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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135631
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】無人飛行体
(51)【国際特許分類】
   B64U 10/13 20230101AFI20240927BHJP
   B64U 50/11 20230101ALI20240927BHJP
   B64U 50/19 20230101ALI20240927BHJP
   B64U 30/24 20230101ALI20240927BHJP
   B64U 30/21 20230101ALI20240927BHJP
【FI】
B64U10/13
B64U50/11
B64U50/19
B64U30/24
B64U30/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046416
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】515102770
【氏名又は名称】ルーチェサーチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 豊
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 孝治
(57)【要約】
【課題】内燃機関により回転するプロペラを有する無人飛行体において、飛行姿勢の安定性を向上させる。
【解決手段】無人飛行体100は、複数の電動モータ20によりそれぞれ回転する複数の電動プロペラ21と、機体本体10に支持されるエンジン40と、機体本体10の上側に位置し、エンジン40により回転する第1機械プロペラ51と、第1機械プロペラよりも下側に位置し、エンジン40により回転し、第1機械プロペラ51により生成されかつ機体本体10に入力される回転トルクを打ち消す回転トルクを発生させるための回転体(第2機械プロペラ52)とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人飛行体であって、
機体本体と、
前記機体本体から延びる複数のアームと、
前記複数のアームにそれぞれ設けられる複数の電動モータと、
前記複数の電動モータによりそれぞれ回転する複数の電動回転式プロペラと、
前記複数の電動モータを駆動させる電力が蓄積されたバッテリと、
前記機体本体に支持される内燃機関と、
前記機体本体の上側に位置し、前記内燃機関により回転する機械回転式プロペラと、
前記機械回転式プロペラよりも下側に位置し、前記内燃機関により回転し、前記機械回転式プロペラにより生成されかつ前記機体本体に入力される回転トルクを打ち消す回転トルクを発生させるための回転体とを備えることを特徴とする無人飛行体。
【請求項2】
請求項1に記載の無人飛行体において、
前記回転体は、前記機体本体の上側でかつ前記機械回転式プロペラの下側の位置に位置しており、
前記機械回転式プロペラの回転軸と前記回転体の回転軸とは同軸であることを特徴とする無人飛行体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の無人飛行体において、
前記バッテリは、前記機体本体の上側でかつ前記回転体の下側の位置に配置され、
前記内燃機関は、前記機体本体の下側に配置されていることを特徴とする無人飛行体。
【請求項4】
請求項3に記載の無人飛行体において、
前記バッテリは2つあり、
前記2つのバッテリは、前記機体本体を進行方向の前側から見たときに、前記機械回転式プロペラの回転軸に対して略対称に配置されており、
前記内燃機関は、前記機械回転式プロペラの回転軸の延長線上に配置されていることを特徴とする無人飛行体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の無人飛行体において、
