(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135645
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】テープ貼付装置
(51)【国際特許分類】
B29C 70/38 20060101AFI20240927BHJP
B29C 70/54 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B29C70/38
B29C70/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046432
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】熱田 直行
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AC03
4F205AD16
4F205HA14
4F205HA23
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HK03
4F205HK04
4F205HK25
4F205HT26
(57)【要約】
【課題】テープの先端部を貼付ヘッドとワークの間に問題無く送り込むことができるテープ貼付装置を提供する。
【解決手段】被貼付面5aに貼り付けるためのテープAを搬送するテープ搬送部9と、テープ搬送部9から搬送されるテープAを押圧しながら被貼付面5aに貼り付ける貼付ヘッド10と、テープ搬送部9から貼付ヘッド10へ搬送されるテープAの下面を支持するテープ支持部20と、を備え、テープ支持部20は、テープAの搬送方向に延びる細線部21を有し、細線部21がテープAを支持する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被貼付面に貼り付けるためのテープを搬送するテープ搬送部と、
前記テープ搬送部から搬送されるテープを押圧しながら前記被貼付面に貼り付ける貼付ヘッドと、
前記テープ搬送部から前記貼付ヘッドへ搬送されるテープの下面を支持するテープ支持部と、
を備え、
前記テープ支持部は、テープの搬送方向に延びる細線部を有し、当該細線部がテープを支持することを特徴とする、テープ貼付装置。
【請求項2】
前記細線部は、糸状体であることを特徴とする、請求項1に記載のテープ貼付装置。
【請求項3】
前記テープ搬送部と前記テープ支持部の間に位置し、テープの下面に処理剤を付与する処理剤付与部をさらに有することを特徴とする、請求項1に記載のテープ貼付装置。
【請求項4】
前記細線部の周囲には開口が形成されており、前記テープ支持部をはさんでテープと対向する位置に、前記処理剤に熱エネルギーを付与することによって前記処理剤を乾燥させる加熱手段をさらに有することを特徴とする、請求項1に記載のテープ貼付装置。
【請求項5】
被貼付面に貼り付けるためのテープを搬送するテープ搬送部と、
前記テープ搬送部から搬送されるテープを押圧しながら前記被貼付面に貼り付ける貼付ヘッドと、
前記テープ搬送部から前記貼付ヘッドへ搬送されるテープの下面を支持するテープ支持部と、
を備え、
前記テープ支持部は、テープの搬送方向に並ぶ複数の支持点の集合を有し、当該支持点がテープを支持することを特徴とする、テープ貼付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維束を含むテープを被貼付面に貼り付けることによって繊維強化プラスチック(FRP)成形品などを製造するテープ貼付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維などの繊維束をワークの被貼付面に貼り付けてゆくことで、所望の形状をした繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)成形品が製造できることが知られている。
【0003】
FRP成形品の製法には、ATL(Auto Tape Layup)法、AFP(Auto Fiber Placement)法など種々の称呼があるが、これらの製法は厳密に区別されているものではない。本明細書においては、繊維束を押圧しながら被貼付面に貼り付けていく製法を総称してATL法と記し、その装置を繊維束貼付装置と記すこととする。
【0004】
特許文献1には、ATL法を実施する施工法が開示されている。この施工法では、
図9に示すように一般的にプリプレグテープ、UDテープと呼ばれる、繊維束にあらかじめ樹脂を含浸させてテープ状に成形したもの(テープA)をATLヘッドのフィーダー101から貼付ヘッド102へ搬送し、加熱および加圧しながらワーク105の被貼付面105aへ貼り付けるテープ貼付装置が開示されている。
