体的なサーミスタユニット30が構成されている。セプタム38及び40はともに、シリコーンゴム、フッ素ゴムなど絶縁性及び弾力性を有する素材で形成された円柱形状の部材である。サーミスタ20と基板36との間の距離はセプタム38の厚み寸法と同一であり、サーミスタ24と基板36との間の距離はセプタム40の厚み寸法と同一である。サーミスタ20及びサーミスタ24のリード線21及び25はそれぞれ、セプタム38及び40に設けられている貫通孔を通ることによってセプタム38及び40で覆われながら保持基板36の裏面側へ引き出されている。
【0029】
ブロック28の1つの外面(図において下側の面)には測定流路4内へ通じる2つの貫通孔42及び44が設けられている(図7参照)。貫通孔42及び44の内径はそれぞれセプタム38及び40よりも僅かに小さく設計されている。
【0030】
サーミスタユニット30は、セプタム38が貫通孔42に嵌め込まれ、セプタム40が貫通孔44に嵌め込まれるように保持基板36がブロック38の外面に接した状態で固定されることで、ブロック28に対して取り付けられている。
【0031】
保持基板36がブロック28の外面に接した状態で固定されているため、セプタム38及び40の厚み分だけ保持基板36からそれぞれ離れた位置にあるサーミスタ20及び24は測定流路4内の決まった位置に配置されている。なお、サーミスタ20は、測定流路4内の流路幅方向におけるどのような位置に配置されてもよいが、測定流路4内を流れるガスの速度分布を考慮し、ガスの流速が最も大きい測定流路4の断面の中心付近にサーミスタ20が配置されることで検出感度の向上が図れる。
【0032】
セプタム38及び40の外径はそれぞれ貫通孔42及び44の内径よりも僅かに大きいため、貫通孔42及び44の高いシール性が確保される。
【0033】
さらに、リード線21及び25はそれぞれセプタム38及び40によって覆われた状態で保持基板36の裏面まで引き出されているため、リード線21及び25が金属製のブロック28との短絡から保護されている。
【0034】
なお、この実施例では、サーミスタ20及び24が共通の保持基板36で保持されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、サーミスタ20と24が互いに異なる保持基板で保持されていてもよい。また、この実施例では、セプタム38とセプタム40の形状及び寸法が互いに同一であるが、セプタム38と40の形状及び寸法が互いに異なっていてもよい。
【0035】
入口流路34は、測定流路4の流路方向(図において左右方向)に対して垂直な方向(図において上下方向)から測定流路4へガスを流入させるように設けられている。ブロック28の貫通孔42は、測定流路4内において入口流路34の終端と対向する位置に設けられており、測定流路4内における入口流路34からのガスの流入部分にサーミスタ20が配置されている。これにより、入口流路34から測定流路4内に流入するガスがサーミスタ20に対して直接的に吹き付けられる。また、入口流路4の流路断面の断面積はその前後の流路の流路断面の断面積よりも小さく、ガスが測定流路4へ流入する際にその風速が一時的に増加するようになっており、流量検出部8の検出感度の向上が図られている。
【0036】
ここで、測定流路4へのガスの流入方向とサーミスタ20との関係性について、図8を用いて説明する。
【0037】
サーミスタ20は長手方向を有する。この実施例においてサーミスタ20の長手方向は測定流路4の流路方向に対して平行に配置されているが、サーミスタ20の長手方向は、測定流路4の流路方向に平行な平面内にあればよい。サーミスタ20の長手方向が測定流路4の流路方向に平行な平面内にあれば、入口流路34から測定流路4へ流入したガスが、常にサーミスタ20の長手方向に対して垂直な方向からサーミスタ20に対して吹き付けられることになる。これにより、サーミスタ20の長手方向が測定流路4の流路方向に対して平行でない状態で取り付けられても、サーミスタ20の取付け方向による検出感度のばらつきが小さくなる。
【0038】
なお、以上において説明した実施例は、本発明に係るGC用ガス監視装置の実施形態の一例に過ぎない。本発明に係るGC用ガス監視装置の実施形態は以下のとおりである。
【0039】