前記機械回転式プロペラは、前記各電動回転式プロペラよりも大型のプロペラであることを特徴とする無人飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人飛行体に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、駆動源として電動モータと内燃機関との両方を備える、所謂ハイブリッド型の無人飛行体が様々な分野で利用されるようになってきている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、内燃機関と、内燃機関に連結され推力を発生するプロペラと、内燃機関に連結され電力を発生させる発電機と、発電機による電力により動作する電動機と、電動機に連結され推力を発生するプロペラとを有する無人飛行体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-137092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、内燃機関によりプロペラが回転するときには、該プロペラの回転により発生する回転トルクが無人飛行体の機体本体に入力される。内燃機関によって生成されるトルクは比較的大きいため、前記回転トルクも比較的大きい。
【0006】
特許文献1に記載の無人飛行体は、前記回転トルクを打ち消す機構が全く無く、前記回転トルクが入力された機体本体は、前記回転トルクにより回転しようとする。これにより、飛行中に機体本体の姿勢が不安定な状態になってしまう。
【0007】
本発明の主な目的は、内燃機関により回転するプロペラを有する無人飛行体において、飛行姿勢の安定性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、無人飛行体を対象として、機体本体と、前記機体本体から延びる複数のアームと、前記複数のアームにそれぞれ設けられる複数の電動モータと、前記複数の電動モータによりそれぞれ回転する複数の電動回転式プロペラと、前記複数の電動モータを駆動させる電力が蓄積されたバッテリと、前記機体本体に支持される内燃機関と、前記機体本体の上側に位置し、前記内燃機関により回転する機械回転式プロペラと、前記第1の機械回転式プロペラよりも下側に位置し、前記内燃機関により回転し、前記機械回転式プロペラにより生成されかつ前記機体本体に入力される回転トルクを打ち消す回転トルクを発生させるための回転体とを備える、という構成とした。
【0009】
この構成によると、機械回転式プロペラにより生成されかつ機体本体に入力される回転トルクは、回転体の回転により打ち消される。このため、機械回転式プロペラにより生成される回転トルクにより機体本体が回転してしまうのを抑制することができる。この結果、無人飛行体の飛行姿勢の安定性を向上させることができる。
【0010】
前記無人飛行体において、前記回転体は、前記機体本体の上側でかつ前記機械回転式プロペラの下側の位置に位置しており、前記機械回転式プロペラの回転軸と前記回転体の回転軸とは同軸である、という構成でもよい。
【0011】
この構成によると、機械回転式プロペラにより生成される回転トルクを、回転体の回転により打ち消す効果が向上する。これにより、無人飛行体の飛行姿勢の安定性をより効果的に向上させることができる。
【0012】
前記無人飛行体の一実施形態では、前記バッテリは、前記機体本体の上側でかつ前記回転体の下側の位置に配置され、前記内燃機関は、前記機体本体の下側に配置されている。
【0013】
すなわち、バッテリ及び内燃機関は比較的重量が大きい。このため、バッテリ及び内燃機関が機体本体に対して上下に分かれて配置されていることにより、無人飛行体の重量バランスを取りやすくなる。この結果、無人飛行体の飛行姿勢の安定性をより向上させることができる。
【0014】
また、バッテリと内燃機関とを機体本体に対して上下方向に分けて配置することにより、内燃機関からバッテリへの伝熱を出来る限り抑えることができる。これにより、バッテリの長寿命化を図ることができる。
【0015】
さらに、一般に、機体本体の下側は機体本体の上側と比較して配置される部品点数が少ない。このため、内燃機関を機体本体の下側に配置することにより、無人飛行体の飛行時において、内燃機関の周囲を走行風が通り抜けやすくなる。この結果、内燃機関の冷却性能を向上させることもできる。
【0016】
前記一実施形態において、前記バッテリは2つあり、前記2つのバッテリは、前記機体本体を進行方向の前側から見たときに、前記機械回転式プロペラの回転軸に対して略対称に配置されており、前記内燃機関は、前記機械回転式プロペラの回転軸の延長線上に配置されている、という構成でもよい。
【0017】
この構成によると、無人飛行体の重量バランスをより取りやすくなる。この結果、無人飛行体の飛行姿勢の安定性を一層向上させることができる。