【0005】
特許文献1に示すようなテープ貼付装置において、被貼付面105aへのテープAの貼り付けに接着剤を用いる場合がある。その場合、被貼付面105aとテープAの間に接着剤Sが塗布されるよう、繊維束の被貼付面と対向する側の面、すなわち下面へ接着剤付与部103によって接着剤Sが付与される。また、このように接着剤付与部103が設けられる場合、テープAの搬送方向における接着剤付与部103の下流側には、テープAに付与された接着剤Sを加熱し、接着剤Sの硬化のきっかけを与える加熱手段104も設けられる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、ワーク105へのテープAの貼付動作開始前の待機状態において、
図10に示すようにテープAの先端部が貼付ヘッド102に到達する前にテープAの自重によりテープAが垂れ下がった場合、貼付開始時に貼付ヘッド102と被貼付面105aとの間にテープAを送り込むことができないおそれがあった。特に、テープAに接着剤Sが付与される場合、テープAの自重が増加するため、貼付ヘッド102と被貼付面105aとの間にテープAを送り込むことができない可能性が高くなるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題点を鑑み、テープの先端部を貼付ヘッドとワークの間に問題無く送り込むことができるテープ貼付装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明のテープ貼付装置は、被貼付面に貼り付けるためのテープを搬送するテープ搬送部と、前記テープ搬送部から搬送されるテープを押圧しながら前記被貼付面に貼り付ける貼付ヘッドと、前記テープ搬送部から前記貼付ヘッドへ搬送されるテープの下面を支持するテープ支持部と、を備え、前記テープ支持部は、テープの搬送方向に延びる細線部を有し、当該細線部がテープを支持することを特徴としている。
【0010】
本発明のテープ貼付装置では、テープ支持部を有することにより、テープ搬送部から貼付ヘッドにテープが搬送するまでの間にテープを下から支持するため、テープの先端部の垂れを防止することができる。また、テープの搬送方向に延びる細線部がテープを支持するため、テープが搬送されるにあたってテープの幅方向においてテープ支持部と接触する位置は常に同じ位置であり、テープの下面においてテープ支持部と接触する部分を比較的少なくすることができる。
【0011】
また、前記細線部は、糸状体であると良い。
【0012】
こうすることにより、細線部を容易に形成することができる。
【0013】
また、前記テープ搬送部と前記テープ支持部の間に位置し、テープの下面に処理剤を付与する処理剤付与部をさらに有すると良い。
【0014】
このような場合、テープの下面部において本発明のテープ支持部と接触する部分がごく一部に限定されることから、テープ支持部との接触によって処理剤がテープの下面から除去されてしまうことを軽減することができる。
【0015】
また、前記細線部の周囲には開口が形成されており、前記テープ支持部をはさんでテープと対向する位置に、前記処理剤に熱エネルギーを付与することによって前記処理剤を乾燥させる加熱手段をさらに有すると良い。
【0016】
こうすることにより、加熱手段によるテープ上の処理剤への熱エネルギーの付与を阻害することなく、テープ支持部が加熱手段の配置位置にてテープを支持することができる。
【0017】
また、上記課題を解決するために本発明のテープ貼付装置は、被貼付面に貼り付けるためのテープを搬送するテープ搬送部と、前記テープ搬送部から搬送されるテープを押圧しながら前記被貼付面に貼り付ける貼付ヘッドと、前記テープ搬送部から前記貼付ヘッドへ搬送されるテープの下面を支持するテープ支持部と、を備え、前記テープ支持部は、テープの搬送方向に並ぶ複数の支持点の集合を有し、当該支持点がテープを支持することを特徴としている。
【0018】
本発明のテープ貼付装置では、テープ支持部を有することにより、テープ搬送部から貼付ヘッドにテープが搬送するまでの間にテープを下から支持するため、テープの先端部の垂れを防止することができる。また、支持点はテープの搬送方向に並ぶため、テープの幅方向においてテープ支持部と接触する位置はテープが搬送されるにあたって常に同じ位置であり、テープの下面においてテープ支持部と接触する部分を比較的少なくすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のテープ貼付装置により、テープの先端部を貼付ヘッドとワークの間に問題無く送り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のテープ貼付装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態におけるATLヘッドの詳細を示す図である。