本発明に係るGC用ガス監視装置の一実施形態は、ガスをGCのカラムオーブン内の空間から取り出すためのポンプと、前記ポンプにより前記カラムオーブン内の空間から取り出されたガスが流れる測定流路と、センシング部が前記測定流路内に露出し、前記測定流路を流れるガス中の特定成分を検出するためのガスセンサと、前記測定流路内に配置された自己加熱素子を含み、前記自己加熱素子の温度を基準温度にするように前記自己加熱素子に掛かる電圧を制御することによって前記測定流路を流れるガスの流量に応じた信号を取得する流量検出部と、前記測定流路に流入するガスの温度情報を取得する温度取得部と、前記ポンプ及び前記流量検出部の動作を制御するための制御部と、を備え、前記制御部は、前記温度取得部が取得した前記温度情報に基づいて前記流量検出部の前記自己加熱素子の前記基準温度を前記測定流路に流入するガスの温度に応じたものにし、かつ、前記流量検出部が取得した前記信号に基づいて前記ポンプの動作の正常性を判定するように構成されている。
【0040】
上記一実施形態の態様[1]では、前記測定流路に流入するガスの温度と前記自己加熱素子の前記基準温度として設定すべき温度との相関関係を示す相関データを保持する相関データ保持部を備え、前記温度取得部により取得された前記温度情報と前記相関データ保持部に保持されている前記相関データを使用して前記基準温度を決定するように構成されている。
【0041】
上記態様[1]において、前記相関データ保持部は、前記自己加熱素子の前記基準温度と前記測定流路に流入するガスの温度との組合せからなる複数の温度条件での前記測定流路を流れるガスの流量と前記信号との相関データを保持しており、前記制御部は、前記相関データ保持部に保持されている前記相関データを使用して、前記流量検出部により取得された前記信号から前記測定流路を流れるガスの流量を求め、前記測定流路を流れるガスの流量が所定流量以下であるか否かによって前記ポンプの動作の正常性を判定するように構成されていてもよい。
【0042】
上記一実施形態の態様[2]では、前記温度取得部は前記流量検出部の前記自己加熱素子とは別に前記測定流路内に配置された温度センサを含む。この態様[2]は上記態様[1]と組み合わせることができる。
【0043】
上記態様[2]において、前記温度取得部の前記温度センサは前記流量検出部の前記自己加熱素子よりも下流の位置に配置されていてもよい。
【0044】
上記一実施形態の態様[3]では、前記温度取得部は、前記カラムオーブンの設定温度を、前記測定流路に流入するガスの温度に関する情報として取得するように構成されている。この態様[3]は上記態様[1]と組み合わせることができる。
【0045】
上記一実施形態の態様[4]では、前記測定流路へガスを流入させるための入口流路を備え、前記入口流路は、前記測定流路の流路方向に対して垂直な方向から前記測定流路へガスを流入させるように設けられており、前記自己加熱素子は長手方向を有し、前記自己加熱素子は、前記長手方向が前記流路方向と平行な平面内にあり、かつ前記測定流路に流入するガスが前記長手方向に垂直な方向から前記自己加熱素子へ吹き付けられるように、前記入口流路から前記測定流路へガスが流入する位置に配置されている。この態様[4]は、上記態様[1]、[2]及び/又は[3]と組み合わせることができる。
【0046】
上記態様[4]において、前記入口流路の流路断面の断面積はその前後の流路の流路断面の断面積よりも小さくなっていてもよい。
【0047】
上記一実施形態の態様[5]では、前記測定流路はブロック内に形成されており、前記ブロックは、前記測定流路内へ通じる貫通孔を有し、前記流量検出部の前記自己加熱素子は、前記ブロックの外面のうち前記貫通孔が設けられている外面に固定された保持基板に保持されており、前記自己加熱素子が前記保持基板と所定間隔を保った状態で前記貫通孔を介して前記測定流路内へ挿入されている。この態様[5]は、上記態様[1]-[4]と組み合わせることができる。
【0048】
上記態様[5]において、前記流量検出部の前記自己加熱素子と前記保持基板との間に絶縁性及び弾性を有するセプタムが介在しており、前記流量検出部の前記自己加熱素子から引き出されたリード線が前記セプタムによって覆われているとともに、前記ブロックの前記貫通孔に前記セプタムが嵌め込まれることによって前記貫通孔が封止されている。
【0049】
上記一実施形態の態様[6]では、前記特定成分は水素であってもよい。この態様[6]は、上記態様[1]-[5]と組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 GC用ガス監視装置
2 ポンプ
4 測定流路
6 ガスセンサ
8 流量検出部
10 温度取得部
12 制御部
14 相関データ保持部
16 センシング部
18,22,26 検出回路
20,24 サーミスタ
21,25 リード線
28 ブロック
30 サーミスタユニット
32 配管接続部
34 入口流路
36 保持基板
38,40 セプタム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8