【0018】
前記無人飛行体において、前記機械回転式プロペラは、前記各電動回転式プロペラよりも大型のプロペラである、という構成でもよい。
【0019】
すなわち、一般に、電動モータによって生成されるトルクは、内燃機関によって生成されるトルクと比べると小さい。そして、各電動回転式プロペラが、機械回転式プロペラに対して相対的に小型のプロペラである場合には、機械回転式プロペラにより生成されかつ機体本体に入力される回転トルクを、各電動回転式プロペラによって打ち消すことはより困難になる。このため、回転体により、機械回転式プロペラにより生成される回転トルクを打ち消すことで、無人飛行体の飛行姿勢の安定性を向上させるという効果をより適切に発揮することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、内燃機関により回転するプロペラを有する無人飛行体において、飛行姿勢の安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る無人飛行体を前側かつ斜め上側から見た斜視図である。
図2】無人飛行体を前側から見た正面図である。
図3】無人飛行体を上側から見た平面図である。
図4】無人飛行体を右側から見た右側側面図である。
図5図3のV-V線で切断した断面図である。
図6】エンジン本体から第1及び第2機械回転式プロペラへ動力を伝達する機構を示す概略図である。
図7】本実施形態に係る無人飛行体の変形例を示す右側側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る無人飛行体について説明する。尚、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0023】
また、以下の説明においては、「水平」は、地面(あるいは海面)に対して実質的に平行な方向を意味する。
【0024】
また、本実施形態は、主な動力源として、電動モータと、内燃機関としてのエンジンとを有する無人飛行体を対象とする。特に断りのない限り、無人飛行体が上昇する方向を「上」、その反対方向を「下」、無人飛行体が前進する方向を「前」、その反対方向を「後」、機体本体を「前」から見て左手側を「左」、機体本体を「前」から見て右手側を「右」と呼ぶ。
【0025】
図1は、本実施形態に係る無人飛行体100を示す。無人飛行体100は、複数(本実施形態では、8つ)のプロペラを備える無人マルチコプターとして構成されている。複数のプロペラのうち一部は電動モータ20により回転する電動回転式プロペラ21(以下、電動プロペラ21という)であり、複数のプロペラのうち残部は、エンジン30により回転する機械回転式プロペラ50(以下、機械プロペラ50という)である。つまり、無人飛行体100は、動力源として電動モータ20とエンジン40とを有するハイブリッド型の無人飛行体である。無人飛行体100は、無線による遠隔操作が可能になっている。尚、本実施形態では、機械プロペラ50は浮上用のプロペラであり、電動プロペラ21は旋回などの走行制御用のプロペラである(厳密には、電動プロペラ21の推力も若干浮上に利用している)。
【0026】
無人飛行体100は、図1に示すように、機体本体10と、機体本体10から延びる複数(本実施形態では6本)のアーム11とを有する。機体本体10は、無人飛行体100の中央部に位置し、複数のアーム11は、機体本体10を中心として水平方向に放射状に広がっている。各アーム11は、水平方向に等間隔に配置されている。機体本体10及び各アーム11は、例えば炭素繊維やアルミニウム等の軽量の材料からなるパイプ材により形成されていてもよい。尚、複数のアーム11のうち、左前側に延びるアーム11,右前側に延びるアーム11、及び後側に延びるアーム11には、着地状態で無人飛行体100を支持する支持脚12が取り付けられている。
【0027】
各アーム11の先端には、電動モータ20と、該電動モータ20により回転する電動プロペラ21がそれぞれ設けられている。各電動モータ20は、モータ軸が上下方向に延びるようにそれぞれ配置されている。各電動プロペラ21は、図1に示すように、各電動モータ20のモータ軸の上端部にそれぞれ取り付けられている。各電動プロペラ21は、例えば2枚の羽根をそれぞれ有する。各電動プロペラ21の各回転面は、図2及び図4に示すように、同一の平面内に位置していてもよい。尚、各電動モータ20の回転数は、例えば最大で8000rpmである。
【0028】