【
図3】本実施形態におけるテープ支持部の詳細を示す図である。
【
図4】本実施形態におけるテープ貼付装置において繊維束をピックアップする様子を示す斜視図である。
【
図5】本実施形態におけるATLヘッドにおいてテープの先端部を貼付ヘッドへ搬送する様子を示す図である。
【
図6】本実施形態におけるATLヘッドにおいてテープの先端部を貼付ヘッドへ搬送する様子を示す図である。
【
図7】本発明の他の実施形態におけるテープ支持部を示す図である。
【
図8】本発明のさらに他の実施形態におけるテープ支持部を示す図である。
【
図10】従来のATLヘッドにおける問題点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のテープ貼付装置を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、実施の形態に係るテープ貼付装置1の概略構成を示す斜視図である。テープ貼付装置1は、多関節ロボット2、多関節ロボット2のアーム2aの先端部分に取付けられたATLヘッド3、ATLヘッド3にテープAを供給・搬送するテープ搬送手段4、テープAを載置しておく載置台13、ワーク5を保持するワーク台6などを含んで構成されている。
【0023】
本実施形態におけるワーク5は、たとえば、熱可塑性樹脂の射出成型品からなり、その表面に炭素繊維からなるテープAが貼り付けられて補強される。ワーク5の形状、及びテープAを貼り付ける位置、貼り付ける長さは設計により予め定められている。
【0024】
また、本実施形態では、テープAは炭素繊維がばらばらになることを防ぐために樹脂が含浸された状態であり、帯状の形態を有している。本実施形態では、テープAの長手方向および短手方向の寸法は、たとえばそれぞれ500mm、25mmである。
【0025】
多関節ロボット2としては市販の汎用の産業用ロボットを用いることができる。多関節ロボット2のアーム2aの先端部分にATLヘッド3が取り付けられている。
【0026】
【0027】
ATLヘッド3は、
図2に示すように、接着剤塗布部7、加熱手段8、フィーダー9、および貼付ヘッド10を有している。フィーダー9から貼付ヘッド10の方へ送られるテープAのワーク5と対向する側の面(すなわち下面)に接着剤塗布部7が接着剤Sを塗布し、それを加熱手段8が加熱する。この加熱された熱硬化性接着剤Sを有するテープAを貼付ヘッド10がワーク5の被貼付面5aに押圧することにより、テープAがワーク5に貼り付けられる。
【0028】
また、フィーダー9と貼付ヘッド10の間には、テープAの下面を保持するテープ支持部20が設けられている。特に本実施形態ではテープAの搬送経路と加熱手段8の間にテープ支持部20が設けられている。このテープ支持部20がテープAを下方から支持することにより、テープAの先端部が貼付ヘッド10に到達するまでにテープAが自重によって垂れ下がることを防ぐ。
【0029】
接着剤塗布部7は、本説明における処理剤付与部の一形態であり、図示しない連結プレート(連結手段とも呼ぶ)を介して貼付ヘッド10と連結されており、テープAの送り出し経路においてフィーダー9と加熱手段8の間に位置している。接着剤塗布部7はテープと対向する位置に吐出口を有し、接着剤塗布部7の上方をテープAが通過する際にこの吐出口から接着剤Sを吐出することにより、接着剤SをテープAの下面に塗布する。
【0030】
なお、接着剤Sは本説明における処理剤である。接着剤Sは熱硬化性接着剤であり、たとえばエポキシ系、ウレタン系、ポリエステル系などがある。この中でも、たとえばエポキシ系の熱硬化性接着剤は、所定の温度までの昇温をトリガーとして発熱反応を生じ、自己の反応熱により硬化反応が促進する特性を有する。
【0031】
加熱手段8は、図示しない連結プレートを介して貼付ヘッド10と連結されており、繊維束Aの送り出し経路において接着剤塗布部7と貼付ヘッド10の間に位置している。
【0032】
加熱手段8は、反射板やレンズ等の光学系(図示せず)を備えており、貼付ヘッド10の手前で、貼付ヘッド10による押圧貼り付け動作に先立って、繊維束Aに塗布された熱硬化性接着剤を輻射エネルギーによって非接触で加熱する。
【0033】