図1図4に示すように、機体本体10の上側の部分には、各電動モータ20を駆動させる電力が蓄積された2つのバッテリ22が載置されている。2つのバッテリ22は、機体本体10の上側でかつ2つの機械プロペラ50の下側の位置にそれぞれ位置する。各バッテリ22は、それぞれ空冷式であり、無人飛行体100の飛行時の走行風により冷却される。
【0029】
図1及び図3に示すように、無人飛行体100の上側から見て、機体本体10の中央部には、エンジン40、該エンジン40により回転する2つの機械プロペラ50、及びエンジン40により生成された動力を各機械式プロペラ50に伝達する伝達機構60を、機体本体10に対して支持するエンジン支持体70が取り付けられている。エンジン支持体70は、図1図2、及び図4に示すように、機体本体10の中央部を上下方向に貫通している。エンジン支持体70は、ボルト等により機体本体10の下側の部分に取付固定されている。
【0030】
以下、図1図6を参照して、機械式プロペラ50の駆動系について詳細に説明する。尚、図1図6では、エンジン40の一部(吸気系及び排気系)については詳細な図示を省略している。
【0031】
エンジン40は、図2及び図4に示すように、機体本体10の下側でエンジン支持体70に支持されている。より具体的には、エンジン40は、左右方向における2つのバッテリの間の位置でかつ機体本体10の下側の位置でエンジン支持体70に支持されている。
本実施形態において、エンジン40は、ユニフロー式の2ストロークエンジンである。エンジン40の燃料は、例えば、ガソリン、天然ガス、アルコール等である。
【0032】
エンジン40は、図5に示すように、気筒41aを構成するシリンダブロック41を有する。エンジン40は、気筒41aの筒軸が前後方向に延びるように配設されている。シリンダブロック41の前端にはシリンダヘッド42が取り付けられている一方、シリブロック41の後端には、クランクケース43が取り付けられている。
【0033】
気筒41a内には、ピストン44が摺動可能に内挿されている。ピストン44は、コネクティングロッド45を介してクランクシャフト46のクランクピン46aと接続されている。図5に示すように、クランクシャフト46は上下方向に延びている。クランクシャフト46の下部は、クランクケース43に収容される一方、クランクシャフト46の上部は、クランクケース43を貫通して、該クランクケース43よりも上側に向かって伸びている。尚、図示は省略しているが、クランクシャフト46がクランクケース43を貫通する部分において、クランクシャフト46とクランクケース43との間にはベアリングが設けられている。
【0034】
シリンダヘッド42の中央には、グロープラグ47が設けられている。グロープラグ47は、気筒41a内に供給された、空気と燃料との混合気を加温する。グロープラグ47は、例えば、バッテリ22から電力を供給されて混合気を加温する。
【0035】
本実施形態において、エンジン40は、気筒41a内の混合気をグロープラグ47で加温した後(又は加温しながら)、ピストン44によって混合気を圧縮することで、該混合気を圧縮着火燃焼させる。これにより、効率良く燃焼トルクを得ることができる。
【0036】
詳細な図示は省略するが、図2に示すように、エンジン40の左側には、気筒41a内に外部から空気を導入させるための吸気通路48が配設され、エンジン40の右側には、気筒41aから排気ガスを外部に排出するための排気通路49が配設される。また、エンジン40は、空冷式であり、無人飛行体100の飛行時の走行風により冷却される。
【0037】
尚、エンジン40の回転数は、例えば最大で15000rpmである。
【0038】
2つの機械プロペラ50は、機体本体10の上側に位置する第1機械プロペラ51と、機体本体10の上側でかつ第1機械プロペラ51の下側に位置する第2機械プロペラ52と有する。図5に示すように、第1機械プロペラ51は、上下方向に延びるシャフト53の上端部に固定されたキャップ54に取り付けられている。一方で、第2機械プロペラ52は、シャフト53の上下方向の中間部を収容する回転筒55の上端部に取り付けられている。第1機械プロペラ51はシャフト53が回転することで回転し、第2機械プロペラ52は回転筒55が回転することで回転する。第1及び第2機械プロペラ51,52は、例えば2枚の羽根をそれぞれ有する。尚、図示は省略しているが、回転筒55内において、シャフト53と回転筒55との間には、複数のベアリングが設けられている。
【0039】
回転筒55は、筒軸がシャフト53の中心軸と同軸になるように、該シャフト53を収容している。このため、第1機械プロペラ51の回転軸と第2機械プロペラ52の回転軸とは同軸となる。以下、第1機械プロペラ51の回転軸と第2機械プロペラ52の回転軸とをまとめて回転軸Xという。
【0040】
図示は省略しているが、第1及び第2機械プロペラ51,52の取付部分には、第1及び第2機械プロペラ51,52のピッチ角を変更するための可変ピッチ機構が設けられている。
【0041】
伝達機構60は、図6に示すように、クランクシャフト46の上端部に設けられたピニオンギヤ61と、該ピニオンギヤ61と噛合する中間ギヤ62と、中間ギヤ62の上面に設けられた第1ベベルギヤ63と、該第1ベベルギヤ63と噛合する第2及び第3ベベルギヤ64,65と、第1ベベルギヤ63よりも上側で第2及び第3ベベルギヤ64,65と噛合する第4ベベルギヤ66とを有する。
【0042】
中間ギヤ62は、図5及び図6に示すように、シャフト53の下端部に、回転軸Xを回転軸とするように取付固定されている。中間ギヤ62はピニオンギヤ61よりも歯数の多いギヤである。
【0043】
第1ベベルギヤ63は、中間ギヤ62の上面における、該中間ギヤ62の歯と干渉しない位置に設けられている。第1ベベルギヤ63は、回転軸Xを回転軸としかつ中間ギヤ62と同期して回転するように、中間ギヤ62の上面に固定されている。第1ベベルギヤ63の歯数は、中間ギヤ62の歯数と同じである。
【0044】
第2及び第3ベベルギヤ64,65は、歯が設けられたギヤ本体64a,65aと、ギヤ本体63a,65aをエンジン支持体70に対して回転可能に支持する支持部64b,65bとをそれぞれ有する。各支持部64b,65bは、エンジン支持体70に設けられた孔に挿通されることで、エンジン支持体70に対して支持されている。第2及び第3ベベルギヤ64,65は、配置が異なるだけで、ギヤ本体64a,65aの仕様(歯数や歯先円直径等)は同じである。
【0045】
第4ベベルギヤ66は、図5及び図6に示すように、回転筒55の下端部に、回転軸Xを回転軸とするように取付固定されている。第4ベベルギヤ66における、ギヤ自体の仕様(歯数や歯先円直径等)は、第1ベベルギヤ62と同じである。
【0046】
エンジン40が駆動してクランクシャフト46が回転すると、ピニオンギヤ61が回転する。ピニオンギヤ61の回転数はエンジン40の回転数を同じである。ピニオンギヤ61の回転は、中間ギヤ62により減速される。中間ギヤ62の回転は、第1ベベルギヤ61、第2ベベルギヤ64、及び第3ベベルギヤ65を介して第4ベベルギヤ66に伝達される。中間ギヤ62の歯数と第1ベベルギヤ63の歯数が同じであり、第1ベベルギヤ63の歯数と第4ベベルギヤ66の歯数とは同じであるため、中間ギヤ62の回転は、減速されることなく第4ベベルギヤ66に伝達される。このとき、中間ギヤ62の回転数と第4ベベルギヤ66の回転数とは同じになる一方で、中間ギヤ62の回転方向と第4ベベルギヤ66の回転方向とは互いに逆向きになる。
【0047】
中間ギヤ62が回転することで、シャフト53が回転軸X周りに回転して、第1機械プロペラ51が回転軸X周りに回転する。一方で、第4ベベルギヤ66が回転することで、回転筒55が回転軸X周りに回転して、第2機械プロペラ52が回転軸X周りに回転する。これにより、上向きの推力が生じて、機体本体10を浮上させることができる。このとき、上述のように、中間ギヤ62の回転数と第4ベベルギヤ66の回転数とは同じになるため、第1機械プロペラ51の回転数と第2機械プロペラ52の回転数も同じになる。一方で、中間ギヤ62の回転方向と第4ベベルギヤ66の回転方向とは互いに逆向きになるため、第1機械プロペラ51の回転方向と第2機械プロペラ52の回転方向も互いに逆向きになる。
【0048】
ここで、エンジン40が作動して第1機械プロペラ51が回転すると、機体本体10には、第1機械プロペラ51により生成された回転トルク(以下、第1回転トルクという)が入力される。第1回転トルクが機体本体10に入力されると、機体本体10は、該第1回転トルクにより回転しようとする。しかしながら、本実施形態では、第1機械プロペラ51の下側に、エンジン40により回転するとともに、第1機械プロペラ51と同じ回転数でかつ逆向きの回転方向に回転する第2機械プロペラ52が設けられている。第2機械プロペラ52が回転すると、第1回転トルクと略同じ大きさでかつ逆向きの回転トルク(以下、第2回転トルクという)が発生する。この第2回転トルクにより第1回転トルクが打ち消されて、機体本体10の第1回転トルクによる回転が抑制される。このことから、第2機械プロペラ52は、第1機械プロペラ51よりも下側に位置し、エンジン40により回転し、第1機械プロペラ51により生成されかつ機体本体10に入力される回転トルクを打ち消す回転トルクを発生させるための回転体に相当する。