加熱手段8のケースには図示しない非接触の温度センサが取付けられている。この温度センサにより繊維束Aの温度を計測し、この計測値をもとに、図示しない制御部によって加熱手段8の出力が制御され、繊維束Aの温度(熱硬化性接着剤の温度)が貼り付けに最適な所定の温度に維持される。本実施形態では、加熱手段8は輻射エネルギーにより対象物を加熱するものであり、たとえば熱風方式と比較すると容易に温度を制御することができる。
【0034】
フィーダー9は、ATLヘッド3におけるテープAの搬送装置であって、本説明ではテープ搬送部とも呼ぶ。フィーダー9は、図示しない連結プレートを介して貼付ヘッド10と連結されており、1組のローラによって帯状のテープAを挟持し、このローラが回転駆動することにより貼付ヘッド10の押圧ローラ10aに向けてテープAを送り出す。
【0035】
貼付ヘッド10は、押圧ローラ10aが、ローラ支持部10bを介してベース部10cに取付けられて構成されている。押圧ローラ10aは、テープAを被貼付面5aに押し付けるもので、ローラ支持部10b内には、押圧ローラ10aに圧力を付与するエアシリンダであるシリンダ部10dが配置されている。
【0036】
テープ支持部20は、テープAの下面を保持する部材であり、図示しない連結プレートを介して貼付ヘッド10と連結されている。
【0037】
本実施形態におけるテープ支持部20の詳細を
図3に示す。
図3(a)はテープ支持部20の上面図、
図3(b)はテープ支持部20の正面図である。
【0038】
テープ支持部20は、テープAの搬送方向に延びる糸状体である支持ワイヤー21を有しておりこの支持ワイヤー21がテープAと接触する。本実施形態では支持ワイヤー21は金属ワイヤーであるが、繊維により形成されていても良い。
【0039】
また、支持ワイヤー21はテープAの幅方向(短手方向、
図3(a)におけるY軸方向)に2本並んでおり、この2本並んだ支持ワイヤー21によってテープAが安定するように下方から支持する。
【0040】
支持ワイヤー21の両端部はシャフト22に巻き付けられており、2本のシャフト22はテープAの幅方向においてテープAの搬送領域の外側に設けられたシャフト保持部23に保持されている。少なくとも一方のシャフト22は、シャフト保持部23に対して回転および固定が可能となっており、シャフト22の回転によって支持ワイヤー21の張力を調節することができる。
【0041】
そして、この支持ワイヤー21の張力の調節によって支持ワイヤー21が撓み無く真っ直ぐに張られた状態が形成され、この状態で両シャフト22がシャフト保持部23に固定されている。このように支持ワイヤー21が真っ直ぐ張られた状態であることにより、両シャフト22の間に張られた支持ワイヤー21全体でテープAを支持することができる。
【0042】
なお、本実施形態の真っ直ぐ張られた支持ワイヤー21のようにテープAを支持する細線状の構成要素を、本説明では細線部とも呼ぶ。
【0043】
また、支持ワイヤー21は、
図3(b)に示すように2本のシャフト22の間に張られている支持ワイヤー21がテープAの方を向くようにシャフト22に巻き付けられている。これにより、支持ワイヤー21の厚み分、支持ワイヤー21がシャフト22よりもテープAに向かって突出する。そのため、シャフト22にはテープAが触れずに支持ワイヤー21でのみテープAを支持する形態が形成される。
【0044】
また、本実施形態のテープ支持部20は、上記の通りテープAの搬送方向に所定の間隔を有するように配置された2本の支持ワイヤー21が両端部をシャフト22に巻き付けられた状態で真っ直ぐ張られ、そのシャフト22がテープAの搬送領域の外側に設けられたシャフト保持部23に固定されている。この形態により、
図3(a)に示すように2本の支持ワイヤー21の周囲は開口となっており、
図3(a)にハッチングで示した加熱手段8によるテープAの加熱領域には支持ワイヤー21のみが存在する状態が形成されている。
【0045】
図1に示すテープ搬送手段4は、予め所定長さに裁断された帯状のテープAが積載される載置台13、載置台13からテープAを1本ずつピックアップするピックアップハンド14、ピックアップハンド14を鉛直方向および水平方向に移動させるガントリ軸15、16を含んで構成されている。
【0046】
ピックアップハンド14は、真空吸着チャック14aを複数個備え、この真空吸着チャック14aにより載置台13上に積載されたテープAを1本ずつピックアップする。
【0047】