【0049】
このように、機体本体10への回転トルクの入力が抑制されることで、該回転トルクによる無人飛行体100の飛行姿勢の乱れが抑制される。したがって、エンジン40により生成される比較的大きいトルクによって回転するプロペラ(ここでは、第1機械プロペラ51)を有する無人飛行体100において、飛行姿勢の安定性を向上させることができる。
【0050】
特に、本実施形態において、各電動プロペラ21は、第1機械プロペラ51に対して小型である。また、一般に、電動モータ20により発生するトルクは、エンジン40により発生するトルクよりも小さい。さらに、本実施形態において、各電動プロペラ21は、基本的には走行制御用のプロペラである。これらの理由から、第1回転トルクを打ち消すようなトルクを生成する程度に各電動プロペラ21を回転させると、旋回などの細やかな走行制御がしにくくなり、かえって無人飛行体100の飛行姿勢が不安定になるおそれがある。このため、本実施形態の如く第2機械プロペラ52を設けて、第2回転トルクにより第1回転トルクを打ち消すことで、無人飛行体100の飛行姿勢の安定性を向上させるという効果がより適切に発揮される。
【0051】
さらに、各電動プロペラ21により第1回転トルクを打ち消す必要がないため、各バッテリ22の消費を出来る限り抑えることもできる。
【0052】
また、本実施形態において、第1機械プロペラ51の回転軸と第2機械プロペラ52の回転軸とは同軸である。これにより、第1回転トルクと第2回転トルクとのずれを出来る限り小さくすることができるため、第1回転トルクを第2回転トルクにより打ち消す効果が向上する。これにより、無人飛行体100の飛行姿勢の安定性をより効果的に向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態において、2つのバッテリ22は、機体本体10の上側でかつ第2機械プロペラ52の下側の位置に位置し、エンジン40は、機体本体10の下側に取り付けられている。各バッテリ22及びエンジン40は比較的重量が大きいため、各バッテリ22及びエンジン40が機体本体10に対して上下に分かれて配置されていることにより、無人飛行体100全体の重量バランスを取りやすくなる。この結果、無人飛行体100の飛行姿勢の安定性をより向上させることができる。
【0054】
また、各バッテリ22とエンジン40とを機体本体に対して上下方向に分けて配置することにより、エンジン40から各バッテリ22への伝熱を出来る限り抑えることができる。これにより、各バッテリ22の長寿命化を図ることができる。
【0055】
さらに、一般に、機体本体10の下側は機体本体10の上側と比較して配置される部品点数が少ない。このため、エンジン40を機体本体10の下側に配置することにより、無人飛行体100の飛行時において、エンジン40の周囲を走行風が通り抜けやすくなる。この結果、エンジン40の冷却性能を向上させることもできる。
【0056】
さらにまた、エンジン40を、相対的に部品点数が少ない機体本体10の下側に配置することにより、エンジン40のメンテナンスを容易に行えるようになる。これにより、無人飛行体100のメンテナンス性を向上させることができる。
【0057】
特に、本実施形態では、図2に示すように、2つのバッテリ22は、機体本体10を進行方向の前側から見たときに、機械プロペラ50の回転軸Xに対して略対称に配置されており、エンジン40は、機械プロペラ50の回転軸Xの延長線上に配置されている。これにより、無人飛行体100全体の重量バランスをより取りやすくなる。この結果、無人飛行体100の飛行姿勢の安定性を一層向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、図2に示すように、2つのバッテリ22は、エンジン支持体70を挟んで、左右に分かれて配置されている。これにより、一方のバッテリ22から他方のバッテリ22への伝熱が抑制される。この結果、各バッテリ22の冷却効率を向上させることができるとともに、各バッテリ22の長寿命化を図ることができる。
【0059】
また、図3に示すように、2つのバッテリ22は、回転軸Xの延びる方向から見て、第1機械プロペラ51の回転時における該第1機械プロペラ51の先端の軌跡の内側に位置する。これにより、第1機械プロペラ51により発生する気流によって、各バッテリ22を冷却することができる。この結果、各バッテリ22の冷却効率を向上させることができるとともに、各バッテリ22の長寿命化を図ることができる。
【0060】
また、本実施形態では、第1及び第2機械プロペラ51,52は、どちらもピッチ角を変更可能である。これにより、特に、無人飛行体100の下降時における飛行姿勢を安定させることができる。
【0061】
また、本実施形態において、各アーム11が炭素繊維やアルミニウム等の軽量の材料からなるパイプ材により形成されていれば、無人飛行体100が軽量化されるため、小さな推力で無人飛行体100を浮上させることができる。これにより、エンジン40の燃費を向上させることができる。
【0062】
図7は、本実施形態の変形例を示す。この変形例は、第2機械プロペラ52を機械本体10の下側、特に、エンジン40よりも下側に配置したものである。
【0063】
この構成でも、第2機械プロペラ52は、第1機械プロペラ51により生成される回転トルクを打ち消すべく、第1機械プロペラ51と同じ回転数で、第1機械プロペラ51とは逆向きの回転方向に回転するように構成されている。このために、この変形例における伝達機構は、アイドルギヤ等を用いて、第2機械プロペラ52を、第1機械プロペラ51と同じ回転数で、第1機械プロペラ51とは逆向きの回転方向に回転させるように構成されている。
【0064】
この変形例でも、第1機械プロペラ51により生成される回転トルクを、第2機械プロペラ52の回転により生成される回転トルクによって打ち消すことができるため、無人飛行体100の飛行姿勢の安定性を向上させることができる。
【0065】
また、第1機械プロペラ51により発生する下向きの気流を、第2機械プロペラ52により吸い寄せることができる。これにより、上下方向における、第1機械プロペラ51と第2機械プロペラ52との間に、出来る限り強い下向きの気流を発生させることができる。この結果、各バッテリ22及びエンジン40の冷却性能を向上させることができる。
【0066】
本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0067】
例えば、前述の実施形態では、第1回転トルクを打ち消す回転トルクを発生させるための回転体は、第2機械プロペラ52であった。これに限らず、第1回転トルクを打ち消すことができる回転トルクを発生させることが出来るものであれば、回転体はプロペラでなくてもよい。
【0068】
また、前述の実施形態では、第1機械プロペラ51及び回転体(第2機械プロペラ52)の数は1つずつであった。これに限らず、第1機械プロペラ51の個数と回転体の個数とが同数であれば、第1機械プロペラ51及び回転体は、それぞれ2つ以上設けられていてもよい。
【0069】
また、前述の実施形態では、アーム11の数、電動モータ20の数、及び電動プロペラ21の数は、全て6つであった。これに限らず、アーム11の数、電動モータ20の数、及び電動プロペラ21の数は、特に限定されない。また、アーム11の数、電動モータ20の数、及び電動プロペラ21が、1対1対1に対応している必要はなく、例えば、1つの電動モータ20に対して2つの電動プロペラ21を設けるようにしてもよい。
【0070】
また、前述の実施形態では、バッテリ22は2つ設けられていた。これに限らず、バッテリ22は1つであってもよい。
【0071】
また、前述の実施形態では、バッテリ22が機体本体10の上側に位置し、エンジン40が機体本体10の下側に位置していた。これに限らず、エンジン40が機体本体10の上側に位置し、バッテリ22が機体本体10の下側に位置していてもよい。
【0072】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、内燃機関により回転するプロペラを有する無人飛行体として有用である。
【符号の説明】
【0074】
10 機体本体
11 アーム
20 電動モータ
21 電動回転式プロペラ
22 バッテリ
40 エンジン(内燃機関)
51 第1機械プロペラ(機械回転式プロペラ)
52 第2機械プロペラ(回転体)
100 無人飛行体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7