テープAが貼付けられるワーク5は、様々な形状(3次元形状)を有している。そのため、ATLヘッド3では、テープAに対する押圧ローラ10aの押圧状態を一定に保つため、押圧ローラ10aがワーク5の被貼付面5aの接線方向に直交する方向(法線方向)から被貼付面5aを押圧するように、ATLヘッド3の姿勢(傾き)を制御する。例えば、ワーク5に対するATLヘッド3の姿勢制御は、ワーク5の3次元設計データに基づいて実施されるようになっている。
【0048】
ここで、接着剤塗布部7、加熱手段8、フィーダー9、貼付ヘッド10、およびテープ支持部20が共通する連結プレートに連結されていることにより、これらの相対位置は固定され、連動する。これにより、被貼付面5aの形状に倣って貼付ヘッド10(押圧ローラ10a)が姿勢を変えながらテープAの貼り付けを行う場合であっても、フィーダー9から押圧ローラ10aへ送り出されるテープAに対して接着剤塗布部7、テープ支持部20、加熱手段8の相対距離を所定値で維持することが可能であるため、接着剤塗布部7による接着剤Sの塗布および加熱手段8による接着剤Sの加熱をテープAの貼り付けと並行して行うことができる。
【0049】
次に、
図4に基づいてテープ貼付装置1によるテープAの貼付動作を説明する。
【0050】
まず、テープ貼付装置1が始動すると、ガントリ軸15、16が動作し、
図3に示すように、載置台13上のテープAをピックアップハンド14が1本だけピックアップする。このとき、テープAの両端(少なくとも一端)が、ピックアップハンド14の両端より長さ方向に突き出た状態で、真空チャック14aがテープAを吸着しピックアップする。
【0051】
次に、ピックアップハンド14が受渡し位置まで移動する。受渡し位置においてピックアップハンド14が保持するテープAをATLヘッド3内のフィーダー9に受け渡す。受け渡し位置は、ガントリ軸15、16によるピックアップハンド14の可動領域と、多関節ロボット2によるATLヘッド3の可動領域の共通領域内であればよく、その位置に特に制限はない。
【0052】
受渡し位置において、ATLヘッド3内のフィーダー9の上部挿入口(図示せず)に、ピックアップハンド14が保持するテープAの一端が若干挿入されるように多関節ロボット2が動作し、フィーダー9はお辞儀動作をする。
【0053】
テープAの一端が所定長さ分フィーダー9に挿入されると、真空チャック14aの吸着が解除され、テープAがATLヘッド3に受け渡される。同時にフィーダー9が作動し、テープAを所定の待機位置まで搬送する。
【0054】
次に多関節ロボット2が動作し、貼付開始位置までATLヘッド3が移動する。続けて多関節ロボット2が動作し、押圧ローラ10aが被貼付面5aに押し付けられる。
【0055】
このとき、押圧ローラ10aが被貼付面5aに接触するタイミングに合わせてフィーダー9が動作し、丁度テープAの先端が押圧ローラ10aと被貼付面5aとの間に挟まるようにテープAを搬送する。
【0056】
また、このとき、
図2に示すように接着剤塗布部7が動作し、フィーダー9によって押圧ローラ10aへ搬送されるテープAの下面に接着剤Sを塗布する。そして、テープAに塗布された接着剤Sを加熱手段8が加熱させる。
【0057】
そして、
図1に示すように、ATLヘッド3がテープAの貼付経路に沿ってワーク5の貼付面5a上を移動及び首振り動作をしつつ、テープAを被貼付面5aに貼り付けていく。その間もフィーダー9は作動しており、テープAを搬送、供給する。また、接着剤吹付部7がテープAに接着剤Sを塗布する。
【0058】
テープAが後端まで被貼付面5aに貼り終えられると、接着剤吹付部7の動作が停止し、多関節ロボット2の動作により押圧ローラ10aによる被貼付面5aへの押圧が解除され、1本のテープAの貼り付けが完了する。
【0059】
以下、同じ動作が繰り返され、被貼付面5a上にテープAが貼り付けられていく。
【0060】
ここで、本実施形態におけるATLヘッド3においてテープAの先端部を貼付ヘッド10の押圧ローラ10aへ搬送する様子を
図5および
図6に示す。
【0061】
図5に示すように、フィーダー9により送り出されたテープAの先端部は、まず接着剤塗布部7を通過して加熱手段8へ向かう。接着剤塗布部7は、少なくともテープAの先端部が接着剤Sの吐出口を通過する時点からテープAの下面への接着剤Sの吐出を開始する。これにより、テープAの先端部の位置から接着剤Sの塗膜が形成される。
【0062】
接着剤Sが塗布されたテープAの先端部は、加熱手段8の上方を通過し、押圧ローラ10aへと向かう。このとき加熱手段8は動作しており、加熱手段8の上方を通過した接着剤Sには熱エネルギーが付与されて発熱反応が開始する。
【0063】
ここで、本実施形態では加熱手段8とテープAとの間にテープ支持部20が設けられている。そのため、テープAの先端部は比較的押圧ローラ10aの近傍に位置する加熱手段8の配置位置において下方からテープ支持部20に支持された状態で押圧ローラ10aへと送り出される。その結果、テープAの先端部が自重で垂れることなく
図6に示すように押圧ローラ10aの近傍の待機位置まで到達し、ワーク5への貼付の待機形態が形成される。これにより貼付開始時にテープAの先端部を押圧ローラ10aとワーク5の間に問題無く送り込むことができる。
【0064】
また、テープAを支持する支持ワイヤー21はテープAの搬送方向に延びている。そのため、支持ワイヤー21の上を滑りながらテープAが搬送されていったとしても、テープAの幅方向において支持ワイヤー21と接触する位置は常に同じであってごく一部に限定される。これにより、本実施形態のようにテープAの下面に接着剤Sのような処理剤が付与されていたとしても、テープ支持部20との接触によって処理剤がテープAの下面から除去されてしまうことを軽減することができる。
【0065】
さらに、前述の通り、テープ支持部20における支持ワイヤー21の周囲には開口が形成されている。これにより、加熱手段8から発せられた熱エネルギーはテープ支持部20にほぼ阻害されることなく、テープAへ到達する。そのため、加熱手段8によるテープA上の処理剤への熱エネルギーの付与を阻害することなく、テープ支持部20が加熱手段8の配置位置にてテープAを支持することができる。
【0066】
また、このように加熱手段8の配置位置にテープ支持部20が配置されることにより、テープAの搬送方向にテープ支持部20と加熱手段8とが並ぶ形態と比べてフィーダー9と貼付ヘッド10の間のテープAの搬送経路長が短縮され、ATLヘッド3をコンパクトにすることができる。そのため、ATLヘッド3を動作させるためのガントリやロボットの負荷を小さくすることができ、テープ貼付装置1全体の小型化も可能となる。
【0067】
以上のテープ貼付装置により、テープの先端部を貼付ヘッドとワークの間に問題無く送り込むことが可能である。
【0068】
ここで、テープ貼付装置は、以上で説明した形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。たとえば、上記の説明ではテープAを支持する細線部は糸状体である支持ワイヤー21によって形成されているが、これに限られない。たとえば、
図7に示すように複数枚の薄板部25が設けられ、薄板部25の端面がテープAの搬送方向に延びる細線部となるようなものであっても良い。
【0069】
また、テープ支持部20においてテープAを支持するのは細線部でなくても良く、たとえば
図8に示すように支持ピン26がテープAを支持する形態であって、複数の支持ピン26による支持点がテープAの搬送方向に並ぶ集合を形成していても良い。
【0070】
また、上記の説明では処理剤は接着剤としているが、それに限らずたとえばプライマー(下地剤)などでも良い。
【0071】
また、上記の説明では、貼付ヘッド10のワークとの当接部分は押圧ローラ10aであるが、これに限らずたとえば押圧シューなどでも良い。
【0072】
また、上記の説明ではテープ搬送手段4にガントリ構造体を採用しているが、別の実施の形態では、ガントリ構造体に代えて多関節ロボットを採用してもよい。
【0073】
また、上記実施の形態においては、ATLヘッド3の駆動装置として多関節ロボット2を採用しているが、別の実施の形態では、多関節ロボットに代えてガントリ構造体を採用しても差し支えない。
【0074】
ガントリ構造体を採用した場合には、ATLヘッド3のXYZ軸方向への運動制御を安定して行うことができる。また、ATLヘッド3の剛性を高めることができ、ATLヘッド3による押圧力を高めることができ、さらには、テープ貼付装置1のフットプリント(換言すると、装置全体の動作範囲を含めた占有体積)を小さくすることができるという利点も得ることができる。
【符号の説明】
【0075】
1 テープ貼付装置
2 多関節ロボット
2a アーム
3 ATLヘッド
4 繊維束搬送手段
5 ワーク
5a 被貼付面
6 ワーク台
7 接着剤塗布部(処理剤付与部)
8 加熱手段
9 フィーダー(テープ搬送部)
10 貼付ヘッド
10a 押圧ローラ
10b ローラ支持部
10c ベース部
10d シリンダ部
13 載置台
14 ピックアップハンド
14a 真空吸着チャック
15 ガントリ軸
16 ガントリ軸
20 テープ支持部
21 支持ワイヤー
22 シャフト
23 シャフト保持部
25 薄板部
26 支持ピン
101 フィーダー
102 貼付ヘッド
103 接着剤付与部
104 加熱手段
105 ワーク
105a 被貼付面
A 繊維束(テープ)
S 接着剤